(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090100
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】作業車両、制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
B60L 58/34 20190101AFI20240627BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20240627BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20240627BHJP
H01M 8/04007 20160101ALI20240627BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20240627BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20240627BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240627BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20240627BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20240627BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20240627BHJP
【FI】
B60L58/34
B60L7/14
H01M8/00 Z
H01M8/04007
H01M8/0432
H01M8/04858
H01M8/04 J
H01M8/04228
H01M8/04303
H01M8/04701
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205764
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 悠生
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】戎崎 英世
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA12
5H125AC07
5H125AC12
5H125BD04
5H125CB02
5H125CD09
5H125EE37
5H125FF08
5H125FF27
5H127AB04
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127CC07
5H127DA15
5H127DB74
5H127DC79
5H127DC80
5H127DC90
5H127DC96
5H127EE04
(57)【要約】
【課題】寒冷環境下において燃料電池を効率よく昇温する。
【解決手段】ヒータは、熱媒体と前記燃料電池との熱交換を行う第一熱交換器と同じ流路に設けられる。ヒータは、燃料電池が停止しており、かつ熱媒体の温度が所定の閾値より低いときに、蓄電装置に蓄えられた前記電気エネルギーによって熱媒体を加熱する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスと大気中の酸素とを反応させて電力を生成する燃料電池と、
電気エネルギーを蓄える蓄電装置と、
前記燃料電池に設けられ、熱媒体と前記燃料電池との熱交換を行う第一熱交換器と、
前記熱媒体の温度が所定の閾値より低いときに、前記蓄電装置に蓄えられた前記電気エネルギーによって前記熱媒体を加熱するヒータと、
を備える作業車両。
【請求項2】
前記熱媒体を冷却するための第二熱交換器と、
前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間で前記熱媒体を循環させる循環流路と
を備え、
前記ヒータは、前記循環流路の少なくとも一部に設けられる
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記循環流路のうち、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間を接続するショートカット流路と、
前記循環流路のうち、前記第二熱交換器と前記ショートカット流路との間に設けられ、前記熱媒体を圧送するポンプと、
前記第二熱交換器から流れる前記熱媒体を、前記第一熱交換器へ通すか前記ショートカット流路へ通すかを切り替え可能であって、前記燃料電池が停止しており、かつ前記熱媒体の温度が所定の閾値より低いときに、前記熱媒体を前記ショートカット流路へ通し、前記燃料電池が駆動しているときに、前記熱媒体を前記第一熱交換器へ通す弁と
