(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090121
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】処理方法および電子デバイス
(51)【国際特許分類】
B05D 3/04 20060101AFI20240627BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240627BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240627BHJP
C09K 3/18 20060101ALI20240627BHJP
G02B 1/18 20150101ALI20240627BHJP
【FI】
B05D3/04 C
B05D7/00 H
B05D7/24 302L
B05D7/24 302Y
C09K3/18 102
C09K3/18 104
G02B1/18
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205796
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100206324
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 明子
(72)【発明者】
【氏名】前平 健
(72)【発明者】
【氏名】本多 義昭
(72)【発明者】
【氏名】三橋 尚志
【テーマコード(参考)】
2K009
4D075
4H020
【Fターム(参考)】
2K009CC26
2K009CC42
4D075AA01
4D075AE02
4D075BB49X
4D075BB54X
4D075BB60Z
4D075BB91X
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4D075BB94X
4D075BB95X
4D075CA06
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4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
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4D075EA05
4D075EA07
4D075EB14
4D075EB16
4D075EB37
4D075EB43
4H020AA03
4H020BA11
4H020BA36
(57)【要約】
【課題】本開示は、電子デバイスに備えられた表示パネルの新たな表面処理方法の提供を目的とする。
【解決手段】電子デバイスに備えられた表示パネルの処理方法であって、
前記表示パネルの表面の少なくとも一部の領域にプラズマを照射すること、
少なくとも、前記プラズマを照射した領域に表面処理剤を適用して、第1の表面処理層を形成すること、を含み、
前記表面処理剤は、含フッ素シラン化合物を含む、処理方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイスに備えられた表示パネルの処理方法であって、
前記表示パネルの表面の少なくとも一部の領域にプラズマを照射すること、
少なくとも、前記プラズマを照射した領域に表面処理剤を適用して、第1の表面処理層を形成すること、を含み、
前記表面処理剤は、含フッ素シラン化合物を含む、処理方法。
【請求項2】
前記プラズマは、低温プラズマである、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記プラズマを照射する前において、前記プラズマを照射する領域の少なくとも一部における水接触角は、100°未満である、請求項1に記載の処理方法。
【請求項4】
前記プラズマの照射は、照射強度1W/cm2以上100W/cm2以下、照射距離1mm以上300mm以下の条件で実施される、請求項1に記載の処理方法。
【請求項5】
前記プラズマの照射は、プラズマの照射速度1mm/秒以上50mm/秒以下の条件で実施される、請求項1に記載の処理方法。
【請求項6】
前記表面処理剤の適用は、前記プラズマの照射を終了した後、60分以内に実施される、請求項1に記載の処理方法。
【請求項7】
前記プラズマの照射は、プラズマ温度60℃以下で実施される、請求項1に記載の処理方法。
【請求項8】
前記第1の表面処理層を形成した後において、前記第1の表面処理層を有する部位における前記表示パネルの表面の水接触角は、100°以上である、請求項1に記載の処理方法。
【請求項9】
前記含フッ素シラン化合物は、下記式(1)または(2):
【化1】
[式中:
R
F1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf
1-R
F-O
q-またはフルオロアルキル基であり;
R
F2は、-Rf
2
p-R
F-O
q-またはフルオロアルキレン基であり;
Rf
1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-16アルキル基であり;
Rf
2は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり;
R
Fは、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり;
pは、0又は1であり;
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0又は1であり;
R
Siは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子又は1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
少なくとも1つのR
Siは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
X
Aは、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の有機基であり;
αは、1~9の整数であり;
βは、1~9の整数であり;
γは、それぞれ独立して、1~9の整数である。]
で表される少なくとも1種の含フッ素シラン化合物を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項10】
表示パネルを備える電子デバイスであって、
前記表示パネルは、ガラス基材と、前記ガラス基材の表面の一部を覆う第1の層と、前記ガラス基材の表面の他の一部を覆う第2の層と、を有し、
前記第1の層は、含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤により形成される層であり、
前記第1の層と前記第2の層の組成は、互いに異なる、電子デバイス。
【請求項11】
前記第1の層の表面の動摩擦係数は、前記第2の層の表面の動摩擦係数より小さい、請求項10記載の電子デバイス。
【請求項12】
前記表示パネルの表面の動摩擦係数の最大値は、前記表示パネルの表面の動摩擦係数の最小値の1.1倍以上である、請求項10に記載の電子デバイス。
【請求項13】
表示パネルの表面における水接触角の平均値が、108°以上である、請求項10~12のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子デバイスに備えられた表示パネルの処理方法および電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
基材に種々の特性を付与することを目的として、各種のコーティングが形成される。
【0003】
特許文献1および2には、少なくとも部分的にコーティングのない表面を必要とする基板を調製するに際して、コーティングした基板から、プラズマを用いてコーティングを除去する方法が記載されている。
【0004】
特許文献3には、残す部分と剥がす部分を含むフィルムが接着剤を介して被処理面に貼り付けられる被処理基板を、貼り付け前に表面処理する際に、プロセスガスをプラズマ化して、非処理面に接触させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-82184号公報
【特許文献2】特表2007-527093号公報
【特許文献3】特開2019-73399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、電子デバイスに備えられた表示パネルの新たな表面処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の態様を提供する。
[1]
電子デバイスに備えられた表示パネルの処理方法であって、
前記表示パネルの表面の少なくとも一部の領域にプラズマを照射すること、
少なくとも、前記プラズマを照射した領域に表面処理剤を適用して、第1の表面処理層を形成すること、を含み、
前記表面処理剤は、含フッ素シラン化合物を含む、処理方法。
[2]
前記プラズマは、低温プラズマである、[1]に記載の処理方法。
[3]
前記プラズマを照射する前において、前記プラズマを照射する領域の少なくとも一部における水接触角は、100°未満である、[1]または[2]に記載の処理方法。
[4]
前記プラズマの照射は、照射強度1W/cm
2以上100W/cm
2以下、照射距離1mm以上300mm以下の条件で実施される、[1]~[3]のいずれか1つに記載の処理方法。
[5]
前記プラズマの照射は、プラズマの照射速度1mm/秒以上50mm/秒以下の条件で実施される、[1]~[4]のいずれか1つに記載の処理方法。
[6]
前記表面処理剤の適用は、前記プラズマの照射を終了した後、60分以内に実施される、[1]~[5]のいずれか1つに記載の処理方法。
[7]
前記プラズマの照射は、プラズマ温度60℃以下で実施される、[1]~[6]のいずれか1つに記載の処理方法。
[8]
前記第1の表面処理層を形成した後において、前記第1の表面処理層を有する部位における前記表示パネルの表面の水接触角は、100°以上である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の処理方法。
[9]
前記含フッ素シラン化合物は、下記式(1)または(2):
【化1】
[式中:
R
F1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf
1-R
F-O
q-またはフルオロアルキル基であり;
R
F2は、-Rf
2
p-R
F-O
q-またはフルオロアルキレン基であり;
Rf
1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-16アルキル基であり;
Rf
2は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり;
R
Fは、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり;
pは、0又は1であり;
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0又は1であり;
R
Siは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子又は1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
少なくとも1つのR
Siは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
X
Aは、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の有機基であり;
αは、1~9の整数であり;
βは、1~9の整数であり;
γは、それぞれ独立して、1~9の整数である。]
で表される少なくとも1種の含フッ素シラン化合物を含む、[1]~[8]のいずれか1つに記載の処理方法。
[10]
表示パネルを備える電子デバイスであって、
前記表示パネルは、ガラス基材と、前記ガラス基材の表面の一部を覆う第1の層と、前記ガラス基材の表面の他の一部を覆う第2の層と、を有し、
前記第1の層は、含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤により形成される層であり、
前記第1の層と前記第2の層の組成は、互いに異なる、電子デバイス。
[11]
前記第1の層の表面の動摩擦係数は、前記第2の層の表面の動摩擦係数より小さい、[10]に記載の電子デバイス。
[12]
前記表示パネルの表面の動摩擦係数の最大値は、前記表示パネルの表面の動摩擦係数の最小値の1.1倍以上である、[10]または[11]に記載の電子デバイス。
[13]
表示パネルの表面における水接触角の平均値が、108°以上である、[10]~[12]のいずれか1つに記載の電子デバイス。
[14]
表示パネルを備える電子デバイスであって、
前記表示パネルは、ガラス基材と、前記ガラス基材の表面の一部を覆う第1の層と、前記ガラス基材の表面の他の一部を覆う第2の層と、を有し、
前記第1の層は、ガラス基材の表面の少なくとも一部にプラズマを照射すること、
前記プラズマを照射した領域に表面処理剤を適用して、第1の表面処理層を形成すること、を含む方法により形成され、
前記表面処理剤は、含フッ素シラン化合物を含む、電子デバイス。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、電子デバイスに備えられた表示パネルの新たな表面処理方法を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例において、動摩擦係数を測定した表示パネル上の位置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態:処理方法)
電子デバイスに備えられた表示パネルの処理方法であって、
前記表示パネルの表面の少なくとも一部の領域にプラズマを照射すること、
少なくとも、前記プラズマを照射した領域に表面処理剤を適用して、第1の表面処理層を形成すること、を含み、
前記表面処理剤は、含フッ素シラン化合物を含む。
【0011】
本開示によれば、電子デバイスに備えられた表示パネルの新たな表面処理方法を提供できる。
電子デバイスに備えられた表示パネルは、電子デバイスの使用の際、人体や繊維、化学薬品等と接触し得るため、表面特性(例えば、撥水性、撥油性、滑り性、指紋付着性、防汚性、反射防止性、防曇性等)が低下する場合がある。本開示の処理方法では、表面特性が低下した表示パネルであっても、その表面にプラズマを照射し、含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤を用いて表面処理を行うことで、表面特性を回復させることができる。本開示は、特定の理論に限定して解釈されるべきではないが、本開示の処理方法により、表面特性が回復し得る理由は、以下のように考えられる。
【0012】
電子デバイスに備えられた表示パネルの表面には、視認性や操作性、防汚性等の観点から、コーティングが設けられ得る。かかるコーティングは、使用により、部分的に損傷或いは除去され得る。プラズマを照射することにより、コーティングが除去され基材が露出している部分では、皮脂等の成分が除去され、また、損傷を受けたコーティングは除去されていると考えられる。また、プラズマを照射することにより、表示パネルの表面が活性化すると考えられる。そして、プラズマを照射した領域にさらに表面処理を施すことで、含フッ素シラン化合物が基材表面と反応し、表示パネルの表面に撥水性が付与されると考えられる。含フッ素シラン化合物を用いることで、さらに、撥油性、滑り性等も付与され得、指紋付着防止、反射防止等の表面特性が回復される効果も期待される。
【0013】
上記表示パネルは、電子デバイスに備えられている。すなわち、本開示の処理方法は、電子デバイスに組み込まれた表示パネルに用いられる。本開示の処理方法では、プラズマを用いるため、電子デバイスに組み込まれた状態の表示パネルに適用した場合であっても、温度の過度な上昇を防ぎ、電子デバイスの機能を損なうことなく、表示パネルに表面処理層を形成できる。
【0014】
上記電子デバイスは、表示パネルを備えるものであればよく、スマートフォン、タブレット、ノートPC、カメラ等のポータブル端末装置;スマートウォッチ等のウェアラブルデバイス;テレビ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ等の表示装置であってよい。
【0015】
上記表示パネルの表面は、後述するプラズマを照射する前において、水接触角が100°未満である領域を含む。すなわち、表示パネルの表面の少なくとも一部の領域において、水接触角が100°未満であればよく、他の領域において、水接触角が100°以上であってもよい。かかる領域は、電子デバイスの使用の際、接触や摩擦を受ける頻度が比較的高い領域であり得、例えば、表示パネルの表面の中央部等であり得る。上記表示パネルの中央部は、上記表示パネルを縦方向に三等分して、上位部、中位部および下位部に区分し、上記表示パネルを横方向に三等分して、右部、中部および左部に区分した場合、中位部および中部の両方に該当する部位であり得る。
【0016】
上記領域における水接触角は、例えば99°以下、さらに95°以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下、50°以下、40°以下であってよく、0°以上であり、例えば10°以上、さらに15°以上であってよい。
本開示において、水接触角は、JIS R 3257:1999に準拠して測定され得る。
【0017】
上記表示パネルは、ディスプレイパネル、タッチパネル、スクリーン等であり得、代表的には、ガラス基材を有することが好ましく;ガラス基材と、上記ガラス基材の表面の一部を覆う第2の層とを有することが好ましい。
【0018】
上記ガラス基材を構成するガラスは、サファイアガラス、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、クリスタルガラス、石英ガラスが好ましく、化学強化したソーダライムガラス、化学強化したアルカリアルミノケイ酸塩ガラス、および化学結合したホウ珪酸ガラスがより好ましい。
上記ガラス基材の厚さは、代表的には、0.1mm以上1mm以下であり得る。
【0019】
上記表示パネルは、前記ガラス基材の表面の一部を覆う第2の層をさらに有することが好ましい。第2の層は、好ましくは表面処理層であり得る。かかる表面処理層は、好ましくは、撥水性、撥油性、滑り性、防汚性および防曇性から選ばれる1またはそれ以上をガラス基材に付与するために用いられる化合物およびその反応物を含み得る。該化合物は、例えば、含フッ素化合物、シリコーン化合物およびアクリル化合物から選ばれる1種またはそれ以上であり得る。
