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特開2024-90087桟橋および桟橋構築方法並びに橋梁施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090087
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】桟橋および桟橋構築方法並びに橋梁施工方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
E01D21/00 A
E01D21/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205746
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(71)【出願人】
【識別番号】508036743
【氏名又は名称】株式会社横河ブリッジ
(71)【出願人】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177644
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 和樹
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】西内 美宣
(72)【発明者】
【氏名】神▲崎▼ 恵三
(72)【発明者】
【氏名】渕上 隆也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 聖治
(72)【発明者】
【氏名】白水 晃生
(72)【発明者】
【氏名】鍵谷 智宏
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA03
2D059AA05
2D059BB15
2D059BB19
2D059BB23
2D059BB35
2D059CC07
2D059CC14
2D059DD05
2D059DD06
(57)【要約】
【課題】出水期における撤去作業を省略することができ、橋梁の施工を継続することができる桟橋を提供する。
【解決手段】
桟橋1は、橋梁の改築または構築に利用される。桟橋1は、河川9に構築される桟橋下部工10と、桟橋下部工10に支持される桟橋上部工11と、桟橋上部工11を含む桟橋1の一部を河川9の水位に応じた高さに昇降させる昇降装置15と、を備えた。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の改築または構築に利用される桟橋であって、
河川に構築される桟橋下部工と、
前記桟橋下部工に支持される桟橋上部工と、
少なくとも前記桟橋上部工を含む前記桟橋の一部を前記河川の水位に応じた高さに昇降させる昇降装置と、を備えたことを特徴とする桟橋。
【請求項2】
前記桟橋下部工は、前記橋梁の下部工と前記河川の流水方向に並んで構築されることを特徴とする請求項1に記載の桟橋。
【請求項3】
橋梁の改築または構築に利用される桟橋を河川に構築する桟橋構築方法であって、
前記河川に桟橋下部工を構築する桟橋下部工構築工程と、
前記桟橋下部工に桟橋上部工を支持させる桟橋上部工構築工程と、
前記橋梁の改築開始前または構築開始前において、前記橋梁の改築中または構築中に前記河川の出水期または非出水期を迎えると予測される場合に、昇降装置を用いて少なくとも前記桟橋上部工を含む前記桟橋の一部を前記河川の水位に応じた高さに昇降させる桟橋昇降工程と、を備えたことを特徴とする桟橋構築方法。
【請求項4】
前記桟橋下部工構築工程では、前記桟橋下部工が前記橋梁の下部工と前記河川の流水方向に並んで構築されることを特徴とする請求項3に記載の桟橋構築方法。
【請求項5】
前記桟橋下部工構築工程では、台船を利用して前記桟橋下部工が構築されることを特徴とする請求項3または4に記載の桟橋構築方法。
【請求項6】
河川に構築される桟橋を利用して橋梁を改築または構築する橋梁施工方法であって、
前記河川に桟橋下部工を構築する桟橋下部工構築工程と、
前記桟橋下部工に桟橋上部工を支持させる桟橋上部工構築工程と、
昇降装置を用いて少なくとも前記桟橋上部工を含む前記桟橋の一部を前記河川の水位に応じた高さに昇降させる桟橋昇降工程と、
前記桟橋を利用して前記橋梁の下部工と上部工の少なくとも一方を改築または構築する橋梁施工工程と、を備え、
前記橋梁施工工程の開始前において、前記橋梁施工工程の実施中に前記河川の出水期または非出水期を迎えると予測される場合、および、前記橋梁施工工程の開始後において、前記橋梁施工工程の実施中に前記出水期または前記非出水期を迎えると予測される場合に、前記桟橋昇降工程が実施されることを特徴とする橋梁施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の改築または構築に利用される桟橋および桟橋構築方法並びに橋梁施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
河川等に橋梁を架設するために、出水期を除く時期において河川等の水面近くに作業用の桟橋が構築されることがある。このような桟橋を構築する方法として、下部工構成物を具備するユニット構造物を上部工構成物に連結し、そのユニット構造物を介して支持杭を打設する桟橋架設工法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-115331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、桟橋は非出水期の水位に合わせて構築されているため、橋梁の工期中に出水期を迎える場合、洪水時の流水に著しい支障を与えないように桟橋を一時的に撤去しなければならなかった。したがって、出水期間中においては、橋梁の施工が滞るため、工期が長くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、出水期における撤去作業を省略することができ、橋梁の施工(改築または構築)を継続することができる桟橋および桟橋構築方法並びに橋梁施工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、橋梁の改築または構築に利用される桟橋であって、河川に構築される桟橋下部工と、前記桟橋下部工に支持される桟橋上部工と、少なくとも前記桟橋上部工を含む前記桟橋の一部を前記河川の水位に応じた高さに昇降させる昇降装置と、を備えた。
【0007】
この場合、前記桟橋下部工は、前記橋梁の下部工と前記河川の流水方向に並んで構築されるとよい。
【0008】
本発明は、橋梁の改築または構築に利用される桟橋を河川に構築する桟橋構築方法であって、前記河川に桟橋下部工を構築する桟橋下部工構築工程と、前記桟橋下部工に桟橋上部工を支持させる桟橋上部工構築工程と、前記橋梁の改築開始前または構築開始前において、前記橋梁の改築中または構築中に前記河川の出水期または非出水期を迎えると予測される場合に、昇降装置を用いて少なくとも前記桟橋上部工を含む前記桟橋の一部を前記河川の水位に応じた高さに昇降させる桟橋昇降工程と、を備えた。
