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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090041
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】熱処理装置および熱処理方法
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/26 20060101AFI20240627BHJP
   F27B 9/24 20060101ALI20240627BHJP
   F27D 7/02 20060101ALI20240627BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
F27B9/26
F27B9/24 R
F27D7/02 Z
F27D7/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205677
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100198247
【弁理士】
【氏名又は名称】並河 伊佐夫
(72)【発明者】
【氏名】浅井 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 則幸
(72)【発明者】
【氏名】佐治 秀一
【テーマコード(参考)】
4K050
4K063
【Fターム(参考)】
4K050AA02
4K050BA02
4K050BA07
4K050CA13
4K050CB03
4K050CC07
4K050CC10
4K050CD06
4K050CG04
4K050CG07
4K050CG16
4K050CG29
4K050DA05
4K050EA08
4K050EA10
4K063AA05
4K063AA12
4K063AA15
4K063BA02
4K063BA04
4K063CA05
4K063DA05
4K063DA13
4K063DA15
4K063DA22
4K063DA24
4K063DA34
(57)【要約】
【課題】高温下におけるローラの熱変形および有害ガスに起因する損耗の問題を改善することが可能な熱処理装置を提供する。
【解決手段】熱処理装置1は、被処理物Wを内部に収容する搬送容器4と、熱処理炉2とを含んで構成される。搬送容器4は、周囲が壁部によって取り囲まれた内部収容空間65と、壁部を貫通して内部収容空間65と外部とを連通させる連通部66とを備えている。熱処理炉2は、加熱室12においてローラ40の搬送面40a上にある搬送容器4を上方に持ち上げるリフト装置70と、加熱室12に配設され排気管80を通じてガスを外部に排気させる排気ポート80aとを備え、リフト装置70により搬送容器4がローラ搬送面40aよりも上方に持ち上げられた際に、搬送容器4の連通部66が排気ポート80aに係合するように構成されている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を内部に収容する搬送容器と、前記被処理物を熱処理する熱処理炉と、を含んで構成される熱処理装置であって、
前記搬送容器は、周囲が壁部によって取り囲まれた内部収容空間と、前記壁部を貫通して前記内部収容空間と外部とを連通させる連通部と、を備え、
前記熱処理炉は、
加熱室と、
該加熱室にて前記搬送容器を支持し搬送するローラと、
前記加熱室において前記ローラの搬送面上にある前記搬送容器を上方に持ち上げるリフト装置と、
前記加熱室に配設され、排気管を通じてガスを外部に排気する排気ポートと、
を備え、
前記リフト装置により前記搬送容器がローラ搬送面よりも上方に持ち上げられた際に、前記搬送容器の前記連通部が前記排気ポートに係合するように構成されている、熱処理装置。
【請求項2】
前記搬送容器は複数の前記連通部を備えている、請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記搬送容器は、第1の連通部と第2の連通部とを備え、
前記熱処理炉は、
前記加熱室に配設され、ガス供給管を通じてガスを供給する供給ポートを更に備え、
前記リフト装置により前記搬送容器がローラ搬送面よりも上方に持ち上げられた際に、前記搬送容器の前記第1の連通部が前記供給ポートに係合し、前記搬送容器の前記第2の連通部が前記排気ポートに係合するように構成されている、請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の熱処理装置を用いて被処理物の熱処理を行う方法であって、
