(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090055
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】表示装置及びヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240627BHJP
G02B 27/28 20060101ALI20240627BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20240627BHJP
G02B 3/08 20060101ALI20240627BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240627BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B27/28 Z
G02B5/00 Z
G02B3/08
G02B5/30
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205696
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】臼倉 奈留
【テーマコード(参考)】
2H042
2H149
2H199
【Fターム(参考)】
2H042AA03
2H042AA04
2H042AA19
2H042AA20
2H042AA26
2H149AA02
2H149AB23
2H149BA02
2H149BA04
2H199AB12
2H199AB42
2H199AB47
2H199AB52
2H199CA23
2H199CA25
2H199CA35
2H199CA43
2H199CA47
2H199CA63
2H199CA64
2H199CA65
2H199CA68
2H199CA86
2H199CA87
(57)【要約】 (修正有)
【課題】薄型化が可能あり、かつ、表示特性を向上させることができる表示装置、及び、該表示装置を備えたヘッドマウントディスプレイを提供する。
【解決手段】観察者側に向かって順に設けられた表示パネル(10)、直線偏光板(20)、第1の偏光選択反射板(31)、第1の位相差板(41)及び第1のレンズ(51)と、ハーフミラー(60)と、上記ハーフミラーの観察者側に設けられ、かつ、互いに対向して配置された第2のレンズ(52)及び第2の位相差板(42)と、第2の偏光選択反射板(32)と、を備え、上記表示パネルから上記第2の偏光選択反射板に向かう方向に沿った断面視において、上記第1のレンズと上記第2のレンズとは、上記ハーフミラーを対称面として非対称な形状を有する、表示装置(100)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察者側に向かって順に設けられた表示パネル、直線偏光板、及び、第1の偏光選択反射板と、
前記第1の偏光選択反射板の観察者側に設けられ、かつ、互いに対向して配置された第1の位相差板及び第1のレンズと、
前記第1の位相差板及び前記第1のレンズの観察者側に設けられたハーフミラーと、
前記ハーフミラーの観察者側に設けられ、かつ、互いに対向して配置された第2のレンズ及び第2の位相差板と、
前記第2のレンズ及び前記第2の位相差板の観察者側に設けられた第2の偏光選択反射板と、を備え、
前記表示パネルから前記第2の偏光選択反射板に向かう方向に沿った断面視において、前記第1のレンズと前記第2のレンズとは、前記ハーフミラーを対称面として非対称な形状を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1のレンズは、第1の段差部を有する第1のフレネルレンズであり、
前記第2のレンズは、第2の段差部を有する第2のフレネルレンズであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示パネルから前記第2の偏光選択反射板に向かう方向に沿った断面視において、
前記第1の段差部と前記第2の段差部とは、前記ハーフミラーを対称面として非対称な形状を有することを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1の段差部は、前記表示パネルの中心に対して前記観察者の瞳が正面を向いたときを基準として、前記観察者の瞳の中心線に対する前記表示パネルからの映像光の入射角が30°以上である領域、及び、-30°以下である領域にのみ配置されることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第2の段差部は、前記表示パネルの中心に対して前記観察者の瞳が正面を向いたときを基準として、前記観察者の瞳の中心線に対する前記表示パネルからの映像光の入射角が30°以上である領域、及び、-30°以下である領域にのみ配置されることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示パネルから前記第2の偏光選択反射板に向かう方向に沿った断面視において、
前記表示パネルの中心に対して前記観察者の瞳が正面を向いたときを基準として、前記観察者の瞳の中心線に対する前記表示パネルからの映像光の入射角が30°以上である領域、及び、-30°以下である領域では、前記第1のレンズと前記第2のレンズとは、前記ハーフミラーを対称面として非対称な形状を有し、
前記観察者の瞳の中心線に対する前記表示パネルからの映像光の入射角が-30°を超え、30°未満である領域では、前記第1のレンズと前記第2のレンズとは、前記ハーフミラーを対称面として対称な形状を有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
更に、前記第1の偏光選択反射板及び前記第2の偏光選択反射板とで挟まれる領域の外側に第3のレンズを備えることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記表示パネル及び前記直線偏光板を含むパネルは、液晶層を備える液晶パネルであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
前記表示パネルは、自発光パネルであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の表示装置と、前記観察者の頭部に装着する装着部と、を備えることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置及び上記表示装置を備えるヘッドマウントディスプレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)は、観察者(ユーザ)の頭部に装着された状態で観察者が画像を見ることができるように画像を出力する表示装置である。HMDとしては、例えば、両眼を覆い、観察者の視野にはHMDの表示が見えるようにした没入型のHMDがある。没入型のHMDは、外光が遮蔽されて深い没入感が得られ、VR(Virtual Reality)デバイスとも呼ばれる。
【0003】
近年、メタバースと呼ばれるバーチャル空間に注目が集まっており、その世界へアクセスするためのツールとしてVR-HMDは市場の広がりが期待されている。一方で、VR-HMDでは、HMDの筐体が大きいことが指摘されており、VR-HMDを広く普及させるためにコンパクト化が求められている。
【0004】
近年、そのコンパクト化実現手段として、偏光の特性を利用して、ハーフミラーと、反射型偏光板(例えば、3M社製の商品名「APF」と)、λ/4フィルムと、を用いた、折り返し光学系(「パンケーキレンズ」などと呼ばれている)の開発が活発に行われている(例えば、特許文献1~5)。当該光学系は薄型化が望める一方で、ハーフミラーを使用することにより、光利用効率が原理的に25%となってしまう課題がある。
【0005】
