IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マックス−プランク−ゲゼルシャフト ツール フォーデルング デル ヴィッセンシャフテン エー.ヴェー.の特許一覧

特開2024-9017無接触有向流体力学流の同時的撮像兼遂行装置、方法、及び、コンピュータ可読格納媒体
<>
  • 特開-無接触有向流体力学流の同時的撮像兼遂行装置、方法、及び、コンピュータ可読格納媒体 図1
  • 特開-無接触有向流体力学流の同時的撮像兼遂行装置、方法、及び、コンピュータ可読格納媒体 図2
  • 特開-無接触有向流体力学流の同時的撮像兼遂行装置、方法、及び、コンピュータ可読格納媒体 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009017
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】無接触有向流体力学流の同時的撮像兼遂行装置、方法、及び、コンピュータ可読格納媒体
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/06 20060101AFI20240112BHJP
   G02B 21/28 20060101ALI20240112BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20240112BHJP
   G02B 21/32 20060101ALI20240112BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G02B21/06
G02B21/28
G02B21/36
G02B21/32
G01N21/64 E
【審査請求】有
【請求項の数】32
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023189104
(22)【出願日】2023-11-06
(62)【分割の表示】P 2020528436の分割
【原出願日】2018-11-23
(31)【優先権主張番号】17203545.3
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】301033396
【氏名又は名称】マックス-プランク-ゲゼルシャフト ツール フォーデルング デル ヴィッセンシャフテン エー.ヴェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クライツィグ モーリッツ
(72)【発明者】
【氏名】フリッチュ アナトール
(72)【発明者】
【氏名】ミッタシュ マシュー
(57)【要約】
【課題】光誘起を通じた制御下操作及び同時的試料撮像を行える装置、方法、コンピュータプログラム製品及びコンピュータ可読格納媒体の提供というタスクに立ち向かうこと。
【解決手段】本発明は、試料内の無接触有向流体力学流の同時的撮像兼遂行装置であって、試料の内部及び/又は表面を動的に加熱するよう工夫された少なくとも1個の光源とりわけレーザと、試料のうち少なくとも一部分を撮像するよう、且つ光源の光ビーム例えばレーザビームを試料内及び/又は上へと案内しとりわけ集束させることでその試料のうち少なくとも1個の指定個所を加熱するよう、工夫された対物系付の顕微鏡と、その指定個所を操作する手段と、撮像輻射及び光ビームによるアクセスが可能で対物系を介した標本の同時的撮像兼操作を行える試料用標本チャンバと、を有する装置に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(24)内の無接触有向流体力学流の同時的撮像兼遂行装置(30)であって、
上記試料(24)の内部及び/又は表面を動的に加熱するよう工夫された少なくとも1個の光源(1)例えばレーザ光源と、
上記試料(24)のうち少なくとも一部分を撮像するよう、且つ上記光源(1)の光ビーム(26)例えばレーザビームをその試料(24)内及び/又は上へと案内すること例えば集束させることで上記試料(24)のうち少なくとも1個の指定個所を加熱するよう、工夫された対物系(16)付の顕微鏡(25)と、
上記指定個所を操作する手段(8)と、
撮像輻射(27)及び上記光ビーム(26)によるアクセスが可能でありそれにより上記対物系(16)を介した標本の同時的撮像兼操作を行える上記試料(24)用の標本チャンバ(17)と、
を有する装置。
【請求項2】
請求項1に係る装置(30)であって、
上記光ビーム(26)の焦点体積の操作手段例えば可変光ビームエクスパンダ(7)が、光ビーム路の平行光区間(28)にて上記光源(1)・上記顕微鏡(26)間に設けられたことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1及び2のうち一方に係る装置(30)であって、
上記指定個所操作手段(8)がスキャナ、例えば音響光デフレクタ、或いはガルバノメトリックスキャナ、例えば準静的ガルバノメトリックスキャナであることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1~3のうち一項に係る装置(30)であって、
シャッタ手段(11)が、上記顕微鏡(25)の光路内への上記光ビーム(28)の結合を遮断しうるよう設けられ工夫されたことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1~4のうち一項に係る装置(30)であって、
上記顕微鏡(25)が、共焦点顕微鏡、蛍光レーザ走査顕微鏡、広視野光顕微鏡及び/又は2光子蛍光顕微鏡のうち、少なくとも一つであることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1~5のうち一項に係る装置(30)であって、
