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特開2024-90168ガス吸収量評価装置及びガス吸収量評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090168
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ガス吸収量評価装置及びガス吸収量評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/38 20060101AFI20240627BHJP
   G01N 7/04 20060101ALI20240627BHJP
   G01F 23/292 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G01N33/38
G01N7/04 A
G01F23/292 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205879
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】飯田 康介
【テーマコード(参考)】
2F014
【Fターム(参考)】
2F014FA01
(57)【要約】
【課題】コンクリートなどの試料のガス吸収量を評価する際に、試料を高温に加熱するような処理をせずに、試料を非破壊で、簡便な構成によって評価することのできる装置及び方法を提供すること。
【解決手段】ガス吸収量評価装置は、試料を収容するデシケータと、少なくとも一方向に伸縮するガスバッグと、ガスバッグを少なくとも一方向への伸縮を可能とするように保持するガスバッグ収納容器と、デシケータとガスバッグとを繋ぐ連結管と、デシケータ及びガスバッグの内部を減圧する真空ポンプと、連結管から分岐されデシケータ及びガスバッグに試験ガスを供給するためのガス供給口と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容するデシケータと、
少なくとも一方向に伸縮するガスバッグと、
前記ガスバッグを、前記少なくとも一方向への伸縮を可能とするように保持するガスバッグ収納容器と、
前記デシケータとガスバッグとを繋ぐ連結管と、
前記デシケータ及び前記ガスバッグの内部を減圧する真空ポンプと、
前記連結管から分岐され、前記デシケータ及び前記ガスバッグに試験ガスを供給するためのガス供給口と、を含む、
ことを特徴とするガス吸収量評価装置。
【請求項2】
前記ガスバッグ収納容器に液体が充填され、前記ガスバッグが前記液体の中に保持された状態で、前記液体の液面の変位を測定する計測手段を有する、請求項1に記載のガス吸収量評価装置。
【請求項3】
前記計測手段がレーザ変位計である、請求項2に記載のガス吸収量評価装置。
【請求項4】
前記液体の液面に流動パラフィンを有する、請求項3に記載のガス吸収量評価装置。
【請求項5】
前記デシケータの内部に収納された前記試料の重力を測定する重量計を有する、請求項1に記載のガス吸収量評価装置。
【請求項6】
前記試験ガスが、二酸化炭素ガスである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のガス吸収量評価装置。
【請求項7】
デシケータの中に試料を配置し、
前記デシケータと、前記デシケータとが連結された少なくとも一方向に伸縮するガスバッグと、の内部を真空排気し、
前記デシケータ及び前記少なくとも一方向に伸縮するガスバッグに試験ガスを充填し、前記充填された状態を維持し、
前記少なくとも一方向に伸縮するガスバッグの伸縮状態の変化より、前記試料の前記試験ガスの吸収量を評価する方法であり、
前記一方向に伸縮するガスバッグが、前記一方向に伸びる筒状のガスバッグ収納容器に収納されており、
前記一方向に伸縮するガスバッグの伸縮状態の変化を、前記ガスバッグ収納容器内の変形量によって評価する、ことを特徴とするガス吸収量評価方法。
【請求項8】
前記ガスバッグ収納容器内に液体を充填し、前記一方向に伸縮するガスバッグを前記液体の中に保持させて、前記液体の液面の変位から前記一方向に伸縮するガスバッグの伸縮状態の変化量を測定する、請求項7に記載のガス吸収量評価方法。
【請求項9】
前記液面の変位をレーザ変位計で測定する、請求項8に記載のガス吸収量評価方法。
【請求項10】
