(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090129
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】探傷装置及び探傷方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/91 20060101AFI20240627BHJP
G06V 10/20 20220101ALI20240627BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240627BHJP
【FI】
G01N21/91 A
G06V10/20
G06T7/00 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205814
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】390002808
【氏名又は名称】マークテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100125313
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 謙二
【テーマコード(参考)】
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G051GB01
2G051GB02
2G051GB03
2G051GB04
2G051GC04
2G051GC17
2G051GC18
2G051GD02
5L096BA03
5L096EA07
5L096EA43
(57)【要約】
【課題】従来よりも正確に欠陥指示模様を抽出することができる探傷装置及び探傷方法を提供すること。
【解決手段】実施形態の探傷装置は、浸透探傷試験の被試験体を撮像した画像の第1の色成分と、前記被試験体を撮像した前記画像の前記第1の色成分よりも前記浸透探傷試験に用いる浸透液の色に含まれる量が少ない第2の色成分との差の絶対値を画素ごとにとった画像、画素ごとに前記第1の色成分を前記第2の色成分で減算した画像、及び画素ごとに前記第2の色成分を前記第1の色成分で除算した画像の少なくともいずれかの、前記第1の色成分と前記第2の色成分を合成した合成画像を生成する合成部を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸透探傷試験の被試験体を撮像した画像の第1の色成分と、前記被試験体を撮像した前記画像の、前記第1の色成分よりも前記浸透探傷試験に用いる浸透液の色に含まれる量が少ない第2の色成分との差の絶対値を画素ごとにとった画像、画素ごとに前記第1の色成分を前記第2の色成分で減算した画像、及び画素ごとに前記第2の色成分を前記第1の色成分で除算した画像の少なくともいずれかの、前記第1の色成分と前記第2の色成分を合成した合成画像を生成する合成部を備える探傷装置。
【請求項2】
前記被試験体を撮像した前記画像は、前記被試験体に対する現像剤の塗布後に撮像した画像である、請求項1に記載の探傷装置。
【請求項3】
前記合成画像を二値化する二値化部をさらに備える、請求項1に記載の探傷装置。
【請求項4】
前記第1の色成分は、前記被試験体を撮像した前記画像に用いられる複数の色成分の中で最も前記浸透液に含まれる量が多い色成分であり、
前記第2の色成分は、前記複数の色成分の中で最も前記浸透液に含まれる量が少ない色成分である、請求項1に記載の探傷装置。
【請求項5】
浸透探傷試験の被試験体を撮像した画像の第1の色成分と、前記被試験体を撮像した前記画像の、前記第1の色成分よりも前記浸透探傷試験に用いる浸透液の色に含まれる量が少ない第2の色成分との差の絶対値を画素ごとにとった画像、画素ごとに前記第1の色成分を前記第2の色成分で減算した画像、及び画素ごとに前記第2の色成分を前記第1の色成分で除算した画像の少なくともいずれかの、前記第1の色成分と前記第2の色成分を合成した合成画像を生成する、探傷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸透探傷試験において欠陥を検出するための探傷装置及び探傷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浸透探傷試験と呼ばれる検査方法が知られている。浸透探傷試験は、非破壊検査方法の一種である。浸透探傷試験は、JIS(Japanese Industrial Standards) Z 2343-1~6などに規格化されている。浸透探傷試験の基本的な手順の一例を以下1)~5)に示す。
1)浸透性の強い浸透液を被検査物表面に付着させる。これにより浸透液を被検査物表面の開口欠陥部に浸透させる。浸透液は、例えば、赤色染料を溶解させた染色浸透液又は蛍光浸透液である。
2)開口欠陥部内に浸透せずに被検査物表面に残留している余剰浸透液を除去する。
3)被検査物表面に炭酸マグネシウム粉末又は炭酸カルシウム粉末などの無機質白色粉末(当業者間では「現像剤」と呼ばれている。)の薄層を形成する。
4)現像剤層によって開口欠陥部内に浸透している浸透液を現像剤層表面に吸い出させること(以下「現像処理」という。)によって欠陥指示模様を現出させる。
