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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090133
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】コネクタ端子およびコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/72 20110101AFI20240627BHJP
   H01R 13/11 20060101ALI20240627BHJP
   H01R 12/77 20110101ALI20240627BHJP
【FI】
H01R12/72
H01R13/11 Z
H01R12/77
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205818
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】591236301
【氏名又は名称】ミネベアコネクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173691
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 康久
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】澤本 泰宏
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AA21
5E223AB17
5E223AB43
5E223BA06
5E223BA07
5E223BA08
5E223BB12
5E223BB17
5E223CB22
5E223CB31
5E223CB39
5E223CB46
5E223CD01
5E223CD02
5E223CD22
5E223CD25
5E223DB04
5E223DB09
5E223DB23
5E223DB35
5E223EA02
5E223EA13
5E223EA17
5E223EA33
5E223EC07
5E223EC32
(57)【要約】
【課題】回路基板の端子に対する電気的接続の信頼性を維持することが可能なコネクタ端子およびコネクタを提供すること。
【解決手段】先端側から挿入された回路基板100と嵌合するよう構成されたカードエッジコネクタ1で用いられるコネクタ端子3は、回路基板100の挿抜方向に延伸する基部371と、基部371の先端部に設けられ、基部371の先端部から基端側に向かって湾曲する折り返し部372と、折り返し部372から基端側に延伸するアーム連結部373と、アーム連結部373の基端部から、それぞれ互いに離間した状態で延伸する第1のアーム38および第2のアーム39と、を含む。カードエッジコネクタ1が回路基板100に嵌合していない自然状態において、第1のアーム38および第2のアーム39のそれぞれの自由端384、394は、基部371から離間している。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側から挿入された回路基板と嵌合するよう構成されたカードエッジコネクタで用いられるコネクタ端子であって、
前記回路基板の挿抜方向に延伸する基部と、
前記基部の先端部に設けられ、前記基部の前記先端部から基端側に向かって湾曲する折り返し部と、
前記折り返し部から前記基端側に延伸するアーム連結部と、
前記アーム連結部の基端部から、それぞれ互いに離間した状態で延伸する第1のアームおよび第2のアームと、を含み、
前記第1のアームおよび前記第2のアームのそれぞれは、
前記アーム連結部の前記基端部から、前記基端側であって、前記基部から離間する方向に向かって延伸する前方直進部と、
前記前方直進部の基端部から、前記基端側に延伸し、前記基部から離間する前記方向に突出する円弧状の接点部と、
前記接点部の基端部から、前記基端側であって、前記基部に接近する方向に延伸する後方直進部と、
前記後方直進部の基端部に設けられた自由端と、を備えており、
前記第1のアームの前記接点部は、前記第2のアームの前記接点部よりも前記先端側に位置し、
前記カードエッジコネクタが前記回路基板に嵌合していない自然状態において、前記第1のアームおよび前記第2のアームのそれぞれの前記自由端は、前記基部から離間していることを特徴とするコネクタ端子。
【請求項2】
前記第1のアームの前記自由端と前記基部との間の離間距離は、前記カードエッジコネクタが前記回路基板に嵌合された嵌合状態において、前記第1のアームの前記自由端が前記基部に接触するよう設定されており、
前記第2のアームの前記自由端と前記基部との間の離間距離は、前記嵌合状態において、前記第2のアームの前記自由端が前記基部に接触するよう設定されている請求項1に記載のコネクタ端子。
【請求項3】
前記第1のアームの前記自由端と前記基部との間の前記離間距離は、前記第1のアームの前記自由端が、前記自然状態の位置から前記基部まで移動する距離に設定されており、
前記第2のアームの前記自由端と前記基部との間の前記離間距離は、前記第2のアームの前記自由端が、前記自然状態の位置から前記基部まで移動する距離に設定されている請求項2に記載のコネクタ端子。
【請求項4】
前記第1のアームの前記自由端は、前記自然状態から前記嵌合状態までの間、前記基部上でスライド移動せず、
前記第2のアームの前記自由端は、前記自然状態から前記嵌合状態までの間、前記基部上でスライド移動しない請求項3に記載のコネクタ端子。
【請求項5】
前記自然状態において、前記第1のアームの前記自由端と前記基部との離間距離は、前記第2のアームの前記自由端と前記基部との離間距離よりも短い請求項1に記載のコネクタ端子。
【請求項6】
前記自然状態において、前記第1のアームの前記接点部の頭頂部の前記基部からの高さは、前記第2のアームの前記接点部の頭頂部の前記基部からの高さよりも低い請求項1に記載のコネクタ端子。
【請求項7】
前記第2のアームの前記前方直進部の長さは、前記第1のアームの前記前方直進部の長さよりも長い請求項1に記載のコネクタ端子。
【請求項8】
請求項1に記載のコネクタ端子と、
前記コネクタ端子を収納するハウジングと、を含むことを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、コネクタ端子およびカードエッジコネクタに関し、より具体的には、回路基板と接触した際に弾性変形し、さらに、回路基板の端子と接触することにより、回路基板の端子との電気的接続を提供する第1のアームおよび第2のアームを含む弾性コンタクトを備えるコネクタ端子および該コネクタ端子を含むカードエッジコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