光利用効率を高めるための技術として、例えば、特許文献6には、複数の画素を備え、上記複数の画素のうち少なくとも1つから光が出射されるよう構成された表示媒体と、出射された光に少なくとも2つの光路を与える光学配置と、を備え、上記光学配置は、出射された光の第1の偏光成分を透過するよう構成された第1の偏光選択ミラーと、出射された光の第2の偏光成分を透過するよう構成された第2の偏光選択ミラーと、上記第1の偏光選択ミラー及び上記第2の偏光選択ミラーとの間に配置された部分ミラーと、を備えるヘッドマウントディスプレイが開示されている。
【0006】
また、特許文献7には、第1の吸収型直線偏光板と、第1の反射型直線偏光板と、第1の位相差板と、入射した光の一部を透過し、一部を反射する部分反射ミラーと、第2の位相差板と、第2の反射型直線偏光板と、をこの順で有し、光が上記第1の位相差板を通過して上記第1の反射型直線偏光板へ入射したときに、反射する円偏光の旋回方向と、光が上記第2の位相差板を通過して上記第2の反射型直線偏光板へ入射したときに、反射する円偏光の旋回方向とが逆である光学素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3295583号
【特許文献2】特許第4408159号
【特許文献3】特許第6340085号
【特許文献4】特許第6377765号
【特許文献5】特許第6389273号
【特許文献6】米国特許出願公開第2021/0271082号明細書
【特許文献7】国際公開第2021/200428号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献6のヘッドマウントディスプレイ及び上記特許文献7の光学素子は、例えば、
図18に示す比較形態の表示装置の構成を有する。比較形態の表示装置100Rは、表示パネル10と、直線偏光板20と、第1の偏光選択反射板31と、第1の位相差板41と、第1のレンズ51Rと、ハーフミラー60と、第2のレンズ52Rと、第2の位相差板42と、第2の偏光選択反射板32と、を観察者U側に向かって順に備える。第1の位相差板41及び第2の位相差板42は、λ/4板である。部材間は接着剤で接着されていてもよいし、空気層を挟んでいてもよい。また、レンズは3つ以上であってもよい。
図18は、比較形態に係る表示装置を模式的に示した分解断面図である。
【0009】
パンケーキレンズと呼ばれる従来の表示装置では、表示パネルから出射した光は1つの経路のみを通過して観察者へと到達する。一方、比較形態の表示装置100Rでは、表示パネル10から出射した光は、
図18に示すように、第1の経路R1に加えて第2の経路R2も通過することが可能であり、光の利用効率を高めることができる。このような表示方式は、ダブルパス方式ともいう。
【0010】
しかしながら、比較形態の表示装置100Rは、ハーフミラー60を中心に対称的な光学系であるため構成に制約がある。特に通常の形状のレンズを用いる場合は厚みが増加し易い。そのため、厚さや表示品位の観点では改善の余地がある。
【0011】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、薄型化が可能であり、かつ、表示特性を向上させることができる表示装置、及び、該表示装置を備えたヘッドマウントディスプレイを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明の一実施形態は、観察者側に向かって順に設けられた表示パネル、直線偏光板、及び、第1の偏光選択反射板と、上記第1の偏光選択反射板の観察者側に設けられ、かつ、互いに対向して配置された第1の位相差板及び第1のレンズと、上記第1の位相差板及び上記第1のレンズの観察者側に設けられたハーフミラーと、上記ハーフミラーの観察者側に設けられ、かつ、互いに対向して配置された第2のレンズ及び第2の位相差板と、上記第2のレンズ及び上記第2の位相差板の観察者側に設けられた第2の偏光選択反射板と、を備え、上記表示パネルから上記第2の偏光選択反射板に向かう方向に沿った断面視において、上記第1のレンズと上記第2のレンズとは、上記ハーフミラーを対称面として非対称な形状を有する、表示装置。
【0013】
(2)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、上記第1のレンズは、第1の段差部を有する第1のフレネルレンズであり、上記第2のレンズは、第2の段差部を有する第2のフレネルレンズである、表示装置。
【0014】
(3)また、本発明のある実施形態は、上記(2)の構成に加え、上記表示パネルから上記第2の偏光選択反射板に向かう方向に沿った断面視において、上記第1の段差部と上記第2の段差部とは、上記ハーフミラーを対称面として非対称な形状を有する、表示装置。
【0015】
(4)また、本発明のある実施形態は、上記(2)又は上記(3)の構成に加え、上記第1の段差部は、上記表示パネルの中心に対して上記観察者の瞳が正面を向いたときを基準として、上記観察者の瞳の中心線に対する上記表示パネルからの映像光の入射角が30°以上である領域、及び、-30°以下である領域にのみ配置される、表示装置。
【0016】
(5)また、本発明のある実施形態は、上記(2)、上記(3)又は上記(4)の構成に加え、上記第2の段差部は、上記表示パネルの中心に対して上記観察者の瞳が正面を向いたときを基準として、上記観察者の瞳の中心線に対する上記表示パネルからの映像光の入射角が30°以上である領域、及び、-30°以下である領域にのみ配置される、表示装置。
【0017】
(6)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)又は上記(5)の構成に加え、上記表示パネルから上記第2の偏光選択反射板に向かう方向に沿った断面視において、上記表示パネルの中心に対して上記観察者の瞳が正面を向いたときを基準として、上記観察者の瞳の中心線に対する上記表示パネルからの映像光の入射角が30°以上である領域、及び、-30°以下である領域では、上記第1のレンズと上記第2のレンズとは、上記ハーフミラーを対称面として非対称な形状を有し、上記観察者の瞳の中心線に対する上記表示パネルからの映像光の入射角が-30°を超え、30°未満である領域では、上記第1のレンズと上記第2のレンズとは、上記ハーフミラーを対称面として対称な形状を有する、表示装置。
【0018】
(7)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)、上記(5)又は上記(6)の構成に加え、更に、上記第1の偏光選択反射板及び上記第2の偏光選択反射板とで挟まれる領域の外側に第3のレンズを備える、表示装置。
【0019】
(8)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)、上記(5)、上記(6)又は上記(7)の構成に加え、上記表示パネル及び上記直線偏光板を含むパネルは、液晶層を備える液晶パネルである、表示装置。
【0020】
(9)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)、上記(5)、上記(6)又は上記(7)の構成に加え、上記表示パネルは、自発光パネルである、表示装置。
【0021】
(10)また、本発明の他の一実施形態は、上記(1)、上記(2)、上記(3)、上記(4)、上記(5)、上記(6)、上記(7)、上記(8)又は上記(9)に記載の表示装置と、上記観察者の頭部に装着する装着部と、を備える、ヘッドマウントディスプレイ。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、薄型化が可能あり、かつ、表示特性を向上させることができる表示装置、及び、該表示装置を備えたヘッドマウントディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態1に係る表示装置を模式的に示した分解断面図である。
