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特開2024-90039ケーブル、検出システム、ケーブルシステム、検出装置、検出方法、およびコンピュータプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090039
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ケーブル、検出システム、ケーブルシステム、検出装置、検出方法、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/293 20060101AFI20240627BHJP
   G01R 31/54 20200101ALI20240627BHJP
【FI】
G01B7/293
G01R31/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205674
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】奥村 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】西岡 亮平
(72)【発明者】
【氏名】山下 真直
(72)【発明者】
【氏名】伊田 尚馬
(72)【発明者】
【氏名】大西 庸嵩
【テーマコード(参考)】
2F063
2G014
【Fターム(参考)】
2F063AA42
2F063BA30
2F063BB01
2F063BB02
2F063BB05
2F063BC08
2F063BD11
2F063BD13
2F063CA28
2F063CA29
2F063DA02
2F063DA05
2F063DC08
2F063DD06
2F063GA01
2G014AA02
2G014AA23
2G014AB33
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で電線の状態を検出することができる技術を提供する。
【解決手段】本開示であるケーブルは、直流電力が与えられる電線と、前記電線の外面側に配置される1又は複数のコイルと、を備え、前記1又は複数のコイルは、前記電線の外面側に位置しかつ前記電線の長手方向に交差するコイル軸を有する。
【選択図】図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力が与えられる電線と、
前記電線の外面側に配置される1又は複数のコイルと、を備え、
前記1又は複数のコイルは、前記電線の外面側に位置しかつ前記電線の長手方向に交差するコイル軸を有する
ケーブル。
【請求項2】
前記複数のコイルは、前記電線の長手方向の所定位置に、前記電線回りに沿って配置される
請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記複数のコイルは、前記電線の長手方向に沿って配置される
請求項1に記載のケーブル。
【請求項4】
前記電線を被覆する被覆をさらに含み、
前記1又は複数のコイルは、前記被覆によって保持される
請求項1に記載のケーブル。
【請求項5】
前記電線を被覆する被覆と、
前記被覆の周囲に設けられ、前記1又は複数のコイルが前記電線の外面に配置されるように前記1又は複数のコイルを保持する環状保持部と、をさらに有する
請求項1に記載のケーブル。
【請求項6】
直流電力が与えられる電線の状態を検出する検出システムであって、
前記電線の外面側に配置される1又は複数のコイルと、
前記1又は複数のコイルの誘導起電力を検出する検出部と、
処理部と、を備え、
前記1又は複数のコイルは、前記電線の外面側に位置しかつ前記電線の長手方向に交差するコイル軸を有し、
前記処理部は、
前記電線の電流値を示す電流情報を取得する取得処理と、
前記検出部の出力と前記電流情報とに基づいて前記1又は複数のコイルの配置箇所における前記電線の曲率変化量を求める第1演算処理と、を実行する
検出システム。
【請求項7】
前記複数のコイルは、前記電線の長手方向の所定位置に、前記電線回りに沿って配置される
請求項6に記載の検出システム。
【請求項8】
前記複数のコイルは、前記電線の長手方向に沿って配置される
請求項6に記載の検出システム。
【請求項9】
前記電線を被覆する被覆の周囲に設けられ、前記1又は複数のコイルが前記電線の外面に配置されるように前記1又は複数のコイルを保持する環状保持部をさらに有する
請求項6に記載の検出システム。
【請求項10】
前記電線の電流を検出するセンサをさらに備え、
前記取得処理では、前記センサの出力に基づいて前記電流情報が取得される
請求項6に記載の検出システム。
【請求項11】
前記ケーブルを用いる対象装置から前記電流情報を受け付ける受付部をさらに備える
請求項6に記載の検出システム。
【請求項12】
前記曲率変化量は、前記電線の単位時間当たりの曲率変化量を含み、
前記処理部は、
前記単位時間当たりの曲率変化量を積算することで、前記1又は複数のコイルの配置箇所における曲率を経時的に求める第2演算処理をさらに実行する
請求項6に記載の検出システム。
【請求項13】
前記第2演算処理では、前記曲率が所定期間ごとにリセットされる
請求項12に記載の検出システム。
【請求項14】
前記処理部は、前記曲率に基づいて前記電線の予測残寿命を求める残寿命予測処理をさらに実行する
請求項12に記載の検出システム。
【請求項15】
前記残寿命予測処理では、経時的に求められた複数の前記曲率に基づいて前記曲率の極値を求め、前記極値のうち、経時的に隣接する極大値および極小値の差に基づいて、前記電線の累積疲労損傷度が求められ、前記電線の累積疲労損傷度に基づいて前記予測残寿命が求められる
請求項14に記載の検出システム。
【請求項16】
直流電力が与えられる電線と、
前記電線の外面側に配置される1又は複数のコイルと、
前記1又は複数のコイルの誘導起電力を検出する検出部と、
処理部と、を備え、
前記1又は複数のコイルは、前記電線の外面側に位置しかつ前記電線の長手方向に交差するコイル軸を有し、
前記処理部は、
前記電線の電流値を示す電流情報を取得する取得処理と、
前記検出部の出力と前記電流情報とに基づいて前記1又は複数のコイルの配置箇所における前記電線の曲率変化量を求める演算処理と、を実行する
ケーブルシステム。
【請求項17】
直流電力が与えられる電線の状態を検出する検出装置であって、
前記電線の電流値を示す電流情報を取得する処理と、前記電線の外面側に配置されるとともに、前記電線の外面側に位置しかつ前記電線の長手方向に交差するコイル軸を有する1又は複数のコイルの誘導起電力を検出した結果を示す出力と、前記電流情報とに基づいて前記1又は複数のコイルの配置箇所における前記電線の曲率変化量を求める演算処理と、を実行する処理部を備える
検出装置。
【請求項18】
直流電力が与えられる電線の状態を検出する検出方法であって、
前記電線の外面側に配置されるとともに、前記電線の外面側に位置しかつ前記電線の長手方向に交差するコイル軸を有する1又は複数のコイルの誘導起電力を検出する検出ステップと、
前記電線の電流値を示す電流情報を取得する取得ステップと、
前記1又は複数のコイルの誘導起電力を検出した結果を示す出力と前記電流情報とに基づいて前記1又は複数のコイルの配置箇所における前記電線の曲率変化量を求める演算処理を行う処理ステップと、を含む
検出方法。
【請求項19】
