(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090123
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/18 20060101AFI20240627BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20240627BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20240627BHJP
H05K 7/14 20060101ALI20240627BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G06F1/18 C
G06F1/18 E
G06F1/16 312G
H05K5/02 V
H05K7/14 C
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205799
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】森野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】劉 ガロ
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 大輔
【テーマコード(参考)】
4E360
5E322
5E348
【Fターム(参考)】
4E360AB04
4E360AB05
4E360AB16
4E360AB42
4E360BA02
4E360BB12
4E360BB22
4E360CA02
4E360EA24
4E360ED04
4E360GB46
4E360GC08
5E322AA06
5E322DB08
5E322FA04
5E348AA09
5E348AA29
5E348AA30
5E348AA40
(57)【要約】
【課題】第1筐体と第2筐体とが回動することによるフレキシブル基板からの異音の発生を抑制することのできる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器10は第1筐体12aと第2筐体12Bとが相対的に回動可能に連結されいており、これらの間に亘って設けられるフレキシブル基板38と、フレキシブル基板38に積層されるグラファイトシート86とを有する。フレキシブル基板38とグラファイトシート86とは、第1筐体12Aおよび第2筐体12Bの少なくとも一方の内部で、互いに逆向きに湾曲した第1折返し部102a及び第2折返し部102bを有する略S字形状の余長吸収部104を形成し、余長吸収部104の前後で互いが固定され、さらに第1折返し部102aと第2折返し部102bとを除きこれらの中間部106で互いが粘着テープ110cで固定されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジによって第1筐体と第2筐体とが相対的に回動可能に連結されいてる電子機器であって、
前記第1筐体と前記第2筐体との間に亘って設けられるフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板に積層されて該フレキシブル基板とともに前記第1筐体と前記第2筐体との間に亘って設けられるシートと、
を有し、
前記フレキシブル基板と前記シートとは、前記第1筐体および前記第2筐体の少なくとも一方の内部で、互いに逆向きに湾曲した第1折返し部及び第2折返し部を有する略S字形状の余長吸収部を形成し、前記余長吸収部の前後で互いが固定され、さらに前記第1折返し部と前記第2折返し部とを除きこれらの中間部で互いが固定されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記シートは、グラファイトシート又は金属シートである
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1に記載の電子機器において、
前記フレキシブル基板と前記シートとの積層体は、前記余長吸収部の前後で前記第1折返し部と対面する箇所および前記第2折返し部と対面する箇所に摺動シートが設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器において、
前記摺動シートはテフロンである
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1に記載の電子機器において、
前記ヒンジは断面が前記第1筐体と前記第2筐体との間で対称な台形であり、
前記フレキシブル基板と前記シートとの積層体は、前記ヒンジが形成する台形の2つの斜面に対してそれぞれ角部を除く箇所に設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項5に記載の電子機器において、
前記積層体は、前記ヒンジにおける2つの前記斜面の間の頂面に対して粘着材で固定されている