上記対物系(16)が、少なくとも0.5、好ましくは0.95、より好ましくは1.2、最も好ましくは1.4なる高い数値開口を有することを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1~6のうち一項に係る装置(30)であって、
空気又は浸漬対物系が設けられており、後者の場合はその対物系と上記標本との間に好ましくはシリコンオイル又は重水が準備されることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1~7のうち一項に係る装置(30)であって、
上記標本チャンバ(17)が、第1標本チャンバ閉じ込め面を伴う試料ホルダ、好ましくはカバースリップと、その試料ホルダ上にあり規定標本厚をもたらす少なくとも1個のスペーサと、第2チャンバ閉じ込め面を伴う冷却装置(18)と、を備え、そのスペーサがそれら第1及び第2閉じ込め面間に設けられたことを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項8に係る装置(30)であって、
上記試料ホルダ及び/又は上記第2チャンバ閉じ込め面が少なくとも30μmの厚みを有することを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項8に係る装置(30)であって、
上記冷却装置の第2チャンバ閉じ込め面に伝熱性透明素材、好ましくはサファイア又はダイアモンドが備わることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項8に係る装置(30)であって、
上記冷却装置(18)が、更に、上記伝熱性素材を冷却するよう工夫された少なくとも1個の冷却素子(31)、好ましくはペルチエ素子を備えることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項8又は11に係る装置(30)であって、
上記冷却装置(18)が、上記冷却素子(31)から除熱するよう工夫された熱管理システム(32)を備えることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項1~12のうち一項に係る装置(30)であって、
上記顕微鏡(25)の対物系(16)を介した上記被操作試料(24)の直接又は間接検査をサポートする明又は暗視野照明(19)が設けられたことを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項1~13のうち一項に係る装置(30)であって、
データ処理装置(20)が設けられ上記冷却装置(18)、上記顕微鏡(25)、上記シャッタ(11)及び上記光源(1)に接続されており、それによって、その冷却装置(18)の冷却強度及び上記光ビーム(26,28)の強度を、相互依存的に及び/又は上記被照射試料(24)の撮像情報に応じ設定できることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項14に係る装置(30)であって、
上記データ処理装置(20)が、更に、上記光ビーム(26)の上記指定個所操作手段に接続されており、それにより上記試料(24)内を通る光ビーム(26)の制御下運動がもたらされることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項1~15のうち一項に係る装置(30)であって、
上記指定個所操作手段が少なくとも1個の空間光変調器を有することを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項1~16のうち一項に係る装置であって、
上記光源が赤外光源例えば赤外レーザであり、その波長が700nm~1mmの域内、好ましくは1000nm~0.1mmの域内、より好ましくは1300nm~0.05mmの域内であることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項1~17のうち一項に係る装置であって、
上記光ビーム(12)を上記顕微鏡の光路内に結合させる手段が存することを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項1~18のうち一項に係る装置であって、
上記光ビーム(12)の上記結合手段が上記指定個所操作手段(8)の下流に配置されたことを特徴とする装置。
【請求項20】
試料(24)内の無接触有向流体力学流の同時的撮像兼遂行方法であって、
少なくとも1個の光源(1)例えばレーザにより、光ビーム(26)例えばレーザビームの働きで上記試料(24)の内部及び/又は表面を動的に加熱し、
上記少なくとも1個の光源(1)のビーム(26)を、顕微鏡(25)の対物系(16)を介し上記試料(24)に差し向け、
上記光ビーム(26)を上記試料(24)の指定個所へと可変的に案内すること例えば集束させることでその試料(24)内に流体力学流を引き起こし、且つ
上記光ビーム(26)の導入に用いられたのと同じ対物系(16)を介し上記試料(24)を撮像する方法。
【請求項21】
請求項20に係る方法であって、
上記対物系(16)を、上記試料の撮像と、上記光ビーム(26)によるその試料の加熱とに、同時に用いることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項20及び21のうち一方に係る方法であって、
