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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090032
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】重荷重用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20240627BHJP
   B60C 15/00 20060101ALI20240627BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20240627BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B60C19/00 B
B60C15/00 M
B60C13/00 H
B60C19/00 J
B60C15/06 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205660
(22)【出願日】2022-12-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 晶子
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA39
3D131BA03
3D131BB03
3D131BC05
3D131BC22
3D131HA37
3D131HA45
3D131LA02
3D131LA03
3D131LA05
3D131LA20
3D131LA24
(57)【要約】
【課題】軽量化を図りつつ、良好な通信環境の形成及びRFIDタグの損傷リスクの低減を達成できる、重荷重用タイヤの提供。
【解決手段】タイヤは、一対のビードと、カーカスと、一対のサイドウォールと、一対のチェーファーと、RFIDタグを含むタグ部材とを備える。ビードは、コアと、内側エイペックスと、外側エイペックスとを備える。カーカスを構成するカーカスプライは、プライ本体と、一対の折り返し部とを備える。タイヤの側面のうち、最大幅位置と前記折り返し部の端との間のゾーンに、凹みが設けられている。タグ部材は、折り返し部の端の径方向外側において、サイドウォールと外側エイペックスに接触し、その一部が凹みの内端から外端までの長さの中間点の径方向外側に位置する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードと、
一対の前記ビードの間を架け渡すカーカスと、
前記カーカスの軸方向外側に位置する一対のサイドウォールと、
前記サイドウォールの径方向内側に位置し、リムと接触する一対のチェーファーと、
RFIDタグを含むタグ部材と、
を備え、
前記ビードが、コアと、前記コアの径方向外側に位置する内側エイペックスと、前記内側エイペックスの径方向外側に位置する外側エイペックスとを備え、
前記カーカスが、カーカスプライを備え、
前記カーカスプライが、一対の前記ビードの間を架け渡すプライ本体と、前記プライ本体に連なり前記ビードで折り返される一対の折り返し部とを備え、
タイヤの側面のうち、最大幅位置と前記折り返し部の端との間のゾーンに、凹みが設けられ、
前記折り返し部の端の径方向外側において、前記タグ部材が、前記サイドウォールと前記外側エイペックスに接触し、
前記タグ部材の少なくとも一部が、前記凹みの内端から外端までの長さの中間点の径方向外側に位置する、
重荷重用タイヤ。
【請求項2】
前記RFIDタグが、前記中間点の径方向外側に位置する、請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項3】
前記中間点が、前記チェーファーの外端の径方向外側から前記外側エイペックスの外端の径方向内側までの間に存在する、請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項4】
前記サイドウォールの表面から前記タグ部材までの最短距離が3.5mm以上である、請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項5】
前記タグ部材の外端が前記チェーファーの外端の径方向外側に位置する、請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項6】
一対の前記サイドウォールのうち、第一のサイドウォールの側に、前記タグ部材が設けられる、請求項5に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項7】
前記タグ部材が、前記RFIDタグが架橋ゴムで被覆されたプレート状の部材であり、
前記タグ部材の厚さが1.0mm以上2.5mm以下である、
請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造管理、顧客情報、走行履歴等のデータを管理するために、RFID(Radio Frequency Identification)タグをタイヤに内蔵することが提案されている。RFIDタグをタイヤに内蔵する技術について様々な検討が行われている(例えば、下記の特許文献1)。
また、重荷重用タイヤには、軽量化を図るため、タイヤ側面のうち、タイヤの最大幅位置とカーカスプライの折り返し部の端との間のゾーンに、凹みが設けられた形状を有する重荷重用タイヤが知られている(例えば、下記の特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-046057号公報
【特許文献2】特開2020-066242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
損傷防止の観点から、タイヤにおいて屈曲の程度が小さい部分にRFIDタグは設けられる。重荷重用タイヤの場合、ビード部が高い剛性を有する。重荷重用タイヤでは、RFIDタグの配置位置としてビード部は有効である。
【0005】
タイヤは一対のビードの間を架け渡すカーカスを備える。カーカスはカーカスプライを備える。カーカスプライはビードで折り返される。重荷重用タイヤの場合、カーカスプライの折り返し部は、その端がビードのエイペックスと重複するように配置される。
【0006】
カーカスプライは並列した多数のカーカスコードを含む。重荷重用タイヤでは、スチールコードがカーカスコードとして用いられる。スチールコードのような金属要素のそばにRFIDタグを配置すると電波に乱れが生じることが懸念される。
重荷重用タイヤでは、RFIDタグをビード部にセットする場合、損傷リスクを低減し、金属要素からの距離を確保する観点から、折り返し部の端とエイペックスの端との間のゾーンに、RFIDタグを配置することが検討される。