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1筐体と第2筐体とが回動可能に連結されている電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル式の液晶ディスプレイを有し、物理的なキーボードを持たないPCやスマートフォン等の電子機器が急速に普及している。この種の電子機器のディスプレイは、使用時には大きい方が望ましい反面、非使用時には小型化できることが望まれている。そこで、例えば有機EL(Electro Luminescence)等のフレキシブルディスプレイを用いることで、筐体間を折り畳み可能に構成した電子機器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、筐体間で送受信される情報量が大きい場合等、一般的な配線では太くなり過ぎるときは、フレキシブル基板を使用することが考えられる。筐体間の配線は回動動作時に生じる周長差によって伸縮動作を生じるため、特許文献2ではフレキシブル基板に略S字形状の折り返し部を設け、筐体同士が回動することによる経路長の変化を吸収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-015522号公報
【特許文献2】特開2022-121092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フレキシブル基板にS字形状の折り返し部を設けると、第1筐体と第2筐体との回動にともなって経路長を吸収するためにS字の形状がやや変化するが、この際にフレキシブル基板の配置態様によっては異音を発生する懸念がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、第1筐体と第2筐体とが回動することによるフレキシブル基板またはこれに付随する構成要素からの異音の発生を抑制することのできる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の態様に係る電子機器は、ヒンジによって第1筐体と第2筐体とが相対的に回動可能に連結されいてる電子機器であって、前記第1筐体と前記第2筐体との間に亘って設けられるフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板に積層されて該フレキシブル基板とともに前記第1筐体と前記第2筐体との間に亘って設けられるシートと、を有し、前記フレキシブル基板と前記シートとは、前記第1筐体および前記第2筐体の少なくとも一方の内部で、互いに逆向きに湾曲した第1折返し部及び第2折返し部を有する略S字形状の余長吸収部を形成し、前記余長吸収部の前後で互いが固定され、さらに前記第1折返し部と前記第2折返し部とを除きこれらの中間部で互いが固定されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、第1筐体と第2筐体とが回動することによるフレキシブル基板またはこれに付随する構成要素からの異音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を閉じて0度姿勢とした状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、電子機器を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、電子機器の内部構造を模式的に示す平面図である。
【
図5】
図5は、180度姿勢時のヒンジ装置およびその周辺の断面側面図である。
【
図6】
図6は、0度姿勢時のヒンジ装置およびその周辺の断面側面図である。
【
図7】
図7は、180度姿勢時の空間内およびヒンジ本体に沿う積層体の状態を示す断面側面図である。
【
図8】
図8は、0度姿勢時の空間内およびヒンジ本体に沿う積層体の状態を示す断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる電子機器の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を閉じて0度姿勢とした状態を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す電子機器10を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す平面図である。
図3は、
図2に示す電子機器10の内部構造を模式的に示す平面図である。
図3では、カバー部材18A、18Bおよびサーマルモジュール30を取り外した状態としている。
図4は、電子機器10の分解斜視図である。
図5は、180度姿勢時のヒンジ装置14およびその周辺の断面側面図である。
図6は、0度姿勢時のヒンジ装置14およびその周辺の断面側面図である。
【0012】
図1~
図4に示すように、電子機器10は、第1筐体12Aと、第2筐体12Bと、ヒンジ装置14と、ディスプレイ16とを備える。ディスプレイ16は、筐体12A,12B間に亘って延在している。本実施形態では、本のように折り畳み可能なタブレット型PC或いはノート型PCとして用いられる電子機器10を例示する。電子機器10は、2つの筐体が相対的に回動可能に連結されいてる構成であればよい。
【0013】
各筐体12A,12Bは、互いに隣接して配置されている。第1筐体12Aは、フレーム部材17Aと、カバー部材18Aとを備える。フレーム部材17Aは、第2筐体12Bと隣接する第1端部12Aa以外の3辺に立壁を形成した矩形の枠状部材である。カバー部材18Aは、フレーム部材17Aの裏面開口を閉じるプレート状部材である(
