特開 2024-90143 開口補強部材

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024090143

(43)【公開日】2024-07-04

(54)【発明の名称】開口補強部材

(51)【国際特許分類】

   E04C 5/03 20060101AFI20240627BHJP

【ＦＩ】

E04C5/03

【審査請求】未請求

【請求項の数】3

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022205834

(22)【出願日】2022-12-22

(71)【出願人】

【識別番号】000003621

【氏名又は名称】株式会社竹中工務店

(74)【代理人】

【識別番号】110001519

【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】石山 達士

【テーマコード（参考）】

2E164

【Ｆターム（参考）】

2E164AA02

2E164CA31

(57)【要約】

【課題】コンクリート面材における開口の周辺を補強しつつ、当該周辺に対するコンクリートの充填性の低下を抑制することを目的とする。
【解決手段】開口補強部材２０は、スラブ１０に形成される多角形状の開口１４の内側面１４Ｓに沿って配置される補強鋼板２２と、補強鋼板２２から補強鋼板２２の長手方向の両側にそれぞれ延出し、スラブ１０に埋設される鉄筋３０と、を備える。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

コンクリート面材に形成される多角形状の開口の内側面に沿って配置される補強鋼板と、
前記補強鋼板から該補強鋼板の長手方向の両側にそれぞれ延出し、前記コンクリート面材に埋設される定着部と、
を備える開口補強部材。

【請求項2】

前記補強鋼板における前記開口の内側面との接触面には、該補強鋼板を前記コンクリート面材に付着させる付着手段が設けられる、
請求項１に記載の開口補強部材。

【請求項3】

前記定着部は、前記補強鋼板の端部に取り付けられた鉄筋とされる、
請求項１又は請求項２に記載の開口補強部材。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本実施形態は、開口補強部材に関する。

【背景技術】

【0002】

鉄筋コンクリート壁に形成された開口の周辺に、開口補強材を埋設する開口補強構造が開示されている（例えば、特許文献１参照）。

【0003】

また、床スラブに、建材搬入用の仮設開口を形成するための仮設開口部用型枠が知られている（例えば、特許文献２参照）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２０２２－０６２６４９号公報

【特許文献2】特開２０２１－１１６５５４号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

特許文献１に開示された開口補強構造では、前述したように、鉄筋コンクリート壁に形成された開口の周辺に、開口補強部材を埋設するため、開口の周辺に対するコンクリートの充填性が低下する可能性がある。

【0006】

本実施形態は、上記の事実を考慮し、コンクリート面材における開口の周辺を補強しつつ、当該周辺に対するコンクリートの充填性の低下を抑制することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0007】

請求項１に記載の開口補強部材は、コンクリート面材に形成される多角形状の開口の内側面に沿って配置される補強鋼板と、前記補強鋼板から該補強鋼板の長手方向の両側にそれぞれ延出し、前記コンクリート面材に埋設される定着部と、を備える。

【0008】

請求項１に係る開口補強部材によれば、補強鋼板は、コンクリート面材に形成される多角形状の開口の内側面に沿って配置される。また、定着部は、補強鋼板から当該補強鋼板の長手方向の両側にそれぞれ延出し、コンクリート面材に埋設される。これにより、補強鋼板が定着部を介してコンクリート面材に接合されるため、補強鋼板が補強部材として機能する。

【0009】

そのため、本実施形態では、コンクリート面材の開口の周辺に配筋する補強鉄筋等を省略することができる。したがって、本実施形態では、コンクリート面材の開口の周辺に対するコンクリートの充填性を高めることができる。

【0010】

また、コンクリート面材の施工時に、補強鋼板が型枠として機能するため、在来型枠の仮設及び撤去等が不要になる。したがって、コンクリート面材の施工性が向上する。

【0011】

請求項２に記載の開口補強部材は、請求項１に記載の開口補強部材において、前記補強鋼板における前記開口の内側面との接触面には、該補強鋼板を前記コンクリート面材に付着させる付着手段が設けられる。

【0012】

請求項２に係る開口補強部材によれば、補強鋼板における開口の内側面との接触面には、付着手段が設けられる。この付着手段によって、補強鋼板がコンクリート面材に付着されるため、補強鋼板とコンクリート面材との一体性が高められる。したがって、コンクリート面材に対する開口補強部材の補強効果が高められるとともに、開口の内側面のひび割れ等が抑制される。

