(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090042
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】エレクトロクロミックパネル表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1523 20190101AFI20240627BHJP
【FI】
G02F1/1523
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205678
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100209048
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 元嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(72)【発明者】
【氏名】田中 理
【テーマコード(参考)】
2K101
【Fターム(参考)】
2K101AA22
2K101DA01
2K101DB03
2K101DB04
2K101DB06
2K101DB07
2K101DC02
2K101DC13
2K101DC14
2K101DC25
2K101DC52
2K101EG52
(57)【要約】
【課題】 過剰な電圧の印加による電解質やエレクトロクロミック材料の劣化を防ぎ、高速駆動が可能な、エレクトロクロミックパネル表示装置を提供すること。
【解決手段】 本発明は、基板上に、第1の電極層、電荷蓄積層、電解質層、エレクトロクロミック表示層、第2の電極層、及び透明基材を順次積層されてなる表示パネルを駆動するエレクトロクロミックパネル表示装置であって、電解質層に、ルイス酸性が所定値よりも高い化合物を、アニオンレセプターとして添加する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、第1の電極層、電荷蓄積層、電解質層、エレクトロクロミック表示層、第2の電極層、及び透明基材を順次積層されてなる表示パネルを駆動するエレクトロクロミックパネル表示装置であって、
前記電解質層に、ルイス酸性の強度が強い化合物を、アニオンレセプターとして添加したことを特徴とする、エレクトロクロミックパネル表示装置。
【請求項2】
前記化合物は、ホウ素原子およびアルミニウム原子を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミックパネル表示装置。
【請求項3】
前記アニオンレセプターとして、前記化合物と、リチウム塩とを併用する、請求項1または2に記載のエレクトロクロミックパネル表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロクロミックパネル表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶方式を利用した調光デバイスが提案されている。しかし、液晶方式は偏光板を使用するため、50%以上の透過率の実現が不可能である。そこで、電圧印加による電気化学的酸化還元反応により、発消色するエレクトロクロミック材料を用いたエレクトロクロミック方式が注目されている。エレクトロクロミック方式は、偏光板を使用しないため、50%以上の透過率の実現が可能である。
【0003】
エレクトロクロミック方式は、電気エネルギーによる可逆的な光学特性変化で、電気化学的な酸化還元反応によって色調の変化が引き起こされる。これは、二次電池における充電・放電と類似の現象を利用した装置であると考えられる。
【0004】
二次電池の一つである典型的なリチウムイオン電池では、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)などのリチウム塩が電解質として用いられている。
【0005】
電解液中ではカチオン種であるリチウムイオン(Li+)が各電極へ移動する。つまり、リチウムイオン(Li+)の移動が電気の流れを担っている。
【0006】
電解質で使用される塩は、二次電池の性能に影響を及ぼすものであるため、高伝導性であることが望ましい。そこで、ルイス酸性の高いホウ素原子を有する高分子とリチウム塩とを併用することによって、リチウム塩の対アニオンがホウ素原子に配位することにより、リチウム塩の解離を促進し、対アニオンの移動を拘束することで、リチウムイオン輸率を上昇させ、イオン伝導性を増大させる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、リチウムイオン二次電池におけるカチオン輸率をより確実に高めることができるイオン伝導媒体に関する技術が開示されている。
【0009】
エレクトロクロミック方式は、偏光板を使用しないため、50%以上の透過率の実現が可能である。しかし、エレクトロクロミック方式は、液晶方式と比較して駆動速度が遅い。これは、液晶方式は液晶分子のねじれを利用した方式であることに対し、エレクトロクロミック方式は、その原理に化学反応を利用しているためである。
【0010】
エレクトロクロミック方式において、電気エネルギーによる可逆的な光学特性変化で、電気化学的な酸化還元反応によって色調の変化が引き起こされる。そのため、高い電圧を印加することにより、高速駆動が可能になる。しかし、過剰な電圧の印加は、電解質やエレクトロクロミック材料の劣化をもたらす。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、過剰な電圧の印加による電解質やエレクトロクロミック材料の劣化を防ぎ、高速駆動が可能な、エレクトロクロミックパネル表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