【0020】
上記含フッ素化合物としては、フルオロポリエーテル基含有化合物が好ましく、後述するフルオロポリエーテル基含有シラン化合物がより好ましい。上記第2の層に含まれ得るフルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、上記第1の表面処理層に含まれるフルオロポオリエーテル基含有シラン化合物と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0021】
上記第2の層は、上記ガラス基材の表面の少なくとも一部を覆うことが好ましく、上記ガラス基材の表面の一部を覆うことが好ましい。すなわち、上記ガラス基材の少なくとも一部が、表面に露出していることが好ましい。
【0022】
上記ガラス基材表面において、第2の層が覆い得る領域は、電子デバイスの使用の際、接触や摩擦を受ける頻度が比較的低い領域であり得、例えば、表示パネルの表面の周縁部および角部から選ばれる1またはそれ以上であり得る。上記表示パネルの周縁部は、上記表示パネルを縦方向に三等分して、上位部、中位部および下位部に区分し、上記表示パネルを横方向に三等分して、右部、中部および左部に区分した場合、上位部または下位部であって、中部に該当する部位および中位部であって、右部または左部に該当する部位から選ばれる1またはそれ以上であり得る。上記表示パネルの角部は、上記表示パネルを縦方向に三等分して、上位部、中位部および下位部に区分し、上記表示パネルを横方向に三等分して、右部、中部および左部に区分した場合、上位部または下位部であって、右部または左部に該当する部位であり得る。
【0023】
上記ガラス基材と上記第2の層とは、代表的には、表示パネルの表面に配置される。
【0024】
上記ガラス基材の表面には、上記第2の層以外に、その他の層が設けられていてもよい。該その他の層は、好ましくは、上記ガラス基材の表面を覆い、上記第2の層と一部重なっていてもよく、上記第2の層の上に設けられていてもよく、上記第2の層とガラス基材との間に設けられていてもよい。かかるその他の層として、ハードコート層、反射防止層が挙げられる。
【0025】
上記表示パネルは、上記ガラス基材以外に、他の部材をさらに有していてもよい。ガラス基材は、代表的には、かかる他の部材上、すなわち、表示パネルにおいて、他の部材よりも表面側に配置され得る。
【0026】
なお、本開示において、「部材上」とは、重力方向に規定される鉛直上方のような絶対的な一方向ではなく、ある部材の表面を境界とする、部材の外側と内側とのうち、外側に向かう方向を指す。したがって、「部材上」とは部材表面の向きによって定まる相対的な方向である。また、ある要素に対する「上」には、当該要素と接する直上の位置だけではなく、当該要素とは離れた上方、すなわち当該要素に接する他の層を介した上側の位置や間隔を空けた上側の位置も含む。
【0027】
本開示の処理方法は、上記表示パネルの表面の少なくとも一部の領域にプラズマを照射することを含む。かかるプラズマの照射により、表示パネルの表面が、後述する第1の表面処理層の形成に適した状態となり得る。
【0028】
一の態様において、上記プラズマは、低温プラズマであることが好ましい。上記プラズマは、表示パネルの表面の一部の領域に照射されることが好ましく、別の態様において、上記プラズマは、表示パネルの表面の全部の領域に照射されることが好ましい。
【0029】
上記プラズマを照射する領域は、その少なくとも一部にプラズマを照射する前において、水接触角が100°未満である領域を含むことが好ましい。すなわち、上記プラズマは、表示パネルの表面において、水接触角が100°未満である領域に、少なくとも照射されることが好ましい。上記領域における水接触角は、例えば99°以下、さらに95°以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下、50°以下、40°以下であってよく、0°以上であり、例えば10°以上、さらに15°以上あってよい。
【0030】
一の態様において、上記表示パネルが、ガラス基材と上記ガラス基材の表面の一部を覆う第2の層とを有する場合、上記プラズマを照射する領域は、上記第2の層を有しない上記ガラス基材の表面を少なくとも含むことが好ましい。すなわち、上記プラズマは、ガラス基材と上記ガラス基材の表面の一部を覆う第2の層とを有する表示パネルにおいて、第2の層を有しないガラス基材の表面に少なくとも照射されることが好ましい。かかる態様において、好ましくは、上記プラズマを照射する領域は、上記ガラス基材の表面の少なくとも一部および上記第2の層の表面の少なくとも一部を含み;上記ガラス基材の表面の全部および上記第2の層の表面の全部であってもよい。上記プラズマを上記ガラス基材に照射することで、上記ガラス基材の表面に付着する皮脂等が除去され得る。また、上記プラズマを上記第2の層に照射することで、プラズマが第2の層に作用し、第2の層の少なくとも一部が分解され得、例えば、第2の層が除去され得る。
【0031】
上記プラズマとしては、マイクロ波プラズマ、高周波プラズマ等の真空プラズマ;大気圧プラズマが挙げられ、大気圧プラズマが好ましい。また、プラズマを発生させるために用いられるプロセスガスとしては、酸素、窒素、フッ素、水素、アルゴン、空気等が挙げられ、空気が好ましい。
【0032】
上記プラズマの照射は、好ましくは1W/cm2以上100W/cm2以下、より好ましくは3W/cm2以上70W/cm2以下、さらに好ましくは5W/cm2以上50W/cm2以下の照射強度で実施され得る。上記照射強度は、好ましくは1W/cm2以上、より好ましくは3W/cm2以上、さらに好ましくは5W/cm2以上であり、好ましくは100W/cm2以下、より好ましくは70W/cm2以下、さらに好ましくは50W/cm2以下であり得る。かかる照射強度でプラズマを照射することにより、電子デバイスの機能を維持しつつ、表示パネルの表面を第1の層の形成に適した状態とし得る。
【0033】
上記プラズマの照射は、好ましくは1mm以上300mm以下、より好ましくは1.5mm以上200mm以下、さらに好ましくは2mm以上100mm以下の照射距離で実施され得る。上記照射距離は、好ましくは1mm以上、より好ましくは1.5mm以上、さらに好ましくは2mm以上であり、好ましくは300mm以下、より好ましくは200mm以下、さらに好ましくは100mm以下であり得る。かかる照射距離でプラズマを照射することにより、電子デバイスの機能を維持しつつ、表示パネルの表面を第1の層の形成に適した状態とし得る。
本開示において、照射距離は、プラズマの発射位置から照射対象のまでの直線距離としてよい。
【0034】
上記プラズマの照射は、プラズマを走査しながら実施されることが好ましく、かかる態様におけるプラズマの照射速度(走査速度)は、好ましくは1mm/秒以上50mm/秒以下、より好ましくは3mm/秒以上20mm/秒以下、さらに好ましくは5mm/秒以上10mm/秒以下であり得る。上記照射速度(走査速度)は、好ましくは1mm/秒以上、より好ましくは3mm/秒以上、さらに好ましくは5mm/秒以上であり、好ましくは50mm/秒以下、より好ましくは20mm/秒以下、さらに好ましくは10mm/秒以下であり得る。かかる照射速度(走査速度)でプラズマを照射することにより、電子デバイスの機能を維持しつつ、表示パネルの表面を第1の層の形成に適した状態とし得る。
【0035】
上記プラズマの照射は、好ましくは1秒以上60分以下、より好ましくは3秒以上30分以下、さらに好ましくは3秒以上10分以下の照射時間で実施され得る。上記照射時間は、好ましくは1秒以上、より好ましくは3秒以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、さらに好ましくは10分以下であり得る。かかる照射時間で低温プラズマを照射することにより、電子デバイスの機能を維持しつつ、表示パネルの表面を第1の層の形成に適した状態とし得る。
【0036】
上記プラズマの照射は、好ましくは、プラズマ温度60℃以下、より好ましくはプラズマ温度50℃以下、さらに好ましくはプラズマ温度0℃以上48℃以下、特に好ましくはプラズマ温度10℃以上45℃以下で実施され得る。上記プラズマ温度は、プラズマ噴出口から10mmの位置における温度としてよい。これにより、電子デバイスの機能を維持しつつ、表示パネルの表面を第1の層の形成に適した状態とし得る。
【0037】
上記表示パネルの表面のプラズマを照射した領域において、後述する表面処理剤を適用する前の水接触角は、例えば50°以下、さらに30°以下、特に10°以下であり得、代表的には、1°以上、さらに5°以上であり得る。
【0038】
次に、少なくとも、プラズマを照射した領域に、表面処理剤を適用して、第1の表面処理層を形成する。これにより、第1の表面処理層が形成された領域において、撥水性、撥油性、滑り性、指紋付着性、防汚性、反射防止性、防曇性等の表面特性が回復され得る。
【0039】
上記表面処理剤の適用は、上記プラズマの照射を終了した後、好ましくは0分後60分以内、より好ましくは0分後30分以内、さらに好ましくは0分後10分以内、さらに好ましくは0分後3分以内に実施されることが好ましい。これにより、プラズマの照射後の状態を維持したまま、表示パネル表面に表面処理剤を適用できる。
【0040】
上記表面処理剤の適用は、上記表面処理剤を上記表示パネルの表面に対して、該表面を被覆するように適用することによって実施できる。被覆方法は、特に限定されない。例えば、湿潤被覆法および乾燥被覆法を使用でき、好ましくは湿潤被覆法が使用される。
【0041】
湿潤被覆法の例としては、浸漬コーティング、スピンコーティング、刷毛塗り、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティングおよび類似の方法が挙げられ、スプレーコーティングが好ましい
【0042】
表面処理剤の層形成は、層中で本開示の表面処理剤が、加水分解および脱水縮合のための触媒と共に存在するように実施することが好ましい。簡便には、湿潤被覆法による場合、本開示の表面処理剤を溶媒で希釈した後、基材表面に適用する直前に、本開示の表面処理剤の希釈液に触媒を添加してよい。
【0043】
触媒には、任意の適切な酸または塩基を使用できる。酸触媒としては、例えば、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸などを使用できる。また、塩基触媒としては、例えばアンモニア、有機アミン類などを使用できる。
【0044】
表面処理剤を適用した後、必要に応じて乾燥させてもよい。かかる乾燥により、後述する含フッ素シラン化合物の加水分解および脱水縮合が促進され、溶媒等が除去され得る。
【0045】
上記前駆体層の乾燥は、好ましくは0℃以上60℃以下、より好ましくは5℃以上50℃以下、さらに好ましくは10℃以上30℃以下の温度で実施され得、好ましくは1時間以上48時間以下、より好ましくは3時間以上24時間以下、さらに好ましくは6時間以上12時間以下の時間で実施され得る。
【0046】
第1の表面処理層を形成した後において、第1の表面処理層が形成された領域における上記表示パネルの表面の水接触角は、好ましくは100°以上、より好ましくは102°以上、さらに好ましくは105°以上、いっそう好ましくは108°以上、よりさらに好ましくは110°以上、よりいっそう好ましくは113°以上であり、例えば130°以下、さらに120°以下であってよい。
【0047】
第1の表面処理層を形成した後において、第1の層が形成された領域における上記表示パネルの表面の動摩擦係数は、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.01以上0.2以下、さらに好ましくは0.02以上0.1以下であり得る。
【0048】
上記第1の層の厚さは、特に限定されない。上記第1の層の厚さは、1~50nm、1~30nm、好ましくは1~15nmの範囲であることが、光学性能、摩耗耐久性および防汚性の点から好ましい。
【0049】
第1の層を形成した後、表示パネルの表面の拭き取り等を実施してもよい。これにより、表示パネルの表面に残存し得る余剰成分を除去することができる。
【0050】
上記表面処理剤は、含フッ素シラン化合物を含む。
【0051】
上記含フッ素シラン化合物は、含フッ素基と、シランとを少なくとも含む化合物であり、好ましくは、以下の式(1)、(2):
【化2】
[式中:
R
F1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf
1-R
F-O
q-であり;
R
F2は、-Rf
2
p-R
F-O
q-であり;
Rf
1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-16アルキル基であり;
Rf
2は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1-6アルキレン基であり;
R
Fは、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり;
pは、0又は1であり;
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0又は1であり;
R
Siは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子又は1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
少なくとも1つのR
Siは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
X
Aは、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の有機基であり;
αは、1~9の整数であり;
βは、1~9の整数であり;
γは、それぞれ独立して、1~9の整数である。]
で表される少なくとも1種の含フッ素シラン化合物を含む。
【0052】
上記式(1)において、RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1-RF-Oq-またはフルオロアルキル基である。一の態様において、RF1は、好ましくは、Rf1-RF-Oq-であり、別の態様において、RF1は、好ましくは、フルオロアルキル基である。RF1がRf1-RF-Oq-である場合、式(1)で表される化合物は、フルオロポリエーテル基を含み、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物に該当する。
【0053】
上記式(2)において、RF2は、-Rf2
p-RF-Oq-またはフルオロアルキレン基である。一の態様において、RF2は、好ましくは、Rf2
p-RF-Oq-であり、別の態様において、RF2は、好ましくは、フルオロアルキレン基である。RF2がRf2
p-RF-Oq-である場合、式(2)で表される化合物は、フルオロポリエーテル基を含み、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物に該当する。
【0054】
上記式において、Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基である。
【0055】
上記1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基における「C1-16アルキル基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-6アルキル基、特にC1-3アルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6アルキル基、特にC1-3アルキル基である。
【0056】
上記Rf1は、好ましくは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-16アルキル基であり、より好ましくはCF2H-C1-15パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-16パーフルオロアルキル基である。
【0057】
上記C1-16パーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基、具体的には-CF3、-CF2CF3、又は-CF2CF2CF3である。
【0058】
上記式において、Rf2は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基である。
【0059】
上記1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基における「C1-6アルキレン基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-3アルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3アルキレン基である。
【0060】
上記Rf2は、好ましくは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-6アルキレン基であり、より好ましくはC1-6パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-3パーフルオロアルキレン基である。
【0061】
上記C1-6パーフルオロアルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-3パーフルオロアルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3パーフルオロアルキレン基、具体的には-CF2-、-CF2CF2-、又は-CF2CF2CF2-である。
【0062】
上記式において、pは、0又は1である。一の態様において、pは0である。別の態様においてpは1である。
【0063】
上記式において、qは、各出現においてそれぞれ独立して、0又は1である。一の態様において、qは0である。別の態様においてqは1である。
【0064】
上記式(1)及び(2)において、RFは、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基である。
【0065】
RFは、好ましくは、下記:
-(OCh1RFa
2h1)h3-(OCh2RFa
2h2-2)h4-
[式中:
RFaは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
h1は、1~6の整数であり、
h2は、4~8の整数であり、
h3は、0以上の整数であり、