を備え、
前記ヒータは、前記循環流路のうち、前記第二熱交換器と前記ショートカット流路との間に設けられる
請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
第二熱交換器と、
第三熱交換器と、
前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間で前記熱媒体を循環させる第一循環流路と、
前記第二熱交換器と前記第三熱交換器との間で前記熱媒体を循環させる第二循環流路と、
を備え、
前記ヒータは、前記第二循環流路の少なくとも一部に設けられる
請求項1に記載の作業車両。
【請求項5】
前記ヒータは、前記燃料電池が停止しており、かつ前記熱媒体の温度が所定の閾値より低いときに、前記蓄電装置に蓄えられた前記電気エネルギーによって前記熱媒体を加熱し、前記燃料電池が停止していないときに、前記熱媒体を加熱しない
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の作業車両。
【請求項6】
電気モータである走行モータと、
前記走行モータによって駆動される走行装置と、
を備え、
前記ヒータは、前記走行モータの回生電力を熱エネルギーに変換するリターダブレーキである
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の作業車両。
【請求項7】
水素ガスと大気中の酸素とを反応させて電力を生成する燃料電池と、
電気エネルギーを蓄える蓄電装置と、
熱媒体と前記燃料電池との熱交換を行う第一熱交換器と、
電気エネルギーによって前記熱媒体を加熱するヒータと、
を備える作業車両の制御装置であって、
前記熱媒体の温度が所定の閾値より低いときに、前記蓄電装置に蓄えられた前記電気エネルギーによって前記ヒータを加熱させる
制御装置。
【請求項8】
水素ガスと大気中の酸素とを反応させて電力を生成する燃料電池と、
電気エネルギーを蓄える蓄電装置と、
熱媒体と前記燃料電池との熱交換を行う第一熱交換器と、
電気エネルギーによって前記熱媒体を加熱するヒータと、
を備える作業車両の制御方法であって、
前記熱媒体の温度が所定の閾値より低いときに、前記蓄電装置に蓄えられた前記電気エネルギーによって前記ヒータを加熱させるステップ
を有する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業車両、制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は化学反応により電力を取り出すため、適切な温度管理が必要となる。燃料電池の種類によって動作温度帯が存在する。例えば、一般的に固体高分子形燃料電池は60~80℃、固体酸化形燃料電池は800~1000℃、りん酸形燃料電池は190~200℃、溶融炭酸塩型燃料電池600~700℃である。
燃料電池の温度が動作温度帯よりも低い場合、本来電力に変換されるべきエネルギーが熱に変換されるため、発電効率が低下する。そのため、低温環境下において燃料電池を起動させるときや、間欠運転を行う際に、通常運転時より酸化剤ガス(酸素)の化学量論比(ストイキ)を絞って燃料電池を駆動させる暖機運転がなされる。特許文献1には、発電効率の低い運転状態から通常運転状態に早期に復帰させるための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池が駆動に伴って発熱するため、燃料電池には冷却水などの熱媒体が供給される。一方で、低温環境下においては、熱媒体の温度も低くなっており、冷却水の循環によって燃料電池の温度上昇が妨げられる。
本開示の目的は、寒冷環境下において燃料電池を効率よく昇温することができる作業車両、制御装置および制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、作業車両は、水素ガスと大気中の酸素とを反応させて電力を生成する燃料電池と、電気エネルギーを蓄える蓄電装置と、熱媒体と前記燃料電池との熱交換を行う第一熱交換器と、前記燃料電池が停止しており、かつ前記熱媒体の温度が所定の閾値より低いときに、前記蓄電装置に蓄えられた前記電気エネルギーによって前記熱媒体を加熱するヒータと、を備える。
【発明の効果】
【0006】
上記態様によれば、作業車両は、燃料電池を効率よく昇温することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第一実施形態に係る運搬車両を模式的に示す斜視図である。
【
図2】第一実施形態に係る燃料電池を冷却するための冷却システムを示す図である。
【
図3】第一実施形態に係る運搬車両が備える電気システムの構成を示す概略ブロック図である。