【0009】
この場合、前記桟橋下部工構築工程では、前記桟橋下部工が前記橋梁の下部工と前記河川の流水方向に並んで構築されるとよい。
【0010】
この場合、前記桟橋下部工構築工程では、台船を利用して前記桟橋下部工が構築されるとよい。
【0011】
本発明は、河川に構築される桟橋を利用して橋梁を改築または構築する橋梁施工方法であって、前記河川に桟橋下部工を構築する桟橋下部工構築工程と、前記桟橋下部工に桟橋上部工を支持させる桟橋上部工構築工程と、昇降装置を用いて少なくとも前記桟橋上部工を含む前記桟橋の一部を前記河川の水位に応じた高さに昇降させる桟橋昇降工程と、前記桟橋を利用して前記橋梁の下部工と上部工の少なくとも一方を改築または構築する橋梁施工工程と、を備え、前記橋梁施工工程の開始前において、前記橋梁施工工程の実施中に前記河川の出水期または非出水期を迎えると予測される場合、および、前記橋梁施工工程の開始後において、前記橋梁施工工程の実施中に前記出水期または前記非出水期を迎えると予測される場合に、前記桟橋昇降工程が実施される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、出水期における桟橋の撤去作業を省略することができ、橋梁の施工を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る橋梁施工方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の第1実施形態に係る橋梁施工方法の桟橋下部工構築工程を説明する断面図(橋軸方向から見た図)である。
図3】本発明の第1実施形態に係る橋梁施工方法の桟橋下部工構築工程を説明する平面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る橋梁施工方法の桟橋上部工構築工程を説明する断面図(流水方向から見た図)である。
図5】本発明の第1実施形態に係る橋梁施工方法(桟橋構築方法)によって構築された桟橋を示す断面図(流水方向から見た図)である。
図6】本発明の第1実施形態に係る橋梁施工方法の桟橋昇降工程の状態遷移を示す断面図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る橋梁施工方法の新設下部工構築工程を説明する断面図(橋軸方向から見た図)である。
図8】本発明の第1実施形態に係る橋梁施工方法の新設下部工構築工程を説明する平面図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る橋梁施工方法の新設上部工構築工程を説明する断面図(流水方向から見た図)である。
図10】本発明の第1実施形態に係る橋梁施工方法によって構築された新設橋を示す断面図(流水方向から見た図)である。
図11】本発明の第1実施形態に係る橋梁施工方法の桟橋撤去工程を説明する断面図(橋軸方向から見た図)である。
図12】本発明の第2実施形態に係る橋梁施工方法を示すフローチャートである。
図13】本発明の第2実施形態に係る橋梁施工方法の既設上部工撤去工程を説明する断面図(橋軸方向から見た図)である。
図14】本発明の第2実施形態に係る橋梁施工方法の既設下部工撤去工程を説明する断面図(橋軸方向から見た図)である。
図15】本発明の第2実施形態に係る橋梁施工方法の新設下部工構築工程および新設上部工構築工程を説明する断面図(橋軸方向から見た図)である。
図16】本発明の第1~第2実施形態の変型例に係る桟橋(昇降装置)による桟橋昇降工程の状態遷移を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書では、橋梁および桟橋が延設される方向(橋梁が河川に架け渡される方向)を「橋軸方向」と呼び、河川9の流れに沿った方向を「流水方向」と呼ぶこととする。図面に示す「U」は「上」を示し、「Lo」は「下」を示し、「X」は橋軸方向を示し、「Y」は流水方向を示している。本明細書では方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜のために用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0015】
[第1実施形態]
図1ないし図11を参照して、第1実施形態に係る橋梁施工方法について説明する。図1は橋梁施工方法を示すフローチャートである。図2は桟橋下部工構築工程S1を説明する断面図(橋軸方向から見た図)である。図3は桟橋下部工構築工程S1を説明する平面図である。図4は桟橋上部工構築工程S2を説明する断面図(流水方向から見た図)である。図5は桟橋1を示す断面図(流水方向から見た図)である。図6は桟橋昇降工程S4の状態遷移を示す断面図である。図7は新設下部工構築工程S51を説明する断面図(橋軸方向から見た図)である。図8は新設下部工構築工程S51を説明する平面図である。図9は新設上部工構築工程S42を説明する断面図(流水方向から見た図)である。図10は新設橋2を示す断面図(流水方向から見た図)である。図11は桟橋撤去工程S6を説明する断面図(橋軸方向から見た図)である。
【0016】
桟橋1は、河川9に構築されて新たな橋梁(新設橋2)の構築に利用される。第1実施形態に係る橋梁施工方法は、河川9に連続桁として構築される桟橋1を利用して新たな橋梁(新設橋2)を構築するための方法である。橋梁施工方法の説明に先立ち、橋梁の構築に利用される桟橋1について簡単に説明する。桟橋1は、河川9に構築される桟橋下部工10と、桟橋下部工10に支持される桟橋上部工11と、桟橋上部工11を含む桟橋1の一部を河川9の水位に応じた高さに昇降させる昇降装置15と、を備えている(図4ないし図6参照)。
【0017】
<昇降装置>
図6に示すように、昇降装置15は、例えば、4つのガイド支柱16と、昇降受梁17と、4つの油圧ジャッキ18と、を有している。詳細は後述するが、4つのガイド支柱16および昇降受梁17は、桟橋下部工10を構成するものである。4つのガイド支柱16は、河川9(の底)に打設される複数の桟橋杭12の一部である。橋軸方向に隣り合う二対のガイド支柱16の間には、一対の台座部材40が架設されている。昇降受梁17は、4つのガイド支柱16を除く桟橋杭12よりも上方に配置され、4つのガイド支柱16に対して上下方向にスライド可能に支持される。各油圧ジャッキ18は、油圧を受けたラム18Bをシリンダケース18Aから出没(伸縮)させるものである。シリンダケース18Aは昇降受梁17の下面に当接し、ラム18Bの先端部は台座部材40の上面に当接している。各油圧ジャッキ18は、昇降受梁17と台座部材40との間に介設され、各ガイド支柱16に沿って昇降受梁17を昇降させる。なお、油圧ジャッキ18の姿勢は上下逆さまにされてもよい(図示せず)。