【0007】
ところで、上述の凹みが設けられた形状を有する重荷重用タイヤは、タイヤ側面のうち、タイヤの最大幅位置と折り返し部の端との間のゾーンに、凹みが設けられている。凹みが設けられているゾーンは、一般的なタイヤ側面とは、屈曲の程度が異なる。そのため、RFIDタグを、上述の折り返し部の端とエイペックスの端との間のゾーンに配置したとしても、RFIDタグの損傷リスクを十分に低減できない場合があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、軽量化を図りつつ、良好な通信環境の形成及びRFIDタグの損傷リスクの低減を達成できる、重荷重用タイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る重荷重用タイヤは、一対のビードと、一対の前記ビードの間を架け渡すカーカスと、前記カーカスの軸方向外側に位置する一対のサイドウォールと、前記サイドウォールの径方向内側に位置し、リムと接触する一対のチェーファーと、RFIDタグを含むタグ部材とを備える。前記ビードが、コアと、前記コアの径方向外側に位置する内側エイペックスと、前記内側エイペックスの径方向外側に位置する外側エイペックスとを備える。前記カーカスはカーカスプライを備える。前記カーカスプライは、一対の前記ビードの間を架け渡すプライ本体と、前記プライ本体に連なり前記ビードで折り返される一対の折り返し部とを備える。タイヤの側面のうち、最大幅位置と前記折り返し部の端との間のゾーンに、凹みが設けられている。前記折り返し部の端の径方向外側において、前記タグ部材が、前記サイドウォールと前記外側エイペックスに接触している。前記タグ部材の少なくとも一部が、前記凹みの内端から外端までの長さの中間点の径方向外側に位置する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軽量化を図りつつ、良好な通信環境の形成及び損傷リスクの低減を達成できる、重荷重用タイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る重荷重用タイヤの一部を示す断面図である。
図2図1のタイヤの一部を示す断面図である。
図3】タグ部材の平面図である。
図4図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図5】凹みが設けられた形状を有する重荷重用タイヤのFEMによる歪みの解析結果を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0013】
本発明のタイヤはリムに組まれる。タイヤの内部には空気が充填され、タイヤの内圧が調整される。リムに組まれたタイヤはタイヤ-リム組立体とも呼ばれる。タイヤ-リム組立体は、リムと、このリムに組まれたタイヤとを備える。
【0014】
本発明において、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、正規状態と称される。
【0015】
本発明においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの切断面において、測定される。この測定では、左右のビード間の距離が、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致するように、タイヤはセットされる。なお、正規リムにタイヤを組んだ状態で確認できないタイヤの構成は、前述の切断面において確認される。
【0016】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0017】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0018】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0019】
本発明において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位である。サイドウォール部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイドウォール部を備える。
【0020】
本発明において、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の複素弾性率は、JIS K6394の規定に準拠して測定される。測定条件は以下の通りである。
初期歪み=10%
動歪み=±1%
周波数=10Hz
モード=伸長モード
温度=70℃
この測定では、試験片(長さ40mm×幅4mm×厚さ1mm)はタイヤからサンプリングされる。試験片の長さ方向は、タイヤの周方向と一致させる。タイヤから試験片をサンプリングできない場合には、測定対象の要素の形成に用いられるゴム組成物を170℃の温度で12分間加圧及び加熱して得られる、シート状の架橋ゴム(以下、ゴムシートとも称される。)から試験片がサンプリングされる。
本発明において複素弾性率は、70℃での複素弾性率で表される。
【0021】
[本発明の実施形態の概要]
[構成1]
本発明の一態様に係る重荷重用タイヤは、一対のビードと、一対の前記ビードの間を架け渡すカーカスと、前記カーカスの軸方向外側に位置する一対のサイドウォールと、前記サイドウォールの径方向内側に位置し、リムと接触する一対のチェーファーと、RFIDタグを含むタグ部材とを備え、前記ビードが、コアと、前記コアの径方向外側に位置する内側エイペックスと、前記内側エイペックスの径方向外側に位置する外側エイペックスとを備え、前記カーカスが、カーカスプライを備え、前記カーカスプライが、一対の前記ビードの間を架け渡すプライ本体と、前記プライ本体に連なり前記ビードで折り返される一対の折り返し部とを備え、タイヤの側面のうち、最大幅位置と前記折り返し部の端との間のゾーンに、凹みが設けられ、前記折り返し部の端の径方向外側において、前記タグ部材が、前記サイドウォールと前記外側エイペックスに接触し、前記タグ部材の少なくとも一部が、前記凹みの内端から外端までの長さの中間点の径方向外側に位置する。
【0022】
構成1のタイヤは、タイヤの側面のうち、最大幅位置と折り返し部の端との間のゾーンに凹みが設けられた形状を有している。これにより、上記凹みを有さないタイヤに比べて、タイヤ重量が低減される。
【0023】
構成1のタイヤでは、タグ部材が、サイドウォールと外側エイペックスに接触している。そのため、カーカスプライとRFIDタグとの間に外側エイペックスが位置する。カーカスプライと間隔をあけて、RFIDタグが配置されるので、カーカスプライがカーカスコードとしてスチールコードを含んでいたとしても、電波に乱れが生じにくい。このタイヤでは、RFIDタグと通信機器(図示されず)との間に良好な通信環境が形成される。RFIDタグへのデータの書き込みや、RFIDタグに記録されたデータの読み取りが、正確に行われる。