【
図2】実施形態1に係る表示装置における光の第1の経路を模式的に示した分解断面図である。
【
図3】実施形態1に係る表示装置における光の第2の経路を模式的に示した分解断面図である。
【
図4】実施形態1に係る表示装置が備える第1のレンズ及び第2のレンズの断面模式図である。
【
図5】実施形態1に係る表示装置が備える第1のフレネルレンズについて説明する断面模式図である。
【
図6】実施形態1に係る表示装置が備える第2のフレネルレンズについて説明する断面模式図である。
【
図7】実施形態1に係る表示装置の一例を示す断面模式図である。
【
図8】実施形態2に係る表示装置が備える第1のレンズ及び第2のレンズの断面模式図である。
【
図9】実施形態2に係る表示装置のFOVとスポットダイアグラムとの関係を示すグラフである。
【
図10】実施形態1及び2の変形例1に係る表示装置を模式的に示した分解断面図の一例である。
【
図11】実施形態1及び2の変形例1に係る表示装置を模式的に示した分解断面図の一例である。
【
図12】実施形態1及び2の変形例2に係る表示装置を模式的に示した分解断面図である。
【
図13】実施形態3のヘッドマウントディスプレイの外観の一例を示す斜視模式図である。
【
図14】比較例の表示装置における光線経路のシミュレーション結果を示す図である。
【
図15】比較例の表示装置の正面視でのスポットダイアグラムのシミュレーション結果を示す図である。
【
図16】実施例の表示装置における光線経路のシミュレーション結果を示す図である。
【
図17】実施例の表示装置の正面視でのスポットダイアグラムのシミュレーション結果を示す図である。
【
図18】比較形態に係る表示装置を模式的に示した分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に実施形態を掲げ、本発明について図面を参照して更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0025】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係る表示装置を模式的に示した分解断面図である。
図2は、実施形態1に係る表示装置における光の第1の経路を模式的に示した分解断面図である。
図3は、実施形態1に係る表示装置における光の第2の経路を模式的に示した分解断面図である。
図4は、実施形態1に係る表示装置が備える第1のレンズ及び第2のレンズの断面模式図である。
【0026】
図1~
図3に示すように、本実施形態の表示装置100は、観察者側に向かって順に設けられた表示パネル10、直線偏光板20、及び、第1の偏光選択反射板31と、第1の偏光選択反射板31の観察者側に設けられ、かつ、互いに対向して配置された第1の位相差板41及び第1のレンズ51と、第1の位相差板41及び第1のレンズ51の観察者側に設けられたハーフミラー60と、ハーフミラー60の観察者側に設けられ、かつ、互いに対向して配置された第2のレンズ52及び第2の位相差板42と、第2のレンズ52及び第2の位相差板42の観察者側に設けられた第2の偏光選択反射板32と、を備える。
図4に示すように、表示パネル10から第2の偏光選択反射板32に向かう方向に沿った断面視において、第1のレンズ51と第2のレンズ52とは、ハーフミラー60を対称面として非対称な形状を有する。このような態様とすることにより、薄型化が可能であり、かつ、表示特性を向上させることができる。なお、本明細書中、分解断面図では、各部材間に間隔を設けて図示しているが、各部材は接着されていてもよいし、間隔を空けて配置されていてもよい。すなわち、各機能層やレンズは接着してもよいし、空気を挟んでもよい。また、レンズは1つではなく、複数用いてもよい。
【0027】
なお、本実施形態では、
図1~
図3に示すように、表示パネル10と、直線偏光板20と、第1の偏光選択反射板31と、第1の位相差板41と、第1のレンズ51と、ハーフミラー60と、第2のレンズ52と、第2の位相差板42と、第2の偏光選択反射板32と、を観察者側に向かって順に備える表示装置100について説明するが、第1の位相差板41及び第1のレンズ51の配置は入れ替わってもよく、また、第2の位相差板42及び第2のレンズ52の配置は入れ替わってもよい。すなわち、実施形態では、第1の位相差板41の観察者側に第1のレンズ51が配置され、かつ、第2のレンズ52の観察者側に第2の位相差板42が配置される態様について説明するが、第1の位相差板41の観察者側に第1のレンズ51が配置され、かつ、第2の位相差板42の観察者側に第2のレンズ52が配置されてもよいし、第1のレンズ51の観察者側に第1の位相差板41が配置され、かつ、第2のレンズ52の観察者側に第2の位相差板42が配置されてもよいし、第1のレンズ51の観察者側に第1の位相差板41が配置され、かつ、第2の位相差板42の観察者側に第2のレンズ52が配置されてもよい。
【0028】
表示パネル10から第2の偏光選択反射板32に向かう方向に沿った断面とは、例えば、観察者Uの上下方向に沿った断面であってもよい。観察者Uの上下方向に沿った断面とは、観察者Uと表示パネル10とを含む面であって、かつ、観察者Uの上下方向に沿った面をいう。
【0029】
2つの部材が、ある面を対称面として非対称な形状を有するとは、例えば、2つの部材のうち、一方の部材の少なくとも一部と、他の部材の少なくとも一部とが、当該ある面を対称面として非対称な形状を有することをいう。具体的には、一方の部材の一部と他方の部材の一部とは、当該ある面を対称面として非対称な形状を有し、一方の部材の他の部分と他方の部材の他の部分とは、当該ある面を対称面として対称な形状を有していてもよいし、一方の部材の全体と他方の部材の全体とは、当該ある面を対称面として非対称な形状を有していてもよい。
【0030】
第1のレンズ51と第2のレンズ52とが、ハーフミラー60を対称面として非対称な形状を有するとは、例えば、第1のレンズ51の少なくとも一部と第2のレンズ52の少なくとも一部とがハーフミラー60を対称面として非対称な形状を有するこという。具体的には、第1のレンズ51の一部と第2のレンズ52の一部とは、ハーフミラー60を対称面として非対称な形状を有し、第1のレンズ51の他の部分と第2のレンズ52の他の部分とは、ハーフミラー60を対称面として対称な形状を有していてもよいし、第1のレンズ51の全体と第2のレンズ52の全体とは、ハーフミラー60を対称面として非対称な形状を有していてもよい。
【0031】
図1~
図3に示すように、本実施形態の表示装置100では、ハーフミラー60を用いた折り返し光学系を実現することが可能となるため、表示装置100を薄型にすることができる。
【0032】
表示パネル10から出射された光は、第1の経路R1に加えて第2の経路R2も通過することが可能であるため、光の利用効率を高めることができる。光の偏光状態は、第1の経路R1では
図2に示すように変化する。
【0033】
表示パネル10は、観察者U側に光(表示光)を出射し、直線偏光板20は、表示パネル10の表示光を直線偏光に変換する(
図2の(i)、例えば、上下方向の直線偏光)。直線偏光板20を透過した直線偏光は、偏光状態を維持したまま第1の偏光選択反射板31を透過する(
図2の(ii)、例えば、上下方向の直線偏光)。第1の偏光選択反射板31を透過した直線偏光は、第1の位相差板41としてのλ/4板で円偏光に変換される(
図2の(iii)、例えば、反時計回りの円偏光)。第1の位相差板41を透過した円偏光は、偏光状態を維持したまま第1のレンズ51、ハーフミラー60及び第2のレンズ52を透過する(
図2の(iv)~(vi)、例えば、反時計回りの円偏光)。第2のレンズ52を透過した円偏光は、第2の位相差板42としてのλ/4板を透過して直線偏光に変換される(
図2の(vii)、例えば、上下方向の直線偏光)。第2の位相差板42を透過した直線偏光は、偏光状態を維持しながら第2の偏光選択反射板32で反射される(