5)被検査物を観察して開口欠陥部の存在及び位置を検出する。染色浸透液の場合は自然光又は白色光の下、肉眼又はデジタルカメラ等で撮影した画像により観察する。また、蛍光浸透液の場合はブラックライト等の照射の下、デジタルカメラ等で撮影した画像により観察する。
【0003】
蛍光浸透液を用いる場合には、無現像法を用いることもできる。無現像法では、開口欠陥部に浸透させて余剰浸透液を除去した後、現像処理を行わずに直接被検査物表面にブラックライト等を照射してデジタルカメラ等で撮影した画像を観察することで開口欠陥部の存在・位置を検出する。
【0004】
浸透探傷試験の上記手順で述べた、現像剤を使用した染色浸透探傷法及び暗室でブラックライトによる紫外線照射下で行われる蛍光浸透探傷試験では、浸透液による欠陥指示模様と背景のコントラストが高く画像処理により比較的欠陥を抽出しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
染色浸透探傷試験では、蛍光浸透探傷試験よりも欠陥指示模様が抽出しにくいことなどから、欠陥指示模様の抽出をより正確に行いたいという需要がある。また、比較的欠陥指示模様を抽出しやすい蛍光浸透探傷試験でも欠陥指示模様の抽出をより正確に行いたいという需要がある。
【0007】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、従来よりも正確に欠陥指示模様を抽出することができる探傷装置及び探傷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の探傷装置は、浸透探傷試験の被試験体を撮像した画像の第1の色成分と、前記被試験体を撮像した前記画像の前記第1の色成分よりも前記浸透探傷試験に用いる浸透液の色に含まれる量が少ない第2の色成分との差の絶対値を画素ごとにとった画像、画素ごとに前記第1の色成分を前記第2の色成分で減算した画像、及び画素ごとに前記第2の色成分を前記第1の色成分で除算した画像の少なくともいずれかの、前記第1の色成分と前記第2の色成分を合成した合成画像を生成する合成部を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、従来よりも正確に欠陥指示模様を抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る浸透探傷装置の要部構成の一例を示すブロック図。
【
図2】
図1中のプロセッサーによる処理の一例を示すフローチャート。
【
図3】
図1中のプロセッサーによる処理の一例を示すフローチャート。
【
図4】現像剤塗布後約15秒経過後に試験片を撮影した画像。
【
図5】
図4の画像をモノクロ画像に変換した後、明暗を反転し、その後閾値140で二値化した画像。
【
図7】
図4の画像と
図6の画像について差の絶対値をとった画像。
【
図8】
図7の画像をモノクロ化し、閾値30で二値化した画像。
【
図9】現像剤塗布直後、15秒後及び30秒後に試験片を撮影した画像の赤色チャンネル、緑色チャンネル及び当該2つのチャンネルの差の絶対値をとった画像のそれぞれを表にして示した図。
【
図10】現像剤塗布直後に試験片を撮影した画像の赤色チャンネルと緑色チャンネルの差の絶対値をとった画像。
【
図11】現像剤塗布15秒後に試験片を撮影した画像の赤色チャンネルと緑色チャンネルの差の絶対値をとった画像。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る浸透探傷装置について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態の説明に用いる各図面は、各部の縮尺を適宜変更している場合がある。また、以下の実施形態の説明に用いる各図面は、説明のため、構成を省略して示している場合がある。また、各図面及び本明細書中において、同一の符号は同様の要素を示す。
図1は、実施形態に係る浸透探傷装置100の要部構成の一例を示すブロック図である。
【0012】
浸透探傷装置100は、被検査物に対する浸透探傷試験の一部又は全部を自動で行う装置である。浸透探傷試験の一部の工程は、人間が行っても良い。浸透探傷装置100は、一例として、制御部110、浸透部120、表示デバイス130、入力デバイス140及び撮像デバイス150を含む。なお、浸透探傷装置100は、探傷装置の一例である。
【0013】
制御部110は、浸透探傷装置100の動作に必要な演算及び制御などの処理を行うコンピューターである。制御部110は、一例として、プロセッサー111、ROM(read-only memory)112、RAM(random-access memory)113、補助記憶装置114及び制御インターフェース115を含む。そして、バス116などが、これら各部を接続する。なお、制御部110は、探傷装置の一例である。
【0014】
