IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライムアースEVエナジー株式会社の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社の特許一覧

特開2024-90155電池用ガスケット、電池、それらの製造方法
<>
  • 特開-電池用ガスケット、電池、それらの製造方法 図1
  • 特開-電池用ガスケット、電池、それらの製造方法 図2
  • 特開-電池用ガスケット、電池、それらの製造方法 図3
  • 特開-電池用ガスケット、電池、それらの製造方法 図4
  • 特開-電池用ガスケット、電池、それらの製造方法 図5
  • 特開-電池用ガスケット、電池、それらの製造方法 図6
  • 特開-電池用ガスケット、電池、それらの製造方法 図7
  • 特開-電池用ガスケット、電池、それらの製造方法 図8
  • 特開-電池用ガスケット、電池、それらの製造方法 図9
  • 特開-電池用ガスケット、電池、それらの製造方法 図10
  • 特開-電池用ガスケット、電池、それらの製造方法 図11
  • 特開-電池用ガスケット、電池、それらの製造方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090155
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】電池用ガスケット、電池、それらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/184 20210101AFI20240627BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20240627BHJP
   H01M 50/176 20210101ALI20240627BHJP
【FI】
H01M50/184 A
H01M50/193
H01M50/176
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205858
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】室屋 陽平
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011EE04
5H011FF02
5H011GG02
5H011HH02
5H011JJ02
(57)【要約】
【課題】欠肉が生じにくく狙い通りの形状を得やすい電池用ガスケット、そのガスケットを用いた電池を、それらの製造方法とともに提供すること。
【解決手段】本開示技術に係る電池用ガスケット10は、電池における端子部分の絶縁に用いられる樹脂製のガスケットであって、面内形状が矩形であり第1面およびその裏面である第2面を有する平板部16と、平板部16の縁辺における第1面側に突出した縁壁部17とを有し、平板部16の中央に貫通穴19が形成されており、平板部16における1組の対辺の縁壁部17の内面に沿った部分の両端に薄肉領域25が形成されているものである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池における端子部分の絶縁に用いられる樹脂製の電池用ガスケットであって、
面内形状が矩形であり第1面およびその裏面である第2面を有する平板部と、
前記平板部の縁辺における前記第1面側に突出した縁壁部とを有し、
前記平板部の中央に貫通穴が形成されており、
前記平板部における1組の対辺の前記縁壁部の内面に沿った部分の両端に薄肉領域が形成されている電池用ガスケット。
【請求項2】
外装体と、前記外装体の内部に収納された発電要素と、前記発電要素に接続され前記外装体の内部に配置された内部集電部材と、前記外装体を貫通して設けられ前記内部集電部材に接続された端子部材と、前記外装体と前記端子部材とを絶縁するガスケットとを有する電池であって、
前記ガスケットは請求項1に記載の電池用ガスケットであり、
前記外装体には、前記端子部材を貫通させる貫通孔が形成されており、
前記端子部材は、
前記ガスケットの前記第1面側における前記縁壁部に囲まれた範囲内に位置する外部端止部と、
前記外装体の内部にて前記内部集電部材に接合された接合部と、
前記ガスケットの前記貫通穴および前記外装体の前記貫通孔の中に位置し前記外部端止部と前記接合部とを繋ぐ柱状部とを有する電池。
【請求項3】
電池における端子部分の絶縁に用いられる樹脂製の電池用ガスケットを製造する電池用ガスケットの製造方法であって、