【0024】
構成1のタイヤでは、タグ部材の少なくとも一部が、凹みの内端から外端までの長さの中間点の径方向外側に位置するように配置される。これにより、タグ部材が、サイドウォールと外側エイペックスとの間における、凹みによる屈曲の影響が小さい位置に配置される。このタイヤでは、RFIDタグの損傷リスクが低減される。
構成1のタイヤは、軽量化を図りつつ、良好な通信環境の形成及びRFIDタグの損傷リスクの低減を達成できる。
【0025】
[構成2]
好ましくは、前述の[構成1]に記載のタイヤにおいて、前記RFIDタグが、前記中間点の径方向外側に位置する。
構成2のようにタイヤを整えることにより、凹みによる屈曲のRFIDタグへの影響が効果的に抑制される。このタイヤでは、損傷リスクが効果的に低減される。
【0026】
[構成3]
好ましくは、前述の[構成1]又は[構成2]に記載のタイヤにおいて、前記中間点が、前記チェーファーの外端の径方向外側から前記外側エイペックスの外端の径方向内側までの間に存在する。
【0027】
チェーファーの外端より径方向内側の領域は、インフレート時のサイドウォールの歪みが大きい領域である。中間点は、凹みによる歪みが発生しやすい位置である。そのため、中間点が、チェーファーの外端の径方向外側に存在すれば、中間点における大きな歪みの発生が低減される。凹みが設けられた形状を有するタイヤでは、中間点近傍のサイドウォールのゴムゲージが薄くなる。中間点が、外側エイペックスの外端より径方向内側に存在すれば、中間点近傍のサイドウォールが、外側エイペックスによる補強効果を受けることができる。そのため、中間点近傍のサイドウォールにおいて外部から衝撃を受けた際、カーカスコードの破断やクラックの発生が低減される。
構成3のタイヤでは、タグ部材における、大きな歪みの発生や外部からの衝撃による損傷の発生が効果的に抑制される。
【0028】
[構成4]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成3]のいずれかに記載のタイヤにおいて、前記サイドウォールの表面から前記タグ部材までの最短距離が3.5mm以上である。
構成3のタイヤでは、タグ部材がサイドウォールにより十分に保護されるため、損傷の発生が効果的に抑制される。
【0029】
[構成5]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成4]のいずれかに記載のタイヤにおいて、前記タグ部材の外端が前記チェーファーの外端の径方向外側に位置する。
【0030】
ビードの軸方向外側にはチェーファーの外端が位置する。チェーファーは、リム側から径方向外向きに拡がる。チェーファーの外端は、タイヤの製造においてクリースと呼ばれる波打ちが生じやすい箇所である。[構成5]のタイヤは、チェーファーの外端と干渉しにくい位置にタグ部材を配置できる。このタイヤでは、クリースの発生が低減される。
【0031】
[構成6]
好ましくは、前述の[構成5]に記載のタイヤにおいて、一対の前記サイドウォールのうち、第一のサイドウォールの側に、前記タグ部材が設けられる。このようにタイヤを整えることにより、タイヤに組み込まれるタグ部材の数が減るため、タグ部材の損傷の発生が効果的に抑制される。
【0032】
[構成7]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成6]のいずれかに記載のタイヤにおいて、前記タグ部材が、前記RFIDタグが架橋ゴムで被覆されたプレート状の部材であり、前記タグ部材の厚さが1.0mm以上2.5mm以下である。
このようにタイヤを整えることにより、RFIDタグの損傷リスクの低減が図られ、良好な通信環境が形成される。
【0033】
[本発明の実施形態の詳細]
図1は、本発明の一実施形態に係る、凹み90が設けられた形状を有する重荷重用タイヤ2(以下、単に「タイヤ2」とも称する。)の一部を示す。このタイヤ2は、トラック、バス等の車両に装着される。
図1においてタイヤ2はリムR(正規リム)に組まれた状態にある。
【0034】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面(以下、子午線断面)の一部を示す。図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
図2図1に示された断面の一部を示す。図2はタイヤ2のビード部を示す。
【0035】
図1において径方向に延びる一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。図1及び2において軸方向に延びる実線BBLは、ビードベースラインである。BBLは、リムRのリム径(JATMA等参照)を規定する線である。
【0036】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のチェーファー8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、一対のクッション層16、ストリップ層18、一対のスチール補強層20、層間ストリップ22、インナーライナー24、タグ部材26、及び凹み90を備える。
【0037】
トレッド4はカーカス12の径方向外側に位置する。トレッド4はトレッド面28において路面と接地する。トレッド4には溝30が刻まれる。
トレッド4は、ベース部32と、このベース部32の径方向外側に位置するキャップ部34とを備える。ベース部32は低発熱性の架橋ゴムで構成される。キャップ部34は耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムで構成される。キャップ部34がトレッド面28を含む。
【0038】
図1において符号PCで示される位置は赤道である。赤道PCはトレッド面28と赤道面との交点である。このタイヤ2のように赤道面上に溝30が位置する場合、溝30がないと仮定して得られる仮想トレッド面に基づいて赤道PCが特定される。
正規状態のタイヤ2において得られる、BBLから赤道PCまでの径方向距離がこのタイヤ2の断面高さ(JATMA等参照)である。
【0039】
それぞれのサイドウォール6はトレッド4の端に連なる。サイドウォール6はトレッド4の径方向内側に位置する。サイドウォール6はカーカス12の軸方向外側に位置する。符号PSで示される位置は、サイドウォール6の内端である。サイドウォール6の表面7は、タイヤ2の側面を構成する。サイドウォール6は耐カット性が考慮された架橋ゴムで構成される。サイドウォールの複素弾性率は2.0MPa以上6.0MPa以下である。
【0040】
