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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090054
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】打ち込み工具
(51)【国際特許分類】
   B25C 7/00 20060101AFI20240627BHJP
   B25C 1/04 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B25C7/00 Z
B25C1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205695
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157912
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 健
(74)【代理人】
【識別番号】100074918
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】森脇 康介
【テーマコード(参考)】
3C068
【Fターム(参考)】
3C068AA01
3C068BB01
3C068CC02
3C068EE20
3C068FF06
(57)【要約】
【課題】打ち込み工具に装填されているファスナーをすべて打ちきったり、連結ファスナーを打ち込み工具から外したりしなくても、空打ちを実行することができる打ち込み工具を提供する。
【解決手段】マガジン22から引き出された連結ファスナーを射出経路20aに案内するファスナー供給経路30と、前記ファスナー供給経路30から前記射出経路20aへと順次ファスナー60を供給する送り部31と、前記送り部31による前記射出経路20aへのファスナー60送りを実行可能な送り有効状態と、前記送り部31による前記射出経路20aへのファスナー60送りが実行されない送り無効状態とを切り替え可能な切替部45と、を備えるようにした。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のファスナーを連結した連結ファスナーを収容可能なマガジンと、
ファスナーの射出を案内する射出経路が形成されたノーズ部と、
前記マガジンから引き出された連結ファスナーを前記射出経路に案内するファスナー供給経路と、
前記ファスナー供給経路から前記射出経路へと順次ファスナーを送る送り部と、
前記送り部による前記射出経路へのファスナー送りを実行可能な送り有効状態と、前記送り部による前記射出経路へのファスナー送りが実行されない送り無効状態とを切り替え可能な切替部と、
を備える、
打ち込み工具。
【請求項2】
前記送り部は、連結ファスナーに係合し、前記ファスナー供給経路に沿って往復動することで連結ファスナーを前記射出経路へと押し出すことができる送り部材と、連結ファスナーが前記マガジン側に戻らないように規制する逆止部材と、を有し、
前記切替部は、前記送り部材または前記逆止部材の少なくとも一方の動作を切り替えることで、前記送り有効状態と前記送り無効状態とを相互に切り替え可能である、
請求項1に記載の打ち込み工具。
【請求項3】
前記送り部は、前記送り部材を往復動させるフィードピストンを有し、
前記切替部は、前記フィードピストンの作動/非作動を切り替え可能である、
請求項2に記載の打ち込み工具。
【請求項4】
前記送り部は、前記フィードピストンを摺動可能に収容するフィードシリンダを有し、
前記フィードピストンは、圧縮空気が前記フィードシリンダに供給されることで作動するものであり、
前記切替部は、前記フィードシリンダへ圧縮空気を供給するエア供給路を開閉するバルブ部を有する、
請求項3に記載の打ち込み工具。
【請求項5】
前記送り部は、前記送り部材を往復動させるフィードピストンを有し、
前記切替部は、前記フィードピストンの作動範囲を切り替えることで、前記送り部による送り動作が実行されないように設定可能である、
請求項2に記載の打ち込み工具。
【請求項6】
前記切替部は、前記逆止部材が連結ファスナーの移動を規制しないようにすることで、前記送り部による送り動作が実行されないように設定可能である、
請求項2に記載の打ち込み工具。
【請求項7】
前記切替部は、前記逆止部材を連結ファスナーに干渉しない位置で保持することができる、
請求項6に記載の打ち込み工具。
【請求項8】
前記逆止部材は、前記ファスナー供給経路に突出することで連結ファスナーの移動を規制し、
前記切替部は、前記逆止部材を前記ファスナー供給経路から退避させることで、前記逆止部材を連結ファスナーと干渉させない、
請求項7に記載の打ち込み工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、締結対象物にファスナーを打ち込む打ち込み工具に関する。
【背景技術】
【0002】
木材や鋼板、コンクリート等の建築部材に対し、釘やピンなどのファスナーを打ち込む打ち込み工具が広く知られている。こうした打込工具は、圧縮空気、ガス燃焼圧力、バネ力などを使用してドライバを駆動し、ドライバによってファスナーを打ち込むようになっている。また、ファスナーの自動送り機能を有する打ち込み工具では、打ち込み動作に連動して次のファスナーがセットされ、連続してファスナーを打ち込むことができる。
【0003】
例えば、特許文献1記載の打ち込み工具は、コイル状に巻き回された連結ファスナーをマガジンに収納し、マガジンから引き出した先頭のファスナーをノーズ部内の射出経路にセットして使用する。射出経路のファスナーが打ち込まれると、この打ち込み動作に連動してファスナー送り機構が作動し、次のファスナーが射出経路にセットされる。