【0018】
図1に示すように、橋梁施工方法は、河川9に桟橋1の桟橋下部工10を構築する桟橋下部工構築工程S1と、桟橋下部工10の上に桟橋上部工11を支持させる桟橋上部工構築工程S2と、昇降装置15を用いて桟橋上部工11等を河川9の水位に応じた高さに昇降させる桟橋昇降工程S4と、桟橋1を利用して新設橋2を構築する橋梁施工工程S5と、を備えている。また、桟橋1は、新設橋2の構築後に撤去されるため、橋梁施工方法は、桟橋1を撤去する桟橋撤去工程S6を更に備えるとよい。なお、桟橋下部工構築工程S1、桟橋上部工構築工程S2および桟橋昇降工程S4が、新設橋2の構築に利用される桟橋1を連続桁として河川9に構築するための桟橋構築方法の一例である。
【0019】
なお、本明細書では、一例として、桟橋1および新設橋2は、平面から見て、河川9の流水方向に直交する方向に沿って延設されるが(図3および図8参照)、これに限らず、流水方向と流水方向に直交する方向とに対して角度をもって斜めに延設されてもよい(図示せず)。つまり、橋軸方向と流水方向とが直交してもよいし、橋軸方向と流水方向とが直角を除く角度で交差してもよい(図示せず)。また、河川9とは、低水路9B、高水敷9Cおよび堤防敷9D等を含む河川区域9Aを指す(図9および図10参照)。
【0020】
<桟橋下部工構築工程>
図2に示すように、桟橋下部工構築工程S1では、河川9に浮かべた台船90を利用して桟橋下部工10が構築される。以下、桟橋下部工構築工程S1の具体的な一例について説明する。なお、本明細書では、一例として、桟橋下部工10および後述する新設橋2の新設下部工20は、それぞれ、2つの支間を有するように3つ構築される(図4および図9参照)。このように、桟橋1および新設橋2は、一例として、2径間(2つの支間)とされているが、これに限らず、桟橋下部工10等が2つ以上構築され、1径間以上(1つの支間以上)となる桟橋1等を構成できればよい。詳細は後述するが、桟橋上部工11を連続桁とすることの利点を活かすには、2つ以上の支間を有するように3つ以上の桟橋下部工10等が構築されることが好ましい。なお、「径間(径間長)」とは、橋軸方向に隣り合う桟橋下部工10(新設下部工20)の中心間距離を指し、「支間(支間長)」とは、桟橋上部工11(新設上部工21)を支承する位置の間の距離を指すが、本明細書では、「径間(径間長)」と「支間(支間長)」とを概ね同義として捉えるものとする。また、「2径間」等の表現に使用される数字は橋軸方向に並ぶ径間の数を表しており、径間の数は桟橋下部工10等の数から1を引いた値と同値である。また、本明細書では、説明の便宜上、主に、河川9の低水路9Bに設けられる1つの桟橋下部工10および1つの新設下部工20(橋脚)に着目して説明する。
【0021】
図2に示すように、桟橋下部工構築工程S1では、台船90に搭載されたクレーン91(杭打機等)によって複数(例えば、8つ)の桟橋杭12が打設される。複数の桟橋杭12は、平面から見て、略格子状に配設されている(図3参照)。平面から見て四隅に位置する4つの桟橋杭12は、昇降装置15の4つのガイド支柱16を構成する。各ガイド支柱16は、他の桟橋杭12よりも長く形成されており、他の桟橋杭12よりも上方に延設されている。
【0022】
また、桟橋下部工構築工程S1では、桟橋杭12を含む複数の桟橋杭12の上部を囲むように包囲部材13(ブレース構造)が取り付けられ、4つのガイド支柱16に昇降受梁17が取り付けられる。昇降受梁17はガイド支柱16を除く桟橋杭12の上端に設置され、昇降受梁17の四隅部分が4つのガイド支柱16に上下方向にスライド可能に支持される。桟橋杭12を含む複数の桟橋杭12が包囲部材13と昇降受梁17とで連結されることで、桟橋下部工10が構築される。なお、詳細は後述するが、昇降受梁17の下面がガイド支柱16を除く桟橋杭12の上端に当接する高さが、昇降受梁17の下限位置P1となる。また、桟橋下部工10が、非出水期に大型土のうによる河川締切をした領域または高水敷9C等に構築される場合には、台船90を利用する必要はなく、地上に配置されたクレーン91を用いればよい。
【0023】
図3に示すように、桟橋下部工10は、後に構築される新設橋2の新設下部工20に対して流水方向の一方(例えば、上流側)に間隔をあけると共に橋軸方向に新設下部工20と同程度の間隔(支間長)をあけた位置に構築される。つまり、桟橋下部工構築工程S1では、桟橋下部工10が、後に構築される新設下部工20(構築予定位置)と流水方向に並んで構築される。なお、桟橋下部工10が新設下部工20に対して流水方向に間隔をあけるとは、桟橋下部工10が空間を挟んで新設下部工20から離隔しているという意味であり、その間隔は、施工(作業)し易い程度の間隔であって、例えばトラベラクレーン95(図7参照)のジブ(腕)が届く範囲内(例えば5m以下)で設定されるとよい。また、桟橋下部工10が橋軸方向に新設下部工20と同程度の間隔をあけた位置に構築されるとは、新設下部工20の間隔(支間長)と完全に一致することを要求する意味ではなく、現場の条件に応じて橋軸方向に若干ずれることを許容する意味である。
【0024】
ところで、橋梁施工方法(桟橋構築方法)では、河積阻害率を考慮する必要がある。河積阻害率とは、図4および図5に示すように、河川幅9E(出水期の川幅)の範囲に構築された桟橋下部工10の橋軸方向の幅W(図4および図5では、桟橋下部工10が複数あるため、幅Wの総和)と、河川幅9Eとの比である(河積阻害率[%]=(幅Wの総和/河川幅9E)×100)。河積阻害率が5%以上になると、流水量が増加した場合に、桟橋下部工10に流木等がからまり易くなり、河川9が氾濫する可能性が高まるとされている。そこで、桟橋下部工構築工程S1では、河川9の河積阻害率を5%以下とするように桟橋下部工10が構築される。
【0025】
<桟橋上部工構築工程>
図4に示すように、桟橋上部工構築工程S2では、送り出し工法によって桟橋上部工11が橋軸方向に沿って送り出されることで、桟橋上部工11が桟橋下部工10の上に設置される。以下、桟橋上部工構築工程S2で実施される送り出し工法の具体的な一例について説明する。
【0026】
複数の桟橋下部工10の昇降受梁17上に複数の送り出し設備92が配置され、河川9の橋軸方向の一方に設けられた送り出しヤード93において、桟橋上部工11と手延べ桁11Aとが連結される。第1実施形態では、桟橋上部工11は、隣り合う2つの桟橋下部工10の間に架設できるように、桟橋下部工10の1径間(1つの支間長)程度の長さに形成されている。手延べ桁11Aは、桟橋上部工11の送り出し方向の先端(橋軸方向の他端)に固定され、送り出し方向(橋軸方向の他方)に向かって延設されている。
【0027】
