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特開2024-90059結晶性ウレタン(メタ)アクリレートの保管および/または移送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090059
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】結晶性ウレタン(メタ)アクリレートの保管および/または移送方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205702
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000108111
【氏名又は名称】セメダイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】小谷 準
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127AA03
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB221
4J127BD411
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BE511
4J127BE51Y
4J127BF201
4J127BF20X
4J127BF601
4J127BF60X
4J127BF611
4J127BF61X
4J127BF621
4J127BF62X
4J127BF631
4J127BF63X
4J127BG041
4J127BG04X
4J127BG04Y
4J127BG04Z
4J127BG051
4J127BG05X
4J127BG05Y
4J127BG05Z
4J127BG121
4J127BG12X
4J127BG12Y
4J127BG12Z
4J127BG271
4J127BG27Z
4J127CB121
4J127CB152
4J127CC022
4J127FA07
4J127FA14
(57)【要約】
【課題】結晶性ウレタン(メタ)アクリレートの結晶性を低減化し、低温下で保管および/または移送した後であっても流動性のある結晶性ウレタン(メタ)アクリレートとして取り扱い可能な、結晶性ウレタン(メタ)アクリレートの保管および/または移送方法を提供すること。
【解決手段】(A)結晶性ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対して、(B)モノカルボン酸化合物20~150重量部を必須成分として混合する、前記結晶性ウレタン(メタ)アクリレートの保管および/または移送方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)結晶性ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対して、
(B)モノカルボン酸化合物20~150重量部を必須成分として混合する、
前記結晶性ウレタン(メタ)アクリレートの保管および/または移送方法。
【請求項2】
前記(B)モノカルボン酸化合物が、(メタ)アクリル酸である、請求項1に記載の結晶性ウレタン(メタ)アクリレートの保管および/または移送方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性ウレタン(メタ)アクリレートの結晶性を低減化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン(メタ)アクリレートは、可とう性や強靭性、伸張性、基材との密着性等に優れた特長があり、ハードコート、接着剤、粘着剤など様々な用途に利用されている。このようなウレタン(メタ)アクリレートは、ジオール成分、ジイソシアネート化合物、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物あるいはイソシアネート基含有(メタ)アクリレート化合物等を反応させることによって得られる。
ジオール成分としては、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート等を主鎖骨格として末端あるいは鎖中に水酸基を2つ以上含有するものが利用されている。その中でも、テトラヒドロフラン(THF)の単独重合体であるポリテトラメチレングリコール(PTMG)を用いたものは、優れた耐水性と柔軟性、強靭性を有することが知られている。特に近年においては、光ディスクや光ファイバーのコーティング用途として、主鎖骨格にポリテトラメチレングリコール(PTMG)構造を有するジオールを原料とするウレタン(メタ)アクリレート(以下、「PTMG系ウレタン(メタ)アクリレート」という場合がある。)が多数提案されている。
【0003】
しかしながら、通常のポリテトラメチレングリコール(PTMG)は、数平均分子量500~5000のもので凝固点が20~40℃の範囲であり、常温域あるいはそれ以下の温度では結晶化が起きることがよく知られており(特許文献1)、これらを原料としたPTMG系ウレタン(メタ)アクリレートも同様に常温以下では結晶化が起こることが知られている。そのため、主鎖骨格にポリテトラメチレングリコール(PTMG)構造を有するジオール成分を原料としたPTMG系ウレタン(メタ)アクリレートを取り扱う際には、加温して融解させることが必要であり、そのための設備や工程が必須であるという問題があった(特許文献2)。