試験ガスとして、二酸化炭素ガスを用いる、請求項7乃至9のいずれか一項に記載のガス吸収量評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、コンクリートなどの水硬化性構造物のガス吸収量を評価する装置及び評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの炭酸化は、コンクリート構造物の耐久性に影響を与えるため重視されている。コンクリートが吸収した二酸化炭素量(炭酸化量)を測定する方法としては、例えば、示差熱重量分析装置を用いて特定の温度帯における重量の減少分を二酸化炭素量とするもの、また所定の温度でコンクリートを燃焼させ発生した二酸化炭素ガスを赤外線式ガス分析装置で測定し無機炭素量に換算する方式などがある。また、コンクリートの中性化深さを測定する方法として、表面の弾性波速度を測定する方法がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-075391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリートの炭酸化を評価するために示差熱重量分析装置や赤外線式ガス分析装置を用いる場合、ある温度帯で減少する質量や発生するガスに炭素以外に気化する物質が含まれていると正確に評価できない可能性がある。また、炭酸化の程度は部位によって異なる場合があるので、評価対象とする構造物に対して分析に用いることのできる試料が極めて小さい場合、炭酸化量を正確に評価するために相当の時間が必要となる。さらに、示差熱重量分析装置や赤外線式ガス分析装置による測定は、いずれも試料を破壊して分析に供するため、試料が試験後に残らず他の検証に用いることができないことも問題である。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みなされたものであり、コンクリートなどの試料のガス吸収量を評価する際に、試料を高温に加熱するような処理をせずに、試料を非破壊で、簡便な構成によって評価することのできる装置及び方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係るガス吸収量評価装置は、試料を収容するデシケータと、少なくとも一方向に伸縮するガスバッグと、ガスバッグを少なくとも一方向への伸縮を可能とするように保持するガスバッグ収納容器と、デシケータとガスバッグとを繋ぐ連結管と、デシケータ及びガスバッグの内部を減圧する真空ポンプと、連結管から分岐されデシケータ及びガスバッグに試験ガスを供給するためのガス供給口と、を含む。
【0007】
本発明の一実施形態において、ガスバッグ収納容器に液体が充填され、ガスバッグが液体の中に保持された状態で液体の液面の変位を測定する計測手段を有していてもよい。計測手段としてレーザ変位計が用いられてもよい。液体の液面には流動パラフィンが設けられれていてもよい。デシケータの内部には、収納された試料の重力を測定する重量計が設けられていてもよい。試験ガスが二酸化炭素ガスであってもよい。
【0008】
本発明の一実施形態に係るガス吸収量評価方法は、デシケータの中に試料を配置し、デシケータとデシケータとが連結された少なくとも一方向に伸縮するガスバッグとの内部を真空排気し、デシケータ及び少なくとも一方向に伸縮するガスバッグに試験ガスを充填し、充填された状態を維持し、少なくとも一方向に伸縮するガスバッグの伸縮状態の変化より試料の試験ガス吸収量を評価する方法であり、一方向に伸縮するガスバッグが一方向に伸びる筒状のガスバッグ収納容器に収納されており、一方向に伸縮するガスバッグの伸縮状態の変化をガスバッグ収納容器内の変形量によって評価する。
【0009】
本発明の一実施形態において、ガスバッグ収納容器内に液体を充填し、一方向に伸縮するガスバッグを液体の中に保持させて液体の液面の変位から一方向に伸縮するガスバッグの伸縮状態の変化量を測定してもよい。液面の変位をレーザ変位計で測定してもよい。試験ガスとして二酸化炭素ガスを用いてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本実施形態に係るガス吸収量評価装置及びそれを用いたガス吸収量評価方法によれば、示差熱重量分析装置や赤外線式ガス分析装置における場合のように試料を加熱する必要がないので、加熱に伴う質量変化や脱気による影響を無くすことができるので、正確な評価を行うことができる。また、デシケータ及びガスバッグの大きさを適宜変更することで、試料のサイズに制約を受けることなくガス吸収量の評価を行うことができる。また、試料を非破壊で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るガス吸収量評価装置の構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るガス吸収量評価装置のガスバッグ及び収納容器の構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るガス吸収量評価装置の動作を説明する図である。
