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特開2024-90133次元ハイブリッドポイントオブケアチップ及びこれを使用した分析方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009013
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】3次元ハイブリッドポイントオブケアチップ及びこれを使用した分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20240112BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240112BHJP
   G01N 33/553 20060101ALI20240112BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20240112BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240112BHJP
   C12M 1/42 20060101ALI20240112BHJP
   C12Q 1/6834 20180101ALI20240112BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20240112BHJP
【FI】
G01N33/543 521
G01N33/543 541A
G01N33/53 D
G01N33/553
G01R33/02 R
C12M1/34 Z
C12M1/42
C12Q1/6834 Z
C12Q1/68
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023188635
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2021505616の分割
【原出願日】2019-04-10
(31)【優先権主張番号】62/664,946
(32)【優先日】2018-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/655,828
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/379,748
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520394263
【氏名又は名称】マース サイエンシズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MARS SCIENCES LIMITED
【住所又は居所原語表記】P.O.Box 472, 2nd Floor, Harbour Place, 103 South Church Street, George Town, KY1-1106(KY)
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】ジーイー, ユ
(72)【発明者】
【氏名】ラボルド, ロナルド, ティー
(72)【発明者】
【氏名】ワルダ, ケビン, エヌ
(57)【要約】
【課題】従来の形式の問題を解決すると共に、超常磁性粒子イメージング技術の利点を最大限に利用することのできるハイブリッドポイントオブケアチップを提供する。
【解決手段】
3次元ハイブリッドポイントオブケアチップであって、少なくとも1つ以上のサンプル導入領域と、少なくとも1つ以上の分析領域と、流体吸収領域と、必要に応じて、試薬リザーバと、を含み、前記3次元ハイブリッドポイントオブケアチップの構造は1層~10層範囲内の積層板であり、そして、サンプル導入領域、前記試薬リザーバ、前記分析領域及び前記流体吸収領域はマイクロチャネルにより順に接続され、前記マイクロチャネルは、分析物を含むサンプルを分割して前記積層板のレベルにガイドすることを可能にする、3次元ハイブリッドポイントオブケアチップ。
【選択図】図9A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元ハイブリッドポイントオブケアチップであって、
少なくとも1つ以上のサンプル導入領域と、
少なくとも1つ以上の分析領域と、
流体吸収領域と、
必要に応じて、試薬リザーバと、を含み、
前記3次元ハイブリッドポイントオブケアチップの構造は1層~10層範囲内の積層板であり、そして、
サンプル導入領域、前記試薬リザーバ、前記分析領域及び前記流体吸収領域はマイクロチャネルにより順に接続され、前記マイクロチャネルは、分析物を含むサンプルを分割して前記積層板のレベルにガイドすることを可能にする、
3次元ハイブリッドポイントオブケアチップ。
【請求項2】
切替えカラムをさらに備え
前記積層板は2つ以上のレベルを有し、そして、
前記切替えカラムは、前記サンプル導入領域と前記分析領域との間に位置決めされ、且つ前記積層板の前記レベルを接続して、前記分析物を含む前記サンプルを分割して前記積層板の異なるレベルにガイドすることを可能にする、
請求項1に記載の3次元ハイブリッドポイントオブケアチップ。
【請求項3】
前記積層板はフィルムの積層層を含み、前記サンプルがその自体で流れ、且つ前記フィルムの表面が必要に応じて修飾される、
請求項1に記載の3次元ハイブリッドポイントオブケアチップ。
【請求項4】
前記フィルムは、プラスチック、接着剤、紙、木材、繊維、シリコン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ガラス繊維、セルロース、多糖類、タンパク質ポリマー又は圧延された粒子材料で製造される、
請求項3に記載の3次元ハイブリッドポイントオブケアチップ。
【請求項5】
前記サンプル導入領域は、前記サンプルの体積を1~200マイクロリットルの範囲内に維持することができ、そして、
前記サンプルは、全血、血漿、血清、尿、唾液、涙、汗、便抽出物、DNA/RNA抽出物、抗原含有溶液、抗体、酵素、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、ホルモン、有機分子、無機分子、バイオマーカ、産業汚染物質、病原体、ウイルス、細胞、細胞培養抽出物又は環境サンプルである、
請求項1に記載の3次元ハイブリッドポイントオブケアチップ。
【請求項6】
前記分析領域は、一体に組み立てられる1つ以上のセクションを含む固定相であり、
前記分析領域中の前記セクションの数は1~20の範囲であり、そして、
各セクションの形態は、粒子、細孔膜、水不溶性ゲル、又はコロイドである、
請求項1に記載の3次元ハイブリッドポイントオブケアチップ。
【請求項7】
請求項1に記載のハイブリッドポイントオブケアチップを使用した分析方法であって、
サンプル導入領域中の試薬、又は試薬リザーバ中の試薬、又は両方中の試薬によって、サンプル中の分析物を識別するステップと、
分析領域中の前記識別された分析物を固定するステップと、
磁気、音響、放射性、蛍光、化学発光検出方法又はそれらの組み合わせである検出方法により、前記分析物の特性を決定するステップと、を含み、
前記試薬は、抗体、タンパク質、DNA/RNAプローブ又はキレート剤で機能化された磁性粒子、蛍光粒子、化学発光粒子、放射性粒子、又はそれらの混合物を含み、磁気、蛍光、化学発光又は放射性標識された抗体、タンパク質、DNA/RNAプローブ又はキレート剤は、前記サンプル中の前記分析物に結合して識別し、
前記試薬を前記試薬リザーバに直接配置し、又は固体支持体に吸収して前記試薬リザーバに配置し、そして、
前記分析領域は1つ以上のセクションを有する固定相であり、前記セクションは、前記識別された分析物を固定する識別試薬で機能化される、
ハイブリッドポイントオブケアチップを使用した分析方法。
【請求項8】
前記磁気の検出方法は、超常磁性イメージング、磁性粒子の総蓄積、励磁インダクタンス、交流磁気磁化率測定法、CMOS交流磁化率測定法、ホール効果、磁気抵抗、巨大磁気抵抗(GMR)、超巨大磁気抵抗(CMR)、超伝導量子干渉装置(SQUID)、磁気緩和法又は磁気共鳴イメージング(MRI)スピン緩和時間である、
請求項7に記載のハイブリッドポイントオブケアチップを使用した分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本願は2018年4月11日に出願された米国仮出願第62/655,828号、2018年5月1日に出願された米国仮出願第62/664,946号、及び2019年4月9日に出願された米国正式出願16/379,748号の優先権を主張し、該米国正式出願は、2018年4月11日に出願された米国仮出願第62/655,828号及び2018年5月1日に出願された米国仮出願第62/664,946号の権利を主張する。すべての上記米国出願の主題及び内容が援用により本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、バイオセンシング技術に関し、特に、超常磁性粒子イメージング又は他の技術を使用してサンプル中の複数種の分析物を同時に測定する、分析方法、及びそこで使用されるチップ及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
バイオセンシングとは、生物学的要素を検出するためのいかなる方法、及びサンプルの生物学的特性を識別するための関連するソフトウェア又はコンピュータ技術を指し、医療診断、環境監視、及び食品安全保障の不可欠な部分となっている。バイオセンシングシステムは、電気、電子及びフォトニックデバイスに、生物学的物質(例えば組織、酵素及び核酸)及び化学分析を組み込んで、生物学的現象を監視又は識別するための検出可能信号を生成する。バイオセンシングは、生物医学、食品の生産加工、及び細菌、ウイルス、生物毒素の検出にますます適用されており、生物戦争の防御にも適用され、且つ先進的な生物、ナノテクノロジー及び情報技術が著しく融合した新しい科学事例を代表する。
【0004】
バイオセンシング技術は、光学、電気化学、磁気バイオセンシングに分類できる。第一に、光変換メカニズムに基づいて、光バイオセンシングは、蛍光、燐光、蛍光共鳴エネルギーの移動(FRET)、化学発光、生物発光、量子ドット、吸収率及び散乱を含む発光方法と、表面プラズモン共鳴(SPR)、表面増強ラマン散乱(SERS)及び干渉を含む表面方法とに分類される。一般に、光バイオセンシング法は、感度が高く、多重化しやすい。
【0005】
第二に、電気化学バイオセンシングは、酵素結合アッセイ、電界効果センサ、電気活性タグ、ナノ粒子に基づくセンサ、及び電気化学発光に基づくセンサを用いる方法を含む。これらの方法とアッセイは本質的には界面であり、識別イベントによって生じた生物識別又は物理的変化が接触材料の電気的特性を直接変化させる。これらのアッセイはシンプルで、感度が高く、界面への結合イベントの局在化により、特定の分析物とバックグラウンド分析物に対する区別が強化される。また、これらのアッセイは、アレイ形式への拡張及びマイクロ流体構造との統合に対応する。
【0006】
第三に、磁気バイオセンシングは、一般に、交流磁化率測定法、ホール効果測定、巨大磁気抵抗、超伝導量子干渉装置及び励磁インダクタンスに基づく方法を含む。光学及び磁気バイオセンシング法に比べて、磁性粒子に基づくセンシング法は、生体適合性、環境安全性を向上させ、合成コストを低減させる。さらに、生体サンプルからの磁気信号がほとんどまたはまったくないため、磁性粒子ベースのセンシング法ではバックグラウンドノイズが小さい。したがって、バイオセンシングと診断ツールの開発において大きな注目が集められている。Issadore,Dら、「分子分析用の磁気センシング技術(Magnetic sensing technology for molecular analyses)」、『チップラボ(Lab Chip』.14(14),2385-2397(2014)を参照のこと。
【0007】
交流磁化率測定法は、溶液中の磁性ナノ粒子(MNP)の拡散特性を利用した精確な検出技術である。Park,Kら、「コンパクトな交流磁化率計を用いた磁性ナノ粒子のブラウン緩和に基づく多重化センシング(Multiplexed sensing based on Brownian relaxation of magnetic nanoparticles using a compact AC susceptometer)、『ナノテクノロジー(Nanotechnol)』.22(8),085501(2011)を参照のこと。該技術は、印加された磁場の周波数の関数としての集団磁化率を測定することにより決定される磁気ラベル付きセンサのランダムな回転運動を用いるブラン緩和検出方案の原理に基づく。励起周波数が磁気ラベル付きセンサの回転運動の周波数に近づくと、複素磁化率の損失成分は大幅に増加する。この現象は、複素磁化率の虚数成分のピーク周波数(異相90o:x”)として観察される。生物学的診断のための技術の適用は、標識されたMNPへのターゲットの結合によるx”のピーク周波数のシフトに依存する。その後ターゲット分子がセンサ上の特定の受容体と結合すると、センサの流体力学的サイズは効果的に増加し、且つ流体力学的半径との立方関係により、周波数の最大値はより低い値に対して容易に測定可能なシフトがある。交流磁化率計は1mg/mlの濃度と5μl体積で10μTの低磁場で高い感度を示したが、該方法の適用は溶液媒体に限定されている。
【0008】
ホール効果測定に基づくホールセンサは、フォトリソグラフィ法とアルゴンイオンミルによるドライエッチングにより、アーム幅wが約1μmのクロスとして定義される。Mihajlovic,Gn、「InAs量子井戸マイクロホールセンサを使用して生物学的適用における単一の磁気ビーズの検出(Detection of single magnetic bead for biological applications using an InAs quantum-well micro-Hall sensor)」『応用物理学速報(Appl. Phys Lett.)』87,112502(2005)、及びLandry,Gら、「InAs量子井戸ホールデバイスを使用した単一磁性粒子の特性評価(Characterization of single magnetic particles with InAs quantum-well Hall devices)」『応用物理学速報(Apple.Phis Lett.)』85,4693(2004)を参照のこと。いくつかのクロスは、500、600、および700nmのアーム幅を持つ集束イオンビームミリングでさらに定義される。各センサはファンデルポーとホールの測定値により特徴付けられる。処理後、ホール係数とシート抵抗の値はそれぞれ0.031<R<0.046Ω/Oeと150<R<600Ω/Oeの範囲にある。センサチップが周波数fで変化する垂直交流励起磁場~Bに置かれると、センサは直流電流Iによってバイアスされ、ホール電圧はロックインアンプを使用して周波数fで測定される。ビーズは超常磁性であるため、その磁化はランジュバン(Langevin)挙動に従う。交流信号は実質的にランジュバン曲線の傾きを測定するため、ビーズの直流磁気状態に依存する。したがって、ビーズが直流磁場Bにさらされると、その磁気状態は低い磁化率方向にシフトし、ビーズ中に誘導される交流磁化が低下し、それによりクロスがセンシングしたビーズの平均交流浮遊磁場を減少させ、自身は交流ホール電圧信号の低下として示される。ホールセンサの線形性は、B1が上部にビーズがない場合に、空のホールクロスにおいて交流ホール信号のいかなる変化も起こさないことを保証する。したがって、この低下は、ホールクロスにビーズの存在を示す決定的な信号である。この方法の欠点は、交流励起磁場に対する直接センサのホール応答によって生じる大きなシフトであり、通常はビーズからの小さな信号より数桁大きくなる。
【0009】