車載用デバイスのような、振動環境下で用いられるデバイスと電気ケーブルとの間の電気的接続を提供するためのカードエッジコネクタが知られている。例えば、特許文献1は、図1に示されているような、回路基板500に対して取り付けられ、回路基板500の複数の端子501と複数の電気ケーブル600との間の電気的接続を提供するためのカードエッジコネクタ700を開示している。
【0003】
回路基板500上には、複数の電気ケーブル600にそれぞれ電気的に接続される複数の端子501が設けられている。カードエッジコネクタ700を、回路基板500の端部に形成された切り欠き部502内に挿入し、カードエッジコネクタ700を回路基板500に嵌合させることにより、回路基板500の複数の端子501と複数の電気ケーブル600との間の電気的接続が提供される。
【0004】
カードエッジコネクタ700は、複数の電気ケーブル600のそれぞれの端部に取り付けられる図2に示すコネクタ端子710を備えている。コネクタ端子710は、導電性を有する金属板へ打ち抜き加工および曲げ加工を施すことによって得られる導電性部品である。図2に示されているように、コネクタ端子710は、回路基板500の端子501との電気的接続を確保するための接続部711と、電気ケーブル600の芯線に接続されるワイヤバレル部712と、電気ケーブル600の絶縁被覆部に圧着されるインシュレーションバレル部713と、を備えている。
【0005】
接続部711は、上側部711aと、下側部711bと、上側部711aの基端部と下側部711bの基端部とを連結する連結部711cと、を備えている。上側部711aと下側部711bは、上下方向に間隙を介して互いに対向している。上側部711aと下側部711bの間隙内に、回路基板500が挿入される。
【0006】
図3は、接続部711の断面図を示している。図3に示されているように、上側部711aおよび下側部711bのそれぞれは、回路基板500と接触した際に弾性変形し、さらに、回路基板500の端子501と接触することにより、端子501との電気的接続を提供する弾性コンタクト714を備えている。上側部711aの弾性コンタクト714は、下側部711bの弾性コンタクト714と同じ構成を有しているので、以下、上側部711aの弾性コンタクト714について説明する。
【0007】
弾性コンタクト714は、回路基板500の挿抜方向に延伸する基部714aと、基部714aの先端部に設けられた折り返し部714bと、折り返し部714bの基端部から斜め下方向に直線状に延伸するアーム連結部714cと、アーム連結部714cの基端部から延伸する第1のアーム715および第2のアーム716と、を備えている。
【0008】
第1のアーム715および第2のアーム716は、回路基板500の挿抜方向に直交する横方向に互いに離間した状態で、アーム連結部714cの基端部から延伸している。第1のアーム715は、アーム連結部714cの基端部から斜め下方向に直線状に延伸する前方直進部715aと、前方直進部715aの基端部から延伸し、下側に凸の円弧状の接点部715bと、接点部715bの基端部から斜め上方向に直線状に延伸する後方直進部715cと、自由端715dと、を備えている。同様に、第2のアーム716は、アーム連結部714cの基端部から斜め下方向に直線状に延伸する前方直進部716aと、前方直進部716aの基端部から延伸し、下側に凸の円弧状の接点部716bと、接点部716bの基端部から斜め上方向に直線状に延伸する後方直進部716cと、基端部716dと、を備えている。
【0009】
第1のアーム715の接点部715bおよび第2のアーム716の接点部716bの双方が、回路基板500の対応する端子501と接触することにより、対応する端子501との電気的接続の冗長性を提供することができる。したがって、回路基板500の挿入方向の傾き等に起因して、第1のアーム715および第2のアーム716の一方に座屈変形等が生じ、端子501との電気的接続が失われた場合であっても、第1のアーム715および第2のアーム716の他方と対応する端子501との電気的接続が維持される。このため、カードエッジコネクタ700の電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【0010】
また、図3に示されているように、第1のアーム715の接点部715bは、第2のアーム716の接点部716bよりも先端側に位置している。そのため、上側部711aと下側部711bとの間隙内に回路基板500が挿入された際、接点部715bが、接点部716bよりも先に、回路基板500に接触し、第1のアーム715が外側に変位される。また、第1のアーム715は、アーム連結部714cに連結されているため、回路基板500が接点部715bに接触すると、折り返し部714bが弾性変形の支点として機能し、第1のアーム715が外側に変位する。また、第2のアーム716もアーム連結部714cに連結されているため、第1のアーム715が外側に変位した際、第2のアーム716も、第1のアーム715と同じ程度、外側に変位する。このように、回路基板500との接触によって第1のアーム715が外側へ変位した際、第2のアーム716も、外側に変位する。
【0011】
このような構成により、第2のアーム716の接点部716bは、ある程度外側に変位された状態で、回路基板500に接触することになる。そのため、カードエッジコネクタ700を回路基板500に嵌合させる際に、回路基板500との接触によって接点部716bに印加される負荷を低減させることができる。そのため、仮に、第1のアーム715の接点部715bの表面に、回路基板500との接触によって印加される負荷によって損傷(傷やメッキ剥がれ等)が発生した場合であっても、第2のアーム716の接点部716bの表面には損傷が発生しない。よって、第2のアーム716による回路基板500の端子501との電気的接続を確保することができ、カードエッジコネクタ700の電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【0012】
しかしながら、図2および図3に示されている接続部711の構成では、第1のアーム715の自由端715dは、基部714aに接触している。同様に、第2のアーム716の基端部716dは、基部714aに接触している。そのため、第1のアーム715および第2のアーム716が外側に変位した際、自由端715dおよび基端部716dが基部714a上をスライドする。この際、第1のアーム715の接点部715bおよび第2のアーム716の接点部716bに対して、円弧形状の曲げ角度を大きくするような強い負荷が印加される。
【0013】
