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特開2024-90140組電池制御装置、組電池制御方法、及び蓄電システム
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  • 特開-組電池制御装置、組電池制御方法、及び蓄電システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090140
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】組電池制御装置、組電池制御方法、及び蓄電システム
(51)【国際特許分類】
   H02H 7/18 20060101AFI20240627BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20240627BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240627BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240627BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240627BHJP
   H02H 3/20 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H02H7/18
G01R19/00 B
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
H02J7/00 S
H02H3/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205829
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 祐次
【テーマコード(参考)】
2G035
5G004
5G053
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G035AB03
2G035AC01
2G035AC17
2G035AD03
2G035AD08
2G035AD34
2G035AD39
5G004AA04
5G004AB02
5G053AA07
5G053BA04
5G053EA07
5G053EB01
5G053EC03
5G053EC05
5G053FA01
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503FA14
5G503GA01
5G503GA13
5H030AS01
5H030BB01
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】複数の組電池が直列接続された組電池ユニットにおいて複合的な故障が起きた場合であっても組電池ユニットを保護する。
【解決手段】組電池制御装置30は、複数の組電池22の各々の接続又は切り離しを行う複数のFETで構成されたスイッチ部25と、各々がスイッチ部25と組電池22との間に設けられた複数の保護回路23であって、各保護回路23が、第1整流素子、第2整流素子、及び抵抗素子を含み、FETの寄生Dによる充電電流により組電池22の電圧が第1閾値以上になった場合に、第1整流素子が動作し、組電池22への充電電流を抵抗素子に分流させる複数の保護回路23と、各々が保護回路23と組電池22との間に設けられた複数のヒューズ24であって、組電池22に対して充電電流を遮断できない場合に、保護回路23により溶断される複数のヒューズ24と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の組電池が直列接続された組電池ユニットと、
前記複数の組電池の各々の接続又は切り離しを行う複数の電界効果トランジスタで構成されたスイッチ部と、
各々が前記スイッチ部と前記組電池との間に設けられた複数の保護回路であって、各保護回路が、第1整流素子、前記第1整流素子と直列に接続された第2整流素子、及び、前記第1整流素子と直列に接続されかつ前記第2整流素子と並列に接続された抵抗素子を含み、前記電界効果トランジスタの寄生ダイオードによる充電電流により前記組電池の電圧が第1閾値以上になった場合に、前記第1整流素子が動作し、前記組電池への前記充電電流を前記抵抗素子に分流させる前記複数の保護回路と、
各々が前記保護回路と前記組電池との間に設けられた複数のヒューズであって、前記組電池に対して前記充電電流を遮断できない場合に、前記保護回路により溶断される前記複数のヒューズと、
