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  • 特開-燃料電池システムおよび作業機械 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090106
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】燃料電池システムおよび作業機械
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240627BHJP
   H01M 8/249 20160101ALI20240627BHJP
   H01M 8/04111 20160101ALI20240627BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/249
H01M8/04111
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205772
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 悠生
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA21
5H127AB04
5H127AB11
5H127AB29
5H127AC02
5H127BA02
5H127BA22
5H127BB02
5H127BB10
5H127BB12
5H127BB37
5H127BB40
(57)【要約】
【課題】外気圧による応答性の変化が生じることを防ぐ。
【解決手段】複数の個別エアコンプレッサは、複数の燃料電池それぞれに対応して設けられる。各個別エアコンプレッサは、空気を所望の動作圧まで昇圧して対応する燃料電池に供給する。共通エアコンプレッサは、複数の個別エアコンプレッサの上流に設けられ、空気を昇圧して所定の基準圧の空気を複数の個別エアコンプレッサに供給する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスと空気中の酸素とを反応させて電気エネルギーを生成する複数の燃料電池と、
前記複数の燃料電池それぞれに設けられた複数の個別エアコンプレッサであって、それぞれが空気を所望の動作圧まで昇圧して対応する燃料電池に供給する複数の個別エアコンプレッサと、
前記複数の個別エアコンプレッサの上流に設けられ、空気を昇圧して所定の基準圧の空気を前記複数の個別エアコンプレッサに供給する共通エアコンプレッサと
を備える燃料電池システム。
【請求項2】
前記共通エアコンプレッサの下流かつ前記複数の個別エアコンプレッサの上流に設けられ、前記共通エアコンプレッサが供給する空気を貯留し、貯留した空気を前記基準圧で前記複数の個別エアコンプレッサへ供給するエアタンク
を備える請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記複数の燃料電池から排出される排気によって回転し、回転によって発生するエネルギーを用いて前記共通エアコンプレッサを駆動させるタービンを備える
請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の燃料電池システムと、
前記燃料電池システムの前記複数の燃料電池が生成した電気エネルギーによって駆動する作業機と
を備える作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システムおよび作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素と酸素との化学反応により電気エネルギーを生成する。燃料である水素は水素ガスを充填した高圧タンクから滞りなく供給される。一方で、通常、酸素は大気から取り出される。そのため、燃料電池には、空気を圧縮して燃料電池へ供給するためのエアコンプレッサが設けられる。特許文献1には、燃料電池に圧縮空気を供給するエアコンプレッサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-152230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料電池システムを備える作業機械は、気圧の低い高地環境において用いられることがある。エアコンプレッサは、燃料電池の要求する圧力まで空気を圧縮するため、外気圧が低いほどエアコンプレッサの必要動力が大きい。そのため、高地環境において燃料電池を用いる場合、所望の電力を出力するために必要な圧力の空気を生成するのに時間がかかり、応答性が低くなる可能性がある。
本開示の目的は、外気圧による応答性の変化が生じることを防ぐことができる燃料電池システムおよび作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、燃料電池システムは、水素ガスと空気中の酸素とを反応させて電気エネルギーを生成する複数の燃料電池と、前記複数の燃料電池それぞれに設けられた複数の個別エアコンプレッサであって、それぞれが空気を所定の動作圧まで昇圧して対応する前記燃料電池に供給する複数の個別エアコンプレッサと、前記複数の個別エアコンプレッサの一次側に設けられ、空気を昇圧して前記複数の個別エアコンプレッサに供給する共通エアコンプレッサとを備える。
【発明の効果】
【0006】
上記態様によれば、燃料電池システムは、外気圧による応答性の変化が生じることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第一実施形態に係る運搬車両を模式的に示す斜視図である。
図2】第一実施形態に係る運搬車両の動力系および駆動系の構成を示す概略ブロック図である。
図3】第一実施形態に係る燃料電池システムの構成を示す概略ブロック図である。