【0004】
ファスナー送り機構は、送り爪と逆止爪とを備える。送り爪は、射出経路内の連結ファスナーに係合して、ファスナーの送り方向に往復動可能となっている。逆止爪は、連結ファスナーがマガジン側に戻らないように規制している。
【0005】
ファスナー送り機構の送り動作は、送り爪が往復動することで実行される。すなわち、送り爪は、連結ファスナーに係合した状態で往動することで、射出経路側に1本分のファスナーを送り出す。そして、送り爪が復動する時には、逆止爪が作用して連結ファスナーの逆流が阻止されるため、送り爪が連結ファスナーを回避するように回動しながら後退移動して、後位のファスナーに係合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5459097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、建築資材として、耐震や耐火・防火を目的に、単板積層材(LVL)、木質接着成形軸材料(PSL、LSL)などが多く使用されている。こうした木材は、単板を接着して製造されている。しかしながら、板を接着する接着剤の量は均一ではないため、ファスナーを打ち込んだときに打ち込み深さにばらつきが生じるという問題があった。具体的には、接着剤が多い部分は他の部分よりも硬いため、ファスナーが深く打ち込めず、ファスナーが浮いてしまうという問題があった。
【0008】
また、無垢材においても、節部はその他の部位と比べて硬いため、ファスナーが浮いてしまうことがあった。
【0009】
なお、一般的な打ち込み工具は打込力・打込量を調整する機能を備えている。このため、打込力・打込量を高く設定すれば、硬い部分に打ち込んだときのファスナーの浮きを解消することができる。しかしながら、打ち込み工具の打込力・打込量を硬い部分に合わせると、その他の施工個所ではファスナーが沈みすぎ、ファスナーの引抜耐力が低下する等の施工上の問題が発生する可能性がある。また、硬質部は一部であるため、その他の多くの施工個所にとっては過剰にエネルギーを消費することとなり、望ましくない。
【0010】
このため、一般的には、硬質でない部分に合わせて打ち込み工具の打込力・打込量を設定し、ファスナーが浮いてしまった場合には、ハンマーなどを用いて手動で打ち込むことが多かった。とはいえ、機械を使用してもファスナーが打ちこめない硬質部に対し、手動でファスナーを打ち込むのは相当な労力を必要としていた。
【0011】
浮いたファスナーを機械で打ち込む方法としては、打ち込み工具で空打ちする方法がある。すなわち、打ち込み工具にファスナーが装填されていない状態で浮いたファスナーを打撃すれば、機械を使用して浮いたファスナーを沈めることができる。
【0012】
しかしながら、打ち込み工具で空打ちするためには、打ち込み工具に装填されているファスナーをすべて打ちきるか、または、連結ファスナーを打ち込み工具から外す作業が必要となり、手間がかかるという問題があった。また、一度外した連結ファスナーは変形してしまう場合があり、再装填が難しい場合もあった。
【0013】
そこで、本発明は、打ち込み工具に装填されているファスナーをすべて打ちきったり、連結ファスナーを打ち込み工具から外したりしなくても、空打ちを実行することができる打ち込み工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した課題を解決するため、本発明は、複数のファスナーを連結した連結ファスナーを収容可能なマガジンと、ファスナーの射出を案内する射出経路が形成されたノーズ部と、前記マガジンから引き出された連結ファスナーを前記射出経路に案内する供給経路と、前記供給経路から前記射出経路へと順次ファスナーを供給する送り部と、前記送り部による前記射出経路へのファスナー送りを実行可能な送り有効状態と、前記送り部による前記射出経路へのファスナー送りが実行されない送り無効状態とを切り替え可能な切替部と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記の通りであり、送り部による射出経路へのファスナー送りを実行可能な送り有効状態と、送り部による射出経路へのファスナー送りが実行されない送り無効状態とを切り替え可能な切替部を備える。このため、送り無効状態に設定した後に、射出経路にセットされたファスナーを打ち出せば、次のファスナーが射出経路に送られないので、空打ちが可能となる。よって、打ち込み工具に装填されているファスナーをすべて打ちきったり、連結ファスナーを打ち込み工具から外したりしなくても、空打ちを実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】打ち込み工具の側面図である。
図2】打ち込み工具の正面図である。
図3】打ち込み工具の断面図である。
図4】打ち込み工具の内部構造を説明する斜視図である。
図5】送り部のエア供給路付近の内部構造を説明する拡大斜視図であって、送り部が有効状態の図である。
図6】送り部のエア供給路付近の内部構造を説明する拡大斜視図であって、送り部が無効状態の図である。
図7】変形例1に係るノーズ付近の拡大斜視図であって、(a)送り部が有効状態の図、(b)送り部が無効状態の図である。
図8】変形例1に係るノーズ付近の拡大底面図であって、(a)送り部が有効状態の図、(b)送り部が無効状態の図である。
図9】変形例2に係る打ち込み工具の側面図である。
図10】変形例2に係る打ち込み工具を下から見た断面図である。