を備えた組電池制御装置。
【請求項2】
前記保護回路は、前記充電電流により前記組電池の電圧が前記第1閾値よりも高い第2閾値以上になった場合に、前記第2整流素子が更に動作し、前記第1整流素子及び前記第2整流素子により前記組電池の外部短絡経路を形成することにより、前記ヒューズを溶断させる
請求項1に記載の組電池制御装置。
【請求項3】
前記保護回路は、前記第1整流素子が動作する前記第1閾値に連動して動作するアラーム発信回路を更に含む
請求項1に記載の組電池制御装置。
【請求項4】
前記第1整流素子及び前記第2整流素子は、ツェナーダイオード又はサイリスタで構成される
請求項1に記載の組電池制御装置。
【請求項5】
複数の組電池が直列接続された組電池ユニットと、
前記複数の組電池の各々の接続又は切り離しを行う複数の電界効果トランジスタで構成されたスイッチ部と、
各々が前記スイッチ部と前記組電池との間に設けられた複数の保護回路であって、各保護回路が、第1整流素子、前記第1整流素子と直列に接続された第2整流素子、及び、前記第1整流素子と直列に接続されかつ前記第2整流素子と並列に接続された抵抗素子を含む前記複数の保護回路と、
各々が前記保護回路と前記組電池との間に設けられた複数のヒューズと、
を備えた組電池制御装置による組電池制御方法であって、
前記電界効果トランジスタの寄生ダイオードによる充電電流により前記組電池の電圧が第1閾値以上になった場合に、前記第1整流素子が動作し、前記組電池への前記充電電流を前記抵抗素子に分流させ、
前記組電池に対して前記充電電流を遮断できない場合に、前記保護回路が前記ヒューズを溶断させる
組電池制御方法。
【請求項6】
前記充電電流により前記組電池の電圧が前記第1閾値よりも高い第2閾値以上になった場合に、前記第2整流素子が更に動作し、前記第1整流素子及び前記第2整流素子により前記組電池の外部短絡経路を形成することにより、前記ヒューズを溶断させる
請求項5に記載の組電池制御方法。
【請求項7】
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の組電池制御装置と、
前記組電池制御装置と接続された電力変換機器と、
を備えた蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組電池制御装置、組電池制御方法、及び蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、メインリレーのバッテリからの切断を実現可能な構造の配電モジュールが記載されている。この配電モジュールは、バッテリと負荷の間を繋ぐ電源ラインと、電源ラインに接続されたメインリレーと、メインリレーよりもバッテリ側で電源ラインに接続されたアクティブヒューズと、メインリレーよりも負荷側で電源ラインに接続された第1電圧変換器と、電源ラインの異常を検出する異常検出部と、第1電圧変換器から延びてアクティブヒューズに接続された第1駆動制御用配線と、を含む。この第1電圧変換器に搭載された第1制御部が、異常検出部により電源ラインの異常が検出された際に、アクティブヒューズを切断する制御信号を送信して、アクティブヒューズが切断される。
【0003】
また、特許文献2には、圧力スイッチの作動で電池外部との電気的接続が遮断されたのちに圧力スイッチが復帰しても、電池外部との遮断を確実に保持可能な電池の保護構造が記載されている。この電池の保護構造は、電池内の異常圧力上昇によってスイッチオンされるスイッチと、スイッチのスイッチオンによる電池の短絡電流で溶断されて電池内部が電池外部から遮断されるヒューズを電池の内部に備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-014988号公報
【特許文献2】特開2001-210308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数個のセルで構成された組電池(以下、「カートリッジ」ともいう。)を直列接続して組電池ユニット(以下、「ストリング」ともいう。)を構成する蓄電システムがある。この種の蓄電システムでは、コストダウンの観点から、組電池の接続又は切り離しのスイッチを電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)で構成する場合がある。このFETを駆動する駆動ユニットの故障などでスイッチが同時にオフ状態で固着した場合、組電池ユニットに対して寄生ダイオードにより充電電流を遮断できず、過充電により組電池ユニットの発煙、発火のリスクがある。