このような強い負荷によって、接点部715bおよび接点部716bに永久的な変形が生じてしまう。そのため、回路基板500をカードエッジコネクタ700から取り外した場合、接点部715bおよび接点部716bが初期状態に戻りきらず、接点部715bおよび接点部716bの円弧形状の曲げ角度が初期状態よりも大きくなってしまう。このような状態では、第1のアーム715および第2のアーム716の回路基板500の端子501に対する接触圧力が、初期状態の接触圧力よりも弱まってしまう。そのため、回路基板500に対するカードエッジコネクタ700の着脱を実行した場合、第1のアーム715および第2のアーム716と回路基板500の端子501との電気的接続の信頼性が損なわれてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2020-113456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みたものであり、その目的は、回路基板に対するカードエッジコネクタの着脱を実行した場合であっても、回路基板の端子に対する電気的接続の信頼性を維持することが可能なコネクタ端子およびコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような目的は、以下の(1)および(2)によって規定される本発明により達成される。
【0017】
(1)先端側から挿入された回路基板と嵌合するよう構成されたカードエッジコネクタで用いられるコネクタ端子であって、
前記回路基板の挿抜方向に延伸する基部と、
前記基部の先端部に設けられ、前記基部の前記先端部から基端側に向かって湾曲する折り返し部と、
前記折り返し部から前記基端側に延伸するアーム連結部と、
前記アーム連結部の基端部から、それぞれ互いに離間した状態で延伸する第1のアームおよび第2のアームと、を含み、
前記第1のアームおよび前記第2のアームのそれぞれは、
前記アーム連結部の前記基端部から、前記基端側であって、前記基部から離間する方向に向かって延伸する前方直進部と、
前記前方直進部の基端部から、前記基端側に延伸し、前記基部から離間する前記方向に突出する円弧状の接点部と、
前記接点部の基端部から、前記基端側であって、前記基部に接近する方向に延伸する後方直進部と、
前記後方直進部の基端部に設けられた自由端と、を備えており、
前記第1のアームの前記接点部は、前記第2のアームの前記接点部よりも前記先端側に位置し、
前記カードエッジコネクタが前記回路基板に嵌合していない自然状態において、前記第1のアームおよび前記第2のアームのそれぞれの前記自由端は、前記基部から離間していることを特徴とするコネクタ端子。
【0018】
(2)上記(1)に記載のコネクタ端子と、
前記コネクタ端子を収納するハウジングと、を含むことを特徴とするコネクタ。
【発明の効果】
【0019】
本発明のコネクタ端子においては、カードエッジコネクタが回路基板に嵌合していない自然状態において、第1のアームおよび第2のアームの自由端は、基部から離間している。そのため、自然状態から嵌合状態までの間、第1のアームおよび第2のアームは、基部に接近する方向に変位するが、第1のアームおよび第2のアームの自由端は、基部上をスライド移動しない。そのため、自然状態から嵌合状態までの間、第1のアームおよび第2のアームのそれぞれの接点部に対して印加される、接点部の円弧形状の曲げ角度を大きくするような負荷を大幅に低減することができ、接点部の永続的な変形が生じることを防止または大幅に抑制することができる。この結果、回路基板に対するカードエッジコネクタの着脱を実行した場合において、接点部の永続的な変形に起因する第1のアームおよび第2のアームの回路基板の端子に対する接触圧力の低下を防止または抑制することができ、回路基板の端子に対するコネクタ端子の電気的接続の信頼性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来のカードエッジコネクタを示す平面図である。
図2図1に示すカードエッジコネクタのコネクタ端子の斜視図である。
図3図2に示すコネクタ端子の接続部の断面図である。
図4】本発明のカードエッジコネクタ、カードエッジコネクタに接続された電気ケーブル、およびカードエッジコネクタが取り付けられる回路基板を示す斜視図である。
図5図4に示すカードエッジコネクタの分解斜視図である。
図6図5に示すコネクタ端子の斜視図である。
図7図5に示すコネクタ端子を別の角度から見た斜視図である。
図8】第2のアームを含む面におけるコネクタ端子の断面図である。
図9】自然状態でのカードエッジコネクタの断面図である。
図10】回路基板のカードエッジコネクタへの挿入を開始した状態でのカードエッジコネクタの断面図である。
図11】回路基板が第1のアームに接触した状態でのカードエッジコネクタの断面図である。
図12】回路基板が第2のアームに接触した状態でのカードエッジコネクタの断面図である。
図13】嵌合状態でのカードエッジコネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のコネクタ端子およびコネクタ(以下、カードエッジコネクタともいう)を、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて、説明する。なお、以下で参照する各図は、本発明の説明のために用意された模式的な図である。図面に示された各構成要素の寸法(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法を反映したものではない。また、各図において、同一または対応する要素には、同じ参照番号が付されている。以下の説明において、各図のZ軸の正方向を「先端側」または「前側」といい、Z軸の負方向を「基端側」または「後側」といい、Y軸の正方向を「上側」といい、Y軸の負方向を「下側」といい、X軸の正方向を「手前側」といい、X軸の負方向を「奥側」ということがある。また、Z方向を「回路基板の挿抜方向」といい、Y方向を「高さ方向」といい、X方向を「幅方向」ということがある。
【0022】
図4は、本発明のカードエッジコネクタ、カードエッジコネクタに接続された電気ケーブル、およびカードエッジコネクタが取り付けられる回路基板を示す斜視図である。図5は、図4に示すカードエッジコネクタの分解斜視図である。図6は、図5に示すコネクタ端子の斜視図である。図7は、図5に示すコネクタ端子を別の角度から見た斜視図である。図8は、第2のアームを含む面におけるコネクタ端子の断面図である。図9は、自然状態でのカードエッジコネクタの断面図である。図10は、回路基板のカードエッジコネクタへの挿入を開始した状態でのカードエッジコネクタの断面図である。図11は、回路基板が第1のアームに接触した状態でのカードエッジコネクタの断面図である。図12は、回路基板が第2のアームに接触した状態でのカードエッジコネクタの断面図である。図13は、嵌合状態でのカードエッジコネクタの断面図である。
【0023】
