(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090127
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】筋力維持のための剤
(51)【国際特許分類】
A61K 38/39 20060101AFI20240627BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240627BHJP
A61K 35/32 20150101ALI20240627BHJP
【FI】
A61K38/39
A61P21/00
A61K35/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205809
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000119472
【氏名又は名称】一丸ファルコス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】ワイズ 里沙
(72)【発明者】
【氏名】濱田 朋志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 達治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢一
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084CA18
4C084DA40
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA94
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB46
4C087CA06
4C087CA16
4C087CA17
4C087MA02
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA94
(57)【要約】
【課題】ヒト等に用いられるための筋力維持のための剤などを提供する。
【解決手段】プロテオグリカンとコラーゲンとを含む軟骨成分混合物を含有する、筋力維持のための剤。軟骨を、0.03質量%以上4質量%未満の酢酸水溶液中に浸漬して軟骨成分抽出液を得る工程と、得られた抽出液から軟骨成分を回収する工程とを含む、プロテオグリカン及びコラーゲンを含む軟骨成分混合物の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテオグリカンとコラーゲンとを含む軟骨成分混合物を含有する、筋力維持のための剤。
【請求項2】
軟骨を、0.03質量%以上4質量%未満の酢酸水溶液中に浸漬して軟骨成分抽出液を得る工程と、得られた抽出液から軟骨成分を回収する工程とを含む、プロテオグリカン及びコラーゲンを含む軟骨成分混合物の製造方法。
【請求項3】
前記酢酸水溶液の濃度が0.5質量%以上3質量%以下である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
コラーゲンの含有率が、固形分換算で少なくとも20質量%である請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
プロテオグリカンの分子量が40万~65万である請求項2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト及びヒト以外の動物などに用いるための筋力維持のための剤(素材)、などに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトにおいて、加齢などによって、例えば骨格筋の筋肉量及び筋力は低下し、筋萎縮も生じる。ヒトにおいて、筋肉量の減少によって基礎代謝量が低下するためメタボリックシンドロームを生じさせる可能性も高くなる。超高齢化社会を迎える日本において、筋力維持することは、ヒトの健康寿命延長の観点から重要な事項であると考えられている(非特許文献1)。
【0003】
筋萎縮は、廃用性筋萎縮と進行性筋萎縮とに大別され、このうち、廃用性筋萎縮には、長期の不活動によって生じる骨格筋の顕著な変化であり、筋線維径の減少等の量的変化及び筋線維、筋タンパク質レベルでのタイプ移行といった質的変化であり、例えば、長期間の安静臥床や骨折等によるギプス固定、微小重力暴露(宇宙空間等での生活)、加齢過程等によって生じる(特許文献1)。