h4は、0以上の整数であり、
だたし、h3とh4の合成は、1以上、好ましくは2以上、より好ましくは5以上であり、h3及びh4を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
で表される基を含み得る。
【0066】
一の態様において、RFは、直鎖状、又は分枝鎖状であり得る。RFは、好ましくは、式:
-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3RFa
6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f-
[式中:
RFaは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上である。a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。]
で表される基である。
【0067】
RFaは、好ましくは、水素原子又はフッ素原子であり、より好ましくは、フッ素原子である。ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。
【0068】
a、b、c、d、e及びfは、好ましくは、それぞれ独立して、0~100の整数であってもよい。
【0069】
a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上又は20以上であってもよい。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは200以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは60以下であり、例えば50以下又は30以下であってもよい。
【0070】
これら繰り返し単位は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよく、環構造を含んでいてもよい。例えば、-(OC6F12)-は、-(OCF2CF2CF2CF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2CF2CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2CF2CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF2CF2CF(CF3)CF2)-、-(OCF2CF2CF2CF2CF(CF3))-等であってもよい。-(OC5F10)-は、-(OCF2CF2CF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3)CF2)-、-(OCF2CF2CF2CF(CF3))-等であってもよい。-(OC4F8)-は、-(OCF2CF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3))-、-(OC(CF3)2CF2)-、-(OCF2C(CF3)2)-、-(OCF(CF3)CF(CF3))-、-(OCF(C2F5)CF2)-及び-(OCF2CF(C2F5))-のいずれであってもよい。-(OC3F6)-(即ち、上記式中、RFaはフッ素原子である)は、-(OCF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2)-及び-(OCF2CF(CF3))-のいずれであってもよい。-(OC2F4)-は、-(OCF2CF2)-及び-(OCF(CF3))-のいずれであってもよい。
【0071】
一の態様において、上記繰り返し単位は直鎖状である。上記繰り返し単位を直鎖状とすることにより、表面処理層の表面滑り性、摩耗耐久性等を向上させることができる。
【0072】
一の態様において、上記繰り返し単位は分枝鎖状である。上記繰り返し単位を分枝鎖状とすることにより、表面処理層の動摩擦係数を大きくすることができる。
【0073】
一の態様において、RFは、環構造を含み得る。
【0074】
上記環構造は、下記三員環、四員環、五員環、又は六員環であり得る。
【0075】
【0076】
上記環構造は、好ましくは四員環、五員環、又は六員環、より好ましくは四員環、又は六員環であり得る。
【0077】
環構造を有する繰り返し単位は、好ましくは、下記の単位であり得る。
【0078】
【0079】
一の態様において、上記繰り返し単位は直鎖状である。上記繰り返し単位を直鎖状とすることにより、表面処理層の表面滑り性、摩耗耐久性等を向上させることができる。
【0080】
一の態様において、上記繰り返し単位は分枝鎖状である。上記繰り返し単位を分枝鎖状とすることにより、表面処理層の動摩擦係数を大きくすることができる。
【0081】
一の態様において、RFは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)~(f6)のいずれかで表される基である。
-(OC3F6)d-(OC2F4)e- (f1)
[式中、dは、1~200の整数であり、eは0又は1である。];
-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、e及びfは、それぞれ独立して1以上200以下の整数であり、
c、d、e及びfの和は2以上であり、
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。];
-(R6-R7)g- (f3)
[式中、R6は、OCF2又はOC2F4であり、
R7は、OC2F4、OC3F6、OC4F8、OC5F10及びOC6F12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。];
-(R6-R7)g-Rr-(R7’-R6’)g’- (f4)
[式中、R6は、OCF2又はOC2F4であり、
R7は、OC2F4、OC3F6、OC4F8、OC5F10及びOC6F12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
R6’は、OCF2又はOC2F4であり、
R7’は、OC2F4、OC3F6、OC4F8、OC5F10及びOC6F12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
Rrは、
【0082】
【化5】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。];
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f- (f5)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC
6F
12)
a-(OC
5F
10)
b-(OC
4F
8)
c-(OC
3F
6)
d-(OC
2F
4)
e-(OCF
2)
f- (f6)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
【0083】
上記式(f1)において、dは、好ましくは5~200、より好ましくは10~100、さらに好ましくは15~50、例えば25~35の整数である。上記式(f1)におけるOC3F6は、好ましくは、(OCF2CF2CF2)、(OCF(CF3)CF2)または(OCF2CF(CF3))であり、より好ましくは、(OCF2CF2CF2)である。上記式(f1)における(OC2F4)は、好ましくは、(OCF2CF2)または(OCF(CF3))であり、より好ましくは、(OCF2CF2)である。一の態様において、eは0である。別の態様において、eは1である。
【0084】
上記式(f2)において、e及びfは、それぞれ独立して、好ましくは5~200、より好ましくは10~200の整数である。また、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上又は20以上であってもよい。一の態様において、上記式(f2)は、好ましくは、-(OCF2CF2CF2CF2)c-(OCF2CF2CF2)d-(OCF2CF2)e-(OCF2)f-で表される基である。別の態様において、式(f2)は、-(OC2F4)e-(OCF2)f-で表される基であってもよい。
【0085】
上記式(f3)において、R6は、好ましくは、OC2F4である。上記(f3)において、R7は、好ましくは、OC2F4、OC3F6及びOC4F8から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、より好ましくは、OC3F6及びOC4F8から選択される基である。OC2F4、OC3F6及びOC4F8から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば-OC2F4OC3F6-、-OC2F4OC4F8-、-OC3F6OC2F4-、-OC3F6OC3F6-、-OC3F6OC4F8-、-OC4F8OC4F8-、-OC4F8OC3F6-、-OC4F8OC2F4-、-OC2F4OC2F4OC3F6-、-OC2F4OC2F4OC4F8-、-OC2F4OC3F6OC2F4-、-OC2F4OC3F6OC3F6-、-OC2F4OC4F8OC2F4-、-OC3F6OC2F4OC2F4-、-OC3F6OC2F4OC3F6-、-OC3F6OC3F6OC2F4-、及び-OC4F8OC2F4OC2F4-等が挙げられる。上記式(f3)において、gは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上の整数である。上記gは、好ましくは50以下の整数である。上記式(f3)において、OC2F4、OC3F6、OC4F8、OC5F10及びOC6F12は、直鎖又は分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、上記式(f3)は、好ましくは、-(OC2F4-OC3F6)g-又は-(OC2F4-OC4F8)g-である。
【0086】
上記式(f4)において、R6、R7及びgは、上記式(f3)の記載と同意義であり、同様の態様を有する。R6’、R7’及びg’は、それぞれ、上記式(f3)に記載のR6、R7及びgと同意義であり、同様の態様を有する。Rrは、好ましくは、
【0087】
【化6】
[式中、*は、結合位置を示す。]
であり、より好ましくは
【0088】
【化7】
[式中、*は、結合位置を示す。]
である。
【0089】
上記式(f5)において、eは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0090】
上記式(f6)において、fは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0091】
一の態様において、上記RFは、上記式(f1)で表される基である。
【0092】
一の態様において、上記RFは、上記式(f2)で表される基である。
【0093】
一の態様において、上記RFは、上記式(f3)で表される基である。
【0094】
一の態様において、上記RFは、上記式(f4)で表される基である。
【0095】
一の態様において、上記RFは、上記式(f5)で表される基である。
【0096】
一の態様において、上記RFは、上記式(f6)で表される基である。
【0097】
一の態様において、上記第1の表面処理層に含まれる含フッ素シラン化合物は、第1の表面処理層の滑り性の観点から、上記式(f1)、(f2)、(f3)、(f5)または(f6)で表される構造を含むことが好ましく、上記式(f1)または(f2)で表される構造を含むことがより好ましく、上記式(f1)で表される構造を含むことがさらに好ましい。
【0098】
一の態様において、上記第2の層に含まれ得る含フッ素シラン化合物は、上記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)、(f5)または(f6)で表される構造を含むことが好ましく、上記式(f1)または(f2)で表される構造を含むことがより好ましく、上記式(f2)で表される構造を含むことがさらに好ましい。
【0099】
上記RFにおいて、fに対するeの比(以下、「e/f比」という)は、0.1~10であり、好ましくは0.2~5であり、より好ましくは0.2~2であり、さらに好ましくは0.2~1.5であり、さらにより好ましくは0.2~0.85である。e/f比を10以下にすることにより、この化合物から得られる表面処理層の滑り性、摩耗耐久性及び耐ケミカル性(例えば、人工汗に対する耐久性)がより向上する。e/f比がより小さいほど、表面処理層の滑り性及び摩耗耐久性はより向上する。一方、e/f比を0.1以上にすることにより、化合物の安定性をより高めることができる。e/f比がより大きいほど、化合物の安定性はより向上する。
【0100】
RF1で表されるフルオロアルキル基は、アルキル基に含まれる水素原子がフッ素原子に置き換わった基であり、直鎖状であっても分枝鎖状であってもよい。上記RF1で表されるフルオロアルキル基は、好ましくは、C1-50フルオロアルキル基、より好ましくはC1-20フルオロアルキル基、さらに好ましくはC1-16フルオロアルキル基であり、例えば、C1-10フルオロアルキル基、さらにC1-6フルオロアルキル基、特にC1-3フルオロアルキル基であってもよい。一の態様において、RF1で表されるフルオロアルキル基は、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基である。かかる態様において、上記パーフルオロアルキル基は、好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-50パーフルオロアルキル基、より好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-20パーフルオロアルキル基、さらに好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-16パーフルオロアルキル基であり、例えば、直鎖状または分枝鎖状のC1-10パーフルオロアルキル基、さらに直鎖状または分枝鎖状のC1-6パーフルオロアルキル基、特に直鎖状または分枝鎖状のC1-3パーフルオロアルキル基であってよい。
【0101】
RF2で表されるフルオロアルキレン基は、アルキレン基に含まれる水素原子がフッ素原子に置き換わった基であり、直鎖状であっても分枝鎖状であってもよい。上記RF2で表されるフルオロアルキレン基は、好ましくは、C1-50フルオロアルキレン基、より好ましくはC1-20フルオロアルキレン基、さらに好ましくはC1-16フルオロアルキレン基であり、例えば、C1-10フルオロアルキレン基、さらにC1-6フルオロアルキレン基、特にC1-3フルオロアルキレン基であってもよい。一の態様において、RF2で表されるフルオロアルキレン基は、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基である。かかる態様において、上記パーフルオロアルキレン基は、好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-50パーフルオロアルキレン基、より好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-20パーフルオロアルキレン基、さらに好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-16パーフルオロアルキレン基であり、例えば、直鎖状または分枝鎖状のC1-10パーフルオロアルキレン基、さらに直鎖状または分枝鎖状のC1-6パーフルオロアルキレン基、特に直鎖状または分枝鎖状のC1-3パーフルオロアルキレン基であってもよい。
【0102】
上記含フッ素シラン化合物において、RF1及びRF2部分の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば500~30,000、好ましくは1,500~30,000、より好ましくは2,000~10,000である。本明細書において、RF1及びRF2の数平均分子量は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0103】
別の態様において、RF1及びRF2部分の数平均分子量は、500~30,000、好ましくは1,000~20,000、より好ましくは2,000~15,000、さらにより好ましくは2,000~10,000、例えば3,000~6,000であり得る。
【0104】
別の態様において、RF1及びRF2部分の数平均分子量は、4,000~30,000、好ましくは5,000~10,000、より好ましくは6,000~10,000であり得る。
【0105】
上記式(1)及び(2)において、RSiは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子又は1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり、少なくとも1つのRSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基である。
【0106】
ここに、「加水分解性基」とは、加水分解反応を受け得る基を意味し、すなわち、加水分解反応により、化合物の主骨格から脱離し得る基を意味する。加水分解性基の例としては、-ORj、-OCORj、-O-N=CRj
2、-NRj
2、-NHRj、-NCO、ハロゲン(これら式中、Rjは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)などが挙げられる。
【0107】
好ましい態様において、RSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基である。
【0108】
好ましい態様において、R
Siは、下記式(S1)、(S2)、(S3)、又は(S4):
【化8】
で表される基である。
【0109】
上記式中、R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0110】
R11は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0111】
R11は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-ORj、-OCORj、-O-N=CRj
2、-NRj
2、-NHRj、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rjは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORj(即ち、アルコキシ基)である。Rjとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rjは、メチル基であり、別の態様において、Rjは、エチル基である。