図5も参照)。同様に、第2筐体12Bは、第1筐体12Aと隣接する第2端部12Ba以外の3辺に立壁を形成したフレーム部材17Bと、フレーム部材17Bの裏面開口を閉じるカバー部材18Bとを備える。フレーム部材17A,17Bの表面開口は、ディスプレイ16で閉じられる。
【0014】
各部材17A,17B,18A,18Bは、例えばステンレスやマグネシウム、アルミニウム等の金属部材、或いは炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂板等で構成される。つまり、部材17A,17B,18A,18Bは熱伝導材料であり適度な伝熱性を有する。
【0015】
ヒンジ装置14は、筐体12A,12Bを0度姿勢と180度姿勢との間で相対的に回動可能に連結している。ヒンジ装置14は、
図1に示す0度姿勢で形成される端部12Aa,12Ba間の隙間を隠す背表紙としても機能する。
【0016】
以下、電子機器10について、筐体12A,12Bの並び方向をX方向、これと直交する端部12Aa,12Baに沿う方向をY方向、筐体12A,12Bの厚み方向をZ方向、と呼んで説明する。Z方向に関しては、ディスプレイ16が設けられる側を表面とし、カバー部材18A,18Bが設けられる側を背面とする。また、第1筐体12Aとその構成要素に限りX方向について端部12Aaの方向をX1側とし、その反対側をX2側とする。
【0017】
さらに、筐体12A,12B間の角度姿勢について、互いに面方向で重なるように積層された状態を0度姿勢(
図1参照)と呼び、互いに面方向と垂直する方向(X方向)に並んだ状態を180度姿勢(
図2、
図3参照)と呼んで説明する。0度と180度の間の姿勢は適宜角度を刻んで呼ぶことができ、例えば筐体12A,12Bの互いの面方向が直交した状態が90度姿勢となる。これらの角度は説明の便宜上のものであり、実際の製品では角度数字の示す正確な角度位置から多少ずれた角度位置となることも当然生じ得る。
【0018】
図3に示すように、第1筐体12Aは、マザーボード20、通信モジュール22、SSD(Solid State Drive)24、バッテリ装置26を搭載している。第1筐体12Aにはサーマルモジュール30(
図4参照)が設けられている。
【0019】
サーマルモジュール30は、発熱する電気部品であるCPU20a、通信モジュール22、SSD24から受熱して広い範囲に拡散して放熱する放熱体であり、ベーパーチャンバ、グラファイトシートおよび1本以上のヒートパイプによって構成されている。
図4の符号60で示すように、ヒートパイプのうち1本はサーマルモジュール30におけるX1側の縁に沿って設けられており、発熱体の熱がヒートパイプ60まで熱輸送されるようになっている。
【0020】
マザーボード20は、例えばCPU(Central Processing Unit)20a等の電子部品が実装されている。CPU20aは、電子機器10の主たる制御や処理に関する演算を行う処理装置である。CPU20aは、電子機器10に搭載された電子部品の中で最大級の発熱体である。通信モジュール22は、例えば第2筐体12Bに搭載されたアンテナを介して送受信される無線通信の情報処理を行う。通信モジュール22は、例えばワイヤレスWANや第5世代移動通信システムに対応する。SSD24は、半導体メモリを用いた記憶装置である。第1筐体12Aは、マザーボード20以外にも各種電子部品が搭載される。通信モジュール22及びSSD24は、CPU20aに次ぐ発熱量の発熱体である。バッテリ装置26は電子機器10のサブ電源となる二次電池である。
【0021】
第2筐体12Bは、バッテリ装置32、ディスプレイボード34、及びサブカード36を搭載している。バッテリ装置32は、電子機器10のメイン電源となる二次電池であり、上記のバッテリ装置26より大型となっており第2筐体12B内の大部分を占める。ディスプレイボード34は、ディスプレイ16の制御基板である。サブカード36は、例えば電源ボタンやUSB(Universal Serial Bus)規格に準拠した外部コネクタ等を実装した基板である。第2筐体12Bは、バッテリ装置32等以外にも各種電子部品が搭載される。
【0022】
バッテリ装置32、ディスプレイボード34、及びサブカード36は、それぞれ端部12Aa,12Baを跨ぐフレキシブル基板38,40、42を用いてマザーボード20と接続されている。以下、フレキシブル基板38,40、42については特に区別する必要がない場合には、代表的にフレキシブル基板38とも呼ぶ。
【0023】
バッテリ装置32、ディスプレイボード34、及びサブカード36の発熱量は、CPU20a等に比べて小さい。このため、電子機器10は、第1筐体12A内での発熱量が第2筐体12B内の発熱量に比べて大きい。そこで、電子機器10は、左右の筐体12A,12B間での熱移動を促進し、各筐体12A,12Bの熱を均等化するための構成として、熱伝導部材78A,78B(
図4参照)、およびグラファイトシート86,88,90(
図4参照)を備えている。グラファイトシート86,88,90は、順にフレキシブル基板38,40、42の一部に積層され貼り合わされている。これらの熱伝導部材78A,78Bおよびグラファイトシート86,88,90については後述する。