上記光ビーム(26)の焦点体積を、音響光デフレクタ又はガルバノメータスキャナ、例えば準静的ガルバノメータスキャナ又は共鳴ガルバノメータスキャナ、或いは空間光変調器によって、上記試料(24)にてある経路沿いに動かすことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項20~22のうち一項に係る方法であって、
上記光ビーム(26)の上記経路上にあるシャッタ手段(11)を閉ざすことで上記試料(24)の加熱を中断させ、ある明確規定温度にて流体力学流を好ましくは蛍光撮像により観測することを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項20~23のうち一項に係る方法であって、
上記指定個所を、上記光ビーム(26)によりある経路又は軌跡に沿い反復的に動かすことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項20~24のうち一項に係る方法であって、
上記少なくとも1個の光源(1)で、上記試料(24)、伝熱粒子例えば金粒子、染料、及び/又は、その試料(24)内又は上の吸熱層例えば炭素層のうち、少なくとも一つを加熱することを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項20~25のうち一項に係る方法であって、
固体プローブ粒子をプローブとして用いず上記試料を加熱することを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項20~26のうち一項に係る方法であって、
流れ付勢刺激例えば単独、反復若しくは周期又は掃引刺激に対する上記試料の応答を記録し、例えば標本の物質特性及び/又は現象学的応答係数でありその標本の分類を助けうるものを推論しうるようにすることを、特徴とする方法。
【請求項28】
請求項20~27のうち一項に係る方法であって、
基準マーカの追跡により粒子追跡を実行し、例えばその後にその基準マーカの軌跡をフーリエ解析することを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に係る方法であって、
基準マーカとして、蛍光蛋白質複合体例えばμNSトレーサ粒子か、その他の細胞小器官例えば小顆粒か、を用いることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項20~29のうち一項に係る方法であって、
上記試料(24)を一連の流れ場に供し、それにより例えばその試料内の1個又は複数個の粒子を特定の行先に行かせることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項20~30のうち一項に係る方法であって、
一通り又は複数通りの粒子位置の相対変化を、流れ場の各回適用後に求めることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項20~31のうち一項に係る方法であって、
一通り又は複数通りの粒子位置の相対変化を、後に適用される他の好適な流れ場の決定に用いることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項20~32のうち一項に係る方法であって、
流れ場を適用することで、少なくとも、上記試料内の粒子の密度、間隔及び/又は密集度を変化させることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項20~33のうち一項に係る方法であって、
流れ場を適用することで、部分的又は全面的に位置特定された粒子に関し、空間的行先を連続的に又は離散的な時間ステップにて変化させることを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項20~34のうち一項に係る方法であって、
流れ場を計算し適用することで、少なくとも1個の粒子を所望経路に沿い動かすことを特徴とする方法。
【請求項36】
命令群が備わるコンピュータプログラム製品であって、
そのプログラムがコンピュータによって実行されたときに、そのコンピュータが、
加熱対象試料(24)の指定個所を操作する手段(8)を、その指定個所の所定軌跡に従い制御するステップと、
冷却装置(18)上での温度読出し値を受け取るステップと、
顕微鏡(25)から撮像データを受け取るステップと、
光源からパワー出力データを受け取るステップと、
上記冷却装置(18)の冷却強度及び光ビーム(26,28)の強度を、相互依存的に及び/又は被照射試料(24)の撮像情報に応じ制御するステップと、
を有する方法を実行することとなるコンピュータプログラム製品。
【請求項37】
命令群が備わるコンピュータ可読格納媒体であって、コンピュータによって実行されたときに、そのコンピュータが、
加熱対象試料(24)の指定個所を操作する手段(8)を、その指定個所の所定軌跡に従い制御するステップと、
冷却装置(18)上での温度読出し値を受け取るステップと、
顕微鏡(25)から撮像データを受け取るステップと、
光源からパワー出力データを受け取るステップと、
上記冷却装置(18)の冷却強度及び光ビーム(26,28)の強度を、相互依存的に及び/又は被照射試料(24)の撮像情報に応じ制御するステップと、