図4】第二実施形態に係る燃料電池システムの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〈第一実施形態〉
《運搬車両の構成》
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、第一実施形態に係る運搬車両10を模式的に示す斜視図である。運搬車両10は、鉱山などの作業現場を走行して積荷を運搬するダンプトラックである。運搬車両10は、運転者による運転操作によらずに無人で稼働する無人ダンプトラックでもよいし、運転者による運転操作に基づいて稼働する有人ダンプトラックでもよい。
運搬車両10は、ダンプボディ11と、車体12と、走行装置13とを備える。
【0009】
ダンプボディ11は、積荷が積載される部材である。ダンプボディ11の少なくとも一部は、車体12よりも上方に配置される。ダンプボディ11は、ダンプ動作及び下げ動作する。ダンプ動作及び下げ動作により、ダンプボディ11は、ダンプ姿勢及び積載姿勢に調整される。ダンプ姿勢とは、ダンプボディ11が上昇している姿勢をいう。積載姿勢とは、ダンプボディ11が下降している姿勢をいう。
【0010】
ダンプ動作とは、ダンプボディ11を車体12から離隔させてダンプ方向に傾斜させる動作をいう。ダンプ方向は、車体12の後方である。実施形態において、ダンプ動作は、ダンプボディ11の前端部を上昇させて、ダンプボディ11を後方に傾斜させることを含む。ダンプ動作により、ダンプボディ11の積載面は、後方に向かって下方に傾斜する。
【0011】
下げ動作とは、ダンプボディ11を車体12に接近させる動作をいう。実施形態において、下げ動作は、ダンプボディ11の前端部を下降させることを含む。
【0012】
排土作業を実施する場合、ダンプボディ11は、積載姿勢からダンプ姿勢に変化するように、ダンプ動作する。ダンプボディ11に積荷が積載されている場合、積荷は、ダンプ動作により、ダンプボディ11の後端部から後方に排出される。積込作業が実施される場合、ダンプボディ11は、積載姿勢に調整される。
【0013】
車体12は、車体フレームを含む。車体12は、ダンプボディ11を支持する。車体12は、走行装置13に支持される。
【0014】
走行装置13は、車体12を支持する。走行装置13は、運搬車両10を走行させる。走行装置13は、運搬車両10を前進又は後進させる。走行装置13の少なくとも一部は、車体12よりも下方に配置される。走行装置13は、一対の前輪と一対の後輪とを備える。前輪は操舵輪であり、後輪は駆動輪である。
【0015】
図2は、第一実施形態に係る運搬車両10の動力系14および駆動系15の構成を示す概略ブロック図である。運搬車両10は、動力系14および駆動系15を備える。動力系14は、水素と酸素とを反応させて駆動系15を動作させるための動力を発生する。駆動系15は、動作することで、ダンプボディ11および走行装置13を駆動させる。ダンプボディ11は、燃料電池が生成した電気エネルギーによって駆動する作業機の一例である。
【0016】
動力系14は、燃料電池143、バッテリ144、DCDCコンバータ145を備える。なお、動力系14は、複数の燃料電池143を備える。
燃料電池143は、水素と酸素とを電気化学反応させて電力を発生する。バッテリ144は、燃料電池143において発生した電力を蓄える。DCDCコンバータ145は、燃料電池143およびバッテリ144に対応して設けられる。DCDCコンバータ145は、制御装置からの指示に従って、対応する燃料電池143またはバッテリ144から電力を出力させる。
【0017】
動力系14が出力した電力は、母線Bを介して駆動系15へ出力される。駆動系15は、インバータ151と、ポンプ駆動モータ152と、油圧ポンプ153と、ホイストシリンダ154と、インバータ155と、走行駆動モータ156とを有する。インバータ151は、母線Bからの直流電流を三相交流電流に変換してポンプ駆動モータ152に供給する。ポンプ駆動モータ152は、油圧ポンプ153を駆動する。油圧ポンプ153から吐出された作動油は、図示しない制御弁を介してホイストシリンダ154に供給される。作動油がホイストシリンダ154に供給されることにより、ホイストシリンダ154が作動する。ホイストシリンダ154は、ダンプボディ11をダンプ動作又は下げ動作させる。インバータ155は、母線Bからの直流電流を三相交流電流に変換して走行駆動モータ156に供給する。走行駆動モータ156が発生した回転力は、走行装置13の後輪に伝達される。
【0018】
《燃料電池システムの構成》
図3は、第一実施形態に係る燃料電池システム17の構成を示す概略ブロック図である。運搬車両10は、複数の燃料電池143に水素と空気を供給する燃料電池システム17を備える。燃料電池システム17は、共通エアコンプレッサ171、エアタンク172、吸気マニホールド173、個別エアコンプレッサ174、水素タンク175、および燃料電池143を備える。
【0019】
共通エアコンプレッサ171は、大気を圧縮し、所定の基準圧(例えば、0.1MPa)まで昇圧する。
エアタンク172は、共通エアコンプレッサ171から供給された圧縮空気を格納する。エアタンク172の吸気口は、共通エアコンプレッサ171の吐出口に接続される。エアタンク172の吐出口には、調圧弁1721が設けられる。調圧弁1721は、エアタンク172の吐出口から供給される空気の圧力を基準圧に調整する。
吸気マニホールド173は、1つの吸気口と複数の吐出口とを備え、吸気口に供給された空気を複数の吐出口に分配する。吸気マニホールド173の吐出口の数は、燃料電池143の数と等しい。吸気マニホールド173の吸気口はエアタンク172の吐出口に接続される。
【0020】
複数の個別エアコンプレッサ174は、それぞれ燃料電池143に対応して設けられる。個別エアコンプレッサ174は、空気を圧縮し、制御装置が指示する動作圧まで昇圧する。個別エアコンプレッサ174の吸気口は、吸気マニホールド173の対応する吐出口に接続される。個別エアコンプレッサ174の吐出口は、燃料電池143の正極側の吸気口に接続される。