【0004】
例えば、高齢者の場合、筋力の低下が誘導され、それがもとで転倒などによる骨折のリスクが増加し、寝たきりなど要介護状態に陥る場合も多い。この筋萎縮を改善する方法として筋力トレーニング、ウェイトトレーニング、有酸素運動などの運動が効果的であると考えられているが、運動することのできない介護状態の方などの筋萎縮を予防及び/又は改善するための方法(運動以外の方法)が求められている(非特許文献1)。
【0005】
また、例えば、肥満で運動習慣の無い中高年の方及び糖尿病患者など(サルコペニア肥満の方も含め)において、膝の伸展筋力の減少、下肢の除脂肪重量の減少などが起こる可能性が高いことが示されている。当該患者に対しても、筋萎縮を予防及び/又は・改善するための方法(には運動以外の方法)が求められている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Jpn J Rehabil Med 2007 ; 44 : 144-170
【非特許文献2】日老医誌2014;51:99―108
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ヒト等に用いられるための筋力維持のため素材(剤)などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、本発明者は、筋力維持を発揮する作用を持つ物質(天然物から抽出される物など)を探索した結果、本発明を発明した。
【0010】
本発明は、以下の実施形態を含む。
(1)プロテオグリカンとコラーゲンとを含む軟骨成分混合物を含有する、筋力維持のための剤。
(2)(1)に記載の剤を含有する、経口組成物。
(3)ヒト成人1日当り、当該軟骨成分混合物を、好ましくは0.5mg/日~50mg/日摂取する、(2)に記載の経口組成物。
(4)軟骨を、0.03質量%以上4質量%未満の酢酸水溶液中に浸漬して軟骨成分抽出液を得る工程と、得られた抽出液から軟骨成分を回収する工程とを含む、プロテオグリカン及びコラーゲンを含む軟骨成分混合物の製造方法。
(5)前記酢酸水溶液の濃度が0.5質量%以上3質量%以下である(4)に記載の製造方法。
(6)コラーゲンの含有率が、固形分換算で少なくとも20質量%であるに記載の製造方法。
(7)プロテオグリカンの分子量が40万~65万であるに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の剤などは、ヒト等に用いられるための筋力維持のために用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、軟骨成分混合物の製造例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
(軟骨成分混合物)
本発明の製造方法により得られる生産物は、プロテオグリカンと共に、その他の軟骨成分を含む混合物である。このプロテオグリカン以外の軟骨成分としては、コラーゲン及びヒアルロン酸を含むがこれらに限定されない。軟骨とは、脊椎動物の鼻、肋骨、関節、気管の周囲、耳殻、椎間板などに存在する結合組織の1つであり、細胞外基質と、軟骨細胞との複合体をいう。軟骨における細胞外基質を、軟骨基質という場合もある。軟骨基質の主成分は、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸及びプロテオグリカンなどを含む。
【0015】
プロテオグリカン(以下「PG」と記載することもある)は、タンパク質をコアとして、コンドロイチン硫酸やデルマタン硫酸等のグリコサミノグリカンが共有結合した複合多糖であり、動物組織、特に軟骨組織に多く存在する。プロテオグリカンは生体内で、コア蛋白質がさらにヒアルロン酸に結合した構造で存在することも知られており、その分子量は、数万~数千万と大きい。軟骨由来の典型的なプロテオグリカンは、アグリカン(Aggrecan)と称される。
【0016】