【0013】

請求項３に記載の開口補強部材は、請求項１又は請求項２に記載の開口補強部材において、前記定着部は、前記補強鋼板の端部に取り付けられた鉄筋とされる。

【0014】

請求項３に係る開口補強部材によれば、定着部は、補強鋼板の端部に取り付けられた鉄筋とされる。このように補強鋼板の端部に鉄筋を取り付けることにより、簡単な構成で、鉄筋を介して補強鋼板をコンクリート面材に接合することができる。

【発明の効果】

【0015】

以上説明したように、本実施形態によれば、コンクリート面材における開口の周辺を補強しつつ、当該周辺に対するコンクリートの充填性の低下を抑制することができる。

【図面の簡単な説明】

【0016】

【図1】一実施形態に係る複数の開口補強部材が適用されたスラブを示す平断面図である。

【図2】図１の２－２線断面図である。

【図3】図１に示される開口補強部材を示す側面図である。

【図4】図１に示されるスラブの施工過程を示す平断面図である。

【図5】一実施形態に係る複数の開口補強部材の変形例を示す図１の５－５線断面図に対応する断面図である。

【図6】一実施形態に係る複数の開口補強部材の変形例を示す横断面図である。

【図7】一実施形態に係る複数の開口補強部材の変形例を示す側面図である。

【発明を実施するための形態】

【0017】

以下、図面を参照しながら、一実施形態について説明する。

【0018】

（スラブ）
図１には、本実施形態に係る複数の開口補強部材２０が適用されたスラブ１０が示されている。このスラブ１０は、例えば、構造物の床や天井を構成している。なお、スラブ１０は、コンクリート面材の一例である。

【0019】

スラブ１０は、鉄筋コンクリート造とされている。このスラブ１０の内部には、複数のスラブ筋１２が埋設されている。複数のスラブ筋１２は、スラブ１０を厚み方向から見て、格子状に配筋されている。

【0020】

スラブ１０には、開口１４が形成されている。開口１４は、スラブ１０を厚み方向に貫通する貫通孔とされている。この開口１４には、例えば、図示しない設備配線や配管等が貫通される。

【0021】

開口１４は、スラブ１０を厚み方向から見て、長方形状に形成されている。この開口１４では、縦辺と横辺との長さが異なっている。また、開口１４は、４つの内側面１４Ｓを有している。

【0022】

なお、開口１４の形状は、スラブ１０を厚み方向から見て、長方形状に限らず、正方形状や、菱形状、平行四辺形状、台形状等の種々の四角形状にすることができる。また、開口１４の形状は、スラブ１０を厚み方向から見て、四角形状に限らず、例えば、多角形状でも良い。

【0023】

（開口補強部材）
複数の開口補強部材２０は、スラブ１０の開口１４の周辺を補強するとともに、スラブ１０の型枠として機能する。また、複数の開口補強部材２０は、例えば、スラブ１０の長期荷重を負担する。各開口補強部材２０は、補強鋼板２２と、複数の鉄筋３０とを有している。

【0024】

補強鋼板２２は、長方形状の鋼板によって形成されている。この補強鋼板２２は、スラブ１０の開口１４の内側面１４Ｓに沿って配置されている。また、補強鋼板２２の長手方向の長さ（全長）は、開口１４の一辺の長さと同様とされている。この補強鋼板２２は、開口１４の一辺（内側面１４Ｓ）の全長に亘って配置されている。

【0025】

隣り合う補強鋼板２２の長手方向の端部２２Ｅは、開口１４の隅部において、互いに突き合せられている。なお、隣り合う補強鋼板２２の端部２２Ｅ同士は、溶接等によって接合しても良いし、接合しなくても良い。

【0026】

なお、本実施形態では、スラブ１０の開口１４が、スラブ１０を厚み方向から見て長方形状に形成されている。そのため、本実施形態では、開口１４の各辺の長さに応じて、長手方向の長さが異なる２種類の補強鋼板２２が使用されている。

【0027】

図２に示されるように、補強鋼板２２の幅は、スラブ１０の厚さと同様とされている。また、補強鋼板２２は、開口１４の内側面１４Ｓの下端から上端に亘って配置されている。この補強鋼板２２の長手方向の両側には、２本の鉄筋３０がそれぞれ取り付けられている。

【0028】

図３に示されるように、２本の鉄筋３０は、補強鋼板２２の長手方向（矢印Ｌ方向）に沿って配置されている。また、２本の鉄筋３０は、補強鋼板２２の幅方向（矢印Ｗ方向）に間隔を空けて配置されている。これらの鉄筋３０の一端側は、補強鋼板２２における開口１４の内側面１４Ｓ（図２参照）との接触面２２Ｓに溶接等によって接合されている。また、２本の鉄筋３０の一端側は、スラブ１０（図１参照）に埋設されている。