巨大磁気抵抗(GMR)は交互の強磁性と非磁性導電層からなる多層で観測された量子力学的磁気抵抗効果である。Hall,Dら、「GMRバイオセンサアレイ-システムの展望(GMR biosensor arrays-a system perspective)」、『バイオセンサとバイオエレクトロニクス(Biosens Bioelectron.)』25(9),2051-2057(2010)、及びBaselt,D、「磁気抵抗技術に基づくバイオセンサ(A biosensor based on magnetoresistance technology)」、『バイオセンサーとバイオエレクトロニクス(Biosens Bioelectron.)』,13,731-739(1998)を参照のこと。観測された効果は、抵抗の著しい変化が、隣接する強磁性層の磁化が平行に整列しているか、逆平行に整列しているかに依存する。平行に整列している場合、総抵抗は相対的に低いが、逆平行に整列している場合、総抵抗は高くなる。磁化方向は例えば外部磁場を印加することによって制御することができる。この効果は電子散乱のスピン配向への依存性に基づく。磁気抵抗材料の開発により、高感度マイクロメータスケールの磁場センサの光パターン化は可能になる。磁気抵抗材料は、一般に、磁場に応答して抵抗が変化するフィルム金属多層構造を有する。いくつかの全く異なるタイプの磁気抵抗材料が開示されており、異方性磁気抵抗材料と巨大磁気抵抗材料を含む。磁気抵抗センサは商業上に、磁気テープ又は磁気ディスクの読み取り、携帯型磁場センサ、及び位置センサに用いられる。磁気抵抗材料を使用することにより、磁気ビーズアッセイ用の小型検出器を製造することができる。そのような検出器はアッセイ基質に埋め込まれて、自身の近傍にあるビーズを検出することができる。光学又はマイクロメカニカル検出に対して、この方法の主な利点は、一辺の長さが約1cmの単一のチップに数千の検出器を製造できることである。GMRセンサの欠点はその非線形性と単層特性である。物体の表面と、磁気ビーズとセンサの間の距離に非常に敏感である。
【0010】
超伝導量子干渉装置(SQUID)は、ジョセフソン接合(Josephson Junction)を含む超伝導ループに基づいて非常に微小な磁場を測定することに用いられる感度が非常に高い磁力計である。Kotitz,Rら、「磁性ナノ粒子の緩和測定によるアビジンとビオチンとの結合反応の確定(Determination of the binding reaction between avidin and biotin by relaxation measurements of magnetic nanoparticles)、『磁気学と磁性材料雑誌(J. Magn. Magn. Mater.)』,194,62-68(1999);Hathaway HJ、「標的磁性ナノ粒子と超高感度の磁場センサを使用した乳癌細胞の検出(Detection of breast cancer cells using targeted magnetic nanoparticles and ultra-sensitive magnetic field sensors)」『乳癌研究(Breast Cancer Research)』,13,R108(2011)、及びDe Haroa.Lら、「高感度のがんの検出と位置決めに適用される磁気緩和法(Magnetic relaxometry as applied to sensitive cancer detection and localization)」、『生物医学工程:生物医学技術(Biomed. Eng.-Biomed. Tech.)』,60(5),445-455(2015)、及びPerez.Jら、「分子の相互作用を感知できる磁気緩和スイッチ(Magnetic relaxation switches capable of sensing molecular interactions)」『ネイチャー バイオテクノロジー(Nat Biotechnol.)』,20,816-820(2002)を参照のこと。SQUIDの感度は、数日間の平均測定で5aT(5×10-18T)の低磁場を測定することに十分な感度がある。それらのノイズレベルは3fT・Hz-1/2まで低い。比較のために、一般的な冷蔵庫の磁石は0.01テスラ(10-2T)を生成し、動物のいくつかのプロセスは10-9Tと10-6Tの間の非常に小さな磁場を生成する。SQUIDには、直流(DC)と無線周波数(RF)の2つの主なタイプがある。RF SQUIDは1つのみのジョセフソン接合(超伝導トンネル接合)と一緒に作動することできる。SQUIDは非常に敏感であるが、低温条件と高価な装置が必要であり、それにより日常的な分析には適切ではない。
【0011】
励磁インダクタンスとは、コイルを通過する際に、磁性粒子が比透磁率の変化によりコイルのインダクタンスが変化する現象を指す。Makiranta.Jら、「分子の相互作用を感知できる磁気緩和スイッチ(Magnetic relaxation switches capable of sensing molecular interactions)」、第28回IEEE生物医学工程学会国際年会、米国ニューヨーク,Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc.4598-411(2006)を参照のこと。インダクタの変化はコイルに入る磁性粒子の量を定量化するために使用できる。この方法は体外診断のための多くの装置に適用されたが、この方法は多重化できず、再現性も低い。
【0012】
磁性粒子イメージング(MPI)は、米国特許第7,778,681B2号に開示されているように、新たな非侵襲性で高感度の断層撮影技術である。MPI走査装置の第一プロトタイプはGleich・Bの「磁性粒子の非線形応答を使用したトモグラフィーイメージング(Tomographic imaging using the nonlinear response of magnetic particles)」、『ネイチャー(Nature)』,435(7046),1214-1217(2005)に公開される。MPIは変化する外部磁場に対する磁性粒子の非線形応答を利用し、その基本理論はPaul Langevinによって1908年に最初に発明されたランジュバン理論(Lemons,D,「Paul Langevinが1908年に発表した論文『ブラウン運動に関する理論』(Paul Langevin’s 1908 paper ‘On the Theory of Brownian Motion’)」『米国物理学雑誌(Am.J.Phis)』65,1079(1997)である。交流磁場中の磁性粒子(トレーサー)の磁化によって生成された信号は空間的にエンコードされ、トレーサーの濃度とその位置に比例する信号を組み合わせることによって、空間的にエンコードされた信号を再構成した後ファントムの画像化に成功することが開示される。MPIの主な適用は生体内イメージングである(Weizencker,J,「三次元リアルタイム生体内磁性粒子イメージング(Three dimensional real-time in vivo magnetic particle imaging)」、『医学と生物学における物理学(Phys.Med.Biol.)』54(5),L1-L10(2009)、及びZhou,X,の「ラットの肺灌流の最初の生体内磁性粒子イメージング(First in vivo magnetic particle imaging of lung perfusion in rats)」『医学と生物学における物理学(Phys. Med. Biol.)』62(9),3510-3522(2017)」、癌診断(Yu,Yu)Eら、「磁性粒子イメージング:がん検出用の新型の体内イメージングプラットフォーム(Magnetic Particle Imaging:A Novel in Vivo Imaging Platform for Cancer Detection)」、『ナノ通信(Nano Lett.)』17(3)1648-654(2017)、及び細胞追跡(Zheng,Bら、「定量的磁性粒子イメージングによる生体内の幹細胞の移植、生物分布及び除去の監視(Quantitative Magnetic Particle Imaging Monitors the Transplantation,Biodistribution,and Clearance of Stem Cells In Vivo)」、『治療診断学(Theraostics)』6(3),291-301(2016))。MPIの原理と一般的なMPI機器の構築方法について、Knoppら、「磁性粒子イメージング-イメージング原理とスキャナー機器の紹介(Magnetic Particle Imaging - An Introduction to Imaging Principles and Scanner Instrumentation)」)、(シュプリンガー・サイエンス・アンド・ビジネス・メディア(Springer Science&Business Media),(2012)、及びBugz,Tら、「磁性ナノ粒子-粒子科学、イメージング技術及び臨床適用(Magnetic Nanoparticles-Particle Science,Imaging Technology,and Clinical Applications)」、世界科学出版社(World Scientific Publishing)(2010)に詳述される。
【0013】
磁気バイオセンシング法及び技術には、例えば、人体サンプルが自然に強磁性材料に欠けているため、干渉物が少ない(干渉物が大量に存在する電子と光学技術とは異なる)など、多くの利点がある。MNPは、生物医学的分離技術とイメージングに用いられる。現在の磁気バイオセンシングの利点と欠点についての詳細な議論は、Lee,Hら、「磁気診断システムの最新の発展(Recent Developments in Magnetic Diagnostic Systems)」、『化学概要(Chem.Rev.』115(19),10690-10724(2015)を参照のこと。これまでのところ、光学センシング法と異なり、診断に用いられる既存の磁気センシング法の主な欠点は複数の解析物を同時に測定できないことである。磁気センシング法が直面するもう一つの問題は、通常均質な媒体又は単層を処理することである。
【0014】
近年、臨床需要の増加に伴い、様々なポイントオブケア(POCT)センシング法が爆発的に増加している。Cheng,Mら、「生体分子検出及び医学診断に用いられるナノテクノロジー(Nanotechnologies for Biomolecular Detection and Medical Diagnostics)、『化学生物学新見(Curr. Opin. Chem. Biol.)』10(1),11-19(2006)、及びGiljohann,Dら、「生物診断発展の推進要因(Drivers of Biodiagnostic Development)」、『ネイチャー(Nature)』462(7272) 461-464(2009)を参照のこと。これらのポイントオブケア方法は、電気インピーダンス、比色、光学的、及び磁気センシング戦略に基づくことが多く、特に細胞、分子及び遺伝子テストにおいて、感度と特異性のさらなる向上、テストの複雑さの増加、複雑な初期段階の純粋化(貴重なサンプルが失われる可能性がある)、小バッチテストに関連する特定の問題、より高いトレーニングのニーズ、より高い品質の管理コスト、規制上の負担及び費用を含む多くの課題に直面している。
【0015】
側方流動アッセイ(LFIA)は、ポイントオブケア装置において最も広く使用されている形態の1つである。側方流動アッセイは、多孔質膜、抗体(モノクローナル及び/又はポリクローナル)を使用し、通常、可視信号生成システムを使用して高感度で、使い捨て、使いやすいテストを行う。この技術は、妊娠、受精率、薬物乱用、伝染病及びDNA検出の迅速な診断テストに使われている。一般用医薬品とポイントオブケアの両方は同様のテストを行うことができる。使いやすくて安いため、ポイントオブケアアッセイにおいて最も広く使用されている形式の1つとなっている。しかし、その設計と構造のため、LFIAのサンプルの結合が非効率的であり、セクション間の接続が不十分であり、フィルムが一致せず、サンプルが漏れ、捕獲エリアが可変であるなどとなる(Wang,Rら、「側方流動アッセイ(Lateral Flow Immunoassay)」、ヒューマナ出版社(Humana Press),2009)。これらの問題は大きな変動係数(CV)をもたらし、LFIAを主に定性分析に制限する。LFIAの変動係数が大きいのは、主に各セクション間の接続が不十分で、捕獲材料の固定とサンプル輸送に用いられるフィルムが一致せず、サンプルがテストストリップのエッジから漏れ、可変の捕獲材料は分析領域にバンド化されることが原因である。多くの場合、手動による読み取りは不明瞭である。
【0016】
マイクロ流体はポイントオブケア装置で広く使用される別の形態である。マイクロ流体チップは、成形又は彫刻されたマイクロチャネルのパターンである。マイクロチャネル内の流体をガイド、混合、分離又は操作することによって、多重化、自動化、ハイスループットシステムを実現する。チップ実験室、病原体検出、電気泳動、DNA分析などの所望の機能を実現するために、マイクロチャネルネットワーク設計を正確で詳細に説明する必要がある。化学又は生物学的分析に使用されるマイクロ流体技術は、試薬の消費量を低減し、分析時間が短く、規模が小さく、汎用性と高感度を有する。過去の30年間で、化学分析、生物学的分析及び臨床診断に使用されるマイクロ流体に基づく小型分析システムと技術は爆発的な増加している。しかし、マイクロ流体を化学及び生物学的分析に用いることは、複雑で厳密なサンプルの前処理及び処理、困難で複雑な設計と製造などのかなりの大きな課題に直面している。マイクロ流体チップで測定した分析物は通常溶液中にあり、分析物を検出するための方法、及び開発と製造のコストと複雑さを制限する(Noh,Jら、『現代化学の特定テーマ(Top.Curr.Chem.)』304、117-152(2011))。複雑のために、該プロセスを完了するために常に外部の駆動力が必要として、より高価になる傾向がある。
【0017】
EISA形式は、ポイントオブケア装置においてめったに使用されない。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)は、ペプチド、タンパク質、抗体、及びホルモンなどの物質を検出及び定量するために、設計されたプレートベースのアッセイ技術である。ELISAでは、抗原を固体表面に固定し、酵素に接続された抗体と複合体化する必要がある。検出は、基質とのインキュベートを介して共役酵素の活性を評価し、測定可能な生成物を生成することによって行われる。検出戦略において最も重要な要素は、非常に特異的な抗体‐抗原の相互作用である。EISA形式の制限は、マルチステップで操作し、試薬の処理が困難で設備が大きいことである。これはポイントオブケアの用途に適用しない。この形式の制限のため、EISAは高感度と特異性を有するが、通常に、ポイントオブケア装置ではなく、大型の臨床分析装置に用いられる。
【0018】
使い捨て且つ生体分解可能なアッセイ形式の構築及び設計は、通常分析対象のサンプルのタイプと形式に制限される。その制限は、大規模の生産設備の技術だけではなく、分析環境、分析物、材料、測定に用いられる分析方法の物理的条件によって課され、これらはすべて市場価格、競争及びパフォーマンスによって駆動される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ほとんどのポイントオブケア装置は線形である。例えば、早期妊娠検査(EPT)などののLFTを保持するために一般的なプラスチックカセットが使用される。これらは、バッキングカード、側方流動メンブレン(ニトロセルロース)、サンプル導入パッド、フィルタ、及び吸収膜の異なる配置で構成される。いくつかの既知の設計のプラスチックケースは部品を保持するため、液体サンプルを適用し、現像してから結果を読み取るのに便利である。このようなテストを使用する際の最新の問題の1つは、使用されたテスト設備の廃棄である。過去2年間で、アフリカ大陸だけでマラリア、HIV、デング熱について6.5億回以上のアッセイが行われた。これは生物学的廃棄物の処理能力が限られた発展途上国で問題になっている。生物分解可能な材料で製造される装置は強く求められている。
【0020】
本発明は、超常磁性粒子イメージング技術とハイブリッドポイントオブケア(HY-POC)チップを組み合わせて、磁気バイオセンシング技術の利点を維持し拡大しながら、すべての問題に対する解決策を提供する。さらに、本発明のハイブリッドポイントオブケアチップは、従来の形式の問題を解決するだけでなく、超常磁性粒子イメージング技術の利点を最大限に利用する。また、本発明は、分析方法及びチップに関して使用される分析装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の超常磁性ナノ粒子に基づく分析方法は、サンプルマトリックスに少なくとも1つ以上の分析物を含むサンプルを提供するステップと、それぞれが少なくとも1つ以上のセクションを有する固定相である少なくとも1つ以上の分析領域を有するポイントオブケアチップを提供するステップと、前記サンプル中の各前記分析物を超常磁性ナノ粒子で標識して、前記標識された分析物を前記固定相に固定するステップと、インビトロで前記超常磁性ナノ粒子を励起するための装置と、前記励起された超常磁性ナノ粒子の応答を感知、受信及び伝送するための装置とを備える分析装置を提供するステップと、前記ポイントオブケアチップと、前記固定相を含む前記分析領域とを前記分析装置に配置し、インビトロで前記超常磁性ナノ粒子を励起するステップと、前記超常磁性ナノ粒子の前記応答を感知、受信及び伝送するステップと、前記超常磁性ナノ粒子の前記応答を分析して、前記分析物の特性を決定するステップとを含み、前記超常磁性ナノ粒子の前記応答は高調波を含む。