符号PWで示される位置はタイヤ2の軸方向外端(以下、最大幅位置PW)である。模様や文字等の装飾が外面にある場合、最大幅位置PWは、装飾がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて特定される。タイヤ2は最大幅位置PWにおいて最大幅を示す。サイドウォール6は、最大幅位置PWの径方向内側の表面7に凹み90を有する。
正規状態のタイヤ2において得られる、第一の最大幅位置PWから第二の最大幅位置PW(図示されず)までの軸方向距離が、このタイヤ2の断面幅(JATMA等参照)である。
【0041】
図1において符号Hで示される長さはBBLから最大幅位置PWまでの径方向距離である。径方向距離Hは最大幅位置PWの径方向高さとも呼ばれる。
正規状態のタイヤ2において、最大幅位置PWの径方向高さHの、断面高さに対する比は0.40以上0.60以下である。
【0042】
それぞれのチェーファー8はサイドウォール6の径方向内側に位置する。チェーファー8はリムRと接触する。チェーファー8は、リムRと接触する面に嵌合部8aを有している。嵌合部8aは、タイヤ2とリムRとの密着性を高める。これにより、走行時のビード10の動きが効果的に低減され、ビード10の耐久性が向上する。符号PBで示される位置はチェーファー8の外端である。
チェーファー8は耐摩耗性が考慮された架橋ゴムで構成される。チェーファー8の複素弾性率は10MPa以上15MPa以下である。チェーファー8はサイドウォール6よりも硬質である。
【0043】
それぞれのビード10はチェーファー8の軸方向内側に位置する。ビード10はサイドウォール6の径方向内側に位置する。ビード10は、コア36と、コア36の径方向外側に位置するエイペックス38とを備える。
【0044】
コア36は周方向にのびる。コア36は、巻き回されたスチール製のワイヤを含む。コア36は略六角形の断面形状を有する。
エイペックス38はコア36の径方向外側に位置する。エイペックス38はコア36から径方向外向きにのびる。エイペックス38は外向きに先細りである。エイペックス38の外端PAは最大幅位置PWの径方向内側に位置する。エイペックス38の外端PAはチェーファー8の外端PBの径方向外側に位置する。
【0045】
エイペックス38は内側エイペックス40と外側エイペックス42とを備える。内側エイペックス40はコア36の径方向外側に位置する。外側エイペックス42は内側エイペックス40の径方向外側に位置する。
【0046】
内側エイペックス40は外向きに先細りである。内側エイペックス40は硬質な架橋ゴムで構成される。内側エイペックス40の複素弾性率は60MPa以上90MPa以下である。
【0047】
外側エイペックス42は、内側エイペックス40の外端PU付近において厚い。外側エイペックス42はこの厚い部分から内向きに先細りであり、外向きに先細りである。
外側エイペックス42の内端PG1はコア36の近くに位置する。
【0048】
図2において符号L1で示される長さは、BBLから外側エイペックス42の外端PG2までの径方向距離である。径方向距離L1は、外側エイペックス42の外端PG2の径方向高さとも呼ばれる。外側エイペックス42の外端PG2はエイペックス38の外端PAでもある。この径方向距離L1はビード10の径方向高さとも呼ばれる。外側エイペックス42の外端PG2はカーカス12の軸方向外側に位置する。
【0049】
このタイヤ2では、ビード部の剛性とタイヤ2の撓みと、をバランスよく整える観点から、ビード10の径方向高さL1の、最大幅位置PWの径方向高さHに対する比(L1/H)は0.55以上0.95以下の範囲で調整される。
【0050】
外側エイペックス42は架橋ゴムで構成される。外側エイペックス42は内側エイペックス40よりも軟質である。外側エイペックス42の複素弾性率は3.0MPa以上6.0MPa以下である。
【0051】
このタイヤ2のエイペックス38はエッジストリップ46をさらに備える。
エッジストリップ46は外側エイペックス42の軸方向外側に位置し、エイペックス38の外側面の一部を構成する。エッジストリップ46はチェーファー8の外端PBと、外側エイペックス42の内端PG1との間に位置する。
エッジストリップ46は架橋ゴムで構成される。エッジストリップ46は、チェーファー8より軟質であり、外側エイペックス42より硬質である。エッジストリップ46の複素弾性率は7.0MPa以上12MPa以下である。
【0052】
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6、及び一対のチェーファー8の内側に位置する。カーカス12は一対のビード10の間を架け渡す。このタイヤ2のカーカス12はラジアル構造を有する。
【0053】
カーカス12は少なくとも1枚のカーカスプライ48を備える。このタイヤ2のカーカス12は1枚のカーカスプライ48からなる。カーカスプライ48はビード10で折り返される。
【0054】
カーカスプライ48はプライ本体50と一対の折り返し部52とを備える。プライ本体50は一対のビード10の間、すなわち、第一のビード10と第二のビード10の間、を架け渡す。それぞれの折り返し部52は、プライ本体50に連なり、ビード10で折り返される。このタイヤ2の折り返し部52は、軸方向内側から外側に向かってビード10で折り返される。折り返し部52の端PFはチェーファー8の外端PBの径方向内側に位置する。プライ本体50と折り返し部52との間にビード10が挟まれる。折り返し部52の端PFは、サイドウォール6の内端PSの径方向外側に位置する。
【0055】
図示されないが、カーカスプライ48は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードはトッピングゴムで覆われる。それぞれのカーカスコードは赤道面と交差する。このタイヤ2のカーカスコードにはスチールコードが用いられる。
【0056】
図1において符号Nで示される長さは、BBLから折り返し部52の端PFまでの径方向距離である。径方向距離Nは、折り返し部52の端PFの径方向高さとも呼ばれる。
このタイヤ2では、折り返し部52の端PFの径方向高さNの、最大幅位置PWの径方向高さHに対する比(N/H)は0.25以上0.45以下である。
【0057】
ベルト14は4枚のベルトプライ54を備える。4枚のベルトプライ54は、第一ベルトプライ54A、第二ベルトプライ54B、第三ベルトプライ54C及び第四ベルトプライ54Dである。これらベルトプライ54は径方向に並ぶ。
このタイヤ2では、第二ベルトプライ54Bが最も広い幅を有し、第四ベルトプライ54Dが最も狭い幅を有する。
【0058】
図示されないが、各ベルトプライ54は並列した多数のベルトコードを含む。それぞれのベルトコードは赤道面に対して傾斜する。このタイヤ2のベルトコードには、スチールコードが用いられる。
【0059】