図4】本発明の一実施形態に係るガス吸収量評価装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(又は数字の後にA、B、又はa、bなどを付した符号)を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1の」、「第2の」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る水硬性構造物のガス吸収量評価装置100を示す。ガス吸収量評価装置100は、測定対象とする試料を収容するデシケータ102、試料に吸収させるガスが充填されるガスバッグ104、ガスバッグ104を収納する収納容器106、デシケータ102とガスバッグ104を繋ぐ連結管108を含む。
【0014】
デシケータ102は試料を出し入れする扉又は蓋を有し、扉又は蓋を閉めることで外気を遮断することのできる密閉可能な容器である。デシケータ102は、真空ポンプにより内部を減圧状態にすることができるように、真空シールが施されている。また、デシケータ102は、ガスを充填することにより陽圧状態を維持することのできる耐圧性を有している。デシケータ102は、ステンレスなどの金属、ガラス、硬質プラスチックで形成され、内部の状態を視認できるように窓が設けられていてもよい。
【0015】
デシケータ102は、試料200を収容することができる内部空間を有する。デシケータ102の容積に限定はないが、試験ガスの体積変化が起こる余地を極力減らすために、試料200を収容できるのであれば極力小さい容積であることが好ましく、例えば、試料200の体積に対して最大で2倍程度の容積(内部空間)を有することが好ましい。デシケータ102の内部には、試料200を保持するための支持具114が設けられる。支持具114は、デシケータ102の底面から試料200を離し、浮かせた状態で保持するために設けられる。支持具114は、試料200を安定して保持しつつ、接触面積が小さくなるように接触部分が狭められた形状を有していることが好ましい。例えば、支持具114は、ピン、錐形部材、断面が三角形の棒材などで形成されていることが好ましい。支持具114がこのような形状を有することで、試料200の上面及び側面のみならず底面も十分に露出させることができ、デシケータ102に導入する試験ガスに十分に晒すことができる。
【0016】
図示されないが、支持具114の下に重量計が設けられていてもよい。また、重量計が支持具114を兼ねていてもよい。重量計を設けることで、試料200のガス吸収量を重量の変化として測定することができる。重量計は、例えば、電子天秤であってもよい。
【0017】
デシケータ102には図示されない真空ポンプが連結される。真空ポンプはデシケータ102の内部を真空排気するために用いられる。デシケータ102の内部は常に真空排気されるわけではないので、真空ポンプの間に開閉バルブ112Aが設けられる。また、デシケータ102には内部の圧力状態を確認するために圧力計116が設けられていることが好ましい。圧力計116は、減圧状態及び陽圧状態における圧力を測定できるものであれば、その種類に限定はない。圧力計116は、減圧状態を測定するためのものと、陽圧状態を測定するためのものと、2種類が用意されていてもよい。
【0018】
このような構成を有するデシケータ102は、試料200を試験ガスに晒し、当該ガスの吸収量を評価するために用いられる。デシケータ102が真空排気可能な構成を有することで、試料200に晒す試験ガスの純度を高めることができ、密閉性を有することで、試験ガスを常圧又は陽圧の状態に充填して、その状態を一定時間(又は一定期間)保持することができる。
【0019】
なお、試験ガスとは、試料200のガス吸収量を評価するために用いるガスであり、目的に応じて適宜選択されるガスである。試験ガスとして、例えば、二酸化炭素ガス、酸素ガス、硫化水素ガス、アンモニアガス、揮発性有機化合物などが選択される。
【0020】