【
図4】第一実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図5】第一実施形態に係る燃料電池の起動制御方法を示すフローチャートである。
【
図6】第一実施形態に係る燃料電池を冷却するための冷却システムを示す図である。
【
図7】第一実施形態に係る燃料電池の起動制御方法を示すフローチャートである。
【
図8】第二実施形態の変形例に係る冷却システムの構成を示す図である。
【
図9】第三実施形態に係る燃料電池を冷却するための冷却システムを示す図である。
【
図10】第三実施形態に係る燃料電池の起動制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〈第一実施形態〉
《運搬車両10の構成》
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
第一実施形態に係る運搬車両10は、鉱山等で採掘した砕石物等を運搬するリジッドフレーム式のダンプトラックである。運搬車両10は、水素ガスを燃料とする燃料電池41によって駆動する。運搬車両10は、作業車両の一例である。
図1は、第一実施形態に係る運搬車両10を模式的に示す斜視図である。運搬車両10は、ダンプボディ11と、車体12と、走行装置13とを備える。
【0009】
ダンプボディ11は、積荷が積載される部材である。ダンプボディ11の少なくとも一部は、車体12よりも上方に配置される。ダンプボディ11は、ダンプ動作及び下げ動作する。ダンプ動作及び下げ動作により、ダンプボディ11は、ダンプ姿勢及び積載姿勢に調整される。ダンプ姿勢とは、ダンプボディ11が上昇している姿勢をいう。積載姿勢とは、ダンプボディ11が下降している姿勢をいう。
【0010】
ダンプ動作とは、ダンプボディ11を車体12から離隔させてダンプ方向に傾斜させる動作をいう。ダンプ方向は、車体12の後方である。実施形態において、ダンプ動作は、ダンプボディ11の前端部を上昇させて、ダンプボディ11を後方に傾斜させることを含む。ダンプ動作により、ダンプボディ11の積載面は、後方に向かって下方に傾斜する。
【0011】
下げ動作とは、ダンプボディ11を車体12に接近させる動作をいう。実施形態において、下げ動作は、ダンプボディ11の前端部を下降させることを含む。
【0012】
排土作業を実施する場合、ダンプボディ11は、積載姿勢からダンプ姿勢に変化するように、ダンプ動作する。ダンプボディ11に積荷が積載されている場合、積荷は、ダンプ動作により、ダンプボディ11の後端部から後方に排出される。積込作業が実施される場合、ダンプボディ11は、積載姿勢に調整される。
【0013】
車体12は、図示しない車体フレームを含む。車体12は、車体フレームに設けられたヒンジピンを介してダンプボディ11を回転可能に支持する。車体12は、走行装置13に支持される。車体フレームのうち走行装置13の前輪の上部に、プラットフォーム121が設けられる。プラットフォーム121は、車体フレームの上面を構成する平板である。プラットフォーム121の上には、運転室122、コントロールキャビネット123、およびリターダグリッド44が設けられる。また、車体フレーム上には、燃料電池41が設けられる。
【0014】
コントロールキャビネット123は、電力の変換を行う。具体的には、コントロールキャビネット123は、燃料電池41と各種電気機器(バッテリ42、走行モータ43等)とリターダグリッド44との間の電力制御を行う。
リターダグリッド44は、走行装置13の制動によって発生する回生電力を吸収するための抵抗器である。リターダグリッド44は、回生電力を熱エネルギーに変換する。
【0015】
走行装置13は、車体12を支持する。走行装置13は、運搬車両10を走行させる。走行装置13は、運搬車両10を前進又は後進させる。走行装置13の少なくとも一部は、車体12よりも下方に配置される。走行装置13は、一対の前輪と一対の後輪とを備える。前輪は操舵輪であり、後輪は駆動輪である。
【0016】
図2は、第一実施形態に係る燃料電池41を冷却するための冷却システム20を示す図である。燃料電池41は発電時に発熱するため、発電効率の良い動作温度帯を維持するため温度調整を行う必要がある。燃料電池41は、内部に冷却水などの熱媒体を流通させ、燃料電池41の本体412に熱媒体を流すことで、本体412と熱媒体との間で熱交換を行うための冷却機構411を備える。冷却機構411は、本体412を通るメイン流路4111と、本体412を通らないバイパス流路4112と、メイン流路4111とバイパス流路4112とを切り替える切換弁4113と、ポンプ4114とを備える。熱媒体がメイン流路4111を通ることで、本体412と熱媒体との熱交換がなされ、本体412を冷却することができる。ポンプ4114は、メイン流路4111に設けられる。切換弁4113およびポンプ4114は、燃料電池41に設けられる電池管理装置413によって制御される。冷却機構411は、熱媒体と燃料電池41との熱交換を行う第一熱交換器の一例である。