を有する方法を実行することとなるコンピュータ可読格納媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に係る試料内無接触有向流体力学流の同時的撮像兼遂行装置、請求項20に係る試料内無接触有向流体力学流の同時的撮像兼遂行方法、請求項36に係るコンピュータプログラム製品、並びに請求項37に係るコンピュータ可読格納媒体を指向している。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1によりマイクロスケールでの流体流の画定制御が公表されており、これが、化学及び生化学に属する幾つかの用途で基礎になり且つバイオセンシングアプリケーションの小型化にて重要な役割を担っている。小型化により、実験時間を縮め、検出の信号対雑音比を高め、且つ化学物質の総消費量を減らすことができる。過去には、微細作成チャネル内バルブを遠隔切替することでチャネル内流体流を制御するやり方が、幾つか探求されていた。覆い付液体ドロップレットを動かし、或いは捕捉粒子付近にてホログラフィック誘起渦流により液体流を付勢する、光学的方法が研究されていた。熱毛管駆動又は表面弾性波によりドロップレット運動を誘起させるため、リソグラフィ的表面パターニングが用いられていた。それは、液体向け二次元経路制御を伴うが表面パターニングや特殊基板使用を伴わない遠隔光学駆動として、提案されていた。
【0003】
従来技術水準のマイクロ流体力学では、圧力を用い、マイクロスケールチャネルに沿った流れを付勢していた。しかしながら、圧力制御ではヒステリシス効果が煩わしく、且つ外部ポンプ及びコントローラへのマクロスケール接続が必要となる。
【0004】
特許文献1により、粒子の高速熱光特性解明方法及び装置が公表されている。これは、とりわけ、生体分子の安定性を計測する方法及び装置、分子と個別粒子ビームの長さ/サイズの決定との間の相互作用、或いは長さ/サイズの決定に関係している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第WO2008/061706号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Journal of Applied Physics 104, 104701 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、光誘起を通じた制御下操作及び同時的試料撮像を行える装置、方法、コンピュータプログラム製品及びコンピュータ可読格納媒体の提供というタスクに立ち向かうものである。
【0008】
本発明によれば、このタスクが、請求項1に係る装置、請求項20に係る方法、請求項36に係るコンピュータプログラム製品、並びに請求項37に係るコンピュータ可読格納媒体により解決される。
【0009】
好適な諸実施形態については、従属形式請求項、明細書及び図面で以て提供される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る装置は、試料の内部及び/又は表面を動的に加熱するよう工夫された少なくとも1個の光源、とりわけレーザ光源と、その試料のうち少なくとも一部分を撮像するよう、且つその光源の光ビームとりわけレーザビームをその試料内及び/又は上へと案内しとりわけ集束させることでその試料のうち少なくとも1個の指定個所を加熱するよう、工夫された対物系付の顕微鏡と、その指定個所を操作する手段と、撮像輻射及び光ビームによるアクセスが可能であり対物系を介した標本の同時的撮像兼操作を行える試料用標本チャンバと、を有する態で提供される。
【0011】
物体を光で遠隔制御する能力には利点がある。物理学及び生物学の多分野で、その万能性及び精度故に物体の光制御が用いられ、実験方法に多大な衝撃を及ぼしている。例えば光トラップにより、広範な幾何形状の真空中で単一原子を冷却、分離することができる。更には光ピンセット(ツイーザ)が、生理学的条件下でマイクロスケールの物体を掴み動かすため採用されている。
【0012】
光源は赤外光源とりわけ赤外レーザとし、その波長を700nm~1mm域内、好ましくは1000nm~0.1mm域内、より好ましくは1300nm~0.05mm域内とするのが望ましい。光源を然るべく設計することで、それにより放射される輻射の波長域を、水の赤外吸収が最も明確になる波長域とすることができる。とりわけ有益なのは1455nmの電磁輻射を適用して試料の流体を加熱することであり、何故かといえば水がその波長で局所的な最大吸収を呈するからである。
【0013】
本発明の装置のある好適実施形態は、光ビームを顕微鏡の光路内へと結合させる手段が存することを特徴とする。この結合手段は、例えばダイクロイックビームスプリッタ(分割器)により実現できる。
【0014】
原理的には、上記指定個所操作手段を、試料に至るビーム路の何処にでも配置することができる。ある好適実施形態では、その指定個所操作手段の下流に上記光ビーム結合手段が配置される。下流(downstream)なる語については、この文脈では、光ビームの伝搬方向との関連で理解されたい。即ち、本実施形態では、光ビームがまず操作手段を通り、その後に顕微鏡光路内に結合される。
【0015】
それにより達成される長所は、試料の操作即ち試料内無接触有向流体力学流の生成を標本の撮像とは独立に実行できる、というものである。例えば試料のうちある領域を顕微鏡で以て撮像する状況にて、その領域を所定パターンの光ビームに供することで流体力学流を生成しうるところ、それらパターンを顕微鏡による撮像とは全く独立に選ぶことができる。
【0016】
本発明の感覚でいう撮像(imaging)は、試料のリアルタイム分析例えば蛍光分析のための少なくとも一種類の技術として、理解することができる。この撮像技術は、試料の操作が実行されている間に実施することができる。
【0017】
本発明の感覚でいう無接触(contact-free)は、とりわけ、試料と固体、液体又は気体プローブとの機械的相互作用が全くないことであろう。この文脈における光は、その電磁波特性の許に考慮される。即ち、光・試料間相互作用並びに光誘起流体力学流が、無接触相互作用であるとみなされる。
【0018】