【0006】
このための保護機構として、従来のシステムでは、パワーコンディショナ(PCS)からの電力線の遮断手段として、・電力線にスイッチを設定する、・PCSをシャットダウンする、の2重保護を施すことがある。しかし、これらの保護機構が連鎖・複合的な故障により発動できない場合、組電池ユニットを保護できなくなる。
【0007】
本開示は、以上の事実を考慮して成されたもので、複数の組電池が直列接続された組電池ユニットにおいて複合的な故障が起きた場合であっても組電池ユニットを保護することができる組電池制御装置、組電池制御方法、及び蓄電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1態様に係る組電池制御装置は、複数の組電池が直列接続された組電池ユニットと、前記複数の組電池の各々の接続又は切り離しを行う複数の電界効果トランジスタで構成されたスイッチ部と、各々が前記スイッチ部と前記組電池との間に設けられた複数の保護回路であって、各保護回路が、第1整流素子、前記第1整流素子と直列に接続された第2整流素子、及び、前記第1整流素子と直列に接続されかつ前記第2整流素子と並列に接続された抵抗素子を含み、前記電界効果トランジスタの寄生ダイオードによる充電電流により前記組電池の電圧が第1閾値以上になった場合に、前記第1整流素子が動作し、前記組電池への前記充電電流を前記抵抗素子に分流させる前記複数の保護回路と、各々が前記保護回路と前記組電池との間に設けられた複数のヒューズであって、前記組電池に対して前記充電電流を遮断できない場合に、前記保護回路により溶断される前記複数のヒューズと、を備える
【0009】
第2態様に係る組電池制御装置は、第1態様に係る組電池制御装置において、前記保護回路が、前記充電電流により前記組電池の電圧が前記第1閾値よりも高い第2閾値以上になった場合に、前記第2整流素子が更に動作し、前記第1整流素子及び前記第2整流素子により前記組電池の外部短絡経路を形成することにより、前記ヒューズを溶断させる。
【0010】
第3態様に係る組電池制御装置は、第1態様に係る組電池制御装置において、前記保護回路が、前記第1整流素子が動作する前記第1閾値に連動して動作するアラーム発信回路を更に含む。
【0011】
第4態様に係る組電池制御装置は、第1態様に係る組電池制御装置において、前記第1整流素子及び前記第2整流素子が、ツェナーダイオード又はサイリスタで構成される。
【0012】
上記目的を達成するために、第5態様に係る組電池制御方法は、複数の組電池が直列接続された組電池ユニットと、前記複数の組電池の各々の接続又は切り離しを行う複数の電界効果トランジスタで構成されたスイッチ部と、各々が前記スイッチ部と前記組電池との間に設けられた複数の保護回路であって、各保護回路が、第1整流素子、前記第1整流素子と直列に接続された第2整流素子、及び、前記第1整流素子と直列に接続されかつ前記第2整流素子と並列に接続された抵抗素子を含む前記複数の保護回路と、各々が前記保護回路と前記組電池との間に設けられた複数のヒューズと、を備えた組電池制御装置による組電池制御方法であって、前記電界効果トランジスタの寄生ダイオードによる充電電流により前記組電池の電圧が第1閾値以上になった場合に、前記第1整流素子が動作し、前記組電池への前記充電電流を前記抵抗素子に分流させ、前記組電池に対して前記充電電流を遮断できない場合に、前記保護回路が前記ヒューズを溶断させる。
【0013】
第6態様に係る組電池制御方法は、第5態様に係る組電池制御方法において、前記充電電流により前記組電池の電圧が前記第1閾値よりも高い第2閾値以上になった場合に、前記第2整流素子が更に動作し、前記第1整流素子及び前記第2整流素子により前記組電池の外部短絡経路を形成することにより、前記ヒューズを溶断させる。
【0014】
上記目的を達成するために、第7態様に係る蓄電システムは、第1態様~第4態様の何れか1態様に係る組電池制御装置と、前記組電池制御装置と接続された電力変換機器と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本開示によれば、複数の組電池が直列接続された組電池ユニットにおいて複合的な故障が起きた場合であっても組電池ユニットを保護することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る蓄電システムの構成の一例を示す図である。
図2】実施形態に係る保護回路による保護動作の説明に供するグラフである。