前記被処理物を前記搬送容器内に収容する準備ステップと、
前記搬送容器を前記ローラにより前記加熱室内に搬送する搬送ステップと、
前記加熱室内に搬送された前記搬送容器をローラ搬送面よりも上方に持ち上げ、前記搬送容器の前記連通部を前記排気ポートに係合させた状態で前記被処理物を加熱する加熱ステップと、
を備えている熱処理方法。
【請求項5】
前記加熱ステップにおいて、前記搬送容器をローラ搬送面よりも上方に持ち上げた状態で前記加熱室内のローラを空転させる、請求項4に記載の熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は熱処理装置および熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炉床部分がローラで構成されたローラハース式の熱処理炉が知られている。ローラハース式の熱処理装炉では、ローラ上に載置された鋼やセラミックス等の被処理物がローラの回転により加熱室(加熱区間)に搬送され、ローラで支持された状態で熱処理される。
ここで、被処理物を2000℃以上の高温域で熱処理する場合には、ローラの熱変形や被処理物から発生する有害ガス(例えば酸化性ガス)による断熱壁やローラの損耗が問題となる。
【0003】
ローラの熱変形を防止するための手段として、下記特許文献1では、被処理物等を低速で繰り返し後退・前進動作させるオシレーション運動を実行する点が開示されている。例えば、加熱室内で停止状態にあるローラを一定時間経過毎に正回転もしくは逆回転させるオシレーション動作は、ローラに作用する荷重の方向を変えることができローラの熱変形を防止するための手段として有効である。
しかしながら、ローラを回転させるオシレーション動作は被処理物の移動を伴なう。このためオシレーション動作を行った場合には、ローラと被処理物との間(トレーが介在している場合はローラとトレーとの間)の滑りにより、被処理物が想定した位置に停止せず位置ずれを起こす場合があり、位置ずれに起因する干渉を回避するための特別な技術手段が必要となる。また頻度高くオシレーション動作を実施すればロールの摩耗が進行し低寿命となってしまう。
【0004】
一方、被処理物から発生する有害ガスによる損耗を防止するための手段としては、マッフル構造を採用することが考えられる。しかしながら、下記特許文献2で記載されているように、被処理物の搬送経路を取り囲むようにマッフルを設けた場合、マッフルの外側に位置する断熱壁は有害ガスから保護されるものの、マッフルの内部に位置するローラについては有害ガスから保護されず、十分な保護が図られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-94174号公報
【特許文献2】特開平8-61859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような事情を背景とし、高温下におけるローラの熱変形および有害ガスに起因する損耗の問題を改善することが可能な熱処理装置および熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
而してこの発明の第1の局面の熱処理装置は次のように規定される。即ち、
被処理物を内部に収容する搬送容器と、前記被処理物を熱処理する熱処理炉と、を含んで構成される熱処理装置であって、
前記搬送容器は、周囲が壁部によって取り囲まれた内部収容空間と、前記壁部を貫通して前記内部収容空間と外部とを連通させる連通部と、を備え、
前記熱処理炉は、
加熱室と、
該加熱室にて前記搬送容器を支持し搬送するローラと、
前記加熱室において前記ローラの搬送面上にある前記搬送容器を上方に持ち上げるリフト装置と、
前記加熱室に配設され、排気管を通じてガスを外部に排気する排気ポートと、
を備え、
前記リフト装置により前記搬送容器がローラ搬送面よりも上方に持ち上げられた際に、前記搬送容器の前記連通部が前記排気ポートに係合するように構成されている。
【0008】
このように規定された第1の局面の熱処理装置によれば、加熱室において搬送容器がローラ搬送面よりも上方に持ち上げられ、以降は被処理物および搬送容器の重量がローラに作用しないため、高温下におけるローラの熱変形を抑制することができる。