市販されているPTMG系ウレタン(メタ)アクリレートの中には、原料であるポリテトラメチレングリコール(PTMG)の分子量を調整することにより、結晶化速度を遅延させ、加温して融解させた後はしばらくの間は液状を保つことで、低結晶性PTMG系ウレタン(メタ)アクリレートとして流通しているものもあるが、これらでも室温下で長時間放置した場合や、10℃以下の低温下になると結晶化してしまい、流動性を失うという課題が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-268050号公報
【特許文献2】特開2005-97439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリテトラメチレングリコール(PTMG)の凝固点を下げるために、テトラヒドロフラン(THF)以外のモノマーと共重合することが提案されている(特開2000-230165号公報、特開2000-86936号公報、特開2014-227526)が、このような手法ではポリテトラメチレングリコール(PTMG)本来の効果が失われる傾向にあり、例えば親水性が高くなって耐水性が損なわれたり、耐久性が劣るために耐熱性が損なわれるといった課題があり、また他のモノマーを共重合させるための煩雑な操作が増えて生産性や経済性に劣るという課題があった。
一方、このような結晶化現象を防ぐため、PTMG系ウレタン(メタ)アクリレートに有機溶剤や可塑剤を加えることもできるが、有機溶剤は環境汚染や作業者の健康阻害をひき起こす問題があり、可塑剤は最終的に得られる製品の機械的性質を低下させるという課題があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、結晶性ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、PTMG系ウレタン(メタ)アクリレート)の結晶性を低減化し、低温下で保管および/または移送した後であっても流動性のある結晶性ウレタン(メタ)アクリレートとして取り扱い可能な、結晶性ウレタン(メタ)アクリレートの保管および/または移送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討の結果、結晶性ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、PTMG系ウレタン(メタ)アクリレート等)の結晶性を低減化するために、結晶性ウレタン(メタ)アクリレートにモノカルボン酸化合物を添加することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の結晶性ウレタン(メタ)アクリレートの結晶性を低減化する保管および/または移送方法は、次の発明に関する。
【0008】
[項1](A)結晶性ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対して、
(B)モノカルボン酸化合物20~150重量部を必須成分として混合する、
前記結晶性ウレタン(メタ)アクリレートの保管および/または移送方法。
[項2]前記(B)モノカルボン酸化合物が、(メタ)アクリル酸である、項1に記載の結晶性ウレタン(メタ)アクリレートの保管および/または移送方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、結晶性ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、PTMG系ウレタン(メタ)アクリレート等)の結晶性を低減化し、低温下で保管および/または移送した後であっても流動性のある結晶性ウレタン(メタ)アクリレートとして取り扱い可能な、結晶性ウレタン(メタ)アクリレートの保管および/または移送方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、前記課題を解決することを目的とする、(A)結晶性ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対して、(B)モノカルボン酸化合物20~150重量部を必須成分として混合する、前記結晶性ウレタン(メタ)アクリレートの保管および/または移送方法である。
【0011】
<(A)結晶性ウレタン(メタ)アクリレート>
(A)結晶性ウレタン(メタ)アクリレートは、結晶性を有するウレタン(メタ)アクリレートであれば、特に限定されないが、本発明においては、PTMG系ウレタン(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
本発明におけるPTMG系ウレタン(メタ)アクリレートとは、ポリテトラメチレングリコールを主鎖骨格とし、分子構造中にウレタン結合を2つ以上有し、かつ分子側鎖あるいは分子末端に(メタ)アクリレート基を有するポリマーあるいはオリゴマーのことである。本発明での結晶性とは、低温下に放置しておくことにより結晶化が生じ流動性のなくなる性質を示しており、具体的には、5℃で3日以上放置した場合に固化して流動性を失う性質である。このような性質は、目視による外観観察で容易に判別が可能である。
【0012】
