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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090053
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】打ち込み工具
(51)【国際特許分類】
   B25C 7/00 20060101AFI20240627BHJP
   B25C 1/04 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B25C7/00 A
B25C1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205694
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157912
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 健
(74)【代理人】
【識別番号】100074918
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】森脇 康介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘之
【テーマコード(参考)】
3C068
【Fターム(参考)】
3C068BB01
3C068CC02
3C068HH02
3C068HH09
(57)【要約】
【課題】コンタクトアームを作動方向に移動させようとする慣性力が発生したとしても、コンタクトアームの付勢荷重を大きくしたり、メインバルブの反応を鈍感にしたりすることなく、安全性を確保できる打ち込み工具を提供する。
【解決手段】締結対象物にファスナーを打ち込む打ち込み工具10において、締結対象物に接触させて押し付けることで第1の方向に移動可能なコンタクトアーム26と、前記コンタクトアーム26が前記第1の方向に規定量移動したことを条件としてファスナーの打ち込み動作を開始させる駆動部13と、前記第1の方向に慣性力が生じたときに前記駆動部13による打ち込み作動を規制する規制部40と、を備えるようにした。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結対象物にファスナーを打ち込む打ち込み工具であって、
締結対象物に接触させて押し付けることで第1の方向に移動可能なコンタクトアームと、
前記コンタクトアームが前記第1の方向に規定量移動したことを条件としてファスナーの打ち込み動作を開始させる駆動部と、
前記第1の方向に慣性力が生じたときに前記駆動部による打ち込み作動を規制する規制部と、
を備える、
打ち込み工具。
【請求項2】
前記規制部は、前記第1の方向に慣性力が生じたときに前記コンタクトアームが前記規定量まで移動するのを規制する、
請求項1に記載の打ち込み工具。
【請求項3】
前記規制部は、前記第1の方向に慣性力が生じたときに前記コンタクトアームに当接し、前記コンタクトアームが前記規定量まで移動するのを規制する、
請求項2に記載の打ち込み工具。
【請求項4】
前記規制部は、前記第1の方向に慣性力が生じたときに前記コンタクトアームに側方から当接する、
請求項3に記載の打ち込み工具。
【請求項5】
前記規制部は、前記第1の方向に移動可能な可動部と、前記可動部を前記コンタクトアームの側部に当接する方向に誘導する誘導部とを有する、
請求項4に記載の打ち込み工具。
【請求項6】
前記誘導部は、前記コンタクトアームの側方に向けて突出しており、
前記可動部は、前記誘導部に沿って移動することで、前記コンタクトアームの側方に誘導される、
請求項5に記載の打ち込み工具。
【請求項7】
前記コンタクトアームは、前記可動部が当接する部位に、前記可動部と係合可能な係合部を有する、
請求項6に記載の打ち込み工具。
【請求項8】
前記規制部は、前記第1の方向とは反対方向である第2の方向に前記可動部を付勢する付勢部を有する、
請求項5に記載の打ち込み工具。
【請求項9】
前記規制部は、一端側に位置するウエイト部と、他端側に位置する当接部と、を有し、前記第1の方向に慣性力が生じたとき、前記ウエイト部と前記当接部との間に位置して前記第1の方向と直交する軸部を支点に、前記ウエイト部が前記第1の方向に回動する一方、前記当接部が前記コンタクトアームに近づく方向に回動し、
前記当接部は、前記コンタクトアームに近づく方向に回動することで、前記コンタクトアームに当接可能となる、
請求項3に記載の打ち込み工具。
【請求項10】
前記当接部は、前記コンタクトアームの側部に近づく方向に回動する、
請求項9に記載の打ち込み工具。
【請求項11】
前記規制部は、前記第1の方向に慣性力が生じたときに前記コンタクトアームに上方から当接可能となる、
請求項3に記載の打ち込み工具。
【請求項12】
前記コンタクトアームに上方から当接可能に構成され、前記コンタクトアームが前記第1の方向に前記規定量移動したとき、ファスナーの打ち込み動作を開始させるレバーを備え、
前記規制部は、前記第1の方向に慣性力が生じたときに前記レバーを介して前記コンタクトアームに上方から当接可能となる、
請求項11に記載の打ち込み工具。
【請求項13】
前記規制部は、一端側に位置するウエイト部と、他端側に位置する当接部と、を有し、前記第1の方向に慣性力が生じたとき、前記ウエイト部と前記当接部との間に位置して前記第1の方向と直交する軸部を支点に、前記ウエイト部が前記第1の方向に回動する一方、前記当接部が前記コンタクトアームに近づく方向に回動し、
前記当接部は、前記コンタクトアームに近づく方向に回動することで、前記レバーを介して前記コンタクトアームに上方から当接可能となる、
請求項12に記載の打ち込み工具。
【請求項14】
前記駆動部は、第1空気室と、第1流路を介して前記第1空気室から空気が供給されることでファスナーを打ち込む打撃ピストンと、前記第1流路を開閉する第1バルブと、前記第1バルブを閉じる方向に作用させる空気を貯留する第2空気室と、前記第2空気室と工具外部とを連通させる第2流路と、前記第2流路を開閉する第2バルブとを有し、
前記規制部は、前記第1の方向に慣性力が生じたときに前記第2流路を絞り、又は閉じることで、前記第2空気室からの空気の排出を抑制する、
請求項1に記載の打ち込み工具。
【請求項15】
前記第1の方向とは反対方向を第2の方向としたときに、
前記規制部は、前記第1の方向と前記第2の方向に移動可能に構成された可動部と、前記可動部を前記第2の方向に付勢する付勢部と、を有し、
前記可動部は、前記第1の方向に移動することで前記第2流路を絞り、又は閉じ、前記第2の方向に移動することで前記第2流路を開き、前記第1の方向に慣性力が生じたとき、前記付勢部の付勢力に抗して前記第1の方向に移動する、
請求項14に記載の打ち込み工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、締結対象物にファスナーを打ち込む打ち込み工具に関する。
【背景技術】
【0002】
木材や鋼板、コンクリート等の建築部材に対し、釘やピンなどのファスナーを打ち込む打ち込み工具が広く知られている。こうした打込工具は、圧縮空気、ガス燃焼圧力、バネ力などを使用してドライバを駆動し、ドライバによってファスナーを打ち込むようになっている。
【0003】