また搬送容器が持ち上げられた際、搬送容器の連通部が排気ポートに係合して、搬送容器内のガスは排気ポートを通じて加熱室外に排気される。このため、加熱により搬送容器内の被処理物から有害ガスが発生した場合でも、かかる有害ガスは加熱室には広がらず、加熱室に配設された断熱壁やローラが有害ガスにより損傷するのを回避することができる。
【0009】
ここで、前記搬送容器は複数の前記連通部を備えるようにすることができる(第2の局面)。この場合、複数の連通部をそれぞれ排気ポートに係合させて、搬送容器の複数箇所から搬送容器内のガスを排気するようにすることができる。また、一部の連通部を排気ポートに係合させずに、搬送容器内にガスを導入するための導入流路として使用することも可能である。
【0010】
この発明の第3の局面は次のように規定される。即ち、
第1の局面で規定の熱処理装置において、前記搬送容器は、第1の連通部と第2の連通部とを備え、
前記熱処理炉は、
前記加熱室に配設され、ガス供給管を通じてガスを供給する供給ポートを更に備え、
前記リフト装置により前記搬送容器がローラ搬送面よりも上方に持ち上げられた際に、前記搬送容器の前記第1の連通部が前記供給ポートに係合し、前記搬送容器の前記第2の連通部が前記排気ポートに係合するように構成されている。
このように規定された第3の局面の熱処理装置によれば、搬送容器の内部において、第1の連通部から第2の連通部に向かうガス流れを形成することができる。
【0011】
この発明の第4の局面の熱処理方法は次のように規定される。即ち、
第1の局面に規定の熱処理装置を用いて被処理物の熱処理を行う方法であって、
前記被処理物を前記搬送容器内に収容する準備ステップと、
前記搬送容器を前記ローラにより前記加熱室内に搬送する搬送ステップと、
前記加熱室内に装入された前記搬送容器をローラ搬送面よりも上方に持ち上げ、前記搬送容器の前記連通部を前記排気ポートに係合させた状態で前記被処理物を加熱する加熱ステップと、
を備えている。
このように規定された第4の局面の熱処理方法によれば、第1の局面と同等の効果を奏する。
【0012】
ここで、前記加熱ステップにおいて、前記搬送容器をローラ搬送面よりも上方に持ち上げた状態で前記加熱室内のローラを空転させれば、ローラ自身の自重に基づく熱変形も抑制することができる(第5の局面)。この場合、ローラは搬送容器と接していないため、ローラを回転(空転)させても摩耗は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態の熱処理装置の全体構成を示した図である。
図2図1の搬送容器の断面図である。
図3図1の熱処理炉における第1の加熱室を拡大して示した図である。
図4】第1の加熱室における搬送方向と直交する方向の断面図である。
図5】第1の加熱室における持上げ動作および搬送容器内ガスの排気動作の説明図である。
図6】搬送容器に2つの連通部を設けた変形例である。
図7】搬送容器に2つの連通部を設けた図6とは異なる変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施形態を以下に詳しく説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態の熱処理装置の概略全体構成を示している。同図で示す熱処理装置1は、鋼やセラミックス等の被処理物Wを連続的に熱処理するもので、被処理物Wを内部に収容する搬送容器4と、被処理物Wを熱処理するローラハース式の熱処理炉2と、を含んで構成されている。
【0016】
搬送容器4は、図2で示すように、底壁部61、側壁部62および上壁部63を有し、全体として直方体形状をなしている。その内部には、周囲が前記壁部61,62,63によって取り囲まれた内部収容空間65が設けられている。壁部の一部(例えば上壁部63)は他の壁部から分離可能とされており、分離した際に生じる開口を通じて内部収容空間65に被処理物Wが収容可能とされている。
搬送容器4の上壁部63には、上方に突出する形態で筒状(煙突状)の連通部66が設けられている。この連通部66は、搬送容器4内のガスを排気するために設けられたもので、上壁部63を貫通して内部収容空間65と外部とを連通させている。
この搬送容器4に用いられる材料は、その加熱温度等に応じて選択することができ、耐熱合金、黒鉛などのカーボン材料、C/Cコンポジットを例示することができる。本例において、被処理物Wを内部に収容した搬送容器4はトレー3に載せられた状態で熱処理炉2のローラ40に支持され、搬送される。