本明細書の感覚でいう無接触相互作用(contact-free interaction)には、固体プローブ粒子をプローブとして用いず試料を加熱するという意味もある。例えば、試料加熱用プローブとして働く固体粒子からその試料を解放することができる。より具体的には、本発明方法のある好適変種によれば、粒子、とりわけ金粒子を用いず試料を加熱することができる。この文脈におけるプローブ粒子(probe particle)の語は、ナノパーティクル以上のサイズを有する実在物を意味している。
【0019】
本発明による有向流体力学流(directed hydrodynamic flow)のことは、とりわけ、光源・試料間の制御下相互作用の結果、その試料内の液体部分に生じる偏倚のこととして、理解されたい。その許でも、その流体内でのプローブ、染料又は粒子の動きを以て、その流体力学流の運動速度を検出することができる。このとき、観測されるプローブ、染料又は粒子の流動速度は、その流体自体の実際の流れよりゆっくりしたものになりうる。
【0020】
試料(specimen)は、少なくとも1個の流体区間を含んでいて有向流体力学流が生じうるものであれば、どのような標本(sample)でもよい。試料の好適例には、ある規定高を有する2表面間、例えば2個の試料ホルダ間に閉じ込められた液体標本や、生死を問わないが少なくとも一種類の流体又は流体入り区画を有する単細胞又は多細胞生体標本がある。有向流体力学流を用いることで、少なくとも1個の粒子、プローブ又は実在物例えば化学物質、染料又は生理活性素材を、その試料内で/その試料を通り、とりわけその試料の流体内で/その流体を通り、好ましくはある軌跡に沿い第1の個所から少なくとも第2の個所へと輸送することができる。
【0021】
また、流体力学流を提供することで、流体内の少なくとも2個の粒子を、その試料内の所定個所に、一緒に持ち込むことができる。
【0022】
対物系は、例えば単体のレンズ又は標準的な顕微鏡レンズとすることができる。
【0023】
本発明における粒子、プローブ又は実在物は、試料内を通る有向流体力学流により輸送可能であれば、どのような物体でもよい。粒子輸送能力は、とりわけ、粒子サイズ及び/又は媒体の弾性、特に粘弾性媒体におけるそれにより左右されうる。従って、粒子サイズと、流れの強さ及び幅とが、互いに対応することとなりうる。
【0024】
本発明では、光源によって試料が動的に加熱される。即ち、試料内有向流動を導入するには、その試料内の加熱個所を動的に、好ましくは定常的に変化させることで、変動的な熱パターンをその試料内に発生させ、膨張エリア、好ましくは現在加熱されているエリアと、それとは別の収縮量を有するエリア、好ましくは別時点で加熱されたことのあるエリア内のそれとを設ければよい。各加熱エリアがある軌跡の一部分となっていて、光ビームがそれに沿い動かされるのでもよい。
【0025】
本発明のある好適実施形態に従い光ビームを試料に差し向け、少なくとも1本の軌跡に沿いその試料を通じ動かす際に、試料を通じたその光ビーム移動を、(特定位置での光ビームの停滞を伴わない)連続的なものとすることも、中断を伴っていてその間は光ビームがその試料内のある位置にある時間にわたり在留し、その後に試料を通じた光ビーム移動が続くものとすることもできる。
【0026】
また、中断の形態が、光源からの輻射取入れが減る形態であっても、輻射取入れがない形態であってもよい。
【0027】
好ましいことに、そのレーザ軌跡を然るべく選ぶことで、レーザ軌跡、好ましくは複雑なレーザ軌跡の1周期後に、標本内の各点が等しく加熱されるようにすることができる。これにより、標本横断的な均等温度分布がもたらされる。試料を縦貫する焦点体積経路の対称性を壊すことで、更に、複雑な局所流軌跡を生成することもできる(図2参照)。
【0028】
総じて言えば、その流動速度は、温度に対する粘度の導関数(dvis/d)に、線形的に依存する。
【0029】
試料には幾ばくかの体積があり、例えば少なくとも細胞壁、試料ホルダ表面或いは他の何らかの境界によりその体積が規制されうることが指摘されている。対物系内を通り試料に向かう光ビームの焦点体積を、その試料の内部又は表面上にある場所へと、差し向けることができる。本発明に従い2個のうち1個と述べる場合、それには他の1個(表面又は内部)がそれに代え又は加え含まれる、という含みがある。
【0030】
本発明における顕微鏡は、試料内に引き起こされた変化の操作及び観測を好ましくは同時に行える対物系を有するものであれば、どのような装置であってもよい。
【0031】
本発明における指定個所を軌跡とし、それに沿い光ビームを試料内/上で動かすことができる。更に、その指定個所を、その試料の少なくとも一部分にて提供される熱パターンとし、熱スポットの有向移動の時空間力学による試料内有向流体力学流をその熱パターンにより引き起こすことができる。
【0032】
本発明における指定個所操作手段は、試料内光ビーム伝搬方向の操作が行えるものであれば、どのような機器であってもよい。
【0033】
本発明のある好適実施形態は、光ビームの焦点体積を操作する手段、とりわけ可変光ビームエクスパンダ(拡張器)が、光ビーム路の平行光区間にて光源・顕微鏡間に設けられたことを特徴とする。その可変光ビームエクスパンダは、光源からの光ビームの幅を拡げ又は狭めるように設計される。その光ビーム焦点体積操作手段を、ズーム又はバリオ光学系とすることができる。
【0034】
好ましくは、光ビームの経路上、上記光ビーム焦点体積操作手段の前に、コリメータ(平行光化器)を設ける。可変光ビームエクスパンダにより光ビームが狭く詰め込まれるほど、対物系通過後に光ビームの焦点体積が大きくなろう。即ち、焦点体積のサイズと、試料に射突する輻射の強度とを、周知等式
min=λ/(n*sinφ)