冷却システム20は、中間熱交換器21、ラジエータ22、第一流路23、第二流路24、第一ポンプ25、第二ポンプ26を備える。
【0017】
中間熱交換器21は、一次側と二次側にそれぞれ流路を有し、一次側に流れる熱媒体と二次側に流れる熱媒体との間で熱交換させる。
ラジエータ22は、熱媒体を通し、熱媒体が持つ熱を外気へ放出させる。
第一流路23は、燃料電池41の冷却機構411と、中間熱交換器21の二次側の流路とを循環するように接続する。第一流路23および中間熱交換器21の二次側の流路には、ヒータ50が覆うように設けられる。ヒータ50は、例えばリボンヒータであってよい。また、第一流路23には、第一流路23を流れる熱媒体の温度を計測する温度センサ232が設けられる。
第二流路24は、中間熱交換器21の一次側の流路とラジエータ22とを循環するように接続する。
第一ポンプ25は、第一流路23に設けられ、熱媒体を圧送する。
第二ポンプ26は、第二流路24に設けられ、熱媒体を圧送する。
【0018】
燃料電池41の熱は、冷却機構411を介して第一流路23を流れる熱媒体へ移動する。第一流路23を流れる熱媒体の熱は中間熱交換器21を介して第二流路24を流れる熱媒体へ移動する。第二流路24を流れる熱媒体の熱はラジエータ22を介して大気へ放出される。
【0019】
《電気システム40の構成》
図3は、第一実施形態に係る運搬車両10が備える電気システム40の構成を示す概略ブロック図である。電気システム40は、燃料電池41、バッテリ42、走行モータ43、リターダグリッド44、第一DCDCコンバータ45、第二DCDCコンバータ46、インバータ47、第一ポンプモータ48、第二ポンプモータ49、ヒータ50、制御装置60を備える。第一DCDCコンバータ45、第二DCDCコンバータ46、インバータ47および制御装置60は、コントロールキャビネット123内に設けられる。
【0020】
燃料電池41は、図示しない水素タンクから供給される水素ガスと、外気に含まれる酸素とを反応させ、電力を発生させる。第一DCDCコンバータ45は、燃料電池41が生成した直流電力を母線Bに供給する。
【0021】
バッテリ42は、燃料電池41において発生した電力を蓄える。バッテリ42は、蓄電装置の一例である。バッテリ42は、走行モータ43において発生した回生電力を蓄える。バッテリ42は、蓄えた電力を出力する。第二DCDCコンバータ46は、バッテリ42に充電された電力を母線Bに供給する。また第二DCDCコンバータ46は、母線Bに流れる直流電力の電圧を調整してバッテリ42に供給することで、バッテリ42を充電させる。つまり、第二DCDCコンバータ46は、充電装置の一例である。バッテリ42は、バッテリ42の状態を監視する図示しないBMS(Battery Management System)を備える。BMSは、バッテリ42の充電率を計測し、制御装置60に計測データを出力する。
【0022】
走行モータ43は、走行装置13を駆動させる電気モータ(三相交流電気モータ)である。インバータ47は、母線Bに流れる直流電力を三相交流電力に変換して走行モータ43に供給する。また、インバータ47は、走行装置13の制動によって走行モータ43に発生する回生電力を直流電力に変換して、母線Bに供給する。
【0023】
第一ポンプモータ48は、母線Bに流れる直流電力によって第一ポンプ25を駆動させる。
第二ポンプモータ49は、母線Bに流れる直流電力によって第二ポンプ26を駆動させる。
ヒータ50は、母線Bに流れる直流電力によって発熱する。
【0024】
制御装置60は、温度センサ232を含む各種センサから受信した計測データに基づいて、第一DCDCコンバータ45、第二DCDCコンバータ46、インバータ47、第一ポンプモータ48、第二ポンプモータ49、およびヒータ50を制御する。
【0025】
《制御装置60の構成》
図4は、第一実施形態に係る制御装置60の構成を示す概略ブロック図である。
制御装置60は、プロセッサ61、メインメモリ62、ストレージ63、インタフェース64を備えるコンピュータである。
プロセッサ61は、プログラムをストレージ63から読み出してメインメモリ62に展開し、当該プログラムに従って処理を実行する。プロセッサ61の例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
【0026】