直流電力が与えられる電線の状態を検出する検出処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに
前記電線の電流値を示す電流情報を取得するステップと、
前記電線の外面側に配置されるとともに、前記電線の外面側に位置しかつ前記電線の長手方向に交差するコイル軸を有する1又は複数のコイルの誘導起電力を検出する検出部の出力と前記電流情報とに基づいて前記1又は複数のコイルの配置箇所における前記電線の曲率変化量を求めるステップと、を実行させる
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ケーブル、検出システム、ケーブルシステム、検出装置、検出方法、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両やロボットのアーム等に用いられるケーブルには、可動部分に配線されるものがある。このようなケーブルは、可動部分の動作に応じて屈曲変形又は伸長変形が繰り返される。
このような繰り返し変形されるような使用環境下においては、ケーブル内部の電線に疲労が生じ、最終的に電線に断線が生じることがある。電線に断線が生じると、ケーブルは、寿命に至ったものと判断される。
【0003】
このため、繰り返し変形されるケーブルには、電力線や信号線を伝送するための電線以外に、検知線が設けられることがある。
この検知線は、繰り返し変形されるような使用環境下において、電線よりも早く断線するように構成されている。よって、検知線の断線の有無を検知することで、電線に断線が生じる前に、電線の寿命が残り少ないことを検出することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1-2316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ケーブル等に用いられる撚線等の電線の疲労寿命は、変形時の曲率変化量や、変形回数等に応じて定まる。よって、電線の疲労寿命の予測を行うためには、変形を繰り返したときの曲率変化量を得る必要がある。
【0006】
屈曲変形又は伸長変形するケーブルの曲率変化量を求めるために、例えば、ケーブルの外面に歪ゲージを装着することが考えられる。この場合、歪ゲージの出力に基づいて、ケーブルの曲率変化量を求めることができる。
【0007】
ところで、歪ゲージによって歪を検出する場合、ブリッジ回路や、ブリッジ回路に電圧を供給する電源が必要となる。
例えば、稼働中の装置に含まれるケーブル(電線)の曲率変化量を検出しようとすると、稼働中の装置の近傍にブリッジ回路や、電源等を長期に亘って配置する必要がある。回路や電源が稼働中の装置の近傍に長期に亘って配置されると、装置周辺のスペースが長期に亘って消費されこととなり、好ましくない。
このため、回路や電源等を必要とせず、簡易な構成で曲率変化量や残寿命といった電線の状態を検出する技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示であるケーブルは、直流電力が与えられる電線と、前記電線の外面側に配置される1又は複数のコイルと、を備える。前記1又は複数のコイルは、前記電線の外面側に位置しかつ前記電線の長手方向に交差するコイル軸を有する。
【0009】
また、他の観点からみた本開示は、直流電力が与えられる電線の状態を検出する検出システムである。この検出システムは、前記電線の外面側に配置される1又は複数のコイルと、前記1又は複数のコイルの誘導起電力を検出する検出部と、処理部と、を備える。前記1又は複数のコイルは、前記電線の外面側に位置しかつ前記電線の長手方向に交差するコイル軸を有する。前記処理部は、前記電線の電流値を示す電流情報を取得する取得処理と、前記検出部の出力と前記電流情報とに基づいて前記1又は複数のコイルの配置箇所における前記電線の曲率変化量を求める第1演算処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、簡易な構成で電線の状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る検出システムの一例を示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態のケーブルの動きを説明するための図である。
図3A図3Aは、図1中、センサ部の拡大図である。
図3B図3Bは、図3Aに示すセンサ本体の断面図である。
図4図4は、処理装置の一例を示す図である。
図5図5は曲率演算処理の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、伸長状態のケーブル、および、屈曲状態のケーブルにおける磁束の状態を説明するための図である。
図7図7は、変換データの一例を示す図である。
図8図8は、曲率データの一例を示す図である。
図9図9は、寿命予測処理の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、曲率データの極値を説明するための図である。
図11図11は、疲労強度データの一例を示す図である。
図12図12は、疲労度データの一例を示す図である。
図13A図13Aは、第2実施形態に係る検出システムのセンサ本体を示す斜視図である。
図13B図13Bは、図13Aに示すセンサ本体の断面図である。
図14図14は、第3実施形態に係る検出システムを示す図である。
図15図15は、第4実施形態に係るケーブルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
最初に実施形態の内容を列記して説明する。
[実施形態の概要]
【0013】
(1)本開示であるケーブルは、直流電力が与えられる電線と、前記電線の外面側に配置される1又は複数のコイルと、を備える。前記1又は複数のコイルは、前記電線の外面側に位置しかつ前記電線の長手方向に交差するコイル軸を有する。
【0014】
直流電力が与えられている電線が屈曲変形又は伸長変形すると、変形部分における電線回りの磁束密度は、電線の曲率変化量に応じて変化する。
上記構成において、1又は複数のコイルのコイル軸は電線の長手方向に交差しているので、電線回りの磁束密度に変化が生じると、1又は複数のコイルには誘導起電力が生じる。つまり、1又は複数のコイルは、電線回りの磁束密度変化を検出し、その検出結果を誘導起電力として出力する。
よって、電線回りの磁束密度変化を示す誘導起電力には、変形する電線の曲率変化量が反映される。このため、1又は複数のコイルの誘導起電力に基づいて、電線の状態である曲率変化量を得ることができる。
つまり、本開示によれば、電源等を用いることなく、電線の曲率変化量を得ることができる。この結果、簡易な構成で電線の状態を検出することができる。
【0015】
(2)上記(1)のケーブルにおいて、前記複数のコイルは、前記電線の長手方向の所定位置に、前記電線回りに沿って配置されていてもよい。
この場合、所定位置における電線回りに沿った曲率変化量の分布を得ることができる。
【0016】
(3)上記(1)又は(2)のケーブルにおいて、前記複数のコイルは、前記電線の長手方向に沿って配置されていてもよい。
この場合、電線の長手方向に沿った曲率変化量の分布を得ることができる。
【0017】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つのケーブルにおいて、前記電線を被覆する被覆をさらに含む場合、前記1又は複数のコイルは、前記被覆によって保持されていてもよい。