プロセッサー111は、浸透探傷装置100の動作に必要な演算及び制御などの処理を行うコンピューターの中枢部分であり、各種演算及び処理などを行う。プロセッサー111は、例えば、CPU(central processing unit)、MPU(micro processing unit)、SoC(system on a chip)、DSP(digital signal processor)、GPU(graphics processing unit)、ASIC(application specific integrated circuit)、PLD(programmable logic device)又はFPGA(field-programmable gate array)などである。あるいは、プロセッサー111は、これらのうちの複数を組み合わせたものである。また、プロセッサー111は、これらにハードウェアアクセラレーターなどを組み合わせたものであっても良い。プロセッサー111は、ROM112又は補助記憶装置114などに記憶されたファームウェア、システムソフトウェア及びアプリケーションソフトウェアなどのプログラムに基づいて、浸透探傷装置100の各種の機能を実現するべく各部を制御する。また、プロセッサー111は、当該プログラムに基づいて後述する処理を実行する。なお、当該プログラムの一部又は全部は、プロセッサー111の回路内に組み込まれていても良い。
【0015】
ROM112及びRAM113は、プロセッサー111を中枢としたコンピューターの主記憶装置である。
ROM112は、専らデータの読み出しに用いられる不揮発性メモリである。ROM112は、上記のプログラムのうち、例えばファームウェアなどを記憶する。また、ROM112は、プロセッサー111が各種の処理を行う上で使用するデータなども記憶する。
RAM113は、データの読み書きに用いられるメモリである。RAM113は、プロセッサー111が各種の処理を行う上で一時的に使用するデータを記憶するワークエリアなどとして利用される。RAM113は、典型的には揮発性メモリである。
【0016】
補助記憶装置114は、プロセッサー111を中枢としたコンピューターの補助記憶装置である。補助記憶装置114は、例えばEEPROM(electric erasable programmable read-only memory)、HDD(hard disk drive)又はフラッシュメモリなどである。補助記憶装置114は、上記のプログラムのうち、例えば、システムソフトウェア及びアプリケーションソフトウェアなどを記憶する。また、補助記憶装置114は、プロセッサー111が各種の処理を行う上で使用するデータ、プロセッサー111での処理によって生成されたデータ及び各種の設定値などを記憶する。
【0017】
制御インターフェース115は、制御部110が浸透探傷装置100の各部と通信するためのインターフェースである。制御部110は、制御インターフェース115を介して当該各部を制御する。当該各部は、浸透部120、表示デバイス130、入力デバイス140及び撮像デバイス150などである。
【0018】
バス116は、コントロールバス、アドレスバス及びデータバスなどを含み、制御部110の各部で授受される信号を伝送する。
【0019】
浸透部120は、被検査物に対して浸透探傷試験における各工程を行う装置である。浸透部120が行う工程は、例えば、被検査物の洗浄、被検査物表面への浸透液の付着、余剰浸透液の除去、現像処理並びに浸透液及び現像剤の乾燥である。なお、浸透部120は、浸透探傷試験の被試験体に浸透液を付着させる付着部の一例である。
【0020】
表示デバイス130は、浸透探傷装置100の操作者などに各種情報を通知するための画面を表示する。表示デバイス130は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(electro-luminescence)ディスプレイなどのディスプレイである。
【0021】
入力デバイス140は、浸透探傷装置100の操作者による操作を受け付ける。入力デバイス140は、例えば、押しボタン、キーボード、キーパッド、タッチパッド、マウス又はコントローラーなどである。また、入力デバイス140は、音声入力用のデバイスであっても良い。また、表示デバイス130及び入力デバイス140としては、タッチパネルを用いることもできる。この場合、タッチパネルが備える表示パネルは、表示デバイス130として機能する。そして、タッチパネルが備える、タッチ入力によるポインティングデバイスは、入力デバイス140として機能する。
【0022】
撮像デバイス150は、画像を撮影する。また、撮像デバイス150は、撮影した画像データを出力する。なお、動画像は、画像の一種である。撮像デバイス150は、例えば、デジタルカメラである。撮像デバイス150は、ラインセンサーカメラであっても良い。撮像デバイス150は、一例としてイメージセンサー151及び光源152を含む。
【0023】
イメージセンサー151は、例えば、通常のデジタルカメラと同様に赤、緑及び青(RGB(red, green, and blue))の3色のカラーフィルターを用い、当該3色それぞれの光の強さを検知可能なイメージセンサーである。しかしながら、イメージセンサー151は、赤及び緑、又は赤及び青などの2色のカラーフィルターを用い、当該2色それぞれの光の強さを検知可能なイメージセンサーであっても良い。また、イメージセンサー151は、シアン、マゼンタ、黄色及び緑(CMYG(cyan, magenta, yellow ang green))の4色のカラーフィルターを用い、当該4色それぞれの光の強さを検知可能なイメージセンサーであっても良い。また、イメージセンサー151は、CMYGのうちのいずれか2色又は3色のカラーフィルターを用い、当該2色又は3色それぞれの光の強さを検知可能なイメージセンサーであっても良い。