【0112】
上記式中、R12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0113】
R12において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0114】
上記式中、n1は、(SiR11
n1R12
3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、RSiが式(S1)又は(S2)で表される基である場合、式(1)及び式(2)の末端のRSi部分(以下、単に式(1)及び式(2)の「末端部分」ともいう)において、n1が1~3である(SiR11
n1R12
3-n1)単位が少なくとも1つ存在する。即ち、かかる末端部分において、すべてのn1が同時に0になることはない。換言すれば、式(1)及び式(2)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも1つ存在する。
【0115】
n1は、(SiR11
n1R12
3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0116】
上記式中、X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又は2価の有機基である。かかる2価の有機基は、好ましくは-R28-Ox-R29-(式中、R28及びR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又はC1-20アルキレン基であり、xは0又は1である。)である。かかるC1-20アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。かかるC1-20アルキレン基は、好ましくはC1-10アルキレン基、より好ましくはC1-6アルキレン基、さらに好ましくはC1-3アルキレン基である。
【0117】
一の態様において、X11は、各出現においてそれぞれ独立して、-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキレン-又は-O-C1-6アルキレン-である。
【0118】
好ましい態様において、X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又は直鎖のC1-6アルキレン基であり、好ましくは単結合又は直鎖のC1-3アルキレン基、より好ましくは単結合又は直鎖のC1-2アルキレン基であり、さらに好ましくは直鎖のC1-2アルキレン基である。
【0119】
上記式中、R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基である。かかるC1-20アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。
【0120】
好ましい態様において、R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は直鎖のC1-6アルキル基であり、好ましくは水素原子又は直鎖のC1-3アルキル基、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0121】
上記式中、tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数である。
【0122】
好ましい態様において、tは、各出現においてそれぞれ独立して、2~10の整数、好ましくは2~6の整数である。
【0123】
上記式中、R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X11-SiR11
n1R12
3-n1である。かかるハロゲン原子は、好ましくはヨウ素原子、塩素原子又はフッ素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。好ましい態様において、R14は、水素原子である。
【0124】
上記式中、R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基である。
【0125】
一の態様において、R15は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基である。
【0126】
好ましい態様において、R15は、単結合である。
【0127】
一の態様において、式(S1)は、下記式(S1-a)である。
【化9】
[式中、
R
11、R
12、R
13、X
11、及びn1は、上記式(S1)の記載と同意義であり;
t1及びt2は、各出現においてそれぞれ独立して、1以上の整数、好ましくは1~10の整数、より好ましくは2~10の整数、例えば1~5の整数又は2~5の整数であり;
t1及びt2を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
【0128】
好ましい態様において、式(S1)は、下記式(S1-b)である。
【化10】
[式中、R
11、R
12、R
13、X
11、n1及びtは、上記式(S1)の記載と同意義である]
【0129】
上記式中、Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1-SiR21
p1R22
q1R23
r1である。
【0130】
上記Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z1として記載する構造は、右側が(SiR21
p1R22
q1R23
r1)に結合する。
【0131】
好ましい態様において、Z1は、2価の有機基である。
【0132】
好ましい態様において、Z1は、Z1が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S3)において、(Si-Z1-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0133】
上記Z1は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z1-O-(CH2)z2-(式中、z1は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z3-フェニレン-(CH2)z4-(式中、z3は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0134】
好ましい態様において、Z1は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z3-フェニレン-(CH2)z4-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z4-である。Z1がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0135】
別の好ましい態様において、上記Z1は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z1は、-CH2CH2-であり得る。
【0136】
上記R21は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1’-SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’である。
【0137】
上記Z1’は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z1’として記載する構造は、右側が(SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’)に結合する。
【0138】
好ましい態様において、Z1’は、2価の有機基である。
【0139】
好ましい態様において、Z1’は、Z1’が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S3)において、(Si-Z1’-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0140】
上記Z1’は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z1’-O-(CH2)z2’-(式中、z1’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z3’-フェニレン-(CH2)z4’-(式中、z3’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0141】
好ましい態様において、Z1’は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z3’-フェニレン-(CH2)z4’-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z4’-である。Z1’がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0142】
別の好ましい態様において、上記Z1’は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1’は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z1’は、-CH2CH2-であり得る。
【0143】
上記R21’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1”-SiR22”
q1”R23”
r1”である。
【0144】
上記Z1”は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z1”として記載する構造は、右側が(SiR22”
q1”R23”
r1”)に結合する。
【0145】
好ましい態様において、Z1”は、2価の有機基である。
【0146】
好ましい態様において、Z1”は、Z1”が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S3)において、(Si-Z1”-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0147】
上記Z1”は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z1”-O-(CH2)z2”-(式中、z1”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z3”-フェニレン-(CH2)z4”-(式中、z3”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0148】
好ましい態様において、Z1”は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z3”-フェニレン-(CH2)z4”-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z4”-である。Z1”がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0149】
別の好ましい態様において、上記Z1”は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1”は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z1”は、-CH2CH2-であり得る。
【0150】
上記R22”は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0151】
上記R22”は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0152】
上記R22”は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-ORj、-OCORj、-O-N=CRj
2、-NRj
2、-NHRj、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rjは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORj(即ち、アルコキシ基)である。Rjとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rjは、メチル基であり、別の態様において、Rjは、エチル基である。
【0153】
上記R23”は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0154】
上記R23”において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0155】
上記q1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、上記r1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、q1”とr1”の合計は、(SiR22”
q1”R23”
r1”)単位において、3である。
【0156】
上記q1”は、(SiR22”
q1”R23”
r1”)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0157】
上記R22’は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0158】
R22’は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0159】
R22’は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-ORj、-OCORj、-O-N=CRj
2、-NRj
2、-NHRj、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rjは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORj(即ち、アルコキシ基)である。Rjとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rjは、メチル基であり、別の態様において、Rjは、エチル基である。
【0160】
上記R23’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0161】
R23’において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0162】
上記p1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、q1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、r1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p’、q1’とr1’の合計は、(SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’)単位において、3である。
【0163】
一の態様において、p1’は、0である。
【0164】
一の態様において、p1’は、(SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p1’は、3である。
【0165】
一の態様において、q1’は、(SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0166】
一の態様において、p1’は0であり、q1’は、(SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0167】
上記R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0168】
R22は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0169】
R22は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-ORj、-OCORj、-O-N=CRj
2、-NRj
2、-NHRj、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rjは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORj(即ち、アルコキシ基)である。Rjとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rjは、メチル基であり、別の態様において、Rjは、エチル基である。
【0170】
上記R23は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0171】
R23において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0172】
上記p1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、q1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、r1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p1、q1とr1の合計は、(SiR21
p1R22
q1R23
r1)単位において、3である。
【0173】
一の態様において、p1は、0である。
【0174】
一の態様において、p1は、(SiR21
p1R22
q1R23
r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p1は、3である。
【0175】
一の態様において、q1は、(SiR21
p1R22
q1R23
r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0176】
一の態様において、p1は0であり、q1は、(SiR21
p1R22
q1R23
r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0177】