【0029】

図２に示されるように、各鉄筋３０の他端側は、補強鋼板２２から当該補強鋼板２２の長手方向の両側へそれぞれ延出し、スラブ１０に埋設されている。これらの鉄筋３０を介して補強鋼板２２がスラブ１０に接合（固定）されている。

【0030】

図１に示されるように、隣り合う補強鋼板２２の鉄筋３０は、スラブ１０を厚み方向から見て、互いに交差している。また、図２に示されるように、隣り合う補強鋼板２２の鉄筋３０は、互いに干渉しないように、スラブ１０の厚み方向にずれて配置されている。

【0031】

なお、スラブ１０に対する鉄筋３０の定着長は、必要に応じて適宜変更可能である。また、鉄筋３０の他端側は、例えば、Ｊ字状やＵ字状に湾曲させても良い。また、鉄筋３０の他端側には、機械式定着等を取り付けても良い。さらに、鉄筋３０の本数や配置は適宜変更可能であり、補強鋼板２２には、少なくとも１本の鉄筋３０を設けることができる。

【0032】

（開口補強部材の施工方法）
次に、本実施形態に係る開口補強部材の施工方法の一例について説明する。

【0033】

先ず、図４に示されるように、図示しない底型枠上に、複数のスラブ筋１２を格子状に適宜配筋する。次に、スラブ１０の開口１４部分に配筋されたスラブ筋１２を切除する。

【0034】

次に、図１に示されるように、開口１４の各辺に沿って開口補強部材２０の補強鋼板２２を配置し、これらの補強鋼板２２によって開口１４を取り囲む。なお、補強鋼板２２には、複数の鉄筋３０が予め溶接等によって取り付けられている。

【0035】

また、隣り合う補強鋼板２２の端部２２Ｅ同士を突き合せる。そして、隣り合う補強鋼板２２の端部２２Ｅ同士の隙間を、必要に応じてノロ止めする。

【0036】

次に、複数の開口補強部材２０の周辺にコンクリートを打設して硬化させる。この際、各開口補強部材２０の補強鋼板２２が型枠として機能する。また、補強鋼板２２から当該補強鋼板２２の長手方向の両側にそれぞれ延出する複数の鉄筋３０がスラブ１０に埋設される。これらの鉄筋３０を介して、補強鋼板２２がスラブ１０に接合（固定）される。

【0037】

（効果）
次に、本実施形態の効果について説明する。

【0038】

図１に示されるように、本実施形態によれば、開口補強部材２０の補強鋼板２２は、スラブ１０に形成される多角形状の開口１４の内側面１４Ｓに沿って配置されている。また、鉄筋３０は、補強鋼板２２から当該補強鋼板２２の長手方向の両側にそれぞれ延出し、スラブ１０に埋設されている。

【0039】

これにより、補強鋼板２２が鉄筋３０を介してスラブ１０に接合されるため、補強鋼板２２が補強部材として機能する。そのため、本実施形態では、スラブ１０の開口１４の周辺に配筋する補強鉄筋等を省略することができる。

【0040】

したがって、本実施形態では、スラブ１０の開口１４の周辺に対するコンクリートの充填性を高めることができる。

【0041】

また、スラブ１０の施工時に、補強鋼板２２が型枠として機能するため、在来型枠の仮設及び撤去等が不要になる。したがって、スラブ１０の施工性が向上する。

【0042】

さらに、例えば、開口補強部材２０を製品化すれば、スラブ１０の施工時に、鉄筋工事者と設備業者の間の調整が不要になるため、スラブ１０の施工性がさらに向上する。

【0043】

また、本実施形態では、補強鋼板２２の端部２２Ｅに鉄筋３０を取り付けることにより、簡単な構成で、鉄筋３０を介して補強鋼板２２をスラブ１０に接合することができる。

【0044】

さらに、開口１４の隅部において、隣り合う補強鋼板２２の長手方向の端部２２Ｅ同士を溶接等によって接合することにより、開口１４の隅部のひび割れ等を抑制することができる。

【0045】

（変形例）
次に、上記実施形態の変形例について説明する。

【0046】

開口補強部材２０の補強鋼板２２には、スラブ１０との一体性を高める付着手段が設けられても良い。例えば、図５に示される変形例では、補強鋼板２２における開口１４の内側面１４Ｓの接触面２２Ｓに、付着手段としてのリブ２４が設けられている。