【0022】
本発明では、前記超常磁性ナノ粒子に基づく分析方法は、前記分析装置において、変化する外部磁場と、前記変化する外部磁場内の場のないポイント、又は場のないライン、又は場のないスペースであってもよい場のない領域とを提供するステップと、前記ポイントオブケアチップを前記分析装置に配置し、前記場のない領域は前記分析領域全体を走査して、励起コイルは前記場のない領域において前記固定相上の前記超常磁性ナノ粒子を励起して、前記空間的にエンコードされた応答を生成するステップとをさらに含み、前記分析領域の前記固定相は2つ以上のセクションを含み、前記セクション中の前記超常磁性ナノ粒子は空間的にエンコードされた応答を生成し、前記分析物の前記特性は、結合されていない分析物の除去又は再構成が行われるか又は行われないかにかかわらず、いずれも前記空間的にエンコードされた応答から定量的に決定される。
【0023】
本発明では、前記固定相中のセクションの数は1~20の範囲であり、且つ好ましくは、前記固定相は、1つの単一のセクションからなる。
本発明では、前記固定相は、1~20範囲内の少なくとも1つ以上の異なる超常磁性ナノ粒子を固定するために採用されてもよい。
【0024】
本発明では、前記超常磁性ナノ粒子のそれぞれは、前記標識された分析物のそれぞれに対応してもよく、前記サンプルマトリックス中の前記標識された分析物上の他の超常磁性ナノ粒子と異なってもよい。
本発明では、前記超常磁性ナノ粒子の粒径は1nm~1000nmの範囲であってもよい。超常磁性ナノ粒子は、Fe、CoFe、Co、Co合金、フェライト、窒化コバルト、酸化コバルト、Co-Pd、Co-Pt、鉄、鉄合金、Fe-Au、Fe-Cr、Fe-N、FeO、Fe-Pd、Fe-Pt、Fe-Zr-Nb-B、Mn-N、Nd-Fe-B、Nd-Fe-B-Nb-Cu、Ni又はNi合金材料で製造されてもよく。さらに、前記超常磁性ナノ粒子は、球形、楕円形、扁平状又は管状の形状であってもよく、且つ、前記外部磁場に対する前記超常磁性ナノ粒子の応答を変化する材料はコーティングされてもよい。
【0025】
本発明では、サンプルは、液体、固体抽出物、液体、空気サンプル、又はそれらの混合物であってもよいサンプルマトリックス中にある。さらに、前記サンプルマトリックスは、全血、血清、血漿、尿、唾液、糞便、涙又は汗であってもよい。
【0026】
本発明では、前記分析物は、有機分子、生体分子、ペプチド、ポリマー、アミノ酸、タンパク質、酵素、抗体、DNA、RNA、ウイルス、細胞、細菌、病原体、無機分子、薬物、又はそれらの混合物であってもよい。
本発明では、前記分析領域は、ハイブリッドポイントオブケア、側方流動、マイクロ流体ビーズ、又はELISA単層であるアッセイ形式であってもよい。
【0027】
本発明はさらに、少なくとも1つ以上のサンプル導入領域と、少なくとも1つ以上の分析領域と、流体吸収領域と、必要に応じて、試薬リザーバとを含む3次元ハイブリッドポイントオブケアチップを提供する。前記3次元ハイブリッドポイントオブケアップの構造は1層~10層範囲内の積層板であり、そして、サンプル導入領域、前記試薬リザーバ、前記分析領域及び前記流体吸収領域は、分析物を含むサンプルを分割して前記積層板の前記レベルにガイドすることを可能にするマイクロチャネルにより順に接続される。
【0028】
本発明では、前記3次元ハイブリッドポイントオブケアチップはさらに、前記積層板に2つ以上のレベルを有する場合、切替えカラムを備えてもよく、そして、前記切替えカラムは、前記サンプル導入領域と前記分析領域との間に位置決めされ、前記積層板の前記レベルを接続して、前記分析物を含む前記サンプルを分割して前記積層板の異なるレベルにガイドすることを可能にする。
【0029】
本発明では、前記3次元ハイブリッドポイントオブケアチップはさらに、前記サンプル導入領域に接続されたダイアフラムポンプなどの液体駆動機構を備えてもよい。
本発明では、前記積層板の少なくとも1つ以上のレベルは、前記分析物を含む前記サンプルがその自体で流れるフィルムの積層層であり、前記フィルムの表面は必要に応じて修飾される。前記フィルムは、プラスチック、接着剤、紙、木材、繊維、シリコン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ガラス繊維、セルロース、多糖類、タンパク質ポリマー又は圧延された粒子材料で製造される。
【0030】
本発明では、前記サンプル導入領域の数は1~5の範囲であってもよい。前記サンプル導入領域は、Aunetに説明された装置(Aunet,DのUS4933092、1990)などの赤血球分離機構をさらに備えてもよい。さらに、前記サンプル導入領域は、標識された分析物の識別材料及び/又はサンプルがマイクロチャネルに流れるのを助け、サンプルのpHを制御し、分析領域中の分析物と識別材料又は捕獲材料との間の反応を強化する試薬をさらに含み得る。一般に、前記サンプル導入領域は、体積が1~200マイクロリットル範囲内の前記サンプルを収容することができ、且つ前記サンプルは、全血、血漿、血清、尿、唾液、涙、汗、便抽出物、DNA/RNA抽出物、抗原含有溶液、抗体、酵素、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、ホルモン、有機分子、無機分子、バイオマーカ、産業汚染物質、病原体、ウイルス、細胞、細胞培養抽出物又は環境サンプルであってもよい。
【0031】
本発明では、前記チップ中の前記切替えカラムの数は1~5の範囲であってもよい。
【0032】
本発明では、前記チップ中の前記試薬リザーバの数は0~10の範囲であってもよい。前記試薬リザーバは、前記サンプル中の前記分析物を識別して固定するために必要な1つ以上の試薬を収容することができる。
【0033】
本発明では、前記チップ中の前記分析領域の数は1~20の範囲であってもよい。前記分析領域は、一体に組み立てられる1つ又は複数のセクションを含む固定相であり、前記分析領域中の前記セクションの数は1~20の範囲であり、且つ各セクションの形態は、粒子、細孔膜、水不溶性ゲル、又はコロイドである。前記固定相の粒子は、プラスチック、シリカ、ガラス、酸化アルミニウム、有機ポリマー、無機ポリマー、又は生分解性ポリマーで製造されてもよい。
【0034】
本発明では、前記細孔膜は、プラスチック、繊維、ポリマー、多糖類、セルロース、紙、木材、生物学的構築物、生体足場、ガラス繊維、生分解性ポリマー、又はタンパク質ポリマーから構成されてもよく、且つ前記細孔膜は、織られた、織られない又は圧延された粒子である。
【0035】
本発明では、前記固定相は、物理的吸着、又は前記サンプル中の前記分析物に特異的な識別試薬との共有結合によって機能化されてもよい。
本発明では、前記固定相は、前記分析領域に直接配置又は分配されるために、適切な形状及びサイズに予め形成されてもよい。且つ、前記分析領域は、前記積層板の1つのレベル内、又は複数のレベルにわたって構造されてもよい。
【0036】
本発明では、前記チップ中の前記流体吸収領域の数は1~5の範囲である。前記流体吸収領域は流体吸収パッドを有するチャンバを備えてもよい。前記流体吸収パッドは、ヒドロゲル、粒子、圧延された粒子、又は細孔膜で製造されてもよく、そして、前記細孔膜は、プラスチック、繊維、ポリマー、多糖類、セルロース、紙、木材、生物学的構築物、生体足場、ガラス繊維、生分解性ポリマー、又はタンパク質ポリマーから構成されてもよい。
【0037】
本発明はまた、本発明のハイブリッドポイントオブケアチップを使用した分析方法を提供し、試薬リザーバ中の試薬によってサンプル中の分析物を識別するステップと、分析領域中の前記識別された分析物を固定するステップと、磁気、音響、放射性、蛍光、化学発光検出方法又はそれらの組み合わせである検出方法により、前記分析物の特性を決定するステップと、を含む。前記試薬は、抗体、タンパク質、DNA/RNAプローブ又はキレート剤で機能化された磁性粒子、蛍光粒子、化学発光粒子、放射性粒子、又はそれらの混合物を含んでもよく、磁気、蛍光、化学発光又は放射性標識された抗体、タンパク質、DNA/RNAプローブ又はキレート剤は、前記サンプル中の前記分析物に結合して識別し、前記試薬を前記試薬リザーバに直接配置し、又は固体支持体に吸収して前記試薬リザーバに配置し、そして、前記分析領域には、前記識別された分析物を固定する識別試薬で機能化される固定相のセクションがある。
【0038】
本発明では、ハイブリッドポイントオブケアチップは、円弧に沿って設けられる複数の分析領域を有してもよい。前記複数のハイブリッドポイントオブケアチップは、アレイを形成し且つ同じサンプル導入領域を共有するように配置される。
【0039】
本発明では、ハイブリッドポイントオブケアチップは、毛細管により機能する外部からの支援なしにサンプルを自動的に実行するように設計される。
【0040】
本発明では、前記磁気検出方法は、超常磁性イメージング、磁性粒子の総蓄積、励磁インダクタンス、交流磁気磁化率測定法、相補型金属酸化物半導体(CMOS)交流磁化率測定法、ホール効果、磁気抵抗、巨大磁気抵抗(GMR)、超巨大磁気抵抗(CMR)、超伝導量子干渉装置(SQUID)、磁気緩和法、又は磁気共鳴イメージング(MRI)スピン緩和時間を含んでもよい。
【0041】
本発明はさらに超常磁性粒子イメージング分析装置を提供し、水平軸に沿って配置され内部容積を有するハウジングと、前記水平軸に沿って前記ハウジングの前記内部容積に適合され、且つ、その間に場のない領域を形成するために、いずれもマッチングする磁極が互いに向き合うように維持される一対の永久磁石と、前記水平軸に沿って前記一対の永久磁石の間に配置され、いずれも前記場のない領域に接近して、前記場のない領域に交流電気を生成するための一対の励起コイルと、前記水平軸に沿って前記一対の励起コイルの間に配置され、いずれも前記場のない領域に接近する一対の受信コイルと、を備える。分析領域に固定された超常磁性ナノ粒子で標識された分析物を有するサンプルは、前記ハウジングの前記内部容積に配置されて、超常磁性ナノ粒子が励起され、分析のために受信コイルのペアによって検出および送信される常磁性応答を送信する場のない領域を通過する。
【0042】
本発明では、前記永久磁石はNdFeBで製造されてもよい。
本発明の分析装置の一実施形態では、前記ハウジングは円筒であり、且つ前記内部容積は円筒状内部容積であり、前記一対の永久磁石は、円筒状であり、前記ハウジングの前記円筒状内部容積に適合され、前記一対の励起コイルは、前記場のない領域において交流電気を形成して前記超常磁性ナノ粒子を励起する交流変調磁場コイルであり、そして、前記サンプルは、前記円筒ハウジングの前記円筒状内部容積において同じ直線で移動するハイブリッドポイントオブケアチップにある。
【0043】
本発明の分析装置の別の実施形態では、前記ハウジングは辺が開いたC字状フレームであり、前記一対の永久磁石は直線形であり、直線的な場のない領域を形成するために、各前記永久磁石の陽極が互いに向き合うように強制され、前記一対の励起コイルは、前記超常磁性ナノ粒子を励起するための一対のヘルムホルツコイルであり、且つ固定された超常磁性ナノ粒子で標識された分析物を含む前記サンプルは、複数の方向から移動して前記ハウジング中の前記線形場のない領域に入る。
【0044】
本発明の分析装置のさらなる別の実施形態では、前記一対の励起コイルは、互いに向き合って絶縁体によって分離される一対のE字状焼結フェライト磁気コアであり、前記E字状磁気コアの各脚はいずれも電磁コイル巻線を有し、それにより、隙間を形成するために短絡されたE字状磁気コアの2つの正反対の極に磁場を生成し、前記一対の永久磁石は、前記隙間内に前記場のない領域を生成するために、互いに陽極に向き合うように強制され、そして、前記サンプルは、励起と分析のために隙間とアクセス可能な領域を通って移動する。
【0045】
本発明の分析装置のさらなる別の実施形態では、前記分析装置は、永久磁石なしの片面分析装置であり、且つ2つの同心円状に配置された送信コイルと受信コイルを備える。前記2つの送信コイルの電流方向は逆であり、磁場線を形成し、場のない領域は前記磁場線と対称的であり、超常磁性ナノ粒子で標識された分析物を有する前記サンプルは、前記場のない領域に配置して励起され、且つ前記超常磁性ナノ粒子の常磁性応答は前記受信コイルによって感知されて伝送される。
【0046】
本発明の分析装置のさらなる別の実施形態では、前記分析装置は、ホールセンサ分析装置であり、磁化不可能な中空軸と、内側に円筒状内部を有し、それを貫通する前記磁化不可能な中空軸によって取り付けられて支持される円筒状の永久磁石と、バイアスワイヤと信号を有し、前記永久磁石の前記円筒状内部と前記磁化不可能な中空軸に配置されるホールセンサとを備える。本実施形態では、前記永久磁石は磁力場を形成する理論的な磁力線を有し、前記円筒状永久磁石を離れる前記磁力線は、前記円筒の中心及び磁力場の中心にゼロ領域を生成する。前記永久磁石は、前記ゼロ領域における前記超常磁性ナノ粒子で標識された分析物を有する前記サンプルに誘導を提供する。前記ホールセンサは、前記円筒状内部の中心の前記ゼロ領域に配置され、前記超常磁性ナノ粒子の前記常磁性応答を感知して受信し、前記常磁性応答の前記バイアスワイヤと信号は信号処理のために送信される。
【0047】
さらに、前記サンプルはサンプル用の複数の分析領域を含むハイブリッドポイントオブケアチップにあってもよく、前記分析領域は円弧に沿って前記チップに配置される。本発明では、円弧に沿った複数の分析領域の構成を有するハイブリッドポイントオブケアチップは、本発明の片面分析装置及びホールセンサ分析装置に特にうまく動作する。
本発明はさらに、超常磁性粒子イメージング分析装置を使用する方法を提供し、超常磁性ナノ粒子で標識された分析物を有するサンプルを提供するステップと、前記サンプルを分析装置の場のない領域に配置するステップと、前記場のない領域に前記超常磁性ナノ粒子を励起して、前記超常磁性ナノ粒子の常磁性応答からの信号を取得するステップと、前記信号を感知して伝送するステップと、前記信号を分析して前記分析物の特性を取得するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、1つの区画室を有する1つの分析領域が使用され、前記区画室に分析物が固定される、本発明の分析方法の第1実施形態を示す。
図2図2は、1つの区画室を有する1つの分析領域が使用され、前記区画室に複数種の分析物が固定される、本発明の分析方法の第2実施形態を示す。
図3図3は、複数の区画室を有する1つの分析領域が使用され、各区画室に異なる分析物が固定される、本発明の分析方法の第3及び第4実施形態を示す。
図4図4は、複数の区画室を有する1つの分析領域が使用され、各区画室に複数種の分析物が固定される、本発明の分析方法の第5及び第6実施形態を示す。
図5図5は、それぞれ1つの区画室を有する複数の分析領域が使用され、各区画室に異なる分析物が固定される、本発明の分析方法の第7実施形態を示す。
図6図6は、それぞれ1つの区画室を有する複数の分析領域が使用され、各区画室に複数種の分析物が固定される、本発明の分析方法の第8実施形態を示す。
図7図7は、それぞれ複数の区画室を有する複数の分析領域が使用され、各区画室に異なる分析物が固定される、本発明の分析方法の第9及び第10実施形態を示す。
図8図8は、それぞれ複数の区画室を有する複数の分析領域が使用され、各区画室に複数種の分析物が固定される、本発明の分析方法の第11及び第12実施形態を示す。
図9A図9Aは、本発明のハイブリッドポイントオブケアチップの構造の対応する平面図及び側面図であり、平面図が上部に、側面図が下部にある。
図9B図9Bは、本発明のハイブリッドポイントオブケアチップを構成する層及び部材の構造を示す分解図である。
図9C図9Cは、本発明の非線形ハイブリッドポイントオブケアチップの実施形態の構造を示す。
図9D図9Dは、本発明のハイブリッドポイントオブケアチップアレイの実施形態の構造を示す。
図10A図10Aは、本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置の第1実施形態の構造を示し、前記分析装置は共線形分析装置である。