図4に示す本発明のカードエッジコネクタ1は、エッジ部近傍に1つ以上の端子(電気接点)101が形成された回路基板100と対で用いられる雌型の電気コネクタである。カードエッジコネクタ1を回路基板100のエッジ部に直接嵌合することにより、カードエッジコネクタ1を介して、回路基板100の1つ以上の端子101と、1つ以上の電気ケーブル200との間の電気的接続が提供される。このようなタイプの電気コネクタは、一般に、エッジコネクタソケットまたはスロットと呼ばれている。カードエッジコネクタ1は、回路基板100に直接嵌合することにより、回路基板100に対して容易に取り付け可能なので、カードエッジコネクタ1の回路基板100への取り付けの際にはんだ付け等の取り付け作業が不要である。そのため、回路基板100が設けられたデバイスの製造工程の簡略化や、低コスト化が可能となる。また、カードエッジコネクタ1は、回路基板100に対して着脱自在である。典型的には、回路基板100は、車載用デバイスの筐体内に設けられ、カードエッジコネクタ1は、車載用デバイスの回路基板100と1つ以上の電気ケーブル200との間の電気的接続を提供するために用いられる。
【0024】
なお、図示の形態では、カードエッジコネクタ1を介して回路基板100に電気的に接続される電気ケーブル200の数は2であるが、本発明はこれに限られない。カードエッジコネクタ1は、必要とされる電気的接続の数に応じて、1つまたは3つ以上の電気ケーブル200を回路基板100の対応する端子101に電気的に接続するよう構成されていてもよい。
【0025】
図4に示されているように、直接嵌合によりカードエッジコネクタ1が取り付けられる回路基板100は、板状のリジット回路基板またはFPC(Flexible Printed Circuit)に補強板(ポリイミド等)を張り付けて所定の厚みにした回路基板である。このような回路基板100は、例えば、フォトエッチング加工等のエッチング加工により、絶縁材料により構成された配線板上に導体の配線パターンを形成し、さらに、端子101を除く配線パターン上にソルダーレジスト層102を形成することにより得られる。回路基板100の配線板上に形成された配線パターンのうち、端子101を除く部分がソルダーレジスト層102によって覆われており、端子101が、回路基板100の一方の面(+Y方向の面)上において露出している。
【0026】
回路基板100は、-Z方向のエッジ部103に形成された平面視凹状の切り欠き部104と、切り欠き部104の両側部と間隙を介して離間した状態で、切り欠き部104の底部から+Z方向に突出する舌状部105と、舌状部105と切り欠き部104とによって規定される一対の逃げ部106と、舌状部105上に形成された係合孔107と、舌状部105上において露出している1つ以上(図示の形態では、2つ)の端子101と、を備えている。
【0027】
図5に示されているように、カードエッジコネクタ1は、ハウジング2と、ハウジング2内に収納される1つ以上(図示の形態では、2つ)のコネクタ端子3と、コネクタ端子3のハウジング2からの脱落を防止するためのリテーナー4と、を備えている。以下、添付の図面を参照して、カードエッジコネクタ1の各コンポーネントについて詳述する。なお、リテーナー4については、公知技術を利用して構成したものであればよく、ここではその詳細な説明を省略する。
【0028】
ハウジング2は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の硬質の絶縁性材料の一体成形加工によって形成された絶縁性部材であり、カードエッジコネクタ1の各コンポーネントを内部に収納する機能を有している。ハウジング2は、直方体状の本体部21と、本体部21の-Z方向(コネクタ端子3の挿入側)の面上に形成された端子挿入孔22(図9参照)と、本体部21の+Z方向(回路基板100の挿入側)の面上に形成された嵌合凹部23と、嵌合凹部23の下面(-Y方向の面)から上側に突出するよう形成されたロック機構24と、本体部21のX方向の両側面上に形成された一対のガイド溝25と、一対のガイド溝25と嵌合凹部23を隔てる一対の隔壁26と、を備えている。
【0029】
図9に示されているように、基端側から端子挿入孔22内にコネクタ端子3を挿入すると、後述するコネクタ端子3の弾性コンタクト37が嵌合凹部23内に位置する。したがって、嵌合凹部23内に回路基板100を挿入し、回路基板100に対してカードエッジコネクタ1を嵌合すると、嵌合凹部23内において、回路基板100の端子101と、コネクタ端子3の対応する弾性コンタクト37が互いに接触する(図13参照)。この結果、カードエッジコネクタ1を介して、回路基板100の端子101と対応する電気ケーブル200との間の電気的接続が提供される。
【0030】
図5に戻り、ロック機構24は、回路基板100の係合孔107と係合することにより、回路基板100に対してカードエッジコネクタ1をロックする機能を有している。ロック機構24は、先端側から基端側に向かって高さが漸増するテーパー形状を有しており、さらに、ロック機構24の基端面は、Z方向に直交する平坦面となっている。そのため、回路基板100を嵌合凹部23内に挿入すると、回路基板100がロック機構24のテーパー形状のテーパー面上をスライド移動する。係合孔107の基端面がロック機構24の基端面を乗り越えると、ロック機構24が係合孔107内に挿入され、係合孔107の基端面とロック機構24の基端面とが互いに係合する。このような構成により、回路基板100に対してカードエッジコネクタ1がロックされる。
【0031】
一対のガイド溝25は、カードエッジコネクタ1に対する回路基板100の挿入操作をガイドする機能を有している。カードエッジコネクタ1の嵌合凹部23内に回路基板100が挿入される際、回路基板100の切り欠き部104のX方向の両側面が、一対のガイド溝25内にそれぞれ挿入される。また、切り欠き部104のX方向の両側面が、一対のガイド溝25内でそれぞれ保持されるため、上下方向(Y方向)でのカードエッジコネクタ1に対する回路基板100の位置決め、および、ガタ付き防止がなされる。また、ハウジング2の嵌合凹部23内に回路基板100が挿入される際、一対の隔壁26が、回路基板100の一対の逃げ部106内に挿入され、左右方向(X方向)でのカードエッジコネクタ1に対する回路基板100の位置決め、および、ガタ付き防止がなされる。
【0032】
コネクタ端子3は、導電性を有する金属板(例えば、銅板もしくは銅合金板、または、これらのいずれかにメッキ処理を施した板)に対して抜き加工および曲げ加工を施すことによって形成された導電性部品である。コネクタ端子3は、対応する電気ケーブル200の端部に接続され、回路基板100の端子101と対応する電気ケーブル200との間の電気的接続を提供する機能を有している。
【0033】
図6図8に示されているように、コネクタ端子3は、電気ケーブル200の芯線に接続されるワイヤバレル部31と、電気ケーブル200の絶縁被覆部を保持するインシュレーションバレル部32と、回路基板100の端子101との間の電気的接続を確保するための接続部33と、を備えている。
【0034】