面内形状が方形状であり第1面およびその裏面である第2面を有し中央に貫通穴が形成されているブランク材を出発材とし、
前記ブランク材を加熱下で厚み方向に押圧するホットプレスを行うことにより、
面内形状が矩形であり第1面およびその裏面である第2面を有し中央が貫通穴である平板部と、
前記平板部の縁辺における前記第1面側に突出した縁壁部とを形成するとともに、
前記ホットプレスの際に、
前記平板部における1組の対辺の前記縁壁部の内面に沿った部分の両端となる辺端部位を、前記平板部となる領域のうち前記辺端部位以外の部分よりも強く押圧することにより、
前記平板部における1組の対辺の前記縁壁部の内面に沿った部分の両端に薄肉領域を形成する電池用ガスケットの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の電池用ガスケットの製造方法であって、
前記ホットプレスの際に強く押圧される前記辺端部位と、前記ブランク材がもともと占めている領域とが一部重なっている電池用ガスケットの製造方法。
【請求項5】
外装体と、前記外装体の内部に収納された発電要素と、前記発電要素に接続され前記外装体の内部に配置された内部集電部材と、前記外装体を貫通して設けられ前記内部集電部材に接続された端子部材と、前記外装体と前記端子部材とを絶縁するガスケットとを有する電池を製造する電池の製造方法であって、
前記外装体の一部であり貫通孔を有する蓋体に前記ガスケットを介して前記端子部材を取り付け、
前記端子部材と前記内部集電部材との接合および前記内部集電部材と前記発電要素との接続を行い、
前記発電要素を前記外装体の一部である箱体に収納するとともに前記箱体に前記蓋体を取り付けるとともに、
前記ガスケットとして、請求項3または請求項4に記載の電池用ガスケットの製造方法により製造された電池用ガスケットを用いる電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、電池用ガスケット、電池、それらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電池には、その端子部分の絶縁に樹脂製の電池用ガスケットを用いているものがある。特許文献1に記載されている角形二次電池はその例である。同電池における端子は、封口板を貫通して設けられており、その間に挟み込まれている絶縁部材が電池用ガスケットに相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-37253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の技術にはガスケットの成形上、狙い通りの形状が得られない場合があるという問題点があった。この種のガスケットは、樹脂材料のホットプレスにより成形される場合がある。しかしガスケットの縁辺部まで樹脂が回りきらないことがある。このため縁辺部に、欠肉による絶縁性能の不足が生じる場合があった。
【0005】
本開示技術は、前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは、欠肉が生じにくく狙い通りの形状を得やすい電池用ガスケット、そのガスケットを用いた電池を、それらの製造方法とともに提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様における電池用ガスケットは、電池における端子部分の絶縁に用いられる樹脂製の電池用ガスケットであって、形状が矩形であり第1面およびその裏面である第2面を有する平板部と、平板部の縁辺における第1面側に突出した縁壁部とを有し、平板部の中央に貫通穴が形成されており、平板部における1組の対辺の縁壁部の内面に沿った部分の両端に薄肉領域が形成されているものである。
【0007】
本開示技術の別の一態様における電池用ガスケットの製造方法では、電池における端子部分の絶縁に用いられる樹脂製の電池用ガスケットを製造するに当たり、面内形状が方形状であり第1面およびその裏面である第2面を有し中央に貫通穴が形成されているブランク材を出発材とし、ブランク材を加熱下で厚み方向に押圧するホットプレスを行うことにより、面内形状が矩形であり第1面およびその裏面である第2面を有し中央が貫通穴である平板部と、平板部の縁辺における第1面側に突出した縁壁部とを形成するとともに、ホットプレスの際に、平板部における1組の対辺の縁壁部の内面に沿った部分の両端となる辺端部位を、平板部となる領域のうち辺端部位以外の部分よりも強く押圧することにより、平板部における1組の対辺の縁壁部の内面に沿った部分の両端に薄肉領域を形成する。