また、こうした打ち込み工具として、コンタクトアームと呼ばれる安全装置を備えたものが存在する(例えば特許文献1参照)。コンタクトアームは、ノーズ部の先端に突出して設けられており、反突出方向へ押し込むことができる。このコンタクトアーム(ノーズ部)を締結対象物に接触させて押し付けると、コンタクトアームが押し込まれ、ファスナーを打ち込み可能なサインオン状態となる。このサインオン状態でなければ、トリガレバーを操作しても打ち込み動作が実行されない。すなわち、コンタクトアームを締結対象物に押し付けなければファスナーが打ちだされないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-63928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コンタクトアームを備えた打ち込み工具を使用しているときに、意図せずにシリンダキャップ天面(ノーズとは反対側の面)を部材等にぶつけてしまうと、コンタクトアームを作動方向(反突出方向)に移動させようとする慣性力が発生する。このような慣性力でコンタクトアームがサインオン状態となることを防止するため、従来はコンタクトアームを非作動方向に付勢する付勢部材の荷重を高く設定し、慣性力が発生してもコンタクトアームが移動しないようにしていた。しかしながら、付勢部材の荷重を高く設定すると、通常使用時にコンタクトアームの押し付け荷重が高くなるため、作業者に負担がかかり、使い勝手が悪くなるという問題があった。
【0006】
また、圧縮空気でピストンを駆動する打ち込み工具の場合、ピストンに圧縮空気を供給するメインバルブの反応を鈍感にすることで、慣性力によってコンタクトアームが作動している時間内はファスナーを打ち込まないようにすることもできる。しかしながら、メインバルブの反応を鈍感にすると、通常使用時に打感が悪く、作業効率の低下につながるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、コンタクトアームを作動方向に移動させようとする慣性力が発生したとしても、コンタクトアームの付勢荷重を大きくしたり、メインバルブの反応を鈍感にしたりすることなく、安全性を確保できる打ち込み工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するため、本発明は、締結対象物にファスナーを打ち込む打ち込み工具であって、締結対象物に接触させて押し付けることで第1の方向に移動可能なコンタクトアームと、前記コンタクトアームが前記第1の方向に規定量移動したことを条件としてファスナーの打ち込み動作を開始させる駆動部と、前記第1の方向に慣性力が生じたときに前記駆動部による打ち込み作動を規制する規制部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上記の通りであり、第1の方向に慣性力が生じたときに駆動部による打ち込み作動を規制する規制部を備える。よって、コンタクトアームを作動方向に移動させようとする慣性力が発生した場合でも、コンタクトアームのバネ荷重を大きくしたり、メインバルブの反応を鈍感にしたりすることなく、打ち込み工具の安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】打ち込み工具の外観図である。
図2】打ち込み工具の一部拡大図である。
図3】トリガレバー付近の部分断面図である。
図4】トリガレバー付近を別の角度から見た部分断面図である。
図5】コンタクトアームの構造を説明する部分断面図である。
図6】トリガレバーが操作された状態のトリガレバー付近の断面図である。
図7図6におけるA部拡大図である。
図8】第1の方向に慣性力が生じ始めたときのトリガレバー付近の断面図である。
図9図8におけるB部拡大図である。
図10】可動部がコンタクト部に係合したときのトリガレバー付近の断面図である。
図11図10におけるC部拡大図である。
図12】変形例1を説明する図であり、係るトリガレバー付近の斜視図である。
図13】変形例1を説明する図であり、回動規制部材の(a)斜視図、(b)平面図、(c)正面図、(d)側面図である。
図14】変形例1を説明する図であり、トリガレバーが操作された状態のトリガレバー付近の断面図である。
図15】変形例1を説明する図であり、可動部がコンタクト部に係合したときのトリガレバー付近の断面図である。
図16】変形例2を説明する図であり、回動規制部材の(a)斜視図、(b)平面図、(c)正面図、(d)側面図である。
図17】変形例2を説明する図であり、トリガレバーが操作された状態のトリガレバー付近の断面図である。
図18】変形例2を説明する図であり、可動部がコンタクト部に係合したときのトリガレバー付近の断面図である。
図19】変形例3を説明する打ち込み工具の一部拡大図であり、サインオフ状態の図である。
図20】変形例3を説明する打ち込み工具の一部拡大図であり、サインオン状態でトリガレバーが操作されたときの図である。
図21】変形例3を説明する打ち込み工具の一部拡大図であり、メインバルブ部が作動したときの図である。
図22】変形例3を説明する打ち込み工具の一部拡大図であり、第1の方向に慣性力が生じたときの図である。
図23】変形例3を説明するロックバルブ部の一部拡大図であり、(a)第1の方向に慣性力が生じていないときの図、(b)第1の方向に慣性力が生じたときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0012】
本実施形態に係る打ち込み工具10は、締結対象物にファスナーを打ち込む手持ち式の工具である。この打ち込み工具10は、図1に示すように、ボディハウジング12、グリップハウジング11、トリガレバー21、マガジン22、ノーズ部20、コンタクト部25、を備える。なお、以下の説明においては、ファスナーが打ち出される方向を下方向、下方向の反対方向を上方向(特許請求の範囲における「第1の方向」)とする。
【0013】
ボディハウジング12は、略円柱状に形成されて、内部にファスナーの打ち込み動作を行う駆動部13を内蔵している。本実施形態に係る打ち込み工具10は、圧縮空気の圧力によってファスナーを打ち出す空気圧式の駆動部13を内蔵している。なお、この駆動部13は例示に過ぎず、駆動部13は他の動力源を備えたもの(例えば、ガスの燃焼圧力で作動するものや、モータやバネで作動するもの)であってもよい。
【0014】
駆動部13は、打ち込み動作のための駆動力を発生させる部位である。この駆動部13は、後述するサインオン状態であることを条件として起動する。言い換えると、サインオン状態でなければ駆動部13は起動しない。この駆動部13は、図2に示すように、シリンダ14、ピストン15、ドライバ15aを備えている。具体的には、円筒状のシリンダ14内にピストン15が摺動自在に収容されており、ピストン15の下面にファスナーを打撃するためのドライバ15aが結合して設けられている。シリンダ14内のピストン15の上面に圧縮空気が供給されると、ピストン15が衝撃的に下方に移動し、ピストン15と一体的に作動するドライバ15aによってファスナーが下方に打ち出されるようになっている。
【0015】
また、駆動部13は、メインバルブ部16、メインチャンバ17、空気室18、空気流路19、パイロットバルブ35を備えている。
【0016】