上記式中、Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0178】
上記Rb1は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0179】
上記Rb1は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-ORj、-OCORj、-O-N=CRj
2、-NRj
2、-NHRj、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rjは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORj(即ち、アルコキシ基)である。Rjとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rjは、メチル基であり、別の態様において、Rjは、エチル基である。
【0180】
上記式中、Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0181】
上記Rc1において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0182】
上記k1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、k1、l1とm1の合計は、(SiRa1
k1Rb1
l1Rc1
m1)単位において、3である。
【0183】
一の態様において、k1は、(SiRa1
k1Rb1
l1Rc1
m1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。好ましい態様において、k1は、3である。
【0184】
上記式(1)及び(2)において、RSiが式(S3)で表される基である場合、好ましくは、式(1)及び式(2)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0185】
好ましい態様において、式(S3)で表される基は、-Z1-SiR22
q1R23
r1(式中、q1は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1は、0~2の整数である。)、-Z1’-SiR22’
q1’R23’
r1’(式中、q1’は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1’は、0~2の整数である。)、又は-Z1”-SiR22”
q1”R23”
r1”(式中、q1”は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1”は、0~2の整数である。)のいずれか1つを有する。Z1、Z1’、Z1”、R22、R23、R22’、R23’、R22”、及びR23”は、上記と同意義である。
【0186】
好ましい態様において、式(S3)において、R21’が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR21’において、q1”は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0187】
好ましい態様において、式(S3)において、R21が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR21において、p1’は、0であり、q1’は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0188】
好ましい態様において、式(S3)において、Ra1が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのRa1において、p1は、0であり、q1は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0189】
好ましい態様において、式(S3)において、k1は2又は3、好ましくは3であり、p1は0であり、q1は2又は3、好ましくは3である。
【0190】
Rd1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z2-CR31
p2R32
q2R33
r2である。
【0191】
Z2は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z2として記載する構造は、右側が(CR31
p2R32
q2R33
r2)に結合する。
【0192】
好ましい態様において、Z2は、2価の有機基である。
【0193】
上記Z2は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5-O-(CH2)z6-(式中、z5は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z7-フェニレン-(CH2)z8-(式中、z7は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0194】
好ましい態様において、Z2は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z7-フェニレン-(CH2)z8-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z8-である。Z2がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0195】
別の好ましい態様において、上記Z2は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z2は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z2は、-CH2CH2-であり得る。
【0196】
R31は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z2’-CR32’
q2’R33’
r2’である。
【0197】
Z2’は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z2’として記載する構造は、右側が(CR32’
q2’R33’
r2’)に結合する。
【0198】
上記Z2’は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5’-O-(CH2)z6’-(式中、z5’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z7’-フェニレン-(CH2)z8’-(式中、z7’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0199】
好ましい態様において、Z2’は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z7’-フェニレン-(CH2)z8’-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z8’-である。Z2’がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0200】
別の好ましい態様において、上記Z2’は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z2’は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z2’は、-CH2CH2-であり得る。
【0201】
上記R32’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z3-SiR34
n2R35
3-n2である。
【0202】
上記Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z3として記載する構造は、右側が(SiR34
n2R35
3-n2)に結合する。
【0203】
一の態様において、Z3は酸素原子である。
【0204】
一の態様において、Z3は2価の有機基である。
【0205】
上記Z3は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5”-O-(CH2)z6”-(式中、z5”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-(式中、z7”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0206】
好ましい態様において、Z3は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z8”-である。Z3がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0207】
別の好ましい態様において、上記Z3は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z3は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z3は、-CH2CH2-であり得る。
【0208】
上記R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0209】
R34は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0210】
R34は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-ORj、-OCORj、-O-N=CRj
2、-NRj
2、-NHRj、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rjは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORj(即ち、アルコキシ基)である。Rjとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rjは、メチル基であり、別の態様において、Rjは、エチル基である。
【0211】
上記R35は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0212】
上記R35において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0213】
上記式中、n2は、(SiR34
n2R35
3-n2)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、RSiが式(S4)で表される基である場合、式(1)及び式(2)の末端部分において、n2が1~3である(SiR34
n2R35
3-n2)単位が少なくとも1つ存在する。即ち、かかる末端部分において、すべてのn2が同時に0になることはない。換言すれば、式(1)及び式(2)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも1つ存在する。
【0214】
n2は、(SiR34
n2R35
3-n2)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0215】
上記R33’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0216】
上記R33’において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又は-(CsH2s)t1-(O-CsH2s)t2(式中、sは、1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、t1は1又は0、好ましくは0であり、t2は、1~20の整数、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。)であり、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0217】
一の態様において、R33’は、水酸基である。
【0218】
別の態様において、R33’は、1価の有機基、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0219】
上記q2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、上記r2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、q2’とr2’の合計は、(CR32’
q2’R33’
r2’)単位において、3である。
【0220】
q2’は、(CR32’
q2’R33’
r2’)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0221】
R32は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z3-SiR34
n2R35
3-n2である。かかる-Z3-SiR34
n2R35
3-n2は、上記R32’における記載と同意義である。
【0222】
上記R33は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0223】
上記R33において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又は-(CsH2s)t1-(O-CsH2s)t2(式中、sは、各出現においてそれぞれ独立して、1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、t1は1又は0、好ましくは0であり、t2は、1~20の整数、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。)であり、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0224】
一の態様において、R33は、水酸基である。
【0225】
別の態様において、R33は、1価の有機基、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0226】
上記p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p2、q2及びr2の合計は、(CR31
p2R32
q2R33
r2)単位において、3である。
【0227】
一の態様において、p2は、0である。
【0228】
一の態様において、p2は、(CR31
p2R32
q2R33
r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p2は、3である。
【0229】
一の態様において、q2は、(CR31
p2R32
q2R33
r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0230】
一の態様において、p2は0であり、q2は、(CR31
p2R32
q2R33
r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0231】
上記Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z3-SiR34
n2R35
3-n2である。かかる-Z3-SiR34
n2R35
3-n2は、上記R32’における記載と同意義である。
【0232】
上記Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0233】
上記Rf1において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又は-(CsH2s)t1-(O-CsH2s)t2(式中、sは、1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、t1は1又は0、好ましくは0であり、t2は、1~20の整数、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。)であり、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0234】
一の態様において、Rf1は、水酸基である。
【0235】
別の態様において、Rf1は、1価の有機基、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0236】
上記k2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、l2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、k2、l2及びm2の合計は、(CRd1
k2Re1
l2Rf1
m2)単位において、3である。
【0237】
上記式(1)及び(2)において、RSiが式(S4)で表される基である場合、好ましくは、式(1)及び式(2)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0238】
一の態様において、RSiが式(S4)で表される基である場合、n2が1~3、好ましくは2又は3、より好ましくは3である(SiR34
n2R35
3-n2)単位は、式(1)及び式(2)の各末端部分において、2個以上、例えば2~27個、好ましくは2~9個、より好ましくは2~6個、さらに好ましくは2~3個、特に好ましくは3個存在する。
【0239】
好ましい態様において、式(S4)において、R32’が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR32’において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0240】
好ましい態様において、式(S4)において、R32が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR32において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0241】
好ましい態様において、式(S4)において、Re1が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのRa1において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0242】