【0008】
上記における電池用ガスケットおよびその製造方法では、ブランク材からホットプレスによる電池用ガスケットの成形に際して、平板部となる領域の一部を他の部分よりも強く押圧して、樹脂をより外側に押し出す。これにより縁壁部が、全周にわたり樹脂不足なく狙い通りの高さのものとして形成される。強く押圧された領域は、平板部における1組の対辺の縁壁部の内面に沿った部分の両端の薄肉領域となる。
【0009】
本開示技術の別の一態様における電池は、外装体と、外装体の内部に収納された発電要素と、発電要素に接続され外装体の内部に配置された内部集電部材と、外装体を貫通して設けられ内部集電部材に接続された端子部材と、外装体と端子部材とを絶縁するガスケットとを有するものであって、ガスケットは前述の態様の電池用ガスケットであり、外装体には、端子部材を貫通させる貫通孔が形成されており、端子部材は、ガスケットの第1面側における縁壁部に囲まれた範囲内に位置する外部端止部と、外装体の内部にて内部集電部材に接合された接合部と、ガスケットの貫通穴および外装体の貫通孔の中に位置し外部端止部と接合部とを繋ぐ柱状部とを有するものである。
【0010】
この電池では、ガスケットが外装体と端子部材との間の絶縁の役割を果たしている。特に、ガスケットの縁壁部が、外装体と端子部材との間に長い絶縁距離を持たせるために重要である。前述の態様の電池用ガスケットでは、特に縁壁部の高さが不足している箇所がないので絶縁性能に優れている。
【0011】
前述の態様の電池用ガスケットの製造方法では、ホットプレスの際に強く押圧される辺端部位と、ブランク材がもともと占めている領域とが一部重なっていることが望ましい。このようにすることで、外向きの樹脂の押し出しをより確実に行うことができる。
【0012】
本開示技術の別の一態様における電池の製造方法では、前述の態様の電池を製造するに当たり、外装体の一部であり貫通孔を有する蓋体にガスケットを介して端子部材を取り付け、端子部材と内部集電部材との接合および内部集電部材と発電要素との接続を行い、発電要素を外装体の一部である箱体に収納するとともに箱体に蓋体を取り付けるとともに、ガスケットとして、前述の態様の電池用ガスケットの製造方法により製造された電池用ガスケットを用いる。これにより前述の態様の電池が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本開示技術によれば、欠肉が生じにくく狙い通りの形状を得やすい電池用ガスケット、そのガスケットを用いた電池が、それらの製造方法とともに提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態に係る電池の全体を示す斜視図である。
図2図1の電池における外部端子の箇所の断面図である。
図3図1の電池に用いられている電池用ガスケットの単体としての斜視図である。
図4図3の電池用ガスケットの平面図である。
図5図4の電池用ガスケットの断面図(その1)である。
図6図4の電池用ガスケットの断面図(その2)である。
図7図4の電池用ガスケットの断面図(その3)である。
図8】実施の形態で用いるブランク材の形状を示す3面図である。
図9】ホットプレスによるブランク材からの電池用ガスケットの成形を示す断面図である。
図10】ホットプレス時の樹脂の移動を概念的に説明する平面図である。
図11】強押圧領域がある場合のホットプレスを概念的に説明する平面図である。
図12】縁壁部の高さ不足が起こった電池用ガスケットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本形態は、図1に示す電池1において本開示技術を具体化したものである。図1の電池1は、外装体2の内部に発電要素3が収納されているものである。外装体2は箱体4と蓋体5とで構成されている。蓋体5には、正負の外部端子6、7が設けられている。外部端子6、7にはそれぞれ、端子面8、9が露出している。端子面8、9は、発電要素3と繋がる端子部材の外部露出面である。端子面8、9の端子部材と蓋体5との間には絶縁樹脂10、11が配置されている。
【0016】
外部端子6の箇所の構造を図2に示す。図2は、電池1における蓋体5の長手方向と垂直な方向の縦断面図である。図2に示されるように外部端子6の箇所では、蓋体5に貫通孔12が設けられている。貫通孔12を貫通して端子部材13が配置されている。端子部材13の上面が端子面8である。端子部材13と蓋体5との間に絶縁樹脂10が配置されている。蓋体5の下側、つまり外装体2の内部には、内部集電部材14が配置されている。内部集電部材14と蓋体5との間には絶縁樹脂15が配置されている。