プログラムは、制御装置60に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、制御装置60は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ61によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0027】
ストレージ63の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ63は、バスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース64または通信回線を介して制御装置60に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によって制御装置60に配信される場合、配信を受けた制御装置60が当該プログラムをメインメモリ62に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ63は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0028】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ63に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0029】
《制御装置60による起動制御》
図5は、第一実施形態に係る燃料電池の起動制御方法を示すフローチャートである。
第一実施形態に係る燃料電池41の起動制御は、運搬車両10のキーオン時、および制御装置60によってスケジュールされた間欠運転時に実行される。燃料電池41の起動とは、稼働していない状態の燃料電池41へ水素および空気を供給し、燃料電池41を稼働させることをいう。
【0030】
制御装置60は、燃料電池41の起動制御を開始すると、温度センサ232から計測データを取得する(ステップS1)。制御装置60は、取得した計測データの値が所定の閾値より低いか否かを判定する(ステップS2)。閾値は、例えば燃料電池41の動作温度帯の下限値に近い値に設定される。
【0031】
制御装置60は、取得した計測データの値が所定の閾値より低い場合(ステップS2:YES)、ヒータ50を起動し、第一流路23内の熱媒体を加熱する(ステップS3)。ヒータ50を動作させるための電力は、第二DCDCコンバータ46を介してバッテリ42から供給される。なお、このとき制御装置60は第一ポンプ25を駆動させない。これは、燃料電池41の停止中に外部から強制的に熱媒体が流通されることで、燃料電池41が備える切替弁4113、ポンプ4114、本体412などに負荷がかかることを抑制するためである。なお、切替弁4113およびポンプ4114は、電池管理装置413によって制御されるものであって、制御装置60が外部から切替弁4113およびポンプ4114を制御することは通常できない。
そして、ステップS1へ戻り、第一流路23の温度の監視を継続する。
【0032】
制御装置60は、取得した計測データの値が所定の閾値以上である場合(ステップS2:NO)、ヒータ50を停止させる(ステップS4)。なお、ステップS3でヒータ50を起動させていない場合、制御装置60はヒータ50を停止させた状態を維持する。次に、第一ポンプモータ48および第二ポンプモータ49を駆動させる(ステップS5)。これにより、第一ポンプ25および第二ポンプ26が駆動し、第一流路23および第二流路24の熱媒体が流通する。そして、制御装置60は、図示しない水素タンクのポンプ及びエアコンプレッサを駆動させることで、燃料電池41を起動し(ステップS6)、処理を終了する。
【0033】
《作用・効果》
このように、第一実施形態に係る運搬車両10は、熱媒体の温度が所定の閾値より低いときに、バッテリ42に蓄えられた電気エネルギーによって熱媒体を加熱するヒータ50を備える。ヒータ50の動作に用いる電気エネルギーは、燃料電池41ではなくバッテリ42から供給されるため、熱媒体を昇温している燃料電池41の発電効率が悪い間は、燃料電池41が使用されない。これにより、運搬車両10は、燃料電池41の起動時に、低温環境下においても、燃料電池41を発電効率のよい状態で起動することができる。なお、燃料電池41が稼働しているときは、燃料電池41が発熱するため、ヒータ50は熱媒体を加熱しなくてよい。そのため、第一実施形態に係るヒータ50は、燃料電池41が停止しており、かつ熱媒体の温度が所定の閾値より低いときに、熱媒体を加熱する。他の実施形態においては、燃料電池41が停止しているか否かに関わらず、熱媒体の温度が所定の閾値より低いときに、熱媒体を加熱してもよい。
なお、第一実施形態に係る冷却システム20は、中間熱交換器21を備えるが、他の実施形態においては、中間熱交換器21を備えなくてもよい。この場合、ヒータ50は、ラジエータ22および燃料電池41とラジエータ22とを接続する配管を覆うように設けられる。