メインチャンバ17は、外部から供給された圧縮空気が貯留される空間である。メインチャンバ17は、グリップハウジング11の内部と連通している。メインチャンバ17に貯留された圧縮空気は、シリンダ14に供給されてピストン15を作動させるために使用される。
【0017】
メインバルブ部16は、シリンダ14への圧縮空気の供給を制御するためのものである。メインバルブ部16は、シリンダ14の上端付近を覆うように設けられた筒状の部品であり、シリンダ14の軸方向に沿って上下に移動可能に配置されている。このメインバルブ部16は、ファスナーの打ち込みを待機している状態では、図2に示すように上方に待機しており、シリンダ14の内部空間がメインチャンバ17と連通しないように遮断している。そして、ファスナーを打ち込むときには、図21に示すように下方に移動し、メインチャンバ17とシリンダ14の内部空間とを連通させる。メインチャンバ17とシリンダ14の内部空間とが連通すると、メインチャンバ17の圧縮空気がシリンダ14内のピストン15の上面に供給され、ピストン15が駆動する。
【0018】
空気室18は、メインバルブ部16が閉じる方向への圧力を生じさせるために圧縮空気を貯留可能な空間である。この空気室18に圧縮空気が貯留されている状態では、空気室18に貯留された圧縮空気と圧縮ばねによってメインバルブ部16が上方に押し上げられている。このとき、メインバルブ部16には、メインチャンバ17に貯留された圧縮空気によって下方へと押し下げられる力も働いているが、圧縮空気が作用する面積がメインチャンバ17側よりも空気室18側の方が大きいため、その圧力の差によってメインバルブ部16は上方に押し上げられている。一方、この空気室18に圧縮空気が貯留されていない状態(空気室18内の気圧が外気圧と等しい状態)では、メインチャンバ17に貯留された圧縮空気の圧力によって、メインバルブ部16が下方に移動する。
【0019】
空気流路19は、空気室18を打ち込み工具10の外部と連通させる通路である。この空気流路19は、ボディハウジング12の表面に開口する排気口を介して外部と連通している。この空気流路19の中途部には、後述するパイロットバルブ35が配置されている。
【0020】
パイロットバルブ35は、空気流路19を開閉することができる弁である。このパイロットバルブ35の内部には、バルブステム35aが摺動可能に配置されている。このバルブステム35aは、トリガレバー21が操作されていない自然状態において突出方向(下方)に付勢されており、下端が後述するコンタクトレバー32に相対している。この自然状態では、パイロットバルブ35が空気流路19を閉じるように作用する。この状態では、空気室18が外部と遮断されているので、空気室18に圧縮空気が貯留された状態となる。一方、バルブステム35aが上方へ押し込まれると、パイロットバルブ35が空気流路19を開くように作用する。空気流路19が開くと、空気室18内の圧縮空気が外部に排出されて圧力が低下し、メインバルブ部16が作動する。すなわち、パイロットバルブ35は、駆動部13の起動を制御するためのものであり、パイロットバルブ35が空気流路19を開くことで、1回の打ち込み動作が開始される。このパイロットバルブ35は、後述するトリガレバー21が操作され(引かれ)、かつコンタクト部25がサインオン状態である場合にのみ、空気流路19を開くことができる。
【0021】
なお、このパイロットバルブ35は、メインチャンバ17と空気室18とを連通または遮断する機能も備えているが、公知の構成であるため、説明を割愛する。
【0022】
グリップハウジング11は、作業者が打ち込み工具10を使用するときに握る棒状の部位である。このグリップハウジング11は、上記したボディハウジング12に対して略直角に連設されている。このグリップハウジング11の内部空間は、メインチャンバ17の一部として機能し、圧縮空気を貯留している。また、グリップハウジング11の後端(グリップエンド11a)には、メインチャンバ17へ外部から圧縮空気を供給するためのエアプラグが設けられている。
【0023】
トリガレバー21は、パイロットバルブ35を開閉するために操作可能に設けられた操作レバーである。作業者は、このトリガレバー21を操作することで、ファスナーの打ち込みを操作することができる。このトリガレバー21は、グリップハウジング11を把持した手によって操作可能な位置に設けられている。具体的には、作業者がグリップハウジング11を握ったときに人差し指がかかる位置(グリップハウジング11前端付近の下方)にトリガレバー21が配置されており、人差し指でトリガレバー21を引き操作可能となっている。後述するサインオン状態でトリガレバー21が操作されると、トリガレバー21の内部に配置されたコンタクトレバー32が、パイロットバルブ35のバルブステム35aを上方に押し込むようになっている。バルブステム35aが上方に押し込まれると、上記したように駆動部13が作動し、ファスナーが打ち込まれる。
【0024】
トリガレバー21は、人差し指がかかる下面側が指掛け部21aとなっている。また、トリガレバー21は、前端付近に配置されたトリガ回動軸21bを軸として、ボディハウジング12に対して回動可能に取り付けられている。このトリガレバー21は、トリガ付勢部材21cによって常時下方に付勢されている。
【0025】
マガジン22は、複数のファスナーを連結した連結ファスナーを収納するためのものである。このマガジン22に収容された連結ファスナーは、後述するノーズ部20へと順次供給され、先頭のファスナーがドライバ15aの直下に位置するように保持される。
【0026】
ノーズ部20は、ボディハウジング12の下端に一体的に設けられた部位である。ノーズ部20の後方にはファスナー供給機構が設けられており、このファスナー供給機構が打込み動作に連動して作動することで、マガジン22に格納されたファスナーが1本ずつ自動的にノーズ部20に供給される。
【0027】
このノーズ部20の内部には、ファスナーの射出を案内する射出経路が形成されている。ファスナー供給機構によって供給されたファスナーは、この射出経路内に待機することになる。前記したドライバ15aが射出経路を通ってノーズ部20の方向へと摺動することで、ドライバ15aがファスナーを叩き、射出経路内に待機しているファスナーがノーズ部20の先端から打ち出される。
【0028】
コンタクト部25は、ファスナーが空中に発射される事故を防止するための安全機構である。このコンタクト部25がサインオン状態とならなければ、トリガレバー21が操作されてもファスナーが打ち出されない。本実施形態に係るコンタクト部25は、図5に示すように、コンタクトアーム26、コンタクトレバー32を備える。
【0029】
コンタクトアーム26は、ノーズ部20に対して上下に摺動可能となっており、コンタクト用バネ31によって下方に付勢されている。このコンタクトアーム26は、先端(後述するコンタクトノーズ27)がノーズ部20よりも下方まで突出し、先端を締結対象物に接触させて押し付けることで上方(第1の方向)に移動可能となっている。コンタクトアーム26が上方に押し込まれることで、安全機構が解除され、ファスナーの打ち込みが可能となる。具体的には、コンタクトアーム26が上方に押し込まれると、コンタクトレバー32がバルブステム35aと係合可能な状態(安全機構が解除された状態)となり、この状態でトリガレバー21が操作されると(またはトリガレバー21が操作された状態で安全機構が解除されると)、駆動部13が作動してファスナーが打ち出される。一方、コンタクトアーム26が上方に押し込まれていない状態(コンタクト用バネ31によって付勢されて下方に突出した状態)では、安全機構がトリガレバー21の操作を無効化し、トリガレバー21が操作されてもファスナーが打ち出されないようになっている。具体的には、コンタクトアーム26が上方に押し込まれていない状態では、コンタクトレバー32がバルブステム35aを押し上げられない状態(安全機構が作動した状態)であるため、トリガレバー21が操作されても駆動部13が作動せず、ファスナーが打ち出されない。