コラーゲンはアミノ酸が鎖状につながった分子量約10万のポリペプチド分子が3本集まったらせん構造を有しており、これが繊維状あるいは膜状の構造体を形成するものである。コラーゲンを構成するアミノ酸の種類と数は極めて特徴的で、その特徴の一つとして,一般的なタンパク質を構成する20種類の基本アミノ酸には含まれないヒドロキシプロリンやヒドロキシリジンといったアミノ酸を含む。これらのアミノ酸はコラーゲンとその近縁の限られたタンパク質にしか含まれない特殊なアミノ酸であり、特にヒドロキシプロリンはコラーゲン中の全アミノ酸の約10%を占めている。このため、ヒドロキシプロリンがコラーゲン量の目安と考えることができるものである。アミノ酸組成の違いによるコラーゲンの種類は特に限定されないが、軟骨に多く含まれるコラーゲンとしてII型コラーゲンが好ましい。
【0017】
ヒアルロン酸は、N-アセチルグルコサミンとグルクロン酸とが結合した二糖単位がつながった鎖状構造を有する、ムコ多糖高分子化合物である。その他の軟骨成分としては、ラミニン、フィブロネクチン、エラスチンなどを挙げることができる。
【0018】
(軟骨成分混合物の製造例)
本発明で用いられる軟骨成分混合物の製造方法(製造例)は、例えば、低濃度の酢酸水溶液を用いて軟骨成分を抽出する方法である。
図1は、この製造例の典型的な実施形態を示す工程図である。この製造例は、冷凍軟骨を酢酸水溶液に浸漬して軟骨成分抽出液を得る抽出工程(S10)と、得られた抽出液から軟骨成分を回収する回収工程(S20)とを含む。
【0019】
抽出工程(S10)で用いる酢酸水溶液の濃度の下限は、プロテオグリカンの抽出効率を上げる観点などから、0.03質量%以上であればよく、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.25質量%以上がさらに好ましい。一方、酢酸水溶液における酢酸濃度の上限は、同時に抽出されるコラーゲンの抽出効率を上げる観点などから、4質量%未満であればよく、3.5質量%以下が好ましく、3.1質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。
【0020】
回収工程(S20)は、さらに具体的には、残った軟骨を除去する固液分離工程(S21)と、回収した抽出液から脂質等を除去する脱脂工程(S22)と、ろ過工程(S23)と、精製工程(S24)と、乾燥工程(S25)とを含む。
【0021】
脱脂工程(S22)では、プロテオグリカン抽出液を粉末セルロース及び/又は吸油マットなどを用いることにより、混入すると考えられる脂質など成分を簡便に吸着除去する。ろ過工程(S23)では、ろ紙等を用いる通常の方法により脂質等除去後の抽出液を得る。ファインメッシュや限外濾過膜を用いてもよい。例えば、適当な分画分子量を有する分離膜等で固液分離することにより、抽出液を回収する。マグネットトラップ等の通常の方法にて不溶物を除去した後、乾燥工程(S25)では得られたろ液を真空凍結乾燥機により固形物にしてもよい。あるいは、スプレードライヤーで乾燥させ、粉末状固形分とすることもできる。
【0022】
この第2の実施形態により得られるプロテオグリカンを含む軟骨成分混合物におけるプロテオグリカンの分子量は、好ましくは、40万~65万である。
【0023】
本発明で用いる軟骨成分混合物の1日あたりの摂取量(経口組成物での摂取の場合)は、摂取形態、使用目的、年齢、体重などによって適宜調整することができるが、所望の効果(筋萎縮の抑制効果など)が発揮されるために、ヒト成人1日当り、好ましくは0.1mg/kg/日以上、より好ましくは0.5mg/kg/日以上、より好ましくは1mg/kg/日以上、より好ましくは2mg/kg/日以上、より好ましくは3mg/kg/日以上、より好ましくは4mg/kg/日以上、更に好ましくは5mg/kg/日以上であり、当該摂取の際のヒト等での安全性などの観点で、好ましくは10mg/kg/日以下、より好ましくは8mg/kg/日以下、更に好ましくは6mg/kg/日以下、である。
【0024】
(筋力維持のための剤)
本発明に係る筋力維持のための剤の形態は、特に限定されるものではないが、例えば液体の形態、固体の形態、粉末状の形態などが挙げられる。
【0025】
(筋力維持)
筋力維持は、例えば、筋萎縮の抑制、筋肉量の増加及び/又は維持、である。
【0026】
(経口組成物)
本発明に係る経口組成物は、例えば飲食品(機能性表示食品、特定保健用食品、サプリメントなども含む)、医薬品などである。
【0027】
