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  • 特開-シートヒータ 図1
  • 特開-シートヒータ 図2
  • 特開-シートヒータ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090095
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】シートヒータ
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/00 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
H05B3/00 310C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205758
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】谷原 裕之
【テーマコード(参考)】
3K058
【Fターム(参考)】
3K058AA44
3K058AA82
3K058BA01
3K058CB02
3K058CB19
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、着席者にとって快適な温度に調整できるシートヒータを提供する。
【解決手段】発熱体と、前記発熱体への通電と非通電とを切り替えるスイッチと、設定された前記通電の時間と前記非通電の時間の比率に応じて前記スイッチを切り替える制御部とを備える、シートヒータ。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と、
前記発熱体への通電と非通電とを切り替えるスイッチと、
設定された前記通電の時間と前記非通電の時間の比率に応じて前記スイッチを切り替える制御部とを備える、
シートヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のサーモスタットを備えるシートヒータが開示されている。各サーモスタットは、スイッチによって任意に採暖用ヒータと接続できるように構成されている。各サーモスタットの近傍温度や動作温度に差を設けることにより、シートヒータの温度を多段階に制御している。
【0003】
特許文献2には、サーモスタットと抵抗器とを備えるシートヒータが開示されている。サーモスタットと抵抗器とは並列に接続されている。発熱体の過熱時にサーモスタットによって電流が遮断されると、抵抗器を経由して電流が発熱体に流れる。この電流の流れによって、過熱状態において、サーモスタットが閉路となっている通常状態に比べて低い温度で発熱体を発熱させ、シートにおける急激な温度変化を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-272556号公報
【特許文献2】特開2022-143549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サーモスタットを用いた温度制御では、使用しているサーモスタットの動作温度で発熱体の温度、つまりシートヒータの温度が決定される。サーモスタットの数が一つであると、通常サーモスタットの動作温度は高く設定されており、車室内温度によっては着席者が不快に感じるおそれがある。サーモスタットを複数としたり、サーモスタットに抵抗器を並列に接続したりすれば、部品点数、シートヒータの重量、およびコストが増加する上に、回路構造が複雑になる。
【0006】
本発明の目的の一つは、簡易な構成で、着席者にとって快適な温度に調整できるシートヒータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るシートヒータは、発熱体と、前記発熱体への通電と非通電とを切り替えるスイッチと、設定された前記通電の時間と前記非通電の時間の比率に応じて前記スイッチを切り替える制御部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシートヒータは、通電の時間と非通電の時間の比率を設定することで、シートヒータの温度を調整できる。例えば、シートヒータが熱いと感じた場合、非通電の時間が長い比率を設定すれば、その比率に応じてスイッチが切り替えられ、シートヒータを低温に保つことができる。つまり、上記シートヒータは、着席者にとって快適な温度に調整できる。
【0009】