ワイヤバレル部31は、接続部33の-Z方向側に位置し、圧着等により電気ケーブル200の芯線に接続される部分である。ワイヤバレル部31に電気ケーブル200の芯線が接触するので、コネクタ端子3と電気ケーブル200の芯線とが電気的に接続される。インシュレーションバレル部32は、ワイヤバレル部31の-Z方向側に位置し、圧着等により電気ケーブル200の絶縁被覆部を保持する部分である。
【0035】
接続部33は、回路基板100の端子101との間の電気的接続を確保するための部分である。前述のように、ワイヤバレル部31に電気ケーブル200の芯線が接触しているので、接続部33が端子101に接触すると、端子101と電気ケーブル200との間の電気的接続が提供される。接続部33は、下側部34と、上側部35と、下側部34の基端部および上側部35の基端部を接続する連結部36と、を備えている。
【0036】
下側部34と上側部35は、上下方向に間隙を介して互いに対向している。図13に示されているように、下側部34と上側部35の間隙内に、回路基板100が挿入される。下側部34は、Z方向に延伸し、+Y方向に開口する長尺の箱状形状を有している。下側部34は、底面341と、底面341から+Y方向に向かって延伸する一対の壁部342と、底面341の先端部3411を保護する先端部343と、を備えている。
【0037】
底面341は、Y方向に直交し、かつ、Z方向に長尺な板状部分であり、下側部34の底板として機能する。また、底面341の先端部3411は、斜め上方向に延伸するよう折り曲げられている。一対の壁部342は、底面341のX方向の両端部から互いに間隙を介して+Y方向に向かって延伸する板状部分である。先端部343は、一対の壁部342の先端部をそれぞれ内側に向かって折り曲げて、互いに接触するようにして形成された部分である。先端部343は、底面341の先端部3411を先端側から覆い、保護している。このような構成を有する下側部34は、カードエッジコネクタ1が組み立てられる前の段階において、コネクタ端子3を運送、把持等する際に、後述する上側部35の弾性コンタクト37を下側から覆い、保護している。
【0038】
上側部35は、Z方向に延伸し、-Y方向に開口する長尺の箱状形状を有している。上側部35は、弾性コンタクト37と、弾性コンタクト37を側方(X方向)から覆う一対の壁部351と、弾性コンタクト37を先端側から覆う先端部352と、を備えている。
【0039】
弾性コンタクト37は、Y方向およびZ方向に弾性変形可能に構成され、回路基板100の端子101と接触し、端子101との電気的接続を提供するための部分である。図7に示されているように、弾性コンタクト37は、Z方向(回路基板100の挿抜方向)に延伸する基部371と、基部371の先端部に設けられ、先端側(+Z方向)から基端側(-Z方向)に向かって湾曲する折り返し部372と、折り返し部372から基端側に延伸するアーム連結部373と、アーム連結部373の基端部からそれぞれ互いに離間した状態で延伸する第1のアーム38および第2のアーム39と、を備えている。
【0040】
図8に示されているように、基部371は、Z方向に延伸する板状部分であり、上側部35の天板としても機能する。基部371は、ハウジング2の嵌合凹部23内でのコネクタ端子3の位置決めおよびガタツキ防止のためのストッパー3711と、弾性コンタクト37の基端側への変位を規制する突出部3712と、を備えている。
【0041】
ストッパー3711は、基部371の一部に切り込みを入れ、切り込み部分を-Y方向に突出させることにより形成された突起である。後述するように、第1のアーム38および第2のアーム39は、カードエッジコネクタ1が回路基板100に嵌合された嵌合状態において、基部371に接触する。この嵌合状態で、弾性コンタクト37に外部から力が印加された場合に、第1のアーム38および第2のアーム39が基部371上を基端側に大きくスライド移動し、第1のアーム38および第2のアーム39が永続的に変形してしまう可能性がある。ストッパー3711は、嵌合状態において弾性コンタクト37に外部から力が印加され、第1のアーム38および第2のアーム39が基部371上で基端側へのスライド移動した際に、第1のアーム38および第2のアーム39と接触し、第1のアーム38および第2のアーム39の過度なスライド移動を規制する。このような構成により、嵌合状態において弾性コンタクト37に外部から力が印加された場合に、第1のアーム38および第2のアーム39が永続的に変形することを防止または抑制することができる。
【0042】
突出部3712は、基部371の一部を+Y方向に湾曲することにより形成された+Y方向に突出する略円弧状部分である。突出部3712は、ストッパー3711よりも先端側に位置している。図9に示されているように、コネクタ端子3をハウジング2の端子挿入孔22内に挿入した際、突出部3712は、端子挿入孔22の上側面に形成されたスリット211内に挿入される。スリット211は、突出部3712のX軸方向の幅と略等しいまたはわずかに大きいX軸方向の幅を有しているため、嵌合状態において、突出部3712がスリット211と係合する。このような構成により、端子挿入孔22内でのコネクタ端子3の位置決めおよびガタツキ防止を行うことができる。
【0043】
図8に戻り、折り返し部372は、基部371の先端部に設けられ、基部371の先端部から基端側(-Z方向)に向かって湾曲し、先端側(+Z方向)に突出する円弧部分を有するU字状の円弧状部分である。折り返し部372は、折り返し部372より基端側に位置するアーム連結部373、第1のアーム38、および第2のアーム39の変位(弾性変形)の支点として機能する。折り返し部372の一方の端部は、基部371の先端部と連続している。折り返し部372の他方の端部は、基端側(-Z方向)であって、基部371から離間する方向、すなわち、図8中の左斜め下方向に向いている。
【0044】
アーム連結部373は、折り返し部372の他方の端部から、基端側であって、基部371から離間する方向、すなわち、図8中の左斜め下方向に直線状に延伸する板状部分である。アーム連結部373は、第1のアーム38および第2のアーム39と折り返し部372とを連結している。第1のアーム38に対して上側(+Y方向)への外力が印加され、第1のアーム38が上側に向かって変位すると、アーム連結部373も、折り返し部372を支点として、第1のアーム38の変位に伴って、上側に向かって変位する。さらに、アーム連結部373の変位に伴い、第2のアーム39も上側に向かって変位する。このように、アーム連結部373は、第1のアーム38に対して印加された外力の影響を、第2のアーム39に対しても及ぼす機能を有している。なお、第1のアーム38の変位に伴う第2のアーム39の変位の量は、第1のアーム38の変位の量と略同等である。
【0045】
第1のアーム38は、アーム連結部373の基端部から、基端側であって、基部371から離間する方向に延伸する前方直進部381と、前方直進部381の基端部から基端側に延伸する円弧上の接点部382と、接点部382の基端部から、基端側であって、基部371に接近する方向に延伸する後方直進部383と、後方直進部383の基端部に設けられた自由端384と、を備えている。