図11】変形例2に係るノーズ付近の拡大斜視図であって、(a)送り部が有効状態の図、(b)送り部が無効状態の図である。
図12】変形例2に係るドアを説明する図であって、(a)表面から見た図、(b)裏面から見た図、(c)A-A線断面図である。
図13】変形例2に係るドアを裏面から見た斜視図である。
図14】変形例2に係る送り部(有効状態)を説明する図であって、(a)打ち込み直後の図、(b)フィードピストンが後退し始めたときの図である。
図15】変形例2に係る送り部(有効状態)を説明する図であって、(a)フィードピストンが完全に後退したときの図、(b)フィードピストンが前進し始めたときの図である。
図16】変形例2に係る送り部(有効状態)を説明する図であって、フィードピストンが完全に前進して送り動作が終了したときの図である。
図17】変形例2に係る送り部(無効状態)を説明する図であって、(a)打ち込み直後の図、(b)フィードピストンが完全に後退したときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0018】
本実施形態に係る打ち込み工具10は、締結対象物にファスナー60を打ち込む手持ち式の工具である。この打ち込み工具10は、図1および図2に示すように、ボディハウジング12、グリップハウジング11、トリガレバー21、マガジン22、ノーズ部20、コンタクトアーム26、を備える。なお、以下の説明においては、ファスナー60が打ち出される方向を下方向、下方向の反対方向を上方向、グリップハウジング11の延設方向(上下方向に直交する方向)に見てボディハウジング12側の方向(図1における右方向)を前方向、前方向の反対方向(図1における左方向)を後方向とする。
【0019】
ボディハウジング12は、略円柱状に形成されて、内部にファスナー60の打ち込み動作を行う駆動部13を内蔵している。本実施形態に係る打ち込み工具10は、圧縮空気の圧力によってファスナー60を打ち出す空気圧式の駆動部13を内蔵している。なお、この駆動部13は例示に過ぎず、駆動部13は他の動力源を備えたもの(例えば、ガスの燃焼圧力で作動するものや、モータやバネで作動するもの)であってもよい。
【0020】
駆動部13は、打ち込み動作のための駆動力を発生させる部位である。この駆動部13は、図3に示すように、シリンダ14、ピストン15、ドライバ15aを備えている。具体的には、円筒状のシリンダ14内にピストン15が摺動自在に収容されており、ピストン15の下面にファスナー60を打撃するためのドライバ15aが結合して設けられている。シリンダ14内のピストン15の上面に圧縮空気が供給されると、ピストン15が衝撃的に下方に移動し、ピストン15と一体的に作動するドライバ15aによってファスナー60が下方に打ち出されるようになっている。この駆動部13は、後述するコンタクトアーム26がサインオン状態であることを条件として起動する。言い換えると、サインオン状態でなければ駆動部13は起動せず、ファスナー60は打ち出されない。
【0021】
また、この駆動部13は、メインバルブ部16、メインチャンバ17、パイロットバルブ28を備えている。
【0022】
メインチャンバ17は、外部から供給された圧縮空気が貯留される空間である。メインチャンバ17は、グリップハウジング11の内部と連通している。メインチャンバ17に貯留された圧縮空気は、シリンダ14に供給されてピストン15を作動させるために使用される。
【0023】
メインバルブ部16は、シリンダ14への圧縮空気の供給を制御するためのものである。メインバルブ部16は、シリンダ14の上端付近を覆うように設けられた筒状の部品であり、シリンダ14の軸方向に沿って上下に移動可能に配置されている。このメインバルブ部16は、ファスナー60の打ち込みを待機している状態では、下方に待機しており、シリンダ14の内部空間がメインチャンバ17と連通しないように遮断している。そして、ファスナー60を打ち込むときには、上方に移動し、メインチャンバ17とシリンダ14の内部空間とを連通させる。メインチャンバ17とシリンダ14の内部空間とが連通すると、メインチャンバ17の圧縮空気がシリンダ14内のピストン15の上面に供給され、ピストン15が駆動する。
【0024】
パイロットバルブ28は、メインバルブ部16を作動させるためのパイロットエアを制御するバルブである。このパイロットバルブ28の内部には、バルブステム28aが摺動可能に配置されている。このバルブステム28aは、自然状態において突出方向(下方)に付勢されている。このバルブステム28aが上方へ押し込まれると、パイロットバルブ28が作動して、メインバルブ部16を閉じる方向に圧力を加えていたエアが外部に排出される。これにより、メインバルブ部16を開く方向に働く圧力の方が、メインバルブ部16を閉じる方向に働く圧力よりも大きくなり、メインバルブ部16が開く。メインバルブ部16が開くことで、メインチャンバ17の圧縮空気がピストン15の上面に供給され、1回の打ち込み動作が開始される。
【0025】
グリップハウジング11は、作業者が打ち込み工具10を使用するときに握る棒状の部位である。このグリップハウジング11は、上記したボディハウジング12に対して略直角に連設されている。このグリップハウジング11の内部空間は、メインチャンバ17の一部として機能し、圧縮空気を貯留している。また、グリップハウジング11の後端(グリップエンド11a)には、メインチャンバ17へ外部から圧縮空気を供給するための供給口が設けられている。
【0026】