【0024】
光源152は、撮像時に使用するライトである。撮像デバイス150は、例えば、染色浸透液用と蛍光浸透液用の2種類の光源152を備える。あるいは、撮像デバイス150は、どちらか一方のみを備えていても良い。染色浸透液用の光源152の発光色は、例えば白色光である。蛍光浸透液用の光源152は、例えばブラックライトである。
【0025】
以下、実施形態に係る浸透探傷装置100の動作を
図2及び
図3などに基づいて説明する。なお、以下の動作説明における処理の内容は一例であって、同様な結果を得ることが可能な様々な処理を適宜に利用できる。
図2及び
図3は、制御部110のプロセッサー111による処理の一例を示すフローチャートである。プロセッサー111は、例えば、ROM112又は補助記憶装置114などに記憶されたプログラムに基づいて
図2及び
図3の処理を実行する。
【0026】
プロセッサー111は、例えば、浸透探傷装置100の起動にともない
図2に示す処理を開始する。
【0027】
図2のステップST11において浸透探傷装置100のプロセッサー111は、浸透探傷装置100の設定(以下「探傷設定」という。)を変更するか否かを判定する。プロセッサー111は、探傷設定を変更すると判定しないならば、ステップST11においてNoと判定してステップST12へと進む。
【0028】
ステップST12においてプロセッサー111は、浸透探傷試験を開始するか否かを判定する。プロセッサー111は、浸透探傷試験を開始すると判定しないならば、ステップST12においてNoと判定してステップST11へと戻る。かくして、プロセッサー111は、探傷設定を変更するか、浸透探傷試験を開始すると判定するまでステップST11及びステップST12を繰り返す待受状態となる。
【0029】
プロセッサー111は、例えば、探傷設定の変更を指示する操作が行われたことに応じて、設定を変更すると判定する。
プロセッサー111は、ステップST11及びステップST12を繰り返す待受状態にあるときに探傷設定を変更すると判定するならば、ステップST11においてYesと判定してステップST13へと進む。
【0030】
ステップST13においてプロセッサー111は、例えば、探傷設定の変更内容を入力する操作に基づき設定を変更する。プロセッサー111は、変更した探傷設定の内容を補助記憶装置114などに記憶する。探傷設定は、例えば、使用する浸透液についての設定、後述の待機時間についての設定及び二値化の閾値の設定などを含む。なお、探傷設定は、デフォルトの値が定められていても良い。デフォルトの値は、例えば、浸透探傷装置100の設計者又は販売者などによって定められる。プロセッサー111は、ステップST13の処理の後、ステップST11へと戻る。
【0031】
浸透探傷装置100の操作者などは、例えば、被検査物を浸透探傷装置100の所定の位置に設置する。そして、操作者は、例えば、入力デバイス140を用いて、浸透探傷装置100に対して浸透探傷試験の開始を指示する操作を行う。プロセッサー111は、例えば、当該操作に応じて、浸透探傷試験を開始すると判定する。
プロセッサー111は、ステップST11及びステップST12を繰り返す待受状態にあるときに浸透探傷試験を開始すると判定するならば、ステップST12においてYesと判定してステップST14へと進む。
【0032】
ステップST14においてプロセッサー111は、浸透部120を制御して、被検査物の表面に浸透液を付着させる。浸透部120は、例えば、被検査物に浸透液を噴射することで被検査物に浸透液を付着させる。あるいは、浸透部120は、その他の公知の方法を用いて被検査物に浸透液を付着させる。なお、使用する浸透液は、例えば、探傷設定によって定められた浸透液である。
【0033】
被検査物に付着させる浸透液は、例えば、染色浸透液又は蛍光浸透液である。また、染色浸透液の色は、通常赤色である。蛍光浸透液の色は、通常黄緑色の蛍光色である。浸透探傷装置100が使用できる、浸透液の色はこれらの色に限る。あるいは、浸透探傷装置100は、他の色の浸透液が使用できても良い。また、浸透探傷装置100は、染色浸透液又は蛍光浸透液のいずれかのみ使用でき、もう一方は使用できないものであっても良い。
【0034】
ステップST15においてプロセッサー111は、浸透液を浸透させるため、予め設定された時間待機する。
【0035】
ステップST16においてプロセッサー111は、浸透部120を制御して被検査物から余剰浸透液を除去する。浸透部120は、例えば、水洗、溶剤又は後乳化などによって余剰浸透液を除去する。あるいは、浸透部120は、その他の公知の方法を用いて余剰浸透液を除去する。
【0036】
ステップST17及びステップST18においてプロセッサー111は、浸透部120を制御して現像処理を行う。現像処理は、現像剤の塗布、及び現像剤による浸透液の吸い出しのための待機を含む。
ステップST17においてプロセッサー11は、浸透部120を制御して現像剤を被検査物に塗布する。この制御に基づき、浸透部120は、現像剤を被検査物に塗布する。なお、現像剤の塗布には、公知の方法を用いることができる。また、現像剤には公知の各種の現像剤を用いることができる。
【0037】
ステップST18においてプロセッサー111は、現像剤による浸透液の吸い出し、及びこの吸い出しによる欠陥指示模様の表出を待つために、予め設定された時間待機する。ただし、プロセッサー111は、現像剤が完全に乾燥するより前に待機を終えても良い。