に従い調整することができる。
【0035】
但し、nは対物系の屈折率であり、φはレンズを出る光円錐の角度であってその対物系に入る平行光ビームの幅に依存しており、λはその光ビームの波長であり、xminはそのスポットの分解能を表しておりそれにより焦点体積を決定付けている。対物系に入るビームの直径と共にφが増大するので、お判り頂けるように、平行光ビームの直径が小さいほど焦点体積が大きくなる。従って、試料の単位面積又は体積毎当たりでの標本のエネルギ取込み量は、対物系に入る平行光ビームのビーム幅が増すにつれて減少する。
【0036】
光ビームが狭いと対物系後方の焦点体積が大きくなる。即ち、エネルギ取込みがその試料にてより大きな表面積/体積に亘り拡がるため、試料内単位当たり加熱効果が、対物系に射突する平行光ビームが広めなときより小さくなる。好ましいことに、ビームエクスパンダにより、明確に、ビームのサイズを、操作対象試料の細胞又は区画のサイズにおおよそ整合させることが可能となる。より好ましいことに、その焦点体積を調整して、例えば操作対象細胞の核のサイズの半分にすることができる。
【0037】
本発明のある実施形態では、上記指定個所操作手段がスキャナ(走査器)、とりわけ音響光デフレクタ、或いはガルバノメトリックスキャナ、とりわけ準静的ガルバノメトリックスキャナとされる。原理的には共鳴ガルバノメトリックスキャナを用いることができる。更に、空間光変調器(SLM)をビーム偏向又はビーム操作目的で用いることも考えられ、それと機械的手段との組合せ(即ち可回転ダブプリズム)により、もたらされる強度プロファイルを回転させることも、そうしないで済ますこともできる。
【0038】
好ましいことに、偏向ビームスプリッタ及び/又は半波長板(ラムダハーフプレート)をその音響光デフレクタと連携して用いることで、直線偏向光を選択すること、並びに光ビームの直線偏向状態を回転させてそのデフレクタの光軸に整合させることができる。
【0039】
好ましくはシャッタ手段を設け、顕微鏡の光路内への光ビームの結合を遮断しうるようそれを工夫する。これは、蛍光蛋白質の温度依存性に煩わされる規定温度での定量的蛍光撮像向けに、必要とされよう。試料は、その試料内への光ビーム取込みによって加熱される。そのため試料温度、とりわけ特定の領域/エリア内でのそれが、周囲温度から変化し、蛍光強度の変化につながることがある。シャッタ手段が閉じているときには、光源による試料の照射が阻害されるため、温度誘起性の蛍光強度変化無しで画像を算出することができる。
【0040】
とはいえ、インジケータ例えば蛍光系(例.ローダミンB)を提供することで、また既知温度変化を通じた従来式の校正により、局所温度分布を求めることができる。インジケータの蛍光強度は検出可能であるので、それをその標本における温度分布に関連付けることで、その蛍光系の温度依存性を知ることができる。
【0041】
本発明のある好適実施形態では、顕微鏡が、共焦点顕微鏡、蛍光レーザ走査顕微鏡、広視野光顕微鏡、2光子蛍光顕微鏡、光シート顕微鏡、構造化照明顕微鏡及び/又はTIRF(内部全反射)顕微鏡のうち、少なくとも一つとされる。その顕微鏡を工夫することで、高感度撮像、高分解能撮像、共焦点旋回円盤2光子蛍光との互換性、標本内熱パターンの小型化による高分解能操作、光褪色後蛍光回復法即ちFRAPとの互換性、干渉法的アプローチによる熱パターン生成との互換性、及び/又は、STED(誘導放出抑制)、SIM(構造化照明顕微法)、PALM(光活性化局在性顕微法)、STORM(確率論的光学再建顕微法)、ホログラフィック撮像、位相コントラスト、DIC(微分干渉コントラスト)のうち、少なくとも一つを実現することができる。
【0042】
好ましくは、対物系として、少なくとも0.5、好ましくは0.95、より好ましくは1.2、最も好ましくは1.4なる高い数値開口を有するものを設ける。
【0043】
本発明のある実施形態では空気又は浸漬対物系が用いられ、後者の場合は好ましくはシリコンオイル又は重水が対物系・標本間に準備される。一般に、浸漬液としては、使用レーザ波長を吸収しないものを用いることができる。その浸漬液により、その液の屈折率に等しい倍率で、分解能を増幅することができる。浸漬液を好ましくも対物系・試料ホルダ間に配置することで、装置の諸部分と空気との間での付加的な位相変化を避けることができる。一般には、対物系の数値開口がその浸漬液の影響を受けることとなろう。浸漬光学系を優先的に用いることで、確と、数値開口(NA)を高くすること、ひいては撮像の感度を高くすることができる。
【0044】
本発明の装置のある好適実施形態は、標本チャンバが、第1標本チャンバ閉じ込め面を伴う試料ホルダ、好ましくはカバースリップと、その試料ホルダ上にあり規定標本厚をもたらす少なくとも1個のスペーサと、第2チャンバ閉じ込め面を伴う冷却装置と、のうち少なくとも一つを備え、そのスペーサがそれら第1及び第2閉じ込め面間に設けられたことを特徴とする。試料ホルダと呼ばれてはいるが、その装置のセットアップ次第ではその特徴物を試料の上側に設けてもよい。スペーサは、規定高の標本チャンバがもたらされるものであれば、どのような素材で形成されていてもよい。これに代え、(上述の如く)非サンドイッチ状標本マウントを設け、それに少なくとも1個の開口側面を具備させてもよい。従って、例えば覆い付試料スライドを使い捨てにしてもよい。
【0045】
標本チャンバを規定高、従って規定体積にすることは、光ビームにより試料が加熱されている間のエネルギ取込みとの関連で重要であろう。冷却装置に透明素材を具備させ、それにより撮像輻射、加熱光及び/又は試料の明又は暗視野照明光の通過を可能とすることができる。
【0046】