ガスバッグ104は、伸縮性、柔軟性を有する素材で形成された袋状の部材である。ガスバッグ104は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)などの樹脂材料を用いて形成される。また、ガスバッグ104は、ラテックスのような伸縮性を有するゴム系の素材で形成されていてもよい。
【0021】
ガスバッグ104は、真空排気されたときに縮み、試験ガスが充填されたときに膨らむものであることが好ましい。ガスバッグ104は、試験ガスを充填したときに、少なくとも一方向に伸びる形状を有していることが好ましい。例えば、図1に示すように、試験ガスが充填されない状態(又は真空排気された状態)では、図中に点線で示すように縮んだ状態にあり、試験ガスが充填されたときに縦方向に(柱状に)広がる形状を有していることが好ましい。すなわち、ガスバッグ104は、細長い袋状の形状を有していることが好ましい。
【0022】
ガスバッグ104には、膨らんだときの形状を安定化させ、また伸びる方向を制御するために、形状保持リング118が付けられていてもよい。形状保持リング118は、ガスバッグ104が横方向に広がる範囲を規制するリング状の部材であり、ガスバッグ104の外側又は内側に取り付けられる。形状保持リング118は、ガスバッグ104を囲む大きさを有し、金属、プラスチックなどの硬質の部材で形成される。
【0023】
形状保持リング118により、ガスバッグ104が球状に膨らむことを抑えることができる。また、図1に示すように、形状保持リング118をガスバッグ104の長手方向に沿って所定の間隔で設けることにより、ガスバッグ104が一方向に広がるように制御することができる。
【0024】
ガスバッグ104は、収納容器106の中に保持される。収納容器106は、ガスバッグ104が内部で伸縮可能なように中空な構造を有する。例えば、収納容器106は、ガスバッグ104が縦方向(上下方向)に伸縮可能なように、円筒状の容器であってもよい。収納容器106は、ガスバッグ104を内部に収納しつつ液体120を収容できる構造を有していることが好ましい。
【0025】
図1に示すように、収納容器106に液体120を入れ、液体120の中に沈むようにガスバッグ104を設けることで、ガスバッグ104の体積変化を液面の高さとして測定することができる。収納容器106は、外部からガスバッグ104の状態、液体120の液面の高さを視認できるように、ガラス、又はアクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどの透明樹脂材料で形成されていてもよい。また、収納容器106は、本体が金属で形成され、内部の液面の高さを目視できるように、縦長の窓が設けられていてもよい。さらに、収納容器106には(又は、当該縦長の窓には)、液体120の液面の高さを測定できるように目盛126が付けられていてもよい。収納容器106に目盛126が設けられることで、液体120の液面の高さを目視で測定することができる。
【0026】
液体120は、収納容器106に充溢されるのではなく、液面の高さが判るように上部に空気層124が設けられていることが好ましい。収納容器106の上部には、液面の上下による空気層124の体積変化が可能なように、通気口128が設けられていることが好ましい。通気口128には開閉バルブ112Dが設けられ、適宜開閉されることにより、空気層124を適切な状態に保ちつつ、液体120の蒸発を防ぐことができる。
【0027】
収納容器106に入れる液体120の種類に限定はないが、取り扱いが容易で、揮発性が低いものが好ましい。液体120として、例えば、水、シリコーンオイルなどを用いることができる。液体120の蒸発を抑え、液面の高さの視認性を向上させるために、液体120の上面に油膜122が設けられていてもよい。油膜122は、例えば、流動パラフィンであってもよい。油膜122は視認性を向上させるために、インクなどを含ませて着色されていてもよい。
【0028】
収納容器106の上部には、液体120の液面の高さを計測する計測手段が設けられていてもよい。計測手段として変位計130が設けられていてもよい。変位計130は、液体120に直接接触する接触式の変位計であってもよいし、非接触式の変位計であってもよい。非接触式の変位計130として、光学式、超音波式のものを適用することができる。例えば、変位計130として、レーザ変位計を用いることができる。変位計130を用いることで、液体120の液面の高さの変化を正確に測定することができ、また自動測定を行うことができる。
【0029】