好ましい態様において、式(S4)において、k2は0であり、l2は2又は3、好ましくは3であり、n2は、2又は3、好ましくは3である。
【0243】
上記Rg1及びRh1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z4-SiR11
n1R12
3-n1、-Z4-SiRa1
k1Rb1
l1Rc1
m1、-Z4-CRd1
k2Re1
l2Rf1
m2である。ここに、R11、R12、Ra1、Rb2、Rc1、Rd1、Re1、Rf1、n1、k1、l1、m1、k2、l2、及びm2は、上記と同意義である。
【0244】
好ましい態様において、Rg1及びRh1は、それぞれ独立して、-Z4-SiR11
n1R12
3-n1である。
【0245】
上記Z4は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z4として記載する構造は、右側が(SiR11
n1R12
3-n1)に結合する。
【0246】
一の態様において、Z4は酸素原子である。
【0247】
一の態様において、Z4は2価の有機基である。
【0248】
上記Z4は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5”-O-(CH2)z6”-(式中、z5”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-(式中、z7”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0249】
好ましい態様において、Z4は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z8”-である。Z3がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0250】
別の好ましい態様において、上記Z4は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z4は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z4は、-CH2CH2-であり得る。
【0251】
一の態様において、RSiは、式(S2)、(S3)、(S4)又は(S5)で表される基である。これらの化合物は、高い表面滑り性を有する表面処理層を形成することができる。
【0252】
一の態様において、RSiは、式(S3)、(S4)又は(S5)で表される基である。これらの化合物は、一の末端に複数の加水分解性基を有することから、基材に強く密着し、高い摩耗耐久性を有する表面処理層を形成することができる。
【0253】
一の態様において、RSiは、式(S3)又は(S4)で表される基である。これらの化合物は、一の末端に、一のSi原子又はC原子から分岐した複数の加水分解性基を有し得ることから、さらに高い摩耗耐久性を有する表面処理層を形成することができる。
【0254】
一の態様において、RSiは、式(S1)で表される基である。
【0255】
一の態様において、RSiは、式(S2)で表される基である。
【0256】
一の態様において、RSiは、式(S3)で表される基である。
【0257】
一の態様において、RSiは、式(S4)で表される基である。
【0258】
一の態様において、RSiは、式(S5)で表される基である。
【0259】
上記式(1)及び(2)において、XAは、主に撥水性及び表面滑り性等を提供するフルオロポリエーテル部(RF1及びRF2)と基材との結合能を提供する部(RSi)とを連結するリンカーと解される。従って、当該XAは、式(1)及び(2)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、単結合であってもよく、いずれの基であってもよい。
【0260】
上記式(1)において、αは1~9の整数であり、βは1~9の整数である。これらα及びβは、XAの価数に応じて変化し得る。α及びβの和は、XAの価数と同じである。例えば、XAが10価の有機基である場合、α及びβの和は10であり、例えばαが9かつβが1、αが5かつβが5、又はαが1かつβが9となり得る。また、XAが2価の有機基である場合、α及びβは1である。
【0261】
上記式(2)において、γは1~9の整数である。γは、XAの価数に応じて変化し得る。即ち、γは、XAの価数から1を引いた値である。
【0262】
XAは、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の有機基であり;
【0263】
上記XAにおける2~10価の有機基は、好ましくは2~8価の有機基である。一の態様において、かかる2~10価の有機基は、好ましくは2~4価の有機基であり、より好ましくは2価の有機基である。別の態様において、かかる2~10価の有機基は、好ましくは3~8価の有機基、より好ましくは3~6価の有機基である。
【0264】
一の態様において、XAは、単結合又は2価の有機基であり、αは1であり、βは1である。
【0265】
一の態様において、XAは、単結合又は2価の有機基であり、γは1である。
【0266】
一の態様において、XAは3~6価の有機基であり、αは1であり、βは2~5である。
【0267】
一の態様において、XAは3~6価の有機基であり、γは2~5である。
【0268】
一の態様において、XAは、3価の有機基であり、αは1であり、βは2である。
【0269】
一の態様において、XAは、3価の有機基であり、γは2である。
【0270】
X
Aが、単結合又は2価の有機基である場合、式(1)及び(2)は、下記式(1’)及び(2’)で表される。
【化11】
【0271】
一の態様において、XAは単結合である。
【0272】
別の態様において、XAは2価の有機基である。
【0273】
一の態様において、XAとしては、例えば、単結合又は下記式:
-(R51)p5-(X51)q5-
[式中:
R51は、単結合、-(CH2)s5-又はo-、m-もしくはp-フェニレン基を表し、好ましくは-(CH2)s5-であり、
s5は、1~20の整数、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~3の整数、さらにより好ましくは1又は2であり、
X51は、-(X52)l5-を表し、
X52は、各出現においてそれぞれ独立して、-O-、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-C(O)O-、-Si(R53)2-、-(Si(R53)2O)m5-Si(R53)2-、-CONR54-、-O-CONR54-、-NR54-及び-(CH2)n5-からなる群から選択される基を表し、
R53は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基を表し、好ましくはフェニル基又はC1-6アルキル基であり、より好ましくはメチル基であり、
R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基又はC1-6アルキル基(好ましくはメチル基)を表し、
m5は、各出現において、それぞれ独立して、1~100の整数、好ましくは1~20の整数であり、
n5は、各出現において、それぞれ独立して、1~20の整数、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~3の整数であり、
l5は、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数であり、
p5は、0又は1であり、
q5は、0又は1であり、
ここに、p5及びq5の少なくとも一方は1であり、p5又はq5を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である]
で表される2価の有機基が挙げられる。ここに、XA(典型的にはXAの水素原子)は、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。好ましい態様において、XAは、これらの基により置換されていない。
【0274】
好ましい態様において、上記XAは、それぞれ独立して、-(R51)p5-(X51)q5-R52-である。R52は、単結合、-(CH2)t5-又はo-、m-もしくはp-フェニレン基を表し、好ましくは-(CH2)t5-である。t5は、1~20の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~3の整数である。ここに、R52(典型的にはR52の水素原子)は、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。好ましい態様において、R56は、これらの基により置換されていない。
【0275】
好ましくは、上記XAは、それぞれ独立して、
単結合、
C1-20アルキレン基、
-R51-X53-R52-、又は
-X54-R52-
[式中、R51及びR52は、上記と同意義であり、
X53は、
-O-、
-S-、
-C(O)O-、
-CONR54-、
-O-CONR54-、
-Si(R53)2-、
-(Si(R53)2O)m5-Si(R53)2-、
-O-(CH2)u5-(Si(R53)2O)m5-Si(R53)2-、
-O-(CH2)u5-Si(R53)2-O-Si(R53)2-CH2CH2-Si(R53)2-O-Si(R53)2-、
-O-(CH2)u5-Si(OCH3)2OSi(OCH3)2-、
-CONR54-(CH2)u5-(Si(R53)2O)m5-Si(R53)2-、
-CONR54-(CH2)u5-N(R54)-、又は
-CONR54-(o-、m-又はp-フェニレン)-Si(R53)2-
(式中、R53、R54及びm5は、上記と同意義であり、
u5は1~20の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~3の整数である。)を表し、
X54は、
-S-、
-C(O)O-、
-CONR54-、
-O-CONR54-、
-CONR54-(CH2)u5-(Si(R54)2O)m5-Si(R54)2-、
-CONR54-(CH2)u5-N(R54)-、又は
-CONR54-(o-、m-又はp-フェニレン)-Si(R54)2-
(式中、各記号は、上記と同意義である。)
を表す。]
であり得る。
【0276】
より好ましくは、上記XAは、それぞれ独立して、
単結合、
C1-20アルキレン基、
-(CH2)s5-X53-、
-(CH2)s5-X53-(CH2)t5-
-X54-、又は
-X54-(CH2)t5-
[式中、X53、X54、s5及びt5は、上記と同意義である。]
である。
【0277】
より好ましくは、上記XAは、それぞれ独立して、
単結合、
C1-20アルキレン基、
-(CH2)s5-X53-(CH2)t5-、又は
-X54-(CH2)t5-
[式中、各記号は、上記と同意義である。]
であり得る。
【0278】
好ましい態様において、上記XAは、それぞれ独立して、
単結合
C1-20アルキレン基、
-(CH2)s5-X53-、又は
-(CH2)s5-X53-(CH2)t5-
[式中、
X53は、-O-、-CONR54-、又は-O-CONR54-であり、
R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基又はC1-6アルキル基を表し、
s5は、1~20の整数であり、
t5は、1~20の整数である。]
であり得る。
【0279】
好ましい態様において、上記XAは、それぞれ独立して、
-(CH2)s5-O-(CH2)t5-
-CONR54-(CH2)t5-
[式中、
R54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基又はC1-6アルキル基を表し、
s5は、1~20の整数であり、
t5は、1~20の整数である。]
であり得る。
【0280】
一の態様において、上記XAは、それぞれ独立して、
単結合、
C1-20アルキレン基、
-(CH2)s5-O-(CH2)t5-、
-(CH2)s5-(Si(R53)2O)m5-Si(R53)2-(CH2)t5-、
-(CH2)s5-O-(CH2)u5-(Si(R53)2O)m5-Si(R53)2-(CH2)t5-、又は
-(CH2)s5-O-(CH2)t5-Si(R53)2-(CH2)u5-Si(R53)2-(CvH2v)-
[式中、R53、m5、s5、t5及びu5は、上記と同意義であり、v5は1~20の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~3の整数である。]
である。
【0281】
上記式中、-(CvH2v)-は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、例えば、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH(CH3)-、-CH(CH3)CH2-であり得る。
【0282】
上記XAは、それぞれ独立して、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基(好ましくは、C1-3パーフルオロアルキル基)から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。一の態様において、XAは、非置換である。
【0283】
尚、上記XAは、各式の左側がRF1又はRF2に結合し、右側がRSiに結合する。
【0284】
一の態様において、XAは、それぞれ独立して、-O-C1-6アルキレン基以外であり得る。
【0285】
別の態様において、X
Aとしては、例えば下記の基が挙げられる:
【化12】
【化13】
[式中、R
41は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、炭素数1~6のアルキル基、又はC
1-6アルコキシ基、好ましくはメチル基であり;
Dは、
-CH
2O(CH
2)
2-、
-CH
2O(CH
2)
3-、
-CF
2O(CH
2)
3-、
-(CH
2)
2-、
-(CH
2)
3-、
-(CH
2)
4-、
-CONH-(CH
2)
3-、
-CON(CH
3)-(CH
2)
3-、
-CON(Ph)-(CH
2)
3-(式中、Phはフェニルを意味する)、及び
【化14】
(式中、R
42は、それぞれ独立して、水素原子、C
1-6のアルキル基又はC
1-6のアルコキシ基、好ましくはメチル基又はメトキシ基、より好ましくはメチル基を表す。)
から選択される基であり、
Eは、-(CH
2)
n-(nは2~6の整数)であり、
Dは、分子主鎖のR
F1又はR
F2に結合し、Eは、R
Siに結合する。]
【0286】
上記X
Aの具体的な例としては、例えば:
単結合、
-CH
2OCH
2-、
-CH
2O(CH
2)
2-、
-CH
2O(CH
2)
3-、
-CH
2O(CH
2)
4-、
-CH
2O(CH
2)
5-、
-CH
2O(CH
2)
6-、
-CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2-、
-CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2-、
-CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
2Si(CH
3)
2(CH
2)
2-、
-CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
3Si(CH
3)
2(CH
2)
2-、
-CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
10Si(CH
3)
2(CH
2)
2-、
-CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
20Si(CH
3)
2(CH
2)
2-、
-CH
2OCF
2CHFOCF
2-、
-CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2-、
-CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2CF
2-、
-CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2-、
-CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2CF
2-、
-CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2-、
-CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2-、
-CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2-、
-CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2-、
-CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2-、
-CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2CF
2-、
-CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2CF
2CF
2-、
-CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2-、
-CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2-、
-CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2-、
-CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2CF
2-C(O)NH-CH
2-、
-CH
2OCH
2(CH
2)
7CH
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
2-、
-CH
2OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
3-、
-CH
2OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
2CH
3)
2OSi(OCH
2CH
3)
2(CH
2)
3-、