PTMG系ウレタン(メタ)アクリレートの合成方法としては、従来公知の方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、ポリテトラメチレングリコールの両末端の水酸基に、過剰のポリイソシアネート化合物を反応させ、残存するイソシアネート基と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応させることにより合成することができる。あるいは、過剰のポリテトラメチレングリコールとポリイソシアネート化合物を反応させ、残存する水酸基とイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応させることにより合成することができる。
【0013】
ポリテトラメチレングリコール(PTMG)は、テトラヒドロフラン(THF)を開環重合することにより得られるもので、好ましくは数平均分子量400以上、特に好ましくは1000~4000のものである。
【0014】
ポリイソシアネート化合物は、分子構造中にイソシアネート基を2つ以上有する化合物であって、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(ポリメリックMDI)1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、リジンジイソシアネート、デュラネートD101、D201(旭化成製)等の脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)等の脂環式ポリイソシアネート;これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;等が挙げられる。
このようなポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は、分子構造中に水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物であり、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を2個有するアルコールのモノ(メタ)アクリレート類;トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3個以上の水酸基を有するアルコールの部分(メタ)アクリレート類が挙げられる。
このような水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物は、分子構造中にイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物であり、イソシアネート基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、例えば、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、4-イソシアナトブチル(メタ)アクリレート、1,1-(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、2-(2-メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート等が挙げられる。このうち、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、入手が容易である点から2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
このようなイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
PTMG系ウレタン(メタ)アクリレートの分子末端に有する(メタ)アクリレート基は、所望の用途に応じて任意に選定すればよく、具体的にはアクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基のいずれかより選ばれる官能基であり、これらの(メタ)アクリレート基は単独でもよく、あるいは2種以上のものを用いてもよい。これらのうち、アクリレート基は入手性、反応性に優れており、メタクリレート基は得られる硬化物の機械物性に優れる。また、アクリルアミド基、メタクリルアミド基の場合には、硬化性に優れるという特徴を有する。
【0018】
このようなPTMG系ウレタン(メタ)アクリレートは、特に限定されるものではなく、市販品を用いてもよいし、公知の方法によって製造したものを用いてもよい。PTMG系ウレタン(メタ)アクリレートは、重量平均分子量が500~50,000のものが好ましく、1,000~40,000のものがより好ましく、3,000~35,000のものが更に好ましい。重量平均分子量が500未満では、PTMG系ウレタン(メタ)アクリレートより得られる硬化物の伸びが不十分となり耐久性に劣ることがあり、50,000より大きい場合では得られる混合物が高粘度となり取り扱いが困難となる。
市販品としては、例えば、紫光UV-2750B、UV-7000B、UV-6640B(以上、三菱ケミカル社製)、CN8899NS(アルケマ社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
このようなPTMG系ウレタン(メタ)アクリレートは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
<(B)モノカルボン酸化合物>
(B)モノカルボン酸化合物は、分子構造中にカルボキシル基(-COOH)を1つ有する炭素数1~50の化合物であれば、特に限定されない。例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、バーサチック酸、乳酸、安息香酸、アビエチン酸、サリチル酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、シクロヘキシルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、桂皮酸等が挙げられる。