【0046】
前方直進部381は、アーム連結部373の基端部から、基端側であって、基部371から離間する方向、すなわち、図8中の左斜め下方向に直線状に延伸する板状部分である。図7に示されているように、前方直進部381は、アーム連結部373の基端部から、アーム連結部373と同じ角度で、基端側であって、基部371から離間する方向に延伸する第1の部分3811と、第1の部分3811の基端部から、第1の部分3811の延伸の角度よりも大きな角度で、基端側であって、基部371から離間する方向に延伸する第2の部分3812と、を備えている。
【0047】
接点部382は、前方直進部381の第2の部分3812の基端部から基端側に延伸し、かつ、下側(-Y方向)に突出する円弧状部分である。接点部382の先端部は、第2の部分3812の基端部と連続している。接点部382の基端部は、基端側であって、基部371に接近する方向、すなわち、図8中の左斜め上方向を向いている。カードエッジコネクタ1が回路基板100に嵌合された嵌合状態において、接点部382の円弧形状の頭頂部(すなわち、最も-Y方向に位置する点)の近傍部分が、回路基板100の端子101と接触する。
【0048】
後方直進部383は、接点部382の基端部から、基端側であって、基部371に接近する方向、すなわち、図8中の左斜め上方向に直線状に延伸する板状部分である。後方直進部383の先端部は、接点部382の基端部と連続している。後方直進部383の基端部は、図8中の左斜め上方向を向いている。自由端384は、後方直進部383の基端部に設けられ、上側に突出する円弧状部分である。自由端384の先端部は、後方直進部383の基端部と連続している。自由端384の基端部は、いずれの部材または部分にも接続されていない非固定端となっている。また、自由端384は、自然状態において、基部371から離間しており、基部371に接触していない。
【0049】
第1のアーム38と同様に、第2のアーム39は、アーム連結部373の基端部から、基端側であって、基部371から離間する方向に延伸する前方直進部391と、前方直進部391の基端部から基端側に延伸する円弧上の接点部392と、接点部392の基端部から、基端側であって、基部371に接近する方向に延伸する後方直進部393と、後方直進部393の基端部に設けられた自由端394と、を備えている。第1のアーム38および第2のアーム39は、アーム連結部373の基端部から互いに離間した状態で基端側に延伸している。図7に示されているように、XZ平面で見たとき、第1のアーム38および第2のアーム39の間には間隙が存在しており、第1のアーム38と第2のアーム39が互いに直接接触することはない。
【0050】
第2のアーム39の前方直進部391、接点部392、後方直進部393、および自由端394は、第1のアーム38の前方直進部381、接点部382、後方直進部383、および自由端384と、同様の構成を有しているので、第1のアーム38と第2のアーム39との相違点について詳述する。
【0051】
第2のアーム39の前方直進部391の第1の部分3911および第2の部分3912の長さは、それぞれ、第1のアーム38の前方直進部381の第1の部分3811および第2の部分3812の長さより長い。一方、第2のアーム39の前方直進部391の第1の部分3911および第2の部分3912の形状は、それぞれ、第1のアーム38の前方直進部381の第1の部分3811および第2の部分3812の形状と略等しい。第2のアーム39の接点部392の円弧サイズは、第1のアーム38の接点部382の円弧サイズと略等しい。1つの例では、接点部382の円弧形状の曲げ角度は、接点部392の円弧形状の曲げ角度よりも大きくてもよいが、その差は、5度程度である。また、接点部382の円弧形状の長さは、接点部392の円弧形状の長さより短くてもよいが、その差は、0.09mm程度である。
【0052】
さらに、第2のアーム39の後方直進部393および自由端394の長さおよび形状は、それぞれ、第1のアーム38の後方直進部383および自由端384の長さおよび形状と略等しい。1つの例では、後方直進部383の長さは、後方直進部393の長さと実質的に等しい。また、自由端384の長さは、自由端394の長さよりも短くてもよいが、その差は、0.15mm程度である。
【0053】
このように、第2のアーム39の前方直進部391の長さが、第1のアーム38の前方直進部381の長さよりも長いので、第2のアーム39は、第1のアーム38よりも、基端側、かつ、基部371から離間する方向、すなわち、図8中の斜め左下方向にオフセットされて設けられている。
【0054】
図6および図7に戻り、一対の壁部351は、弾性コンタクト37の基部371のX方向の両端部から互いに間隙を介して-Y方向に向かって延伸する板状部である。弾性コンタクト37の折り返し部372およびアーム連結部373は、一対の壁部351の間の間隙内に位置している。また、第1のアーム38の接点部382および第2のアーム39の接点部392は、一対の壁部351間の間隙から-Y方向に突出している。したがって、一対の壁部351は、折り返し部372およびアーム連結部373、第1のアーム38の一部、および第2のアーム39の一部を側方(X方向)から覆い、保護している。先端部352は、一対の壁部351の先端部をそれぞれ内側に向かって折り曲げて、互いに接触するようにして形成された部分である。先端部352は、折り返し部372を先端側から覆い、保護している。
【0055】
次に、図8を参照して、第1のアーム38の接点部382の頭頂部の基部371の下面(第1のアーム38および第2のアーム39に対向している面)からの高さh1、および、第2のアーム39の接点部392の頭頂部の基部371の下面からの高さh2について詳述する。高さh1は、嵌合状態において、第1のアーム38の自由端384が基部371に接触し、自由端384と基部371との接触により提供される反力によって、接点部382の回路基板100の端子101に対する接触圧力が十分大きくなるように、設定されている。同様に、高さh2は、嵌合状態において、第2のアーム39の自由端394が基部371に接触し、自由端394と基部371との接触により提供される反力によって、接点部392の回路基板100の端子101に対する接触圧力が十分大きくなるように、設定されている。
【0056】