この場合、1又は複数のコイルを保持するための部材を設けることなく、1又は複数のコイルを配置することができる。
【0018】
(5)また、上記(1)から(3)のいずれか1つのケーブルにおいて、前記電線を被覆する被覆と、前記被覆の周囲に設けられ、前記1又は複数のコイルが前記電線の外面に配置されるように前記1又は複数のコイルを保持する環状保持部と、をさらに有していてもよい。
この場合、1又は複数のコイルが環状保持部によって保持されるので、1又は複数のコイルの配置箇所を変更したり、1又は複数のコイルを追加的に設けたりすることができる。
【0019】
(6)また、他の観点からみた本開示は、直流電力が与えられる電線の状態を検出する検出システムである。この検出システムは、前記電線の外面側に配置される1又は複数のコイルと、前記1又は複数のコイルの誘導起電力を検出する検出部と、処理部と、を備える。前記1又は複数のコイルは、前記電線の外面側に位置しかつ前記電線の長手方向に交差するコイル軸を有する。前記処理部は、前記電線の電流値を示す電流情報を取得する取得処理と、前記検出部の出力と前記電流情報とに基づいて前記1又は複数のコイルの配置箇所における前記電線の曲率変化量を求める第1演算処理と、を実行する。
【0020】
上記構成によれば、電源等を用いることなく、電線の曲率変化量を得ることができる。この結果、簡易な構成で電線の状態を検出することができる。
【0021】
(7)上記(6)の検出システムにおいて、前記複数のコイルは、前記電線の長手方向の所定位置に、前記電線回りに沿って配置されていてもよい。
この場合、所定位置における電線回りに沿った曲率変化量の分布を得ることができる。
【0022】
(8)上記(6)又は(7)の検出システムにおいて、前記複数のコイルは、前記電線の長手方向に沿って配置されていてもよい。
この場合、電線の長手方向に沿った曲率変化量の分布を得ることができる。
【0023】
(9)上記(6)から(8)のいずれか1つの検出システムにおいて、前記電線を被覆する被覆の周囲に設けられ、前記1又は複数のコイルが前記電線の外面に配置されるように前記1又は複数のコイルを保持する環状保持部をさらに有していてもよい。
この場合、1又は複数のコイルが環状保持部によって保持されるので、1又は複数のコイルの配置箇所を変更したり、1又は複数のコイルを追加的に設けたりすることができる。
【0024】
(10)上記(6)から(9)のいずれか1つの検出システムにおいて、前記電線の電流を検出するセンサをさらに備える場合、前記取得処理では、前記センサの出力に基づいて前記電流情報が取得されるように構成してもよい。
この場合、センサによって直接電流情報を得ることができる。
【0025】
(11)上記(6)から(9)のいずれか1つの検出システムにおいて、前記ケーブルを用いる対象装置から前記電流情報を受け付ける受付部をさらに備えていてもよい。
この場合、前記ケーブルの電流を測定するセンサを持たなくても、対象装置から電流情報を得ることができる。
【0026】
(12)上記(6)から(11)のいずれか1つの検出システムにおいて、前記曲率変化量は、前記電線の単位時間当たりの曲率変化量を含む場合、前記処理部は、前記単位時間当たりの曲率変化量を積算することで、前記1又は複数のコイルの配置箇所における曲率を経時的に求める第2演算処理をさらに実行するように構成されていてもよい。
この場合、1又は複数の配置箇所における曲率の経時変化を求めることができる。
【0027】
(13)上記(12)の検出システムにおいて、前記第2演算処理では、前記曲率が所定期間ごとにリセットされることがある。
この場合、曲率が所定の基準値に対してずれが生じたとしてもそのずれを解消することができる。
【0028】
(14)上記(12)の検出システムにおいて、前記処理部は、前記曲率に基づいて前記電線の予測残寿命を求める残寿命予測処理をさらに実行するように構成されていてもよい。
この場合、処理部は、電線の残寿命予測を行うことができる。
【0029】
(15)また、上記(14)の検出システムにおいて、前記残寿命予測処理では、経時的に求められた複数の前記曲率に基づいて前記曲率の極値を求め、前記極値のうち、経時的に隣接する極大値および極小値の差に基づいて、前記電線の累積疲労損傷度が求められ、前記電線の累積疲労損傷度に基づいて前記予測残寿命が求められるように構成されていてもよい。
極大値と極小値との差は、電線が屈曲変形又は伸長変形したときの曲率変化量を表している。このため、極大値と極小値との差と、電線の変形時の曲率変化量に応じた電線の疲労強度を示す疲労強度データと、を用いることで、電線の累積疲労損傷度を求めることができる。
この結果、電線の疲労寿命の進行度合を把握することができ、電線の残寿命予測をより正確に行うことができる。
【0030】
(16)また、他の観点からみた本開示は、ケーブルシステムである。このケーブルシステムは、直流電力が与えられる電線と、前記電線の外面側に配置される1又は複数のコイルと、前記1又は複数のコイルの誘導起電力を検出する検出部と、処理部と、を備える。前記1又は複数のコイルは、前記電線の外面側に位置しかつ前記電線の長手方向に交差するコイル軸を有する。前記処理部は、前記電線の電流値を示す電流情報を取得する取得処理と、前記検出部の出力と前記電流情報とに基づいて前記1又は複数のコイルの配置箇所における前記電線の曲率変化量を求める演算処理と、を実行する。
【0031】
(17)他の観点からみた本開示は、直流電力が与えられる電線の状態を検出する検出装置である。この検出装置は、前記電線の電流値を示す電流情報を取得する処理と、前記電線の外面側に配置されるとともに、前記電線の外面側に位置しかつ前記電線の長手方向に交差するコイル軸を有する1又は複数のコイルの誘導起電力を検出した結果を示す出力と、前記電流情報とに基づいて前記1又は複数のコイルの配置箇所における前記電線の曲率変化量を求める演算処理と、を実行する処理部を備える。
【0032】
(18)他の観点からみた本開示は、直流電力が与えられる電線の状態を検出する検出方法である。この検出方法は、前記電線の外面側に配置されるとともに、前記電線の外面側に位置しかつ前記電線の長手方向に交差するコイル軸を有する1又は複数のコイルの誘導起電力を検出する検出ステップと、前記電線の電流値を示す電流情報を取得する取得ステップと、前記1又は複数のコイルの誘導起電力を検出した結果を示す出力と前記電流情報とに基づいて前記1又は複数のコイルの配置箇所における前記電線の曲率変化量を求める演算処理を行う処理ステップと、を含む。
【0033】
(19)さらに他の観点からみた実施形態は、直流電力が与えられる電線の状態を検出する検出処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムである。このコンピュータプログラムは、コンピュータに、前記電線の電流値を示す電流情報を取得するステップと、前記電線の外面側に配置されるとともに、前記電線の外面側に位置しかつ前記電線の長手方向に交差するコイル軸を有する1又は複数のコイルの誘導起電力を検出する検出部の出力と前記電流情報とに基づいて前記1又は複数のコイルの配置箇所における前記電線の曲率変化量を求めるステップと、を実行させる。
【0034】
[実施形態の詳細]
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、以下に記載する各実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0035】