【0024】
図1及び
図6に示す0度姿勢において、筐体12A,12Bは、二つ折りに折り畳まれた状態となる。ディスプレイ16は、有機ELで形成されたペーパー状のフレキシブルディスプレイである。0度姿勢時、ディスプレイ16は、
図2に示す第1筐体12A側の領域R1と第2筐体12B側の領域R2とが対向するように配置され、領域R1,R2間の境界領域である折曲領域R3が円弧状に折り曲げられた状態となる。
図2及び
図5に示す180度姿勢において、筐体12A,12Bは、互いに左右に並んで配置される。この際、ディスプレイ16は、領域R1,R2及び折曲領域R3がXY平面上に並んで配置され、全体として1枚の平板形状を成す。
【0025】
ディスプレイ16は、領域R1が第1筐体12Aに対して相対的に固定され、領域R2が第2筐体12Bに対して相対的に固定される。具体的には、
図5に示すように、領域R1の裏面16aが第1プレート44Aを介して第1筐体12Aと固定され、領域R2の裏面16aが第2プレート44Bを介して第2筐体12Bと固定される。
【0026】
図5に示すように、プレート44A,44Bは、ヒンジ装置14を間に挟むように左右に配置され、それぞれの表面44Aa,44Baでディスプレイ16を支持する。ディスプレイ16の裏面16aは、領域R1が第1プレート44Aの表面44Aaに粘着固定され、領域R2が第2プレート44Bの表面44Baに粘着固定される。プレート44A,44Bは、例えば炭素繊維にエポキシ樹脂等のマトリクス樹脂を含侵させた炭素繊維強化樹脂板と、この炭素繊維強化樹脂板の裏面の外周を囲むマグネシウム合金製の金属フレームとを有する構成である。
【0027】
ディスプレイ16の折曲領域R3は、筐体12A,12Bに対して相対移動可能である。180度姿勢時、折曲領域R3の裏面16aは、ヒンジ装置14で支持される(
図5参照)。0度姿勢時、折曲領域R3は、円弧状に折り曲げられ、裏面16aの一部がヒンジ装置14で支持され、大部分はヒンジ装置14から離間する(
図6参照)。
【0028】
図5、
図6に示すように、本実施形態のヒンジ装置14は、ヒンジ本体(ヒンジ)46と、第1サポートプレート48Aと、第2サポートプレート48Bとを有する。
【0029】
ヒンジ本体46は、筐体12A,12Bの端部12Aa,12Baを跨ぐ位置に設けられ、端部12Aa,12Baに沿ってY方向で略全長に亘って延在している。ヒンジ本体46の断面は第1筐体12Aと第2筐体12Bとの間で対称であって、2つの斜面46aとその間の頂面46bとによって台形をなしている。ヒンジ本体46は、アルミニウム等の金属材料で形成されたブロック状部品である。ヒンジ本体46には、180度姿勢でX方向に並ぶ2本のヒンジ軸が支持されている。
【0030】
図1及び
図5に示すように、ヒンジ本体46の外面には、背表紙部品49が取り付けられている。背表紙部品49は、ヒンジ本体46の外面形状に合わせた略U字状のプレートである。背表紙部品49は、例えばアルミニウム合金やステンレス等の熱伝導材料で形成されている。背表紙部品49は、外面品質を高めるための化粧カバーである。フレキシブル基板38,40,42は、端部12Aa,12Baを跨ぐ位置では、ヒンジ本体46と背表紙部品49との間を通過している。
【0031】
図5に示す180度姿勢時、ヒンジ本体46は、筐体12A,12B内に収納され、互いに近接した端部12Aa,12BaをX方向に跨ぐ。
図6に示す0度姿勢時、ヒンジ本体46は、大きく離間した端部12Aa,12Ba間に形成される隙間を塞ぐように配置される。この際、背表紙部品49が最外面に配置されることで、折り畳まれた電子機器10の外観意匠の低下を防止している(
図1参照)。
【0032】
すなわち背表紙部品49は、180度以外(例えば0度姿勢又は90度姿勢)の角度姿勢において、筐体12A,12B間に形成される隙間を覆う(
図1及び
図6参照)。これにより背表紙部品49は、この隙間から筐体12A,12Bの内部部品が外観に露呈することを防止する。背表紙部品49は、180度姿勢時には互いに近接した端部12Aa,12BaをX方向に跨ぐように配置され、筐体12A,12B内に収納される(
図5参照)。
【0033】
次に、サポートプレート48A,48Bは、アルミニウム等の金属材料で形成されたプレートであり、左右対称形状である。サポートプレート48A,48Bは、筐体12A,12Bの表側に設けられ、端部12Aa,12Baに沿ってY方向で略全長に亘って延在している。
【0034】
第1サポートプレート48Aは、第1プレート44Aとヒンジ本体46との間に配置される。第1サポートプレート48Aは、第1プレート44A側の縁部が所定のブラケットに対して回転軸を介して相対回転可能に連結されている。第1サポートプレート48Aは、ヒンジ本体46側の縁部がヒンジ本体46に対して相対移動可能である。第2サポートプレート48Bの構成及び取付構造等は、第1サポートプレート48Aと左右対称であるため、詳細な説明を省略する。
【0035】