トリガレバー21は、パイロットバルブ28を開閉するために操作可能に設けられた操作レバーである。作業者は、このトリガレバー21を操作することで、ファスナー60の打ち込みを操作することができる。このトリガレバー21は、グリップハウジング11を把持した手によって操作可能な位置に設けられている。具体的には、作業者がグリップハウジング11を握ったときに人差し指がかかる位置(グリップハウジング11前端付近の下方)にトリガレバー21が配置されており、人差し指でトリガレバー21を引き操作可能となっている。後述するサインオン状態でトリガレバー21が操作されると、パイロットバルブ28のバルブステム28aが上方に押し込まれる。バルブステム28aが上方に押し込まれると、上記したように駆動部13が作動し、ファスナー60が打ち込まれる。
【0027】
マガジン22は、複数のファスナー60を連結した連結ファスナーを収納するためのものである。このマガジン22に収容された連結ファスナーは、後述するノーズ部20へと順次供給され、先頭のファスナー60がドライバ15aの直下(図3に示す射出経路20a)に位置するように保持される。
【0028】
ノーズ部20は、ボディハウジング12の下端に一体的に設けられた部位である。このノーズ部20の内部には、ファスナー60の射出を案内する射出経路20aが形成されている。射出経路20aには、次に打ち出される1本のファスナー60が待機可能である。前記したドライバ15aがノーズ部20の方向へと摺動することで、射出経路20a内に待機しているファスナー60がノーズ部20の先端から打ち出される。
【0029】
また、このノーズ部20の後方には、ファスナー供給経路30および送り部31が設けられている。
【0030】
ファスナー供給経路30は、マガジン22から引き出された連結ファスナーを射出経路20aに案内するための経路である。このファスナー供給経路30は、ファスナー60が1本だけ通れる幅で、マガジン22と射出経路20aとをつなぐように形成されている。このファスナー供給経路30には、図10等に示すように、連結された複数本のファスナー60が並んで待機している。
【0031】
送り部31は、ファスナー供給経路30から射出経路20aへと順次ファスナー60を供給する機構である。送り部31は、マガジン22に格納されたファスナー60を1本ずつ自動的にノーズ部20の射出経路20aに供給する。送り部31によって射出経路20aに供給されたファスナー60は、次回の打ち込みが実行されるまで射出経路20a内で待機することになる。
【0032】
コンタクトアーム26は、ファスナー60が空中に発射される事故を防止するための安全機構である。このコンタクトアーム26がサインオン状態とならなければ、トリガレバー21が操作されてもファスナー60が打ち出されない。
【0033】
コンタクトアーム26は、ノーズ部20に対して上下に摺動可能となっており、バネによって下方に付勢されている。このコンタクトアーム26は、先端に配置されたアーム先端部27がノーズ部20よりも下方まで突出している。コンタクトアーム26は、アーム先端部27を締結対象物に接触させて押し付けることで上方に移動可能である。コンタクトアーム26が上方に押し込まれることで、安全機構が解除されたサインオン状態となり、ファスナー60の打ち込みが可能となる。一方、コンタクトアーム26が上方に押し込まれていない状態では、安全機構がトリガレバー21の操作を無効化するサインオフ状態であるため、トリガレバー21が操作されてもファスナー60が打ち出されないようになっている。
【0034】
本実施形態に係るアーム先端部27は、ノーズ部20の先端を覆うように取り付けられる。アーム先端部27は、筒状の案内経路を備え、この案内経路がノーズ部20の射出経路20aと連通している。このため、ノーズ部20の先端から打ち出されたファスナー60は、アーム先端部27を通過して締結対象物に打ち込まれる。言い換えると、このアーム先端部27の先端の開口が、ファスナー60の射出口27aとなっている。
【0035】
ところで、本実施形態に係る送り部31は、打込み動作に連動して作動し、ファスナー60を1本ずつ自動的にノーズ部20の射出経路20aに供給するようになっている。この送り部31の動作は従来と同様であるが、図14-16を参照しつつ、その基本的な送り動作について説明する。
【0036】
送り部31は、図1図2図14-16等に示すように、フィードシリンダ32、フィードピストン33、エア供給路36、送り部材38、逆止部材41を備える。
【0037】
フィードシリンダ32は、フィードピストン33を摺動可能に収容する円筒状の部位である。フィードシリンダ32に収容されたフィードピストン33は、フィードシリンダ32の軸方向(ファスナー60の送り方向)に沿って前後に移動可能となっている。このフィードピストン33は、ピストン付勢部材34によって常時前方へと付勢されている。また、このフィードピストン33には、フィードシリンダ32の前方に突出するロッド35が接続されている。ロッド35の先端には、後述する送り部材38が回動可能に取り付けられている。よって、フィードピストン33が前後に往復動すると、ロッド35および送り部材38も同時に前後に往復動するようになっている。
【0038】
エア供給路36は、フィードピストン33へ圧縮空気を供給するための管路である。このエア供給路36は、図5に示すように、フィードシリンダ32の内部と連通するように形成されている。上記したフィードピストン33は、エア供給路36から圧縮空気が供給されることで作動する。すなわち、フィードピストン33は、前面側に圧縮空気が供給されることで、圧縮空気の圧力により後方に所定の位置まで移動する。その後、圧縮空気の圧力がなくなると、フィードピストン33は、ピストン付勢部材34の付勢力によって前進し、初期状態に戻る。
【0039】