【0038】
ステップST19においてプロセッサー111は、撮像デバイス150を制御して、被検査物を撮影する。撮像デバイス150は、撮像した画像を出力する。制御部110は、制御インターフェース115を介して当該画像の入力を受ける。撮像デバイス150が出力する画像は、例えば、JPEG画像又はTIFF画像などの、画像の各画素の色を記録した現像済みの画像データ(以下「現像済み画像」という。)である。あるいは、撮像デバイス150が出力する画像は、RAW画像などの、イメージセンサー151の各画素が検知した光の強度を記録した未現像の画像データ(以下「未現像画像」という。)であっても良い。なお、ここでの現像は、RAW画像などをJPEG画像などに変換することを示す。現像済み画像の色空間は、RGBであることが好ましい。しかしながら、現像済み画像の色空間は、CMYK(cyan, magenta, yellow, and key(black))などの、RGB以外の色の組み合わせの色空間であっても良い。また、被検査物を撮像した画像は、動画から切り出した静止画像であっても良い。
【0039】
なお、プロセッサー111は、ステップST19の処理を、ステップST17の処理よりも後、且つステップST18における待機の終了より前に行っても良い。また、プロセッサー111は、ステップST19の処理を複数回実行しても良い。プロセッサー111は、複数回ステップST19の処理を実行する場合、例えば、ステップST19の処理から次のステップST19の処理の実行まで所定の時間間隔を開ける。
【0040】
ステップST20においてプロセッサー111は、ステップST19で撮像された画像を用いて
図3に示す画像処理を実行する。
図3に示す処理の対象となる画像を以下「対象画像」という。なお、複数回撮影を行っている場合、プロセッサー111は、例えば、いずれか1枚の画像を対象画像とする。
【0041】
図3のステップST32においてプロセッサー111は、対象画像が現像済み画像である場合、対象画像が使用しているカラーチャンネルのうちどの2つのチャンネルを用いるかを決定する。2つのチャンネルをそれぞれ以下「第1チャンネル」及び「第2チャンネル」というものとする。対象画像がRGB画像である場合、すなわち色空間がRGBである場合、赤、緑及び青の3色のチャンネルを備える。以下、対象画像がRGB画像である場合を例に説明する。
【0042】
プロセッサー111は、例えば、予め定められたチャンネルを使用すると決定する。予め定められたチャンネルは、例えば赤及び緑である。また、赤色のチャンネルが第1チャンネルで緑色のチャンネルが第2チャンネルである。この2色を使用する理由は、一般的な染色浸透液の色が赤、緑及び青の3色の中で赤色成分を最も多く含み、緑色成分が最も少ないからである。これは、例えば、浸透液が撮影された画像中の浸透液部分の色成分を調べることからも分かる。ただし、緑色に代えて青色のチャンネルが第2チャンネルとしても良い。RGB中の赤色は、複数の色成分であるRGBの中で最も浸透液に含まれる量が多い色成分の一例である。RGB中の緑色は、複数の色成分であるRGBの中で最も浸透液に含まれる量が少ない色成分の一例である。
【0043】
プロセッサー111は、例えば、使用する浸透液の種類ごとに予め定められたチャンネルを使用すると決定する。プロセッサー111は、例えば、使用する浸透液が染色浸透液であれば赤色のチャンネルを第1チャンネル、緑色のチャンネルを第2チャンネルとする。そして、プロセッサー111は、例えば、使用する浸透液が蛍光浸透液であれば緑色のチャンネルを第1チャンネル、青色のチャンネルを第2チャンネルとする。あるいは、赤色のチャンネルが第2チャンネルであっても良い。なお、使用する浸透液の種類は、例えば探傷設定によって定められる。あるいは、プロセッサー111は、撮像デバイス150によって撮像された画像を用いた画像解析などにより、使用された浸透液の種類を自動で判別しても良い。
【0044】
プロセッサー111は、例えば、使用するチャンネルを画像解析などによって決定しても良い。プロセッサー111は、例えば、撮像デバイス150によって撮像された画像を用いて画像解析することにより、赤、緑及び青の3色の色成分のうち、浸透液の色に含まれる量が最も多い色のチャンネルを第1チャンネルとする。そして、プロセッサー111は、当該画像解析により、当該3色の色成分のうち、浸透液の色に含まれる量が最も少ない色のチャンネルを第2チャンネルとする。なお、プロセッサー111は、浸透液と背景のコントラストが最も不明瞭なチャンネルを第1チャンネルとしても良い。背景、すなわち被検査物が白色又は薄い灰色である場合に不明瞭となりやすい。これは、浸透液が映っている部分が白または薄い灰色となるためである。そして、プロセッサー111は、浸透液と背景のコントラストが最も明瞭なチャンネルを第2チャンネルとしても良い。なお、コントラストが不明瞭とは、コントラスト比が小さい、すなわち明暗差が小さいことを示す。コントラストが明瞭とは、コントラスト比が大きい、すなわち明暗差が大きいことを示す。
【0045】
なお、プロセッサー111は、撮像デバイス150によって撮像された画像の色相を変更して用いても良い。これにより、プロセッサー111は、浸透液の色が黄色、ピンク又は水色などの、最も多い色成分と2番目に多い色成分との差が近い色である場合に、画像中の浸透液の色を、最も多い色成分と2番目に多い色成分との差が大きい色、すなわち赤色、緑色又は青色に近付けることができる。