【0013】
すなわち、本発明の第1の態様は、基板上に、第1の電極層、電荷蓄積層、電解質層、エレクトロクロミック表示層、第2の電極層、及び透明基材を順次積層されてなる表示パネルを駆動するエレクトロクロミックパネル表示装置であって、電解質層に、ルイス酸性が所定値よりも高い化合物を、アニオンレセプターとして添加したことを特徴とする、エレクトロクロミックパネル表示装置である。
【0014】
また、本発明の第2の態様は、化合物が、ホウ素原子およびアルミニウム原子を含む、第1の態様のエレクトロクロミックパネル表示装置である。
【0015】
さらに、本発明の第3の態様は、アニオンレセプターとして、化合物と、リチウム塩とを併用する、第1または第2の態様のエレクトロクロミックパネル表示装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のエレクトロクロミックパネル表示装置によれば、過剰な電圧の印加による電解質やエレクトロクロミック材料の劣化を防ぎ、高速駆動を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るエレクトロクロミックパネル表示装置を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るエレクトロクロミックパネル表示装置におけるエレクトロクロミック表示層と電解質層との間でなされるイオンの相互作用を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るエレクトロクロミックパネル表示装置を示す断面図である。
【0020】
すなわち、本発明の実施形態に係るエレクトロクロミックパネル表示装置10は、背面基板7上に、背面電極層6、電荷蓄積層5、電解質層4、エレクトロクロミック表示層3、透明電極層2、及び透明基材1を、順次積層されてなる表示パネルを駆動するエレクトロクロミックパネル表示装置10であって、電解質層4に、ルイス酸性の強度が強いホウ素原子およびアルミニウム原子を含有した化合物を、アニオンレセプターとして添加し、リチウム塩と併用する。ルイス酸性の強度は、BX3>AlX3>FeX3>GaX3>SbX5>InX3>SnX4>AsX5>ZnX2>CdX2>HgX2(Xはハロゲン元素)であり、ホウ素原子およびアルミニウム原子を含有したハロゲン化合物は、ルイス酸性の強度が強い。
【0021】
透明基材1は、発色を視覚的に見るためのもので、透明電極層2は、発色を起こすために用いられる電極である。
【0022】
透明電極層2の上での電気化学反応を誘起させるため、透明電極層2の透明基材1側の逆側に、エレクトロクロミック表示層3が塗布される。
【0023】
電解質層4には、液体、無機固体、高分子、及びゲル等が用いられる。
【0024】
発色電極である透明電極層2の電気化学反応で費やされる電荷量と同じ電荷量が、対極である背面電極層6の電荷蓄積層5でも消費される。
【0025】
これらの各層全体は、背面基板7によって支持され、透明電極層2と背面電極層6とがシール8によって張り合わされる。
【0026】
このような構成のエレクトロクロミックパネル表示装置10は、電気エネルギーによる可逆的な光学特性変化で、電気化学的な酸化還元反応によって色調の変化が引き起こされる。このように、エレクトロクロミックパネル表示装置10は、二次電池における充電・放電と類似の現象を利用した装置であると考えられる。
【0027】
そこで、エレクトロクロミックパネル表示装置10では、電解質層4において、ルイス酸性が高いホウ素原子やアルミニウム原子などを含有した化合物を、アニオンレセプターとして、リチウム塩と併用する。
【0028】
これにより、リチウム塩の対アニオンが、ホウ素原子に配位することにより、リチウム塩の解離を促進し、対アニオンの移動を拘束することで、リチウムイオン輸率を上昇させ、イオン伝導性を増大させることができる。
【0029】
これによって、過剰な電圧の印加によるエレクトロクロミックパネル表示装置10の電解質やエレクトロクロミック材料の劣化を防ぎ、エレクトロクロミックパネル表示装置10の高速駆動を可能にする。
【0030】
次に、以上のように構成した本発明の実施形態に係るエレクトロクロミックパネル表示装置の作用について説明する。
【0031】
図2は、本発明の実施形態に係るエレクトロクロミックパネル表示装置におけるエレクトロクロミック表示層と電解質層との間でなされるイオンの相互作用を示す模式図である。
【0032】
図2(a)は、電解質層4に、ルイス酸性が高い物質が添加されていない相互作用を示し、
図2(b)は、電解質層4に、ルイス酸性が高い化合物が添加された場合の相互作用を示している。
【0033】
電解質層4に、ルイス酸性が高い物質が添加されていない場合、
図2(a)に示すように、電解質層4では、リチウムイオン(Li
+)とアニオン(X
-)とが相互作用する。
【0034】
一方、
図2(b)に示すように、電解質層4に、ルイス酸性が高い化合物(
図2中では、一般的にBR
3として示す)が添加されると、電解質層4では、ルイス酸がアニオン(X
-)と優先的に相互作用する。これによって、リチウム塩の解離が促進され、リチウムイオン(Li
+)は、活性が増加し、移動し易くなる。
【0035】
上記のような作用により、本実施形態のエレクトロクロミックパネル表示装置10によれば、過剰な電圧の印加による電解質や、エレクトロクロミック材料の劣化が抑えられ、高速駆動が可能となる。
【0036】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0037】
1・・透明基材
2・・透明電極層
3・・エレクトロクロミック表示層
4・・電解質層
5・・電荷蓄積層
6・・背面電極層
7・・背面基板
8・・シール
10・・エレクトロクロミックパネル表示装置