好ましくは、試料ホルダ及び/又は第2チャンバ閉じ込め面の厚みを少なくとも30μmとする。その厚みには工夫の余地があり、170μm以上の値に到達させることができる。
【0047】
好ましくは、冷却装置の第2チャンバ閉じ込め面を、透明な伝熱素材、好ましくはサファイア又はダイアモンドを有するものとする。試料により吸収された熱を、好ましくも散逸させることができて、試料内規定温度レジームを保つことができる。とりわけ生体試料、例えば単細胞又は多細胞有機体では、ある温度閾値を上回ると試料の分解が生じることがある。例えば、神経細胞は約36℃にて扱われるべきである。そうされず、41℃を上回ると神経細胞がその無欠性を失ってしまう。冷却装置を工夫することで、好ましくは持続的に、試料から除熱してその温度をプリセットレベルに保つことができる。
【0048】
本発明の他の態様では、冷却装置が、更に、上記伝熱素材を冷却するよう工夫された少なくとも1個の冷却素子、好ましくはペルチエ素子を備える。好ましくもその冷却素子を設けることで、冷却装置の温度を安定に保つことができる。試料から第2チャンバ閉じ込め面へと移送された熱を、能動冷却素子によって除去することができる。
【0049】
また、その冷却装置を共通のオペレータコントロール例えばコンピュータに接続することで、冷却強度の適合化、好ましくは光源の輻射強度に応じたそれが可能となる。動的冷却を行えるため、例えば脊椎細胞で重要な設定点からの温度偏差を、低減することができる。好ましくはその偏差を50%以下とする。
【0050】
本発明の更なる態様では、冷却装置が、冷却素子から除熱するよう工夫された熱管理システムを備える。この冷却素子からとりわけ向かい側の面上に熱が供給され、その試料入り面に対し上述の局所的冷却効果がもたらされるし、その逆になることもある。この熱エネルギを除去しなければ、局所的ホットスポットを冷却素子にて避けることができない。そのためには、熱管理システムを、伝熱素材で作成された少なくとも1個の接触素子と共に設け、それを好ましくは冷却装置とは逆側にて冷却素子に接触させればよい。
【0051】
これに代え又は加え、熱管理システムの水冷及び/又は除熱フィン/リブによる熱管理システムの冷却を行ってもよい。
【0052】
即ち、冷却装置・熱管理システム間に冷却素子を挟み込むのが望ましい。熱管理システムに中空物体を具備させ、それを通して冷却素子との接触エリア付近に冷却液例えば水を供給してもよい。最も好ましくは、冷却素子に中空金属体を接触させ、それを通して冷却水その他の冷却液をポンピングすることで、冷却素子に対する熱管理システムの幾ばくかの冷却効果を保つようにするのがよい。
【0053】
とりわけ試料の観測のため明又は暗視野照明が設けられ、顕微鏡の対物系を通じた被操作試料の直接又は間接検査がそれによりサポートされる。試料は、対物系・冷却装置間に設けることができる。本照明手段は、冷却装置から見てその試料とは逆側に設けることができる。従って、冷却装置及び熱管理システムをそれぞれ透明にするかギャップ又は孔を有するものにして、照明輻射が試料及び対物系それぞれに到達しうるようにするのが望ましい。
【0054】
好ましくは、本装置にデータ処理装置を具備させ、それを冷却装置、顕微鏡及び光源に接続することで、その冷却装置の冷却強度及び光ビームの強度を、相互依存的に及び/又は被照射試料の撮像情報に応じ設定できるようにする。再現性の良い試料操作のためには、照射光ビームを、強度即ちエネルギ出力が可調な態で提供するのが望ましい。その出力を、試料又は行われる操作の特性を踏まえ誂えることができる。
【0055】
また、光ビームを試料にてある軌跡に沿い動かす際には、その軌跡沿いにおける試料内へのエネルギ取込みが変化するエネルギプロファイルを、提供するのが望ましかろう。試料の過熱を避け、試料内温度を所定レベルに及び/又はある特定の閾値未満に保つには、冷却装置の出力パワーを調整して光源のエネルギ出力に合せればよい。
【0056】
無接触有向流体力学流遂行中の試料撮像で集まった情報と、光ビームからのエネルギ取込み及び冷却素子からの冷却パワーについての情報との組合せにより、その試料の光ビーム強度依存観測及び操作が可能となる。
【0057】
更に好ましいのは、光ビームの指定個所を操作する手段にもデータ処理装置を接続し、その試料を通る光ビームの制御下運動がもたらされるようにすることである。試料を通る光ビームの制御下運動を、試料操作前にセットアップされた所定軌跡に沿うものとすることができよう。コンピュータをそのデータ処理装置として設け、試料を通る光ビームの軌跡についてのデータの入力用に少なくとも1個のインタフェースをそれに設けることができよう。
【0058】
その入力手段は数値的なものでもグラフィカルなものでもよい。本発明のある実施形態は、その入力手段がタッチスクリーンで、試料又は試料を代理するダミーのうち少なくとも一部分がそこに表示されるものであり、例えば光ビームの軌跡をマーキングすること、ひいては試料を通る光ビームの動きを表示グラフィクス上でマーキングすることによって、そのタッチスクリーンにて光ビームの軌跡をプログラミングすることができよう。
【0059】
本発明のある好適実施形態では、上記指定個所操作手段が少なくとも1個の空間光変調器を有する。投射レーザパターンの局所振幅を可変的に変調する手段、とりわけ空間光変調器(SLM)は何れも、試料での加熱パターンの発現用に用いることができよう。好ましいことに、空間光変調器をビーム路の像面又は瞳面内に所在させることができる。
【0060】
空間光変調器を用いることで、例えば、光ビームの焦点体積を、光軸方向例えば試料におけるz座標の方向に動かすことができる。本明細書では、x及びy座標が像面、顕微鏡及び/又は試料ホルダ表面に直交するものとする。そうした空間光変調器、或いは光源の輻射を然るべく操作する装置で以て、光ビームの焦点体積の三次元軌跡を試料に発現させることができる。