【0030】
このコンタクトアーム26は複数の部品を組み合わせて構成されており、コンタクトノーズ27、アーム部28、接続軸29、レバー押圧部30を備える。
【0031】
コンタクトノーズ27は、コンタクトアーム26の下端に設けられた部位である。このコンタクトノーズ27は、ノーズ部20の先端を覆うように取り付けられる。コンタクトノーズ27は、筒状の案内経路を備え、この案内経路がノーズ部20の射出経路と連通している。このため、ノーズ部20の先端から打ち出されたファスナーは、コンタクト部25を通過して締結対象物に打ち込まれる。言い換えると、このコンタクト部25の先端の開口が、ファスナーの射出口27aとなっている。
【0032】
アーム部28は、コンタクトノーズ27に連結され、ノーズ部20の側面に沿って上方へ延びる部位である。このアーム部28は、トリガレバー21付近まで延設されている。このアーム部28は、コンタクトノーズ27とレバー押圧部30とを連結し、両者を一体的に上下動させるためのものである。
【0033】
接続軸29は、コンタクトノーズ27とアーム部28とを接続するための部材である。この接続軸29をネジを構成し、接続軸29のネジ作用によりコンタクトノーズ27の突出量を調節可能としてもよい。例えば、接続軸29を回転させることで、コンタクトノーズ27が上下動し、ノーズ部20に対するコンタクト部25の突出量が変化するようにしてもよい。また、コンタクトノーズ27の突出量を調節する機構を、アーム部28の下端ではなく、アーム部28の上端(後述するレバー押圧部30とアーム部28との接続位置)に設けてもよい。
【0034】
レバー押圧部30は、コンタクトアーム26の上端に設けられた部位である。このレバー押圧部30は、ボディハウジング12に設けられた支持部24に上下動可能に支持されている。また、支持部24に形成された下向きの面と、レバー押圧部30に形成された上向きの面とが、互いに向かい合っており、この2つの面の間にコンタクト用バネ31が配置されている。このコンタクト用バネ31によってレバー押圧部30(コンタクトアーム26)が常時下方へと付勢されている。言い換えると、コンタクト用バネ31によって、コンタクトノーズ27が常時下方へと付勢されている。
【0035】
このレバー押圧部30は、コンタクトレバー32の下面に向けて突出する押圧片30aを備える。自然状態においては、コンタクト用バネ31によってレバー押圧部30(コンタクトアーム26)が下方へ付勢されているため、レバー押圧部30がコンタクトレバー32を押し上げないようになっている。この状態がサインオフ状態である。この状態からコンタクトアーム26を締結対象物に押し付けることで、コンタクト用バネ31の付勢力に抗してコンタクトアーム26が上方に移動する。コンタクトアーム26が上方に規定量移動した状態がサインオン状態である。このサインオン状態となると、押圧片30aがコンタクトレバー32を上方に押し上げ可能な状態となる。
【0036】
コンタクトレバー32は、サインオン状態でトリガレバー21が引かれたときに、パイロットバルブ35のバルブステム35aを押し込むように配置された部材である。このコンタクトレバー32は、図3および図4に示すように、コンタクトレバー32の一端に設けられた回動軸32aを介して、トリガレバー21の内部に回動可能に取り付けられている。このコンタクトレバー32は、上面がバルブステム35aに臨むように配置されており、中央付近の上面でバルブステム35aを押動可能となっている。このコンタクトレバー32は、両側の端部が同時に上方に持ち上げられた状態となることで、バルブステム35aを上方に押し込む。一方、コンタクトレバー32の片方の端部のみが上方に持ち上げられたとしても、バルブステム35aは上方に押し込まれない。
【0037】
ここで、コンタクトレバー32の一端は、トリガレバー21に連結され、トリガレバー21が引き操作されたときに上方に持ち上げられる。また、コンタクトレバー32の他端は、押圧片30aに対向するように配置されており、コンタクトアーム26が上方に規定量移動した状態(サインオン状態)となったときに押圧片30aによって上方に持ち上げられる。すなわち、トリガレバー21が引き操作され、かつ、サインオン状態となったときに、コンタクトレバー32の両側の端部が同時に上方に持ち上げられ、バルブステム35aが押し込まれるようになっている。このため、コンタクトアーム26を締結対象物に押し付けずにトリガレバー21が操作されても、ファスナーが打ち出されることはない。
【0038】
なお、本実施形態においては、コンタクトアーム26が作動したときに、コンタクトレバー32を押し上げるようにしている。しかしながら、コンタクトアーム26で打ち込みの誤動作を防止する機構としては、他の機構を使用することも可能である。例えば、コンタクトアーム26でマイクロスイッチを押すようにしてもよい。この場合、マイクロスイッチが押された状態がサインオン状態であり、マイクロスイッチが押されていない状態がサインオフ状態である。
【0039】
ところで、上方向へ動いていた打ち込み工具10が止まろうとすると、コンタクトアーム26に対して上方向への慣性力が発生する。言い換えると、上方向へ動いていた打ち込み工具10の移動が規制されると、コンタクトアーム26に対して上方向への慣性力が発生する。例えば、上記したような打ち込み工具10を使用しているときに、意図せずにボディハウジング12の上面12aを部材等にぶつけてしまうと、コンタクトアーム26を作動方向(図8に示す矢印方向)に移動させようとする慣性力が発生する。このような慣性力でコンタクトアーム26がサインオン状態となることを防止するため、従来はコンタクト用バネ31の荷重を高く設定し、慣性力が発生してもコンタクトアーム26が移動しないようにしていた。しかしながら、コンタクト用バネ31の荷重を高く設定すると、通常使用時にコンタクトアーム26の押し付け荷重が高くなるため、作業者に負担がかかり、使い勝手が悪くなるという問題があった。
【0040】
また、ピストン15に圧縮空気を供給するメインバルブ部16の反応を鈍感にすれば、慣性力によってコンタクトアーム26が作動している時間内はファスナーを打ち込まないようにすることもできる。しかしながら、メインバルブ部16の反応を鈍感にすると、通常使用時に打感が悪く、作業効率の低下につながるという問題があった。
【0041】
このため、本実施形態に係る打ち込み工具10は、上方(第1の方向)に慣性力が生じたときにコンタクト部25とは独立して移動を開始するスライド部40(可動部)を備えている。上方に慣性力が生じたときにスライド部40が移動することで、駆動部13が作動しない打込不可状態となる。
【0042】