図2の(viii)、例えば、上下方向の直線偏光)。
【0034】
第2の偏光選択反射板32で反射された直線偏光は、第2の位相差板42で円偏光に変換される(
図2の(ix)、例えば、反時計回りの円偏光)。第2の位相差板42を透過した円偏光は、偏光状態を維持したまま第2のレンズ52を透過する(
図2の(x)、例えば、反時計回りの円偏光)。第2のレンズ52を透過した円偏光は、ハーフミラー60で反射されて逆回りの円偏光となる(
図2の(xi)、例えば、時計回りの円偏光)。ハーフミラー60で反射された円偏光は、偏光状態を維持したまま第2のレンズ52を透過する(
図2の(xii)、例えば、時計回りの円偏光)。第2のレンズ52を透過した円偏光は、第2の位相差板42を透過して直線偏光に変換される(
図2の(xiii)、例えば、左右方向の直線偏光)。第2の位相差板42を透過した直線偏光は、偏光状態を維持したまま第2の偏光選択反射板32を透過して観察者Uに視認される(
図2の(xiv)、例えば、左右方向の直線偏光)。
【0035】
光の偏光状態は、第2の経路R2では
図3に示すように変化する。表示パネル10は、観察者U側に光(表示光)を出射し、直線偏光板20は、表示パネル10の表示光を直線偏光に変換する(
図3の(i)、例えば、上下方向の直線偏光)。直線偏光板20を透過した直線偏光は、偏光状態を維持したまま第1の偏光選択反射板31を透過する(
図3の(ii)、例えば、上下方向の直線偏光)。第1の偏光選択反射板31を透過した直線偏光は、第1の位相差板41としてのλ/4板で円偏光に変換される(
図3の(iii)、例えば、反時計回りの円偏光)。第1の位相差板41を透過した円偏光は、偏光状態を維持したまま第1のレンズ51を透過する(
図3の(iv)、例えば、反時計回りの円偏光)。第1のレンズ51を透過した円偏光は、ハーフミラー60で反射されて逆回りの円偏光となる(
図3の(v)、例えば、時計回りの円偏光)。
【0036】
ハーフミラー60で反射された円偏光は、偏光状態を維持したまま第1のレンズ51を透過する(
図3の(vi)、例えば、時計回りの円偏光)。第1のレンズ51を透過した円偏光は、第1の位相差板41を透過して直線偏光に変換される(
図3の(vii)、例えば、左右方向の直線偏光)。第1の位相差板41を透過した直線偏光は、偏光状態を維持したまま第1の偏光選択反射板31で反射される(
図3の(viii)、例えば、左右方向の直線偏光)。
【0037】
第1の偏光選択反射板31で反射された直線偏光は、第1の位相差板41を透過して円偏光に変換される(
図3の(ix)、例えば、時計回りの円偏光)。第1の位相差板41を透過した円偏光は、偏光状態を維持したまま、第1のレンズ51、ハーフミラー60、第2のレンズ52を透過する(
図3の(x)~(xii)、例えば、時計回りの円偏光)。第2のレンズ52を透過した円偏光は、第2の位相差板42を透過して直線偏光に変換される(
図3の(xiii)、例えば、左右方向の直線偏光)。第2の位相差板42を透過した直線偏光は、偏光状態を維持したまま第2の偏光選択反射板32を透過して観察者Uに視認される(
図3の(xiv)、例えば、左右方向の直線偏光)。
【0038】
このように、本実施形態の表示装置100は、ハーフミラー60と第1の偏光選択反射板31との間、ハーフミラー60と第2の偏光選択反射板32との間で光が反射される折り返し光学系とすることで、表示パネル10から観察者U側に向かって出射された光(表示光)を折り畳んで観察者U側に出射するため、表示装置100の厚みを薄くしつつ、光路を長くとることができる。
【0039】
また、本実施形態の表示装置100では、表示パネル10から出射された光は、2つ(第1の経路R1及び第2の経路R2)を通過することが可能であるため、光の利用効率を高めることができる。このような表示方式は、ダブルパス方式ともいう。以下、本実施形態の表示装置100について詳細を説明する。
【0040】
(レンズ)
図4に示すように、第1のレンズ51は、第1の段差部51ASを有する第1のフレネルレンズ51Aであり、第2のレンズ52は、第2の段差部52ASを有する第2のフレネルレンズ52Aであることが好ましい。このような態様とすることにより、設計の自由度を高め、効果的に薄型化を実現することができる。
【0041】
表示パネル10から第2の偏光選択反射板32に向かう方向に沿った断面視において、第1のレンズ51と第2のレンズ52とが、ハーフミラー60を対称面として非対称な形状を有する構成としては、例えば、表示パネル10から第2の偏光選択反射板32に向かう方向に沿った断面視において、第1の段差部51ASと第2の段差部52ASとが、ハーフミラー60を対称面として非対称な形状を有する構成が挙げられる。ここで、フレネルレンズはレンズの段差部が視認され易いが、本実施形態では、表示パネル10から第2の偏光選択反射板32に向かう方向に沿った断面視において、第1の段差部51ASと第2の段差部52ASとは、ハーフミラー60を対称面として非対称な形状を有するため、第1の段差部51AS及び第2の段差部52ASが視認されにくくなる。その結果、表示特性を向上させることができる。例えば、フレネルレンズの段差部に起因する画質低下(暗くなったり、迷光が視認されたりする現象)を抑えることができる。
【0042】
第1の段差部51ASと第2の段差部52ASとが、ハーフミラー60を対称面として非対称な形状を有するとは、例えば、第1の段差部51ASの少なくとも一部と第2の段差部52ASの少なくとも一部とがハーフミラー60を対称面として非対称な形状を有するこという。具体的には、第1の段差部51ASの一部と第2の段差部52ASの一部とは、ハーフミラー60を対称面として非対称な形状を有し、第1の段差部51ASの他の部分と第2の段差部52ASの他の部分とは、ハーフミラー60を対称面として対称な形状を有していてもよいし、第1の段差部51ASの全体と第2の段差部52ASの全体とは、ハーフミラー60を対称面として非対称な形状を有していてもよい。
【0043】
第1の段差部51AS及び第2の段差部52ASは、0.01μm以上、600μm以下の高さを有する。
【0044】
第1のフレネルレンズ51Aは、第1の段差部51ASを複数備えていてもよい。複数の第1の段差部51ASは、等ピッチで設けられていてもよい。複数の第1の段差部51ASは、等高さで設けられていてもよい。
【0045】
第2のフレネルレンズ52Aは、第2の段差部52ASを複数備えていてもよい。複数の第2の段差部52ASは、等ピッチで設けられていてもよい。複数の第2の段差部52ASは、等高さで設けられていてもよい。
【0046】
本実施形態では、第1のフレネルレンズ51Aの第1の段差部51ASのピッチが、第2のフレネルレンズ52Aの第2の段差部52ASのピッチと異なる。すなわち、第1のフレネルレンズ51Aの第1の段差部51ASのピッチが、第2のフレネルレンズ52Aの第2の段差部52ASのピッチとずれている。このような態様とすることにより、第1の段差部51ASの位置と第2の段差部52ASの位置とを異ならせることが可能となるため、段差部が視認されにくくなり、表示品位を向上させることができる。例えば、フレネルレンズの段差部に起因する画質低下(暗くなったり、迷光が視認されたりする現象)を抑えることができる。
【0047】
図5は、実施形態1に係る表示装置が備える第1のフレネルレンズについて説明する断面模式図である。第1の段差部51ASは、表示パネル10の中心に対して観察者Uの瞳が正面を向いたときを基準として、観察者Uの瞳の中心線に対する表示パネル10からの映像光の入射角(FOV:Field Of View)が30°以上である領域、及び、-30°以下である領域にのみ配置されることが好ましい。ここで、眼球運動だけで瞬時に情報を受容できる角度範囲(有効視野と呼ばれる)は全角で水平略30°、垂直略20°と言われている。したがって、第1の段差部51ASが、FOVが30°以上である領域、及び、FOVが-30°以下である領域にのみ配置されることにより、第1の段差部51ASが視認されにくくなり、表示品位を向上させることができる。FOVが30°以上である領域及びFOVが-30°以下である領域は、広FOV領域ともいう。観察者Uの瞳の中心線と表示パネル10との交点に対して、観察者Uの瞳より上側から出射された映像光と瞳の中心線との角度を正の角度とし、観察者Uの瞳の下側から出射された映像光と瞳の中心線との角度を負の角度とする。