〔第1実施形態の検出システムについて〕
図1は、第1実施形態に係る検出システムの一例を示すブロック図である。
図1中、検出システム1は、対象装置に配線されるケーブル2に用いられるシステムである。本実施形態における対象装置は、自動車等の車両である。
【0036】
ケーブル2は、車両において直流電力を伝送するための電力線である。ケーブル2は、例えば、車両が有する電源と、モータと、の間に配線される。ケーブル2は、電線8と、被覆10と、を含む。つまり、ケーブル2は、電線8を芯線とする被覆電線である。電線8は、銅、アルミニウム等の導体によって形成される。電線8は、複数の素線を撚り合わせた撚線であってもよいし、撚線を撚り合わせた撚撚線であってもよいし、単一の素線であってもよい。被覆10は、電線8の周囲に形成されている。被覆10は、樹脂によって形成される。
【0037】
なお、以下、ケーブル2の説明においては、互いに直交する3方向をX方向、Y方向、およびZ方向とする。また、図1に示すように、X方向のうちの一方向をX1方向、X1方向の反対方向をX2方向とする。Y方向のうちの一方向をY1方向、Y1方向の反対方向をY2方向とする。Z方向のうちの一方向をZ1方向、Z1方向の反対方向をZ2方向とする。
また、図1に示すように、伸長状態にあるケーブル2は、X方向に平行であるものとする。
【0038】
本実施形態の検出システム1は、ケーブル2が有する電線8の状態を検出する機能を有する。電線8の状態には、電線8が変形したときの曲率変化量や、曲率、累積疲労損傷度、予測残寿命等が含まれる。
検出システム1は、センサ部4と、処理装置6と、を含む。
【0039】
センサ部4は、ケーブル2(電線8)回りの磁束密度の変化を検出する機能を有する。センサ部4は、処理装置6に接続されている。センサ部4の出力は、処理装置6に与えられる。センサ部4は、センサ本体12と、検出部14と、を含む。
センサ本体12は、ケーブル2の長手方向ほぼ中央に設けられている。センサ本体12および検出部14については後に詳述する。
【0040】
処理装置6は、処理部6aと、記憶部6bと、出力部6cと、入力部6dと、を備えるコンピュータ等により構成される。
処理装置6は、電線8(ケーブル2)の曲率変化量、電線8の累積疲労損傷度、電線8の予測残寿命を求める機能を有する。処理装置6については、後に詳述する。
【0041】
処理装置6は、対象装置である車両が有する制御装置100に通信可能に接続されている。
制御装置100は、ケーブル2に与えられる直流電力の制御を行う装置である。よって、制御装置100には、ケーブル2に繋がる電路101に設けられた電流センサ102からの出力が与えられる。制御装置100は、電流センサ102の出力に基づいて、ケーブル2に流れる直流電力の電流値を示す電流情報を生成する。
制御装置100が生成する電流情報は、入力部6dを通じて処理装置6に与えられる。
【0042】
〔ケーブル2について〕
図2は、本実施形態のケーブル2の動きを説明するための図である。
図2に示すように、ケーブル2は、車両の可動部分104と、車両の固定部分106との間に配線される。
ケーブル2の第1端部2aは、車両の可動部分104に保持される。また、ケーブル2の第2端部2bは、車両の固定部分106に保持される。
第1端部2aは、伸長状態であるときのケーブル2のX1方向側の端部である。第2端部2bは、伸長状態であるときのケーブル2のX2方向側の端部である。
【0043】
可動部分104には、ブラケット104aが固定されている。ブラケット104aは、第1端部2aの外周に装着される。これにより、第1端部2aは、可動部分104に保持される。
固定部分106には、ブラケット106aが固定されている。ブラケット106aは、第2端部2bの外周に装着される。これにより、第2端部2bは、固定部分106に保持される。
【0044】
図2に示すように、可動部分104は、第1位置と、第2位置との間を固定部分106に対して相対移動する。
図2では、可動部分104が第1位置に位置するときのケーブル2を実線で示し、可動部分104が第2位置に位置するときのケーブル2を2点鎖線で示している。
可動部分104が第1位置に位置するとき、ケーブル2は伸長状態である。
可動部分104が第2位置に位置するとき、ケーブル2は屈曲状態である。
【0045】
ここで、本実施形態では、第1位置および第2位置は、X-Z平面上の位置であるとする。よって、可動部分104は、固定部分106を基準としてX-Z平面上を移動する。
また、ケーブル2は、X-Z平面上で屈曲変形又は伸長変形するものとする。
可動部分104は、第1位置と第2位置との間を繰り返し相対移動する。よって、ケーブル2は、可動部分104の移動に応じて、屈曲変形又は伸長変形する。
屈曲変形とは、曲率が増加する方向への変形である。伸長変形とは、曲率が減少する方向への変形である。
【0046】
〔センサ部4について〕
図3Aは、図1中、センサ部4の拡大図である。センサ部4は、上述のように、センサ本体12と、検出部14と、を含む。図3Aでは、ケーブル2が伸長状態のセンサ部4を示している。
【0047】
センサ本体12は、コイル20と、環状保持部22と、を含む。なお、図3Aでは、理解を容易とするため、環状保持部22は、2点鎖線で示されている。
コイル20は、電線8の外面8a側に配置されている。
また、上述のように、センサ本体12は、ケーブル2の長手方向ほぼ中央に設けられている。よって、コイル20もケーブル2の長手方向ほぼ中央に設けられている。
コイル20は、コイル本体20aと、基板20bと、を含む。コイル本体20aは、基板20bに実装されている。
コイル本体20aの巻き数は1である。コイル本体20aは無芯のコイルである。
基板20bは矩形板状である。基板20bは、コイル本体20aが実装された実装面20b1を有する。基板20bは、環状保持部22の内部に設けられている。これによって、コイル20は、環状保持部22に保持される。
【0048】
環状保持部22は、例えば、ゴム等の弾性素材によって形成された環状の部材であり、ケーブル2の周囲に設けられている。つまり、環状保持部22は、被覆10の周囲に設けられている。環状保持部22は、被覆10の外面10cに着脱可能に設けられている。
【0049】
環状保持部22は、コイル20が電線8の外面8a側に配置されるように、コイル20を保持する。
基板20bが環状保持部22に保持されかつケーブル2が伸長状態のとき、実装面20b1は、X-Z平面に平行かつケーブル2および電線8の中心軸cを含む平面に沿っている。
【0050】
本実施形態のコイル20は、着脱可能な環状保持部22によって保持されるので、コイル20の配置箇所を変更したり、コイル20を追加的に被覆10の周囲に設けたりすることができる。
【0051】
図3Bは、図3Aに示すセンサ本体12の断面図である。図3Bでは、基板20bの実装面20b1に沿った断面を示している。よって、図3Bに示す断面は、X-Z平面に平行かつケーブル2の中心軸cを含む平面に沿っている。
【0052】
図3Bに示すように、コイル20は、電線8の外面8a側に配置される。
コイル20と、電線8の外面8aとの間には、被覆10および環状保持部22の一部が介在している。
環状保持部22は、弾性素材で形成されているので、ケーブル2の屈曲変形又は伸長変形を許容する。よって、環状保持部22は、ケーブル2の状態(伸長状態および屈曲状態)に関わらず、コイル20を外面8a側で保持することができる。
【0053】