このように、伸縮可能なガスバッグ104を収納容器106の中に入れ、液体120の中に沈めるようにして保持することで、ガスバッグ104に充填された試験ガスの体積変化を液体120の液面の高さによって測定することができる。
【0030】
連結管108は、デシケータ102とガスバッグ104とを繋ぐために設けられる。デシケータ102とガスバッグ104とが連結管108で連結されることにより、大気から分離された閉空間が形成される。デシケータ102とガスバッグ104が連結管108で連結されることにより、真空ポンプによってデシケータ102の内部のみならず、ガスバッグ104の内部も真空排気することができる。連結管108には開閉バルブ112Bが設けられており、デシケータ102とガスバッグ104とを連結した状態と連結しない状態の制御が可能とされている。
【0031】
連結管108は、デシケータ102とガスバッグ104との間にガス供給管110が設けられている。ガス供給管110は連結管108に接続されている。ガス供給管110は試験ガスを供給する配管である。ガス供給管110が連結管108に接続されることで、デシケータ102及びガスバッグ104の両方に同時に試験ガスの供給が可能となっている。ガス供給管110と連結管108との間には開閉バルブ112Bが設けられており、開閉バルブ112Bの開閉によって試験ガスの供給が制御可能とされている。
【0032】
ガス供給管110は、図示されないガス供給部に接続されている。ガス供給部は、試験ガスを充填したガスボンベ(シリンダー)、レギュレータなどで構成されるものであり、その構成に特段の限定はない。
【0033】
図1に示すガス吸収量評価装置100は、上記のような構成を有することで、デシケータ102の中に試料200を保持した状態で、デシケータ102及びガスバッグ104に充填した試験ガスに晒すことができ、長時間に亘って試料200のガス吸収量を評価することができる。試料200のガス吸収量は、ガスバッグ104の体積変化から求めることができる。また、ガスバッグ104の体積変化は、収納容器106に入れた液体120の液面の高さの変化から求めることができる。
【0034】
試料200として、ガスを吸収する性質を有する構造物を選択することができる。例えば、コンクリート、モルタル、などの水硬化性構造物、石灰、炭化物、活性炭などを試料200とすることができる。試料200の大きさは任意であり、縦横高さが、数十ミリメールの寸法を有するものであってもよいし、数百ミリメートルの寸法を有するものであってもよいし、2から3メートルサイズを有するものであってもよい。また、所定の大きさの構造物を非破壊で試料200として用いることもできる。試料200の大きさに限定はなくデシケータ102に入れることのできるサイズであればよい。また、試料200の大きさに合わせてデシケータ102のサイズを変更してもよい。
【0035】
なお、ガスバッグ104は、図1に示すものに限定されない。例えば、ガスバッグ104は、図2に示すように、蛇腹状の袋体であってもよい。図2に示すガスバッグ104は、ポリエチレンなどの柔らかい素材で形成された袋体であり、真空排気、試験ガスの導入によって蛇腹が広がったり縮んだりする構造を有する。ガスバッグ104は、試験ガスが充填されると柱状に膨らむ形状を有し、収納容器106の中で一方向に伸縮する形状を有していることが好ましい。
【0036】
図3(A)及び(B)、並びに図4は、ガス吸収量評価装置100の動作によって、試料200のガス吸収量評価方法を示す図である。以下に、試料200のガス吸収量の評価方法を説明する。
【0037】
図3(A)は、試料200をデシケータ102の中にセットして、デシケータ102及びガスバッグ104の中を真空排気する段階を示す。まず、デシケータ102の中に試料200を配置し、真空排気を行う。真空排気を行うとき、開閉バルブ112A及び開閉バルブ112Bを開の状態とし、開閉バルブ112Cを閉の状態とする。このようなバルブの操作により、デシケータ102及びガスバッグ104の内部から空気を抜き取り減圧状態とすることができる。ガスバッグ104は大気圧に押されて収縮し、潰れた状態となる。
【0038】
この処置により、デシケータ102及びガスバッグ104の内部の空気を除去することができ、次の段階で導入する試験ガスの純度を変化させずにデシケータ内の気体を試験ガスに置換することができる。また、試料200も真空中に保持されるので、長時間減圧状態とすれば水分を放出させ、乾燥状態にすることができる。減圧状態を短時間とすれば試料にほとんど影響を与えず、気体のみ置換することもできる。
【0039】