それぞれのクッション層16は、ベルト14の端において、ベルト14とカーカス12との間に位置する。クッション層16は、軟質な架橋ゴムで構成される。
【0060】
ストリップ層18はトレッド4の径方向内側においてカーカス12とベルト14との間に位置する。軸方向においてストリップ層18は第一のクッション層16と第二のクッション層16との間に位置する。ストリップ層18は架橋ゴムで構成される。
【0061】
それぞれのスチール補強層20はビード部に位置する。スチール補強層20はチェーファー8とカーカス12との間に位置する。スチール補強層20はチェーファー8と折り返し部52との間に位置する。スチール補強層20はビード10で折り返される。図示されないが、スチール補強層20は並列した多数のフィラーコードを含む。フィラーコードの材質はスチールである。
スチール補強層20の第一端20fは軸方向においてチェーファー8と折り返し部52との間に位置する。第一端20fは折り返し部52の端PFの径方向内側に位置する。第二端20sは軸方向においてインナーライナー24とプライ本体50との間に位置する。第二端20sの径方向位置は第一端20fのそれと概ね一致していればよく、第二端20sが第一端20fの径方向外側に位置していてもよく、第一端20fの径方向内側に位置していてもよい。
【0062】
それぞれの層間ストリップ22は軸方向においてチェーファー8とビード10のエイペックス38との間に位置する。層間ストリップ22は、折り返し部52の端PFとスチール補強層20の第一端20fとを覆う。
層間ストリップ22は、折り返し部52の端PFの径方向外側においてエイペックス38と接触する。言い換えれば、層間ストリップ22とエイペックス38との接触面は、エイペックス38の外側面の一部を構成する。
層間ストリップ22は、スチール補強層20の第一端20fの径方向外側においてチェーファー8と接触する。言い換えれば、層間ストリップ22とチェーファー8との接触面は、チェーファー8の内側面の一部を構成する。
層間ストリップ22は架橋ゴムで構成される。層間ストリップ22はサイドウォール6より硬質であり、チェーファー8より軟質である。層間ストリップ22の複素弾性率は7.0MPa以上12MPa以下である。
【0063】
インナーライナー24はカーカス12の内側に位置する。インナーライナー24は、架橋ゴムからなるインスレーション(図示されず)を介してカーカス12の内面に接合される。インナーライナー24はタイヤ2の内面を構成する。インナーライナー24は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。
【0064】
上述のように、このタイヤ2は、凹み90が設けられた形状を有するタイヤである。より具体的には、このタイヤ2では、サイドウォール6の表面7に、凹み90が設けられている。図2に示されるように、凹み90は内向きに凸な形状を有する。この凹み90は、周方向に途切れることなく延在する。
【0065】
図2において、符号CSは凹み90の外端である。符号CUは凹み90の内端である。このタイヤ2では、径方向において、凹み90の外端CSは、径方向において、エイペックス38の外端PAと最大幅位置PWの間に位置する。凹み90の内端CUは、径方向において、折り返し部52の端PFとチェーファー8の外端PBとの間に位置する。このタイヤ2では、その表面7のうち、最大幅位置PWと折り返し部52の端88との間のゾーンに、凹み90は設けられる。この凹み90は、タイヤ2の質量の低減に寄与する。
【0066】
図2において、符号CCは、凹み90の内端CUから外端CSまでの長さの中間点である。このタイヤ2では、中間点CCは、チェーファー8の外端PBの径方向外側から、エイペックス38の外端PAの径方向内側までの間に存在する。中間点CCは、歪みが発生しやすい位置である。チェーファー8の外端PBのより径方向内側の領域は、インフレート時のサイドウォールの歪みが大きい領域である。このタイヤ2では、中間点CCがチェーファー8の外端PBの径方向外側に存在するため、大きな歪みの発生が抑制される。また、このタイヤ2では、中間点CCがエイペックス38の外端PAの径方向内側に存在するため、エイペックス38による補強効果が得られる。
【0067】
タグ部材26はビード10の軸方向外側に位置する。このタイヤ2では、タグ部材26は第一のサイドウォール6の側にのみに設けられる。第一のサイドウォール6の側と、第二のサイドウォール6の側との両方にタグ部材26が設けられてもよい。タグ部材26の損傷発生の低減の観点から、一対のサイドウォール6のうち、第一のサイドウォール6の側に、タグ部材26が設けられるのが好ましい。
【0068】
図3はタグ部材26の平面図である。図4図3のIV-IV線に沿った断面図である。
タグ部材26はプレート状である。タグ部材26は長さ方向に長く、幅方向に短い。図1に示されるように、タイヤ2においてタグ部材26は、その幅方向の第一端26sがタイヤ2の径方向外側に、第二端26uが内側に位置するように配置される。
【0069】
タグ部材26はRFIDタグ56を含む。図3においてRFIDタグ56は、説明の便宜のために実線で示されるが、その全体が保護体58で覆われる。タグ部材26は、RFIDタグ56と保護体58とを備える。RFIDタグ56はタグ部材26の中心に位置する。保護体58は架橋ゴムで構成される。保護体58は外側エイペックス42の剛性と同程度の剛性を有する。このタイヤ2では、良好な通信環境の形成が考慮され、保護体58には高い電気抵抗を有する架橋ゴムが用いられる。保護体58は絶縁性の高いゴムからなる。
【0070】
詳述しないが、RFIDタグ56は、送受信回路、制御回路、メモリ等をチップ化した半導体チップ60と、アンテナ62とから構成される小型軽量の電子部品である。RFIDタグ56は、質問電波を受信すると、これを電気エネルギーとして使用し、メモリ内の諸データを応答電波として発信する。このRFIDタグ56は、受動式無線周波数識別トランスポンダの一種である。
【0071】
このタイヤ2では、タグ部材26はRFIDタグ56が架橋ゴムで被覆されたプレート状の部材である。RFIDタグ56の損傷リスクの低減と、良好な通信環境の形成の観点から、タイヤ2におけるタグ部材26の厚さは好ましくは1.0mm以上2.5mm以下である。このタイヤ2におけるタグ部材26の厚さは、RFIDタグ56の半導体チップ60におけるタグ部材26の最大厚さで表される。
なお、タイヤ2に埋め込む前のタグ部材26の長さTLは60mm以上80mm以下である。幅TWは10mm以上20mm以下である。
【0072】
タイヤ2におけるRFIDタグ56の位置は、その子午線断面におけるRFIDタグ56(具体的には、半導体チップ60)の径方向内端の位置により表される。図2において符号TUで示される位置が、タイヤ2におけるRFIDタグ56の位置としての、RFIDタグ56の径方向内端である。