図10B図10Bは、図10Aの点線で示される中央の正方形の拡大図であり、本発明のハイブリッドポイントオブケアチップの構造を示し、前記チップは使い捨て部材として前記位置に位置し分析装置に適合される。
図11A図11Aは、本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置の第2実施形態の構造を示す正面図であり、前記分析装置は開放式分析装置である。
図11B図11Bは、同じ分析装置の構造を示す側面図である。
図12A図12Aは、本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置の第3実施形態の「E」字状磁気コアの励起場の構造を示す。
図12B図12Bは、本発明のハイブリッドポイントオブケアチップを示す局所拡大図であり、前記チップは、分析装置に適合された分析装置の使い捨て部材である。
図13A図13Aは、本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置の第4実施形態の構造を示す平面図であり、前記分析装置は、2つの同心円状に配置された送信コイルと分離された受信コイルとを有する片面分析装置である。
図13B図13Bは、本発明のハイブリッドポイントオブケアチップの構造を示す局所拡大図であり、前記チップは、分析装置の使い捨て部材として、分析装置の送信コイル及び受信コイルと一緒に使用される。
図14図14は、本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置中の信号チェーンを示す図である。
図15A図15Aは、本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置の第5実施形態に使用される永久磁石の構造を示す局所側面図であり、前記分析装置はホールセンサ分析装置である。
図15B図15Bは、本発明の永久磁石及びハイブリッドポイントオブケアチップを示す局所平面図であり、前記チップは分析装置の使い捨て部材として、永久磁石に関連して使用される。
図15C図15Cは、本発明の分析装置の構造を示す側面図である。
図15D図15Dは、本発明の分析装置の構造を示す平面図である。
図16図16は、本発明の非線形ハイブリッドポイントオブケアチップと一緒に使用される超常磁性粒子イメージング分析装置の第6実施形態の構造を示す。
図17図17は、ホールセンサに基づく本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置中の信号チェーンを示す図である。
図18図18は、実施例1に使用される本発明のハイブリッドポイントオブケアチップを示す。
図19図19は、実施例1における第1、第2及び第3分析領域の縦軸としての磁気応答(Mox)に対する横軸としてのSPNP濃度(ng/ml)の実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明において、「形式」又は「アッセイ形式」という用語は、分析方法を行う時に必要であり、且つ該分析方法に使用される部材、装置及び試薬の集まりを指す。
【0050】
本発明の分析方法は、ランジュバン(Langevin)理論に基づく超常磁性粒子イメージング技術を使用して、変化する外部磁場に対する超常磁性ナノ粒子(SPNP)、主にその高調波の非線形応答を検出して分析する。磁性粒子イメージング技術による溶液中の遊離磁性粒子の測定とは対照的に、固定相に固定された超常磁性ナノ粒子で標識された分析物の濃度を測定する。結果として、本発明の方法は、トレーサーの分布を測定する必要とせずに、分析領域における分析物の総濃度を測定するだけでよい。分析領域が既知であるため、濃度を測定するために再構成する必要はない。
【0051】
本発明の方法は、変化する外部磁場に対する超常磁性ナノ粒子の空間的にエンコードされた非線形応答を使用することで、チップの分析領域における複数種の分析物を同時に定量的にアッセイする超常磁性粒子イメージング技術を使用する。
【0052】
本発明では、超常磁性粒子イメージング技術はインビトロ診断に適用される。超常磁性ナノ粒子の製造に用いられる材料の選択範囲はインビボ診断に使用されるものよりはるかに広く、Co、Fe、CoFe、Co合金、フェライト、窒化コバルト、酸化コバルト、Co-Pd、Co-Pt、鉄、鉄合金、Fe-Au、Fe-Cr、Fe-N、FeO、Fe-Pd、Fe-Pt、Fe-Zr-Nb-B、Mn-N、Nd-Fe-B、Nd-Fe-B-Nb-Cu、Ni又はNi合金であってもよい。
【0053】
本発明では、異なる形状を有する粒子は異なる高調波を与えるために用いられる。超常磁性ナノ粒子は、球形、楕円形及び扁平状を含むがこれに限定されない様々な幾何学的形状に製造することができる。一部の粒子は、分析のために異なる高調波を生成するために異なる塗料でコーティングされる。
【0054】
本発明では、異なる粒径の粒子が異なる高調波を与えるため、超常磁性ナノ粒子のサイズは1~1000nmの間である。
本発明では、固定粒子と遊離粒子は異なる高調波を与える。このため、固定された超常磁性ナノ粒子から信号を分離する方法は提供される。その結果、分析領域を洗浄し非結合の超常磁性ナノ粒子を除去する必要とせずに、アッセイ開始の後分析物を直接測定することができる。
本発明では、分析物は、超常磁性ナノ粒子で標識し固定相に固定できる物質であってもよく、有機分子、生体分子、ペプチド、ポリマー、アミノ酸、タンパク質、酵素、抗体、DNA、RNA、ウイルス、細菌、細胞、無機分子、及び薬物を含むがこれに限定されない。
本発明では、測定可能なサンプルは、全血、血清、血漿、尿、唾液、糞便、涙、汗などの体液を含むがこれに限定されない。液体、固体、及び気体の抽出物であってもよい。
【0055】
本発明の分析方法は、以下の実施形態では図面を参照しながら更に説明される。図1に示される本発明の分析方法の第1実施形態では、分析を行うアッセイ形式は、超常磁性ナノ粒子13で標識された分析物12を固定する1つの区画室11からなる1つの分析領域10を含む。
【0056】
アッセイ形式が本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置に配置されると、変化する励起場が分析領域10に適用され、且つ分析領域10と区画室11中の超常磁性ナノ粒子13は応答して、分析装置の受信コイルに高調波信号を生成する。生成された高調波信号は、区画室11中の超常磁性ナノ粒子の濃度に正比例し、
【数1】
【0057】
ここで、
は区画室11から受信した信号、
は区画室11のシステム関数、且つ、
は超常磁性ナノ粒子の濃度、又は区画室11中の分析物の濃度である。システム関数は、既知の濃度
のサンプルの応答(
)を測定することにより取得できる:
【数2】
【0058】
システム関数が取得されたら、受信コイル中の信号を測定することにより形式中の分析物の濃度を決定することができる。
図2に示される本発明の分析方法の第2実施形態では、変化する外部磁場に対する超常磁性ナノ粒子の非線形応答を使用して、アッセイ形式で複数種の分析物を定量化する。アッセイ形式は、1つの区画室11からなる1つの分析領域10を含む。区画室11には、総数Zの分析物(1番目の分析物を12、Z番目の分析物を12’として示す)が固定されている。数字Zは、1~20の整数である。各分析物は超常磁性ナノ粒子で標識できる(それぞれ分析物12及び12’を標識するための超常磁性ナノ粒子13及び13’が示される)。
【0059】
アッセイ形式が本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置に配置されると、変化する励起場が分析領域10及び区画室11に適用され、且つ区画室11中のすべての超常磁性ナノ粒子はいずれも応答し、分析装置の受信コイルに高調波信号を生成する。磁性粒子の濃度はその高調波に正比例する。区画室11において測定されたn次高調波
の振幅は、区画室11内のすべての粒子のn次高調波の振幅
の合計である(Rauwerdink,A、「複数種の磁性ナノ粒子の同時定量(Simultaneous quantification of multiple magnetic nanoparticles)」、『ナノテクノロジー(Nanotechnology)』、21(45),455101 (2010)を参照)、
【数3】
粒子iのn次高調波の振幅
は粒子iの濃度
に正比例する、
【数4】
は、濃度(
)が既知の粒子iの溶液のn次高調波を測定することにより取得できる定数である、
【数5】
【0060】
粒子のすべての高調波の比率は濃度と関係がないため(Rauwerdink,A,2010を参照)、以式で区画室11中の各粒子の濃度を解くことができる、
【数6】
ここで、
【数7】
式において、高調波は低次から高次まで使用され、こらは、いずれの高調波を使用して計算できるが、高調波の振幅は、次数が高くなることにつれて迅速に減少するためである。区画室11の3番目から(2Z+1)番目の高調波を測定することにより、全てのZ種の分析物の濃度を式で決定する。最大限、1(分析領域)・1(区画室)・Z(SPNP)分析物を同時に分析することができ、この場合、1(分析領域)・1(区画室)×20(SPNP)=20分析物である。
【0061】
図3に示される本発明の分析方法の第3実施形態では、変化する外部磁場に対する空間的にエンコードされた区画室中の超常磁性ナノ粒子の非線形応答は、アッセイ形式で複数種の分析物を定量化することに使用される。アッセイ形式は、Y個の区画室(第1区画室11及び第Y区画室11’が示される)からなる1つの分析領域10を含む。Yは1~20範囲内の整数である。各区画室は、異なる分析物(区画室11中の1番目の分析物12及び区画室11’中のY番目の分析物12’が示される)を固定する。各種類の分析物は、いずれも超常磁性ナノ粒子で標識される(区画室11中の分析物12の粒子標識13及び区画室11’中の分析物12’の粒子標識13’が示される)。
【0062】
アッセイ形式が本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置に配置されると、収束場コイルは、区画室11の大きさの場のないスペース(FFS)を生成する。分析領域10の構造(区画室の数、形状及び位置を含む)が既知であるため、区画室の位置に基づいてFFSを移動して、1つの区画室に適用することができる。FFSが区画室11に適用されると、駆動場コイルによって生成された変化する励起場が区画室に適用される。場のない区画室11中の超常磁性ナノ粒子13は応答し、分析装置の受信コイルに高調波信号を生成する。第1実施形態で説明された方式で、区画室11中に固定された分析物12を分析する。区画室11を分析した後、FFSを次の区画室に移動して次の区画室に固定される分析物を分析する。分析領域10中の全てのY個の区画室が分析されるまで、同じプロセスを繰り返して実行する。このようにして、全てのY種の分析物(1番目の分析物12及びY番目の分析物12’のみが示される)はすべて定量化される。最大限、1(分析領域)・Y(区画室)・1(SPNP)分析物を同時に分析することができ、この場合、1(分析領域)・20(区画室)・1(SPNP)=20分析物である。
【0063】
本発明の分析方法の第4実施形態では、変化する外部磁場に対するSPNPの空間的にエンコードされた非線形応答は、アッセイ形式で複数種の分析物を同時に定量化することに使用される。アッセイ形式は図3に示される第3実施形態と同じであるが、構成で異なる分析方法が使用される。
アッセイ形式が本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置に配置されると、収束場コイルは場のないポイント(FFP)を生成する。(区画室(11、11’……)の数、それらの形状及びそれらの位置を含む分析領域10の構造は既知であるため、FFPは、分析領域10内に所定のルートで移動する。変化する励起場がFFPに適用されると、FFP内部のSPNP13、13’……の磁化を引き起こす。FFPは空間的及び時間的にエンコードされるため、FFPから生成された信号も空間的及び時間的にエンコードされる。誘導された磁化の長さは磁性粒子13、13’……の濃度に正比例する。磁性粒子の濃度(
)と該位置(
)及び時点での信号(
との間の関係は、
【数8】
であり、
はシステム関数である。これは、濃度が既知の磁性粒子溶液を配置し、同じ位置で高調波応答を測定することにより決定できる。既知のシステム関数を使用すると、下式で各FFPでの磁性粒子の濃度
を決定することができる(Rahmer,Jら、「3Dリアルタイム磁性粒子イメージング:エンコード及び再構成について(3D Real-time Magnetic Particle Imaging: Encoding and Reconstruction Aspects)」、『磁性粒子イメージングに関する第1回の国際討論会議事録(Proceedings of the First International Workshop on Magnetic Particle Imaging)』、2014、126-131頁)、
【数9】
は、第Y区画室11’中のサンプリング位置(
)での磁性粒子の濃度である。走査が完了する際、信号は、生成された位置に基づいて処理される。同じ区画室からの信号を一緒に処理する。理想的な状況で、第Y区画室11’中の磁性粒子の総濃度は区画室中の各位置の濃度の合計に比例する:
【数10】
は第Y区画室11’中の磁性粒子の総濃度である。
は、標準溶液を測定することにより取得できる定数である。非理想的な状況で、信号合計と総濃度の間の検量線を作成することができる。第1区画室11~第Y区画室11’を分析することにより、1番目の分析物12~Y番目の分析物12’を定量化する。最大限、1(分析領域)・Y(区画室)・1(SPNP)分析物を同時に分析することができる、この場合、1(分析領域)・20(区画室)・1(SPNP)=20分析物である。
【0064】
図4に示される本発明の分析方法の第5実施形態では、変化する外部磁場に対する空間的にエンコードされた区画室中の超常磁性ナノ粒子の非線形応答は、アッセイ形式で複数種の分析物を定量化することに使用される。アッセイ形式は、Y個の区画室(第1区画室11及び第Y区画室11’が示される)からなる1つの分析領域10を含む。Yは1~20範囲内の整数である。各区画室は、Z種の分析物(1番目の分析物12及びZ番目の分析物12’が示される)を固定する。Zは2~20範囲内の整数である。Z種の分析物はそれぞれZ種の超常磁性ナノ粒子で標識される(1番目のSPNP標識13及びZ番目のSPNP標識13’が示される)。
【0065】
アッセイ形式が本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置に配置されると、収束場コイルは区画室の大きさの場のないスペース(FFS)を生成する。分析領域10の構造(区画室11、11’……の数Y、それらの形状及びそれらの位置を含む)が既知であるため、区画室の位置に応じてFFSを移動し、1つの区画室に一回で適用することができる。FFSが第1区画室11に適用されると、駆動場コイルによって生成された変化する励起場が区画室に適用される。場のない区画室11中のSPNPは応答して、受信コイルに高調波信号を生成する。
【0066】
区画室11中に固定された分析物は、第2実施形態で説明された方式で分析する。第1区画室11中の分析物12、12’……(分析物の合計がZである)を定量化する。第1区画室11を分析した後、FFSを第2区画室に移動して該区画室を分析し、分析領域10中の第Y区画室11’が分析されるまで続ける。各区画室の分析方式はすべて区画室11と同じである。最大限、1(分析領域)・Y(区画室)・Z(SPNP)分析物を同時に分析することができ、この場合、1(分析領域)・20(区画室)・20(SPNP)=400分析物である。
【0067】
本発明の分析方法の第6実施形態では、変化する外部磁場に対するSPNPの空間的にエンコードされた非線形応答は、アッセイ形式で複数種の分析物を同時に定量化することに使用される。本実施形態は、図4に示されるアッセイ形式を分析する別の方法である。
【0068】
アッセイ形式が本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置に配置されると、収束場コイルは場のないポイント(FFP)を生成する。分析領域10の構造(区画室の数、それらの形状及びそれらの位置を含む)が既知であるため、FFPは分析領域内に所定のルートで移動する。変化する励起場がFFPに適用されると、FFP内部のSPNPの磁化を引き起こす。FFPが空間的及び時間的にエンコードされるため、FFPから生成された信号も空間的及び時間的にエンコードされる。同じ区画室からの信号を一緒に処理する。