【0048】
図6は、実施形態1に係る表示装置が備える第2のフレネルレンズについて説明する断面模式図である。第2の段差部52ASは、表示パネル10の中心に対して観察者Uの瞳が正面を向いたときを基準として、観察者Uの瞳の中心線に対する表示パネル10からの映像光の入射角が30°以上である領域、及び、-30°以下である領域にのみ配置されることが好ましい。このような態様とすることにより、第2の段差部52ASが視認されにくくなり、表示品位を向上させることができる。
【0049】
図5及び
図6に示すように、第1の段差部51AS及び第2の段差部52ASが、FOVが30°以上である領域、及び、FOVが-30°以下である領域にのみ配置される場合も、第1の段差部51ASのピッチは、第2の段差部52ASのピッチと異なることが好ましい。このような態様とすることにより、段差部がより視認されにくくなり、表示品位を効果的に高めることができる。
【0050】
(表示パネル)
表示パネル10は、画像を表示する機能を有する。表示パネル10は、複数の画素を含むことが好ましい。上記画素は、画像表示を行うための表示単位であり、カラー表示を行う場合は、例えば、赤色、青色、緑色の画素を含む。
【0051】
表示パネル10は、複数の薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が配置されたTFT基板を有してもよい。上記TFT基板は、支持基板上に、互いに平行に延設された複数のゲート線と、ゲート絶縁膜を介して各ゲート線と交差する方向に互いに平行に延設され複数のソース線とを備えてもよい。複数のゲート線及び複数のソース線は、平面視において格子状に形成されてもよく、複数のゲート線及び複数のソース線により区画された各領域が、画素に対応する。
【0052】
支持基板は、透明基板であることが好ましく、例えば、ガラス基板、プラスチック基板等が挙げられる。
【0053】
各ゲート線と各ソース線との交点には、画素毎にスイッチング素子としてのTFTが配置されていてもよい。TFTのゲート端子はゲート線に接続され、ソース端子はソース線に接続され、ドレイン端子は画素電極に接続されてもよい。表示パネル10は、上記画素電極とは別に、共通電極電圧が印加される共通電極を有してもよい。
【0054】
図7は、実施形態1に係る表示装置の一例を示す断面模式図である。
図7に示すように、本実施形態の表示パネル10及び直線偏光板20を含むパネルは、液晶層13を備える液晶パネル10Pである。より具体的には、表示パネル10は、第1の基板11と、第1の基板11に対向して配置された第2の基板12と、第1の基板11及び第2の基板12に挟持された液晶層13と、を備える。直線偏光板20は、第1の直線偏光板20であり、表示装置100は、更に、表示パネル10の観察者Uと反対側に、第2の直線偏光板70を備える。液晶パネル10Pは、より具体的には、第1の直線偏光板20と表示パネル10と第2の直線偏光板70と、を備える。
【0055】
第1の基板11は、例えば、TFT基板である。TFT基板は、支持基板上に、互いに平行に延設された複数のゲート線と、ゲート絶縁膜を介して各ゲート線と交差する方向に互いに平行に延設され複数のソース線と、各ゲート線と各ソース線との交点に画素毎に配置された複数のTFTとを有するものが挙げられる。
【0056】
液晶パネルの表示モードは特に限定されず、共通電極がTFT基板に設けられた水平配向(横電界)モードの液晶パネルであってもよいし、共通電極が液晶層を挟んで対向基板に設けられた垂直配向(縦電界)モードであってもよい。
【0057】
第2の基板12は、例えば、対向基板である。対向基板は、例えば、カラーフィルタが面内に並べられ、ブラックマトリクスで区画された構成を有してもよい。カラーフィルタは、赤色のカラーフィルタ、緑色のカラーフィルタ及び青色のカラーフィルタを含んでもよい。
【0058】
ブラックマトリクスしては、液晶パネルの分野で通常用いられるものを用いることができ、例えば黒色顔料を含む樹脂からなるものであってもよい。ブラックマトリクスは、平面視において、ゲート線及び/又はソース線と重なるように格子状に設けられてもよい。
【0059】
なお、本実施形態では、第1の基板11がTFT基板であり、第2の基板12が対向基板である場合を例に挙げて説明するが、第1の基板11が対向基板であり、第2の基板12がTFT基板であってもよい。
【0060】
液晶層13は、液晶分子を含む。共通電極と画素電極との間に電圧が印加されると、液晶層13中に電界が発生し、上記電界に応じて液晶分子の配向が変化することにより、光の透過量を制御することができる。電圧無印加時における液晶分子の配向方位は、配向膜の規制力によって制御される。上記電圧無印加時とは、液晶層中に一対の電極間に電圧が印加されていないか、液晶分子の閾値未満の電圧が印加された場合をいう。
【0061】
上記液晶分子は、下記式で定義される誘電率異方性(Δε)が正の値を有するものであってもよく、負の値を有するものであってもよい。
Δε=(長軸方向の誘電率)-(短軸方向の誘電率)
【0062】
第1の基板11と液晶層13との間、及び、第2の基板12と液晶層13との間には、それぞれ配向膜が設けられてもよい。液晶層13への電圧無印加時には、主に配向膜の働きによって液晶分子の配向が制御される。例えば、水平配向モードでは、電圧無印加時の液晶分子のチルト角(プレチルト角)が、0~5°であってもよく、好ましくは0~3°、より好ましくは0~1°である。液晶分子のチルト角は、液晶分子の長軸(光軸)がTFT基板及び対向基板の表面に対して傾斜する角度を意味する。
【0063】
表示パネル10が液晶層13を備える場合、表示装置100は、液晶パネル10Pの観察者Uと反対側に、バックライト80を備えることが好ましい。バックライト80は、直下型であってもよいし、エッジライト型であってもよい。直下型のバックライトは、液晶パネルの背面に光源が配置されている。エッジライト型のバックライトは、液晶パネルの背面に配置された導光板と、上記導光板の側面に配置された光源とを有する。エッジライト型のバックライトは、光源から導光板の側面に光を入射し、導光板から液晶パネル側に光を出射する。導光板の背面に反射シートが配置されてもよく、導光板と液晶パネルとの間にプリズムシート、拡散シート等が配置されてもよい。
【0064】
バックライト80は、上記光源から出射された光を、液晶パネル10Pの厚み方向に沿った方向に集光させることが好ましい。バックライト80の半値幅(全角)は、15°~30°であってもよい。上記半値幅は、IEC61747-30に準拠した方法で輝度視野角特性を測定し、最大輝度に対して半分以上の輝度となる角度範囲によって規定することができる。
【0065】
(直線偏光板)
直線偏光板20(第1の直線偏光板20)は、吸収型偏光板である。直線偏光板20としては、たとえば、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、シート状に延伸した偏光子等が挙げられる。
【0066】
表示装置100が第2の直線偏光板70を備える場合、第2の直線偏光板70としては、第1の直線偏光板20と同様のものを用いることができる。第1の直線偏光板20の透過軸と第2の直線偏光板70の透過軸とは直交するようにクロスニコルに配置されることが好ましい。
【0067】
(偏光選択反射板)