【0017】
熱処理炉2は、図1で示すように、略円筒状の鋼製の炉体5を備えている。炉体5の図中左側には装入用の入口6が形成され、また炉体5の図中右側には取出用の出口7が形成されている。これら入口6および出口7には、それぞれエアシリンダ式の開閉装置18により開閉駆動される扉8および扉9が設けられている。即ち、本例では図中左側から装入された搬送容器4が図中右方向に向かって搬送される。
【0018】
炉体5の内部は、搬送方向に沿って、前室10、第1の加熱室12、第2の加熱室14、および冷却室16の四つの区間に分けられている。各室の間には、それぞれエアシリンダ式の開閉装置19が設けられ、各室に形成された開口の扉20,21,22を開閉駆動させている。
【0019】
前室10は、加熱室12,14内に大気が侵入するのを防止する区間で、真空ポンプ25に接続された脱気用の配管26および図示を省略したN2供給装置に接続されたN2ガス供給用の配管27がそれぞれ接続されている。入口6から搬送容器4が装入され、扉8が閉じられると、前室10内が雰囲気ガス(N2ガス)で置換される。
【0020】
第1の加熱室12および第2の加熱室14は、予め定められたヒートパターンに基づいて被処理物Wを加熱処理する区間で、内部に耐熱性の断熱材30を有しており、その断熱材30が断熱壁31を構成している。断熱壁31の内側は被処理物Wおよび搬送容器4を収容する収容室32とされており、収容室32には加熱手段としての電熱式のヒータ35が設けられている。また収容室32には、図示を省略するガス導入管を通じて雰囲気ガス(N2ガス)が導入可能とされている。
【0021】
図3は、熱処理炉2における第1の加熱室12を拡大して示した図である。
第1の加熱室12において、収容室32の下方には、持上げ手段としてのリフト装置70が設けられている。リフト装置70は、図3で示すように、昇降ロッド71と、昇降ロッド71を所定のストロークで昇降させる駆動部72と、搬送方向に沿って各ローラ40の間に配設された複数の棒状をなした持上杆73と、持上杆73の基端部および昇降ロッド71の先端部に連結され昇降ロッド71の動きを持上杆73に伝える連結板75と、備えている。
リフト装置70では、昇降ロッド71の動きに連動して持上杆73がローラ40,40間のすきまを昇降し、その上昇時、持上杆73の先端面はローラ搬送面40aより上方に突出可能とされている。即ち、リフト装置70による持上杆73を上昇させる動作(持上げ動作)によって、第1の加熱室12内に位置する搬送容器4は、ローラ搬送面40a(図5参照)から上方に所定距離持ち上げられることとなる。
【0022】
第1の加熱室12における各収容室32の上部には、排気管80が設けられている。詳しくは、下向きに延びてその先端部80aが収容室32内の所定高さに位置する態様で排気管80が設けられている。この排気管80を含む排気ガス流路上には図示を省略する排気用ポンプが設けられており、かかる排気用ポンプを作動させることで、先端部80aの開口から吸引されたガスは、排気管80を含む排気ガス流路を通じて外部に排気される。
【0023】
この排気管80は、搬送容器4内のガスを外部に排気する際に用いられるもので、収容室32内に位置する排気管80の先端部80aは、搬送容器4の連通部66と係合可能な排気ポートとされている。上記リフト装置70で搬送容器4が持ち上げられた場合、搬送容器4の連通部66はこの排気ポート80aと係合し、以降は搬送容器4内のガスが排気ポート80aおよび排気管80を通じて外部に排気される。
以上、第1の加熱室12のリフト装置70および排気管80について説明したが、第2の加熱室14についても同様のリフト装置70および排気管80を備えている。
【0024】
第2の加熱室14に続く冷却室16は、被処理物Wを冷却する区間である。図1で示すように、冷却室16は、雰囲気ガス冷却用のクーラ36と雰囲気ガス循環用のファン(図示省略)を備えている。また、出口7からの大気の侵入を防ぐため、真空ポンプ37に接続された脱気用の配管38および図示を省略したN2供給装置に接続されたN2ガス供給用の配管39がそれぞれ接続されている。
【0025】
本例の熱処理炉2では、図1で示すように、前室10、第1の加熱室12、第2の加熱室14および冷却室16の各室にそれぞれ1つの搬送容器4が収容可能とされている。
【0026】