基板20bの実装面20b1に実装されたコイル本体20aのコイル面は、ケーブル2が伸長状態のときに、X-Z平面に平行かつケーブル2の中心軸cを含む平面に沿っている。
また、コイル本体20aのコイル軸20a1は、電線8の長手方向であるX方向に直交している。
なお、コイル面とは、コイル本体20aを構成するループ状の導体線20a2(導体パターン)の全体を含む平面をいう。本実施形態では、基板20bの実装面20b1がコイル面に相当する。
また、コイル軸20a1とは、ループ状の導体線20a2の中心を通過し、かつ、コイル面に直交する軸をいう。
【0054】
図3Aに示すように、検出部14は、コイル本体20aの両端間に接続されている。検出部14は、分圧抵抗等を含んで構成されており、コイル本体20aに生じる誘導起電力を検出する。つまり、コイル本体20aに誘導起電力が生じると、検出部14は、生じた誘導起電力に応じた電圧を出力する。つまり、検出部14の出力は、コイル本体20aの誘導起電力を示す。検出部14の出力は、処理装置6へ与えられる。
【0055】
〔処理装置6について〕
図4は、処理装置6の一例を示す図である。上述のように、処理装置6は、処理部6aと、記憶部6bと、出力部6cと、入力部6dと、を備える。
処理部6aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、量子プロセッサ等、コンピュータの制御に適合する種々のプロセッサである。
【0056】
記憶部6bは、例えば、フラッシュメモリ、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)等である。
記憶部6bには、処理部6aに実行させるためのコンピュータプログラムや、必要な情報が記憶されている。処理部6aは、記憶部6bのようなコンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、処理装置6が有する各種処理機能を実現する。
さらに、記憶部6bには、変換データ30、曲率データ31、疲労強度データ32、および疲労度データ33が記憶されている。これらデータについては、後に説明する。
【0057】
出力部6cは、処理部6aによる処理に関する各種情報を、外部へ向けて出力する機能を有する。出力部6cは、無線通信装置を含んでいてもよい。この場合、出力部6cは、無線通信によって、各種情報を出力する。また、出力部6cは、モニタや、インジケータ、スピーカを含んでいてもよい。この場合、出力部6cは、これらデバイスによって、各種情報を出力する。
入力部6dは、制御装置100からの電流情報を受け付けるためのインターフェース(受付部)である。
本実施形態の検出システム1は、入力部6dを有するので、電線8の電流を測定するセンサを持たなくても、対象装置から電流情報を得ることができる。
【0058】
処理部6aは、取得処理24、曲率演算処理26、および、残寿命予測処理28を行う機能を有する。
取得処理24は、電線8を流れる直流電力の電流値を示す電流情報を取得する処理である。
曲率演算処理26は、検出部14の出力と電流情報とに基づいてコイル20の配置箇所における電線8の曲率の経時変化を求める処理である。
曲率演算処理26は、第1演算処理26aと、第2演算処理26bと、を含む。
第1演算処理26aは、検出部14の出力と電流情報とに基づいてコイル20の配置箇所における電線8の曲率変化量を求める処理である。
第2演算処理26bは、曲率変化量を積算することで、コイル20の配置箇所における電線8の曲率を経時的に求める処理である。
残寿命予測処理28は、曲率演算処理26にて求めた曲率の経時変化に基づいて電線の残寿命を求める処理である。残寿命予測処理28では、経時的に求められた複数の曲率に基づいて電線8の累積疲労損傷度が求められ、電線8の累積疲労損傷度に基づいて予測残寿命が求められる。
【0059】
〔処理装置6が実行する処理について〕
処理部6aは、取得処理24(図4)を常時実行する。取得処理24において、処理部6aは、制御装置100からの出力に基づいて、電線8の電流値を示す電流情報を取得する。
処理部6aは、検出部14の出力に基づいて電流情報を経時的に取得する。処理部6aは、電流情報と、その電流情報を取得した時間と、を対応付け、電流データとして記憶部6bに記憶させる。
処理部6aは、取得処理24を実行しつつ、曲率演算処理26および残寿命予測処理28(図4)を実行する。
【0060】
〔曲率演算処理について〕
図5は曲率演算処理26の一例を示すフローチャートである。
曲率演算処理26において、処理部6aは、まず、曲率ρの初期値ρ0を0とし、時間tを1に設定する(ステップS1)。
曲率ρは、コイル20の配置箇所における電線8の曲率である。初期値ρ0は、曲率演算処理26が開始されたときの曲率ρの初期値である。
時間t(t=1,2,3・・・)は、処理部6aが検出部14(コイル20)の出力を取得する間隔であるサンプリング時間を単位時間としたときの離散時間を示している。
【0061】
次いで、処理部6aは、サンプリング時間が経過したか否かを判定する(ステップS2)。処理部6aは、処理の開始のタイミング、又は、過去直近にサンプリング時間が経過したと判定したタイミングを基準としてサンプリング時間が経過したか否かを判定する。
サンプリング時間は、上述のように処理部6aが検出部14の出力を取得するタイミング毎の時間間隔である。
【0062】
処理部6aは、サンプリング時間が経過するまでステップS2を繰り返す。
サンプリング時間が経過したと判定すると、処理部6aは、検出部14の出力を取得し(ステップS3)、磁束密度変化ΔBtを演算する(ステップS4)。
磁束密度変化ΔBtは、コイル20の配置箇所における磁束密度変化であって、サンプリング時間の間で生じた磁束密度変化である。
処理部6aは、下記式(1)に基づいて、磁束密度変化ΔBtを求める。
【0063】
【数1】
・・・(1)
【0064】
上記式(1)中、Vtは、コイル20の誘導起電力である。誘導起電力Vtは、検出部14の出力に基づいて求められる。
nは、コイル20の巻き数である。本実施形態では、巻き数nは、1である。
Rは、コイル20の投影面積である。コイル20の投影面積とは、コイル本体20aを構成するループ状の導体線20a2(図3B)によって囲まれるX-Z平面上の範囲の面積である。
Δtcは、サンプリング時間である。
【0065】
図5のように、磁束密度変化ΔBtを求めると、処理部6aは、磁束密度変化ΔBtと電流情報とに基づいて曲率変化量Δρtを取得する(ステップS5:第1演算処理)。
曲率変化量Δρtは、コイル20の配置箇所における電線8の曲率変化量であって、単位時間(サンプリング時間Δtc)当たりの曲率変化量である。
【0066】
直流電力が与えられている電線8が屈曲変形又は伸長変形すると、その変形部分における電線8回りの磁束密度は、電線8の曲率変化量に応じて変化する。
図6は、伸長状態のケーブル2、および、屈曲状態のケーブル2における磁束の状態を説明するための図である。
図6中、伸長状態のケーブル2には、ケーブル2(電線8)回りの磁束が生じている。
例えば、電線8が伸長状態から屈曲状態へ変形すると、屈曲部分の内側における電線8回りの磁束は互いに接近する。一方、屈曲部分の外側における電線8回りの磁束は互いに離れる。このため、屈曲部分の内側における磁束密度は大きくなるように変化し、屈曲部分の外側における磁束密度は小さくなるように変化する。