フィードピストン33に供給される圧縮空気は、図3および図4に示すブローバックチャンバ18から供給される。すなわち、上記したエア供給路36は、上流においてブローバックチャンバ18と連通し、下流においてフィードシリンダ32の内部と連通している。ブローバックチャンバ18は、駆動部13のシリンダ14の内部と連通可能な空間であり、ファスナー60の打ち込み動作が実行されたときに圧縮空気が流入するように構成されている。具体的には、駆動部13が駆動してピストン15が下死点付近まで下降したときに、ピストン15の上部の圧縮空気がブローバックチャンバ18に流れこむように構成されている。ブローバックチャンバ18に流入した圧縮空気は、エア供給路36を通ってフィードシリンダ32に供給され、フィードピストン33が作動する。その後、アーム先端部27が締結対象物から離されてサインオフ状態となると、ブローバックチャンバ18内に貯留された圧縮空気の作用によってピストン15が上方に移動する。ピストン15が上死点に復帰した後、ピストン15を押し上げたシリンダ14内の圧縮空気が工具外部に排出され、シリンダ14内と連通したブローバックチャンバ18の圧縮空気も工具外部に排出される。これによりフィードピストン33に掛かる圧力がなくなるため、ピストン付勢部材34の付勢力でフィードピストン33が初期状態に戻る。
【0040】
なお、図3においては、エア供給路36をハウジングの外部に設けているが、エア供給路36はハウジングの内部に設けてもよい。また、エア供給路36は、ボディハウジング12に設けてもよいし、ノーズ部20に設けてもよい。
【0041】
送り部材38は、ファスナー供給経路30に沿って往復動することで連結ファスナーを射出経路20aへと押し出すことができる部材である。この送り部材38は、復動時(前進時)に、ファスナー60を保持して前方に移動することで、ファスナー60を1本分だけ前方へ送ることができる。この送り部材38は、ロッド35の先端に回動軸38aを介して回動可能に取り付けられている。送り部材38の回動軸38aは、フィードピストン33の摺動方向に対して直交する軸である。
【0042】
送り部材38は、ファスナー60に係合する送り爪を備える。具体的には、前方に形成された前送り爪38bと、後方に形成された後送り爪38cとを備える。前送り爪38bと後送り爪38cとの間隔はファスナー60の1本分の軸を保持できる幅となっており、この一対の送り爪で1本のファスナー60を前後で挟んで保持できるようになっている。この送り部材38は、送り爪付勢部材38dによって常時付勢されている。送り爪付勢部材38dの付勢力により、送り爪は、ファスナー供給経路30内に突出してファスナー60に係合するように付勢されている。一方、この送り部材38は、送り爪付勢部材38dの付勢力に抗して回動することで、ファスナー供給経路30から退避することができる。
【0043】
上記した送り爪は、主に後送り爪38cの前方の面でファスナー60を保持する。すなわち、フィードピストン33が前進したときには、後送り爪38cの前方の面がファスナー60を前に押し出すように作用する。一方、送り爪の後方の面は、ファスナー60を保持しようとする力が逃げるように、フィードピストン33の移動方向に対して傾斜している。このため、フィードピストン33が後退したときに、前送り爪38bおよび後送り爪38cの後方の面がファスナー60に押し付けられ、送り爪をファスナー供給経路30から退避させる反作用力が生じるようになっている。
【0044】
逆止部材41は、連結ファスナーがマガジン22側に戻らないように規制する部材である。この逆止部材41は、連結ファスナーを間に挟んで送り部材38に対向するように配置されている。本実施形態に係る逆止部材41は、ノーズ部20の側部に取り付けられたドア40(図9および図12参照)の裏側に取り付けられている。ドア40は、ファスナー供給経路30を開放するためのものであり、釘詰まりの際の除釘作業などで使用される。このドア40は、打ち込み工具10の使用時にはノーズ部20と一体的に固定される。逆止部材41は、このドア40の裏面に、回転軸41aを介して回転可能に取り付けられている。回転軸41aは、ファスナー60が打ち出される方向と平行な軸である。なお、逆止部材41は、ドア40ではなく、ノーズ部20に取り付けてもよい。
【0045】
逆止部材41は、ファスナー60に係合する逆止爪41bを備える。この逆止部材41は、逆止爪付勢部材41cによって常時付勢されている。逆止爪付勢部材41cの付勢力により、逆止爪41bは、ファスナー供給経路30内に突出してファスナー60に係合するように付勢されている。一方、この逆止部材41は、逆止爪付勢部材41cの付勢力に抗して回動することで、ファスナー供給経路30から退避することができる。
【0046】
上記した逆止爪41bは、前方の面でファスナー60を保持する。すなわち、ファスナー60が後方に移動しようとしたときには、逆止爪41bの前方の面がファスナー60に係合し、ファスナー60が後方に移動することを阻止する。一方、逆止爪41bの後方の面は、ファスナー60を保持しようとする力が逃げるように、フィードピストン33の移動方向に対して傾斜している。このため、ファスナー60が前方に移動しようとしたときに、逆止爪41bの後方の面がファスナー60に押されて、逆止爪41bをファスナー供給経路30から退避させるようになっている。言い換えると、フィードピストン33が前進したときに、逆止部材41が逆止爪付勢部材41cの付勢力に抗して回動するようになっている。
【0047】
上記した送り部31は、具体的には、以下のような流れでファスナー60の送り動作を実行する。
【0048】
まず、図14(a)に示すように、駆動部13が作動して射出経路20aのファスナー60が打ち出される。このとき、ブローバックチャンバ18に流れ込んだ圧縮空気が、エア供給路36を経由してフィードシリンダ32に供給される。