【0021】
複数の水素タンク175は、圧縮された水素を格納するタンクである。水素は、水素タンク175から、燃料電池143へ供給される。
【0022】
つまり、燃料電池システム17のうち、空気が流れる経路には、上流側から順に、共通エアコンプレッサ171、エアタンク172、吸気マニホールド173、個別エアコンプレッサ174、燃料電池143が設けられる。
【0023】
《作用・効果》
このように、燃料電池システム17は、複数の個別エアコンプレッサ174の上流に、大気を基準圧まで昇圧させる共通エアコンプレッサ171を備える。これにより、運搬車両10の環境の気圧の高低によらず、複数の個別エアコンプレッサ174は、常に基準圧から動作圧までの昇圧を行うことができる。
例えば燃料電池システム17が共通エアコンプレッサ171を備えない場合、外気圧が0.07MPaであり、制御装置が指示する動作圧が0.25MPaであるとき、複数の個別エアコンプレッサ174は、それぞれ0.18MPaの昇圧を行う必要がある。これに対し、第一実施形態のように燃料電池システム17が共通エアコンプレッサ171を備える場合、複数の個別エアコンプレッサ174は、それぞれ0.15MPaの昇圧を行えばよい。つまり、第一実施形態に係る燃料電池システム17は、空気の圧力を制御装置が指示する動作圧へ速やかに昇圧することができる。これにより、第一実施形態に係る燃料電池システム17は、動力系14の効率の低下を防ぐことができる。また第一実施形態に係る燃料電池システム17は、速やかな昇圧により、供給空気量が必要空気量に対して不足することを防ぎ、燃料電池の劣化を防ぐことができる。
【0024】
また、共通エアコンプレッサ171を備えない場合、各個別エアコンプレッサ174が外気圧の低下分を補う必要があるところ、第一実施形態によれば、共通エアコンプレッサ171が外気圧の低下分を補うため、消費電力の増加を抑えることができる。
【0025】
また、第一実施形態に係る燃料電池システム17は、共通エアコンプレッサ171によって基準圧まで昇圧した空気を格納するエアタンク172を備える。エアタンク172は、個別エアコンプレッサ174へ供給する空気の圧力の変動を抑え、個別エアコンプレッサ174による空気の消費によって空気が不足するリスクを低減することができる。これにより、個別エアコンプレッサ174による空気の消費が多くなったときに、共通エアコンプレッサ171のインチングが生じることを防ぐことができる。なお、他の実施形態に係る燃料電池システム17は、必ずしもエアタンク172を備えなくてもよい。燃料電池システム17がエアタンク172を備えない場合も、共通エアコンプレッサ171を備えることで、外気圧による応答性の変化が生じることを抑えることができる。
【0026】
〈第二実施形態〉
図4は、第二実施形態に係る燃料電池システム17の構成を示す概略ブロック図である。第二実施形態に係る燃料電池システム17は、第一実施形態の構成に加え、さらに排気マニホールド176、タービン177、シャフト178を備える。
【0027】
排気マニホールド176は、複数の吸気口と1つの吐出口を備え、複数の吸気口それぞれに供給された空気を集合させて1つの吐出口から吐出させる。排気マニホールド176の吸気口の数は、燃料電池143の数と等しい。排気マニホールド176の吸気口は、それぞれ対応する燃料電池143の吐出口に接続される。
【0028】
タービン177は、燃料電池143の排気を受けて回転する。タービン177の吸気口は排気マニホールド176の吐出口に接続される。
シャフト178は、タービン177の回転軸と共通エアコンプレッサ171の回転軸とを一致させるように接続する。シャフト178は、タービン177の回転エネルギーを共通エアコンプレッサ171に伝達させる。すなわち、共通エアコンプレッサ171、タービン177およびシャフト178は、ターボチャージャを構成する。
【0029】
《作用・効果》
このように、第二実施形態に係る燃料電池システム17は、複数の燃料電池143から排出される排気によって回転し、回転によって発生するエネルギーを用いて共通エアコンプレッサ171を駆動させるタービン177を備える。燃料電池143の発電電流が増加すると、燃料電池143の要求空気量が増加し、共通エアコンプレッサ171の稼働率が高くなる。これに対し、タービン177が共通エアコンプレッサ171の回転を補助するため、燃料電池システム17は、燃料電池143の発電電流の増加に伴う消費電力の増大を抑えることができる。なお、他の実施形態においては、共通エアコンプレッサ171とタービン177はターボチャージャを構成しなくてもよい。例えば、他の実施形態に係る燃料電池システム17は、タービン177の回転によって発電する発電機を備え、当該発電機の電力で共通エアコンプレッサ171を駆動してもよい。
【0030】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、上述した実施形態においては、燃料電池システム17が運搬車両10に搭載されるが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、燃料電池システム17が油圧ショベルやホイールローダなどの他の作業機械に搭載されていてもよい。
【符号の説明】
【0031】
10…運搬車両 11…ダンプボディ 12…車体 13…走行装置 14…動力系 143…燃料電池 144…バッテリ 145…DCDCコンバータ 15…駆動系 151…インバータ 152…ポンプ駆動モータ 153…油圧ポンプ 154…ホイストシリンダ 155…インバータ 156…走行駆動モータ 17…燃料電池システム 171…共通エアコンプレッサ 172…エアタンク 1721…調圧弁 173…吸気マニホールド 174…個別エアコンプレッサ 175…水素タンク 176…排気マニホールド 177…タービン 178…シャフト
図1
図2
図3
図4