【0046】
プロセッサー111は、対象画像が未現像画像である場合、現像を行って現像済み画像に変換する。そして、前述の場合と同様にチャンネルを決定する。あるいは、プロセッサー111は、対象画像が未現像画像である場合、チャンネルに代えて、未現像画像に含まれる各色の光の強度のうちどの色を用いるかを決定しても良い。この場合、プロセッサー111は、第1チャンネルに代えて第1色、第2チャンネルに代えて第2色を用いる。プロセッサー111は、チャンネルの場合と同様に、予め定められた色を用いると決定する。あるいは、プロセッサー111は、チャンネルの場合と同様に、使用する浸透液の種類ごとに予め定められた色を用いると決定する。あるいは、プロセッサー111は、チャンネルの場合と同様に、画像解析などによって色を決定する。予め定められた色を用いる場合には、例えば、第1色が赤色で第2色が緑色である。
【0047】
ステップST33においてプロセッサー111は、対象画像から第1チャンネルを抜き出した画像、及び第2チャンネルを抜き出した画像の2つの画像を生成する。1つの色のチャンネルを抜き出した画像は、当該色の濃淡(強弱)を明暗で示すグレースケール画像である。
【0048】
あるいは、プロセッサー111は、対象画像のうちの第1色の光の強弱を明暗で示したグレースケール画像と、対象画像のうちの第2色の光の強弱を明暗で示したグレースケール画像を生成する。
【0049】
第1チャンネルを抜き出したグレースケール画像及び第1色の光の強弱を明暗で示したグレースケール画像を、以下「第1画像」という。第2チャンネルを抜き出したグレースケール画像及び第2色の光の強弱を明暗で示したグレースケール画像を、以下「第2画像」という。なお、第1画像と第2画像は、画素数が同じであることが好ましい。
【0050】
第1チャンネルが示す色は、第1の色成分の一例である。第2チャンネルが示す色は、第2の色成分の一例である。第1画像は、第1の画像の一例である。第2画像は、第2の画像の一例である。
【0051】
ステップST33においてプロセッサー111は、第1画像と第2画像を合成する。プロセッサー111は、例えば以下の(A1)~(A3)のいずれかの方法により第1画像と第2画像を合成する。なお、指示模様の抽出の正確さの観点から、(A1)の方法が最も好ましいと考えらえる。
【0052】
(A1)プロセッサー111は、第1画像と第2画像との差の絶対値をとった第3画像を生成する。すなわち、プロセッサー111は、下式により第3画像の各画素の明暗の値を求める。
P3=|P1-P2| (1)
ここで、P1は、第1画像の画素の明暗を示す値である。P2は、第2画像の画素の明暗を示す値である。P3は、第3画像の画素の明暗を示す値である。なお、P1~P3のそれぞれは、例えば、0~255の256階調の数値により明暗を示す。なお、通常、数値が大きいほど明るいことを示す。本実施形態でも、数値が大きいほど明るいことを示す。したがって、0が最も黒く255が最も白い。あるいは、P1~P3のそれぞれは、0~100などのその他の範囲の数値により明暗を示しても良い。0~100で表す場合には通常数値が大きいほど暗いことを示す。
【0053】
(A2)プロセッサー111は、第1画像を第2画像で減算した第3画像を生成する。すなわち、プロセッサー111は、下式により第3画像の各画素の明暗の値を求める。
P3=P1-P2 (2)
ただし、P3が0未満になる場合は、P3=0とする。
【0054】
(A3)プロセッサー111は、第2画像を第1画像で除算した第3画像を生成する。すなわち、プロセッサー111は、下式により第3画像の各画素の明暗の値を求める。
P3=P2÷P1×255 (3)
ただし、P3が255を超える場合にはP3=255とする。また、P1=0である場合には、P3=255とする。また、少数以下は四捨五入などによって丸める。
【0055】
なお、プロセッサー111は、(1)式~(3)式に代えて同じ結果を得ることができる他の式によってP3を求めても良い。例えば、プロセッサー111は、(1)式に代えて、下式によりP3を求めても良い。
P3=Pb-Ps (4)
ここで、Pbは、P1及びP2のうちの数値が大きい方である。Psは、P1及びP2のうちの数値が小さい方である。
【0056】
なお、第1画像及び第2画像のそれぞれは、1つの画像ファイルに含まれるレイヤーであっても良い。
【0057】
第3画像は、第3の画像の一例である。
以上より、プロセッサー111は、ステップST33の処理を行うことで、浸透探傷試験の被試験体を撮像した画像の第1の色成分と、被試験体を撮像した画像の、第1の色成分よりも浸透探傷試験に用いる浸透液の色に含まれる量が少ない第2の色成分との差の絶対値を画素ごとにとった画像、画素ごとに第1の色成分を第2の色成分で減算した画像、及び画素ごとに第2の色成分を第1の色成分で除算した画像の少なくともいずれかの、第1の色成分と第2の色成分を合成した合成画像を生成する合成部の一例として機能する。
【0058】