【0034】
第一実施形態に係るヒータ50は、中間熱交換器21および第一流路23のうち燃料電池41と中間熱交換器21とを接続する範囲を覆うように設けられる。これにより、第一ポンプ25を駆動させて燃料電池41に負荷をかけることなく、第一流路23内に保持される熱媒体全体を昇温させることができる。
【0035】
〈第二実施形態〉
第二実施形態に係る運搬車両10は、第一実施形態と異なる構成の冷却システム20を備える。
図6は、第一実施形態に係る燃料電池41を冷却するための冷却システム20を示す図である。
第二実施形態に係る冷却システム20は、第一実施形態と同様に、中間熱交換器21、ラジエータ22、第一流路23、第二流路24、第一ポンプ25、第二ポンプ26を備える。一方で、第二実施形態に係るヒータ50および温度センサ232は、第二流路24に設けられる。ヒータ50は、第二流路24またはラジエータ22の一部分に設けられる。温度センサ232はヒータ50の上流側に設けられる。
【0036】
《制御装置60による起動制御》
図7は、第一実施形態に係る燃料電池の起動制御方法を示すフローチャートである。第二実施形態に係る制御装置60は、燃料電池41の起動制御を開始すると、温度センサ232から計測データを取得する(ステップS21)。制御装置60は、取得した計測データの値が所定の閾値より低いか否かを判定する(ステップS22)。制御装置60は、取得した計測データの値が所定の閾値より低い場合(ステップS22:YES)、ヒータ50を起動し、第二流路24内の熱媒体を加熱する(ステップS23)。ヒータ50を動作させるための電力は、第二DCDCコンバータ46を介してバッテリ42から供給される。制御装置60は第二ポンプモータ49を駆動させる(ステップS24)。これにより、第二ポンプ26によって第二流路24内の熱媒体が流通し、ヒータ50によって第二流路24内の熱媒体全体が加熱される。他方、制御装置60は、第一ポンプ25を駆動させない。そして、ステップS21へ戻り、第一流路23の温度の監視を継続する。
【0037】
制御装置60は、取得した計測データの値が所定の閾値以上である場合(ステップS22:NO)、ヒータ50を停止させる(ステップS25)。なお、ステップS23でヒータ50を起動させていない場合、制御装置60はヒータ50を停止させた状態を維持する。次に、第一ポンプモータ48および第二ポンプモータ49を駆動させる(ステップS26)。これにより、第一ポンプ25および第二ポンプ26が駆動し、第一流路23および第二流路24の熱媒体が流通する。なお、ステップS24で既に第二ポンプモータ49が駆動している場合、制御装置60は第二ポンプモータ49が駆動している状態を維持する。そして、制御装置60は、図示しない水素タンクのポンプ及びエアコンプレッサを駆動させることで、燃料電池41を起動し(ステップS27)、処理を終了する。
【0038】
《作用・効果》
このように、第二実施形態に係るヒータ50は、第二流路24に設けられ、熱媒体の温度が所定の閾値より低いときに、バッテリ42に蓄えられた電気エネルギーによって熱媒体を加熱する。このとき、第二ポンプ26が駆動し、第二流路24の熱媒体を圧送する。これにより、ヒータ50がラジエータ22、中間熱交換器21または第二流路24の一部にのみ設けられる場合であっても、第二流路24を流通する熱媒体全体を昇温することができる。また、制御装置60は、第二ポンプ26を駆動させる一方で第一ポンプ25は駆動させないため、燃料電池41に負荷がかからない。
【0039】
図8は、第二実施形態の変形例に係る冷却システム20の構成を示す図である。なお、他の実施形態では、ヒータ50に代えてリターダグリッド44と第二流路24との熱交換を行う熱交換器を第二流路24に設けてもよい。この場合、制御装置60は、ステップS23において、ヒータ50を起動させることに代えて、インバータ47にリターダグリッド44への電力供給を指示する。これにより、リターダグリッド44によって発生された熱を、第二流路24へ供給し、第二流路24内の熱媒体を昇温させることができる。なお、他の実施形態においては、リターダグリッド44の熱を回収するための流路と、第二流路24とは別個に設けられ、ラジエータ22において熱交換がなされてもよい。
【0040】
〈第三実施形態〉
第三実施形態に係る運搬車両10は、第一、第二実施形態と異なる構成の冷却システム20を備える。
図9は、第一実施形態に係る燃料電池41を冷却するための冷却システム20を示す図である。
第三実施形態に係る冷却システム20は、ラジエータ22、循環流路27、ショートカット流路28、ポンプ29、切替弁30を備える。つまり、第三実施形態に係る冷却システム20は、中間熱交換器21を備えない。