また、例えば、電線8の屈曲変形による曲率変化量が大きくなればなるほど、磁束密度変化もそれに伴って大きくなる。よって、屈曲部分又は伸長部分における電線8回りの磁束密度は、電線8の曲率変化量に応じて変化する。
【0067】
本実施形態において、コイル20のコイル軸20a1は電線8の長手方向(X方向)に交差しているので(図3B)、電線8回りの磁束密度に変化が生じると、コイル20には誘導起電力が生じる。つまり、コイル20は、電線8回りの磁束密度変化を検出し、その検出結果を誘導起電力として出力する。
上述のように、電線8回りの磁束密度は、電線8の曲率変化量に応じて変化する。よって、コイル20の誘導起電力Vtおよび誘導起電力Vtより求められる磁束密度変化ΔBtには、変形するケーブル2の曲率変化量が反映される。このため、コイル20の誘導起電力Vt(磁束密度変化ΔBt)に基づいて、電線8の状態である曲率変化量Δρtを得ることができる。
つまり、本実施形態によれば、電源等を用いることなく、電線8の曲率変化量Δρtを得ることができる。この結果、簡易な構成で電線の状態を検出することができる。
【0068】
なお、磁束密度変化ΔBtと、電線8の曲率変化量Δρtとの関係は、電線8の電流値によっても変化する。つまり、磁束密度変化ΔBtと、電線8の曲率変化量Δρtとの間には、一定の相関がある。
そこで、処理部6aは、磁束密度変化ΔBtを求めると、記憶部6bに記憶されている電流データおよび変換データ30を参照し、磁束密度変化ΔBtに応じた電線8の曲率変化量Δρtを求める。
変換データ30は、磁束密度変化ΔB、電線8の電流値、および、電線8の曲率変化量Δρの対応関係を示すデータである。
【0069】
図7は、変換データ30の一例を示す図である。図7では、変換データ30をグラフとして表している。図7では、横軸が電線8の曲率変化量Δρを示し、縦軸が磁束密度変化ΔBを示している。
図7中、グラフとして表した変換データ30は、複数の線図M1、M2、M3・・・Mkを含む。
複数の線図M1、M2、M3・・・Mkは、それぞれ、磁束密度変化ΔBと、電線8の曲率変化量Δρとの対応関係を示している。
また、複数の線図M1、M2、M3・・・Mkは、電線8の電流値が互いに異なる場合を示している。複数の線図M1、M2、M3・・・Mkに対応する各電流値は、電線8に流れる電流に応じて設定される。
【0070】
処理部6aは、電流データを参照し、現在の電流情報を得る。
処理部6aは、複数の線図M1、M2、M3・・・Mkの中から、現在の電流情報が示す電線8の電流値に応じた線図を選択する。処理部6aは、選択した線図を用いて、磁束密度変化ΔBtに応じた曲率変化量Δρtを求める。
これにより、処理部6aは、電線8の電流値および磁束密度変化ΔBtに応じた曲率変化量Δρtを求めることができる。
【0071】
なお、変換データ30は、電流情報および磁束密度変化ΔBから、電線8の曲率変化量Δρを求めることが可能なデータであればよく、実験やシミュレーション等によって求められたテーブルであってもよいし、数式であってもよい。
【0072】
図5中、ステップS5において曲率変化量Δρtを取得すると、処理部6aは、ステップS6へ進み、曲率変化量Δρtを積算し、電線8の曲率ρtを求める(ステップS6:第2演算処理)。
曲率変化量Δρtは、サンプリング時間Δtc毎の電線8の曲率の変化を示している。よって、曲率変化量Δρtを積算することで、電線8の曲率ρを求める。処理部6aは、求めた曲率ρを曲率データ31に登録する。曲率データ31は、曲率ρと時間tとを対応付けたデータであり、曲率ρの経時変化を示すデータである。
なお、ここで求める曲率ρは、曲率ρの相対的な変化が把握できればよく、電線8の曲率を示す実際の値であってもよいし、電線8の曲率の相対的な値であってもよい。
【0073】
次いで、処理部6aは、時間tをインクリメントし(ステップS7)、所定期間が経過したか否かを判定する(ステップS8)。
ステップS8において所定期間が経過していないと判定すると、処理部6aは、ステップS2へ戻り、同様の処理を繰り返す。
【0074】
図8は、曲率データ31の一例を示す図である。図8では、曲率データ31をグラフとして表している。図8では、横軸が時間tを示し、縦軸が曲率ρを示している。
【0075】
図8において、処理部6aが曲率演算処理26を開始すると、まず、時間tが0のときの曲率ρである初期値ρ0を0に設定する(図5中、ステップS1)。
次いで、処理部6aは、時間tが1のときの曲率変化量Δρ1を求める(図5中、ステップS3-S5)。
【0076】
処理部6aは、初期値ρ0に曲率変化量Δρ1を積算し、時間tが1のときの曲率ρ1を求める(図5中、ステップS6)。
その後、処理部6aは、時間tが2のときの曲率変化量Δρ2を求め、曲率ρ1に曲率変化量Δρ2を積算し、曲率ρ2を求める。
このように、処理部6aは、曲率演算処理を実行することで、順次、時間tごとに曲率ρtを求める。
図8に示すように、各時間それぞれの曲率ρtを含む曲率データ31は、曲率ρtの経時変化を示している。
【0077】
なお、本実施形態において、電線8が屈曲変形しているときの曲率変化量Δρは、プラスの値となる。逆に、電線8が伸長変形しているときの曲率変化量Δρは、マイナスの値となる。このため、曲率変化量Δρを積算することで曲率ρtが求められる。
【0078】
図5に示すように、ステップS8において所定期間が経過したと判定すると、処理部6aは、曲率ρtを0にし、ステップS2へ戻る。これにより、それまで積算された曲率ρtはリセットされる。
上記曲率ρtは、曲率演算処理26を開始したタイミングで0に設定される。つまり、曲率演算処理26を開始したタイミングでの電線8の状態が基準となる。
ここで、曲率演算処理26を継続して実行したとき、曲率変化量Δρtに誤差が含まれていると、その誤差が積算され曲率ρtが基準である0に対してずれが生じることがある。
これに対して、本実施形態では、曲率ρtは所定期間ごとにリセットされるので、曲率ρtが所定の基準値である0に対してずれが生じたとしてもそのずれを解消することができる。
【0079】
〔残寿命予測処理について〕
図9は、残寿命予測処理28の一例を示すフローチャートである。
残寿命予測処理28において、処理部6aは、まず、曲率データ31を参照し、曲率データ31に含まれる複数の曲率ρtのうち、最初に現れる極値を取得する(ステップS11)。
次いで、処理部6aは、曲率データ31に含まれる複数の曲率ρtのうち、次の極値を取得する(ステップS12)。
ステップS12は、後述するように、繰り返し実行される。処理部6aは、ステップS12が繰り返されるごとに、時間tの経過に従って現れる極値を順次取得する。
次いで、処理部6aは、ステップS12にて取得した極値と、その直前に取得した極値との間の振幅を求める(ステップS13)。
次いで、処理部6aは、求めた振幅に基づいて、電線8の累積疲労損傷度および予測残寿命を求める(ステップS14)。
電線8の累積疲労損傷度および予測残寿命を求めると、処理部6aは、求めた累積疲労損傷度を疲労度データ33に登録する(ステップS15)。
累積疲労損傷度を疲労度データ33に登録すると、処理部6aは、ステップS12へ戻り、次の極値を取得する(ステップS12)。
【0080】
図10は、曲率データ31の極値を説明するための図である。図10は、図8に示した曲率データ31と同じデータを示している。
図10に示す曲率データ31を参照し、処理を開始すると、処理部6aは、最初に表れる極値として、時間t3における曲率ρ3を取得する(図9中、ステップS11)。