偏光選択反射板は、偏光軸が直交する2つの直線偏光のうち、一方の直線偏光を透過し、他方の直線偏光を反射する機能を有する。第1の偏光選択反射板31は、第1の方向(例えば、上下方向)に偏光軸を有する第1の直線偏光を透過し、第1の方向と直交する第2の方向(例えば、左右方向)に偏光軸を有する第2の直線偏光を反射する機能を有することが好ましい。第2の偏光選択反射板32は、第2の方向(例えば、左右方向)に偏光軸を有する第2の直線偏光を透過し、第1の方向(例えば、上下方向)に偏光軸を有する第1の直線偏光を反射する機能を有することが好ましい。
【0068】
偏光選択反射板は、例えば、反射型の直線偏光板であってもよい。反射型の直線偏光板としては、市販品をそのまま用いてもよく、市販品を2次加工(例えば、延伸)して用いてもよい。市販品としては、例えば、日東電工社製の商品名「APCF」、3M社製の商品名「DBEF」、3M社製の商品名「APF」が挙げられる。
【0069】
(位相差板)
第1の位相差板41及び第2の位相差板42は、複屈折材料等を利用して直交する2つの偏光成分に位相差をつけて、入射偏光の状態を変える機能を有する。
【0070】
第1の位相差板41及び第2の位相差板42は、λ/4板であることが好ましい。λ/4板は、波長550nmの光に対して107.5nm~167.5nmの面内位相差を付与する位相差板である。ここで、面内位相差(Re)は、23℃、特に明記しなければ波長550nmにおける面内位相差をいう。Reは、層(位相差板)の厚みをd(nm)としたとき、Re=(nx-ny)×dによって求められる。本明細書中、特に断りのない限り、「位相差」は面内位相差を指す。「nx」は、面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率であり、「nz」は、厚み方向の屈折率である。屈折率は、特に断りのない限り、23℃、波長550nmの光に対する値を指す。
【0071】
(ハーフミラー)
ハーフミラー60は、入射した光の一部を反射して残りの一部を透過する光学素子である。ハーフミラー60の反射率と透過率は限定されないが、ハーフミラー60は、例えば、入射した光の30%~70%を反射して残りを透過し、好ましくは、50%を反射して50%を透過する。ハーフミラー60は、例えば、金属膜や誘電体多層膜で構成することができ、その膜厚により、透過率および反射率を制御する。
【0072】
<実施形態2>
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1と重複する内容については説明を省略する。本実施形態は、第1のレンズ51及び第2のレンズ52が異なること以外は、実施形態1の表示装置100と同様である。
【0073】
図8は、実施形態2に係る表示装置が備える第1のレンズ及び第2のレンズの断面模式図である。表示パネル10から第2の偏光選択反射板32に向かう方向に沿った断面視において、第1のレンズ51と第2のレンズ52とが、ハーフミラー60を対称面として非対称な形状を有する構成としては、例えば、
図8に示すように、表示パネル10から第2の偏光選択反射板32に向かう方向に沿った断面視において、表示パネル10の中心に対して観察者Uの瞳が正面を向いたときを基準として、観察者Uの瞳の中心線に対する表示パネル10からの映像光の入射角が30°以上である領域、及び、-30°以下である領域では、第1のレンズ51と第2のレンズ52とは、ハーフミラー60を対称面として非対称な形状を有し、観察者Uの瞳の中心線に対する表示パネル10からの映像光の入射角が-30°を超え、30°未満である領域では、第1のレンズ51と第2のレンズ52とは、ハーフミラー60を対称面として対称な形状を有する構成が挙げられる。このような態様とすることにより、効果的に薄型化を実現することができる。また、FOVを拡大できる等、設計の自由度を高めることができる。
【0074】
図9は、実施形態2に係る表示装置のFOVとスポットダイアグラムとの関係を示すグラフである。本実施形態では、広FOV領域において第1のレンズ51及び第2のレンズ52を非対称な構造とすることにより、
図9に示すように、広FOV領域でスポット径が悪化する場合がある。しかしながら、広FOV領域において第1のレンズ51及び第2のレンズ52を非対称な構造とすることにより薄型化を効果的に実現することができる。このように、本実施形態では、対象に配置されたレンズ(第1のレンズ51及び第2のレンズ52)において、広FOV領域で対称性を崩すことで薄型化を実現することができる。
【0075】
第1のレンズ51及び第2のレンズ52は、表示パネル10の画像を拡大・縮小するものであれば特に限定されない。第1のレンズ51及び第2のレンズ52は、屈折型のレンズであってもよいし、回折型のレンズであってもよい。
【0076】
屈折型のレンズとしては、HMDの分野で通常用いるものを用いることができ、平凸レンズ、両凸レンズ、メニスカスレンズ等の曲面(凸面)を有する屈折レンズが挙げられる。また、フレネルレンズを併用してもよい。屈折型のレンズは、波長分散の異なる2つのレンズを貼り合せたアクロマティックレンズを用いたり、複数のレンズを組み合わせたりしてもよい。
【0077】
回折型のレンズとしては、パンチャラトナムベリーレンズ(PB:Pancharatnam Berry)レンズ、透過型のホログラフィック光学素子等が挙げられる。
【0078】
PBレンズは、左円偏光及び右円偏光のうち、一方の円偏光が入射すると集光させ、他方の円偏光が入射すると発散させる機能を有する。PBレンズを用いることにより、折り返し光学系の表示装置100において、表示特性を向上させることができる。例えば、折り返し光学系において、より良い画質最適化が可能であり、特に、広いFOV(Field Of View)の光学系を実現することができる。
【0079】
PBレンズは、支持基板と、支持基板上に設けられた液晶分子を含み、液晶分子の長軸は、PBレンズを観察者U側から平面視した場合にPBレンズの中心から外に向かうにつれ左回転する構造、又は、右回転する構造を有する。
【0080】
回折型のレンズとして用いる透過型のホログラフィック光学素子は、上記光の回折現象を利用することで表示パネル10の画像を結像させることができる。ホログラムフィルムとしては、入射光と出射光に相当する光を用いて、干渉露光させることで所望の光学特性を持たせたものと用いることができる。また、ホログラムフィルムの製造方法としては、近年ではCGH(Computer Generated Hologram)と呼ばれる、小エリア毎に露光していくことで所望の光学特性を得る方法もある。
【0081】
<実施形態1及び2の変形例1>
上記実施形態1及び2では、2枚のレンズ(第1のレンズ51及び第2のレンズ52)を備える表示装置100について説明したが、表示装置100は、第1のレンズ51及び第2のレンズ52以外のレンズを備えていてもよい。
【0082】
図10及び
図11は、実施形態1及び2の変形例1に係る表示装置を模式的に示した分解断面図の一例である。
図10及び
図11に示すように、表示装置100は、第1の偏光選択反射板31及び第2の偏光選択反射板32とで挟まれる領域の外側に、更に、第3のレンズ53を備えていてもよい。このような態様とすることにより、設計の自由度を高めることができる。
【0083】
第3のレンズ53は、第1のレンズ51及び第2のレンズ52と同様である。第3のレンズ53は、対称形を維持すべき領域の外にあるので、どのようなレンズを用いても構わないが、広FOVで薄型のHMDを実現するためには両凸もしくは平凸レンズであることが好ましい。また、空気との界面は、透過率のロスや反射光が迷光となってコントラストを下げたり、ゴースト像の要因となったりするため、界面を減らすために、
図11の第2の偏光選択反射板32の曲面と貼り合わせたような凸型のメニスカスレンズとすることも考えられる。ここで、第2の偏光選択反射板32及び第2の位相差板42は、例えば、第2のレンズ52の曲面(球面)に沿って設けられるため、この場合、第3のレンズ53も曲面(球面、凹面)となる。