手延べ桁11Aを含めた桟橋上部工11は、ジャッキアップされて送り出し設備92に載せられ、送り出し設備92によって橋軸方向の一方から他方に向かって送り出される。手延べ桁11A(の先端側)が送り出し方向の下流側の桟橋下部工10に到達すると、手延べ桁11Aに連結された桟橋上部工11に、2つ目の桟橋上部工11が継ぎ足され、更に送り出される。2つの桟橋上部工11が3つの桟橋下部工10上に配置されるまで送り出された後、送り出し設備92および手延べ桁11Aが解体され、2つの桟橋上部工11が下降されて3つの桟橋下部工10(昇降受梁17)上に支承される(図5参照)。
【0028】
なお、桟橋上部工11は見かけ上2つに分かれているが、2つの桟橋上部工11は、連結されることで一体(連続桁)となって1つの桟橋上部工11を構成する。また、手延べ桁11Aは、解体されずに、桟橋上部工11に取り付けられたままでもよい。
【0029】
図5に示すように、桟橋上部工11は、3つの桟橋下部工10の上に設置されて2つの支間を渡す連続桁(二径間連続桁)となる。桟橋上部工11が河川9に架設されることで、桟橋1が完成する(構築される)。なお、桟橋上部工11上には軌条設備94が設置され、軌条設備94上にはトラベラクレーン95等が橋軸方向に走行可能に設置される(図7参照)。
【0030】
なお、手延べ桁11Aを除いた桟橋上部工11は、桟橋下部工10の1径間程度の長さに形成されていたが、これに限らず、2径間程度の長さに形成されてもよい(図示せず)。換言すれば、送り出し中に桟橋上部工11を継ぎ足すことを省略するために、桟橋上部工11が全ての桟橋下部工10の上に載るような長さ(河川9を横断する長さ)に形成されてもよい。また、桟橋1(桟橋上部工11)は、新設下部工20を構築するために必要な長さであればよく、必ずしも河川9を横断する長さである必要はなく、例えば、河川9の片側(1径間)のみに形成されてもよい(図示せず)。
【0031】
<桟橋昇降工程>
ところで、桟橋1の構築には、ある程度の時間がかかることから、桟橋1の構築中に、季節が変わり、河川9の水位が上昇または下降することがある。例えば、非出水期(例えば、1月~5月、11月~12月)に桟橋1の構築を開始し、出水期(例えば、6月~10月)の間近になって桟橋1が完成した場合、桟橋1を利用した橋梁施工工程S5を実施する期間を十分に確保することができなくなる虞がある。また、例えば、桟橋1の完成後の水位が、桟橋上部工11から大きく下降していた場合、水面付近での作業や資材の運搬等を、水面から上方に離れた高い位置にある桟橋上部工11から行わなければならず、作業効率(作業性)が悪化する虞がある。
【0032】
そこで、第1実施形態に係る橋梁施工方法は、新設橋2の構築前(橋梁施工工程S5の開始前)において、新設橋2の構築中(橋梁施工工程S5の実施中)に河川9の出水期または非出水期を迎えると予測される場合に、昇降装置15を用いて桟橋上部工11を含む桟橋1の一部を河川9の水位に応じた高さに昇降させる桟橋昇降工程S4を備えている。なお、河川9の出水期および非出水期は、例えば、施工現場の地形(河川9の流域形状)、施工現場の気象データ、および施工業者(作業者)の経験等に基づいて予め求められる。また、橋梁施工方法の各工程S1~S6の工期(日数)は、出水期および非出水期を考慮した上で予め計画される。
【0033】
図1に示すように、判定工程S3では、新設橋2の構築中に出水期または非出水期(以下、「出水期等」ともいう。)を迎えると予測されるか否かが判定される。新設橋2の構築中に出水期等を迎えると予測された場合(判定工程S3でYES)、橋梁施工工程S5に先立って桟橋昇降工程S4が実施される。一方で、出水期等を迎えると予測されない場合(判定工程S3でNO)、桟橋昇降工程S4は実施されず、次の橋梁施工工程S5が実施される。なお、施工業者(作業者)は、出水期、非出水期および各工程S4~S5(S51,S52)に必要な工期(日数)等に基づいて、新設橋2の構築中に出水期等を迎える(または迎えない)ことを予測することができる。また、「橋梁施工工程S5の開始前において、橋梁施工工程S5の実施中に出水期等を迎える」とは、橋梁施工工程S5の全工期中の何れかの時点で出水期等を迎えることを指すが、好ましくは、後述する新設下部工構築工程S51と新設上部工構築工程S52のうち、少なくとも新設下部工構築工程S51の実施中の何れかの時点で出水期等を迎えることを指すとよい。
【0034】
桟橋昇降工程S4では、桟橋上部工11および昇降受梁17(以下、「昇降受梁17等」ともいう。)が、橋梁施工工程S5の実施に適した高さとなるように昇降される。以下、桟橋昇降工程S4の具体的な一例について説明する。なお、桟橋昇降工程S4は、トラベラクレーン95を設置する前に実施されるとよい。
【0035】
各々の桟橋下部工10に対して、4台の油圧ジャッキ18を備えた昇降装置15が設けられている。総計12台の油圧ジャッキ18は、コントローラ(図示せず)に電気的に接続され、コントローラによって同期をとりながら駆動制御(油圧制御)される。昇降装置15は、昇降受梁17の下面がガイド支柱16を除く桟橋杭12の上端に当接する高さとなる下限位置P1(図6の左側の図を参照)と、昇降受梁17の下面が下限位置P1よりも上方となる河川9の計画高水位(以下、HWL(High Water Level)ともいう。)以上の高さとなる上限位置P2(図6の中央および右側の図を参照)と、の間で昇降受梁17等を昇降させる。なお、河川9の計画高水位(HWL)とは、出水期に現れる計画高水流量が河川改修後の河道断面を流下するときの水位を意味する。ここで、計画高水流量は、河道建設時の基本となる基本高水流量から各種洪水調節施設での洪水調節量を差し引いた流量である。また、下限位置P1および上限位置P2は、昇降受梁17の下面を基準に定められていたが、本発明はこれに限定されない。上限位置P2は、少なくとも桟橋上部工11の下部がHWL以上の高さになるように設定されればよく、下限位置P1は、非出水期の水位に応じてHWL未満の高さに設定されればよい。なお、図2図4および図5等では、昇降受梁17等が下限位置P1に配置されているが、上限位置P2(HWL以上)に配置されていてもよい。
【0036】
例えば、昇降受梁17等を下限位置P1から上限位置P2に上昇させる場合、図6の左側および中央の図に示すように、シリンダケース18Aに収容されていたラム18Bが下方に伸ばされることで、昇降受梁17はガイド支柱16に沿って上限位置P2まで上昇する。その後、図6の右側の図に示すように、昇降受梁17を固定すると共に耐震性を維持するために、橋軸方向および流水方向に隣り合うガイド支柱16の間に仮設水平材41および複数のブレース材42が架設される。これにより、桟橋上部工11および昇降受梁17が、HWL以上の高さまで上昇し、その位置で支持される。続いて、ラム18Bが、縮められてシリンダケース18A内に戻され、台座部材40が、ラム18Bの先端部に対応して上方に移動され、その位置でガイド支柱16に固定される。
【0037】