このようなPTMG系ウレタン(メタ)アクリレートは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
これらの中でも、入手が容易でPTMG系ウレタン(メタ)アクリレートとの混合性が良好である観点から、2-エチルヘキサン酸、バーサチック酸、アクリル酸、メタクリル酸からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、結晶性低減効果が高く、最終的に得られる硬化物の物性に優れることからアクリル酸および/またはメタクリル酸がより好ましい。
【0021】
(A)結晶性ウレタン(メタ)アクリレートと(B)モノカルボン酸化合物の混合比は、(A)結晶性ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対して、(B)モノカルボン酸化合物20~150重量部の範囲である。好ましくは、(B)モノカルボン酸化合物が30~100重量部の範囲である。(B)モノカルボン酸化合物が150重量部より多い場合には、(A)結晶性ウレタン(メタ)アクリレート本来の特性が損なわれることがあり、(B)モノカルボン酸化合物が20重量部より少ない場合には、低温保管後に室温に戻しても容易に結晶が融解しないという問題が生じる場合がある。
【0022】
<その他の添加剤>
本発明の結晶性ウレタン(メタ)アクリレートの保管および/または移送方法において、(A)結晶性ウレタン(メタ)アクリレートおよび(B)モノカルボン酸化合物を必須成分とする混合物には、必要に応じて、混合物の安定性を高め酸化劣化を防いだり、混合物の粘度を調整したり、最終的に用いる硬化物の物性を調整する目的で、モノマー、樹脂、エラストマー、ゴム微粒子、接着付与剤、重合禁止剤、フィラー、粘着付与樹脂、増量剤、物性調整剤、補強剤、着色剤、難燃剤、タレ防止剤、チキソトロピー剤、沈殿防止剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、香料等の各種添加剤を1種以上加えてもよい。これらの添加剤の具体例としては、特開2021-88632号公報、特開2022-156102号公報、WO2021/106944号公報等に例示される添加剤が挙げられる。
【0023】
[硬化性組成物]
本発明の結晶性ウレタン(メタ)アクリレートの保管および/または移送方法において、(A)結晶性ウレタン(メタ)アクリレートおよび(B)モノカルボン酸化合物を必須成分とする混合物は、最終的に種々の硬化性組成物として用いることが可能である。例えば、混合物に光開始剤やモノマー等を添加して光硬化性組成物として用いたり、熱ラジカル開始剤を添加して熱硬化性組成物として用いたり、あるいは有機過酸化物と還元剤の作用により重合反応を起こすことを利用した酸化還元型の硬化性組成物として用いることが可能であり、接着剤やコーティング材、シーリング材、成形物、塗料、注入剤として用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
[実施の形態の効果]
本発明の結晶性ウレタン(メタ)アクリレートの保管および/または移送方法において、(A)結晶性ウレタン(メタ)アクリレートおよび(B)モノカルボン酸化合物を必須成分とする混合物は、光あるいは熱ラジカル開始剤または他の添加剤とさらに混合することにより、光硬化性組成物や熱硬化性組成物、あるいは酸化還元型の二液混合型硬化性組成物や嫌気硬化性組成物として用いる場合に有用である。あらかじめ加温して結晶体を融解する必要がなく、所望のタイミングで他の添加剤と混合することができることから、省エネルギーで効率よい生産が可能となるものである。
【実施例0025】
以下に実施例を挙げて更に具体的に説明する。なお、これらの実施例は例示であり、限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0026】
[外観観察]
表1~表3における外観観察は、以下のようにして行った。
【0027】
<外観観察23℃>
約20mLの液体が入るガラス瓶に、各実施例または各比較例において得られたウレタン(メタ)アクリレートおよびモノカルボン酸化合物の混合物を、約10gになるように計量・採取し、混合し、脱泡した後に、23℃における瓶中の混合物の状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。評価結果を表1~3に示す。
【0028】
<外観観察5℃>
前記<外観観察23℃>で得られ、透明液体であることを確認した混合物を、5℃の冷蔵庫に入れ3日間冷却保管した後に取出し、直ちに瓶中の混合物の状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。評価結果を表1~3に示す。
【0029】
<外観観察5℃→23℃>
前記<外観観察5℃>において、5℃の冷蔵庫から取り出した混合物の入った瓶を、23℃で1日放置した後に、瓶中の混合物の状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。評価結果を表1~3に示す。
【0030】
各外観観察における評価基準は以下の通りである。
A:流動性のある透明液体
B:フェイズ(濁りが見られるが混合物の流動性がある)
C:固化あるいは結晶化(混合物の流動性がない)