【0073】
このタイヤ2では、タグ部材26は、折り返し部52の端PFの径方向外側において、外側エイペックス42の軸方向外側に位置する。タグ部材26は、サイドウォール6と外側エイペックス42に接触する。言い換えれば、タグ部材26は、サイドウォール6と外側エイペックス42との境界に存在する。このタイヤ2では、外側エイペックス42はサイドウォール6よりも硬質である。タグ部材26と外側エイペックス42との境界は外側エイペックス42の外側面の一部を構成する。言い換えれば、タグ部材26と外側エイペックス42との境界はエイペックス38の外側面の一部を構成する。タグ部材26は、外側エイペックス42より軟質なサイドウォール6側に位置している。タグ部材26は、外側エイペックス42とサイドウォール6との境界の一部を構成する。
【0074】
タグ部材26の第二端26uは、凹み90の中間点CCの径方向と略同じ位置に存在する。そのため、このタイヤ2では、タグ部材26の全体が、中間点CCの径方向外側に配置される構成となっている。本発明では、タグ部材26の全体が、中間点CCの径方向外側に位置することが好ましいが、それに限られない。本発明において、タグ部材26は、少なくともその一部が中間点CCの径方向外側に位置すればよい。すなわち、中間点CCが、径方向において、タグ部材26の第一端26sと第二端26uの間に位置しても良い。これにより、タイヤ2において、タグ部材26は、屈曲の程度が小さいビード部に配置される。なお、タグ部材26の効果的な歪み低減の観点から、タグ部材26の第二端26uは、径方向において、外側エイペックス42の外端PG2から中間点CCまでの間に位置することが好ましい。これにより、タグ部材26の全体が、中間点CCの径方向外側に配置される構成となる。
【0075】
このタイヤ2では、RFIDタグ56は、径方向において、中間点CCの径方向外側に位置する。より具体的には、RFIDタグ56の径方向内端TUは、径方向において、外側エイペックス42の外端PG2から中間点CCまでの間に位置する。タイヤ2において、外端PG2から中間点CCまでの間は屈曲の程度が小さい。このタイヤ2では、RFIDタグ56の損傷リスクが、効果的に低減される。
【0076】
図5は、凹み90が設けられた形状を有する重荷重用タイヤ2(タイヤサイズ=275/80R22.5)の有限要素法(Finite Element Method(FEM))による歪みの解析結果を示す概略図である。この解析では、タイヤを組むリムのサイズは22.5×7.50とした。タイヤの内圧は900kPaとした。タイヤに付与する荷重は33.83kNとした。
【0077】
図5に示されるFEMの歪みの解析結果において、歪の大きさは、図5の右下に示されるように色で表現されている。色が濃いほど歪が大きく、色が薄いほど歪が小さい。図5において、符号RVは、エイペックス38とサイドウォール6の境界において、歪みの度合いの変化が生じる位置である。
【0078】
図5から、外側エイペックス42の外端PG2から位置RVまでの歪みは、チェーファー8の外端PBから位置RVまでの歪みに比べ、外側エイペックス42とサイドウォール6の境界における歪みが小さいことが分かる。中間点CCは、径方向において、位置RVよりも外側に位置することが分かる。外側エイペックス42とサイドウォール6の境界における歪みは、径方向において、中間点CCより外側において連続的に小さいことが分かる。
【0079】
よって、本FEMの解析結果から、タイヤ2において、
・タグ部材26の全部が位置RVの径方向外側に位置することで、タグ部材26の歪みが低減できること、
・タグ部材26の全部が中間点CCの径方向外側に位置することで、タグ部材26の歪みが効果的に低減できること、及び
・RFIDタグ56の径方向内端TUが位置RVの径方向外側に位置することで、RFIDタグ56の損傷リスクが、低減できること、
・RFIDタグ56の径方向内端TUが中間点CCの径方向外側に位置することで、RFIDタグ56の損傷リスクが、効果的に低減できること、
が示唆された。
【0080】
このタイヤ2では、カーカスプライ48とRFIDタグ56との間に外側エイペックス42が位置する。金属要素であるカーカスコードを含むカーカスプライ48と間隔をあけて、RFIDタグ56が配置される。電波に乱れが生じにくいので、RFIDタグ56と通信機器(図示されず)との間に良好な通信環境が形成される。RFIDタグ56へのデータの書き込み及び、RFIDタグ56に記録されたデータの読み取りが、正確に行われる。
【0081】
このタイヤ2は、軽量化を図りつつ、良好な通信環境の形成及びRFIDタグ56の損傷リスクの低減を達成できる。
【0082】
ところでビード10の軸方向外側にはチェーファー8の外端PBが位置する。チェーファー8は、リムR側から径方向外向きに拡がる要素である。チェーファー8の外端PBは、タイヤ2の製造においてクリースと呼ばれる波打ちが生じやすい箇所である。チェーファー8の外端PB付近にタグ部材26が配置されるので、チェーファー8の外端PBとタグ部材26との干渉の程度によっては、クリースが生じることが懸念される。
【0083】
このタイヤ2では、タグ部材26の第二端26uはチェーファー8の外端PBの径方向外側に位置する。これにより、タグ部材26全体がチェーファー8の外端PBの径方向外側に配置される。チェーファー8の外端PBへのタグ部材26の干渉が効果的に抑制される。このタイヤ2では、クリースの発生が効果的に抑制される。この観点から、このタイヤ2では、タグ部材26の第二端26uはチェーファー8の外端PBの径方向外側に位置するのが好ましい。
【0084】
このタイヤ2では、タグ部材26の第一端26sは外側エイペックス42の外端PG2の径方向内側に位置する。これにより、タグ部材26によるサイドウォール部の撓みへの影響が効果的に抑制される。このタイヤ2では、良好な耐久性及び乗り心地が維持される。この観点から、タグ部材26の第一端26sは外側エイペックス42の外端PG2の径方向内側に位置するのが好ましい。
【0085】
このタイヤ2では、内側エイペックス40の外端PUが、径方向において、折り返し部52の端PFとRFIDタグとの間に位置する。これにより、硬質な内側エイペックス40がビード部の剛性を効果的に高める。そして、RFIDタグ56に作用する歪が効果的に低減される。このタイヤ2は、RFIDタグ56の損傷リスクを効果的に低減できる。また、RFIDタグ56の損傷リスクをさらに効果的に低減できる観点から、内側エイペックス40の外端PUが、径方向において、折り返し部52の端PFとRFIDタグとの間に位置し、さらにこの内側エイペックス40の外端PUが径方向において折り返し部52の端PFとチェーファー8の外端PBとの間に位置するのがより好ましい。