上記シートヒータは、上記比率を設定すれば、その比率に応じてスイッチが切り替えられるだけであり、回路構造がシンプルである。上記シートヒータは、サーモスタットを複数としたり、サーモスタットに抵抗器を並列に接続したりする場合に比較して、コストが上昇したり、重量が大きく増加したり、生産性が低下したりすることが抑制される。廉価にシートヒータの温度を制御できれば、価格が優先される自動車にもシートヒータを採用することができ、快適性を有する自動車を提供することができる。
【0010】
電気自動車に上記シートヒータが採用されれば、シートヒータを活用することで暖房エネルギーの削減が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態のシートヒータが装着された車両用シートの模式図である。
図2図2は、実施形態のシートヒータの回路図である。
図3図3は、実施形態のシートヒータの温度変化を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のシートヒータを、図面を参照して説明する。
【0013】
<全体構成>
実施形態のシートヒータ1は、図1に示す車両用シート9に装着される。車両用シート9は、シートクッション91およびシートバック92を備える。シートヒータ1は、例えばシートクッション91およびシートバック92の各々に装着される。図1では、車両用シート9におけるシートヒータ1の配置箇所の一例をクロスハッチングで示している。
【0014】
シートヒータ1は、図2に示すように、発熱体2とスイッチ32とを備える。スイッチ32は、発熱体2への通電と非通電とを切り替える。実施形態のシートヒータ1の特徴の一つは、設定された通電の時間と非通電の時間の比率に応じてスイッチ32を切り替える制御部40を備える点にある。
【0015】
<発熱体>
発熱体2は、図1に示すシートクッション91およびシートバック92の各々に配置される電熱線である。発熱体2は、シートクッション91およびシートバック92の各々を加熱する。発熱体2は、図2に示すように接地されている。
【0016】
<スイッチ>
スイッチ32は、発熱体2と電源5との間に直列に接続されている。スイッチ32は、リレー3が利用できる。リレー3は、コイル31とスイッチ32で構成される。コイル31は、電源5とECU4との間に直列に接続されている。ECU4は接地されている。コイル31に電流が流されると、スイッチ32がONになり、電源5から発熱体2に電流が流される。コイル31への電流が遮断されると、スイッチ32がOFFになり、電源5から発熱体2に電流は流されない。
【0017】
<制御部>
制御部40は、設定された発熱体2への通電の時間と非通電の時間の比率に応じてスイッチ32を切り替える。制御部40は、ECU4によって構成されている。本例では、コイル31への通電に応じてスイッチ32が切り替えられる。図3は、上記比率と発熱体2、即ちシートヒータ1の温度との関係の一例を示している。図3に示すグラフでは、横軸が時間であり、左の縦軸が電圧であり、右の縦軸が温度である。細実線は電圧を示している。電圧は、発熱体2への通電または非通電に対応している。通電時に電圧が上がり、非通電時に電圧がゼロになる。制御部40は、スイッチ32の切り替えを行っているだけである。通電時の電圧の値は一定である。太実線および二点鎖線は温度を示している。温度も、発熱体2への通電または非通電に対応している。通電時に温度が上がり、非通電時に温度が下がる。
【0018】
上記比率によって、シートヒータ1の温度が所望の温度域に調整される。例えば、非通電の時間t2が比較的長ければ、シートヒータ1の温度が低くなり易い。この場合、図3の太線で示す低温領域Aにシートヒータ1の温度を保つことができる。低温領域Aにおける上限値と下限値とは予め決められている。この上限値と下限値との間において上記比率で発熱体2への通電と非通電とが繰り返される。一方、通電の時間t1が比較的長ければ、シートヒータ1の温度が高くなり易い。この場合、高温領域Bにシートヒータ1の温度を保つことができる。上記比率によっては、低温領域Aと高温領域Bとの間の領域にシートヒータ1の温度を保つこともできる。なお、従来技術のように一つのサーモスタットを用いた温度制御では、通常サーモスタットの動作温度は高く設定されており、図3の二点鎖線で示すように、高温領域Bにしかシートヒータ1の温度を保つことができない。
【0019】
なお、低温領域Aおよび高温領域Bを含む各領域において、加熱を開始してから上限温度に達するまでの初期加熱は、一定の電圧で加熱し続ける。
【0020】