【0031】
[使用化合物]
表1~3に記載の化合物は、下記の通りである。
・PTMG系UA-A(PTMG系ウレタンアクリレート、重量平均分子量28,000、両末端アクリレート)
・PTMG系UA-B(PTMG系ウレタンアクリレート、重量平均分子量5,000、両末端アクリレート)
・CN8899NS(アルケマ社製、PTMG系ウレタンアクリレート)
・メタクリル酸(製品名「メタクリル酸」、三菱ケミカル社製)
・アクリル酸(試薬、東京化成工業社製)
・2-エチルヘキサン酸(試薬、東京化成工業社製)
・バーサチック酸(製品名「バーサティック10」、ヘキシオン社製)
・メタクリル酸テトラヒドロフルフリル(製品名「ライトエステルTHF」、共栄社化学社製)
・アクリル酸ラウリル(製品名「ライトアクリレートL-A」、共栄社化学社製)
・メタクリル酸メチル(製品名「MMA」、三菱ケミカル社製)
・メタクリル酸イソボルニル(製品名「ライトエステルIB-X」、共栄社化学社製)
・メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル(製品名「ライトエステルHOP」、共栄社化学社製)
・アクリロイルモルホリン(製品名「ACMO」、KJケミカルズ社製)
・メタクリル酸ジシクロペンタニル(製品名「ファンクリルFA-513M」、昭和電工マテリアルズ社製)
なお、PTMG系ウレタン(メタ)アクリレート等の、室温下で結晶性を示す化合物については、あらかじめ50℃に加温して融解した後、室温に冷却し、透明に相溶していることを確認して実験に供した。
【0032】
[実施例1~6、比較例1~5]
表1に示す化合物を、それぞれ表1に示す配合割合で混合し、得られた混合物について外観観察を行った。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1において、各化合物の配合量の単位は「重量部」である。
実施例1~6に係る外観観察の結果から明らかなように、PTMG系ウレタン(メタ)アクリレートとモノカルボン酸化合物の一種であるメタクリル酸の混合物は、PTMG系ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対して、メタクリル酸20~150重量部の範囲では、<外観観察5℃>における評価がAであり、低温保管時にも流動性を保持していることが明らかである。一方、PTMG系ウレタン(メタ)アクリレート単独(比較例1)の場合、PTMG系ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対して、メタクリル酸が200重量部以上の場合(比較例2、3)またはメタクリル酸が15重量部以下の場合(比較例4、5)では、<外観観察5℃>における評価がいずれもCであり、低温下で保管すると結晶化して流動性を失うことがわかる。
さらに、PTMG系ウレタン(メタ)アクリレート単独(比較例1)の場合では、<外観観察5℃→23℃>における評価がCであることから、一度結晶化したものは再び常温に戻しても融解せず流動性を失ったままであり、計量、移送等を行う際には一度加温するという操作が必須となることがわかる。
【0035】
[実施例7~13]
表2に示す化合物を、それぞれ表2に示す配合割合で混合し、得られた混合物について外観観察を行った。結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
表2において、各化合物の配合量の単位は「重量部」である。
実施例7~13に係る外観観察の結果から明らかなように、PTMG系ウレタン(メタ)アクリレートと各種モノカルボン酸化合物の混合物は、PTMG系ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対して、各種モノカルボン酸化合物20~150重量部の範囲では、<外観観察5℃>における評価がAであり、低温保管時にも流動性を保持していることがわかる。
【0038】
(比較例6~16)
表3に示す化合物を、それぞれ表3に示す配合割合で混合し、得られた混合物について外観観察を行った。結果を表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】
表3において、各化合物の配合量の単位は「重量部」である。
比較例6~11に係る外観観察の結果から明らかなように、PTMG系ウレタン(メタ)アクリレートと一般的に用いられている(メタ)アクリル酸エステルモノマーの混合物は、いずれも<外観観察5℃>における評価がCであり、低温下で保管すると結晶化して流動性を失うことがわかる。
また、比較例8~11および比較例15、16においては、<外観観察5℃→23℃>の評価がCであることから、一度結晶化したものを再び常温(23℃)に戻しても、結晶が融解せず流動性を失ったままであることがわかる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態および実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態および実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態および実施例の中で説明した特徴の組合せのすべてが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点、および本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能である点に留意すべきである。