熱処理炉2を構成する各室には、搬送用のローラ40が搬送方向に沿って並設されている。ローラ40はステンレス材や耐熱鋳鋼などからなる金属製のローラを用いることもできるが、1100℃以上の温度で使用した場合に変形が生じやすいため、本例では耐熱性が高く2000℃以上でも強度低下が少ないC/Cコンポジット製のローラを用いている。なお、本例ではトレー3についてもC/Cコンポジット製のものを用いている。
【0027】
前室10、第1の加熱室12、第2の加熱室14、および冷却室16の各室内に配置された複数のローラ40は、それぞれローラ群42,43,44,45を構成している。これらローラ群42,43,44,45はそれぞれ独立駆動し、トレー3上の搬送容器4を搬送方向下流側(図1中右方向)に順次搬送する。下流側の処理室に搬送された搬送容器4は各室に設置された検知センサ47からの信号に基づいて所定の位置に停止するように構成されている。
【0028】
図4は、第1の加熱室12の断面図である。同図で示すように、全体として棒状をなすローラ40は、その両端部が支持部材52により回転自在に支持されている。軸方向の中央部分には一対の太径部50,50が鏡面対称に形成されており、これら一対の太径部50,50によって形成された凹部51にトレー3が収容可能とされている。また、ローラ40の一方の端部(図中左側の端部)には駆動力を伝達させるためのスプロケット54,55が固設されている。58は、ローラ群43に含まれる複数のローラ40を回転させるための駆動モータである。
【0029】
次に、熱処理装置1における一連の熱処理動作について説明する。被処理物Wを内部に収容した搬送容器4が準備されると、先ずローラ群42を駆動させ搬送容器4が前室10に装入される(図1参照)。前室10内の搬送容器4の位置は前室10に設けられた検知センサ47からの信号に基づいて規定される。扉8が閉じられると真空ポンプ25を用いて減圧し、室内の大気を室外に放出する。前室10における真空引きが完了した後、前室10内に配管27を通じてN2ガスを供給し、前室10内を雰囲気ガス(N2ガス)で置換する。
【0030】
その後、前室10の出側の扉20および第1の加熱室12の入側の扉20を開いて、ローラ群42,43を駆動させ、搬送容器4を第1の加熱室12内に移送し、扉20を閉じる。第1の加熱室12内に搬送された搬送容器4は、第1の加熱室12に設けられた検知センサ47からの信号に基づいて所定の位置に停止する。そして第1の加熱室12内の被処理物Wは、所定のヒートパターンに基づいて加熱処理される。この際の最高処理温度としては2100℃を例示することができる。
【0031】
ここで本例では、第1の加熱室12において持上げ動作および搬送容器内ガスの排気動作が実行される。詳しくは、検知センサ47からの信号に基づいて、搬送用のローラ4の回転が停止すると、図5(I)で示すように、搬送容器4は、連通部66が排気ポート80aの直下となる位置で停止する。続いて、リフト装置70が持上げ動作を開始し、図5(II)で示すように、持上杆73の先端面で支持された搬送容器4がローラ搬送面40aから上方に所定距離δだけ持ち上げられる。搬送容器4が持ち上げられた状態で、加熱室12のローラ40は空転させておく。ローラ40自身の自重に基づく熱変形を抑制するためである。
【0032】
一方、搬送容器4が持ち上げられた状態で、搬送容器4の連通部66は排気ポート80aと係合し搬送容器内ガスの排気動作が実行され、搬送容器4内のガスが排気ポート80aおよび排気管80を通じて外部に排気される。
【0033】
そして第1の加熱室12での加熱処理が終了すると、リフト装置70の持上杆73が下降し搬送容器4がローラ搬送面40a上に戻され、再び搬送容器4の移送が可能な状態となる。
【0034】
第1の加熱室12での加熱処理が終了した後、第1の加熱室12の出側の扉21および第2の加熱室14の入側の扉21を開いて、ローラ群43,44を駆動させ、搬送容器4を第2の加熱室14内に移送し、扉21を閉じる。第2の加熱室14内に搬送された搬送容器4は、第2の加熱室14に設けられた検知センサ47からの信号に基づいて所定の位置に停止する。そして第2の加熱室14の被処理物Wは、所定のヒートパターンに基づいて引き続き加熱処理される。この第2の加熱室14においても加熱処理中は、第1の加熱室12の場合と同様に、持上げ動作および搬送容器内ガスの排気動作が実行される。
【0035】