サポートプレート48A,48Bは、筐体12A,12Bの回動動作に応じて揺動する。180度姿勢時、サポートプレート48A,48Bは、その表面でディスプレイ16の折曲領域R3の裏面16aを支持する。180度以外の角度姿勢では、サポートプレート48A,48Bは、ディスプレイ16との間に隙間を設けた状態、又はディスプレイ16を変形させない程度の僅かな力でディスプレイ16に接触する(
図6参照)。サポートプレート48A,48Bは、180度以外の角度姿勢でもディスプレイ16の折曲領域R3を支持し、その形状を矯正する構成としてもよい。このように、サポートプレート48A,48Bは、180度姿勢時にはディスプレイ16の折曲領域R3を平面で安定して支持する一方、折曲領域R3の折曲動作を阻害することはない。
【0036】
フレーム部材17Aにおける端部12Aaに沿う連結縁部50Aについて説明する。連結縁部50Aは、180度姿勢(
図5参照)において、フレーム部材17Bにおける端部12Baに沿う連結縁部50BとX方向についてほぼ対称で隣接する。また、連結縁部50Aと連結縁部50Bとは、0度姿勢(
図6参照)においてZ方向についてほぼ対称で対向する。連結縁部50Aと連結縁部50Bとは略対称形状であることから、連結縁部50Aのみ説明する。
【0037】
連結縁部50Aはフレーム部材17Aの一部であり、上記の通り適度な伝熱性を有している。連結縁部50Aは、背面形成部50Aa、中段部50Ab、低段部50Acを有する。背面形成部50Aaは、カバー部材18Aの端部と第1筐体12Aの端部12Aaまでの領域において該第1筐体12Aの背面を形成する部分である。背面形成部50AaにおけるX1側の内面には低い段差部50Adが形成されている。
【0038】
中段部50Abは背面形成部50AaからX2側に延在している部分である。中段部50Abにはカバー部材18Aが粘着テープ52によって固定される。背面形成部50Aaと中段部50Abとの間には段差があり、背面形成部50Aaとカバー部材18Aとはほぼ同一面を形成するようになっている。
【0039】
低段部50Acは中段部50Abから表面側にややシフトしてさらにX2側に延在している部分である。低段部50Acにはサーマルモジュール30の一部が固定される。
図5における中段部50Abの表面側、かつ低段部50AcのX1側には空間54が形成される。空間54にはフレキシブル基板38の一部が逆S字を描くように収納されている。また、第2筐体12Bにおける対称位置にも同様の空間があり、フレキシブル基板38の一部がS字を描くように収納されている。これにより電子機器10が0度姿勢から180度姿勢まで変形するのに対応してフレキシブル基板38が無理なく追従するようになっている。この部分の詳細についてはさらに後述する。
【0040】
図4、
図5に示すように、電子機器10は、第1筐体12A内に設けられた第1熱伝導部材78Aと、第2筐体12B内に設けられた第2熱伝導部材78Bとを有する。第1熱伝導部材78Aは、グラファイトシート80Aと、クッション部材82Aとを有する。第2熱伝導部材78Bは、グラファイトシート80Bと、クッション部材82Bとを有する。熱伝導部材78A,78Bは、略左右対称に配置されている。グラファイトシート80A,80Bおよび後述するグラファイトシート73,86,88,90は炭素の同素体であるグラファイト(黒鉛)をシート状に加工したものであり、高い熱伝導率を有する。グラファイトシート86,88,90は、例えば10μm~1mm程度の厚みを有し、薄く柔軟なシートである。これらのグラファイトシートは、銅シート又はアルミニウムシート等の熱伝導材料で形成されたシート状部材で置き換えてもよい。
【0041】
図4に示すように、グラファイトシート80A,80Bは、Y方向に延在するシート80Aa,80Baと、該シート80Aa,80Baと直交するようにX方向に突出する3つのシート80Ab,80Bbとを有する。シート80Aaは端部12Aaに沿い、シート80Baは端部12Baに沿っている。シート80Abとシート80Bbとは反対方向に突出している。
【0042】
クッション部材82A,82Bは、ゴムやスポンジ等のように、柔軟性及びある程度の反発力を有する材料で形成される。本実施形態のクッション部材82A,82Bは、スポンジである。クッション部材82A,82Bは、グラファイトシート80A,80BよりもZ方向の厚みが大きく、例えば1~2mm程度である。クッション部材82A、82Bは、シート80Aa,80Baとシート80Ab、80Bbの3つの交差点にそれぞれ配置されている。これにより熱伝導部材78A、78Bは、クッション部材82A、82Bが配置された各位置にグラファイトシート80A,80Bが盛り上がった土手状の膨出部84が形成されている。
【0043】
グラファイトシート80Aは連結縁部50Aの背面形成部50Aaおよび中段部50Abの表面側に貼り付けられている。クッション部材82Aおよびこれに対応した膨出部84は段差部50Adに配置されている。グラファイトシート80Bおよびクッション部材82Bは連結縁部50Bにおいて、グラファイトシート80Aおよびクッション部材82Aと略対称となる位置に設けられている。
【0044】