【0041】
循環流路27は、燃料電池41の冷却機構411と、ラジエータ22とを循環するように接続する。
ショートカット流路28は、循環流路27のうち、燃料電池41の冷却機構411と、ラジエータ22との間を接続する。
ポンプ29は、循環流路27のうち、ラジエータ22とショートカット流路28との間に設けられる。ポンプ29は、循環流路27内の熱媒体を圧送する。
切替弁30は、循環流路27とショートカット流路28との接続箇所に設けられる。切替弁30は、ラジエータ22から流れる熱媒体を、燃料電池41の冷却機構411へ通すかショートカット流路28へ通すかを切り替える。熱媒体は、ショートカット流路28を通る場合、冷却機構411を通らずにラジエータ22へ循環する。
【0042】
循環流路27のうち、ショートカット流路28とラジエータ22の間には、ヒータ50が設けられる。また、循環流路27のうちヒータ50の上流側には、循環流路27を流れる熱媒体の温度を計測する温度センサ232が設けられる。
【0043】
《制御装置60による起動制御》
図10は、第三実施形態に係る燃料電池の起動制御方法を示すフローチャートである。第三実施形態に係る制御装置60は、燃料電池41の起動制御を開始すると、制御装置60は、切替弁30に、流れ方向をショートカット流路28側へ切り替える指示信号を出力する(ステップS41)。次に、制御装置60は、ポンプ29を駆動させる(ステップS42)。これにより、循環流路27内の熱媒体は、ラジエータ22とショートカット流路28との間を循環する。
【0044】
次に、温度センサ232から計測データを取得する(ステップS43)。制御装置60は、ステップS43で取得した計測データの値が所定の閾値より低いか否かを判定する(ステップS44)。制御装置60は、取得した計測データの値が所定の閾値より低い場合(ステップS44:YES)、ヒータ50を起動し、第二流路24内の熱媒体を加熱する(ステップS45)。ヒータ50を動作させるための電力は、第二DCDCコンバータ46を介してバッテリ42から供給される。ヒータ50によって循環流路27内の熱媒体が加熱される。他方、切替弁30によって、熱媒体が燃料電池41の冷却機構411へは供給されない。そして、ステップS43へ戻り、第一流路23の温度の監視を継続する。
【0045】
制御装置60は、取得した計測データの値が所定の閾値以上である場合(ステップS44:NO)、ヒータ50を停止させる(ステップS46)。なお、ステップS45でヒータ50を起動させていない場合、制御装置60はヒータ50を停止させた状態を維持する。次に、制御装置60は、切替弁30に、流れ方向を燃料電池41側へ切り替える指示信号を出力する(ステップS47)。これにより、燃料電池41へ熱媒体が流通する。そして、制御装置60は、図示しない水素タンクのポンプ及びエアコンプレッサを駆動させることで、燃料電池41を起動し(ステップS48)、処理を終了する。
【0046】
《作用・効果》
このように、第三実施形態に係るヒータ50は、循環流路27のうちショートカット流路28とラジエータ22との間に設けられる。このとき、熱媒体の温度が閾値より低い間、熱媒体は切替弁30によってショートカット流路28を通り、燃料電池41へ供給されない。これにより、制御装置60は、燃料電池41に負荷をかけることなく、熱媒体を昇温させることができる。
【0047】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
上述した実施形態に係る制御装置60は、単独のコンピュータによって構成されるものであってもよいし、制御装置60の構成を複数のコンピュータに分けて配置し、複数のコンピュータが互いに協働することで制御装置60として機能するものであってもよい。このとき、制御装置60を構成する一部のコンピュータが作業機械の内部に搭載され、他のコンピュータが作業機械の外部に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10…運搬車両 11…ダンプボディ 12…車体 121…プラットフォーム 122…運転室 123…コントロールキャビネット 13…走行装置 20…冷却システム 21…中間熱交換器 22…ラジエータ 23…第一流路 232…温度センサ 24…第二流路 25…第一ポンプ 26…第二ポンプ 40…電気システム 41…燃料電池 411…冷却機構 42…バッテリ 43…走行モータ 44…リターダグリッド 45…第一DCDCコンバータ 46…第二DCDCコンバータ 47…インバータ 48…第一ポンプモータ 49…第二ポンプモータ 50…ヒータ 60…制御装置 61…プロセッサ 62…メインメモリ 63…ストレージ 64…インタフェース 27…循環流路 29…ポンプ 28…ショートカット流路 30…切替弁