ステップST34においてプロセッサー111は、第3画像を設定された所定の閾値により二値化する。すなわち、プロセッサー111は、例えば、明暗の値が閾値以上の画素を白にし、当該値が閾値未満の画素を黒にする。あるいは、プロセッサー111は、第3画像を画像解析することなどにより、最適な閾値を自動で判定しても良い。なお、プロセッサー111は、二値化の前に第3画像を階調反転(明暗反転)しても良い。(A1)又は(A2)の方法で合成された画像を二値化した画像は、指示模様が白色となって現れる。(A3)の方法で合成された画像を二値化した画像は、指示模様が黒色となって現れる。階調反転が行われている場合には白と黒が逆となる。なお、プロセッサー111は、二値化後に階調反転、すなわち白と黒を入れ替えても良い。
【0059】
プロセッサー111は、ステップST34の処理を行うことで、第3の画像を二値化する二値化部の一例として機能する。
【0060】
プロセッサー111は、ステップST34の処理の後、
図3に示す画像処理を終了する。プロセッサー111は、
図3の処理の終了にともないステップST20の処理を終了してステップST21へと進む。
【0061】
ステップST21においてプロセッサー111は、被試験体の欠陥の位置を判定する。プロセッサー111は、例えば、二値化された第3画像における、白色の部分を欠陥であると判定する。あるいは、プロセッサー111は、黒色の部分を欠陥であると判定する。
【0062】
ステップST22においてプロセッサー111は、ステップST20によって画像処理された画像を出力する。例えば、プロセッサー111は、この画像を表示するように表示デバイス130に対して指示する。表示の指示を受けて表示デバイス130は、当該画像を表示する。表示デバイス130が表示する画像は、例えば、ステップST19で撮影された画像、第1画像、第2画像、ステップST33で合成された画像、及びステップST34で二値化された画像を含む。また、プロセッサー111は、通信インターフェースなどを介して第3画像を他の装置に送信しても良い。プロセッサー111は、ステップST21の処理の後、ステップST11へと戻る。
【実施例0063】
下記の手順で試験を行った。
(B1)試験片に水洗性染色浸透液をスプレー塗布し、5分間放置した。
(B2)紙ウエスにより余剰浸透液をふき取った後、洗浄液を吹き付けることで試験片を洗浄した。
(B3)三脚に設置したカメラ前に試験片を置き動画撮影開始。
(B4)現像剤をスプレー法にて塗布。
(B5)数分後動画撮影停止。
【0064】
なお、本試験では、以下のものを使用した。
水洗性染色浸透液:スーパーチェック(登録商標) UP-ST(J)(マークテック株式会社製)
洗浄液:スーパーチェック UR-ST(マークテック株式会社製)
現像剤:スーパーチェック UD-ST・V(マークテック株式会社製)
試験片:アルミ焼き割れ試験片
【0065】
図4は、現像剤塗布後約15秒経過後に試験片を撮影した画像である。
図4は、特許出願に使用可能なイメージファイルの規定によりグレースケール画像となっているが、実際にはフルカラーの画像である。なお、本試験において用いる各画像は、動画から切り出した静止画像又は当該静止画像を加工した画像である。
図5は、
図4の画像をモノクロ画像に変換した後、明暗を反転し、その後閾値140で二値化した画像である。
【0066】
図5を見ると、浸透液の付着している部分が白くなっているが、現像剤が乾燥途中の部分も白くなってしまっていることが分かる。
【0067】
図6は、現像剤塗布直後に試験片を撮影した画像である。
図6は、特許出願に使用可能なイメージファイルの規定によりグレースケール画像となっているが、実際にはフルカラーの画像である。
図7は、
図4の画像と
図6の画像について差の絶対値をとった画像である。
図7は、実際にはフルカラーの画像である。なお、
図4及び
図6はフルカラーの画像であるので、
図7は、各画素の各色成分ごとに(1)の式で色成分の強さを求めたものである。
図8は、
図7の画像をモノクロ化し、閾値30で二値化した画像である。
【0068】
図7及び
図8を見れば分かるように、背景に現像剤の変化が残ってしまい指示模様と背景の分離がうまくいかない結果となった。
【0069】
図9は、現像剤塗布直後、15秒後及び30秒後に試験片を撮影した画像の赤色チャンネル、緑色チャンネル及び当該2つのチャンネルの差の絶対値をとった画像のそれぞれを表にして示した図である。
【0070】
図9から、赤色チャンネルと緑色チャンネルの差の絶対値をとることにより、背景の変化を減少させることができていることが分かる。
【0071】
図10は、現像剤塗布直後に試験片を撮影した画像の赤色チャンネルと緑色チャンネルの差の絶対値をとった画像である。
図11は、現像剤塗布15秒後に試験片を撮影した画像の赤色チャンネルと緑色チャンネルの差の絶対値をとった画像である。
図12は、
図10の画像と
図11の画像の差の絶対値をとった画像である。
図13は、
図11の画像を閾値25で二値化した画像である。
【0072】
図13を見ればわかるように、指示模様を抽出できていることが分かる。
【0073】
実施形態の浸透探傷装置100は、被試験体を撮像した画像から第1チャンネルを抜き出した第1画像、及び第1チャンネルよりも浸透液の色に含まれる量が少ない色の第2チャンネルを抜き出した第2画像を取得する。あるいは、実施形態の浸透探傷装置100は、被試験体を撮像した画像から第1色を抜き出した第1画像、及び第1色よりも浸透液の色に含まれる量が少ない色の第2色を抜き出した第2画像を取得する。そして、実施形態の浸透探傷装置100は、第1画像と第2画像を(A1)~(A3)の少なくともいずれかの方法により合成した画像を生成する。これにより、実施形態の浸透探傷装置100は、実施例からもわかるように指示模様を従来よりも正確に抽出することができる。また、実施形態の浸透探傷装置100は、浸透液の洗浄残りによる疑似指示模様を取り除くことができる。