【0049】
フィードシリンダ32に圧縮空気が供給されることで、図14(b)に示すように、フィードピストン33が後退を始める。このとき、送り部材38の送り爪がファスナー供給経路30のファスナー60を後方に移動させようとするが、ファスナー60の後退は逆止爪41bによって阻止されているので、ファスナー60は動かない。よって、ファスナー60の反作用力を受けて送り爪が押し出され、送り部材38がファスナー供給経路30から退避する方向に回動する。送り爪は、回動することで1本分のファスナー60を迂回して後方に移動する。送り爪が1本分のファスナー60を迂回すると、送り爪付勢部材38dの付勢力によって、送り爪が再びファスナー供給経路30に突出する。
【0050】
図15(a)に示すように、フィードピストン33が完全に後退すると、送り爪が1本うしろのファスナー60を保持した状態となる。
【0051】
その後、サインオフ状態になってフィードシリンダ32の圧縮空気が抜けると、図15(b)に示すように、ピストン付勢部材34の付勢力でフィードピストン33が前進を始める。このとき、送り部材38の送り爪はファスナー60を保持した状態で前進するので、ファスナー供給経路30のファスナー60が前方に送られる。このとき、ファスナー60によって逆止部材41の逆止爪41bが押し出され、逆止部材41がファスナー供給経路30から退避する方向に回動する。
【0052】
図16に示すように、フィードピストン33が元の状態に戻ると、ファスナー60が1本分だけ送られ、射出経路20aに先頭のファスナー60が待機した状態となる。
【0053】
ところで、本実施形態に係る打ち込み工具10は、上記した送り部31の送り動作を行うか否かを切り替えることができるように構成されている。すなわち、送り部31による射出経路20aへのファスナー60送りを実行可能な送り有効状態と、送り部31による射出経路20aへのファスナー60送りが実行されない送り無効状態とを切り替え可能な切替部を備えている。本実施形態に係る切替部は、送り部材38の動作を切り替えることで、送り有効状態と送り無効状態とを相互に切り替え可能である。
【0054】
具体的には、本実施形態に係る切替部は、フィードピストン33の作動/非作動を切り替え可能なバルブ部45である。バルブ部45は、エア供給路36を開閉することで、フィードピストン33を作動させるか否かを切り替える。
【0055】
このバルブ部45は、図5および図6に示すように、コック式のバルブであり、バルブハンドル45a、ボール弁45bを備えている。バルブハンドル45aを回動操作することで、エア供給路36の中途部に設けられたボール弁45bがエア供給路36を開閉する。なお、このようなボールバルブはバルブ部45の一例に過ぎず、任意のバルブをバルブ部45に使用できることは言うまでもない。
【0056】
図5は、バルブ部45でエア供給路36が閉じられていない状態であり、ファスナー60送りを実行可能な送り有効状態である。この状態では、駆動部13が作動してブローバックチャンバ18に圧縮空気が流れ込むと、ブローバックチャンバ18の圧縮空気がエア供給路36を経由してフィードシリンダ32に供給される。よって、フィードピストン33が往復動してファスナー60が送られる。
【0057】
一方、図6は、バルブ部45でエア供給路36が閉じられた状態であり、ファスナー60送りが実行されない送り無効状態である。この状態では、駆動部13が作動してブローバックチャンバ18に圧縮空気が流れ込んでも、ブローバックチャンバ18の圧縮空気がフィードシリンダ32に供給されない。よって、フィードピストン33が作動せず、ファスナー60が送られない。
【0058】
本実施形態は上記の通りであり、送り有効状態と送り無効状態とを切り替え可能な切替部を備える。このため、送り無効状態に設定した後に、射出経路20aにセットされたファスナー60を打ち出せば、次のファスナー60が射出経路20aに送られない。すなわち、射出経路20aにファスナー60が存在しない状態で工具を使用できるので、空打ちが可能となる。よって、打ち込み工具10に装填されているファスナー60をすべて打ちきったり、連結ファスナーを打ち込み工具10から外したりしなくても、空打ちを実行することができる。
なお、本実施形態は空気圧で作動する送り部31を例に挙げて説明しているが、これに限らず、他の動力源(例えばモータなど)を備えた送り部31であっても、送り部材38の動作を切り替えることで同様の効果を得ることができる。例えば、モータで送り部材38が作動する場合、モータが作動するかいなかを切り替えることで、送り有効状態と送り無効状態とを切り替えることができる。
【0059】
(変形例1)
本変形例の特徴は、上記した実施形態のバルブ部45に代えて、図7および図8に示すようなロック部50(切替部)を設けた点にある。なお、本変形例の基本的構成は上記した実施形態と相違しないため、重複する記載を避けて、相違する箇所のみを説明する。
【0060】
本実施形態に係る打ち込み工具10は、上記した実施形態と同様に、送り部31の送り動作を行うか否かを切り替えることができるように構成されている。すなわち、送り部31による射出経路20aへのファスナー60送りを実行可能な送り有効状態と、送り部31による射出経路20aへのファスナー60送りが実行されない送り無効状態とを切り替え可能な切替部を備えている。本実施形態に係る切替部は、送り部材38の動作を切り替えることで、送り有効状態と送り無効状態とを相互に切り替え可能である。
【0061】