具体的には、スライド部40は、図3および図4に示すように、ロック部42、ホルダ部41を備える。このスライド部40は、図7に示すように、支持部24の内部に形成された摺動空間45に収容されており、上下に移動可能となっている。スライド部40は、付勢部材43によって常時下方に付勢されており、自然状態において摺動空間45内で下方に押し付けられている。しかしながら、上方に慣性力が生じたときには、この慣性力を受けたスライド部40が、付勢部材43の付勢力に抗して上方に直線的に移動する。
【0043】
ロック部42は、コンタクト部25に当接可能な部材である。上方に慣性力が生じたときに、このロック部42がコンタクト部25に係合し、コンタクト部25の移動を妨げるように作用する。すなわち、ロック部42がコンタクト部25に係合すると、コンタクト部25が第1の方向に移動できなくなり、コンタクト部25がサインオン状態となることが妨げられる。本実施形態に係るロック部42は、図3等に示すような円筒状のコロである。このロック部42は、ホルダ部41に保持された状態で上下に転動可能である。
【0044】
ホルダ部41は、ロック部42を支持する部材である。このホルダ部41は、摺動空間45に沿って上下に摺動可能である。ホルダ部41には、ロック部42を転動可能に保持する凹部41aが形成されている。凹部41aに収容されたロック部42は、ホルダ部41の上下動に連動して上下に転動する。
【0045】
なお、摺動空間45には、図7にしめすように、スライド部40をコンタクト部25に当接する方向に誘導する誘導部45aが設けられている。この誘導部45aは、スライド部40の移動方向(上下方向)に対して傾斜したスロープ形状である。具体的には、この誘導部45aは、上方向に行くにしたがって次第にコンタクト部25(後述する係合部30b)に接近するように傾斜した傾斜面を形成している。具体的には、誘導部45aは、コンタクトアーム26の側方(移動方向を除くいずれかの方向)に向けて突出している。なお、ホルダ部41には、この誘導部45aとの干渉を避けるための溝が形成されている。このため、誘導部45aが摺動空間45内に突出するように形成されているにもかかわらず、誘導部45aとホルダ部41とは互いに干渉しない。よって、スライド部40が上方に移動したときに、ロック部42のみが誘導部45aによって斜め上方向に誘導され、ホルダ部41はそのまま上方に移動する。このように、スライド部40が上方に移動することでロック部42が誘導部45aに沿って斜めに転動し、コンタクト部25に接近・当接するようになっている。
【0046】
このように誘導部45aによって誘導されたロック部42は、コンタクト部25に係合する。具体的には、ロック部42は、誘導部45aに沿って移動することで、コンタクトアーム26の側方に誘導され、コンタクトアーム26の側方に当接する。本実施形態においては、ロック部42は、コンタクトアーム26(より具体的にはレバー押圧部30)に係合する。なお、コンタクトアーム26には、図7に示すように、ロック部42が当接する部位に、ロック部42と係合可能な係合部30bが形成されている。係合部30bは、コンタクトアーム26の表面に形成された凹形状である。この係合部30bは、ロック部42の半径よりも浅く形成されており、奥に行くにしたがってすぼまるテーパ状に形成されている。この係合部30bは、図7等に示すように、下側の溝の側面(立ち上がり面)が係合面30cとなっている。この係合面30cは、誘導部45aと略平行に形成されている。係合面30cと誘導部45aとは必ずしも平行でなくてもよい。また、係合面30cは、スライド部40の移動方向(上下方向)に対して、直交する面であってもよし、誘導部45aと同じ方向に傾斜していてもよいし、誘導部45aとは反対方向に傾斜していてもよい。ただし、ロック部42の係合・係合解除のスムーズさ、慣性力が働いていない通常時作動時のコンタクトアーム26の摺動抵抗などのバランスが良いのは、係合面30cと誘導部45aとが略平行に形成された態様である。ロック部42は、上方に移動することでこの係合部30bに嵌まり込み、コンタクトアーム26の移動をロックすることができる。言い換えると、ロック部42は、誘導部45aと係合面30cとの間に挟まることで、コンタクトアーム26の移動をロックすることができる。
【0047】
次に、上記したスライド部40の作用について説明する。すなわち、上方に慣性力が生じたときに、どのように打込不可状態が実現されるのかについて説明する。ここでは、図6および図7に示すように、トリガレバー21が引き操作された状態を例に説明する。このようにトリガレバー21が引き操作された状態で、コンタクトアーム26が上動してサインオン状態となると、コンタクトレバー32によってバルブステム35aが押し込まれ、駆動部13が作動する。このため、意図せずにコンタクトアーム26が作動すると危険である。
【0048】
この状態で、図8および図9に示すようにコンタクトアーム26を上方(矢印方向)に移動させようとする慣性力が生じると、同時にスライド部40を上方(矢印方向)に移動させようとする慣性力が生じる。
【0049】
このような慣性力が生じると、図10および図11に示すように、ロック部42が誘導部45aに乗り上げる位置まで、スライド部40が上方に移動する。これに伴い、ロック部42がコンタクトアーム26の移動経路に押し出され、ロック部42がコンタクトアーム26の係合部30bに嵌まり込む。これにより、誘導部45a(斜め下向きの面)と係合部30bの係合面30c(斜め上向きの面)とでロック部42を挟み込んだ状態となり、コンタクトアーム26がそれ以上は上方に移動できないようにロックされる。言い換えると、コンタクトアーム26は、サインオン状態となる規定量まで移動するのを規制される。このように、コンタクトアーム26を上方に移動させようとする慣性力が生じた場合でもサインオン状態となることはない。すなわち、コンタクトアーム26を上方に移動させようとする慣性力が発生したときには、駆動部13が作動しない打込不可状態となる。
【0050】
その後、コンタクトアーム26を上方(矢印方向)に移動させようとする慣性力がなくなると、コンタクトアーム26が突出方向に復帰するので、ロック部42の挟み込みが解除される。また、スライド部40も付勢部材43に付勢されて下方に移動する。これにより、図6および図7に示す状態に戻る。
【0051】
なお、コンタクトアーム26に係合部30bを設けなくても、ロック部42とコンタクトアーム26との摩擦でコンタクトアーム26をロックすることは可能である。ただし、コンタクトアーム26を上方(矢印方向)に移動させようとする慣性力がなくなった場合でも、スライド部40が自動的に復帰しない可能性があるため、係合部30bを設けることが望ましい。
【0052】
以上説明したように、本実施形態は、上方(第1の方向)に慣性力が生じたときにコンタクト部25とは独立して移動を開始するスライド部40を備え、上方に慣性力が生じたときにスライド部40が移動することで、駆動部13が作動しない打込不可状態となる。すなわち、スライド部40を使用して、第1の方向に慣性力が生じたときに駆動部13による打ち込み作動を規制する規制部が構成されている。よって、コンタクトアーム26を作動方向に移動させようとする慣性力が発生した場合でも、打ち込み工具10の安全性を確保することができる。また、コンタクトアーム26のバネ荷重を大きくしたり、メインバルブ部16の反応を鈍感にしたりする必要がないので、ユーザの操作性に悪影響がない。
【0053】
具体的には、スライド部40は、上方に慣性力が生じたときにコンタクト部25に係合し、コンタクト部25がサインオン状態となることを妨げるため、上方に慣性力が生じたときに駆動部13を起動しないようにすることができる。