-CH
2OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
2-、
-CH
2OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
2CH
3)
2OSi(OCH
2CH
3)
2(CH
2)
2-、
-(CH
2)
2-Si(CH
3)
2-(CH
2)
2-、
-CH
2-、
-(CH
2)
2-、
-(CH
2)
3-、
-(CH
2)
4-、
-(CH
2)
5-、
-(CH
2)
6-、
-CO-、
-CONH-、
-CONH-CH
2-、
-CONH-(CH
2)
2-、
-CONH-(CH
2)
3-、
-CONH-(CH
2)
4-、
-CONH-(CH
2)
5-、
-CONH-(CH
2)
6-、
-CON(CH
3)-CH
2-、
-CON(CH
3)-(CH
2)
2-、
-CON(CH
3)-(CH
2)
3-、
-CON(CH
3)-(CH
2)
4-、
-CON(CH
3)-(CH
2)
5-、
-CON(CH
3)-(CH
2)
6-、
-CON(Ph)-CH
2-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH
2)
2-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH
2)
3-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH
2)
4-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH
2)
5-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH
2)
6-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CONH-(CH
2)
2NH(CH
2)
3-、
-CONH-(CH
2)
6NH(CH
2)
3-、
-CH
2O-CONH-(CH
2)
3-、
-CH
2O-CONH-(CH
2)
6-、
-S-(CH
2)
3-、
-(CH
2)
2S(CH
2)
3-、
-CONH-(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2-、
-CONH-(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2-、
-CONH-(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
2Si(CH
3)
2(CH
2)
2-、
-CONH-(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
3Si(CH
3)
2(CH
2)
2-、
-CONH-(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
10Si(CH
3)
2(CH
2)
2-、
-CONH-(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
20Si(CH
3)
2(CH
2)
2-、
-C(O)O-(CH
2)
3-、
-C(O)O-(CH
2)
6-、
-CH
2-O-(CH
2)
3-Si(CH
3)
2-(CH
2)
2-Si(CH
3)
2-(CH
2)
2-、
-CH
2-O-(CH
2)
3-Si(CH
3)
2-(CH
2)
2-Si(CH
3)
2-CH(CH
3)-、
-CH
2-O-(CH
2)
3-Si(CH
3)
2-(CH
2)
2-Si(CH
3)
2-(CH
2)
3-、
-CH
2-O-(CH
2)
3-Si(CH
3)
2-(CH
2)
2-Si(CH
3)
2-CH(CH
3)-CH
2-、
-OCH
2-、
-O(CH
2)
3-、
-OCFHCF
2-、
【化15】
などが挙げられる。
【0287】
さらに別の態様において、XAは、それぞれ独立して、式:-(R16)x1-(CFR17)y1-(CH2)z1-で表される基である。式中、x1、y1及びz1は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、x1、y1及びz1の和は1以上であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。
【0288】
上記式中、R16は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子、フェニレン、カルバゾリレン、-NR18-(式中、R18は、水素原子又は有機基を表す)又は2価の有機基である。好ましくは、R18は、酸素原子又は2価の極性基である。
【0289】
上記「2価の極性基」としては、特に限定されないが、-C(O)-、-C(=NR19)-、及び-C(O)NR19-(これらの式中、R19は、水素原子又は低級アルキル基を表す)が挙げられる。当該「低級アルキル基」は、例えば、炭素数1~6のアルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピルであり、これらは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい。
【0290】
上記式中、R17は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は低級フルオロアルキル基であり、好ましくはフッ素原子である。当該「低級フルオロアルキル基」は、例えば、炭素数1~6、好ましくは炭素数1~3のフルオロアルキル基、好ましくは炭素数1~3のパーフルオロアルキル基、より好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、さらに好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0291】
さらに別の態様において、X
Aの例として、下記の基が挙げられる:
【化16】
[式中、
R
41は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、炭素数1~6のアルキル基、又はC
1-6アルコキシ基好ましくはメチル基であり;
各X
A基において、Tのうち任意のいくつかは、分子主鎖のR
F1又はR
F2に結合する以下の基:
-CH
2O(CH
2)
2-、
-CH
2O(CH
2)
3-、
-CF
2O(CH
2)
3-、
-(CH
2)
2-、
-(CH
2)
3-、
-(CH
2)
4-、
-CONH-(CH
2)
3-、
-CON(CH
3)-(CH
2)
3-、
-CON(Ph)-(CH
2)
3-(式中、Phはフェニルを意味する)、又は
【化17】
[式中、R
42は、それぞれ独立して、水素原子、C
1-6のアルキル基又はC
1-6のアルコキシ基、好ましくはメチル基又はメトキシ基、より好ましくはメチル基を表す。]
であり、別のTのいくつかは、分子主鎖のR
Siに結合し、存在する場合、残りのTは、それぞれ独立して、メチル基、フェニル基、C
1-6アルコキシ基又はラジカル捕捉基又は紫外線吸収基である。
【0292】
ラジカル捕捉基は、光照射で生じるラジカルを捕捉できるものであれば特に限定されないが、例えばベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、安息香酸エステル類、サリチル酸フェニル類、クロトン酸類、マロン酸エステル類、オルガノアクリレート類、ヒンダードアミン類、ヒンダードフェノール類、又はトリアジン類の残基が挙げられる。
【0293】
紫外線吸収基は、紫外線を吸収できるものであれば特に限定されないが、例えばベンゾトリアゾール類、ヒドロキシベンゾフェノン類、置換及び未置換安息香酸もしくはサリチル酸化合物のエステル類、アクリレート又はアルコキシシンナメート類、オキサミド類、オキサニリド類、ベンゾキサジノン類、ベンゾキサゾール類の残基が挙げられる。
【0294】
好ましい態様において、好ましいラジカル捕捉基又は紫外線吸収基としては、
【化18】
が挙げられる。
【0295】
この態様において、XAは、それぞれ独立して、3~10価の有機基であり得る。
【0296】
さらに別の態様において、X
Aの例として、下記の基が挙げられる:
【化19】
[式中、R
25、R
26及びR
27は、それぞれ独立して2~6価の有機基であり、
R
25は、少なくとも1つのR
F1に結合し、R
26及びR
27は、それぞれ、少なくとも1つのR
Siに結合する。]
【0297】
一の態様において、上記R25は、単結合、C1-20アルキレン基、C3-20シクロアルキレン基、C5-20アリーレン基、-R57-X58-R59-、-X58-R59-、又は-R57-X58-である。上記、R57及びR59は、それぞれ独立して、単結合、C1-20アルキレン基、C3-20シクロアルキレン基、又はC5-20アリーレン基である。上記X58は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-又は-COO-である。
【0298】
一の態様において、上記R26及びR27は、それぞれ独立して、炭化水素、又は炭化水素の端又は主鎖中にN、O及びSから選択される少なくとも1つの原子を有する基であり、好ましくは、C1-6アルキル基、-R36-R37-R36-、-R36-CHR38
2-などが挙げられる。ここに、R36は、それぞれ独立して、単結合又は炭素数1~6のアルキル基、好ましくは炭素数1~6のアルキル基である。R37は、N、O又はSであり、好ましくはN又はOである。R38は、-R45-R46-R45-、-R46-R45-又は-R45-R46-である。ここに、R45は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基である。R46は、N、O又はSであり、好ましくはOである。
【0299】
この態様において、XAは、それぞれ独立して、3~10価の有機基であり得る。
【0300】
さらに別の態様において、X
Aの例として、下記:
【化20】
[式中、X
aは、単結合または2価の有機基である。]
で表される基が挙げられる
【0301】
上記Xaは、イソシアヌル環に直接結合する単結合または二価の連結基である。Xaとしては、単結合、アルキレン基、または、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びスルフィド結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む二価の基が好ましく、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、または、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びスルフィド結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む炭素数1~10の二価の炭化水素基がより好ましい。
【0302】
Xaとしては、下記式:
-(CX121X122)x1-(Xa1)y1-(CX123X124)z1-
(式中、X121~X124は、それぞれ独立して、H、F、OH、または、-OSi(OR121)3(式中、3つのR121は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基である。)であり、
上記Xa1は、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、または、-NHC(=O)NH-であり(各結合の左側がCX121X122に結合する。)、
x1は0~10の整数であり、y1は0または1であり、z1は1~10の整数である。)
で表される基が更に好ましい。
【0303】
上記Xa1としては、-O-または-C(=O)O-が好ましい。
【0304】
上記Xaとしては、下記式:
-(CF2)m11-(CH2)m12-O-(CH2)m13-
(式中、m11は1~3の整数であり、m12は1~3の整数であり、m13は1~3の整数である。)
で表される基、
-(CF2)m14-(CH2)m15-O-CH2CH(OH)-(CH2)m16-
(式中、m14は1~3の整数であり、m15は1~3の整数であり、m16は1~3の整数である。)
で表される基、
-(CF2)m17-(CH2)m18-
(式中、m17は1~3の整数であり、m18は1~3の整数である。)
で表される基、
-(CF2)m19-(CH2)m20-O-CH2CH(OSi(OCH3)3)-(CH2)m21-
(式中、m19は1~3の整数であり、m20は1~3の整数であり、m21は1~3の整数である。)
で表される基、または、
-(CH2)m22-
(式中、m22は1~3の整数である。)
で表される基が特に好ましい。
【0305】
上記Xaとして、特に限定されないが、具体的には、
-CH2-、-C2H4-、-C3H6-、-C4H8-、-C4H8-O-CH2-、-CO-O-CH2-CH(OH)-CH2-、-(CF2)n5-(n5は0~4の整数である。)、-(CF2)n5-(CH2)m5-(n5およびm5は、それぞれ独立して、0~4の整数である。)、-CF2CF2CH2OCH2CH(OH)CH2-、-CF2CF2CH2OCH2CH(OSi(OCH3)3)CH2-
等が挙げられる。
【0306】
この態様において、XAは、それぞれ独立して、2又は3価の有機基であり得る。
【0307】
上記式(1)又は式(2)で表される含フッ素シラン化合物は、特に限定されるものではないが、5×102~1×105の平均分子量を有し得る。かかる範囲のなかでも、2,000~32,000、より好ましくは2,500~12,000の平均分子量を有することが、摩耗耐久性の観点から好ましい。なお、かかる「平均分子量」は、数平均分子量を言い、「平均分子量」は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0308】
上記式(1)又は(2)で表される含フッ素シラン化合物の含有率は、上記含フッ素シラン化合物の合計100質量%中、好ましくは90質量%以上100質量%以下、より好ましくは95質量%以上100質量%以下であり得る。
【0309】
上記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物の含有率は、上記表面処理剤100質量%中、好ましくは0.02~40.0質量%、より好ましくは0.02~30.0質量%、さらに好ましくは0.04~25.0質量%、特に好ましくは0.05~20.0質量%であり得る。上記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物の含有量を上記の範囲にすることにより、より高い撥水撥油性を得ることができる。
本開示の組成物において、不揮発分は、組成物の全量から溶媒を除いた部分としてよい。
【0310】
上記含フッ素シラン化合物の含有率は、上記表面処理剤100質量%中、好ましくは0.02~40.0質量%、より好ましくは0.02~30.0質量%、さらに好ましくは0.04~25.0質量%、特に好ましくは0.05~20.0質量%であり得る。上記含フッ素シラン化合物の含有量を上記の範囲にすることにより、より高い撥水撥油性を得ることができる。
【0311】
上記表面処理剤は、溶媒をさらに含んでいてもよい。溶媒を含むことにより、組成物の取り扱い性が良好になる。このような組成物を用いて層を形成すると、形成された層は連続した薄膜となり得る。また、このような組成物は、任意の膜厚の薄膜の形成に寄与し得る。
【0312】
上記溶媒としては、特に限定されないが、例えば、炭素数5~12のパーフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサンおよびパーフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン);ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、C6F13CH2CH3(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AC-6000)、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(例えば、日本ゼオン株式会社製のゼオローラ(登録商標)H);ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(C3F7OCH3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7000)、パーフルオロブチルメチルエーテル(C4F9OCH3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7100)、パーフルオロブチルエチルエーテル(C4F9OC2H5)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7200)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(C2F5CF(OCH3)C3F7)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7300)などのアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基およびアルキル基は直鎖または分枝状であってよい)、あるいはCF3CH2OCF2CHF2(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AE-3000))など。これらの溶媒は、単独で、または、2種以上の混合物として用いることができる。なかでも、ヒドロフルオロエーテルが好ましく、パーフルオロブチルメチルエーテル(C4F9OCH3)および/またはパーフルオロブチルエチルエーテル(C4F9OC2H5)が特に好ましい。
【0313】
上記溶媒の沸点(大気圧下)は、好ましくは105℃未満、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下であり得る。上記溶媒が上記の範囲の沸点を有することにより、本開示の表面処理剤を基材に適用した際に、加熱などを加えることなく比較的容易に気化し、表面処理工程に要する時間およびエネルギーを小さくすることができる。かかる沸点の下限は特に限定されないが、例えば30℃以上、好ましくは50℃以上であり得る。
【0314】