図5に示すように、クッション部材82A,82Bは、180姿勢度時にグラファイトシート80A、80Bを背表紙部品49に対して押し付ける。従って、膨出部84がある部分では、熱伝導部材78A,78Bが背表紙部品49に接触する。これにより、第1フレーム部材17Aはグラファイトシート80A,背表紙部品49およびグラファイトシート80Bを介して第2フレーム部材17Bと熱接続されることになり、第1筐体12Aと第2筐体12Bとの間で熱輸送がなされる。膨出部84は背表紙部品49の肩部に当接し、電子機器10が0度から180度に亘って変形する際に背表紙部品49に対する摺動距離は短く、該背表紙部品49の表面を変質させることがない。
図6に示すように、グラファイトシート80A,80Bは、0度姿勢時には背表紙部品49から離間しユーザから視認されないようになっている。
【0045】
次に、グラファイトシート86,88,90について説明する。上記のようにグラファイトシート86,88,90は、順にフレキシブル基板38,40,42における少なくとも第1筐体12Aから第2筐体12Bに亘る箇所において積層され、伝熱性の粘着テープなどによって貼り付けられている。以下、代表的に互いに貼り付けられたグラファイトシート86とフレキシブル基板38とについて説明する。グラファイトシート86は帯状であって、フレキシブル基板38とX方向の幅が等しい。互いに貼り付けられたグラファイトシート86とフレキシブル基板38とを積層体100とする。
【0046】
図5に示すように、グラファイトシート86とフレキシブル基板38とは第1筐体12Aから第2筐体12Bに亘る箇所において積層されていることから同じ配策経路となっている。したがって、積層体100は第1筐体12Aの空間54および第2筐体12Bにおける対応する空間でS字および逆S字を描くように収納されている。また、グラファイトシート86とフレキシブル基板38とは、背表紙部品49とヒンジ装置14との間の経路に配置されていることから、背面側は背表紙部品49で覆われて視認されない。また、表面側はディスプレイ16で覆われる。
【0047】
積層体100は、第1筐体12A内の空間54から連結縁部50Aの低段部50Acとディスプレイ16との隙間をX2方向へ延在する。この隙間を抜けたフレキシブル基板38はマザーボード20に接続される。一方、グラファイトシート86は、U字状の折返し部86aを形成し、一端部86bが低段部50Acの背面に至りヒートパイプ60によって伝熱性ラバー72を介して低段部50Acとの間で積層・挟持されて熱接続される。つまり、グラファイトシート86の一端部86bは、サーマルモジュール30および連結縁部50Aに対して熱接続されている。なお、この実施例ではグラファイトシート86の一端部86bは、ヒートパイプ60と低段部50Acとにより挟持されることにより熱接続されているが、熱接続の状態が保たれればこの三者の積層順は問われず、例えばグラファイトシート86の経路を変更するなどして積層順を変えてもよい。
【0048】
また、積層体100は第2筐体12B内において、第1筐体12A内と略対称に配置されており、グラファイトシート86の他端部86cはフレーム部材17Bやその一部である連結縁部50Bなどに対して熱接続されている。したがって、CPU20aなどの発熱体の熱はサーマルモジュール30からその端部であるヒートパイプ60に伝わり、さらに該ヒートパイプ60と低段部50Acとによって積層・挟持された一端部86bに伝えられてグラファイトシート86により第1筐体12Aから第2筐体12Bへと熱輸送がなされる。
【0049】
また、上記のとおり、ヒートパイプ60の熱は低段部50Acから連結縁部50A、第1熱伝導部材78A、背表紙部品49、第2熱伝導部材78B、および連結縁部50Bへと熱輸送される。これらの作用により、電子機器10では第1筐体12Aと第2筐体12Bとの間の温度バランスを調整することができる。第1筐体12Aでは温度上昇が適度に抑制されるためファンなどの他の冷却手段を省略することができる。ファンなどの機械的動作要素を省略することでコスト低減、騒音低減および薄型化を図ることができる。
【0050】
以下、第1筐体12Aの内部およびヒンジ本体46に沿う積層体100の構成および作用についてさらに説明する。なお、積層体100の第2筐体12B内部の態様については第1筐体12A内部と略対称であることから説明を省略する。
【0051】
図7は、180度姿勢時の空間54内およびヒンジ本体46に沿う積層体100の状態を示す断面側面図である。
図8は、0度姿勢時の空間54内およびヒンジ本体46に沿う積層体100の状態を示す断面側面図である。
【0052】
第1筐体12Aにおける内部の空間54で、積層体100は並んで互いに逆向きに湾曲した第1折返し部102a及び第2折返し部102bを有する略S字形状の余長吸収部104を形成している。第1折返し部102aはX1側で第2折返し部102bはX2側とする第1折返し部102aおよび第2折返し部102bは所謂ヘアピンカーブの形状をなす。。
【0053】
積層体100は、180度姿勢(
図7参照)においてヒンジ本体46の斜面46aが空間54にやや接近しており、必要とされる経路長が短いのに対して、0度姿勢(
図8参照)において斜面46aが空間54からやや離間することから経路長が長くなる。このように電子機器10が0度姿勢から180度姿勢まで変形するのに対応して、余長吸収部104によって積層体100が無理なく追従するようになっている。つまり、余長吸収部104は180度姿勢ではやや大きいのに対して、0度姿勢ではやや小さくなっている。
【0054】