【0069】
区画室において測定されたn次高調波の振幅
は、次のように該区画室中のすべての粒子のn次高調波の振幅
の合計である(Rauwerdink,A、「複数種の磁性ナノ粒子の同時定量」、『ナノテクノロジー』、21(45),455101 (2010)):
【数11】
【0070】
実験で測定された第n振幅(
)及び第2実施形態で説明された方法を使用することにより、各粒子iの振幅
を決定する。区画室中の粒子iのn次高調波の振幅はFFPで生成された粒子iの総濃度
に正比例する、
【数12】
は、濃度が既知の粒子iの溶液のn次高調波を測定することにより取得できる定数である。既知の
及び
に基づいて、FFPで生成された粒子iの総濃度
を取得することができる。
【数13】
理想的な状況で、磁性粒子iの濃度又は分析物iの濃度(
)はFFPで生成された粒子iの総濃度
に正比例する、
【数14】
は、濃度が既知の標準物によって実験的に決定できる粒子
の定数である。非理想的な状況で、対象の濃度範囲内の一連の標準物で、

の間の検量線を作成することができる。1つの区画室中の分析物を決定した後、同じ方式で他の区画室中のすべての分析物を決定することができる。これまでのところ、最大限、1(分析領域)・Y(区画室)・Z(SPNP)の濃度を同時にアッセイし、この場合、1(分析領域)・20(区画室)・20(SPNP)=400分析物である。
【0071】
図5に示される本発明の分析方法の第7実施形態では、変化する外部磁場に対するSPNPの非線形応答は、アッセイ形式で複数種の分析物を同時に定量化することに使用される。アッセイ形式は、X個の分析領域(第1分析領域10及び第X分析領域10’が示される)を含み、且つXは1~20範囲の整数である。各分析領域は1つの区画室(第1分析領域10中の第1区画室11及び第X分析領域10’中の第X区画室11’が示される)からなる。各区画室は、SPNP(第1区画室11中の第1SPNP13及び第X区画室11’中の第X SPNP13’が示される)で標識された異なる分析物(区画室11中の第1分析物12及び第X区画室11’中の第X分析物12’が示される)を固定する。分析方法の第7実施形態は第1実施形態と同じであり、相違点はX回で繰り返し実行されることである。最大限、X(分析領域)・1(区画室)・1(SPNP)分析物を同時に分析することができ、この場合、20(分析領域)・1(区画室)×1(SPNP)=20分析物である。
【0072】
図6に示される本発明の分析方法の第8実施形態では、変化する外部磁場に対するSPNPの非線形応答は、アッセイ形式で複数種の分析物を同時に定量化することに使用される。アッセイ形式は、X個の分析領域(第1分析領域10及び第X分析領域10’が示される)からなり、且つXは1~20範囲内の整数である。各分析領域は1つの区画室(第1分析領域10中の区画室11及び第X分析領域10’中の区画室11’が示される)からなる。各区画室は、Z種の分析物(区画室11と11’中の第1分析物12及び第Z分析物12’の両方が示される)を固定し、且つZは1~20範囲内の整数である。1つの区画室中の各種類の分析物は、いずれも異なるSPNP(それぞれ1番目の分析物のために使用される第1標識SPNP13及びZ番目の分析物のために使用される第Z標識SPNP13’が示される)で標識される。
【0073】
第8実施形態に使用される分析方法は第2実施形態と同じであり、相違点はX回で繰り返し実行されることである。最大限、X(分析領域)・1(区画室)・1(SPNP)分析物を同時に分析することができ、この場合、20(分析領域)・1(区画室)×1(SPNP)=20分析物である。
【0074】
図7に示される本発明の分析方法の第9実施形態では、変化する外部磁場に対する空間的にエンコードされた区画室中のSPNPの非線形応答は、アッセイ形式で複数種の分析物を定量化することに使用される。アッセイ形式は、X個の分析領域(第1分析領域10及び第X分析領域10’が示される)を含み、且つXは1~20範囲内の整数である。各分析領域はY個の区画室(第1分析領域10中の第1区画室11及び第Y区画室11’、第X分析領域10’中の第1区画室11a及び第Y区画室11a’が示される)からなり、且つYは1~20範囲内の整数である。各区画室は、SPNP(分析領域10の第1区画室11中の分析物12のために使用されるSPNP標識13、分析領域10の第Y区画室11’中の分析物12’のために使用されるSPNP標識13’、第1分析領域10’の第1区画室11a中の分析物12aのために使用されるSPNP標識13a、及び第X分析領域10’の第Y区画室11a’中の分析物12a’のために使用されるSPNP標識13a’が示される)で標識された異なる分析物(分析領域10の第1区画室11中の1番目の分析物12及び第Y区画室11’中のY番目の分析物12’、及び分析領域10’の第1区画室11a中の1番目の分析物12a及び第Y区画室11a’中のY番目の分析物12a’が示される)を固定する。
【0075】
第9実施形態に使用される分析方法は第3実施形態と同じであり、相違点はX回で繰り返し実行されることである。最大限、X(分析領域)・Y(区画室)・1(SPNP)分析物を同時に分析することができ、この場合、20(分析領域)・20(区画室)・1(SPNP)=400分析物である。
【0076】
本発明の第10実施形態では、変化する外部磁場に対するSPNPの空間的にエンコードされた非線形応答は、アッセイ形式で複数種の分析物を同時に定量化することに使用される。アッセイ形式は図7に示される第9実施形態と同じであるが、本実施形態は構成を分析する異なる方法である。
第10実施形態に使用される分析方法は第4実施形態と同じであり、相違点はX回で繰り返し実行されることである。最大限、X(分析領域)・Y(区画室)・1(SPNP)分析物を同時に分析することができ、この場合、20(分析領域)・20(区画室)×1(SPNP)=400分析物である。
【0077】
図8に示される本発明の分析方法の第11実施形態では、変化する外部磁場に対する空間的にエンコードされた区画室中のSPNPの非線形応答は、アッセイ形式で複数種の分析物を定量化することに使用される。アッセイ形式は、X個の分析領域(第1分析領域10及び第X分析領域10’が示される)を含み、且つXは1~20範囲内の整数である。各分析領域はY個の区画室(第1分析領域10中の第1区画室11及び第Y区画室11’、第Y分析領域10’中の第1区画室11a及び第Y区画室11a’が示される)からなり、且つYは1~20範囲内の整数である。各区画室は、Z種の分析物(第1分析領域10の区画室11中の1番目の分析物12及びZ番目の分析物12、区画室11’中の1番目の分析物12’及びZ番目の分析物12z’、第X分析領域10’の区画室11a中の1番目の分析物12a及びZ番目の分析物12b、区画室11a’中の1番目の分析物12a’及びZ番目の分析物12b’が示さえる)を固定し、Zは1~20範囲内の整数であってもよい。各分析物はそれぞれ異なるSPNPで標識される(それぞれ分析領域10の区画室11中の分析物12及び12zのために使用されるSPNP13及び13z、区画室11’中の分析物12’及び12z’のために使用されるSPNP13’及び13z’、及び、それぞれ分析領域10’の区画室11a中の分析物12a及び12bのために使用されるSPNP13a及び13b、区画室11a’中の分析物12a’及び12b’のために使用されるSPNPS13a’及び13b’が示される)。
【0078】
第11実施形態に使用される分析方法は第3実施形態と同じであり、相違点はX回で繰り返し実行されることである。最大限、X(分析領域)・Y(区画室)・Z(SPNP)分析物を同時に分析することができ、この場合、20(分析領域)・20(区画室)・20(SPNP)=8,000分析物である。
【0079】
本発明の分析方法の第12実施形態では、変化する外部磁場に対するSPNPの空間的にエンコードされた非線形応答は、アッセイ形式で複数種の分析物を同時に定量化することに使用される。アッセイ形式は図8に示される第11実施形態と同じであるが、本実施形態は構成を分析する異なる方法である。本実施形態に使用される分析方法は第6実施形態と同じであり、相違点はX回で繰り返し実行されることである。最大限、X(分析領域)・Y(区画室)・X(SPNP)分析物を同時に分析することができ、この場合、20(分析領域)・20(区画室)・20(SPNP)=8,000分析物である。
【0080】
これらの実施形態に示されるように、本発明の分析方法は、超常磁性粒子イメージング技術を使用して、固定相に固定された分析物を定量的的に測定する。該分析方法は、磁性標識の磁化によって引き起こされた磁束量の変化を測定することにより、マルチプレックスアッセイで3次元固定相に固定される分析サンプル中の複数種の磁性標識分析物の濃度を同時に測定する。
【0081】
本発明では、超常磁性粒子イメージング技術は、本発明の3次元ハイブリッドポイントオブケアチップと良好に協働でき、且つ、側方流動テスト、マイクロ流体アッセイ、「チップ実験室」装置及び独立したバイオセンサなどの他のアッセイ形式にも適用できる。化学的及び生物学的試薬のためのハイスループットでコスト効果が良好な検出プラットフォームに対する需要はまだ満たされていない。これらのプラットフォームは、薬物開発、毒性研究、ポイントオブケア診断、及び環境監視に用いられる化学ライブラリーのスクリーニングを含む、多くの分析及び診断の用途に適用できる。通常のセンサは、一般的に、化学的、光学的、分光学的、電気インピーダンス又は質量に基づく検出を用いて生化学的現象を解釈する。超常磁性粒子イメージングは、大きさ、形状及び成分が異なる磁性標識又は磁性ナノ粒子を使用する。
【0082】
超常磁性粒子イメージング技術を使用する本発明の分析方法は、多くの医療診断アッセイ及び薬物監視試験に従って直接且つ正確な検出を実行する新しいパラダイムを表す。超常磁性粒子イメージング技術は、磁気に基づく診断アッセイの有効性及び感度を拡張するだけでなく、磁気に基づく他のアッセイの主な欠点も克服し、すなわち、単一の測定で複数種の分析物を同時に検出し、光学に基づくアッセイの利点を有する。本発明により、高価な現代の分析実験室の関連費用なしに迅速で感度の高い装置を必要とする分析方法の開発は可能になる。現在、DNA/RNA分析、環境テスト、化学及び生物戦争の検出、薬物乱用のスクリーニング、食品供給の品質検出などのテストは、超常磁性粒子イメージング技術を利用し、及び生分解性で使い捨てのアッセイチップを有する小型のポータブルハンドヘルドデバイスを生産することにより改良することができる。
【0083】
本発明はまた、本発明の超常磁性ナノ粒子に基づく分析方法と組み合わせて使用することができるハイブリッドポイントオブケアチップを提供する。
【0084】
本発明のハイブリッドポイントオブケアチップは、サンプルが導入されるサンプル導入領域と、サンプルの流れがチップの異なるレベルにガイドされる切替えカラムと、分析物が捕獲され、濃縮され、クリーニングされる分析領域と、過剰なサンプル及び洗浄液を収集する廃棄物チャンバと、チップ上の異なる元素が互いに連通するマイクロチャネルとを備える。この設計では、液体サンプルは、毛管力によってサンプル導入領域から吸収室に自動的に流れることができる。それはまた、サンプル分散チャネル、試薬貯蔵タンク、混合ポート、及びポンプを備えてもよい。
【0085】
本発明のハイブリッドポイントオブケアチップの分析領域は、分析物捕獲材料が装填される3次元の多区画室固定相を収容する。サンプル流体は、自体が3次元の領域である分析領域の固定相へ、およびそれを通って3次元ルートで流れる。それらの大きさ及び位置が既知であるため、再構成を必要とせずに分析物の濃度を測定することができる。
【0086】
本発明のハイブリッドポイントオブケアの形式は、液体サンプルの流路中の固定相で構成される。固定相は、孔に直接分配するか、生物学的方法で成長させるか、または自己組織化プラスチックとポリマー、シリカ又は同等物(有機/非有機構造など)で製造された材料のプリフォームからなる。例としては、自然界で生物学的に製造されるストロマトライト、温泉で無機的に形成される瑪瑙やオパールゲル等のコロイド鉱物、タケノコ又はバナナの木の茎葉におけるハニカム状の壁及び区画室がある。すべての自然構造は、DNA/RNA生物学的活性の設計図によって制御され、いずれも本発明に適用できる。
【0087】
ブロック状又はキャスト構造が本発明の構造の製造に使用できるが、これらの構造は、好ましい積層構造内に形成された隙間に配置される。本発明において、カラム、捕獲領域、又は分析領域と呼ばれ,それらは、実際には非常に大きな表面積を有する多孔質材料である機能的「固定相」を通過するサンプル液体の流れを可能にする。分析領域は、サンドイッチ又は競合免疫アッセイ又は本分野で既知のDNA/RNAバイオチップの類似の化学的方法で機能化される。免疫アッセイ法の抗体又は抗原、又は磁性ナノ粒子で標識された小型DNAプローブを使用することにより、これらの領域に対象の分析物を捕獲する。又は、競合アッセイにおいて、分析物は、機能化された固定相の表面構造上の結合部位を競合する。導入されたサンプル全体は、親水性/疎水性フィルムが積層して組み合わせ形成された3次元チャネルから、直線領域又は円柱のそれぞれの垂直ルートを流れる。
【0088】
好ましい形態において、カラム隙間は、紙、ポリマー、プラスチック、又は金属化プラスチック又は金属材料であってもよい多重積層のフィルムによって形成される。これらのフィルムは、Adhesive Research、3M、DuPont Polymers、Pall、Coveme及びTesaから購入できる。フィルムは、異なるコーティング及び特性を有し、例えば、一部が親水性又は疏水性である。それらの厚さが.001”~.020”の間にあってもよく、好ましくは.002”~.015”の間であり、最も好ましくは.002”~.009”の間である。磁気読み取りシステムの要件に応じて、すべてのこれらの積層は所要の形式に変換できる。バージョンは、分散サンプル導入装置、捕獲又は分析領域、及び最終的な貯蔵コアを有する多重線形の形式、より高速な円筒形式及び部分的なディスク(partial disk)である。
【0089】
各カラムは互いに液体連通し、液体はカラムの底部から最上部に流れ、次に隣接するカラムの最上部から底部に流れ、且つ次の隣接するカラムの底部から最上部に流れ、(分析領域の数に応じて)最終的にコア部材に流れる。チャネル及びカラムのそれぞれ又は全ては、運ばれる空気を遮断してエアポケットを形成し、液体の流れをブロッキングする可能性がある。遮断された空気が問題になると、各カラムの最上部に小さな通気口を設けることにより解決することができる。この通気口により、遮断された空気が流体チャネルとカラムから漏れることができ、それにより液体の流れへのブロッキングを防止し、しかし、該通気口は、液体が漏れないように十分に小さい。これらの通気口には、液体と接触する際に閉じ又は液体サンプルの表面張力が液体の漏れを防止するために十分に小さく製造される多孔質プラスチックが配置されてもよく、これは本分野において既知である。このサイズは、0.1~10ミクロンの範囲であってもよく、且つ好ましくは約5ミクロンである。他の方法としては、毛細管力が、運ばれる空気を流体が流れる前に移動させるのに十分であることを確保することによって、この状況の発生を防止し、これは、チャネル中の材料又は塗膜を選択することによって実現される。
【0090】
サンプル導入領域と、所要の分析領域の流れ、速度及び3次元レベルを制御する連通チャネルとの間には、流体チャネルに流れる液体サンプルの流れを所要の第1分析カラムに切り替える小さなカラムがある。本発明における「切替えカラム」は、フィルタ、ブロッキング剤又は複合体(複合体は、磁気的に標識された識別元素であり、例えばサンドイッチアッセイにおいて、分析カラムに捕獲され測定できる抗体又はタンパク質である)を有しても有さなくてもよい。これらの搭載試薬により、サンプル導入領域に適用される前にサンプルを複合体と予め混合する必要がない。したがって、保存期間を延ばして感度を向上させ、且つアッセイの変動係数を低減させる。
【0091】
本発明におけるサンプル導入装置は、赤血球を分離する装置を備えてもよい。該装置は、赤血球の形状を変化する能力、及び/又は内部流体を放出する能力が溶血プロセスで分析領域の捕獲化学物質への干渉を引き起こす可能性があるため、カラムのブロッキングを防止する。
【0092】