【0054】
(変形例1)
本変形例の特徴は、上記した実施形態のスライド部40に代えて、図12および図13に示すような回動規制部材50(可動部)を使用した点にある。なお、本実施形態の基本的構成は上記した実施形態と相違しないため、重複する記載を避けて、相違する箇所のみを説明する。
【0055】
回動規制部材50は、ボディハウジング12に対して回動可能に取り付けられた部材である。この回動規制部材50は、第1の方向に慣性力が生じたときにコンタクト部25とは独立して移動を開始する。上方に慣性力が生じたときに回動規制部材50が移動することで、駆動部13が作動しない打込不可状態となる。具体的には、この回動規制部材50は、上方(第1の方向)に慣性力が生じたときにコンタクト部25に係合し、コンタクト部25がサインオン状態となることを妨げる。
【0056】
回動規制部材50は、図13に示すように、軸孔50a、ウエイト部50b、係合爪部50cを備える。
【0057】
軸孔50aは、回動軸53を挿入するための穴である。回動規制部材50は、図12に示すように、トリガレバー21付近において回動軸53を軸として回動可能となっている。この回動規制部材50の回動軸53は、第1の方向と直交し、トリガ回動軸21bと平行に配置されている。
【0058】
ウエイト部50bは、回動規制部材50が慣性力の影響を受けやすくするための重りである。また、係合爪部50cは、コンタクト部25に係合可能な部位である。この係合爪部50cは、回動によりコンタクト部25の移動経路に突出可能な突出部である。この係合爪部50cは、待機時はコンタクト部25の上方(第1の方向)への移動経路から退避している。一方、回動規制部材50が回動したときには、係合爪部50cがコンタクト部25の移動経路に突出し、コンタクト部25と係合する。
【0059】
このウエイト部50bおよび係合爪部50cは、この軸孔50aを挟んで異なる方向に突出している。すなわち、ウエイト部50bは、回動規制部材50の一端側に位置し、係合爪部50cは、回動規制部材50の他端側に位置している。本変形例では、ウエイト部50bと係合爪部50cとが略直交する方向に突出しており、側面視においてウエイト部50bと係合爪部50cとが略L字形を構成している。なお、ウエイト部50bおよび係合爪部50cの配置は、回動規制部材50の作用を実現できる範囲であれば、任意に設定することができる。例えば、ウエイト部50bおよび係合爪部50cを、軸孔50aから見て同じ方向に設けてもよい。
【0060】
この回動規制部材50は、付勢部材51によって常時付勢されている。付勢部材51は、回動軸53に取り付けられたねじりコイルバネである。回動規制部材50は、この付勢部材51によって、自然状態でコンタクト部25に係合しないように付勢されている。具体的には、回動規制部材50は、この付勢部材51によって、係合爪部50cがコンタクト部25の移動経路から退避した位置で待機するように付勢されている。ただし、上方に慣性力が生じたときには、この付勢部材51の付勢力に抗して回動規制部材50が回動し、コンタクト部25に係合する。
【0061】
本変形例においては、係合爪部50cがコンタクトアーム26(より具体的にはレバー押圧部30)に係合可能となっている。そして、コンタクトアーム26には、図12に示すように、係合爪部50cが係合可能な被係合部52aが形成されている。この被係合部52aは、押圧片30aの側部に切欠き部52を設けることで形成されている。回動規制部材50が移動(回動)すると、係合爪部50cが切欠き部52の内側に入り込む。具体的には、係合爪部50cが被係合部52aよりも上方に突出することで、係合爪部50cがコンタクト部25の移動経路に突出する。この状態では、コンタクトアーム26が上動しようとしても係合爪部50cと被係合部52aとが干渉し、コンタクトアーム26の上動が妨げられる。
【0062】
次に、上記した回動規制部材50の作用について説明する。すなわち、上方に慣性力が生じたときに、どのように打込不可状態が実現されるのかについて説明する。ここでは、図14に示すように、トリガレバー21が引き操作された状態を例に説明する。このようにトリガレバー21が引き操作された状態で、コンタクトアーム26が上動してサインオン状態となると、コンタクトレバー32によってバルブステム35aが押し込まれる。このため、意図せずにコンタクトアーム26が作動すると危険である。
【0063】
慣性力が生じていない状態では、係合爪部50cがコンタクト部25の移動経路に突出していない。このため、コンタクトアーム26はサインオン状態となる規定量まで上方に移動可能である。この状態で、図15に示すようにコンタクトアーム26を上方(矢印方向)に移動させようとする慣性力が生じると、同時に回動規制部材50を回動させようとする慣性力が生じる。具体的には、ウエイト部50bを上方(第1の方向)へ移動させる慣性力が生じ、この慣性力により回動規制部材50が回動する。言い換えると、ウエイト部50bと係合爪部50c(当接部)との間に位置して第1の方向と直交する軸部を支点に、ウエイト部50bが第1の方向に回動する一方、係合爪部50c(当接部)がコンタクトアーム26に近づく方向に回動する。回動規制部材50が回動すると、係合爪部50cがコンタクトアーム26の移動経路に突出する。言い換えると、係合爪部50cは、コンタクトアーム26に近づく方向に回動することで、コンタクトアーム26に当接可能となる。これにより、コンタクトアーム26が上方に移動しようとしても、被係合部52aが係合爪部50cに引っかかり、コンタクトアーム26がそれ以上は上方に移動できないようにロックされる。言い換えると、コンタクトアーム26は、サインオン状態となる規定量の移動が抑止される。このように、コンタクトアーム26を上方に移動させようとする慣性力が発生してもサインオン状態となることはない。すなわち、コンタクトアーム26を上方に移動させようとする慣性力が発生したときに、駆動部13が作動しない打込不可状態となる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態は、上方(第1の方向)に慣性力が生じたときにコンタクト部25とは独立して移動を開始する回動規制部材50(規制部)を備え、上方に慣性力が生じたときに回動規制部材50が回動することで、駆動部13が作動しない打込不可状態となる。すなわち、回動規制部材50を使用して、第1の方向に慣性力が生じたときに駆動部13による打ち込み作動を規制する規制部が構成されている。よって、コンタクトアーム26を作動方向に移動させようとする慣性力が発生した場合でも、打ち込み工具10の安全性を確保することができる。また、コンタクトアーム26のバネ荷重を大きくしたり、メインバルブ部16の反応を鈍感にしたりする必要がないので、ユーザの操作性に悪影響がない。
【0065】
具体的には、回動規制部材50は、上方に慣性力が生じたときにコンタクト部25に係合し、コンタクト部25がサインオン状態となることを妨げるため、上方に慣性力が生じたときに駆動部13を起動しないようにすることができる。
【0066】
(変形例2)
本変形例の特徴は、上記した実施形態のスライド部40に代えて、図16に示すような回動規制部材55(可動部)を使用した点にある。なお、本実施形態の基本的構成は上記した実施形態と相違しないため、重複する記載を避けて、相違する箇所のみを説明する。