上記比率は、例えば着席者からの指令によって設定される。着席者からの指令は、着席者が手で入力部6を操作して行う。入力部6は、例えば上記比率に対応付けられたキーである。キーを押すことに伴う上記比率は予め設定されている。キーと上記比率との対応関係は、ECU4に記憶されている。例えば、低温領域Aにシートヒータ1の温度を保つための1番のキーと高温領域Bにシートヒータ1の温度を保つための2番のキーとが設定されている。1番のキーでは、低温領域Aにシートヒータ1の温度を保つように、低温領域Aの上限値、下限値、通電の時間t1、および非通電の時間t2が設定されている。2番のキーでは、高温領域Bにシートヒータ1の温度を保つように、高温領域Bの上限値、下限値、通電の時間t1、および非通電の時間t2が設定されている。具体例としては、1番のキーでは、通電の時間t1が10秒、非通電の時間t2が25秒であり、2番のキーでは、通電の時間t1が10秒、非通電の時間t2が20秒である。この1番のキーと2番のキーの例では、1番のキーで設定されると、2番のキーで設定される場合に比べて、シートヒータ1の温度を低くできる。キーの数は複数である。キーの数は、二つであってもよいし、三つ以上であってもよい。
【0021】
上記比率は、例えば車室内の温度に応じて自動的に設定されてもよい。自動空調装置を有する車両では、車室内の温度を測定する温度センサ(図示せず)が配置されている。車室内の温度と上記比率とが予め対応付けられていると、温度センサで測定された車室内の温度に対応して上記比率を自動的に設定することができる。車室内の温度と上記比率との対応関係は、ECU4に記憶されている。例えば、温度センサで測定された車室内の温度が比較的高い場合には、制御部40は、通電の時間t1よりも非通電の時間t2が長くなるように比率を設定し、その比率に応じてスイッチ32を切り替える。一方、温度センサで測定された車室内の温度が比較的低い場合には、制御部40は、非通電の時間t2よりも通電の時間t1が長くなるように比率を設定し、その比率に応じてスイッチ32を切り替える。上記比率は、車室内の温度に対応して種々のバリエーションが設定されているとよい。
【0022】
上記比率は、着席者からの指令によって設定された比率をベースにして、自動空調装置における車室内の温度に応じて自動的に補正されてもよい。
【0023】
<効果>
実施形態のシートヒータ1は、発熱体2への通電の時間と非通電の時間の比率を設定するだけで、シートヒータ1の温度を所望の温度域に調整できる。上記比率のバリエーションによっては、種々の温度域にシートヒータ1を保つことができ、着席者にとって快適な温度に調整できる。上記シートヒータ1は、上記比率を設定すれば、その比率に応じてスイッチ32が切り替えられるだけであり、図2に示すように回路構造がシンプルである。
【0024】
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、シートヒータ1が図示しないサーモスタットをさらに備えてもよい。
【0025】
サーモスタットは、発熱体2の温度が設定された上限値よりも高くなると発熱体2への通電を停止し、発熱体2の温度が設定された下限値よりも低くなると発熱体2への通電を開始する。サーモスタットは、図2に示すスイッチ32と発熱体2との間に直列に接続される。サーモスタットは、例えば感熱体としてバイメタルを有するものを利用できる。
【0026】
通常、自動空調装置を有する車両では、まず高温領域Bまでシートヒータ1を温める。サーモスタットを備えるシートヒータ1であれば、高温領域Bの制御をサーモスタットで行うことができる。高温領域Bまでシートヒータ1を温めたものの、シートヒータ1が熱いと感じた場合には、制御部40が上記比率に応じてスイッチ32を切り替えることで、低温領域Aを含む所望の温度域までシートヒータ1の温度を下げることができる。
【0027】
高温領域Bの制御をサーモスタットで行う場合、サーモスタットによる発熱体2への通電と非通電との繰り返しによる温度変化を上記比率に反映させてもよい。サーモスタットによる単位時間当たりの上記繰り返しは、車室内の温度との相関関係にある。例えば、車室内の温度が低いと、車室内の温度が高い場合に比べてサーモスタットによる上記繰り返し回数が多くなる。この繰り返し回数をカウントすることで、通電と非通電を繰り返すサイクル時間をECU4に記憶させる。制御部40は、上記サイクル時間に応じた上記比率でスイッチ32を切り替えることもできる。
【符号の説明】
【0028】
1 シートヒータ
2 発熱体
3 リレー
31 コイル
32 スイッチ
4 ECU
40 制御部
5 電源
6 入力部
9 車両用シート
91 シートクッション
92 シートバック
A 低温領域
B 高温領域
図1
図2
図3