各カラムは互いに液体連通し、同じ平面においても、又はサンプルの流れを異なる領域に分離することで分析領域を意図的に分離しても、化学的干渉を回避し又は得られる測定の分析をより正確にすることができる。例としては、測定されるサンプル中の分析物が、同じサンプルからの低濃度の分析物に比べて、高い濃度を有する場合、得られる測定結果として、常に低濃度の分析物の読み取り値を不明瞭にする。サンプルの流れを異なる3次元レベルのサンプルの流れに変更することにより、この2種類の分析物からのいかなる干渉を最小化することができる。
【0093】
本発明のハイブリッドポイントオブケアチップは、固定相分析領域を有する3次元マルチレベル構造である。フィルムの層を一体に積層することによって製造される。積層する前に、ハイブリッドポイントオブケアチップのある特性をフィルムに組み合わせる。積層後に他の特性を作成する。サンプルが流れる層がレベルと呼ばれる。各チップは1~20個のレベルを有してもよく、1~10個のレベルが好ましい。
【0094】
ハイブリッドポイントオブケアチップは、1~5つのサンプル導入領域、1~5つの切替えカラム、0~10個の試薬リザーバ、1~20個の分析領域、及び1~5つの液体吸収部位からなる。サンプル導入領域、試薬リザーバ、分析領域及び流体吸収領域は、マイクロ流体チャネル及び貫通穴(垂直で互いに接続されるチャネル)によって接続され、それにより、サンプルを分割して異なるレベルにガイドすることができる。ハイブリッドポイントオブケアチップは、サンプル導入領域に接続されるダイアフラムポンプなどの液体駆動機構を有しても有さなくもよい。
【0095】
ハイブリッドポイントオブケアチップに使用されるフィルムは、プラスチック、接着剤、紙、木材、繊維、シリコン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ガラス繊維、セルロース、多糖類、タンパク質ポリマー、圧延された粒子で製造される。フィルムの表面は、疎水性及び親水性を含む所要の特性を有するように変性することができる。各サンプル導入領域は、赤血球分離装置を有しても有さなくてもよい。サンプル中の対象の分析物を識別して固定するために必要な試薬をさらに含むことができる。サンプル導入領域は、1~200マイクロリットルのサンプルを収容することができる。
【0096】
サンプルは、全血、血漿、血清、尿、唾液、涙、汗、便抽出物、DNA/RNA抽出物、抗原含有溶液、抗体、酵素、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、ホルモン、有機及び無機分子、バイオマーカ、産業汚染物質、病原体、ウイルス、細胞、細胞培養抽出物及び環境サンプルであってもよい。
試薬リザーバには、磁性粒子、蛍光粒子、化学発光粒子及び放射性粒子、抗体、タンパク質、DNA/RNAプローブ又はキレート剤で機能化された磁性粒子、蛍光粒子、化学発光粒子及び放射性粒子、蛍光、化学発光又は放射性標識された抗体、タンパク質、DNA/RNAプローブ及びキレート剤を含む、対象の分析物を識別して固定するために必要な試薬を含む。試薬リザーバは、同じ又は異なるサンプルルートに配置されてもよい。試薬を試薬リザーバに直接配置し又は固体支持体に吸着することができる。
各分析領域は固定相の1~20個のセクションによって組み合わせて形成される。分析領域の異なるセクションは同じ又は異なる固定相からなってもよい。固定相は、プラスチック、シリカ、ガラス、酸化アルミニウム、有機ポリマー、無機ポリマー及び生分解性ポリマーで製造される粒子、プラスチック、繊維、ポリマー、多糖類、セルロース、紙、木材、生物学的構築物、生体足場、ガラス繊維、生分解性ポリマー及びタンパク質ポリマーで製造される細孔膜、水不溶性ゲル、コロイドであってもよい。膜は、織られた、織られない又は圧延された粒子であってもよい。固定相は、物理的吸着、又は対象の分析物に特異的な識別試薬との共有結合によって機能化される。固定相は、分析領域の形状及び大きさで予め成形された後領域に配置されてもよく、又は領域に直接分配されてもよい。分析領域は、1つのレベル内、又は複数のレベルにわたって構造され得る。
【0097】
各吸収部位はいずれも流体吸収パッドを有するチャンバ室からなる。パッドは、プラスチック、繊維、ポリマー、多糖類、セルロース、紙、木材、生物学的構築物、生体足場、ガラス繊維、生分解性ポリマー及びタンパク質ポリマーで構造される細孔膜、ヒドロゲル、圧延された粒子である粒子で製造される。
【0098】
積層材料は、生分解性であり、且つ迅速に分解でき環境に悪影響を与えない複数種のポリマー、繊維、セルロイド及び紙で製造できる。例としては、テスト構造を支持する従来のプラスチックカセットがないものが挙げられ、支持が積層板のテスト設計に統合され、且つ自己支持型である。
図9A~9Dに示すように、本発明のハイブリッドポイントオブケアチップの構造を、以下の実施形態で更に説明する。図9Aに示される本発明のハイブリッドポイントオブケアチップの一実施形態では、本発明の3次元ハイブリッドポイントオブケアチップ20は、1つのサンプル導入領域21の形式のサンプル導入領域と、3つの分析領域210a、210b及び210cと、切替えカラム24と、通気口28を有する吸収室26の形式の流体吸収領域とを備える。続いて、サンプル導入領域21及び切替えカラム24はマイクロチャネル23aによって接続され、切替えカラム24及び第1分析領域210aはマイクロチャネル23bによって接続され、第1分析領域210a及び第2分析領域210bはマイクロチャネル23cによって接続され、第2分析領域210b及び第3分析領域210cはマイクロチャネル23dによって接続される。第1分析領域210aは、第1区画室211a、第2区画室211b及び第3区画室211cを有する多区画室分析領域である。図9Aにおける矢印は、チップ中のサンプルの流れを示す。
【0099】
チップで発生するアッセイの化学的及び生物学的反応に必要な試薬22は、サンプル導入領域21に予め充填される。分析サンプルの量は1~500マイクロリットルであり、通常、1~100マイクロリットルであり、好ましくは5~10マイクロリットルである。サンプルは、血清、血漿、唾液、汗、涙、痰、尿、および綿棒で抽出された表面ワイプ、さらに細胞培養物、糞便物、全血などの半固形物(全血分析のために、サンプル導入領域21の構造には、赤血球分離機構が組み込まれる場合)を含むがこれに限定されない、前処理されても又は処理されなくてもよい。
【0100】
サンプルをサンプル導入領域21に加えて試薬22に迅速に溶解する。サンプルは試薬22と混合して、マイクロチャネル23aを通過し、切替えカラム24に入る。切替えカラム24の機能は、サンプルを異なるレベルにガイドすることである。本実施形態では、切替えカラム24は、マイクロチャネル23bを介してサンプルをチップ20の分析領域210aの上位レベルにガイドする(必要に応じて、サンプルの流れを下位のレベルに切り替えることもできる)。本発明のマルチレベルの設計では、切替えカラム24は、必要に応じてサンプルを任意のレベルに切り替えることができる。切替えカラム24中の充填材料25はさらに、サンプル中の固体不純物を除去してクリーニングされたサンプルを分析領域に輸送するフィルタとして機能する。サンプルは、切替えカラム24を通過した後、マイクロチャネル23bを通過して第1分析領域210aに入る。
【0101】
一般的に、本発明のハイブリッドポイントオブケアチップ中の分析領域は、1~20個の区画室を有するように製造されてもよく、通常は1~10個の区画室であり、好ましくは1~5つの区画室である。本実施形態では、3つの区画室211a、211b及び211cがある。
各区画室は、アッセイに応じて同じ又は異なる固定相を有するように製造されてもよい。固定相は、プラスチック、シリカ、ガラス、酸化アルミニウム、有機ポリマー、無機ポリマー及び生分解性ポリマーで製造される粒子、プラスチック、繊維、ポリマー、多糖類、セルロース、紙、木材、生物学的構築物、生体足場、ガラス繊維、生分解性ポリマー及びタンパク質ポリマーで製造される細孔膜、水不溶性ゲル、コロイドであってもよい。膜は、織られた、織られない又は圧延された粒子であってもよい。固定相は、物理的吸着、又は対象の分析物に特異的な識別試薬との共有結合によって機能化される。固定相は、分析領域の形状及び大きさで予め成形された後領域に配置されてもよく、又は領域に直接分配されてもよい。分析領域は、1つのレベル内、又は複数のレベルにわたって構造され得る。各区画室は異なる分析物を固定することができる。
【0102】
サンプルが第1分析領域210aを通過する時、対象の分析物が捕獲される。他のサンプルは第1分析領域210aを離れる。該プロセスで、分析物は、選択的固定相を有する区画室によって分離される。該分析物も区画室に濃縮され、通過するサンプル液体によってクリーニングされる。本発明の多区画室の設計により、多重化は可能になる。
【0103】
マイクロチャネル23cを通過した後、サンプルは第2分析領域210bに入る。分析領域210bは、第1分析領域210aと同様に、区画室の数、固定相の材料及び区画室に装填される異なる捕獲材料の数を含む同じ構造を有してもよい。第2分析領域210bを通過した後、第2セットの分析物は分離されて捕獲される。サンプルは移動し続けてマイクロチャネル23dを通過し、第3分析領域210cに入る。第3セットの分析物は第3分析領域210cに分離される。余剰のサンプル流体及び過剰な試薬は、吸収室26中の流体吸収パッド27によって吸収される。吸収パッド27は、プラスチック、繊維、ポリマー、多糖類、セルロース、紙、木材、生物学的構築物、生体足場、ガラス繊維、生分解性ポリマー及びタンパク質ポリマーで構造される細孔膜、ヒドロゲル、粒子又は圧延された粒子で製造される。
【0104】
本発明では、ハイブリッドポイントオブケアチップは、1~20個の分析領域を有するように製造されてもよく、通常、1~10個の分析領域であり、且つ好ましくは1~6つの分析領域である。
図9Bは、本発明のハイブリッドポイントオブケアチップの構造を示す。本発明のハイブリッドポイントオブケアチップ20は、固定相分析領域210a、210b及び210cを有する3次元マルチレベル構造である。本実施形態では、チップ20は、フィルムの層(底層201を含む)を一体に積層することによって構成される。
【0105】
本発明では、積層する前に、ハイブリッドポイントオブケアチップのある特徴をフィルムに組み合わせる。積層後に他の特徴を作成する。サンプルが流れる層がレベルと呼ばれる。各チップは1~20個のレベルを有してもよく、1~10個のレベルが好ましい。
【0106】
本発明では、ハイブリッドポイントオブケアチップは、1~5つのサンプル導入領域、0~10個の試薬リザーバ、1~20個の分析領域、及び1~5つの流体吸収領域からなる。サンプル導入領域、試薬リザーバ、分析領域及び流体吸収領域は、マイクロ流体チャネル及び貫通穴(垂直で互いに接続されるチャネル)によって接続され、それにより、サンプルを分割して異なるレベルにガイドすることができる。ハイブリッドポイントオブケアチップは、液体駆動機構を有しても有さなくもよい。
ハイブリッドポイントオブケアチップに使用されるフィルムは、プラスチック、接着剤、紙、木材、繊維、シリコン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ガラス繊維、セルロース、多糖類、タンパク質ポリマー、圧延された粒子で製造される。疎水性及び親水性などの所要の特性を有するように、フィルムの表面を変性することができる。
【0107】
図9Bに示されるチップ20の構造では、チップ20は5層のフィルム、すなわち、底層201、底層チャネル層202、中間層203、最上層チャネル層204及び最上層205からなる。設計の要件に基づいてフィルムの厚さを調整する。マイクロチャネルはチャネル層202及び204によって形成される。層201、202及び203を組み立てる時、サンプル導入領域21を切替えカラム24に接続するマイクロチャネル23a、第1分析領域210aを第2分析領域210bに接続するマイクロチャネル23c、及び第3分析領域210cを吸収室26に接続するマイクロチャネル23eを形成する。層204と205を追加した後、切替えカラム24を第1分析領域210aに接続するマイクロチャネル23b、第2分析領域210bを第3分析領域210cに接続するマイクロチャネル23dを形成する。同時に、切替えカラム24と分析領域が構造される。該構造により、サンプルがマイクロチャネルを通過して位置の間に水平に移動し、且つ切替えカラムと分析領域を通過してレベルの間に垂直に移動することは可能になる。チップの構造を完了するために層204及び205を追加する前に、粒子を分配し又は予め成形された膜を配置することにより固定相材料を切替えカラムと分析領域に配置する必要がある。
図9Bに示されるチップ20は説明するためのものだけである。付加的な機能、例えばより多くの分析領域又は試薬リザーバをチップに追加することができる。レベルの数はより多くのフィルム層を追加することにより増加することができる。
【0108】
図9Cは、本発明のハイブリッドポイントオブケアチップの別の実施形態を示し、それは、本発明のハイブリッドポイントオブケアチップがマイクロチャネルを使用して位置の間に通信するという柔軟性を利用し、従って、チップ上の特徴は、直線的に配置する必要がなく、これは側方流動の設計と異なる。本実施形態におけるチップ20の構造は、図9A及び9Bに説明されるものと同じであり、相違点は、分析領域210a、210b、210c、210d及び210eが円弧に沿って設けられることである。該配置により、チップ20又は検出器が円周運動して移動することは可能になり、それにより、設計及び製造コストを著しく低減させることができる。
【0109】
本発明のハイブリッドポイントオブケアチップの別の実施形態は、図9Dに示されるチップアレイの形式であり、ここで、チップ20は8つの個別のチップ20a、20b、20c、20d、20e、20f、20g及び20hを有するチップアレイの形式である。これらの個別の構造は図9A及び9Bに説明されるものと同じであり、相違点は、フィルムの各層がいずれも複数セットのチップ特徴を有し、且つ同じディスクでのすべてのチップが図9Dに示される集中された位置で1つのサンプル導入領域21を混合することである。本実施形態では、各個別のチップは3つの順にソートされた分析領域210a、210b及び210cを有する。該配置により、単一のサンプルからマルチセットの分析物をテストすることは可能になる。各個別のチップはチップアレイ20中の他のチップから完全に独立している。従って、一回の実行で、複数の化学的及び/又は生体適合性の分析を行うことができる。
【0110】
構造に応じて、本発明のハイブリッドポイントオブケアチップは、異なるタイプの検出システムと一緒に使用することができる。好ましくは、ハイブリッドポイントオブケアチップに使用される検出方法は、分析領域の透明性に依存しないため、磁気、音響又は放射性に基づく検出方法である。それらは、表面だけでなく3次元の固定相物体全体からの信号を測定することができる。
【0111】
より好ましい方法は、磁気に基づく検出であり、超常磁性粒子イメージング(SPI)、磁性粒子イメージング(MPI)、磁性粒子分光法(MPS)、磁性粒子の総蓄積、励磁インダクタンス、交流磁気磁化率測定法、CMOS交流磁化率測定法、ホール効果、磁気抵抗、巨大磁気抵抗(GMR)、超巨大磁気抵抗(CMR)、超伝導量子干渉装置(SQUID)、磁気緩和法、磁気共鳴イメージング(MRI)スピン緩和時間を含む。
より好ましい磁気検出方法は、超常磁性粒子イメージング(SPI)、磁性粒子イメージング(MPI)、磁性粒子分光法(MPS)、磁性粒子の総蓄積、励磁インダクタンス、ホール効果である。
【0112】
最も好ましい磁気検出方法は、超常磁性粒子イメージング、磁性粒子分光法(MPS)、磁性粒子の総蓄積、励磁インダクタンスである。
さらに、分析領域中の固定相が透光性材料(ガラス、セキエイ、透明プラスチック)で製造されると、蛍光、UV-Vis、レーザ、化学発光を含む光学に基づく検出方法を使用することができる。
【0113】
本発明のハイブリッドポイントオブケアチップは、マイクロ流体装置の汎用性及び柔軟性、側方流動テストの低コスト及び簡単性、Elisaアッセイの低バックグラウンド及び高感度などの利点を有し、また、多重化できる。ハイブリッドポイントオブケアチップと他の設計との相違点は、マルチレベル及び多区画室の分析領域には、固定相が充填される。多区画室構造により、それぞれ異なる捕獲材料が装填される複数の区画室を一体に積み重ねることが可能にし、追加される次元の多重化を実現する。分析領域中の固定相は、適切なレポーター(reporter)で標識された分析物を固定し、例えば、磁性粒子、放射性材料、音響活性材料である。表面積が非常に大きいため、固定相はサンプル中の分析物を濃縮し、感度を著しく向上させる。その不均一な性質のため、干渉物質が吸い流され、他のアッセイ設計よりもはるかに低いバックグラウンドを有する。