また、例えば、昇降受梁17等を上限位置P2から下限位置P1に下降させる場合、図6の中央の図に示すように、台座部材40が下限位置P1に対応する高さに移動されてガイド支柱16に固定され、シリンダケース18Aから下方に引き出されたラム18B(の下端部)が台座部材40に当接する。続いて、図6の中央および左側の図に示すように、仮設水平材41やブレース材42が撤去され、ラム18Bが縮められてシリンダケース18A内に戻されることで、昇降受梁17はガイド支柱16に沿って下限位置P1まで下降する。これにより、桟橋上部工11および昇降受梁17が、HWL未満の高さまで下降し、その位置で支持される。
【0038】
なお、以上の説明では、昇降受梁17等が下限位置P1または上限位置P2に配置されていたが、本発明はこれに限定されない。昇降受梁17等は、上限位置P2と下限位置P1の途中の所望の高さに配置(昇降)されてもよい。この場合、桟橋上部工11等が所望の高さよりも低い位置にあるのであれば、上記した桟橋上部工11等を上昇させる場合と同様の手順で上昇させればよく、桟橋上部工11等が所望の高さよりも高い位置にあるのであれば、上記した桟橋上部工11等を下降させる場合と同様の手順で下降させればよい。また、桟橋上部工11等を所望の高さに移動させた後、仮設水平材41やブレース材42が架設され、ラム18Bがシリンダケース18A内に戻され、台座部材40がラム18Bの先端部に対応した位置でガイド支柱16に固定されるとよい。なお、昇降受梁17等を昇降させる必要がない時期には、油圧ジャッキ18は撤去されてもよい。この場合、桟橋上部工11と桟橋下部工10とは、強固に固定される(図示せず)。
【0039】
以上のように、桟橋昇降工程S4が橋梁施工工程S5に先立って実施されることで、桟橋上部工11が新設橋2の施工に適した高さとなる。
【0040】
<橋梁施工工程>
橋梁施工工程S5では、桟橋1を利用して新設橋2が構築される。図1に示すように、橋梁施工工程S5は、新設下部工構築工程S51と、新設上部工構築工程S42と、を備えている。なお、新設橋2は、3つの新設下部工20(2つの橋台と1つの橋脚)と、3つの新設下部工20に架け渡された新設上部工21と、を備えている(図10参照)。新設橋2は、例えば、道路橋、鉄道橋またはこれらの併用橋とすることができる。また、新設橋2の橋梁形式や材料は特に限定されるものではなく、例えば、新設橋2は、箱桁、鈑桁、トラスまたはアーチ等の橋梁形式をとることができ、材料は、鋼でもよいしコンクリートでもよい。
【0041】
(新設下部工構築工程)
図7および図8に示すように、新設下部工構築工程S51では、桟橋1を利用して新設橋2の新設下部工20が桟橋下部工10と流水方向に並ぶ位置に構築される。以下、新設下部工構築工程S51の具体的な一例について説明する。
【0042】
複数の本設鋼管矢板22が、桟橋1上のトラベラクレーン95等を用いて、新設下部工20の構築予定位置を囲むように打設される。これにより、新設下部工20の構築予定位置に止水壁22Aが構築される。止水壁22Aは、新設下部工20の構築予定位置への水の流入を防ぐ止水機能と、土圧に抵抗する土留め機能とを有している。複数の本設鋼管矢板22の周囲には、重機96を載せるための作業構台24が設置される。止水壁22Aの内側には、作業構台24上の重機96を用いて新設躯体23が構築される。複数の本設鋼管矢板22と新設躯体23とが、鋼管矢板基礎となる新設下部工20を構成する。なお、新設下部工20の構築後、作業構台24は撤去され、複数の本設鋼管矢板22は河川9の底付近で切断される(図11参照)。
【0043】
(新設上部工構築工程)
図9に示すように、新設上部工構築工程S42では、送り出し工法によって新設上部工21が橋軸方向に沿って送り出されることで、新設上部工21が新設下部工20の上に設置される。新設上部工構築工程S42で実施される送り出し工法は、上記した桟橋上部工構築工程S2で実施される送り出し工法と略同一であるため、以下、具体的な一例について簡単に説明する。なお、図9および図10では、説明の便宜のため、桟橋1の図示が省略されている。
【0044】
複数の新設下部工20上に複数の送り出し設備92が配置され、送り出しヤード93において、新設上部工21の送り出し方向の先端に手延べ桁11Aが連結される。第1実施形態では、手延べ桁11Aを除いた新設上部工21は、新設下部工20の1径間(1つの支間長)程度の長さに形成されている。
【0045】
手延べ桁11Aを含めた新設上部工21は、ジャッキアップされて送り出し設備92に載せられ、送り出し設備92によって橋軸方向の一方から他方に向かって送り出される。新設上部工21は継ぎ足されながら送り出され、2つの新設上部工21が3つの新設下部工20上に配置されるまで送り出された後、送り出し設備92および手延べ桁11Aが解体、除去される。連結された2つの新設上部工21は、下降されて3つの新設下部工20上に支承され、河川9に架設された連続桁となる(図10参照)。
【0046】
図10に示すように、新設上部工21が新設下部工20の上に設置されることで、新設橋2が完成する(構築される)。
【0047】
なお、手延べ桁11Aを除いた新設上部工21は、新設下部工20の1支間長程度の長さに形成されていたが、これに限らず、2支間長程度の長さに形成されてもよい(図示せず)。換言すれば、送り出し中に新設上部工21を継ぎ足すことを省略するために、新設上部工21が全ての新設下部工20の上に載るような長さ(河川9を横断する長さ)に形成されてもよい。また、新設上部工構築工程S42では、送り出し工法によって新設上部工21が設置されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、台船90にジャッキ設備を有する構台(図示せず)が搭載され、その構台に載せられた新設上部工21がジャッキ設備を用いて新設下部工20上に設置されてもよい。また、新設上部工構築工程S52では、桟橋上部工11上に設置した新設上部工21を、流水方向に略水平に移動する横取り工法によって、新設上部工21が新設下部工20の上に設置されてもよい(図示せず)。この場合、桟橋上部工11上において、新設上部工21の全てが組み立てられてもよいし、新設上部工21を部分的に組み立てて、その都度、横取り(流水方向へ移動)してもよい(図示せず)。
【0048】
ところで、新設橋2の構築には、ある程度の時間がかかることから、新設橋2の構築中(橋梁施工工程S5の途中)に、季節が変わり、河川9の水位が上昇または下降することがある。例えば、新設橋2の構築中に水位が、HWLの近傍まで上昇した場合、橋梁施工工程S5を継続できなくなる虞がある。また、例えば、新設橋2の構築中に水位が、HWLから大きく下降していた場合、水面付近での作業等を、高い位置にある桟橋上部工11から行うことになり、作業効率(作業性)が悪化する虞がある。
【0049】