例えば、当該経口組成物が飲食品の場合、当該飲食品の形態は、パン類、ケーキ類、麺類、菓子類、ゼリー類、冷凍食品、アイスクリーム類、乳製品、飲料などの各種飲食品の他、上述した経口投与製剤と同様の形態(錠剤、カプセル剤、シロップ等)が挙げられる。種々の形態の食品は、本発明の有効成分を単独で、または他の食品材料や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香科、安定剤、着色剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤等を適宜組み合わせて調製することができる。
【0028】
例えば、当該経口組成物が医薬品の場合は、当該医薬品は一般的に苦痛の程度に従って調整することができる好都合の1日投薬レジメンを組み立てやすいが、当該医薬品の形態は、例えば固体の形態、液体の形態である。当該固体の形態は、例えば、粉末剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、トローチ剤、坐剤および分散性顆粒剤などが挙げられる。例えば、粉末剤では、担体は一般に、微粉化した活性成分との混合物である微粉化した固体である。例えば、錠剤では、活性成分は一般に、必要な結合能力を有する担体と適切な割合で混合され、所望の形状および大きさに成形される。適切な担体は、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、カカオバター等を非限定的に含むこともある。当該医薬品は、所望の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて賦形剤、安定剤、保存剤、結合剤、崩壊剤、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、pH調整剤、防腐剤等の成分を含有することもできる。
【0029】
筋萎縮は、筋肉がやせることである。筋が萎縮すると筋力も低下する。筋萎縮には、例えば、筋肉自体の病気による場合(筋原性筋萎縮)と、筋肉に運動の指令を直接伝えている運動神経の障害による場合(神経原性筋萎縮)がある。一般に、筋肉の病気では肩から二の腕や腰回りから太ももにかけての筋肉(近位筋)が萎縮しやすいが、神経の病気では手足の先の筋肉(四肢の遠位筋)が萎縮しやすい。代表的な筋肉の病気には、筋ジストロフィーなどの遺伝性筋疾患、多発筋炎・皮膚筋炎などの炎症性筋疾患がある。神経原性筋萎縮の多くは末梢神経の障害(ニューロパチー)により生じ、これにも外傷や圧迫によるもの、炎症性のもの、遺伝性のものなど多様な原因がある。
【0030】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。なお、以下の実施例において、本発明の剤などに含有される成分等の含有量を示す数値の単位%は、質量%を意味する。
【実施例0031】
以下、本発明の実施例について、説明する。
【0032】
[実施例1~8:プロテオグリカンとコラーゲンとの粉末混合物(軟骨成分混合物)の製造]
-30℃~-20℃で冷凍保管したシロサケの頭部から摘出した鼻軟骨を400g用意し、出発原料とした。これに比較例1及び実施例1~8に係る種々の濃度の酢酸水溶液2000mLを投入し、抽出温度30℃~40℃で48~72時間抽出した。比較例1及び実施例1~8に係る種々の濃度(%)、抽出温度(℃)及び抽出時間(hr、時間)は、表1に示す通りである。
【0033】
この抽出液を濾紙No.26(110mm)でろ過し、不溶物を除去した。次に、液量に対し2%の粉末セルロース(日本製紙社製、商品名「KCフロックW-400G」)を加え30分撹拌後ろ過した。ろ液を分画分子量5万の中空糸膜を用いて液量が1/10になるまで濃縮した。さらに水で希釈しながら濃縮と精製とを繰り返し、最終的に500~800gの濃縮液(pH6~7)を得た。そして、得られた濃縮液を凍結乾燥し、10~20gのプロテオグリカンとコラーゲンの混合物(凍結乾燥物)を得た。
【0034】
得られた凍結乾燥物についての以下項目を測定した。その結果を以下表1に示す。
・PG収率(%):「((得られた凍結乾燥物中のプロテオグリカンの含有量)/(当該鼻軟骨の重量400(g)))×100」にて算出された値(%)
・PG分子量(×104):プロテオグリカン分子量。例えば表1の実施例1の「56」の記載は分子量が560,000(56万)を示す。
・PG含有比率:比較例1の凍結乾燥物中のプロテオグリカンの含有量を100として、各実施例の凍結乾燥物中のプロテオグリカンの含有量の相対値(比較例1と比較して示す相対値)。