【0114】
本発明のハイブリッドポイントオブケアチップは、側方流動の形式に関するすべての問題を解決する。マイクロ流体チャネルでサンプル導入領域を分析領域と直接接続することにより、側方流動の形式で存在する全ての交差部分を削除する。サンプルが分析領域に直接送られるため、サンプル導入領域と側方流動の形式のテストラインとの間の一致しないフィルムによって引き起こされる変化を著しく減少させる。マイクロ流体チャネルが密閉されるため、側方流動のストリップの開いたエッジに起因する漏れの問題が存在しない。側方流動の形式では、捕獲材料がフィルムにバンド化される。フィルム、バンド化条件及びバンド化装置の変化により、分析領域は非常に一致しない。ハイブリッドポイントオブケアの形式では、分析領域には、高度に組織化された材料で製造される3次元固定相が充填される。固定相の間の変化は0.1%未満である。ハイブリッドポイントオブケアの形式は、側方流動の形式のすべての問題を克服するとともに、側方流動の形式に持たされる使用しやすくコストが低いという利点を保持する。
【0115】
本発明のハイブリッドポイントオブケアの形式はさらに、マイクロ流体の形式におけるこれらの課題に答えを提供する。マイクロチャネルのルートに浸透可能名3次元固定相を配置することにより、分析物のみを捕獲して蓄積し、他のすべての物質を通過させる。該プロセスで、分析物を濃縮し、それにより感度を著しく向上させる。同時に、分析物に関係がない全てのものを除去して、ノイズを著しく減少させる。この設計により、サンプルの前処理が不要になり、サンプルの精製プロセスを装置に追加する必要もない。マイクロ流体を利用して多区画室固定相を設計した。各区画室は異なる分析物を固定することができる。ハイブリッドポイントオブケアの形式と超常磁性粒子イメージング技術を組み合わせることにより、複数種の分析物の同時検出を完了することができる。ハイブリッドポイントオブケアの形式のマルチレベル設計により、化学的及び/又は生物学的に互換性のない分析物を異なるルート及び/又は異なるレベルにガイドして、同時に分析することは可能になる。ハイブリッドポイントオブケアの形式は、積層板で製造されるため、側方流動の形式に比べて、自動化の大規模の生産及び生産コストの低減に適する。
【0116】
さらに、使用される材料に応じて、ハイブリッドポイントオブケアの形式の固定相で発生する化学的及び生物学的プロセスの表面積は、一般的なELISAアッセイの形式の300~10,000倍であり、これは、感度を極めて向上させ、試薬処理、操作が不要であり、長い間待っているのも必要としない。
【0117】
本発明のハイブリッドポイントオブケアは、新規で革新的な形式であり、少量の生物学的、環境的又は化学的流体を使用して、感度の高く、定量的で、迅速な診断アッセイを完了する。それは、各種の溶液、コロイド又は浮遊粒子(磁性粒子を含む)を用いて対象の分析物を標識し又は標識物の還元を測定する結合部位と競合することができる。それは、固定相及び積層板(生分解性材料で製造される積層板を含む)を使用し、従来の医療用プラスチックカセットを使用しない3次元の異種設計及び機能を有する。血清、血漿、唾液、汗、涙、痰、尿、綿棒で抽出された表面ワイプ、さらに半固形物(例えば細胞培養物及び糞便物)の一般的なサンプル量は10マイクロリットル以下である。さらに、統合された赤血球分離技術及び装置を使用して最小限の溶血を分離し防止することができ、且つハイブリッドポイントオブケアの形式では、分析のために全血を1滴も必要とせず、分析時間が5分間未満である。
【0118】
本発明は、一桁分の実行時間で定量分析の迅速な発展を実現し、これに反対する通常の側方流動のテストは、実行時間が20分間以上であり、且つ任意の必要な正規化を行う必要がある。実行時間が著しく減少するのは、サンプル量の減少及び表面動力学と流体動力学の相互作用の最小化によるものである。
【0119】
本発明のハイブリッドポイントオブケアの形式及びチップは、通常のアッセイの変動係数が、検出限界(LOD)(一般的にはピコグラムレベルである)で10%以下であることを可能にする。
【0120】
本発明は、超常磁性粒子イメージング技術に基づいて設計される超常磁性粒子イメージング分析装置を更に提供し、場のないポイント(FFP)及び/又は場のないライン(FFL)を作成し、超常磁性ナノ粒子が生成した信号を空間的及び時間的にエンコードして、信号を記録し、一回の測定でのチップ全体上の分析物の濃度に信号を変換するために用いられる。
本発明の一態様によれば、別の超常磁性粒子イメージング分析装置は、各区画室をカバーする場のないスペース(FFS)を作成し、各区画室が生成した総信号を記録し、且つ一回の測定でのチップ全体上の分析物の濃度に信号を変換するために用いられる。
【0121】
本発明の一態様によれば、別の超常磁性粒子イメージング分析装置は、異なるSPNPで標識された複数種の分析物を同時に分析するために用いられる。
【0122】
図10Aに示される本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置の第1実施形態では、装置は、共線形超常磁性粒子イメージング分析装置である。分析装置30は、ハウジング31、一対の永久磁石32及び32’、一対の励起コイル35及び35’、及び一対の受信コイル36及び36’を備える。
【0123】
本実施形態では、ハウジング31は円筒310の形状であり、且つ円筒310の内部に、各永久磁石は内部円筒容積33を有する円筒状である。永久磁石32及び32’は希土類合金(例えばNdFeB)で製造され、且つ固定装置及び締め具34により、それに一致する磁極と互いに向き合うように機械的に強制されて(すなわち、第1磁石の北極が第2磁石の北極に向き合い、又は第1磁石の南極が第2磁石の南極に向き合う)、このプロセスで、中性磁場が存在する場所に場のないポイント(FFP)又は場のない領域(FFR)37を形成する。理論的には、単一のポイントであるが、実際には、それは、競合する磁力場が磁場線に衝突することによって形成された領域である。(Gleich,B,2005,Knopp,T,2012参照)。構造及び配置は、安定した均一な直流(DC)場のない領域(FFR)を形成し、これは直流増幅器に駆動される一対のヘルムホルツコイルによって完了することもできる。一対の永久磁石32及び32’により、複雑でなく高価でないプラットフォームの組み立ては可能になるが、いかなる調整可能性がない。
【0124】
図10Bに示すように、本発明のハイブリッドポイントオブケアチップは、単一の多重化装置20において、サンプル処理、収集(サンプル導入領域21として機能する)、分散、捕獲(分析領域(対象の領域(ROI)とも呼ばれる)210として機能する)、及び廃棄物収集(流体吸収領域26として機能する)の機能メカニズムを含み、且つ本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置30の使い捨て部材である。
【0125】
一対のヘルムホルツ励起コイル35及びb35’を形成する交流駆動場を提供することにより、場のない領域37内の交流電気(AC)の形成を完了する。通常、20KZ~30KZで駆動し、本実施形態では25KZである。
【0126】
「励起」という用語は、磁場及び「駆動場」、「変調場」を説明するために用いられ、この磁場内のいかなる磁気材料は、ヘルムホルツ駆動周波数の周波数で振動するため、変調又は駆動される。
【0127】
周囲の磁場内のいかなる応答を測定するために、一対の受信コイル36及び36’(平面又は円形である)を簡単に取り付け、それにより、定量対象の影響される材料に最大限に物理的に接近する。本実施形態では、常磁性標識の生体分子の場合、対象の領域210又は複数の領域を、一対の永久磁石32及び32’と、一対の励起コイル35及び35’と、一対の受信コイル36及び36’とを備える円筒310に移動して、円筒310中の常磁性応答及びその高調波を測定する。場のない領域37は、このような領域であり、常磁性粒子が磁気的に飽和していない(すなわち磁化されていない)が、振動してブラウン及びニール緩和を克服し、25KZの基本励起周波数を放出するだけでなく、該周波数の高調波(粒子サイズ及び材料の識別子)もさらに放出する。該信号は粒子の数及びその空間的位置の線形定量化である。
【0128】
図11A及び11Bに示される本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置の第2実施形態では、分析装置は開放式分析装置である。
磁気共鳴イメージングと同様に、超常磁性粒子イメージングには均一な磁場が必要である。磁気共鳴イメージング中のイメージングにおいて、検出器又は検出器アレイからの視野(FOV)情報を一体に組み合わせ(断層撮影と呼ばれる)、造影剤又は組織自体から生成される3次元画像として表示する。磁気共鳴イメージングには、これらの磁場の重心に接近することにマッチングするために、大きな磁場及び無線周波数(RF)コイルが必要である。比較すると、本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置では、超常磁性標識の挙動は非常に大きな相違点がある:それは、RF磁場によって干渉される陽子アレイを測定せず、場のない領域中の常磁性粒子の非線形磁化を定量化し、該場のない領域に、ブラウン及びニール緩和のみは各粒子の場の方向を制御する。特定の周波数(例えば約25KZ)の励起コイルの交流場は、該基本レートM(t)で粒子の磁極を+から-に急激に切り替える。励起の基本周波数は、誘導場を生成するだけでなく、粒子材料の特性及びサイズの関数である高調波も生成する。高調波スペクトルは各磁性標識の指紋及び位置である。(Gleich,B.,2005、Goodwill,P.ら、「多次元X空間の磁性粒子イメージング(Multidimensional X-Space Magnetic Particle Imaging)」、『IEEE医学的イメージング刊行物(IEEE Trans Med Imaging)』,30(9):1581-1590 (2011)、Knopp,T.ら,2012)を参照のこと。
【0129】
図11A及び11Bに示される本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置の第2実施形態では、以下に開示されている小動物及び人間に用いられる3次元イメージング装置の一般的な幾何学的形状(Gleich, B., 2005、Goodwill, P., 2011、Konkle J.,「先進的な断層再構成法を有する磁性粒子イメージング(Magnetic Particle Imaging with Advanced Tomographic Reconstruction Methods)」、カリフォルニア大学バークレー校博士論文(2014))を改良し、新たな方法(本発明のハイブリッドポイントオブケアチップ)と組み合わせる。図10A及び10Bに示される実施形態の場のないポイント又は領域(FFP又はFFR)37の代わり、FFL37’と呼ばれる、中性の場のない領域の線形部位は作成される。機械的配置、定量化、及びイメージングに用いられる円筒状の中点の拡張される設計に比べて、第2実施形態は、FFL37’への通路を改良する。FFL37’は、共線形円筒における対象の領域以外の他の箇所にいずれもアクセスすることができ、これは、すべての軸の機械的動きを制限する。
【0130】
図11Aに示されるように、ハウジング31は本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置30の機械的支持であり、且つC字状フレーム311からなり、該C字状フレームは、線形場のない領域を限定し-一対のNdFeB永久磁石32及び32’を形成し、各磁石の陽極又は陰極が互いに向き合って線形場のない領域を形成するように機械的に強制する。
【0131】
第2実施形態では、磁石は直線形であり、それによりFFL37’も直線形になる。次にヘルムホルツで構成される一対のヘルムホルツコイル35及び35’、及び一対の平行な受信コイル36及び36’は、基本励起領域内の分析領域210の常磁性標識から誘導磁場及びb生成された高調波を感知する。図14に示されるように、本発明のハイブリッドポイントオブケアチップ20の分析領域210は、誘導コイル(励起コイルとも呼ばれる)35及び35’に密着して伝送し、それにより測定可能な信号を生成する。ハイブリッドポイントオブケアチップ20は、サンプルと試薬処理能力(サンプル導入領域21)を有し、切替えカラム24によって捕獲分析カラム210及び流体吸収領域に分配する(図9Aを参照)。
【0132】
第2実施形態の分析装置及び分析方法は、側方流動及びマイクロ流体装置のポイントオブケア設計の限界を超える。ほとんどの一般的なアッセイに必要な直線性は、本発明の分析装置に対して不要であるため、本発明の分析装置はこのような制限がなく、これは図11A及び11Bに示される実施形態によって完了され、ここで、迅速に移動するFFL又はFFL空間における対象の領域の機械的走査に接近することにより、常磁性標識の数、状態(結合又は非結合)及びその対象の領域内の位置に対するメトリックを生成することができる。
【0133】
図12A及び12Bに示される本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置の第3実施形態では、分析装置30は、超常磁性粒子イメージング分析装置に用いられる「E」字状の磁気コア励起場を有する。図11A及び11Bに示される第2実施形態における励起コイル35及び35’を簡略化し、極めて均一な交流送信又は変調場を生成するために、分析装置30は、互いに向き合って且つセラミック絶縁体(図示せず)によって分離される一対のE字状焼結フェライト磁気コア35a及び35a’を使用する。E字状の磁気コアの各カラム上の電磁コイル巻線35b及び35b’は、隙間を形成するために短絡されたE字状磁気コア35a及び35a’の2つの正反対の極に磁場を生成する。電磁巻線35b及び35b’は交流電気周波数で動作し、駆動電子機器へのフィードバック回路がある(同様に、図14を参照)。図9Aに示されるように、これは、ハイブリッドポイントオブケアチップの磁性標識を励起し振動するための変調場である。一対の重ね合わされた永久磁石32及び32’が、互いに陽極に向き合うように強制され、それにより、E字状磁気コアの隙間内にFFR又はFFP37を生成する。FFR37の中性領域以外に、直流場内のすべての材料はいずれも磁化される。ハイブリッドポイントオブケアチップ20は移動して隙間及び接近可能な領域を通過する。常磁性標識の交流誘導により、交流場の基本周波数及び得られる高調波を生成し、これらが受信コイル36及び36’によって測定されて信号チェーンの電子機器に伝達される。E字状磁気コアの設計と本発明のハイブリッドポイントオブケアチップを組み合わせて使用する第3実施形態は、交流励起及び受信コイルに接近することが優れたSNR(信号対雑音比)を与えるため、改良される設計である。
【0134】
図13A及び13Bに示される本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置の第4実施形態では、分析装置は、2つの同心円状に配置された送信コイルと分離された受信コイルとを有する片面超常磁性粒子イメージング分析装置である。他の実施形態と異なり、本実施形態では永久磁石は使用されていない。本実施形態では、分析装置30は、一対の片面ヘルムホルツコイルを有し、ハイブリッドポイントオブケアチップ20の有効性を実現して、形成される1D視野(FOV)38と相互作用する。円形の外部直流駆動場は交流場のヘルムホルツペアにより囲まれている。図13Aにおける矢印39は、反対方向の直流電流によって生成された選択場を示す。それは、反対の場を生成して且つ対称的なFFR37を形成する。ハイブリッドポイントオブケアチップ20が受信コイル36の視野を越えると、FFR37の分析領域中のSPNPが励起されて信号を生成する。ヘルムホルツコイルを使用する利点は、同時に励起コイル及び受信コイルとして機能する。分析領域210は、勾配計の方式でセンサを越え、又は単一の位置にもたらされて測定される。
【0135】