図10に示すように、時間t3における曲率ρ3は、極大値である。
次いで、処理部6aは、次の極値を取得する(図9中、ステップS12)。処理部6aは、経時的に隣接する次の極値として、時間t6における曲率ρ6を取得する。
図10に示すように、時間t6における曲率ρ6は、極小値である。
次いで、処理部6aは、これら経時的に隣接する一対の極値の間の振幅を求める(図9中、ステップS13)。
処理部6aは、曲率ρ3と曲率ρ6との差である曲率ρの振幅A1を求める。
曲率ρの振幅A1は、時間t3から時間t6までの間に電線8の曲率が減少し伸長変形したときの曲率ρの変化量を示している。
極大値を示す時間t3は、屈曲変形から伸長変形に切り替わるタイミングである。また、極小値を示す時間t6は、伸長変形から屈曲変形に切り替わるタイミングである。
また、極大値を示す時間t8は、屈曲変形から伸長変形に切り替わるタイミングである。
【0081】
本実施形態では、経時的に隣接する極値同士の期間を1回の変形とカウントする。
よって、時間t3から時間t6の間は、1回の伸長変形とカウントされる。この1回の伸長変形における曲率変化量が振幅A1である。
また、時間t6から時間t8の間は、1回の屈曲変形とカウントされる。この1回の屈曲変形における曲率変化量が振幅A2である。
【0082】
振幅A1を求めると、処理部6aは、記憶部6bに記憶されている疲労強度データ32参照し、電線8の累積疲労損傷度および予測残寿命を求める(図9中、ステップS14)。
疲労強度データ32は、電線8が1回屈曲変形又は伸長変形したときの曲率ρの振幅Aと、破断繰返し回数Nと、の対応関係を示すデータを含む。破断繰返し回数Nは、一定の振幅Aで屈曲変形又は伸長変形が繰り返されたときに電線8が疲労破断するまでの変形回数である。
つまり、疲労強度データ32は、屈曲変形時又は伸長変形時の振幅Aと、電線8の疲労強度との対応関係を示すデータである。
【0083】
図11は、疲労強度データ32の一例を示す図である。なお、図11では、疲労強度データ32をグラフとして表している。
図11中、横軸は破断繰返し回数Nであり、縦軸は振幅Aである。
図11中、グラフとして表した疲労強度データ32は、線図Fを有する。
図Fは、振幅Aと、破断繰返し回数Nと、の対応関係を示している。
例えば、線図Fにおける点Pは、振幅Apで電線を繰り返し屈曲変形又は伸長変形させたときに、Np回変形が繰り返されると電力線16が破断に至ることを示している。
【0084】
処理部6aは、疲労強度データ32を参照し、図9中のステップS13で求めた振幅A1に対応する破断繰返し回数Nを求める。
なお、疲労強度データ32は、振幅Aから、破断繰返し回数Nを求めることが可能なデータであればよく、実験やシミュレーション等によって求められたテーブルであってもよいし、数式であってもよい。
【0085】
振幅A1に対応する破断繰返し回数Nを求めると、処理部6aは、電力線16の累積疲労損傷度Dを求める。
【0086】
処理部6aは、下記式(2)に基づいて、変形1回分の疲労損傷度dを求める。
疲労損傷度d=1/N ・・・(2)
【0087】
処理部6aは、上記式(2)で求めた疲労損傷度dを積算する。この疲労損傷度dの積算値が電線8の累積疲労損傷度Dである。
つまり、累積疲労損傷度Dは、線形累積損傷則、マイナー則と呼ばれる疲労度の予測方法に基づいて得られる疲労損傷の度合を示す値である。
【0088】
よって、図10中の振幅A1を求めると、処理部6aは、振幅A1を用いて疲労損傷度dを求め、電線8の累積疲労損傷度Dを求める。この場合、求められた疲労損傷度dは、最初の値である。よって、求められた疲労損傷度dは、そのまま、累積疲労損傷度Dとなる。
【0089】
累積疲労損傷度Dが1に達すると、電線8は寿命に到達し破断すると予測することができる。よって、残り寿命の予測値である予測残寿命は、下記式(3)によって求めることができる。
処理部6aは、電線8の累積疲労損傷度Dを求めると、下記式(3)に基づいて電線8の予測残寿命を求める。
予測残寿命=1-D ・・・(3)
【0090】
求められた累積疲労損傷度Dおよび予測残寿命は、出力部6cから外部へ向けて出力される。
累積疲労損傷度Dおよび予測残寿命を求めると、処理部6aは、累積疲労損傷度Dを疲労度データ33に登録する(図9中、ステップS15)。
図12は、疲労度データ33の一例を示す図である。図12に示すように、疲労度データ33には、時間tと、累積疲労損傷度Dとが対応付けて登録される。
この疲労度データ33によって、電線8の寿命の進行度合を把握することができる。
【0091】
振幅A1に基づいて累積疲労損傷度Dおよび予測残寿命を求め、累積疲労損傷度Dを疲労度データ33に登録すると、処理部6aは、図10中、時間t8における曲率ρ8を、次の極値(極大値)として取得する(図9中、ステップS12)。
さらに、処理部6aは、図10中、曲率ρ6と曲率ρ8との差である曲率ρの振幅A2を求める(図9中、ステップS13)。
処理部6aは、振幅A2を用いて疲労損傷度dを求め、現在の累積疲労損傷度Dに、振幅A2に対応する疲労損傷度dを加算し、新たな累積疲労損傷度Dおよび予測残寿命を求める(図9中、ステップS14)。
次いで、処理部6aは、新たな累積疲労損傷度Dを疲労度データ33に登録し(図9中、ステップS15)、処理を繰り返す。
【0092】
上記構成の検出システム1によれば、電線8の外面8a側に位置しかつ電線8の長手方向に交差するコイル軸20a1を有するコイル20を有し、処理部6aが、このコイル20の出力である検出部14の出力と、電流情報とに基づいてコイル20の配置箇所における電線8の、曲率変化量Δρtを求める第1演算処理26aを実行する。
これにより、電源等を用いることなく、電線8の、曲率変化量Δρtを得ることができ、簡易な構成で電線の状態を検出することができる。
【0093】
また、処理部6aは、単位時間当たりの曲率変化量Δρtを積算することで、コイル20の配置箇所における曲率を経時的に求める第2演算処理26bを実行することができるので、コイル20の配置箇所における曲率の経時変化を求めることができる。
【0094】
また、本実施形態の検出システム1の処理部6aは、曲率ρt(曲率データ31)に基づいて電線8の予測残寿命を求める残寿命予測処理28を実行するように構成されている。
残寿命予測処理28では、曲率ρtの経時変化に基づいて曲率ρtの極値を求め、極値のうち、経時的に隣接する極大値および極小値の差に基づいて、電線8の累積疲労損傷度Dが求められ、累積疲労損傷度Dに基づいて予測残寿命が求められる。
極大値と極小値との差(振幅A)は、電線8が屈曲変形又は伸長変形したときの曲率変化量を表している。このため、極大値と極小値との差と、電線の変形時の曲率変化量に応じた電線8の疲労強度を示す疲労強度データと、を用いることで、電線8の累積疲労損傷度Dを求めることができる。
この結果、電線8の疲労寿命の進行度合を把握することができ、電線8の残寿命予測をより正確に行うことができる。
【0095】
〔第2実施形態について〕
図13Aは、第2実施形態に係る検出システム1のセンサ本体12を示す斜視図である。また、図13Bは、図13Aに示すセンサ本体12の断面図である。図13Bは、Y-Z平面に平行かつセンサ本体12のX方向のほぼ中央を通過する平面に沿った断面を示している。
本実施形態では、センサ本体12が4つのコイル20を含んでいる点において第1実施形態と相違する。
【0096】