【0067】
回動規制部材55は、トリガレバー21に対して回動可能に取り付けられた部材である。この回動規制部材55は、第1の方向に慣性力が生じたときにコンタクト部25とは独立して移動を開始する。上方に慣性力が生じたときに回動規制部材55が移動することで、駆動部13が作動しない打込不可状態となる。具体的には、この回動規制部材55は、上方(第1の方向)に慣性力が生じたときにコンタクト部25に係合し、コンタクト部25がサインオン状態となることを妨げる部材である。
【0068】
回動規制部材55は、図16に示すように、軸孔55a、ウエイト部55b、係合爪部55cを備える。
【0069】
軸孔55aは、回動軸57を挿入するための穴である。回動規制部材55は、図17および図18に示すように、トリガレバー21の内部において回動軸57を軸として回動可能となっている。この回動規制部材55の回動軸57は、トリガ回動軸21bと平行に配置されている。
【0070】
ウエイト部55bは、回動規制部材55が慣性力の影響を受けやすくするための重りである。また、係合爪部55cは、コンタクト部25に係合可能な部位である。この係合爪部55cは、回動によりコンタクト部25の移動経路に突出可能な突出部である。この係合爪部55cは、待機時はコンタクト部25の上方(第1の方向)への移動経路から退避している。一方、回動規制部材55が回動したときには、係合爪部55cがコンタクト部25の移動経路に突出し、コンタクト部25と係合する。
【0071】
このウエイト部55bおよび係合爪部55cは、この軸孔55aを挟んで異なる方向に突出している。本変形例では、ウエイト部55bと係合爪部55cとが略直交する方向に突出しており、側面視においてウエイト部55bと係合爪部55cとが略L字形を構成している。なお、ウエイト部55bおよび係合爪部55cの配置は、回動規制部材55の作用を実現できる範囲であれば、任意に設定することができる。例えば、ウエイト部55bおよび係合爪部55cを、軸孔55aから見て同じ方向に設けてもよい。
【0072】
この回動規制部材55は、付勢部材56によって常時付勢されている。付勢部材56は、回動軸57に取り付けられたねじりコイルバネである。回動規制部材55は、この付勢部材56によって、自然状態でコンタクト部25に係合しないように付勢されている。具体的には、回動規制部材55は、この付勢部材56によって、係合爪部55cがコンタクト部25の移動経路から退避した位置で待機するように付勢されている。ただし、上方に慣性力が生じたときには、この付勢部材56の付勢力に抗して回動規制部材55が回動し、コンタクト部25に係合するように構成されている。
【0073】
本変形例においては、係合爪部55cがコンタクトレバー32に係合可能となっている。回動規制部材55が移動(回動)すると、係合爪部55cがコンタクトレバー32の先端に係合し、コンタクトレバー32の動きが妨げられるようになっている。
【0074】
次に、上記した回動規制部材55の作用について説明する。すなわち、上方に慣性力が生じたときに、どのように打込不可状態が実現されるのかについて説明する。ここでは、図17に示すように、トリガレバー21が引き操作された状態を例に説明する。このようにトリガレバー21が引き操作された状態で、コンタクトアーム26が上動してサインオン状態となると、コンタクトレバー32によってバルブステム35aが押し込まれる。このため、意図せずにコンタクトアーム26が作動すると危険である。
【0075】
慣性力が生じていない状態では、係合爪部55cがコンタクト部25の移動経路に突出していない。このため、コンタクトアーム26はサインオン状態となる規定量まで上方に移動可能である。この状態で、図17に示すようにコンタクトアーム26を上方(矢印方向)に移動させようとする慣性力が生じると、同時に回動規制部材55を回動させようとする慣性力が生じる。具体的には、ウエイト部55bを上方(第1の方向)へ移動させる慣性力が生じ、この慣性力により回動規制部材55が回動する。言い換えると、ウエイト部55bと係合爪部55c(当接部)との間に位置して第1の方向と直交する軸部を支点に、ウエイト部55bが第1の方向に回動する一方、係合爪部55c(当接部)がコンタクトアーム26に近づく方向に回動する。回動規制部材55が回動すると、係合爪部55cがコンタクトレバー32の移動経路に突出する。これにより、コンタクトレバー32が上方に移動できなくなるため、コンタクトアーム26がそれ以上は上方に移動できないようにロックされる。言い換えると、係合爪部55c(当接部)は、コンタクトアーム26に近づく方向に回動することで、コンタクトレバー32を介してコンタクトアーム26に上方から当接可能となり、コンタクトアーム26は、サインオン状態となる規定量の移動が抑止される。このため、コンタクトアーム26を上方に移動させようとする慣性力が発生しても、サインオン状態となることはない。すなわち、コンタクトアーム26を上方に移動させようとする慣性力が発生したときに、駆動部13が作動しない打込不可状態となる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態は、上方(第1の方向)に慣性力が生じたときにコンタクト部25とは独立して移動を開始する回動規制部材55を備え、上方に慣性力が生じたときに回動規制部材55が回動することで、駆動部13が作動しない打込不可状態となる。すなわち、回動規制部材55を使用して、第1の方向に慣性力が生じたときに駆動部13による打ち込み作動を規制する規制部が構成されている。そして、この規制部は、第1の方向に慣性力が生じたときにコンタクトアーム26に上方から当接可能である。具体的には、規制部は、第1の方向に慣性力が生じたときにコンタクトレバー32を介してコンタクトアーム26に上方から当接可能である。よって、コンタクトアーム26を作動方向に移動させようとする慣性力が発生した場合でも、打ち込み工具10の安全性を確保することができる。また、コンタクトアーム26のバネ荷重を大きくしたり、メインバルブ部16の反応を鈍感にしたりする必要がないので、ユーザの操作性に悪影響がない。
【0077】
具体的には、回動規制部材55は、上方に慣性力が生じたときにコンタクト部25に係合し、コンタクト部25がサインオン状態となることを妨げるため、上方に慣性力が生じたときに駆動部13を起動しないようにすることができる。
【0078】
(変形例3)
本変形例の特徴は、上記した実施形態のスライド部40に代えて、空気流路19を開閉するロックバルブ部60を使用した点にある。なお、本実施形態の基本的構成は上記した実施形態と相違しないため、重複する記載を避けて、相違する箇所のみを説明する。
【0079】
ロックバルブ部60は、図19に示すように、空気流路19の出口付近に配置されており、パイロットバルブ35とは別の位置で空気流路19を開閉するための部位である。このロックバルブ部60は、図23に示すように、排気通路61、バルブステム62、付勢部材63を備える。
【0080】
排気通路61は、空気流路19の出口を構成している。この排気通路61が閉じられると、空気流路19が閉じられ、空気室18内の圧縮空気が外部に抜けないようになっている。この排気通路61は、上流側よりも小径で形成された縮径部61aを有する。
【0081】