図3(B)は、試験ガスを供給する段階を示す。開閉バルブ112Aを閉とし、開閉バルブ112B及び開閉バルブ112Cを開とすることで、ガス供給管110から試験ガスがデシケータ102及びガスバッグ104に供給される。この試験では、試料200に吸収される試験ガスの量を、ガスバッグ104の体積変化から評価するので、デシケータ102及びガスバッグ104に充填する試験ガスの圧力に特段の限定はない。デシケータ102及びガスバッグ104の内部の圧力は、試験ガスにより常圧(大気圧)とされてもよいし、陽圧(大気圧より高い圧力)とされてもよい。
【0040】
試験ガスが導入されると、ガスバッグ104は徐々に膨らみ、収納容器106の中で上方に伸びて行く。それに伴って収納容器106に入れられた液体120の液面が高くなる。試験ガスを所定の圧力で充填され、液体120の液面の高さが安定したら、変位計130で液面の高さを測定し、初期値として記録しておく。
【0041】
図3(A)に示す真空排気と、図3(B)に示す試験ガスの充填は、短い時間の間に何回か繰り返されてもよい。それにより、デシケータ102及びガスバッグ104の内部に残留する空気を十分に除去することができ、試験ガスに置換することができる。
【0042】
図4は、試料200に試験ガスを吸収させる段階を示す。この段階では、開閉バルブ112A、開閉バルブ112B、及び開閉バルブ112Dを閉の状態としておく。この状態で一定時間(又は一定期間)放置しておく。例えば、この状態で1時間から24時間(又は1日から1週間)放置しておく。試料200が試験ガスを吸収することで、その分だけガスバッグ104が縮み、収納容器106に入れられた液体120の液面の高さが低下する。この液面の変化量は変位計130で測定してもよいし、収納容器106に付けられれた目盛126を目視で読み取ってもよい。変位計130を用いる場合には、所定の間隔で定期的に変化量を測定できるようにコンピュータなどで自動制御してもよい。
【0043】
収納容器106の内容積は既知の値として知ることができるので、液面の低下量からガスバッグ104の体積変化を求めることができ、それにより試料200が吸収した試験ガスの量を求めることができる。
【0044】
以上のように、本実施形態に係るガス吸収量評価装置100及びそれを用いたガス吸収量評価方法によれば、示差熱重量分析装置や赤外線式ガス分析装置における場合のように試料200を加熱する必要がないので、加熱に伴う質量変化や脱気による影響を無くすことができるので、正確な評価を行うことができる。また、デシケータ102及びガスバッグ104の大きさを適宜変更することで、試料200のサイズに制約を受けることなくガス吸収量の評価を行うことができる。また、試料200を非破壊で測定することができる。
【0045】
本実施形態に示すガス吸収量評価装置100は、例えば、コンクリートの炭酸化の評価に用いることができる。すなわち、試料200としてコンクリート片、又はコンクリート構造物をそのまま用い、試験ガスとして二酸化炭素ガスを用いることで、コンクリートの炭酸化を評価することができる。
【0046】
コンクリートの炭酸化を、二酸化炭素濃度の変化から炭酸化量に換算する評価方法では、現実にコンクリートの炭酸化が促進されるのは二酸化炭素濃度が一定であることが想定されるため、濃度変化を前提とした評価方法は、それ自体が最適な評価方法ではないといえる。
【0047】
これに対して、本実施形態に係るガス吸収量評価装置及びそれを用いた評価方法では、試験ガスとして二酸化炭素を用いてその体積変化から炭酸化量を評価するので、二酸化炭素の濃度変化が生じない環境で、正確な評価を行うことができるという利点を有する。
【0048】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【0049】
例えば、ガスバッグ104は縦方向に伸縮するものに限定されず、横方向に伸縮するものであってもよい。また、試料200に吸収される試験ガスの量は、ガスバッグ104の重量変化から求める方式のものであってもよい。また、試験ガスの吸収量は、本実施形態の中で述べたように、試料200の質量変化から求める方式であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
100:ガス吸収量評価装置、102:デシケータ、104:ガスバッグ、106:収納容器、108:連結管、110:ガス供給管、112:開閉バルブ、114:支持具、116:圧力計、118:形状保持リング、120:液体、122:油膜、124:空気層、126:目盛、128:通気口、130:変位計、200:試料
図1
図2
図3
図4