さらに、図8に示されているように、第1のアーム38および第2のアーム39は、高さh1が、高さh2よりも低くなるよう(h1<h2)、構成されている。前述したように、第1のアーム38の接点部382に対して回路基板100が接触し、第1のアーム38が折り返し部372を支点として上側(外側)に変位(弾性変形)すると、アーム連結部373の作用により、第2のアーム39も上側に変位する。もし、h1=h2またはh1>h2の関係が成立するよう第1のアーム38および第2のアーム39が構成されていた場合、第2のアーム39の接点部392が回路基板100と接触する前に、第1のアーム38の上側への変位に伴い、第2のアーム39も上側に変位するので、嵌合状態において、接点部392の回路基板100の端子101に対する接触圧力を十分に確保できなくなってしまう。そのため、本発明のコネクタ端子3においては、第1のアーム38および第2のアーム39は、h1<h2との関係を満たすよう、構成されている。なお、高さh1と高さh2の差(h2-h1)は、第1のアーム38および第2のアーム39のZ軸方向の長さ、必要とされる端子101に対する接触圧力、第1のアーム38および第2のアーム39のバネ定数等の要因に応じて、適宜設定される。
【0057】
次に、第1のアーム38の自由端384の頭頂部(最も+Y方向に位置する点)と基部371の下面までの離間距離SD1、および、第2のアーム39の自由端394の頭頂部と基部371の下面までの離間距離SD2について詳述する。
【0058】
離間距離SD1は、嵌合状態において、第1のアーム38の自由端384が基部371に接触し、かつ、自然状態(図9参照)から嵌合状態(図13参照)までの間、自由端384が自然状態の位置から基部371に接触するまで移動し、基部371上をスライド移動しない、または、実質的にスライド移動しないよう(わずかにしかスライド移動しないよう)な距離に設定されている。自然状態から嵌合状態までの間、自由端384が基部371上をスライド移動しない、または、実質的にスライド移動しないため、第1のアーム38の接点部382の円弧形状の曲げ角度を大きくするよう接点部382を変形させる負荷が接点部382に印加されない、または、そのような負荷を非常に小さくすることができる。そのため、背景技術の欄で述べた従来技術において発生したような接点部382の永続的な変形が生じない。
【0059】
離間距離SD1と同様に、離間距離SD2は、自然状態から嵌合状態までの間、自由端394が自然状態の位置から基部371に接触するまで移動し、基部371上をスライド移動しない、または、実質的にスライド移動しないよう(わずかにしかスライド移動しないよう)な距離に設定されている。
【0060】
さらに、第1のアーム38および第2のアーム39は、離間距離SD1が離間距離SD2よりも小さくなるよう(SD1<SD2)、構成されている。前述したように、第1のアーム38の接点部382に対して回路基板100が接触し、第1のアーム38が折り返し部372を支点として上側(外側)に変位すると、アーム連結部373の作用により、第2のアーム39も上側に変位する。もし、SD1=SD2またはSD1>SD2の関係が成立するよう第1のアーム38および第2のアーム39が構成されていた場合、第2のアーム39の接点部392が回路基板100と接触する前に、第1のアーム38の上側への変位に伴い、第2のアーム39も上側に変位するので、嵌合状態において、第2のアーム39の自由端394が基部371に強く押し付けられてしまい、第2のアーム39の接点部392に対して強い負荷が印加され、従来技術において発生したような接点部392の永続的な変形が生じてしまう。そのため、本発明のコネクタ端子3においては、第1のアーム38および第2のアーム39は、SD1<SD2との関係を満たすよう、構成されている。なお、離間距離SD1と離間距離SD2の差(SD2-SD1)は、第1のアーム38および第2のアーム39のZ軸方向の長さ、必要とされる端子101に対する接触圧力、第1のアーム38および第2のアーム39のバネ定数等の要因に応じて、適宜設定される。
【0061】
次に、図9図13を参照して、回路基板100に対してカードエッジコネクタ1を嵌合(取り付け)する際のコネクタ端子3の挙動について詳述する。図9図13は、コネクタ端子3の第2のアーム39を含む面におけるカードエッジコネクタ1の断面図である。なお、図面の簡略化のため、コネクタ端子3に取り付けられた電気ケーブル600は、図9図13では省略されているが、カードエッジコネクタ1の実際の運用では、電気ケーブル600の一端がコネクタ端子3に取り付けられており、電気ケーブル600の他端が任意のデバイス(例えば、車載デバイス)に接続されていることに留意されたい。
【0062】
図9は、自然状態におけるカードエッジコネクタ1の断面図を示している。図9に示されているように、自然状態において、第1のアーム38の自由端384は、基部371の下面から離間距離SD1だけ離間しており、さらに、第2のアーム39の自由端394は、基部371の下面から離間距離SD2だけ離間している。さらに、第1のアーム38の接点部382は、第2のアーム39の接点部392よりも先端側に位置している。
【0063】
図9に示す自然状態において、カードエッジコネクタ1のハウジング2の嵌合凹部23内に回路基板100が挿入されると、カードエッジコネクタ1は、図10に示す状態に移行する。図10に示されている状態では、回路基板100は、第1のアーム38および第2のアーム39に接触していない。図10に示されている状態から回路基板100がさらに嵌合凹部23内に挿入され、回路基板100が第1のアーム38と接触すると、カードエッジコネクタ1は、図11に示す状態に移行する。
【0064】
図11に示す状態において、第1のアーム38の接点部382が回路基板100と接触し、第1のアーム38が上側に変位される。図11に示されているように、第1のアーム38が上側に変位されると、第1のアーム38の自由端384が、自然状態の位置から移動し、基部371の下面と接触する。自由端384と基部371との接触によって得られる反力によって、回路基板100に対する接点部382の接触圧力が確保される。また、自由端384が基部371と接触した後には、カードエッジコネクタ1に不測の衝撃が印加された場合や回路基板100をカードエッジコネクタ1から取り外すために回路基板100に外力が印加された場合を除き、第1のアーム38を上側に変位させるような外力が第1のアーム38に印加されないので、自由端384は、基部371の下面をスライド移動することはない、または、実質的にスライド移動しない。さらに、第1のアーム38の変位に伴い、アーム連結部373が、折り返し部372を支点として上側に弾性変形し、これに伴い、第2のアーム39が自然状態の位置から上側に変位する。この際、第2のアーム39の自由端394は、基部371の下面からわずかに離間している、または、基部371の下面にわずかに接触している。さらに、この状態において、第2のアーム39の接点部392の頭頂部の基部371の下面からの高さは、第1のアーム38の接点部382の頭頂部の基部371の下面からの高さよりも大きい。
【0065】