【0086】
このタイヤ2では、チェーファー8の外端PBはサイドウォール6の内端PSの径方向外側に位置し、サイドウォール6がチェーファー8の外端PBを覆う。チェーファー8の外端PBがサイドウォール6で覆われるので、この外端PBに作用する歪みが効果的に緩和される。このタイヤ2では、チェーファー8はサイドウォール6よりも硬質である。そのため、チェーファー8の外端PBをサイドウォール6で覆うことで、この外端PBに作用する歪みがより効果的に緩和される。このタイヤ2では、チェーファー8の外端PBを起点とする損傷の発生が効果的に抑制される。
【0087】
図2において、両矢印DUは、折り返し部52の端PFから凹み90の内端CUまでの径方向距離である。両矢印DSは、最大幅位置PWから凹み90の外端CSまでの径方向距離である。DUは10mm以上が好ましく、20mm以下が好ましい。DSは10mm以上が好ましく、20mm以下が好ましい。距離DUが10mm以上であれば、ビード耐久性が維持される。距離DSが10mm以上であれば、良好な耐カット性が維持される。距離DU及び距離DSが20mm以下であれば、十分な大きさを有する凹み90が確保できるため、タイヤ2の効果的な軽量化が図れる。
【0088】
このタイヤ2では、側面7のうち、最大幅位置PWから径方向内側部分は、前述の凹み90と、この凹み90の外端CSから径方向外向きに延びる外側部7aと、この凹み90の内端CUから径方向内向きに延びる内側部7bとを備える。
【0089】
図2において点線VLは、側面7に凹み90がないとして得られる仮想側面である。仮想側面VLは、外側部7aと内側部7bとの間に位置する。凹み90の外端CSは、外側部7aと仮想側面VLとの境界である。この凹み90の内端CUは、内側部7bとこの仮想側面VLとの境界である。
【0090】
このタイヤ2では、凹み90は、底部90cと、外側境界部90sと、内側境界部90uとを備える。
【0091】
外側境界部90sは、底部90cと、前述の外側部7aとを架け渡す。外側境界部90sのプロファイルは、外端CSにおいて外側部7aのプロファイルと接する。この外端CSは、外側境界部90sと外側部7aとの境界でもある。
【0092】
内側境界部90uは、底部90cと、前述の内側部7bとを架け渡す。内側境界部90uのプロファイルは、内端CUにおいて内側部7bのプロファイルと接する。この内端CUは、内側境界部90uと内側部7bとの境界でもある。
【0093】
図2において、符号CSbは底部90cの外端である。符号CUbは、この底部90cの内端である。このタイヤ2では、底部90cの径方向外側に、外側境界部90sが位置する。底部90cのプロファイルは、外端CSbにおいて外側境界部90sのプロファイルと接する。この外端CSbは、底部90cと外側境界部90sとの境界である。底部90cの径方向内側に、内側境界部90uが位置する。底部90cのプロファイルは、内端CUbにおいて内側境界部90uのプロファイルと接する。この内端CUbは、底部90cと内側境界部90uとの境界である。このタイヤ2の凹み90は、底部90cのプロファイル、外側境界部90sのプロファイル、及び内側境界部90uのプロファイルを有する。
【0094】
図2に示された、このタイヤ2の断面において、外側境界部90sのプロファイル、及び内側境界部90uのプロファイルは外側に凸な円弧で表される。この図2において、矢印Rsは、この外側境界部90sのプロファイルを表す円弧の半径である。矢印Ruは、この内側境界部90uのプロファイルを表す円弧の半径である。
【0095】
このタイヤ2では、半径Rs及び矢印Ruは40mm以上が好ましい。これにより、外側境界部90s及び内側境界部90uへの歪の集中が抑えられる。なお、この半径Rs及び半径Ruの上限は、凹み90の構成が考慮され適宜決められる。
【0096】
このタイヤ2では、底部90cのプロファイルは内側に凸な円弧で表される。このため、底部90cに作用する力が底部90c全体に効果的に分散される。このタイヤ2では、底部90cの特定の箇所に歪が集中し、クラック等の損傷が発生することが防止される。
【0097】
図2において、矢印Rbは底部90cのプロファイルを表す円弧の半径である。このタイヤ2では、この半径Rbは、前述の、折り返し部52の端PFから凹み90の内端CUまでの径方向距離DU及び最大幅位置PWから凹み90の外端CSまでの径方向距離DS、並びに、外側境界部90sのプロファイルを表す円弧の半径Rs及び内側境界部90uのプロファイルを表す円弧の半径Ruを考慮して、適宜決められる。底部90cにおける応力集中による損傷防止の観点から、この半径Rbは40mm以上が好ましい。
【0098】
図2において、両矢印HはBBLから最大幅位置PWまでの径方向距離である。両矢印HBは、凹み90の内端CUから外端CSまでの径方向距離である。このタイヤ2では、径方向距離Hに対する径方向距離HBの比は、0.45以上が好ましく、0.65以下が好ましい。この比が0.45以上に設定されることにより、凹み90の大きさが十分に確保され、タイヤ2の効果的な軽量化が可能となる。この観点から、この比は0.50以上がより好ましい。この比が0.65以下に設定されることにより、凹み90の大きさが適切に維持される。このタイヤ2では、凹み90による剛性への影響が効果的に抑制される。この観点から、この比は0.60以下がより好ましい。
【0099】
図2において、両矢印CDはサイドウォール6の表面7からタグ部材26までの最短距離である。このタイヤ2では、中間点CCからタグ部材26までの距離が、最短距離CDとなっている。最短距離CDは3.5mm以上が好ましく、7.0mm以下が好ましい。最短距離CDが3.5mm以上であれば、サイドウォール6の強度を確保できる。また、RFIDタグ56に対する外部からの衝撃が、サイドウォール6により低減される。このタイヤ2では、RFIDタグ56の損傷リスクが、効果的に低減される。最短距離CDが7.0mm以下であれば、十分な大きさを有する凹み90が確保できるため、タイヤ2の効果的な軽量化が可能となる。
【0100】
図2において符号R1で示される長さは、BBLからチェーファー8の外端PBまでの径方向距離である。径方向距離R1は、チェーファー8の外端PBの径方向高さとも呼ばれる。
図2において符号K2で示される長さは、BBLからサイドウォール6の内端PSまでの径方向距離である。径方向距離K2は、サイドウォール6の内端PSの径方向高さとも呼ばれる。
【0101】
このタイヤ2では、チェーファー8の外端PBの径方向高さR1の、サイドウォール6の内端PSの径方向高さK2に対する比(R1/K2)が2.00以上3.25以下であるのが好ましい。
比(R1/K2)が2.00以上に設定されることにより、サイドウォール6とチェーファー8との接合領域を十分確保できる。このタイヤ2では、クリースの発生が効果的に抑制される。この観点から、比(R1/K2)は2.20以上であるのがより好ましい。