そこで、第1実施形態に係る橋梁施工方法では、橋梁施工工程S5(新設下部工構築工程S51または新設上部工構築工程S42)の開始後において、橋梁施工工程S5の実施中に出水期または非出水期を迎えると予測される場合に、桟橋昇降工程S4が実施される。図1に示すように、橋梁施工工程S5の開始後に実施される桟橋昇降工程S4は、出水期等を迎えることが予測されたことを条件に、橋梁施工工程S5を一時中断して実施される割り込み処理である。割り込み処理としての桟橋昇降工程S4は、橋梁施工工程S5の開始前の桟橋昇降工程S4と同様であって、昇降装置15は、橋梁施工工程S5を継続することが可能となるように、桟橋上部工11および昇降受梁17を上昇または下降させる(図6参照)。なお、施工業者(作業者)は、出水期、非出水期および各工程S51,S52に必要な工期(日数)等に基づいて、橋梁施工工程S5の実施中に出水期等を迎える(または迎えない)ことを予測することができる。また、出水期等を迎える(または迎えない)ことを予測する時期(タイミング)は、発注者または施工業者(作業者)等によって定期的(毎日、毎週、毎月、四半期毎等)に行われてもよい。
【0050】
<桟橋撤去工程>
桟橋撤去工程S6では桟橋1が撤去される。桟橋撤去工程S6では、先に説明した桟橋下部工構築工程S1と桟橋上部工構築工程S2とが概ね逆の手順で実行される。簡単に説明すると、桟橋上部工11の送り出し方向の先端に手延べ桁11Aが連結され、手延べ桁11Aを含めた桟橋上部工11がジャッキアップされ、桟橋下部工10上に送り出し設備92が設置される。桟橋上部工11は、送り出し設備92に載せられて橋軸方向の他方から一方(送り出しヤード93)に引き戻され、桟橋下部工10の上から撤去される。次に、桟橋下部工10を構成する昇降受梁17や包囲部材13が、台船90に搭載されたクレーン91によって撤去され、複数の桟橋杭12が河川9の底付近で切断される(図11参照)。なお、桟橋撤去工程S6では、新設橋2上に載せられたクレーン91等によって桟橋1が撤去されてもよい。
【0051】
以上によって、橋梁施工方法の全工程が終了する(図11参照)。
【0052】
以上説明した第1実施形態に係る桟橋1(桟橋構築方法、橋梁施工方法)では、桟橋上部工11および昇降受梁17が河川9の水位に応じて昇降可能に構成されていた。この構成によれば、例えば、出水期に、桟橋上部工11(の最下部)を河川9のHWL以上の高さに移動させることができる。これにより、出水期における桟橋1の撤去作業を省略することができ、出水期であっても桟橋1を利用した新設橋2の施工を継続することができるため、新設橋2の通年施工が可能になり、工期を短縮することができる。また、例えば、非出水期に桟橋上部工11(の最下部)がHWL以上に設けられていると、水面付近での作業効率(作業性)が悪化するが、桟橋上部工11等を河川9の水位に合わせて下降させることもできる。以上のように、河川9の水位に高低に関わらず、桟橋上部工11等を常に水面の近くに配置することができるため、水面付近における作業を効率良く行うことができる。
【0053】
また、第1実施形態に係る桟橋1(橋梁施工方法に含まれる桟橋構築方法)によれば、桟橋下部工10と新設下部工20とが流水方向に一列に並んで配置されるため(図7および図8参照)、桟橋下部工10が河川9の水流を阻害することを抑制することができる。
【0054】
また、一般的に、従来の架橋工法で複数の単純桁をつなげて構築した桟橋では、支間長が短くなる傾向があり、多くの下部工(橋脚)が河川9(低水路9B等)に構築されることになるため、河積阻害率が5%を超える虞があった。これに対し、第1実施形態に係る桟橋1(橋梁施工方法に含まれる桟橋構築方法)によれば、桟橋上部工11が支間長を広くすることができる連続桁であり、桟橋下部工10の構築数を減少させることができるため、河積阻害率を低減することができる。これにより、桟橋下部工10が河川9の水流を阻害することが抑制され、河川9が氾濫する可能性を有効に低下させることができる。
【0055】
また、第1実施形態に係る橋梁施工方法に含まれる桟橋構築方法によれば、桟橋下部工10の構築に台船90を利用することで(図2参照)、例えば、出水期であっても桟橋下部工10を構築することができる。また、例えば、川岸(高水敷9C)から橋軸方向に離れた低水路9Bの中間辺りであっても桟橋下部工10を構築することができるため、支間長が広い桟橋1を構築することが可能になる。
【0056】
また、第1実施形態に係る橋梁施工方法に含まれる桟橋構築方法によれば、河川9に構築された桟橋下部工10の上に、桟橋上部工11を橋軸方向に沿って送り出すことで(図4参照)、所望の長さの桟橋1を構築することができる。これにより、桟橋1を構築するために、複数回にわたって単純桁を運搬したり桟橋杭12を打設したりする必要が無くなるため、桟橋1の構築にかかる時間を短縮することができる。また、第1実施形態に係る桟橋1(桟橋構築方法)では、2つの支間を有する3つの桟橋下部工10が新設下部工20と流水方向に並んで構築され、桟橋上部工11が2つの支間を渡す連続桁となる構成とした。この構成によれば、桟橋1(桟橋下部工10)の支間長を広くすることができ、桟橋下部工10の構築数を減少させることができる。それらの結果、桟橋1の工期が短縮されるため、出水期を除く限られた期間において、新設橋2の施工可能な期間を長く確保することができ、全体としての新設橋2の構築に係る工期の短縮およびコストの削減を図ることができる。また、一般的に、複数の単純桁をつなげた桟橋は、連続桁を用いた桟橋に比べて耐震性に劣るが、第1実施形態に係る桟橋1(桟橋構築方法)によれば、桟橋上部工11が2つの支間を渡す連続桁となるため、桟橋1の耐震性を向上させることができる。
【0057】
[第2実施形態]
次に、図12ないし図15を参照して、第2実施形態に係る橋梁施工方法について説明する。図12は第2実施形態に係る橋梁施工方法を示すフローチャートである。図13は既設上部工撤去工程S71を説明する断面図(橋軸方向から見た図)である。図14は既設下部工撤去工程S72を説明する断面図(橋軸方向から見た図)である。図15は新設下部工構築工程S51および新設上部工構築工程S42を説明する断面図(橋軸方向から見た図)である。
【0058】
第1実施形態に係る橋梁施工方法は、桟橋1を利用して新規に橋梁(新設橋2)を構築する方法であったが、第2実施形態に係る橋梁施工方法は、桟橋1を利用して既設の橋梁(既設橋3)を改築する方法である。すなわち、「橋梁施工方法」において、「施工」との用語は、広く工事を実施することを意味しており、新たに構築すること(新築)に限らず、改築も含む意味である。また、橋梁の「改築」とは、例えば、河川9に構築された既設橋3の全部または一部を解体・撤去し、その撤去部分(全部または一部)を新たに構築することを意味する。なお、本明細書では、既設橋3と新設橋2とをまとめて表現する場合は単に「橋梁」と呼ぶ。これと同様に、本明細書では、既設橋3の既設下部工30と新設橋2の新設下部工20とを単に「下部工」と呼び、既設橋3の既設上部工31と新設橋2の新設上部工21とを単に「上部工」と呼ぶこともある。
【0059】