図11に示されている状態から回路基板100がさらに嵌合凹部23内に挿入され、回路基板100が第2のアーム39と接触すると、カードエッジコネクタ1は、図12に示す状態に移行する。図12に示す状態において、第2のアーム39の接点部392が回路基板100と接触し、第2のアーム39がさらに上側に変位される。図12に示されているように、自然状態の位置から移動した第2のアーム39がさらに上側に変位されると、第2のアーム39の自由端394が、基部371の下面と強く接触する。自由端394と基部371との接触によって得られる反力によって、回路基板100に対する接点部392の接触圧力が確保される。また、自由端394が基部371と接触した後には、カードエッジコネクタ1に不測の衝撃が印加された場合や回路基板100をカードエッジコネクタ1から取り外すために回路基板100に外力が印加された場合を除き、第2のアーム39を上側に変位させるような外力は第2のアーム39に印加されないので、自由端394は、基部371の下面をスライド移動することはない、または、実質的にスライド移動しない。
【0066】
図12に示されている状態から回路基板100がさらに嵌合凹部23内に挿入され、ハウジング2のロック機構24と回路基板100の係合孔107とが係合し、回路基板100に対してカードエッジコネクタ1がロックされると、カードエッジコネクタ1は、図13に示す嵌合状態に移行する。図13に示す嵌合状態において、第1のアーム38の自由端384が基部371の下面に接触している。自由端384と基部371との接触によって得られる反力によって、回路基板100の端子101に対する第1のアーム38の接点部382の接触圧力が確保されている。同様に、第2のアーム39の自由端394が基部371の下面に接触している。自由端394と基部371との接触によって得られる反力によって、回路基板100の端子101に対する第2のアーム39の接点部392の接触圧力が確保されている。このような構成により、接点部382が所望の接触圧力で回路基板100の端子101に接触し、さらに、接点部392が所望の接触圧力で端子101に接触する。また、ロック機構24と係合孔107との係合によって、カードエッジコネクタ1の回路基板100から離脱が防止される。このような状態において、カードエッジコネクタ1を介した電気ケーブル600と回路基板100の端子101との間の電気的接続が提供される。
【0067】
このように、本発明のコネクタ端子3においては、第1のアーム38および第2のアーム39は、第1のアーム38の自由端384および第2のアーム39の自由端394が、自然状態において、基部371から離間し、接触しないよう、構成されている。そのため、自然状態(図9)から嵌合状態(図13)までの間、自由端384および自由端394は、回路基板100との接触によって上下方向に移動するものの、基部371上においてスライド移動しない、または、実質的にスライド移動しない。そのため、第1のアーム38の接点部382の円弧形状の曲げ角度を大きくするよう接点部382を変形させる負荷が接点部382に印加されない、または、そのような負荷を非常に小さくすることができる。同様に、第2のアーム39の接点部392の円弧形状の曲げ角度を大きくするよう接点部392を変形させる負荷が接点部392に印加されない、または、そのような負荷を非常に小さくすることができる。したがって、従来技術において問題となっていた回路基板100に対するカードエッジコネクタ1の着脱を実行したとしても、接点部382および接点部392の永続的な変形が生じず、接点部382および接点部392の回路基板100の端子101に対する接触圧力を維持することができる。そのため、回路基板100に対するカードエッジコネクタ1の着脱を実行した場合であっても、端子101に対するカードエッジコネクタ1の電気的接続の信頼性を維持することができる。
【0068】
以上、本発明のコネクタ端子およびコネクタを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、本発明の各構成に任意の構成のものを付加することができる。
【0069】
例えば、上述の様態においては、コネクタ端子3の上側部35のみが弾性コンタクト37を有していたが、本発明はこれに限られない。コネクタ端子3の下側部34および上側部35のそれぞれが弾性コンタクト37を有しているような態様も、本発明の範囲内である。この場合、回路基板100の端子101は、回路基板100の上面および下面の双方において露出することとなる。
【0070】
本発明の属する分野および技術における当業者であれば、本発明の原理、考え方、および範囲から有意に逸脱することなく、記述された本発明のコネクタ端子およびカードエッジコネクタの構成の変更を実行可能であろうし、変更された構成を有する電気コネクタもまた、本発明の範囲内である。
【0071】
また、図面に示されたコネクタ端子およびコネクタの構成要素の数や種類は、説明のための例示にすぎず、本発明は必ずしもこれに限られない。本発明の原理および意図から逸脱しない範囲において、任意の構成要素が追加若しくは組み合わされ、または任意の構成要素が削除された態様も、本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0072】
1…カードエッジコネクタ 2…ハウジング 21…本体部 211…スリット 22…端子挿入孔 23…嵌合凹部 24…ロック機構 25…ガイド溝 26…隔壁 3…コネクタ端子 31…ワイヤバレル部 32…インシュレーションバレル部 33…接続部 34…下側部 341…底面 3411…先端部 342…壁部 343…先端部 35…上側部 351…壁部 352…先端部 36…連結部 37…弾性コンタクト 371…基部 3711…ストッパー 3712…突出部 372…折り返し部 373…アーム連結部 38…第1のアーム 381…前方直進部 3811…第1の部分 3812…第2の部分 382…接点部 383…後方直進部 384…自由端 39…第2のアーム 391…前方直進部 3911…第1の部分 3912…第2の部分 392…接点部 393…後方直進部 394…自由端 4…リテーナー 100…回路基板 101…端子 102…ソルダーレジスト層 103…エッジ部 104…切り欠き部 105…舌状部 106…逃げ部 107…係合孔 200…電気ケーブル 500…回路基板 501…端子 502…切り欠き部 600…電気ケーブル 700…カードエッジコネクタ 710…コネクタ端子 711…接続部 711a…上側部 711b…下側部 711c…連結部 712…ワイヤバレル部 713…インシュレーションバレル部 714…弾性コンタクト 714a…基部 714b…折り返し部 714c…アーム連結部 715…第1のアーム 715a…前方直進部 715b…接点部 715c…後方直進部 715d…自由端 716…第2のアーム 716a…前方直進部 716b…接点部 716c…後方直進部 716d…基端部 SD1…離間距離 SD2…離間距離 h1…高さ h2…高さ
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