バルブステム62は、排気通路61を開閉するために、排気通路61の内部に上下動可能に配置された部材である。このバルブステム62は、第1の方向(上方)に慣性力が生じたときにコンタクト部25とは独立して移動を開始する可動部を構成する。このバルブステム62は、自然状態においては下方に位置することで排気通路61を開放している。また、このバルブステム62は、上方に規定量移動することで排気通路61を閉塞する。具体的には、このバルブステム62は、Oリングなどで形成されたシール部62aを有している。バルブステム62が下方に位置しているときには、図23(a)に示すように、シール部62aが縮径部61aよりも下方に位置しているので、排気通路61が閉じられない。一方、バルブステム62が上方に位置しているときには、図23(b)に示すように、シール部62aが縮径部61aの内側に入り込むので、排気通路61が閉じられる。
【0082】
付勢部材63は、バルブステム62を下方に付勢する部材(バネ等)である。バルブステム62が付勢部材63によって付勢されることで、ロックバルブ部60は、上方に慣性力が生じていない待機時において空気流路19を開放するようになっている。
【0083】
上記したバルブステム62は、上方に慣性力が生じたときに、付勢部材63の付勢力に抗して上方に移動する。バルブステム62が上方に移動することで、駆動部13が作動しない打込不可状態となる。具体的には、バルブステム62が上方に規定量移動することで、シール部62aが排気通路61を塞ぐ。このようにロックバルブ部60によって空気流路19が閉じられ、仮にパイロットバルブ35が作動したとしても空気室18の圧縮空気が抜けないので、メインバルブ部16が作動しないようになっている。
【0084】
次に、上記したバルブステム62の作用について説明する。まず、慣性力が生じていないとき(通常時)の打ち込み動作について説明する。
【0085】
通常時においては、図19に示すように、ロックバルブ部60は開放されており、排気通路61が閉じられていない。このような通常時に、サインオン状態かつトリガレバー21が引き操作されると、図20に示すように、バルブステム35aが押し込まれてパイロットバルブ35が作動することで、空気室18が外部と連通した状態となる。これにより、空気室18に貯留された圧縮空気が抜けて圧力が低下し、図21に示すように、メインバルブ部16が作動して打ち込み動作が実行される。
【0086】
一方、上方に慣性力が生じたときには、図22に示すように、バルブステム62が上方に規定量移動することで、排気通路61(空気流路19)が閉じられる。このため、意図せずにパイロットバルブ35のバルブステム35aが押し込まれた状態となっても、空気室18に貯留された圧縮空気が抜けず、圧力が低下することはない。よって、メインバルブ部16が作動して打ち込み動作が実行されることもない。このように、コンタクトアーム26を上方に移動させようとする慣性力が発生したときに、駆動部13が作動しない打込不可状態となる。
【0087】
以上説明したように、本実施形態は、上方(第1の方向)に慣性力が生じたときにコンタクト部25とは独立して移動を開始するバルブステム62(可動部)を備え、上方に慣性力が生じたときにバルブステム62が移動することで、駆動部13が作動しない打込不可状態となる。すなわち、バルブステム62を使用して、第1の方向に慣性力が生じたときに駆動部13による打ち込み作動を規制する規制部が構成されている。よって、コンタクトアーム26を作動方向に移動させようとする慣性力が発生した場合でも、打ち込み工具10の安全性を確保することができる。また、コンタクトアーム26のバネ荷重を大きくしたり、メインバルブ部16の反応を鈍感にしたりする必要がないので、ユーザの操作性に悪影響がない。
【0088】
具体的には、駆動部13は、メインチャンバ17(第1空気室)と、第1流路を介してメインチャンバ17から空気が供給されることでファスナーを打ち込む打撃ピストン15と、第1流路を開閉するメインバルブ部16(第1バルブ)と、メインバルブ部16を閉じる方向に作用させる空気を貯留する空気室18(第2空気室)と、空気室18と工具外部とを連通させる空気流路19(第2流路)と、空気流路19を開閉するロックバルブ部60(第2バルブ)とを有する。そして、規制部は、上方(第1の方向)に慣性力が生じたときに、空気流路19を絞り、又は閉じることで、空気室18からの空気の排出を抑制する。このようにバルブステム62は、上方に慣性力が生じたときに空気流路19を絞り、または閉じることで空気室18が降圧できないようにし、これによってメインバルブ部16が作動できないようにしているため、上方に慣性力が生じたときに駆動部13を起動しないようにすることができる。
【0089】
なお、本実施形態においては、バルブステム62のシール部62aによって空気流路19を完全に遮断するようにしたが、バルブステム62は空気流路19を完全に遮断するものでなくてもよい。すなわち、バルブステム62(可動部)は、上方(第1の方向)に移動することで空気流路19を絞り、又は閉じ、下方(第2の方向)に移動することで空気流路19を開くものであればよい。例えば、バルブステム62は、コンタクトアーム26を作動方向に移動させようとする慣性力が発生したときに、空気流路19の断面積を小さくすることで、空気室18の排気を遅らせるものであってもよい。空気室18の排気を遅らせることで、空気室18の圧力低下のスピードが遅くなり、メインバルブ部16の作動タイミングを遅らせることができる。このような構成によれば、コンタクトアーム26を作動方向に移動させようとする慣性力が発生した場合でも、メインバルブ部16が作動する圧力まで空気室18の圧力が低下する前に、コンタクトアーム26がサインオフ状態に戻るため、メインバルブ部16が作動しないようにすることができる。ただし、このような構成よりも、空気流路19を完全に遮断する方が確実なので望ましい。
【符号の説明】
【0090】
10 打ち込み工具
11 グリップハウジング
11a グリップエンド
12 ボディハウジング
12a 上面
13 駆動部
14 シリンダ
15 ピストン
15a ドライバ
16 メインバルブ部(第1バルブ)
17 メインチャンバ(第1空気室)
18 空気室(第2空気室)
19 空気流路
20 ノーズ部
21 トリガレバー
21a 指掛け部
21b トリガ回動軸
21c トリガ付勢部材
22 マガジン
24 支持部
25 コンタクト部
26 コンタクトアーム
27 コンタクトノーズ
27a 射出口
28 アーム部
29 接続軸
30 レバー押圧部
30a 押圧片
30b 係合部
30c 係合面
31 コンタクト用バネ
32 コンタクトレバー
32a 回動軸
35 パイロットバルブ
35a バルブステム
40 スライド部(規制部)
41 ホルダ部
41a 凹部
42 ロック部(可動部)
43 付勢部材(付勢部)
45 摺動空間
45a 誘導部
50 回動規制部材(規制部)
50a 軸孔
50b ウエイト部
50c 係合爪部(当接部)
51 付勢部材
52 切欠き部
52a 被係合部
53 回動軸
55 回動規制部材(規制部)
55a 軸孔
55b ウエイト部
55c 係合爪部(当接部)
56 付勢部材
57 回動軸
60 ロックバルブ部(第2バルブ)
61 排気通路
61a 縮径部
62 バルブステム(規制部)
62a シール部
63 付勢部材
図1
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