具体的には、本実施形態に係る切替部は、フィードピストン33の作動範囲を切り替えることで、送り部31による送り動作が実行されないように設定可能なロック部50である。ロック部50は、フィードピストン33の移動範囲を物理的に制限することで、フィードピストン33を作動させるか否かを切り替える。
【0062】
このロック部50は、図7および図8に示すように、バー形状の本体51と、本体51に固定されたピン51aとを備える。ピン51aは、ロック部50の移動をガイドするためのものであり、後述するガイド溝52aに挿入されている。
【0063】
本実施形態のフィードシリンダ32の側部には、プレート状のガイド部52が設けられている。このガイド部52には、略L字形のガイド溝52aが形成されている。このガイド溝52aにピン51aが挿入されており、ピン51aはガイド溝52aの長手方向に沿って移動できるようなっている。このため、ロック部50は、ガイド溝52aに沿って手動で移動できるようになっている。
【0064】
図7(a)および図8(a)は、ロック部50を後方に移動した状態であり、ファスナー60送りを実行可能な送り有効状態である。この状態では、ロック部50がフィードピストン33(またはロッド35や送り部材38)に干渉しない位置に配置されている。よって、フィードピストン33の移動は規制されない。この状態で駆動部13が作動すると、圧縮空気がフィードシリンダ32に供給され、フィードピストン33が往復動してファスナー60が送られる。
【0065】
一方、図7(b)および図8(b)は、ロック部50を前方に移動した状態であり、ファスナー60送りが実行されない送り無効状態である。この状態では、ロック部50がフィードピストン33(またはロッド35や送り部材38)に干渉する位置に配置されている。よって、ロック部50によってフィードピストン33の移動が物理的に規制される。具体的には、フィードシリンダ32の前面32aと、送り部材38の突起53との間に、ロック部50の本体51が挿入される。このとき、ロック部50は、ピン51aとガイド溝52aとが係合することにより、後方へ移動できないようにロックされる。そして、ロック部50の前端は、送り部材38に形成された突起53の後面に臨むように配置されている。このため、送り部材38(フィードピストン33およびロッド35)が後退しようとしても、ロック部50が干渉し、ファスナー60の送り動作に必要な量だけ送り部材38が後退できないようになっている。なお、ファスナー60の送り動作に必要な量とは、1本分のファスナーを迂回して1本後ろのファスナーに係合できる移動量である。このように、ロック部50がつっかえ棒のように作用し、フィードピストン33が後退することを妨げている。この状態で駆動部13が作動すると、圧縮空気がフィードシリンダ32に供給されるが、フィードピストン33はファスナー60の送り動作に必要な量だけ移動できないので、ファスナー60が送られない。
【0066】
なお、本変形例においては、フィードシリンダ32の前面32aと、送り部材38の突起53との間に、ロック部50を固定できるようにしている。しかしながら、フィードピストン33の移動を物理的に規制する方法としては、これに限らない。すなわち、ロック部50を係合させる場所はどこでも構わない。例えば、ロッド35に突起53を形成し、この突起53にロック部50を係合させてもよい。
【0067】
本変形例は上記の通りであり、送り有効状態と送り無効状態とを切り替え可能な切替部を備える。このため、送り無効状態に設定した後に、射出経路20aにセットされたファスナー60を打ち出せば、次のファスナー60が射出経路20aに送られない。すなわち、射出経路20aにファスナー60が存在しない状態で工具を使用できるので、空打ちが可能となる。よって、打ち込み工具10に装填されているファスナー60をすべて打ちきったり、連結ファスナーを打ち込み工具10から外したりしなくても、空打ちを実行することができる。
【0068】
(変形例2)
本変形例の特徴は、上記した実施形態のバルブ部45に代えて、図9-17に示すような退避部55(切替部)を設けた点にある。なお、本変形例の基本的構成は上記した実施形態と相違しないため、重複する記載を避けて、相違する箇所のみを説明する。
【0069】
本実施形態に係る打ち込み工具10は、上記した実施形態と同様に、送り部31の送り動作を行うか否かを切り替えることができるように構成されている。すなわち、送り部31による射出経路20aへのファスナー60送りを実行可能な送り有効状態と、送り部31による射出経路20aへのファスナー60送りが実行されない送り無効状態とを切り替え可能な切替部を備えている。本実施形態に係る切替部は、逆止部材41の動作を切り替えることで、送り有効状態と送り無効状態とを相互に切り替え可能である。
【0070】
具体的には、本実施形態に係る切替部は、逆止部材41が連結ファスナーの移動を規制しないようにすることで、送り部31による送り動作が実行されないように設定可能な退避部55である。退避部55は、逆止部材41を連結ファスナーに干渉しない位置で保持することができる。
【0071】
この退避部55は、図12に示すように、ドア40に設けられており、レバー56、引き上げ部57を備える。なお、退避部55は、ドア40ではなく、ノーズ部20に取り付けてもよい。すなわち、逆止部材41を、ノーズ部20に取り付けた場合は、退避部55もノーズ部20に取り付けることができる。
【0072】
レバー56は、ドア40の表面に操作可能に取り付けられた部材である。このレバー56は、後述するカム係合部57aを支点として約180度回動させることが可能である。このレバー56を図11(a)に示すように前側に倒すことで、送り有効状態となる。反対に、このレバー56を図11(b)に示すように後側に倒すことで、送り無効状態となる。このレバー56は、カム部56a、操作部56cを備える。