上記溶剤の含有量は、上記表面処理剤の合計100質量%中、好ましくは50~99.7質量%、より好ましくは60~99.7質量%、さらに好ましくは70~99.7質量%、特に好ましくは80~99.7質量%であり得る。
【0315】
本開示の表面処理剤は、さらに、含フッ素オイルとして理解され得る(非反応性の)フルオロポリエーテル化合物、好ましくはパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物(以下、まとめて「含フッ素オイル」と言う)、シリコーンオイルとして理解され得る(非反応性の)シリコーン化合物(以下、「シリコーンオイル」と言う)、アルコール類、触媒、界面活性剤、重合禁止剤、増感剤等を含み得る。尚、他の成分は、上記した含フッ素シラン化合物および溶媒とは異なる成分である。
【0316】
含フッ素オイルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の一般式(4)で表される化合物(パーフルオロ(ポリ)エーテル化合物)が挙げられる。
Rf5-(OC4F8)a”-(OC3F6)b”-(OC2F4)c”-(OCF2)d”-Rf6 ・・・(4)
式中、Rf5は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基(好ましくは、C1-16のパーフルオロアルキル基)を表し、Rf6は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基(好ましくは、C1-16パーフルオロアルキル基)、フッ素原子または水素原子を表し、Rf5およびRf6は、より好ましくは、それぞれ独立して、C1-3パーフルオロアルキル基である。
a”、b”、c”およびd”は、ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロ(ポリ)エーテルの4種の繰り返し単位数をそれぞれ表し、互いに独立して0以上300以下の整数であって、a”、b”、c”およびd”の和は30より大きく、好ましくは40~300、より好ましくは50~300である。添字a”、b”、c”またはd”を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。これら繰り返し単位のうち、-(OC4F8)-は、-(OCF2CF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2CF2)-、-(OCF2CF(CF3)CF2)-、-(OCF2CF2CF(CF3))-、-(OC(CF3)2CF2)-、-(OCF2C(CF3)2)-、-(OCF(CF3)CF(CF3))-、-(OCF(C2F5)CF2)-および(OCF2CF(C2F5))-のいずれであってもよいが、好ましくは-(OCF2CF2CF2CF2)-である。-(OC3F6)-は、-(OCF2CF2CF2)-、-(OCF(CF3)CF2)-および(OCF2CF(CF3))-のいずれであってもよく、好ましくは-(OCF2CF2CF2)-である。-(OC2F4)-は、-(OCF2CF2)-および(OCF(CF3))-のいずれであってもよいが、好ましくは-(OCF2CF2)-である。
【0317】
上記一般式(4)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物の例として、以下の一般式(4a)および(4b)のいずれかで示される化合物(1種または2種以上の混合物であってよい)が挙げられる。
Rf5-(OCF2CF2CF2)b”-Rf6 ・・・(4a)
Rf5-(OCF2CF2CF2CF2)a”-(OCF2CF2CF2)b”-(OCF2CF2)c”-(OCF2)d”-Rf6 ・・・(4b)
これら式中、Rf5およびRf6は上記の通りであり;式(4a)において、b”は1以上100以下の整数であり;式(4b)において、a”およびb”は、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、c”およびd”はそれぞれ独立して1以上300以下の整数である。添字a”、b”、c”、d”を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。
【0318】
また、別の観点から、含フッ素オイルは、一般式Rf3-F(式中、Rf3はC5-16パーフルオロアルキル基である。)で表される化合物であってよい。また、クロロトリフルオロエチレンオリゴマーであってもよい。
【0319】
上記含フッ素オイルは、好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上、さらに好ましくは2000以上の数平均分子量を有していてもよい。また、上記含フッ素オイルは、好ましくは30000以下、より好ましくは20000以下、さらに好ましくは10000以下の数平均分子量を有していてもよい。含フッ素オイルの分子量は、GPCを用いて測定し得る。
【0320】
上記含フッ素オイルは、上記表面処理剤に対して、例えば0~50質量%、好ましくは0~30質量%、より好ましくは0~5質量%含まれ得る。一の態様において、本開示の表面処理剤は、含フッ素オイルを実質的に含まない。含フッ素オイルを実質的に含まないとは、含フッ素オイルを全く含まない、または極微量の含フッ素オイルを含んでいてもよいことを意味する。
【0321】
一の態様において、含フッ素シラン化合物の数平均分子量よりも、含フッ素オイルの数平均分子量を小さくしてもよい。このような平均分子量とすることにより、かかる化合物から得られる表面処理層の透明性の低下を抑制しつつ、高い摩耗耐久性および高い表面滑り性を有する硬化物を形成できる。
【0322】
含フッ素オイルは、本開示の表面処理剤によって形成された層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0323】
上記シリコーンオイルとしては、例えばシロキサン結合が2,000以下の直鎖状または環状のシリコーンオイルを用い得る。直鎖状のシリコーンオイルは、いわゆるストレートシリコーンオイルおよび変性シリコーンオイルであってよい。ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルを、アルキル、アラルキル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル、フルオロアルキル、アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコールなどにより変性したものが挙げられる。環状のシリコーンオイルは、例えば環状ジメチルシロキサンオイルなどが挙げられる。
【0324】
本開示の表面処理剤中、かかるシリコーンオイルは、上記本開示の含フッ素シラン化合物の合計100質量部(2種以上の場合にはこれらの合計、以下も同様)に対して、例えば0~300質量部、好ましくは50~200質量部で含まれ得る。
【0325】
シリコーンオイルは、表面処理層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0326】
上記アルコール類としては、例えば1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~6のアルコール、例えば、メタノール、エタノール、iso-プロパノール、tert-ブタノール、CF3CH2OH、CF3CF2CH2OH、(CF3)2CHOHが挙げられる。これらのアルコール類を表面処理剤に添加することにより、表面処理剤の安定性を向上させ、また、含フッ素シラン化合物と溶媒の相溶性を改善させる。
【0327】
上記アルコール類は、表面処理剤中、上記金属化合物に対して、モル比で、好ましくは0.1~5倍、より好ましくは0.5~3倍、さらに好ましくは0.8~1.2倍の量で含まれる。アルコール類の含有割合を上記の範囲とすることにより、表面処理層の安定性をより向上させることができる。
【0328】
上記触媒としては、酸(例えば酢酸、トリフルオロ酢酸等)、塩基(例えばアンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等)、遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)等が挙げられる。
【0329】
触媒は、本開示の含フッ素シラン化合物の加水分解および脱水縮合を促進し、本開示の表面処理剤により形成される層の形成を促進する。
【0330】
他の成分としては、上記以外に、例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等も挙げられる。
【0331】
なお、本開示の処理方法は、電子デバイスから取り外された表示パネルや、表示パネルからさらに取り外された、層を有するガラス基材に対しても適用され得る。
【0332】
(第2実施形態:電子デバイス)
本開示の電子デバイスは、表示パネルを備える電子デバイスであって、
上記表示パネルは、ガラス基材と、上記ガラス基材の表面の一部を覆う第1の表面処理層と、上記ガラス基材の表面の他の一部を覆う第2の層と、を有し、
上記第1の層は、含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤により形成される層であり、
上記第1の層と上記第2の層の組成は、互いに異なる。
【0333】
上記本開示のデバイスの表示パネルの表面は、良好な撥水性を発揮し得る。
【0334】
上記電子デバイスは、第1実施形態における電子デバイスと同意義である。
【0335】
上記表示パネルは、上記電子デバイスに備えられる。上記表示パネルは、ディスプレイパネル、タッチパネル、スクリーン等であり得、ガラス基材と、上記ガラス基材の表面の一部を覆う第1の層と、上記ガラス基材の表面の他の一部を覆う第2の層と、を有する。
【0336】
上記ガラス基材を構成するガラスは、アルミノケイ酸ガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス等であってよく、好ましくは、アルミノケイ酸ガラスであってよい。
上記ガラス基材の厚さは、代表的には、0.1mm以上1mm以下であり得る。
【0337】
上記第1の層は、含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤により形成される。含フッ素シラン化合物および表面処理剤は、上記第1実施形態における含フッ素シラン化合物および表面処理剤と同意義である。上記第1の層は、含フッ素シラン化合物と、含フッ素シラン化合物の加水分解および重縮合により生じる化合物とを含み得る。
【0338】
上記第1の層は、上記ガラス基材の表面の一部を覆う。本実施形態の電子デバイスにおいて、上記第1の層に覆われる領域は、電子デバイスの使用の際、表示パネルの表面において、接触や摩擦を受ける頻度が比較的高い領域であり得、例えば、表示パネルの表面の中央部等であり得る。これにより、電子デバイスの使用に際して、摩擦や接触を受けやすい箇所の表面の滑り性が良好となり、撥水性、撥油性および防汚性等の表面特性が維持されやすくなる。
上記表示パネルの中央部は、上記表示パネルを縦方向に三等分して、上位部、中位部および下位部に区分し、上記表示パネルを横方向に三等分して、右部、中部および左部に区分した場合、中位部および中部の両方に該当する部位であり得る。
【0339】
上記第2の層は、上記ガラス基材の表面の他の一部を覆う。上記ガラス基材の表面の他の一部は、上記ガラス基材の表面において、第1の層で覆われていない部分の一部または全部であり得る。上記ガラス基材の表面に置いて、第2の層が覆い得る領域は、電子デバイスの使用の際、接触や摩擦を受ける頻度が比較的低い領域であり得、例えば、表示パネルの表面の周縁部および角部から選ばれる1またはそれ以上であり得る。
上記表示パネルの周縁部は、上記表示パネルを縦方向に三等分して、上位部、中位部および下位部に区分し、上記表示パネルを横方向に三等分して、右部、中部および左部に区分した場合、上位部または下位部であって、中部に該当する部位および中位部であって、右部または左部に該当する部位から選ばれる1またはそれ以上であり得る。上記表示パネルの角部は、上記表示パネルを縦方向に三等分して、上位部、中位部および下位部に区分し、上記表示パネルを横方向に三等分して、右部、中部および左部に区分した場合、上位部または下位部であって、右部または左部に該当する部位であり得る。
【0340】
上記第1の層と、上記第2の層の組成は、互いに異なる。上記第1の層と上記第2の層が互いに異なることの一態様には、第1の層に含まれる含フッ素シラン化合物と、第2の層に含まれる含フッ素化合物とが異なる態様が含まれ、特に、第1の層に含まれるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物と、第2の層に含まれるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物とが異なる態様が含まれる。上記第2の層は、好ましくは、撥水性、撥油性、滑り性、防汚性および防曇性から選ばれる1またはそれ以上をガラス基材に付与するために用いられる化合物およびその反応物を含み得る。該化合物は例えば、含フッ素化合物、シリコーン化合物およびアクリル化合物から選ばれる1種またはそれ以上であり得る。
【0341】
上記含フッ素化合物としては、含フッ素シラン化合物が好ましく、上記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物が好ましい。かかるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、上記第1実施形態におけるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物と同意義である。
【0342】
上記ガラス基材の表面には、上記第1の層および上記第2の層以外の層が配置されていてもよい。該その他の層は、好ましくは、上記ガラス基材の表面を覆い、上記第2の層と一部重なっていてもよく、上記第2の層の上に設けられていてもよく、上記第2の層とガラス基材との間に設けられていてもよい。かかるその他の層として、ハードコート層、反射防止層が挙げられる。
【0343】
上記表示パネルは、上記ガラス基材以外に、他の部材をさらに有していてもよい。ガラス基材は、代表的には、かかる他の部材上、すなわち、表示パネルにおいて、他の部材よりも表面側に配置され得る。
【0344】
上記表示パネルの表面の動摩擦係数の最大値は、上記表示パネルの表面の動摩擦係数の最小値の、例えば1.1倍以上、さらに1.2倍以上、特に1.3以上であり得、例えば2.0倍以下、さらに1.8倍以下であり得る。第2の層を含まない表面は、プラズマ照射および表面処理剤適用の前の段階では、動摩擦係数が高く、滑り性が低下していると考えられる。第1の層の形成により、第1の層が形成されている部分では動摩擦係数が低下するため、第2の層を含まない部分や、第2の層が形成されている部分より滑りやすくなると考えられる。
【0345】
上記表示パネルの表面の動摩擦係数の最大値および最小値は、上記表示パネルを縦方向および横方向にそれぞれ3等分して、9つの区分に分けた場合に、各区分における動摩擦係数を測定した場合における、最大値および最小値としてよい。
【0346】
上記第1の層の表面の動摩擦係数と、上記第2の層の表面の動摩擦係数とは、異なることが好ましく、一の態様において、上記第1の層の表面の動摩擦係数は、上記第2の層の表面の動摩擦係数より小さいことが好ましい。例えば、上記第1の層の表面の動摩擦係数は、上記第2の層の表面の動摩擦係数に対して、例えば0.9倍以下、さらに0.8倍以下、特に0.7倍以下であり得、例えば0.3倍以上、さらに0.4倍以上であり得る。
【0347】
上記表示パネルの表面の水接触角の平均値は、例えば108°以上、さらに110°以上であってよく、例えば160°以下、150°以下、140°以下であってよい。上記表示パネルの表面の水接触角の平均値は、上記表示パネルを縦方向および横方向にそれぞれ3等分して、9つの区分に分けた場合に、各区分における水接触角を測定して、その平均値を算出した値としてよい。
【0348】
上記電子デバイスは、
ガラス基材と、上記ガラス基材の表面の一部を覆う第2の層をと有する表示パネルを備える電子デバイスにおいて、
上記ガラス基材の表面および上記第2の層の表面から選ばれる1またはそれ以上の少なくとも一部にプラズマを照射すること、
上記プラズマを照射した領域に表面処理剤を適用して、第1の表面処理層を形成すること、を含み、
上記表面処理剤は、含フッ素シラン化合物を含む、製造方法により製造され得る。
【0349】
上記製造方法において、ガラス基材の表面および上記第2の層の表面から選ばれる1またはそれ以上の少なくとも一部、プラズマおよびその照射、前駆体層、表面処理剤、ならびに、含フッ素シラン化合物は、第1実施形態におけるガラス基材の表面および上記第2の層の表面から選ばれる1またはそれ以上の少なくとも一部、プラズマおよびその照射、前駆体層、表面処理剤、ならびに、含フッ素シラン化合物と同意義である。
【0350】
本開示の電子デバイスは、上記製造方法により製造され得るが、かかる方法により製造されたものに限定されない。
【実施例0351】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0352】
(実施例)
フルオロポリエーテル基含有シラン化合物(A)が塗布されたガラス基材(表示パネル)において、水接触角100°未満となっている箇所(一部)に対し、照射照度12.4W/cm2、照射距離3mm、照射速度5mm/sec、照射温度47℃で低温プラズマ処理を行った後、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物(B)をハイドロフルオロエーテル(スリーエム社製、ノベックHFE7200)に溶解させて0.1wt%に調整した溶液をスプレー処理した。塗布後、25℃で12h放置し水接触角を測定した。
【0353】
フルオロポリエーテル基含有シラン化合物(A)
【化21】
PFPE:CF
3(OCF
2CF
2)
m(OCF
2)
n
フルオロポリエーテル基含有シラン化合物(B)
【化22】
PFPE:CF
3(OCF
2CF
2)
m(OCF
2)
n
【0354】
【0355】
(水の静的接触角の測定方法)
静的接触角は全自動接触角計DropMaster700(協和界面科学社製)を用いた。形成された表面処理層を有する基材を水平に静置し、その表面にマイクロシリンジから水を2μL滴下し、滴下1秒後の静止画をビデオマイクロスコープで撮影することにより求めた。
【0356】
(動摩擦係数の測定方法)
動摩擦係数はFPT-1(LabThink)を用いて、下記条件で測定した。
摩耗子:上質紙
接地面積:20mm×20mm
荷重:200gf
移動速度:200mm/分