・コラーゲン含有率(%):凍結乾燥物中のコラーゲン含有率
・「―」:測定していないことを示す。
【0035】
(プロテオグリカン(PG)の定量方法)
比較例1及び実施例1~8に係る製造方法で得られた乾燥品約1gを精密に量り、リン酸緩衝液(pH6.8)を加えて正確に10mLとしたものを試料溶液とした。各試料溶液を、0.45μmメンブレンフィルターを通した後、以下の操作条件でHPLCを行い標準品の検量線からプロテオグリカン量を求めた。なお、検量線の作成は、プロテオグリカン標準品(サケ鼻軟骨由来、富士フイルム和光純薬、162-22131)を、室温減圧デシケーター(シリカゲル)で3時間乾燥してから採取したものを精密に量り取り、試料と同じリン酸緩衝液に溶解して検量線作成用標準液を調製した。また、分子量マーカーとして、Shodex STANDARD P-82(昭和電工社製)を用いて作成した検量線からピークトップの分子量を求めた。
【0036】
操作条件
分析計:HPLC分析装置
検出器:示差屈折率検出器(RID-10A 島津製作所製)
カラム:ゲルろ過カラム(東ソー株式会社製TSKgel G5000PWXL)
カラム温度:40℃
試料注入量:50μL
移動相:リン酸緩衝液(pH6.8)
流量:0.5mL/min
【0037】
(コラーゲンの定量方法)
コラーゲンは、一般的なタンパク質には含まれないヒドロキシプロリンとヒドロキシリジンを含むという特徴がある。ヒドロキシプロリンはコラーゲン中の全アミノ酸の約10%を占めるといわれ、このヒドロキシプロリンを定量することによってコラーゲン量を推定することが可能である(皮革科学、vol.56、No.2、p71-79、2010「天然素材コラーゲンの機能性」)。比較例1及び実施例1~8に係る製造方法で得られた乾燥品試料を、このヒドロキシプロリン量を測定することによりコラーゲン含有率を算出した。
【0038】
【0039】
表1に示すように、比較例1に比べ、実施例1~8では、プロテオグリカンの収率等が向上していることが確認できた。
[実験1:筋力維持の評価]
実験動物(マウス)を用いて、上述の実施例4の軟骨成分混合物を含有する経口組成物についての筋肉の萎縮抑制作用の評価(実験)を行った。この評価は、腓腹筋及びヒラメ筋の重量の測定により行った。
【0040】
以下実験方法を記載する。まず、7週齢の雄のDDYマウス(紀和実験動物研究所社)20匹を入手した。当該入手したマウスを1週間の通常飼育(通常の餌及び水を自由に与える飼育)を行った。
【0041】
当該1週間の通常飼育をした後、1群10匹として以下の2つの実験群を設定し、下記設定による飼育(通常の餌及び飲水)を4週間(28日間)行った。群1はさらに毎日以下条件にて、ゾンデを用いてさらに経口投与を行った。
・コントロール群:飲水のみ行った与群。
・群1:実施例4の軟骨成分混合物を当該マウスへ66.67mg/kg/day与えた群。マウスへ当該66.67mg/kg/day与えることは、マウスにおけるヒト等価用量(Human equivalent dose、HED)12.3(資料「Guidance for Industry Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers」参照)を基に、ヒト成人への投与量に換算した場合、ヒト成人(60kg)へ当該軟骨成分混合物を5.42mg/kg/day与えることである。
【0042】
当該7週間の飼育後、マウスの体重を測定し麻酔下にて各群のマウスから、腓腹筋(ヒラメ筋の外側にある筋肉)、ヒラメ筋、を摘出した。当該摘出した腓腹筋及びヒラメ筋の重量の測定を行った。
【0043】
以下測定した結果を以下表2に記載する。この測定は、各群(10匹ずつ)の腓腹筋及びヒラメ筋(左右)を1匹ずつ測定した。以下測定した結果は、各群の1匹あたりの左右の筋肉の合計量の平均(g)である。各群の体重の変化は確認されなかった。しかし、群1において、コントロール群と比べ、腓腹筋の重量の増加(p<0.01、スチューデントのt検定(Student t-test)にて有意差測定)及びヒラメ筋の重量の増加が確認された。
【0044】
【0045】
以上、本発明の実施の形態(実施例も含め)について、図面を参照して説明してきたが、本発明の具体的構成は、これに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、設計変更等があっても、本発明に含まれるものである。