新設橋2は、平面から見て、既設橋3とは別の場所に架け替えられる場合と、既設橋3と略同じ場所に架け替えられる場合とがある。前者の場合、既設の道路等とは異なる経路を確保するため、用地買収等が必要になり、後者の場合、既設橋3の撤去後に新設橋2を構築するため、前者よりも多くの工期が必要になる。また、橋梁の架け替えでは、既設上部工31のみが撤去され、新設上部工21のみが構築される場合もあるし、既設上部工31および既設下部工30が撤去され、新設上部工21および新設下部工20が構築される場合もある。また、既設上部工31および既設下部工30の撤去は、全部である場合もあるし、一部である場合もある。また、新設上部工21および新設下部工20の構築は、全部である場合もあるし、一部である場合もある。すなわち、第1~第2実施形態における橋梁施工工程S5,S7では、桟橋1を利用して橋梁の下部工と上部工の少なくとも一方が改築または構築される。
【0060】
以下説明する第2実施形態に係る橋梁施工方法の説明では、一例として、既設橋3を撤去し、既設橋3と略同じ場所に新設橋2を架け替える場合について説明する。なお、以降の説明では、第1実施形態に係る橋梁施工方法(桟橋構築方法、桟橋)の説明に用いた構成と同一または対応する構成には、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0061】
図示は省略するが、既設橋3は、第1実施形態で説明した新設橋2(桟橋1)と同様に、3つの既設下部工30(2つの橋台と1つの橋脚)と、3つの既設下部工30に架け渡された既設上部工31と、を有している。既設下部工30は、地中に埋設された既設ケーソン32と、既設ケーソン32の上に立設された既設躯体33と、を有している(図13参照)。なお、第2実施形態では、第1実施形態で説明した新設橋2等に合わせて、3つの既設下部工30が設けられていたが、これに限らず、既設下部工30は2つ以上(1径間以上)であればよい。また、本明細書では、説明の便宜上、主に1つの既設下部工30(橋脚)に着目して説明する。
【0062】
図12に示すように、第2実施形態に係る橋梁施工方法は、桟橋下部工構築工程S1と、桟橋上部工構築工程S2と、桟橋昇降工程S4と、橋梁施工工程S7と、桟橋撤去工程S6と、を備えている。橋梁施工工程S7では、桟橋1を利用して、既設橋3が撤去され、新設橋2が構築される。
【0063】
<橋梁施工工程>
桟橋下部工構築工程S1および桟橋上部工構築工程S2を実施して桟橋1が構築され、橋梁の改築前において、橋梁の改築中に出水期等を迎えると予測される場合に、桟橋昇降工程S4を実施して昇降受梁17等が昇降され、その後、橋梁施工工程S7が実施される。
【0064】
橋梁施工工程S7は、既設上部工撤去工程S71と、既設下部工撤去工程S72と、新設下部工構築工程S51と、新設上部工構築工程S42と、を備えている。なお、図13に示すように、桟橋下部工10は、既設下部工30に対して流水方向の一方(例えば、上流側)に間隔をあけると共に橋軸方向に既設下部工30と同程度の間隔(支間長)をあけた位置に構築される。つまり、桟橋下部工10が既設下部工30と流水方向に並んで構築される(図8に示す新設下部工20を既設下部工30に置き換えるとよい。)。
【0065】
(既設上部工撤去工程)
図13に示すように、既設上部工撤去工程S71では、桟橋1を利用して既設上部工31が撤去される。具体的には、既設上部工31は、桟橋1上のトラベラクレーン95に支持されながら橋軸方向に複数に切断(分割)される。複数に分割された既設上部工31は、トラベラクレーン95によって運搬台車(図示せず)に積み込まれ、橋梁の外へ運び出される。以上によって、既設上部工31が撤去される。
【0066】
(既設下部工撤去工程)
図14に示すように、既設下部工撤去工程S72では、桟橋1を利用して既設下部工30の一部が撤去される。具体的には、複数の本設鋼管矢板22が、桟橋1上のトラベラクレーン95(杭打機等)を用いて、既設下部工30の周囲に打設される。複数の本設鋼管矢板22が既設下部工30を囲むように設けられることで、止水壁22Aが構築される。複数の本設鋼管矢板22の周囲には作業構台24が設置され、作業構台24上の重機96を用いて既設下部工30の一部(例えば、既設躯体33と既設ケーソン32の上部)が撤去される。なお、止水壁22A(複数の本設鋼管矢板22)は、新設下部工20の基礎構造として利用される。
【0067】
(新設下部工構築工程、新設上部工構築工程)
図15に示すように、新設下部工構築工程S51では、桟橋1を利用して、既設下部工30と同一位置に新設下部工20が構築される。具体的には、既設ケーソン32の上部を撤去した部分に新設フーチング25が構築され、新設フーチング25の上に新設躯体23が立設(構築)される。複数の本設鋼管矢板22、新設フーチング25および新設躯体23が、新設下部工20を構成する。続いて、作業構台24が撤去され、複数の本設鋼管矢板22が河川9の底付近で切断される(図11参照)。次に、新設上部工構築工程S42では、送り出し工法によって新設上部工21が新設下部工20の上に設置されることで。新設橋2が構築される。なお、桟橋上部工11上に設置した新設上部工21が横取り工法によって新設下部工20の上に設置されてもよい(図示せず)。
【0068】
なお、橋梁施工工程S7の開始後において、橋梁施工工程S7(既設上部工撤去工程S71、既設下部工撤去工程S72、新設下部工構築工程S51、新設上部工構築工程S42)の実施中に、出水期または非出水期を迎えると予測される場合に、実施中の橋梁施工工程S7は一時的に中断され、桟橋昇降工程S4が実施される。
【0069】
その後、桟橋撤去工程S6において桟橋1が撤去され(図11参照)、橋梁施工方法の全工程が終了する。つまり、既設橋3から新設橋2への架け替えが完了する。
【0070】
以上説明した第2実施形態に係る橋梁施工方法(桟橋構築方法および桟橋1)によれば、出水期であっても桟橋1を利用した新設橋2の施工を継続することができる等、第1実施形態に係る橋梁施工方法(桟橋構築方法および桟橋1)と同様の効果を得ることができる。
【0071】
<変形例に係る昇降装置>
なお、第1~第2実施形態に係る桟橋1の昇降装置15では、昇降受梁17が、油圧ジャッキ18の駆動力を受けて4つのガイド支柱16に沿って昇降する構成であったが、本発明はこれに限定されない。例えば、図16に示すように、変形例に係る昇降装置50は、昇降受梁17および油圧ジャッキ18に加え、昇降受梁17の下方で複数の桟橋杭12の上部に固定された桟橋支持台51と、桟橋支持台51の四隅部に設けられた4つの上部ブラケット52と、4つの油圧ジャッキ18を介して上部ブラケット52に結ばれた4つの下部ブラケット53と、昇降受梁17の四隅部と4つの下部ブラケット53との間に架設された4つの昇降支柱54と、を有している。油圧ジャッキ18は上部ブラケット52と下部ブラケット53との間に介設され、シリンダケース18Aは上部ブラケット52に固定され、ラム18Bの先端部は下部ブラケット53に固定されている。昇降支柱54は、上部ブラケット52を上下方向に貫通し、上下方向にスライド可能に設けられている。昇降支柱54の上端部は昇降受梁17に固定され、昇降支柱54の下端部は下部ブラケット53に固定されている。各油圧ジャッキ18のラム18Bを延ばして、下部ブラケット53を上部ブラケット52から下方に引き離すと、各昇降支柱54およびこれの上端部に固定された昇降受梁17が下降する(図16の左側の図を参照)。一方で、各油圧ジャッキ18のラム18Bを縮めて、下部ブラケット53を上部ブラケット52に接近させると、各昇降支柱54およびこれの上端部に固定された昇降受梁17が上昇する(図16の右側の図を参照)。なお、油圧ジャッキ18の姿勢は上下逆さまにされてもよい(図示せず)。