図3】実施形態に係る保護回路による保護動作の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本開示の技術を実施するための形態の一例について詳細に説明する。なお、動作、作用、機能が同じ働きを担う構成要素及び処理には、全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を適宜省略する場合がある。各図面は、本開示の技術を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本開示の技術は、図示例のみに限定されるものではない。また、本実施形態では、本開示と直接的に関連しない構成や周知な構成については、説明を省略する場合がある。
【0018】
図1は、本実施形態に係る蓄電システム100の構成の一例を示す図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る蓄電システム100は、組電池制御装置30と、電力変換機器(パワーコンディショナ)40とを備えている。
【0020】
電力変換機器40は、一端が系統(トランス)に接続され、他端が組電池制御装置30に接続されている。電力変換機器40は、例えば、DC/ACコンバータである。
【0021】
組電池制御装置30は、SCU10と、ストリング遮断リレー20と、複数のCMUa21、CMUb21、CMUc21と、複数の保護回路23と、複数のヒューズ24と、スイッチ部25と、を備えている。CMUは、Cartridge Management Unit(カートリッジ管理ユニット)の略である。本実施形態では、3個のCMUを例示しているが、個数は3個に限定されるものではなく、2個以上であればよい。また、個々のCMUを区別するために、CMUの後にa、b、cを付与しているが、特に区別して説明する必要がない場合には単にCMUともいう。
【0022】
CMUa21~CMUc21の各々は、複数個のセルで構成された組電池(カートリッジ)22を備えている。CMUa21は、組電池22の電圧Vaを個別に検出し、検出した電圧VaをSCU10に出力する。CMUb21は、組電池22の電圧Vbを個別に検出し、検出した電圧VbをSCU10に出力する。CMUc21は、組電池22の電圧Vcを個別に検出し、検出した電圧VcをSCU10に出力する。なお、個々の電圧Vを区別するために、電圧Vの後にa、b、cを付与しているが、特に区別して説明する必要がない場合には単に電圧Vともいう。
【0023】
スイッチ部25は、複数の組電池22の各々の接続又は切り離しを行う複数の電界効果トランジスタ(FET)で構成される。具体的に、スイッチ部25は、CMUa21の組電池22に対応するSW1、SW2と、CMUb21の組電池22に対応するSW3、SW4と、CMUc21の組電池22に対応するSW5、SW6と、を含む。SW1~SW6の各々は、FETで構成されている。
【0024】
スイッチ部25では、正常時に組電池22を切り離す場合、SW1、SW3、SW5がオフ(組電池切り離し、寄生ダイオード(以下、「寄生D」という。)の経路有り)となり、SW2、SW4、SW6がオン(組電池パススルー経路オン)となる。一方、FETの駆動ユニットが故障等でオフになった場合、SW1、SW3、SW5がオフ(組電池切り離し、寄生Dの経路有り)となり、SW2、SW4、SW6がオフ(組電池パススルー経路オフ)となる。この場合、寄生Dを介して組電池への充電経路が残留する。
【0025】
CMUa21の組電池22は、SW1及びSW2を介して、SCU10及び電力変換機器40の各々と接続されている。CMUb21の組電池22は、SW3及びSW4を介して、SCU10及び電力変換機器40の各々と接続されている。CMUc21の組電池22は、SW5及びSW6を介して、SCU10及び電力変換機器40の各々と接続されている。
【0026】
CMUa21~CMUc21の各々と、SCU10とは、例えば、シリアル通信プロトコルの一種であるCAN(Controller Area Network)によって通信可能とされる。
【0027】
SCU10は、String Control Unit(ストリング制御ユニット)の略である。SCU10は、CMUa21~CMUc21の上位ユニットとなる信号処理ユニットである。SCU10は、電力線26に設けた電流センサ(図示省略)と接続されており、電流センサを介して、複数の組電池22が直列接続された組電池ユニット(ストリング)に対して複数の組電池22の総電流Ioを検出する。
【0028】
SCU10は、スイッチ部25のSW1~SW6の各々と接続されており、スイッチ部25のSW1~SW6の各々のオン、オフを制御する。
【0029】
ストリング遮断リレー20は、電力線26に設けられ、電力変換機器40と複数の組電池22との接続を遮断するためのリレースイッチである。