図14は、図10、11及び12に示される実施形態などの本発明の交流コイルに基づく超常磁性粒子イメージング分析装置及びハイブリッドポイントオブケア技術の信号チェーン及びエンドユーザーとの通信を示す。図14に示されるように、シールド41は、磁気遮蔽場駆動を提供するために用いられ、交流駆動場42及び直流駆動場43を含む。交流駆動場42と直流駆動場43の両方である。受信コイル36において磁気共鳴信号を感知して送信し、且つ信号の1つ以上の基本周波数を処理する。信号前置増幅ユニット44において高調波を送信信号から分離して、該信号前置増幅ユニットにおいて、電圧が非常に小さい高調波は、ノッチフィルタ及びロックイン増幅器を備える前置増幅器を使用することによって変換される。現在、これらの装置のうち多くの装置は、個別のチップパッケージとして購でき、それにより個別の回路基板を減少させる。通常、ローパスフィルタ45を介して信号ノイズ減少とクロストークステップで1/f熱ノイズを減少し、且つ前置増幅された電圧はアナログデジタル変換回路46によって変換され、信号増幅器47によって線形増幅され、且つ外部中央プロセッサ(CPU)49に送信される。
【0136】
バーコードリーダー48によって読み取られた2次元バーコードは、ハイブリッドポイントオブケアのタイプ、製造日、ユーザー、且つ重要なところ、各製造ロットに基づくロックインアンプを識別し、且つハイブリッドポイントオブケアアッセイの品質及び感度を決める。これらの定量的結果は、ブルートゥー(登録商標)ス50又は無線信号出力51の情報とすることができ、グラフィカルユーザーインタフェース(GUI)54への有線信号(オペレーター及び病院情報システム(HIS)に使用される)として使用されてもよい。グラフィカルユーザーインタフェース54は、車載GPS、アッセイ実行時間、記録及びデータ管理などの、ポータブルストレージデバイス又はデータベースへの入力を処理する。
【0137】
グラフィカルユーザーインタフェース54はタッチスクリーンパネル上の従来ディスプレイ52を制御し、印刷機53は結果及びデータベースのハードコピーを無線で印刷し、さらに、結果、位置、推奨される解釈、及びデータ履歴を提供する成熟したモバイルアプリケーション55と通信する。該特徴により、モバイルアプリケーション55のリアルタイムのモバイル環境で複数のデータポイントのグラフィカル管理を行うことは可能になる。
【0138】
本発明の超常磁性粒子イメージング分析装置の第5実施形態は、図15A~15Dに示され、ここで、分析装置はホールセンサを有するNdFeB永久磁石である。分析装置30では、NdFeB円筒状永久磁石32が取り付けられ(例示のために、仮想磁場線63を有する)。力線63は、任意の磁気源によって取り囲まれ形成された量子エネルギーの均一な場に位置し、重力場のように、観測できず、図15A及び15Bのみにこれらの場及びその分布を説明する。
【0139】
NdFeB磁石32は、磁石の南極を離れ、且つ永久磁石の北極において折り畳んで取り囲む磁力線63を有する。これらの極は、通常の目的でのみ命名される。ホールプローブセンサ60は、ゼロフリー領域37bに配置され、円形磁石32を離れる磁力線63は、円筒33a及び力場の正確な中心で理論上のゼロ領域に達する。ホールプローブを円筒33a内及び磁化不可能な中空軸71に取り付けることにより、バイアスワイヤ及び信号62が図14と同様にルートに応じて信号処理電子機器に送信されることは可能になり、駆動場が不要であり、永久磁石はコイルセットに対応する直流磁場を提供し、それにより、装置の設計及び製造を大幅に簡略化させる。該場が場のない領域37を形成する駆動直流場に類似するため、高調波は生成しない。ゼロ領域37bにおいて、理論的な磁気領域が非常に小さく又は理論的な磁気領域がなく、狭い散乱場のみがある。
【0140】
本発明では、勾配計の方式で又は単一の測定として、チップ20及び分析領域210をセンサ60の上に輸送し、超常磁性粒子イメージング分析装置はハイブリッドポイントオブケアチップと一緒に動作する。ゼロ磁場37bを減衰させて、ホール磁気センサ60への誘導信号を生成することにより、分析領域の磁性標識を磁化する。該信号を定量化し又は処理し画像を生成することができる。
【0141】
図15C及び15Dは、本発明のハイブリッドポイントオブケアチップを有する超常磁性粒子イメージング分析装置の構造画像を示す。永久磁石32は、中空の非磁性ホールセンサ軸である中空軸61によって支持されるNdFeB磁石であり、且つ磁石32の円筒33aには、図15A及び15Bの線63によって説明された力場は形成される。超常磁性粒子イメージング分析装置30の機器の外部支持及びシールド41は、中空軸61を収容する。中空軸61は、ホール磁気センサー60の電圧および出力信号をルーティングし、同時に、永久磁石32のゼロ磁場37b内のプローブのマウントである。
【0142】
図9A~9Dに詳細に説明された本発明のハイブリッドポイントオブケアチップ20は側面図及び平面図で図15C及び15Dに示され、ホール磁気センサ60上で送信され、勾配計又は空間的にエンコードされた信号を生成し、次に、図14に示されるように、該勾配計又は空間的にエンコードされた信号はCPU49によって処理されてGUI54によって表示される。図15Dの平面図は、分析領域210a、210b及び210cがホール磁気センサ60を超え又はその上方で静的に測定される時の関係を説明する。
【0143】
本発明の非線形ハイブリッドポイントオブケアチップ20と一緒に動作する超常磁性粒子イメージング分析装置30の第6実施形態は、図16に示される。第6実施形態では、分析装置30は支持ベース64に支持される。チップ20の分析領域210a~210eは、図15A及び15Bに説明された接近可能な超常磁性粒子イメージング永久磁石32及びホール磁気センサ60に対して、円弧の方式で順に移動してゼロ領域37bに入る。生成された信号は、ホールプローブバイアスワイヤ及び出力信号62を通過する。永久磁石32及び非線形分析チップ20の形式は、総コストを低減させ、分析領域210は空間構築の事前知識を使用して多重化してイメージングする。コンピュータ断層撮影に使用される再構成技術は、ホール磁気センサ60又はゼロ領域37b中の複数のセンサを使用した可能な3Dイメージングを示し、各センサは、数学モデルに寄与する視野(FOV)を有する。分析装置30の支持ベース64は、一次非磁性材料であり、該材料はNdFeB磁石32の磁力線を誘導し分配し、ホールプローブバイアスワイヤ及び出力信号62は支持ベース64を通過する。
【0144】
図17に示されるように、磁場からのセンサ信号を測定するための一例を示す信号チェーン40が概説される。信号チェーン40では、120-240交流壁電源又は内部電池57からのプラグイン変圧器56が直流バイアス電圧をホールセンサ60’に提供する。サーミスター65は機器の環境温度を校正し、追加されるホールセンサ60は、地球磁場を含む機器の周りの全ての磁場を校正する。ホールセンサが信号又は電圧を生成すると、フィルタ66のオフセット補正集積回路フィードバック回路は、それをフィルタリングし、線形増幅器47に緊密に結合される前置増幅器67に伝達する。増幅された信号はゲートドライバ68及び過電流保護(OCP)にマッチングする低電力であり、グラフィカルユーザーインタフェース(GUI)54又はユーザー入力を管理する中央プロセッサ(CPU)49に入力する。GUI54は、ホール素子60’から測定された磁気信号をアプリケーションプログラム又はプログラム55、印刷機53、ディスプレイ52、ブルートゥース(登録商標)50又は無線通信51、例えばインターネット又はクラウドに送信するよう指示するヒューマンインタフェースである。
【0145】
実施例1.本発明のHY-POCチップ上のウサギIgG結合SPNPの用量反応
材料:
本実施例では、使用される材料は、ウサギIgG 150K(Arista Bio、AGRIG-0100、ロット091325551、2.88mg/ml)、精製されるヤギ抗ウサギIgG(H&L)抗体(BioSpacific:G-301-C-ABS、ロットWEB08、6.39mg/ml)、磁気ビーズ(MicroMod、09-02-132、130nm、10mg/ml)、シリカビーズ(CORPUSCULAR C-SiO-10COOH、10ミクロン球、10mg/ml)、ニトロセルロース膜(Millipore HF180UBXSS、ロットR6EA62198C)、N-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム(Sulfo-NHS)(Combi-Blocksカテゴリ:OR-6941、CAS番号106627-54-7)、1-エチル-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)(AK Scientificカテゴリ番号965299)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ポリソルベート20、カップリングバッファー:10 mM PBS pH 7.4、保存バッファー(10 mM PBS、0.6mg/ml BSA、0.05% NaN3)、サンプル実行バッファー(10 mM PBS、1mg/ml BSA、0.1%ポリソルベート20)を含む。
【0146】
方法:
1.磁気ビーズで標識されたウサギIgG(R-IgG-SPNP)の調製:0.1mlの10mg/ml 130nm磁気ビーズを1.5mlチューブに加え、続いて0.2mlのPBSカップリングバッファーを加え、次に0.01mlのEDC(10mg/ml)と0.01mlのNHS-Sulfo(10mg/ml)を上記溶液に加えた。連続的に混合しながら混合物を室温で20分間反応させた。次に、0.57mlのウサギIgG(2.88mg/ml)を混合物に加え、且つ混合物を室温で2時間回転させた。その後、ビーズを磁気セパレーターで引き下げ、2×0.5mlのPBSで洗浄し、1mlの保存バッファーに浮遊させ、R-IgG-SPNPを得た。
【0147】
2.固定相の調製:抗ウサギIgG(GAR)抗体に共有結合されたシリカビーズ:0.1mlの10mg/ml 10ミクロンカルボン酸シリカビーズを1.5mlチューブに加え、続いて0.2mlのPBSカップリングバッファーと0.01mlのEDC(10mg/ml)及び0.01mlのNHS-Sulfo(10mg/ml)を上記溶液に加え、混合物を形成した。連続的に混合しながら混合物を室温で20分間反応させた。次に、0.156mlヤギ抗ウサギ-IgG(6.39mg/ml)を混合物に加えた。混合物を室温で2時間回転させ、続いて13,000RPMで3分間遠心分離して上清を除去した。その後、2×0.5mlのPBSでシリカビーズを洗浄し、35℃で12時間乾燥させた。
【0148】
3.抗ウサギIgG(GAR)抗体吸着シリカビーズの調製:0.1mlの10mg/ml 10ミクロンカルボン酸シリカビーズを1.5mlチューブに加え、続いて0.2mlのPBSカップリングバッファーと0.005mlのヤギ抗ウサギIgG(6.39mg/ml)を加えた。混合物を室温で12時間回転させ、13,000RPMで3分間遠心分離された。次に、上清を除去し、2×0.5mlのPBSでシリカビーズを洗浄し、35℃で12時間乾燥させた。
【0149】
4.抗ウサギIgG(GAR)抗体吸着ニトロセルロースディスクの調製:0.2mlのPBSを1.5mlチューブに加え、続いて0.003mlヤギ抗ウサギIgG(6.39mg/ml)と予備成形されたニトロセルロースディスクを加えた。混合物を室温で2時間回転させ、溶液を除去した。ニトロセルロースディスクを35℃で12時間乾燥させた。
【0150】
5.ウサギIgGハイブリッドポイントオブケアチップの調製:図18に示されるように、本発明のハイブリッドポイントオブケアチップ20を組み立てた。チップ20では、切替えカラム24には普通の10ミクロンカルボン酸シリカビーズが充填された。第1分析領域210aには、GAR抗体に共有結合されたシリカビーズが固定相として充填された。第2分析領域210bには、GAR抗体吸着シリカビーズが固定相として充填された。第3分析領域210cには、GAR抗体吸着ニトロセルロースディスクが固定相として充填された。
【0151】
このチップの構造は、固定相を製造する2種の異なる方法を示す:第1分析領域210a及び第2分析領域210b中の粒子を分配し、又は第3分析領域210c中の予め成形された材料を配置する。固定化マトリックスを固定相にロードする2種の異なる方法をさらに示す:第1分析領域210aの場合は共有結合であり、又は第2分析領域210b及び第3分析領域210cの場合は物理的吸着である。
【0152】
6.サンプル実行溶液の調製:サンプル実行バッファーを使用して130nmの磁気ビーズで標識されたウサギIgG(1mg/ml)を適切な濃度に希釈した。サンプル濃度は、0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100ng/mlである。
【0153】
7.アッセイの実行:0.01mlのサンプル実行溶液をピペットで取り、溶液をサンプル導入領域に加えた。サンプル導入領域が空になるまで待った(3~5分間)。次に、0.01mlのサンプル実行バッファーを加えた。サンプル導入領域が空になるまで待った(3~5分間)、次にSPI装置でチップを読み取った。
【0154】
8.ハイブリッドポイントオブケアチップの読み取り:SPI分析装置でハイブリッドポイントオブケアチップを分析した。17秒間以内に一回の走査ですべての3つの分析領域210a、210b及び210cを分析した。
【0155】
<実験結果及び検討>
実験結果が図19に示され、異なる濃度のSPNP標識ウサギIgGサンプル(R-IgG-SPNP)が本発明のハイブリッドポイントオブケアチップで分析されることを示した。図19の結果から分かるように、ウサギIgGはすべての3個の分析領域にいずれも捕獲され、且つ磁気信号がSPNP濃度に比例する。サンプルはハイブリッドポイントオブケアチップ20を自動的に流れ、任意のポンプが必要としない。アッセイ時間が10分間より少ない。サンプル量は10マイクロリットル未満であってもよく。異なる材料(シリカビーズとニトロセルロース膜)を、分析物(ウサギIgG)を固定する固定相として使用できる。固定相の機能化の異なる方法(共有結合と物理的吸着)は、捕獲材料のロードに使用できる。且つ、異なる固定相充填方法(原位置充填と予備成形)を使用してハイブリッドポイントオブケアチップを製造することができる。
【符号の説明】
【0156】
10-アッセイ形式の分析領域(10’又は10a’は連続的に配置された異なる分析領域を表す)、11-区画室(11’、11a、11a’、11zは連続的に配置された異なる分析領域を表す)、12-分析物、13-分析物12を標識するための超常磁性ナノ粒子、本発明では、超常磁性粒子、超常磁性ナノ粒子標識物又は超常磁性粒子標識物とも呼称される。
20-ハイブリッドポイントオブケアチップ又はチップアレイ(20a、20b、20c、20d、20e、20f、20g、及び20hはチップアレイ中の各チップを表す)、210-チップ20中の分析領域(210a、210b、210c、210d、及び210eは続的に配置された第1、第2、第3、第4及び第5分析領域を表す)、21-サンプル口、22-試薬、23-マイクロチャネル(23a、23b、23c、23d、23eはチップの異なるセクションを接続するための異なるマイクロチャネル)、24-切替えカラム、25-切替えカラム24中の充填材料、26-吸収室、27-吸収パッド、28-通気口。
30-SPI分析装置、31-ハウジング、310-円筒、311-フレーム、32-永久磁石、33-内部円筒容積、33a-永久磁石の内部円筒、34-締め具、35-励起コイル、36-受信コイル、37-場のないポイント(FFP)又は場のない領域(FFR)、37’-領域の線形場のないポイント(FFL)、37b-ゼロフリー非磁化領域、38-視野(FOV)、39-選択場を示す矢印。
40-信号チェーン、41-シールド、42-交流駆動場、43-直流駆動場、44-信号前置増幅ユニット、45-ローパスフィルタ、46-アナログデジタル変換、47-信号増幅器、48-バーコードリーダー、49-中央プロセッサ(CPU)、50-ブルートゥース(登録商標)、51-無線信号出力(WIFI)、52-ディスプレイ、53-(無線)印刷機、54-グラフィカルユーザーインタフェース(GUI)、55-モバイルアプリケーション、56-外部12-240V壁式変圧器。
60-ホール磁気センサ、60’-ホール素子、61-中空軸、62-バイアスワイヤ及び信号出力、63-生成された磁力線表現(均一な磁気量子のファントム)、64-支持ベース、65-サーミスター、66-フィルタ(オフセット/削除用)、67-ホール信号前置増幅ステージ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図16
図17
図18
図19