【0017】
内部集電部材14は、端子部材13にカシメ止められて、絶縁樹脂15とともに蓋体5の裏面側に固定されている。このカシメにより端子部材13と内部集電部材14とは接続されている。内部接続部材14は、図2の範囲外で発電要素3の一方の電極板に接続されている。
【0018】
端子部材13および内部集電部材14は、絶縁樹脂10および絶縁樹脂15により、蓋体5から絶縁されている。絶縁樹脂10および絶縁樹脂15はまた、端子部材13と蓋体5との間の隙間、および内部集電部材14と蓋体5との間の隙間を塞いで密閉する役割も果たしている。本開示技術の「電池用ガスケット」に相当するのは、絶縁樹脂10と絶縁樹脂15とのうち、蓋体5の外面側に配置されている方のものである絶縁樹脂10である。以下、絶縁樹脂10を電池用ガスケット10という。電池用ガスケット10について詳述する。
【0019】
単体としての電池用ガスケット10は図3および図4に示すように、全体として上方から見て略矩形状の樹脂部材である。ただし四隅は丸められた形状となっている。本開示技術において矩形とは、四隅が丸められた形状を含むものとする。電池用ガスケット10は、平板部16と、縁壁部17と、筒部18とを有している。平板部16は、電池用ガスケット10を上方から見たときに矩形状をなす面内形状の主要部分である。平板部16の中央には貫通穴19が形成されている。以下、平板部16の一方の面を第1面20といい、その裏面を第2面21という(図5参照)。第1面20は外部端子6の箇所にて外向きとなる面であり、第2面21は蓋体5の方を向く面である。
【0020】
縁壁部17は、平板部16の縁辺から第1面20側に突出した壁状の部分である。縁壁部17は平板部16の全周にわたって設けられている。筒部18は、貫通穴19の縁辺から第2面21側に突出した円筒壁状の部分である。図2中に現れている絶縁樹脂10は、図4中のA-A位置の断面図に相当する。図2中にも、絶縁樹脂10の平板部16、縁壁部17、筒部18が現れている。
【0021】
ここで、端子部材13について補足説明する。図2中に現れているように端子部材13は、外部端止部22と、柱状部23と、接合部24とを有している。外部端止部22は、蓋体5より外側に位置する部分である。端子面8は外部端止部22の上面である。図2中における外部端止部22は、電池用ガスケット10の第1面20上で、縁壁部17に囲まれている。柱状部23は、外部端止部22と接合部24とを繋ぐ柱状の部分である。図2中における柱状部23は、蓋体5の貫通孔12の中に位置している。この柱状部23の位置は、図4でいえば電池用ガスケット10の貫通穴19の中に相当する位置である。接合部24は、内部集電部材14に接合される部位である。接合部24は、蓋体5の下側、つまり外装体2の内部に位置している。
【0022】
電池用ガスケット10の話に戻る。縁壁部17は、外部端止部22の側面を囲んでいる。平板部16は、外部端止部22の裏面と蓋体5の外面との間に挟まれている。筒部18は、蓋体5の貫通孔12の壁面と柱状部23の側面との間に挟まれている。図2中の矢印Lは、端子部材13と蓋体5との間の絶縁距離である。電池用ガスケット10の絶縁性能上、絶縁距離Lがある程度長いことが求められる。絶縁距離Lの長さに対しては、縁壁部17の高さが重要である。
【0023】
電池用ガスケット10にはさらに、図3および図4に示されているように、薄肉領域25が形成されている。薄肉領域25は、平板部16の一部である。薄肉領域25は、平板部16のうち薄肉領域25でない部分と比べて薄肉とされている領域である。薄肉領域25は、平板部16における、1組の対辺の縁壁部17の内面に沿った部分の両端に薄肉領域25が形成されている。図3および図4の例では、薄肉領域25が設けられている位置は、両長辺の縁壁部17の内面に沿った部分の両端の計4箇所である。ただし、両短辺の縁壁部17の内面に沿った部分の両端の位置としてもよい。
【0024】
図5は電池用ガスケット10の、図4中におけるB-B位置の断面図である。図5中には、平板部16と縁壁部17とが現れ、貫通穴19および筒部18は現れていない。図5に現れている縁壁部17は、平板部16のコーナー付近のものである。図5では、縁壁部17の高さをH1で表している。電池用ガスケット10では、縁壁部17の高さH1は平板部16の全周にわたり一定である。
【0025】