【0072】
また、他の昇降装置として、油圧ジャッキ18を用いた構造に代えて、電動モータの回転運動を、昇降支柱54の直進運動に変換する構造としてもよい(図示せず)。具体的には、昇降支柱54の外周面に螺旋状の雄ネジを形成し、この雄ネジに螺合する雌ネジを有する回転体を電動モータで正逆回転させる構造としてもよい。さらに、他の昇降装置として、昇降受梁17または桟橋上部工11に連結したワイヤをウィンチで引き上げたり降ろしたりする構造としてもよい(図示せず)。
【0073】
また、第1~第2実施形態(変形例を含む。以下同じ。)に係る桟橋1では、昇降装置15,50が、桟橋上部工11と昇降受梁17(桟橋下部工10の一部)とを昇降させていたが、本発明はこれに限定されない。昇降装置15,50は、少なくとも桟橋上部工11を含む桟橋1の一部を昇降させることができればよく、例えば、桟橋上部工11のみを昇降させるように構成されてもよい(図示せず)。
【0074】
なお、第1~第2実施形態に係る橋梁施工方法(桟橋構築方法)では、桟橋昇降工程S4が、橋梁施工工程S5,S7の開始前後において、橋梁施工工程S5,S7の実施中に河川9の出水期等を迎えると予測される場合に実施されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、河川9の水位と桟橋上部工11(例えば下端)の高さとの差分を実測し、その差分が所定値を越えた場合に、桟橋昇降工程S4が実施されてもよい(図示せず)。この場合、判定工程S3では、河川9の水位と桟橋上部工11の高さとの差分が所定値を越えているか否かが判定され、当該差分が所定値を越えている場合に桟橋昇降工程S4が実施されるが、当該差分が所定値以下である場合には桟橋昇降工程S4が実施されない。なお、「所定値」は、例えば、気象条件等によって水位が多少増減したとしても、橋梁施工工程S5を実施する期間を十分に確保することができるように設定され、例えば、地形(河川9の流域形状)、施工現場の気象データ、および施工業者(作業者)の経験等に基づいて求められるとよい。
【0075】
また、第1~第2実施形態に係る橋梁施工方法の桟橋下部工構築工程S1(図2参照)や既設上部工撤去工程S71(図13参照)では、昇降受梁17等が下限位置P1に設置されていたが、これに限らず、昇降受梁17等は、HWL以上となる上限位置P2に設置されてもよいし、下限位置P1と上限位置P2との間の任意の位置に設置されてもよい(図示せず)。この場合、ガイド支柱16や昇降支柱54の間に仮設水平材41やブレース材42が取り付けられるとよい。また、新設下部工構築工程S51(図7参照)や既設下部工撤去工程S72(図14参照)では、昇降受梁17等が上限位置P2に設置されていたが、これに限らず、昇降受梁17等は、下限位置P1に設置されてもよいし、下限位置P1と上限位置P2との間の任意の位置に設置されてもよい(図示せず)。
【0076】
また、第1~第2実施形態に係る桟橋構築方法の桟橋下部工構築工程S1では、台船90を利用して桟橋下部工10が構築されていたが、本発明はこれに限定されない。台船90を利用せず、例えば、非出水期に、大型土のうによる河川締切をした領域または河川9の高水敷9Cに配置した重機(クレーン等)を用いて桟橋下部工10を構築してもよい。また、既設橋3の改築であれば、既設橋3に配置した重機(クレーン等)を用いて桟橋下部工10を構築してもよい。
【0077】
また、第1~第2実施形態に係る桟橋構築方法の桟橋下部工構築工程S1(桟橋1)では、桟橋下部工10が、新設下部工20と同程度の支間長で構築されていたが、本発明はこれに限定されない。仮に、桟橋下部工10が3つ、新設下部工20が5つ設けられるとした場合、桟橋下部工10は新設下部工20の2倍の支間長とされ、3つの桟橋下部工10が、5つの新設下部工20のうち橋軸方向の両端と中央の3つの新設下部工20と流水方向に並んで設けられてもよい(図示せず)。つまり、桟橋1の支間長は、新設橋2の支間長と同一とされてもよいし、橋梁の支間長の整数倍とされてもよい。
【0078】
また、第2実施形態に係る橋梁施工方法の説明で例示した既設下部工30は、所謂ケーソン基礎であり、第1~第2実施形態に係る橋梁施工方法の説明で例示した新設下部工20は、鋼管矢板基礎であったが、本発明はこれに限定されない。下部工は、例えば、杭基礎やケーソン基礎等、地中埋設の基礎構造物であれば如何なるものでもよい。
【0079】
また、第1~第2実施形態に係る橋梁施工方法では、止水壁22Aを構築するために複数の本設鋼管矢板22を打設したが、これに代えて、複数の鋼矢板、鋼管杭、鋼製パネル等を打設してもよい(いずれも図示せず)。
【0080】
なお、第1~第2実施形態に係る桟橋構築方法および橋梁施工方法は、一態様を示すものであって、その順序(手順)は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更されてもよい。
【0081】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る桟橋および桟橋構築方法並びに橋梁施工方法における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよく、特許請求の範囲は技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様を含んでいる。
【符号の説明】
【0082】
1 桟橋
2 新設橋(橋梁)
3 既設橋(橋梁)
9 河川
10 桟橋下部工
11 桟橋上部工
90 台船
20 新設下部工(下部工)
21 新設上部工(上部工)
30 既設下部工(下部工)
31 既設上部工(下部工)
15,50 昇降装置
S1 桟橋下部工構築工程
S2 桟橋上部工構築工程
S4 桟橋昇降工程
S5,S7 橋梁施工工程
図1
図2
図3
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図5
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図8
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