なお、本実施の形態では、180度姿勢において積層体100が背表紙部品49の縁部49aの前後でV字形状をなすのに対して、0度姿勢ではV字形状がなくなる。このV形状は積層体100の弛みに相当することから余長吸収部104とともに、余長吸収の作用がある。
【0055】
180度姿勢では、余長吸収部104はやや大きいS字を形成し、第1折返し部102aと第2折返し部102bとは、それらの中間部106を基準としてほぼ点対称の形状となっている。積層体100は、第1筐体12Aから第2筐体12Bへ向かうに従って第1折返し部102aでは時計方向に湾曲しており、第2折返し部102bでは反時計方向に湾曲している。つまり、中間部106は変曲点を含んでいる。この場合の変曲点とは所定の1点に限らず直線状の場合を含む。180度姿勢では、余長吸収部104がやや大きいS字を形成していて中間部106はほぼ直線状となっている。
【0056】
0度姿勢では、余長吸収部104はやや小さいS字を形成し、サポートプレート48Aなどの影響もあってやや歪み第1折返し部102aと第2折返し部102bとは多少異なる形状となり得る。このように余長吸収部104がやや小さく歪んでいる場合であっても、中間部106における変曲点を含む部分は短いながら直線を形成する。
【0057】
積層体100のフレキシブル基板38とグラファイトシート86とは前段固定箇所108a、および後段固定箇所108bが粘着テープ110a,110bで相互に固定されている。後段固定箇所108bは、第1筐体12Aおよび第2筐体12B内の各余長吸収部104に対して共通となっている。第1筐体12Aから第2筐体12Bへ向かう方向を基準として、前段固定箇所108aは余長吸収部104の前段にあり、具体的には空間54よりもX2側で低段部50Acと対面する箇所である。後段固定箇所108bは余長吸収部104の後段にあり、具体的にはヒンジ本体46の頂面46bと対面する箇所である。このように積層体100は、フレキシブル基板38とグラファイトシート86とが余長吸収部104の前後で相互に固定されていることから、余長吸収部104の形状が変化しても互いの位置にずれが生じない。
【0058】
フレキシブル基板38とグラファイトシート86とは、さらに中間部106において粘着テープ110cで相互に固定されている。つまり、中間部106は中段固定部となっている。粘着テープ110cは少なくとも0度姿勢から180度姿勢に亘って第1折返し部102aと第2折返し部102bとの変曲点を含む箇所に設けるとよい。このように、余長吸収部104の前後および中間部106でフレキシブル基板38とグラファイトシート86とが互いが固定されていると、フレキシブル基板38およびグラファイトシート86のいずれもS字形状が維持される。これにより、余長吸収部104でフレキシブル基板38とグラファイトシート86とが離間することがなく、例えばグラファイトシート86が
図7の仮想線で示すように、低段部50Acの隅部に触れ、または低段部50Acと第1プレート44Aとの間に嵌り込むことがない。したがって、第1筐体12Aと第2筐体12Bとが回動することによってグラファイトシート86とこれらの構造材とが接触および摺動することが防止され、異音の発生を防止することができる。グラファイトシート86の表面は比較的粗いため摺動時に摺動音を生じやすいとも考えられるが、前記のとお中間部106の粘着テープ110cの固定により異音の発生が防止される。
【0059】
余長吸収部104は、第1折返し部102aと第2折返し部102bとを除きこれらの中間部106だけが粘着テープ110cで固定されていることから、第1折返し部102aおよび第2折返し部102bは厚みが抑制されるとともに、曲率変化によるフレキシブル基板38とグラファイトシート86との僅かなずれを許容してS字が大小に変形しやすく、積層体100の余長を吸収しやすい。
【0060】
中間部106はS字が大小に変形する際に曲率の変化がほとんどない箇所であり、フレキシブル基板38とグラファイトシート86とを固定する箇所として好適である。また、中間部106はS字形状の変曲点を含んでいる直線状の箇所であって静止時に屈曲がなく、動作時にも屈曲の変化がないため、フレキシブル基板38とグラファイトシート86とが剥がれることなく確実に固定することができる。
【0061】
なお、本実施例では
図7の仮想線で示したように、主にグラファイトシート86が他の構造材と接触および摺動することが防止されるが、積層体100におけるフレキシブル基板38とグラファイトシート86との積層が逆である場合には、フレキシブル基板38が他の構造材と接触および摺動することが防止する。一般にフレキシブル基板38はグラファイトシート86よりも表面が滑らかであるが多少の摺動音を生じる懸念はあり、中間部106の粘着テープ110cの固定により異音の発生が防止される。
【0062】
余長吸収部104が形成される空間54は
図7、
図8に示す箇所に限らず、第1筐体12Aの内部における他の箇所でもよい。このような余長吸収部104は第1筐体12Aおよび第2筐体12Bの両方に設けられているが、例えばキーボードを備える本体筐体とディスプレイを備えるディスプレイ筐体とがヒンジによって回動可能に構成されたノート型PCの場合には、本体筐体だけに設けてもよい。つまり、設計条件によりフレキシブル基板38とグラファイトシート86とは、2つの筐体の少なくとも一方の内部で余長吸収部104を形成し、そのS字の中間部106で互いが固定されていればよい。第1筐体12Aと第2筐体12Bとの間で熱輸送の必要性が低く、かつ一層多くの信号線が必要である場合には、フレキシブル基板38に対してグラファイトシート86に代えて他のフレキシブル基板(シート)を積層させて積層体100を構成してもよい。