【0073】
カム部56aは、回動軸(カム係合部57a)の周囲に形成されたカム形状である。このカム部56aがドア40の表面を押さえつけることにより、ドア40の表面から回動軸(カム係合部57a)までの距離が変動する。具体的には、レバー56を後側に倒したときには、ドア40の表面から回動軸(カム係合部57a)までの距離が相対的に大きくなるため、後述する引き上げ部57がカム部56aによって、ファスナー供給経路30から退避する方向(図10に示す左方向)に引き付けられる。一方、レバー56を前側に倒したときには、ドア40の表面から回動軸(カム係合部57a)までの距離が相対的に小さくなるため、後述する引き上げ部57が引き付けられていない状態となる。
【0074】
操作部56cは、レバー56を操作するためにユーザに操作可能に設けられた棒状の部位である。この操作部56cは、ドア40の表面に操作可能に設けられている。
【0075】
引き上げ部57は、レバー56と逆止部材41との間に配置される部材である。この引き上げ部57は、レバー56によって引き付けられたとき(送り無効状態)には、逆止部材41をファスナー供給経路30から退避する方向に移動させる。また、この引き上げ部57は、レバー56によって引き付けられていないとき(送り有効状態)には、逆止部材41に作用しない。
【0076】
この引き上げ部57は、図12および図13に示すように、金属製線材をハット形に屈折させて形成されており、中間部のカム係合部57a、カム係合部57aの両端から直角に延びる一対の脚部57b、一対の脚部57bから直角に延びる爪係合部57cを備える。カム係合部57aは、上述したように、レバー56に保持されており、レバー56の回動軸としても機能する。爪係合部57cは、ドア40の内側において、逆止部材41の係合部41dに係合している。
【0077】
図14-16は、レバー56を前側に倒した状態であり、ファスナー60送りを実行可能な送り有効状態である。この状態では、逆止部材41がファスナー供給経路30に突出しているので、駆動部13が作動すると、すでに説明した通りの流れでファスナー60が送られる。
【0078】
一方、図17は、レバー56を後側に倒した状態であり、ファスナー60送りが実行されない送り無効状態である。この状態では、引き上げ部57がレバー56によって引き付けられるので、逆止部材41が逆止爪付勢部材41cの付勢力に抗してファスナー供給経路30から退避した位置で待機する。具体的には、爪係合部57cがドア40の表面側に変位し、係合部41dで係合された逆止部材41がドア40の表面側に移動することで、逆止爪41dがファスナー供給経路30から退避した位置に移動する。この状態では、逆止部材41がファスナー60の移動を規制しないので、駆動部13が作動してもファスナー60が送られない。
【0079】
送り無効状態のおける具体的な動作は以下のとおりである。まず、図17(a)に示すように、駆動部13が作動して射出経路20aのファスナー60が打ち出される。そして、フィードシリンダ32に圧縮空気が供給されることで、フィードピストン33が後退を始める。
【0080】
このとき、ファスナー60の後退は逆止爪41bによって阻止されていない。このため、図17(b)に示すように、送り部材38の送り爪は、ファスナー供給経路30の先頭のファスナー60を保持したまま後方に移動する。
【0081】
その後、ピストン付勢部材34の付勢力でフィードピストン33が前進したとしても、保持している先頭のファスナー60を再び同じ位置に戻すだけなので、図17(a)の状態に戻る。このように、フィードピストン33が往復動したにもかかわらず、射出経路20aへのファスナー60の送り動作は実行されないようになっている。
【0082】
本変形例は上記の通りであり、送り有効状態と送り無効状態とを切り替え可能な切替部を備える。このため、送り無効状態に設定した後に、射出経路20aにセットされたファスナー60を打ち出せば、次のファスナー60が射出経路20aに送られない。すなわち、射出経路20aにファスナー60が存在しない状態で工具を使用できるので、空打ちが可能となる。よって、打ち込み工具10に装填されているファスナー60をすべて打ちきったり、連結ファスナーを打ち込み工具10から外したりしなくても、空打ちを実行することができる。
【符号の説明】
【0083】
10 打ち込み工具
11 グリップハウジング
11a グリップエンド
12 ボディハウジング
13 駆動部
14 シリンダ
15 ピストン
15a ドライバ
16 メインバルブ部
17 メインチャンバ
18 ブローバックチャンバ
20 ノーズ部
20a 射出経路
21 トリガレバー
22 マガジン
26 コンタクトアーム
27 アーム先端部
27a 射出口
28 パイロットバルブ
28a バルブステム
30 ファスナー供給経路
31 送り部
32 フィードシリンダ
32a 前面
33 フィードピストン
34 ピストン付勢部材
35 ロッド
36 エア供給路
38 送り部材
38a 回動軸
38b 前送り爪
38c 後送り爪
38d 送り爪付勢部材
40 ドア
41 逆止部材
41a 回転軸
41b 逆止爪
41c 逆止爪付勢部材
41d 係合部
45 バルブ部(切替部)
45a バルブハンドル
45b ボール弁
50 ロック部(切替部)
51 本体
51a ピン
52 ガイド部
52a ガイド溝
53 突起
55 退避部(切替部)
56 レバー
56a カム部
56c 操作部
57 引き上げ部
57a カム係合部
57b 脚部
57c 爪係合部
60 ファスナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17