比(R1/K2)が3.25以下に設定されることにより、タグ部材26の配置スペースが確保される。このタイヤ2は、チェーファー8の外端PBと干渉しにくい位置にタグ部材26を配置できる。このタイヤ2では、クリースの発生が抑制される。この観点から、比(R1/K2)は3.00以下であるのがより好ましい。
【0102】
このタイヤ2では、外側エイペックス42の外端PG2の径方向高さL1の、チェーファー8の外端PBの径方向高さR1に対する比(L1/R1)は1.08以上1.54以下であるのが好ましい。
比(L1/R1)が1.08以上に設定されることにより、タグ部材26の配置スペースが確保される。このタイヤ2は、チェーファー8の外端PBと干渉しにくい位置にタグ部材26を配置できる。このタイヤ2では、クリースの発生が抑制される。この観点から、比(L1/R1)は1.12以上であるのがより好ましい。
比(L1/R1)が1.54以下に設定されることにより、外側エイペックス42によるタイヤ2の撓みへの影響が抑制される。このタイヤ2では、良好な乗り心地が維持される。この観点から、比(L1/R1)は1.42以下であるのがより好ましい。
【0103】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、軽量化を図りつつ、良好な通信環境の形成及びRFIDタグの損傷リスクの低減を達成できる、重荷重用タイヤ2が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上説明された、軽量化を図りつつ、良好な通信環境の形成及びRFIDタグの損傷リスクの低減を達成できる技術は、種々のタイヤに適用されうる。
【符号の説明】
【0105】
2・・・タイヤ(重荷重用タイヤ)
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
7・・・表面
8・・・チェーファー
10・・・ビード
12・・・カーカス
14・・・ベルト
16・・・クッション層
18・・・ストリップ層
20・・・スチール補強層
22・・・層間ストリップ
24・・・インナーライナー
26・・・タグ部材
26s・・・タグ部材の第一端
26u・・・タグ部材の第二端
28・・・トレッド面
30・・・溝
32・・・ベース部
34・・・キャップ部
36・・・コア
38・・・エイペックス
40・・・内側エイペックス
42・・・外側エイペックス
46・・・エッジストリップ
48・・・カーカスプライ
50・・・プライ本体
52・・・折り返し部
54・・・ベルトプライ
56・・・タグ
58・・・保護体
60・・・半導体チップ
62・・・アンテナ
88・・・返し部の端
90・・・凹み
90c・・・凹みの底部
90s・・・凹みの外側境界部
90u・・・凹みの内側境界部
BBL・・・ビードベースライン
CL・・・赤道面
CS・・・凹みの外端
CSb・・・凹みの底部の外端
CU・・・凹みの内端
CUb・・・凹みの底部の内端
CC・・・凹みの内端から外端までの長さの中間点
PA・・・エイペックスの外端
PB・・・チェーファーの外端
PC・・・赤道
PF・・・折り返し部の端
PG1・・・外側エイペックスの内端
PS・・・サイドウォールの内端
PW・・・最大幅位置
R・・・リム
Rb・・・凹みの底部のプロファイルを表す円弧の半径
Rs・・・凹みの外側境界部のプロファイルを表す円弧の半径
Ru・・・凹みの内側境界部のプロファイルを表す円弧の半径
RV・・・歪みの度合いの変化が生じる位置
VL・・・仮想側面
CD・・・サイドウォールの表面からタグ部材までの最短距離
DS・・・タイヤの軸方向外端から凹みの外端までの径方向距離
DU・・・折り返し部の端から凹みの内端までの径方向距離
H・・・ビードベースラインからタイヤの軸方向外端までの径方向距離
HB・・・凹みの内端から外端までの径方向距離
K2・・・ビードベースラインからサイドウォールの内端までの径方向距離
L1・・・ビードベースラインから外側エイペックスの外端までの径方向距離
N・・・ビードベースラインから折り返し部の端までの径方向距離
R1・・・ビードベースラインからチェーファーの外端までの径方向距離
TU・・・RFIDタグの径方向内端
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードと、
一対の前記ビードの間を架け渡すカーカスと、
前記カーカスの軸方向外側に位置する一対のサイドウォールと、
前記サイドウォールの径方向内側に位置し、リムと接触する一対のチェーファーと、
RFIDタグを含むタグ部材と、
を備え、
前記ビードが、コアと、前記コアの径方向外側に位置する内側エイペックスと、前記内側エイペックスの径方向外側に位置する外側エイペックスとを備え、
前記カーカスが、スチールコードを含むカーカスプライを備え、
前記カーカスプライが、一対の前記ビードの間を架け渡すプライ本体と、前記プライ本体に連なり前記ビードで折り返される一対の折り返し部とを備え、
タイヤの側面のうち、最大幅位置と前記折り返し部の端との間のゾーンに、凹みが設けられ、
前記折り返し部の端の径方向外側において、前記タグ部材が、前記サイドウォールと前記外側エイペックスに接触し、
前記タグ部材の少なくとも一部が、前記凹みの内端から外端までの長さの中間点の径方向外側に位置する、
重荷重用タイヤ。
【請求項2】
前記RFIDタグが、前記中間点の径方向外側に位置する、請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項3】
前記中間点が、前記チェーファーの外端の径方向外側から前記外側エイペックスの外端の径方向内側までの間に存在する、請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項4】
前記サイドウォールの表面から前記タグ部材までの最短距離が3.5mm以上である、請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項5】
前記タグ部材の外端が前記チェーファーの外端の径方向外側に位置する、請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項6】
一対の前記サイドウォールのうち、第一のサイドウォールの側に、前記タグ部材が設けられる、請求項5に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項7】
前記タグ部材が、前記RFIDタグが架橋ゴムで被覆されたプレート状の部材であり、
前記タグ部材の厚さが1.0mm以上2.5mm以下である、
請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。