【0030】
保護回路23の各々は、スイッチ部25と組電池22との間に設けられる。保護回路23の各々は、第1ツェナーダイオードZD1、第2ツェナーダイオードZD2、抵抗素子R1、及びアラーム発信回路PHC1を含む。第2ツェナーダイオードZD2は、第1ツェナーダイオードZD1と直列に接続される。抵抗素子R1は、第1ツェナーダイオードZD1と直列に接続され、かつ、第2ツェナーダイオードZD2と並列に接続される。なお、第1ツェナーダイオードZD1は第1整流素子の一例であり、第2ツェナーダイオードZD2は第2整流素子の一例である。これら第1整流素子及び第2整流素子は、ツェナーダイオードに代えてサイリスタを用いてもよい。アラーム発信回路PHC1は、第1ツェナーダイオードZD1の動作電圧に連動して動作し、アラーム信号を発信する。アラーム発信回路PHC1には、例えば、フォトカプラが用いられる。
【0031】
ヒューズ24の各々は、保護回路23と組電池22との間に設けられ、第1ツェナーダイオードZD1、抵抗素子R1、及び第2ツェナーダイオードZD2と接続される。
【0032】
ところで、FETで構成されたSW1~SW6を駆動する駆動ユニットの故障などで例えばSW1、SW2が同時にオフ状態で固着した場合、複数の組電池22が直列接続された組電池ユニットに対して寄生Dにより充電電流を遮断できず、過充電により組電池ユニットの発煙、発火のリスクがある。このため、電力変換機器40からの電力線26の遮断手段として、(1)電力線26にストリング遮断リレー20を設定する、(2)電力変換機器40をシャットダウンする、の2重保護を施すことがある。
【0033】
しかしながら、連鎖・複合的な故障により、上記(1)、(2)の保護機構を発動できない場合、組電池ユニットを保護できなくなる。
【0034】
このため、本実施形態に係る組電池制御装置30では、上記(1)、(2)の保護機構とは別に独立した保護機構として、図1に示すように、第1ツェナーダイオードZD1、第2ツェナーダイオードZD2、抵抗素子R1、及びアラーム発信回路PHC1を含む保護回路23を設けている。なお、アラーム発信回路PHC1は必須ではなく、第1ツェナーダイオードZD1、第2ツェナーダイオードZD2、及び抵抗素子R1により保護回路23を構成してもよい。
【0035】
保護回路23は、動作トリガを電圧の閾値で設定し、段階的に組電池ユニットの保護動作を実行する。この保護動作により、組電池ユニットにおいて複合的な故障が起きた場合であっても組電池ユニットを保護することができる。
【0036】
具体的に、保護回路23は、FETの寄生Dによる充電電流により組電池22の電圧が第1閾値Th1以上になった場合に、第1ツェナーダイオードZD1が動作し、組電池22への充電電流を抵抗素子R1に分流させる。つまり、第1ツェナーダイオードZD1が動作することで、抵抗素子R1で電流を制限した分流経路が形成される。第1ツェナーダイオードZD1には、予め動作電圧として第1閾値Th1が設定されている。
【0037】
このとき、アラーム発信回路PHC1は、第1ツェナーダイオードZD1の動作電圧である第1閾値Th1に連動して動作し、アラーム信号を発信する。アラーム信号は、例えば、音、光(パトライト(登録商標)等)等を用いて、ユーザに対して手動でシステムの緊急停止を促すための信号である。
【0038】
次に、組電池22に対して充電電流を遮断できない場合に、保護回路23がヒューズ24を溶断させる。具体的に、保護回路23は、充電電流により組電池22の電圧が第1閾値Th1よりも高い第2閾値Th2以上になった場合に、第2ツェナーダイオードZD2が更に動作し、第1ツェナーダイオードZD1及び第2ツェナーダイオードZD2により組電池22の外部短絡経路を形成することにより、ヒューズ24を溶断させる。つまり、第1ツェナーダイオードZD1及び第2ツェナーダイオードZD2が共に動作することで、組電池22から過電流(外部短絡)を流す経路を形成し、過電流によってヒューズ24を溶断し、充電電流を遮断する。第2ツェナーダイオードZD2には、予め動作電圧として第2閾値Th2(>第1閾値Th1)が設定されている。
【0039】
なお、過電流は、ヒューズ24を溶断するのに十分な電流であればよく、ヒューズ24の特性や、組電池22、電線、回路部品の安全性を考慮して適切に設定される。また、保護回路23は、組電池22毎に独立したユニットとして構成できるため、組電池22に最適化した動作電圧を組電池毎に設定することが可能である。
【0040】
図2は、本実施形態に係る保護回路23による保護動作の説明に供するグラフである。図2において、縦軸は電池電圧(V)を示し、横軸は時間(s)を示す。