図5中には、薄肉領域25も現れている。図5中の薄肉領域25は、平板部16における該当箇所を、第1面20の側から凹ませた形状の領域である。しかしこれに限らず、第2面21の側から凹ませた形状の領域としてもよいし(図6)、第1面20と第2面21との両面から凹ませた形状の領域としてもよい(図7)。以下の記述においては、特記しない限り図5の形状のものとする。
【0026】
電池用ガスケット10に薄肉領域25を設ける理由は、電池用ガスケット10の成形段階にある。薄肉領域25がなく平板部16の全域がフラットであるような電池用ガスケット10を製造しようとすると、縁壁部17の高さH1が不均一になる場合があるのである。本開示技術では、これを避ける目的で電池用ガスケット10に薄肉領域25を設けている。
【0027】
電池用ガスケット10の製造方法を説明する。本形態では電池用ガスケット10を、ブランク材からのホットプレスにより成形することで製造する。本形態で電池用ガスケット10の製造のための出発材とするブランク材26は、図8に示すように略矩形の平板状の樹脂地であって、中央に貫通穴19が開けられているものである。ブランク材26には、縁壁部17も筒部18もない。ブランク材26の貫通穴19はむろん、成形後に電池用ガスケット10の貫通穴19となる穴である。ブランク材26の縦横寸法比は、矩形状でもよいし、正方形状でもよい。ブランク材26の樹脂種として使用可能なものは例えば、PFA、PTFE等が挙げられる。
【0028】
ブランク材26は図9に示されるように、ブランク材26を上下両面から適当な型で加圧することで、電池用ガスケット10の形状に成形される。このときに縁壁部17および筒部18が形成される。この加圧は、加熱によりブランク材26を構成する樹脂が溶融もしくは軟化した状態で行われる。前述の電池用ガスケット10の形状は、ホットプレス時の型の形状がブランク材26に転写されたものである。
【0029】
電池用ガスケット10における薄肉領域25もこのホットプレスの際に形成される。薄肉領域25は、平板部16のうち薄肉領域25以外の領域と比較して、厚さ方向の加圧をより強く受けた領域である。ホットプレスに用いる型には、薄肉領域25を形成するための凸部が形成されている。
【0030】
ホットプレス時には、縁壁部17および筒部18の形成のための樹脂の移動がある。このうちの縁壁部17のための樹脂の移動について図10により説明する。図10およびその説明では、貫通穴19および筒部18に関する部分は省略している。図10の中央の矩形が、ブランク材26の元々の寸法に相当する領域(以下、図10および図11の説明においてこの矩形を「矩形26」という。)である。図10における外郭の矩形は、成形される電池用ガスケット10の平面内寸法(図4に相当)に相当する領域(以下、図10および図11の説明において「矩形10」という。)である。図10における矩形10の少し内側には、縁壁部17の内面となる位置を示す矩形(以下、図10および図11の説明において「矩形17」という。)を示している。矩形17より内側の部分が、平板部16となる領域である。
【0031】
ホットプレス前の時点では、樹脂が存在するのは矩形26の内部のみであり、その外側には樹脂が存在しない。矩形26の外側であって矩形10のうち側の領域には、ホットプレスにより、矩形26の内側から樹脂が供給される。図10中に楕円で示される領域は、ホットプレスにより矩形26の内側が広がろうとする第1広がり領域28である。図10では、第1広がり領域28の一部が、矩形10の1組の対辺の中央を越えて矩形10の外にはみ出している。
【0032】
むろん実際には、このはみ出し領域29へ樹脂が供給されることはない。成型の型により阻止されるからである。この阻止により余剰となった樹脂は、矩形10の縁辺に沿って横方向に広がっていく。この横方向の広がりにより樹脂が供給される領域が4箇所の第2広がり領域30である。電池用ガスケット10のうち、平板部16の外寄りの部分および縁壁部17は、これらのようにして広がった樹脂により形成される。
【0033】
しかしそれでも矩形10の内側の一部には、樹脂の供給が不足する不足領域31が残る。薄肉領域25を設けるのはその対策である。実際の電池用ガスケット10の製造においては、図11に示されるようなホットプレスを行う。図11は、図10に対して強押圧領域32を書き加えたものである。強押圧領域32は、電池用ガスケット10の樹脂を、他の領域よりもさらに強く押圧する領域である。そのため、ホットプレスに用いる上下の少なくとも一方の型には、強押圧領域32に相当する位置に凸部を設けておく。強押圧領域32は、平板部16となる領域のうち矩形17の1組の対辺に沿った部分の両端となる辺端部位である。ここでいう1組の対辺は、図10におけるはみ出し領域29の対辺とは別の対辺である。