【0063】
また、本実施の形態にかかる電子機器10では、フレキシブル基板38とグラファイトシート86との積層体100は、余長吸収部104の前後で第1折返し部102aおよび前記第2折返し部102bと対面する箇所に摺動シート112a,112bが設けられている。
【0064】
摺動シート112aは前段側でグラファイトシート86の表面に貼られており、第2折返し部102bにおけるグラファイトシート86との摺動を滑らかにしてこれらの間で生じる摩擦音を抑制する。グラファイトシート86同士が摺動すると摺動音を生じやすいが、間に摺動シート112aが介在することで異音を抑制できる。
【0065】
摺動シート112bは後段側でフレキシブル基板38の表面に貼られており、第1折返し部102aにおけるフレキシブル基板38との摺動を滑らかにしてこれらの間で生じる摩擦音を抑制する。フレキシブル基板38同士の摺動音はグラファイトシート86同士の摺動音よりは小さいが、間に摺動シート112bが介在することで異音を一層抑制することができる。
【0066】
摺動シート112a,112bは形状が変化する折返し部102a,102bではなく曲率変化のない筐体側に設けられていることから剥がれにくく、折返し部102a,102bの形状変化の支障とならない。
【0067】
第1熱伝導部材78Aのグラファイトシート80Aにはほぼ全長に亘って摺動シート112cが設けられている。摺動シート112cはグラファイトシート80Aと積層体100におけるグラファイトシート86との間に介在し、これらの間で生じる摩擦音を抑制する。
【0068】
摺動シート112a~112cは摺動特性、耐摩耗性に優れるシートであり、例えばテフロン(登録商標)である。摺動シート112a~112cの固定手段は、図示を省略するが、例えば粘着テープを用いればよい。
【0069】
さらに、本実施の形態にかかる電子機器10では、積層体100は、ヒンジ本体46が形成する台形の2つの斜面46aおよびこれらの間の頂面46bに対してそれぞれ粘着テープ114で固定されている。3つの粘着テープ114はそれぞれ台形の角部46cを除く部分に設けられており不連続となっている。
図7では、粘着テープ114のうち斜面46aに貼られているものに符号114a、頂面46bに貼られているものに符号114bを付記する。
【0070】
積層体100は可撓性と多少の曲げ剛性とを有しており、電子機器10に対する組み付け前の初期状態では直線状であり、組み付け後の角部46cに対面する箇所では直線に復帰しようとする弾性力が僅かに発生する。これに対し、積層体100はヒンジ本体46に対して角部46cで不連続となるように粘着テープ114で固定されているため、該角部46cに対面する箇所の厚みおよび曲げ剛性が抑制されて好適な可撓性が保たれる。したがって、積層体100は台形のヒンジ本体46に対して一方の斜面46a~頂面46b~他方の斜面46aに亘って沿って無理なく粘着固定され剥がれることがない。
【0071】
また、電子機器10では筐体12A,12Bを0度姿勢と180度姿勢との間で回動することで、積層体100にはヒンジ本体46の裾部46dに対面する箇所で繰り返しの曲げ応力が作用する。仮に、積層体100が角部46cに対面する箇所を含めて粘着テープ114で固定されていると、厚みおよび剛性が大きくなってこの部分で剥離する力が生じ、さらに裾部46dの曲げ応力が相乗的に作用することで、
図7の仮想線で示すように積層体100が斜面46aから剥離する懸念がある。そうすると、積層体100はヒンジ本体46に対して粘着テープ114bだけで固定されている状態となり、斜面46aや背表紙部品49に対して接触および離間を繰り返して異音を発生することになる。本実施の形態では上記のとおり角部46cに対面する箇所で積層体100が剥離することがなく、異音の発生がない。
【0072】
角部46cに対面する箇所で積層体100がヒンジ本体46に非固定であると斜面46aの粘着テープ114aの剥離が防止されるため、頂面46bの粘着テープ114bは省略してもよいが、該粘着テープ114bにより積層体100が一層確実に固定されるとともに、組み立て時においてヒンジ本体46に対する位置決めが容易となる。
【0073】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0074】
10 電子機器
12A 第1筐体
12B 第2筐体
14 ヒンジ装置
38,40,42 フレキシブル基板
46 ヒンジ本体(ヒンジ)
46a 斜面
46b 頂面
46c 角部
49 背表紙部品
54 空間
73,80A,80B,86,88,90 グラファイトシート(シート)
100 積層体
102a 第1折返し部
102b 第2折返し部
104 余長吸収部
106 中間部
108a 前段固定箇所
108b 後段固定箇所
110a,110b,110c 粘着テープ
112a,112b,112c 摺動シート
114,114a,114b 粘着テープ