第2の加熱室14での加熱処理が終了した後、第2の加熱室14の出側の扉22および冷却室16の入側の扉22を開いて、ローラ群44,45を駆動させ、搬送容器4を冷却室16内に移送し、扉22を閉じる。冷却室16では、雰囲気ガスをクーラ36で冷却しながら循環させて被処理物Wを冷却する。そして冷却後、扉9を開いて搬送容器4を搬出すれば、被処理物Wの熱処理に関する一連の動作が完了する。
【0036】
以上のように本実施形態の熱処理装置1によれば、加熱室12,14において搬送容器4がローラ搬送面4aよりも上方に持ち上げられ、以降は被処理物Wおよび搬送容器4の重量がローラ40に作用しないため、高温下におけるローラ40の熱変形を抑制することができる。
また搬送容器4が持ち上げられた際、搬送容器4の連通部66が排気ポート80aに係合して、搬送容器4内のガスは排気ポート80aを通じて加熱室12,14外に排気される。このため、加熱により搬送容器4内の被処理物Wから有害ガスが発生した場合でも、かかる有害ガスは加熱室12,14内に広がらず、加熱室12,14内に配設された断熱壁31やローラ40が有害ガスにより損傷するのを回避することができる。
【0037】
次に本実施形態における変形例について説明する。
上記実施形態は搬送容器4に1つの連通部66を設けた例であったが、複数の連通部を設けることも可能である。図6は、搬送容器4の連通部として第1の連通部66Aと第2の連通部66Bを設けた変形例である。
またこの例では、加熱室12の側に、第2の連通部66Bと係合可能な排気ポート80aを設けるとともに、第1の連通部66Aと係合可能な供給ポート82aを設けている。かかる供給ポート82aは下向きに延びるガス供給管82の端部に形成されており、供給管82の他方の端部は窒素等の雰囲気ガス供給源(図示省略)に接続されている。
【0038】
このように構成された図6の例では、搬送容器4が持ち上げられた際、搬送容器4の第1の連通部66Aが供給ポート82aに係合するとともに、搬送容器4の第2の連通部66Bが排気ポート80aに係合するため、図6(B)で示すように、第1の連通部66Aから第2の連通部66Bに向かうガス流れを搬送容器4の内部において形成することができる。
【0039】
図7は、搬送容器に2つの連通部を設けた図6とは異なる変形例である。
この例では、搬送容器4の連通部として底壁部61に設けられた開口(孔状)の第1の連通部67Aと上壁部63に設けられた筒状の第2の連通部67Bを備えている。
またこの例では、加熱室12の側に、第2の連通部67Bと係合可能な排気ポート80aを設けるとともに、第1の連通部67Aと係合可能な供給ポート83aを設けている。かかる供給ポート83aはリフト装置70の持上杆73と同期して昇降する上向きのガス供給管83の端部に形成されており、供給管83の他方の端部は窒素等の雰囲気ガス供給源(図示省略)に接続されている。
この図7の例においても、第1の連通部67Aから第2の連通部67Bに向かうガス流れを搬送容器4の内部において形成することができる。なお、図7の例のように搬送容器4とは別体にトレー3が設けられている場合、第1の連通部67Aと略同芯状の開口がトレー3にも設けられている。
【0040】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。例えば上記実施形態では搬送容器とトレーを別体で構成したが、これらを一体に構成することも可能である。また搬送容器の形状は直方体形状に限定されるものではなく、加熱室の形状に合わせて適宜変更可能である。また連通部を設ける位置や連通部の形態も適宜変更可能である。また加熱室および搬送容器に導入されるガスは、窒素ガスに限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更可能である。また上記実施形態では加熱室にて持上げ動作および搬送容器内ガスの排気動作を実行したが、冷却室においてもこれらの動作を実行することも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 熱処理装置
2 熱処理炉
4 搬送容器
12 第1の加熱室
14 第2の加熱室
40 ローラ
40a ローラ搬送面
61 底壁部
62 側壁部
63 上壁部
65 内部収容空間
66,66A,66B,67A,67B 連通部
70 リフト装置
80 排気管
80a 先端部(排気ポート)
82,83 供給管
82a,83a 先端部(供給ポート)
W 被処理物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7