本実施形態では、4つのコイル20に対応して4つの検出部14が設けられる。よって、処理装置6には、4つのコイル20に生じる誘導起電力の検出結果を示す出力が、4つの検出部14から与えられる。
処理部6aは、4つの検出部14の出力それぞれを用いて、曲率変化量Δρtおよび曲率ρtを求める。よって、記憶部6bは、4つの検出部14に対応する4つの曲率データ31を記憶する。処理部6aは、4つの検出部14に対応する4つの曲率ρtを4つの曲率データ31に登録する。
処理部6aは、4つの曲率データ31を用いて電線8の累積疲労損傷度Dを求めてもよいし、4つの曲率データ31のうちの一部を用いて累積疲労損傷度Dを求めてもよい。
【0097】
ケーブル2が伸長状態のときに、電線8のZ方向両側に配置される2つのコイル20の実装面20b1は、X-Z平面に平行かつ中心軸cを含む平面に沿っている。
また、ケーブル2が伸長状態のときに、電線8のY方向両側に配置される2つのコイル20の実装面20b1は、X-Y平面に平行かつ中心軸cを含む平面に沿っている。
よって、4つのコイル20は、電線8回りに沿って等間隔に配置されている。
本実施形態では、電線8の長手方向の所定位置における電線8回りに沿った曲率変化量Δρtの分布を得ることができる。
この結果、より詳細な曲率ρtを得ることができる。
また、第1実施形態では、ケーブル2がX-Z平面上で屈曲又は伸長するものとした場合を例示したが、第2実施形態のセンサ本体12を用いれば、X-Z平面上での変形以外の変形についても検出することができ、電線8の変形を3次元的に検出し、曲率ρtや、累積疲労損傷度Dを求めることができる。
【0098】
〔第3実施形態について〕
図14は、第3実施形態に係る検出システム1を示す斜視図である。
本実施形態は、センサ部4を6つ含んでいる点、および、ケーブル2に繋がる電路101の電流を検出する電流センサ40を備えている点において第1実施形態と相違する。
【0099】
本実施形態では、電流センサ40を備えているので、取得処理24では、電流センサ40の出力に基づいて電流情報を取得することができ、直接的に電流情報を得ることができる。
【0100】
本実施形態では、センサ部4を6つ含んでいる。よって、処理装置6には、6つのコイル20に生じる誘導起電力の検出結果を示す出力が、6つの検出部14から与えられる。
処理部6aは、6つの検出部14の出力それぞれを用いて、曲率変化量Δρtおよび曲率ρtを求める。よって、記憶部6bは、6つの検出部14に対応する6つの曲率データ31を記憶する。処理部6aは、6つの検出部14に対応する曲率ρtを6つの曲率データ31に登録する。
処理部6aは、6つの曲率データ31を用いて電線8の累積疲労損傷度Dを求めてもよいし、6つの曲率データ31のうちの一部を用いて累積疲労損傷度Dを求めてもよい。
【0101】
6つのセンサ本体12それぞれが有するコイル20の実装面20b1(図3B)は、第1実施形態と同様、X-Z平面に平行かつ中心軸cを含む平面に沿っている。
また、6つのセンサ部4のセンサ本体12は、ケーブル2(電線8)の長手方向に沿って配置されている。よって、6つのセンサ本体12それぞれが有するコイル20は、電線8の長手方向に沿って配置されている。
よって、本実施形態によれば、電線8の長手方向に沿った曲率変化量Δρtの分布を得ることができる。
この結果、より詳細な曲率ρtを得ることができる。
【0102】
〔第4実施形態について〕
図15は、第4実施形態に係るケーブル2を示す断面図である。
本実施形態に係るケーブル2は、コイル20と、被覆10と、を備えている。
すなわち、本実施形態のケーブル2は、直流電力が与えられる電線8と、電線8の外面8a側に配置されるコイル20と、を備える。
コイル20の構成は、上記第1実施形態と同様である。
コイル20は、電線8の外面8a側に位置しかつ電線8の長手方向に交差するコイル軸20a1を有する。
なお、図15は、Y-Z平面に平行かつコイル20のX方向のほぼ中央を通過する平面に沿った断面を示している。
【0103】
コイル20は、被覆10によって保持されている。よって、コイル20を保持するための部材を設けることなく、コイル20を電線8の外面8a側に配置することができる。
コイル20の実装面20b1は、第1実施形態と同様、X-Z平面に平行かつ中心軸cを含む平面に沿っている。
【0104】
本実施形態のケーブル2によれば、電源等を用いることなく、電線8の曲率変化量Δρtを得ることができる。この結果、簡易な構成で電線8の状態を検出することができる。
【0105】
なお、本実施形態では、コイル20を被覆10によって保持した場合を例示したが、ケーブル2が、図3A図3Bで示した環状保持部22をさらに有していてもよい。
この場合、コイル20の配置箇所を変更したり、コイル20を追加的に設けたりすることができる。
【0106】
〔その他〕
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
例えば、上記実施形態では、センサ部4と、処理装置6と、を含む検出システム1を例示したが、この検出システム1と、ケーブル2と、によってケーブルシステムを構成してもよい。
【0107】
また、上記各実施形態では、対象装置が車両である場合を例示した。しかし、対象装置としては、ケーブル2が配線される可動部分を有する装置であればよく、例えば、ケーブル2が配線されるアームを有する産業用ロボットであってもよい。
この場合、前記アームが、第1リンクと、第2リンクと、両リンクを揺動可能に連結する関節部と、を有しており、ケーブル2の第1端部2aが第1リンクに保持され、ケーブル2の第2端部2bが第2リンクに保持される。このように、ケーブル2は、第1リンクと第2リンクとの間に配線される。
【0108】
また、上記各実施形態では、コイル20の巻き数が1である場合を例示したが、コイル20の巻き数は、2巻き、3巻きといったように複数の巻き数であってもよい。
【0109】
上記第1実施形態では、コイル20のコイル軸20a1が、電線8の長手方向に直交する場合を例示したが、コイル20は、コイル軸20a1が電線8の長手方向に交差するように配置されていればよい。このような配置とすることで、電線8回りの磁束がコイル20のコイル面を通過する。よって、コイル20は電線8回りの磁束密度変化を検出することができる。
また、上記第1実施形態では、センサ本体12をケーブル2の長手方向ほぼ中央に設けた場合を例示したが、センサ本体12は、ケーブル2の長手方向のいずれの箇所に設けてもよい。
【0110】
本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0111】
1 検出システム
2 ケーブル
2a 第1端部
2b 第2端部
4 センサ部
6 処理装置
6a 処理部
6b 記憶部
6c 出力部
6d 入力部
8 電線
8a 外面
10 被覆
10c 外面
12 センサ本体
14 検出部
16 電力線
20 コイル
20a コイル本体
20a1 コイル軸
20a2 導体線
20b 基板
20b1 実装面
22 環状保持部
24 取得処理
26 曲率演算処理
26a 第1演算処理
26b 第2演算処理
28 残寿命予測処理
30 変換データ
31 曲率データ
32 疲労強度データ
33 疲労度データ
40 電流センサ
100 制御装置
101 電路
102 電流センサ
104 可動部分
104a ブラケット
106 固定部分
106a ブラケット
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15