【0034】
強押圧領域32では、平板部16となる領域のうち強押圧領域32以外の部分よりも強く、樹脂の押圧が行われる。このため、強押圧領域32から樹脂がさらに外向きに押し出される。この押し出しにより、不足領域31における樹脂の供給不足が補われる。こうして、狙い通りの形状の電池用ガスケット10が得られる。
【0035】
もし、強押圧領域32が存在しないような形でのホットプレスを行うと、不足領域31における樹脂の供給不足により、図12に示すように平板部16のコーナー付近で縁壁部17の高さH2が不足してしまう(H2 < H1)場合がある。このようなで縁壁部17の高さ不足が起こった電池用ガスケットを使用すると、図2中の絶縁距離Lが不足して絶縁性能の不良となることがある。本形態では強押圧領域32を用いて薄肉領域25を形成することにより、このような絶縁性能不良を防止している。
【0036】
薄肉領域25を形成するかわりにブランク材26としてより厚めのものを用いることで、樹脂の供給不足が起こらないようにすることも考えられる。しかしそれだと、もともと樹脂不足が起こらないような箇所では逆に樹脂が過剰になってしまう。このためそのような箇所では、縁壁部17の頂部で余剰な樹脂によりバリができてしまうことがある。例えば、図10におけるはみ出し領域29に臨む位置の縁壁部17でこのようなことが起こりうる。本形態ではブランク材26として過度に厚いものを用いる必要がないので、このような弊害はない。
【0037】
ここで図11では、矩形26と強押圧領域32とが一部重なっている。このことは、もともとのブランク材26自体の一部が強押圧の対象となることを意味している。このようになっていると、強押圧領域32から外側への樹脂の押し出しがより確実に行われる。このため、樹脂不足の防止がより確実である。強押圧領域32が矩形26より外側にのみ存在してそれらの重複領域がない場合には、強押圧領域32の存在によりかえって樹脂の流れ悪くなってしまう場合もある。本形態では矩形26の一部と強押圧領域32の一部とが重なっているのでそのようなことがない。
【0038】
上記のように製造した電池用ガスケット10を用いて、電池1を製造することができる。すなわち、貫通孔12が形成されている蓋体5に電池用ガスケット10を介して端子部材13を取り付け、端子部材13と内部集電部材14との接合および内部集電部材14と発電要素3との接続を行い、発電要素3を箱体4に収納するとともに箱体4に蓋体5を取り付ければよい。以上では外部端子6について述べたが外部端子7についても同様である。
【0039】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば、面内形状が矩形状である電池用ガスケット10において、1組の対辺の縁壁部17の内面に沿った部分の両端に薄肉領域25を設けることとした。そのためその製造過程では、薄肉領域25となる強押圧領域32の箇所をそれ以外の箇所より強く押圧することとしている。こうすることで、強押圧領域32から樹脂を外向きに押し出すようにしている。これにより、縁壁部17を形成するための樹脂が不足しないようにしている。かくして、縁壁部17の全周にわたって樹脂が十分に供給され、縁壁部17の高さ不足が起こらないような電池用ガスケット10、それを用いた電池1、それらの製造方法が実現されている。
【0040】
本実施の形態および実施例は単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、前記形態では、電池用ガスケット10に筒部18を設けている。しかし筒部18は、その一部または全部が絶縁樹脂15に設けられていてもよい部位である。したがって、電池用ガスケット10に筒部18が設けられていない形態も可能である。また、前記形態では、図10に示したように、ブランク材26のサイズを電池用ガスケット10の面内サイズより小さいものとした。このことは必須ではなく、電池用ガスケット10の面内サイズと同寸法のブランク材26を出発材としてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 電池 17 縁壁部
2 外装体 19 貫通穴
3 発電要素 20 第1面
4 箱体 21 第2面
5 蓋体 22 外部端止部
10 絶縁樹脂(電池用ガスケット) 23 柱状部
12 貫通孔 24 接合部
13 端子部材 25 薄肉領域
14 内部接続部材 26 ブランク材
16 平板部 32 強押圧領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12