【0074】
なお、浸透探傷試験の対象となる検査体は、一般的にRGBの特定のチャンネルの数値が高くなるような色ではなく、白、黒、灰色といった、どのチャンネルも似たような値を持つ色を持つ場合が多い。同様に染色浸透探傷で使われる、現像剤を使用した場合の背景色も白となり、特定のチャンネルの数値が極端に他と異なることはない。これに対し、主に染色探傷試験で使用される色は赤であり、染色探傷試験による指示模様は赤色チャンネルで数値が大きく、その他のチャンネルでは値が小さくなる。このため現像処理を行った染色浸透探傷試験の画像で、浸透液の色に含まれる量が最も多い色のチャンネル又は欠陥指示模様と背景のコントラストが最も不明瞭なチャンネル(染色浸透探傷液が赤の場合は赤色チャンネルR)とそれ以外のチャンネル(例えば緑色チャンネル)を取り出した画像同士の差をとると、背景部分はどちらのチャンネルでも似た値であるため値が小さく(暗く)なり、指示模様部分はチャンネル間に明るさの差が大きいため比較的大きな値が(明るく)残る。この方法では、背景色が乾燥途中で灰色がかっている部分も、乾燥して白くなっている部分も、差をとることでチャンネル間での各ピクセルにおける明るさの差だけが残るため、差分画像では背景のコントラスト変化を低減することができる。
【0075】
溶剤に現像剤を分散させて塗布する湿式現像染色浸透探傷では、現像剤塗布後、溶剤が揮発するにしたがって現像剤が透明から白色へ変化しコントラストが増加する。このため現像剤塗布から現像剤が乾燥するまでの間に得た画像を指示模様の検出に使用しようとした場合に、コントラストが変化して閾値がうまく設定できないという問題がある。実施形態の浸透探傷装置100は、現像を行った場合でも指示模様を従来よりも正確に抽出することができる。また、実施形態の浸透探傷装置100は、現像剤の乾燥が終わる前でも指示模様を抽出することができる。
【0076】
また、実施形態の浸透探傷装置100は、現像剤の乾燥が終わる前に撮像した画像を用いることもできる。これにより、実施形態の浸透探傷装置100は、従来よりも短い時間で浸透探傷試験を行うことができる。
【0077】
また、実施形態の浸透探傷装置100は、(A1)~(A3)の少なくともいずれかの方法により合成した画像を二値化する。これにより、指示模様と指示模様でない部分が白と黒の2色に塗り分けられるので、どの部分が指示模様であるか分かりやすくなる。
【0078】
また、実施形態の浸透探傷装置100は、浸透液の色に含まれる量が最も多い色のチャンネルを第1チャンネルとする。そして、実施形態の浸透探傷装置100は、浸透液の色に含まれる量が最も少ない色のチャンネルを第2チャンネルとする。あるいは、実施形態の浸透探傷装置100は、浸透液の色に含まれる量が最も多い色を第1色とする。そして、実施形態の浸透探傷装置100は、浸透液の色に含まれる量が最も少ない多い色を第2色とする。これにより、実施形態の浸透探傷装置100は、指示模様を抽出しやすくなる。
【0079】
上記の実施形態は、以下のような変形も可能である。
浸透探傷装置100は、二値化に代えてレベル補正を行うことで指示模様を分かりやすくしても良い。
【0080】
上記の実施形態では、浸透探傷装置100のプロセッサー111は、第1チャンネルを抜き出した第1画像と、第2チャンネルを抜き出した第2画像を用いて合成を行う。しかしながら、プロセッサー111は、少なくともいずれかのチャンネルについて抜き出した画像を用いずに合成を行っても良い。例えば、プロセッサー111は、対象画像から第1チャンネルの強弱を示す数値と第2チャンネルの強弱を示す数値を取得し、取得した数値を用いて第3画像の各画素の明暗の値を求める。
【0081】
上記の実施形態では、浸透探傷装置100は、浸透探傷試験における現像処理を行う。しかしながら、浸透探傷装置100は、現像処理を行わなくても良い。すなわち、浸透探傷装置100は、無現像法を用いても良い。
【0082】
プロセッサー111は、上記実施形態においてプログラムによって実現する処理の一部又は全部を、回路のハードウェア構成によって実現するものであっても良い。
【0083】
実施形態の処理を実現するプログラムは、例えば装置内の非一時的な記憶媒体に記憶された状態で譲渡される。しかしながら、当該装置は、当該プログラムが記憶されない状態で譲渡されても良い。そして、当該プログラムが別途に譲渡され、当該装置へと書き込まれても良い。このときのプログラムの譲渡は、例えば、リムーバブルで非一時的な記憶媒体に記録して、あるいはインターネット又はLAN(local area network)などのネットワークを介したダウンロードによって実現できる。
【0084】
以上、本発明の実施形態を説明したが、例として示したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の実施形態は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施可能である。