【0084】
図10に示すように、表示装置100は、直線偏光板20と第1の偏光選択反射板31との間に、更に、第3のレンズ53を備えていてもよい。
図11に示すように、表示装置100は、第2の偏光選択反射板32と観察者Uとの間に、更に、第3のレンズ53を備えていてもよい。
【0085】
<実施形態1及び2の変形例2>
上記実施形態1及び2では、表示パネル10が液晶パネルである場合を例に挙げて説明したが、表示パネル10は、自発光パネルであってもよい。表示パネル10が自発光パネルである場合も、表示パネル10が液晶パネルである場合と同様に、第1の偏光選択反射板31に対して偏光が出射される。
【0086】
図12は、実施形態1及び2の変形例2に係る表示装置を模式的に示した分解断面図である。
図12に示すように、本変形例の表示装置100は、表示装置100と直線偏光板20との間に、第3の位相差板43を備える。第3の位相差板43は、複屈折材料等を利用して直交する2つの偏光成分に位相差をつけて、入射偏光の状態を変える機能を有する。
【0087】
第3の位相差板43は、λ/4板であることが好ましい。このような態様とすることにより、第3の位相差板43と直線偏光板20との積層体が円偏光板として機能し、反射防止機能を高めることができる。
【0088】
自発光パネルとしては、有機発光ダイオード(OLED:Organic light Emitting Diode)を含むOLEDパネルであってもよいし、量子ドット発光ダイオード(QD‐LED:Quantum Dot‐Light Emitting Diode)を含むQD‐LEDパネルであってもよい。本明細書中、OLED、QD‐LEDを特に区別しない場合、発光ダイオード(LED)ともいう。
【0089】
表示パネル10が、OLEDパネル、QD‐LEDパネル等の自発光パネルである場合について説明する。発光ダイオードの構成は、特に限定されず、例えば、陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、陽極をこの順で積層されたものが挙げられる。
【0090】
陰極、陽極の材料は、特に限定されないが、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In3O3、SnO2、ZnO等の透明導電材料、アルミニウム、銀又はこれらの合金等が挙げられる。
【0091】
トップエミッション型のLEDの場合、上記TFT基板の画素電極を陽極として用い、共通電極を陰極として用いてもよい。陽極としてアルミニウム、銀又はこれらの合金等の反射電極を用いてもよいし、陰極として上記透明導電材料を用いてもよい。
【0092】
正孔輸送層は、陽極から注入された正孔を発光層に輸送する層である。正孔輸送層の材料は特に限定されないが、例えば、N,N,N’,N’-テトラフェニルベンジジンおよびその誘導体等のアミン系化合物が挙げられる。
【0093】
電子輸送層は、陰極から注入された電子を発光層に輸送する層である。電子輸送層の材料は特に限定されないが、例えば、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BCP)等のフェナントロリン誘導体、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3)等のキノリン誘導体、アザインドリジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等が挙げられる。
【0094】
陰極、電子輸送層との間に、電子注入層を有してもよい。また、陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよい。電子注入層の材料としては、無機絶縁材料を用いることができ、アルカリ金属の酸化物又はハロゲン化物、並びにアルカリ土類金属の酸化物又はハロゲン化物等が挙げられる。
【0095】
表示パネル10がOLEDである場合、上記発光層は、発光材料として蛍光材料、燐光材料等を含んでもよい。
【0096】
表示パネル10がQD‐LEDパネルである場合、上記発光層は、発光材料として量子ドットを含んでもよい。量子ドットは、量子力学に従う光学特性を持つナノスケール(例えば、平均粒子径が2~10nm)の半導体結晶であり、例えば、10~50個ほどの原子で構成されたコロイド粒子が挙げられる。
【0097】
上記量子ドットとしては、カドミウムセレン(CdSe)、カドミウムテルル(CdTe)、硫化カドミウム(CdS)、硫化鉛(PbS)、若しくは、リン化インジウム(InP)等の化合物、又は、CdSeS等の合金を含むものが挙げられる。
【0098】
画素毎に発光ダイオード(OLED又はQD‐LED)が配置されてもよい。OLEDパネル又はQD‐LEDパネルの場合、赤色の画素、緑色の画素、青色の画素に、それぞれ、赤色の発光材料含む発光層を備えた赤色のLED(OLED又はQD‐LED)、緑色の発光材料含む発光層を備えた緑色のLED、青色の発光材料を含む発光層を備えた青色のLEDを配置してもよい。
【0099】
画素の配置は、特に限定されないが、緑色の画素数を、赤色の画素数、青色の画素数の2倍とするペンタイル配列としてもよいし、赤色の画素、緑色の画素、青色の画素を1:1:1で配置するリアルRGB配列としてもよい。
【0100】
<実施形態3>
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1及び2並びにその変形例と重複する内容については説明を省略する。
図13は、実施形態3のヘッドマウントディスプレイの外観の一例を示す斜視模式図である。
図13に示すように、本実施形態のヘッドマウントディスプレイ200は、表示装置100と、観察者Uの頭部に装着する装着部210と、を備える。本実施形態のヘッドマウントディスプレイ200は、装着時に観察者Uの眼が外光から遮蔽された空間内に配置される没入型のHMDであってもよいし、眼鏡型のHMDであってもよい。
【0101】
表示装置100は、観察者Uに対して映像(画像)を表示するための機能を有する。表示装置100は、映像表示信号を映像に変換するものである。
【0102】
ヘッドマウントディスプレイ200が眼鏡型のHMDである場合、
図13に示すように、眼鏡のレンズに相当する部分が表示装置100であり、装着部210は、観察者Uの耳に掛ける眼鏡のフレームであってもよい。
【0103】
ヘッドマウントディスプレイ200が没入型のHMDである場合、装着部210は、観察者Uが被ることにより頭部を一周し、ヘッドマウントディスプレイ200を観察者Uの頭部へ固定する装着バンドを含んでいてもよい。
【0104】
ヘッドマウントディスプレイ200の方式は、左右の眼に対して一つの表示パネルが配置される1ディスプレイ方式であってもよいし、左右の眼にそれぞれ表示パネルが配置される2ディスプレイ方式であってもよい。上記没入型のHMDは、例えば、1ディスプレイ方式及び2ディスプレイ方式に適用できる。眼鏡型のHMDは、例えば、2ディスプレイ方式に適用できる。
【0105】
ヘッドマウントディスプレイ200は、更に、表示装置100と観察者Uの顔との間に配置されたフェイスクッション220を備えてもよい。フェイスクッション220は、表示装置100と観察者Uの顔との間に配置された緩衝材であり、当該フェイスクッション220を配置することにより、ヘッドマウントディスプレイ200の使用中に観察者Uの視野に外光が入り込むことを抑えることができる。
【0106】
ヘッドマウントディスプレイ200は、更に、音声、音楽、効果音等の音響を発生させる機能を有する音響出力部を備えてもよい。
【0107】
音響出力部は、音響出力信号を音響に変換するものである。通常、ヘッドホンとして製品化されているものを用いることができる。また、音響出力部は、装着部210と共に、当該ヘッドマウントディスプレイ200を観察者Uの頭部に装着させる際の、耳への当接部として機能させてもよい。
【0108】