【0041】
図2に示すように、第1ツェナーダイオードZD1には、予め動作電圧として第1閾値Th1が設定され、第2ツェナーダイオードZD2には、予め動作電圧として第2閾値Th2(>第1閾値Th1)が設定されている。
【0042】
保護動作1では、組電池22の電圧が第1閾値Th1になった場合に、第1ツェナーダイオードZD1及びアラーム発信回路PHC1がオフからオンとなり、第2ツェナーダイオードZD2はオフのままとなる。この結果、抵抗素子R1により充電電流の分流経路が形成され、組電池22の電圧の上昇が抑制される。また、アラームを発信させて、ユーザに対して手動でシステムの緊急停止を促すことができる。
【0043】
上記保護動作1でシステム停止されず、更に組電池22の電圧が上昇した場合、保護動作2を実行する。保護動作2では、組電池22の電圧が第2閾値Th2(>第1閾値Th1)になった場合に、更に、第2ツェナーダイオードZD2がオフからオンとなる。この結果、第1ツェナーダイオードZD1及び第2ツェナーダイオードZD2により組電池22からの過電流を流す外部短絡経路が形成され、ヒューズ24が溶断される。これにより組電池22への充電が遮断される。
【0044】
次に、図3を参照して、本実施形態に係る組電池制御装置30の作用を説明する。
【0045】
図3は、本実施形態に係る保護回路23による保護動作の流れの一例を示すフローチャートである。
【0046】
図3のステップS101では、組電池22の電圧が第1閾値Th1以上になった場合(肯定判定の場合)、ステップS102に移行し、組電池22の電圧が第1閾値Th1未満である場合(否定判定の場合)、ステップS101で待機となる。
【0047】
ステップS102では、第1閾値Th1以上の電池電圧に応じて、第1ツェナーダイオードZD1が動作する。
【0048】
ステップS103では、第1ツェナーダイオードZD1の動作に応じて、充電電流が抵抗素子R1に分流され、組電池22の電圧の上昇が抑制される。
【0049】
ステップS104では、第1閾値Th1以上の電池電圧に応じて、アラーム発信回路PHC1が動作し、アラーム信号を出力する。アラーム信号は、上述したように、例えば、音、光(パトライト(登録商標)等)等を用いて、ユーザに対して手動でシステムの緊急停止を促すための信号である。
【0050】
ステップS105では、アラーム発信回路PHC1から出力されたアラーム信号に応じて、ユーザが手動でシステムの緊急停止を行った場合(肯定判定の場合)、保護動作を終了し、システムが緊急停止されていない場合(否定判定の場合)、ステップS106に移行する。
【0051】
ステップS106では、システムが緊急停止されず、更に組電池22の電圧が上昇し、組電池22の電圧が第2閾値Th2以上になった場合(肯定判定の場合)、ステップS107に移行し、組電池22の電圧が第2閾値Th2未満である場合(否定判定の場合)、ステップS105に戻り処理を繰り返す。
【0052】
ステップS107では、第2閾値Th2以上の電池電圧に応じて、第2ツェナーダイオードZD2が動作する。
【0053】
ステップS108では、第1ツェナーダイオードZD1及び第2ツェナーダイオードZD2により組電池22からの過電流を流す外部短絡経路が形成され、ヒューズ24が溶断される。これにより組電池22への充電が遮断され、保護動作を終了する。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、複数の組電池が直列接続された組電池ユニットにおいて複合的な故障が起きた場合であっても組電池ユニットを保護することができ、安全性が向上する。
【0055】
また、最終的にはヒューズの溶断により組電池ユニットを保護するが、その前にユーザに対して手動でのシステムの緊急停止を促すことができる。
【0056】
また、保護回路が組電池毎に独立したユニットで構成されるため、組電池の保守がし易く、保守性を高めることができる。
【0057】
その他、上記実施形態で説明した蓄電システム及び組電池制御装置の構成は、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更してもよい。
【0058】
また、上記実施形態で説明した処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 SCU
20 ストリング遮断リレー
21 CMUa~CMUc
22 組電池
23 保護回路
24 ヒューズ
25 スイッチ部
26 電力線
30 組電池制御装置
40 電力変換機器
100 蓄電システム
図1
図2
図3