【0047】

リブ２４は、補強鋼板２２の長手方向に沿って配置されている。また、リブ２４の幅方向の一端部は、補強鋼板２２の接触面２２Ｓに突き当てられた状態で、溶接等によって接合されている。このリブ２４は、補強鋼板２２の接触面２２Ｓから突出し、スラブ１０に埋設されている。

【0048】

これにより、リブ２４を介して補強鋼板２２がスラブ１０に付着されるため、補強鋼板２２とスラブ１０との一体性が高められる。したがって、スラブ１０に対する開口補強部材２０の補強効果が高められるとともに、開口１４の内側面１４Ｓのひび割れ等が抑制される。

【0049】

なお、付着手段は、リブ２４に限らず、例えば、補強鋼板２２の接触面２２Ｓに取り付けられるひげ筋等の鉄筋やスタッド等でも良い。また、付着手段は、例えば、補強鋼板２２の接触面２２Ｓに施された粗面処理等でも良い。

【0050】

また、上記実施形態では、鉄筋３０が補強鋼板２２の接触面２２Ｓに溶接によって取り付けられている。しかし、鉄筋３０は、例えば、補強鋼板２２の接触面２２Ｓに溶接された機械式継手に取り付けられても良い。

【0051】

また、図６に示される変形例のように、鉄筋３０は、固定金具４０によって補強鋼板２２の接触面２２Ｓに着脱可能に取り付けられても良い。固定金具４０は、挟持部４０Ａと、一対のフランジ部４０Ｂとを有している。

【0052】

挟持部４０Ａは、断面Ｃ字形状に形成されている。また、挟持部４０Ａは、鉄筋３０の外周面を覆うように当該鉄筋３０に取り付けられている。この挟持部４０Ａの開口側端部には、フランジ部４０Ｂが設けられている。

【0053】

フランジ部４０Ｂは、挟持部４０Ａの開口側端部から外側へそれぞれ延出している。各フランジ部４０Ｂは、補強鋼板２２の接触面２２Ｓに重ねられた状態で、ボルト４２及びナット４４によって固定されている。

【0054】

このように固定金具４０によって鉄筋３０を補強鋼板２２に取り付けることにより、例えば、現場等において、鉄筋３０を補強鋼板２２に容易に取り付けることができるとともに、鉄筋３０を容易に交換することができる。

【0055】

なお、固定金具４０は、ボルト４２及びナット４４に限らず、溶接等によって補強鋼板２２に固定されても良い。

【0056】

また、上記実施形態では、定着部が鉄筋３０とされている。しかし、定着部は、鉄筋３０に限らない。例えば、図７に示される変形例では、定着部が定着鋼板５４によって形成されている。

【0057】

具体的には、開口補強部材５０は、長手方向の両側が切り欠かれた１枚の鋼板６０によって形成されている。開口補強部材５０は、鋼板６０の長手方向の中間部に形成された補強鋼板５２と、鋼板６０の長手方向の両側に形成された複数の定着鋼板５４とを有している。

【0058】

複数の定着鋼板５４は、補強鋼板５２の長手方向の端部５２Ｅに設けられている。各定着鋼板５４の幅は、補強鋼板５２の幅よりも狭くされている。また、複数の定着鋼板５４は、補強鋼板５２は幅方向に間隔を空けて配置されている。これらの定着鋼板５４は、補強鋼板５２から当該補強鋼板５２の長手方向の両側へそれぞれ延出している。

【0059】

このように１枚の鋼板６０によって開口補強部材５０を形成することにより、開口補強部材５０の製作性が向上する。なお、定着鋼板５４と補強鋼板５２とは、溶接等によって接合しても良い。

【0060】

また、上記実施形態では、スラブ１０の開口１４が複数の開口補強部材２０によって補強されている。しかし、スラブ１０の開口１４は、少なくとも１つの開口補強部材２０によって補強することができる。

【0061】

また、上記実施形態では、開口補強部材２０が、コンクリート面材としてのスラブ１０に適用されている。しかし、開口補強部材２０は、スラブ１０に限らず、コンクリート面材として、鉄筋コンクリート造の壁（コンクリート壁）に適用することも可能である。

【0062】

以上、本実施形態の一実施形態について説明したが、本実施形態はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。

【符号の説明】

【0063】

１０ スラブ（コンクリート面材）
１４ 開口
１４Ｓ 内側面
２０ 開口補強部材
２２ 補強鋼板
２２Ｓ 接触面
２４ リブ（付着手段）
３０ 鉄筋（定着部）
５０ 開口補強部材
５２ 補強鋼板
５４ 定着鋼板（定着部）

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】