また、ヘッドマウントディスプレイ200は、映像表示信号及び音響出力信号を出力する駆動ユニットを備えていてもよい。駆動ユニットは、表示装置100及び音響出力部と有線又は無線で接続されている。無線通信の方式としては、例えば、Bluetooth(登録商標)が挙げられる。
【実施例0109】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0110】
<比較例>
比較形態に対応する比較例の表示装置100Rについて、光線経路のシミュレーションを行った。
図14は、比較例の表示装置における光線経路のシミュレーション結果を示す図である。
【0111】
図14では、直線偏光板20、第1の偏光選択反射板31、第1の位相差板41、第2の位相差板42、及び、第2の偏光選択反射板32が省略されている。
図14は、表示パネル10から出射された水色の光1LW、桃色の光1LP、緑色の光1LG、赤色の光1LR、青色の光1LB及び黄色の光1LYが、それぞれ、第1のレンズ51R、ハーフミラー60、及び、第2のレンズ52Rを経由してどのように観察者Uに到達するのかを示したシミュレーション結果である。
【0112】
比較例のシミュレーションでは、パネルを2.5型(2160×2160)、画素サイズを略20μmに設定し、かつ、レンズ材料の屈折率はアクリル系樹脂を想定して1.5、レンズ径は直径40~45mmに設定した。第1のレンズ51Rと第2のレンズ52Rとは同一のレンズであり、ハーフミラー60に対して対称に配置されていた。
【0113】
図14に示すように、第1のレンズ51Rの観察者U側の面51RAの中心部分の曲率半径Rは、略139mm(観察者U側に凸)であり、面51RAの端部に向かうほど曲率半径Rがきつく(小さく)なっていた。第1のレンズ51Rの表示パネル10側の面51RBの中心部分の曲率半径Rは、略166mm(表示パネル10側に凸)であり、面51RBの中心から略5mm外側に変曲点を有し、面51RBの端部に向かうほど曲率半径Rがきつく(小さく)なっていた。
【0114】
第1のレンズ51Rの中心付近の厚みWR1及び第2のレンズ52Rの中心付近の厚みWR1は、それぞれ、略3.4mmであった。第1のレンズ51R(より具体的には、面51RB)とハーフミラー60との距離WR2、及び、第2のレンズ52R(より具体的には、第2のレンズ52Rの観察者U側の面)とハーフミラー60との距離WR2は、それぞれ、略5.6mmであった。第2のレンズ52R(より具体的には、第2のレンズ52Rの表示パネル10側の面)と表示パネル10との距離WR3は、略10.0mmであった。第1のレンズ51R(より具体的には、面51RA)から表示パネル10までの幅WR4は、略28mmであった。比較例のように対称的な構成を有する表示装置では、同一レンズを使用する制約により、
図14に示すように、薄型化が一定以上進まないケースがあることが確認された。
【0115】
図15は、比較例の表示装置の正面視でのスポットダイアグラムのシミュレーション結果を示す図である。比較例の表示装置100Rの正面視でのスポットダイアグラムのシミュレーション結果は、
図15に示す通りであった。
【0116】
光学設計の最適化の指標として、レンズ光学系ではしばしばスポットダイアグラムが用いられる。これは、表示装置上の1点から出た光がどの程度の広がりをもって目に見えるかを表したものである。より具体的には、表示装置上の1点から、複数の等間隔に出力された光(映像光)がどのような経路をたどり、観察者Uの目に到達した際にはどの位置で光っているように見えるかをシミュレーションし、等間隔で出力された複数の光同士の位置のずれ量をRMS(Root Mean Square, 二乗平均)を使って評価したものである。
【0117】
現在主流となりつつある液晶表示装置は1200ppiであり、この場合、1画素が略21μmであることを考慮すると、RMSの値は21μm以内に抑えるのが理想である。しかしながら、特に入射角が広い領域(目安として入射角20度以上)では人の解像力も落ちるため、5画素以内に抑えられれば、大きな問題は無いと予想される。
【0118】
<実施例>
実施形態1に対応する実施例の表示装置100について、比較例と同様にして光線経路のシミュレーションを行った。実施例の表示装置100は、第1のレンズ及び第2のレンズが異なること以外は、比較例の表示装置100Rと同様であった。
図16は、実施例の表示装置における光線経路のシミュレーション結果を示す図である。
【0119】
図16では、直線偏光板20、第1の偏光選択反射板31、第1の位相差板41、第2の位相差板42、及び、第2の偏光選択反射板32が省略されている。
図16は、表示パネル10から出射された水色の光1LW、桃色の光1LP、緑色の光1LG、赤色の光1LR、青色の光1LB及び黄色の光1LYが、それぞれ、第1のレンズ51、ハーフミラー60、及び、第2のレンズ52を経由してどのように観察者Uに到達するのかを示したシミュレーション結果である。なお、
図16に示すように、ハーフミラー60はシミュレーション上、第2のレンズ52にめり込むように配置されるが、実際には、
図16の光線図に示されるように第2のレンズ52の内側(観察者側)の端部は使用しないため、第2のレンズ52の内側の端部を削ってハーフミラー60を配置することができる。
【0120】
実施例のシミュレーションでは、パネルを2.5型(2160×2160)、画素サイズを略20μmに設定し、かつ、レンズ材料の屈折率はアクリル系樹脂を想定して1.5、レンズ径は直径40~45mmに設定した。第1のレンズ51と第2のレンズ52とは、ハーフミラー60を対称面として非対称な形状を有する。
【0121】
図16に示すように、第1のレンズ51の観察者U側の面51XAの中心部分の曲率半径Rは、略88mm(観察者U側に凸)であり、面51XAの端部に向かうほど曲率半径Rがややきつく(小さく)なっていた。第1のレンズ51の表示パネル10側の面51XBの中心部分の曲率半径Rは、略440mm(表示パネル10側に凸)であり、面51XBの中心から略7mm外側に変曲点を有し、面51XBの端部で曲率半径Rが急激にきつく(小さく)なっていた。
【0122】
第2のレンズ52の表示パネル10側の面52XAは、第1のレンズ51の観察者U側の面51XAと比較して、面52XAの中心より15mm離れた付近から端部にかけて曲率半径Rが僅かにきつい(小さい)が、面51XAとほぼ同じ形状であった。第2のレンズ52の観察者U側の面52XBは、第1のレンズ51の表示パネル10側の面51XBと比較して、面52XBの中心より12mm離れた付近から端部にかけて曲率半径Rが更にきつく(小さく)なっていた。
【0123】
第1のレンズ51の中心付近の厚みW1は、略5.6mmであった。第1のレンズ51(より具体的には、面51XB)とハーフミラー60との距離W2は、略5.0mmであった。第2のレンズ52(より具体的には、第2のレンズ52の表示パネル10側の面52XA)と表示パネル10との距離W3は、略5.0mmであった。第1のレンズ51(より具体的には、面51XA)から表示パネルまでの幅W4は、略26mmであった。本実施例では、幅W4を、比較例の幅WR4よりも小さくすることができた。本実施例では、第2のレンズ52の中心から12mm以上外側の範囲において、第2のレンズ52の形状を第1のレンズ51と非対称とすることにより、表示装置100の薄型化を図ることができた。
【0124】
図17は、実施例の表示装置の正面視でのスポットダイアグラムのシミュレーション結果を示す図である。
図17において破線で囲んだ領域に示されるように、実施例の表示装置100は、FOVが40度以上の場合に、MTF(Modulation Transfer Function)が悪化する場合がある。すなわち、実施例の表示装置100では広FOV領域においてスポットダイアグラムが悪化する場合がある。しかしながら、広FOV領域は人が高精細に視認することが困難な領域であるため、実用上、大きな問題は無い。