【0061】
加熱パターンは、試料内及び/又は上をその軌跡に沿い光ビームで反復走査することによって、試料に発現させることができよう。とはいえ、加熱パターンは、好ましくは定常的及び/又は動的に試料の諸エリアを加熱すること、好ましくは他エリアがさほど又は全く加熱されないエリア間温度プロファイルで以てそうすることによっても、発現させることができよう。この加熱パターン発現方法は、単独で用いることも、走査光ビームとの組合せで用いることもできる。
【0062】
もう一つの加熱パターン発現方法は、試料内のある特定の流体入りエリアの少なくとも部分的な局所照射として、理解することができる。その流体入りエリア内では、異なるエネルギレベルの照射を提供することができ、及び/又は、別の流体入りエリア内では、それと同じ又は異なるエネルギレベルの照射を確立することができる。
【0063】
上掲の説明に従い試料内に加熱パターンを発現させることで、他の試料内エリアに比し照射が少なく又は照射がないエリアが発生する。試料の相異なるエリアにおけるこうした照射差ひいては温度差故に、とりわけ加熱による流体の粘度、密度及び膨張の違いによって、流体力学流が引き起こされる。
【0064】
本件技術分野に習熟した者(いわゆる当業者)には理解される通り、より集中的に加熱される流体が入っている第1エリアの方が、第1エリアほどは加熱されず又は全く加熱されない流体が入っている第2エリアよりも多く膨張することとなり、低い密度及び低い粘度を呈する。これら少なくとも2個のエリアが通流状態にある場合、その液のうち少なくとも一部分が第1エリアから第2エリアへと動的に動くこととなる。
【0065】
例えば、第1・第2エリア間で熱取込みが反転し、第2エリアが第1エリアよりも多く加熱されるようになると、その液の流れも反転する。それら第1・第2個所間で熱を動的に変化させることにより、その試料の流体の後方及び前方輸送、即ち揺動/振動をもたらすことができる。具体的には、単方向的に複数回走査した後、その単方向走査を反転させることで、所与周波数を有する振動流を引き起こすことができる。それら振動流を用いることで、何ら標本修正無しに、粘弾性物質例えば細胞質の物質状態を探触することができる。その物質の応答は粒子追跡により、具体的には得られた粒子軌跡のフーリエ解析により、検出することができる(ロックイン技術)。原理的には、粒子軌跡の動画記録及びコンピュータ追跡で得た信号のフーリエ変換を通じ、粒子の振動運動を検出することができる。これを用い粘弾性物質特性を計測することができる。
【0066】
更に、複数回の単方向走査により物質変形を引き起こす際に、その時間依存変形(クリープ変形)の同時検出が可能である。これには刺激無しでの時間依存緩和の検出が後続する。
【0067】
この例では、動く光ビームを提供する必要はなく、寧ろ、局所的に異なる強度を有する照射野及び/又は加熱がされないか弱い加熱しかされない盲点がもたらされる。また、第1及び/又は第2エリアが変化し、或いはそれらの位置及び/又はサイズが変更されることがある。
【0068】
上述した第2代替例に従い試料のうち少なくとも1個のエリアを加熱する別のやり方は、投射光野とりわけレーザパターンの局所振幅の時間変調か、複数個のコヒーレント光(レーザ)野の干渉、例えば相対的周波数シフトを伴う(レーザ)光野を重ね合わせることによるそれであろう。
【0069】
強調及び相殺干渉による構造化パターンを対物系に差し向けてもよい。相殺干渉(弱め合い干渉)は、加熱を伴わず又は弱い加熱しか伴わない盲点につながる。強調干渉(強め合い干渉)は、その光ビームにより加熱される少なくとも1個の試料内エリアをもたらす。その干渉パターンを、個別光ビームの相対位相を経時変化させること、即ち2本のコヒーレントレーザビームの周波数を僅かに不整合化させることで、変調することができる。
【0070】
相応な干渉パターンの生成のため、例えば、その試料に構造化照明/照射を提供する位相マスク又は空間光変調器を設けてもよい。更に、位相マスクにより生成されたパターンと参照ビームとの干渉を用い、動的な熱場を生成することができよう。
【0071】
液中に流れを生成できる別のやり方は、ヒートシンク付近での局所反復加熱である。加熱相及びとりわけ冷却相では、確立された温度場が、そのヒートシンクに近い領域内でより高速に減衰するので、確立された温度場の中心の動態が経時的に一定に留まるのではなく、加熱/冷却サイクルを通じわずかに動くこととなる。この実効的な温度場運動が、ひいては、その液中に流れを引き起こすこととなる。
【0072】
本発明の試料内無接触有向流体力学流同時的撮像兼遂行方法では、少なくとも1個の光源とりわけレーザにより、光ビームとりわけレーザビームの働きで試料の内部及び/又は表面が動的に加熱され、当該少なくとも1個の光源のビームが顕微鏡の対物系を通じ試料へと差し向けられ、その光ビームを試料の指定個所へと可変的に案内しとりわけ集束させることでその試料内に流体力学流が引き起こされ、且つその光ビームの導入に用いられたのと同じ対物系を介し試料が撮像される。
【0073】
本発明のある態様では、試料の液中における流体力学流の無接触誘起を実施している間に、同じ対物系を介し操作の観測が実現、遂行される。好ましくは、顕微鏡をこのタスク用に設け、試料の照射と、その試料による放射輻射、好ましくは蛍光輻射の分析とをそれにより行う。
【0074】
本発明のある好適実施形態では、対物系が、試料の撮像と、光ビームによるその試料の加熱とに、同時に用いられる。即ち、試料の操作をリアルタイムで観測/撮像することができる。
【0075】
好ましくは、光ビームとりわけレーザビームの焦点体積を、音響光デフレクタ、ガルバノメトリックスキャナ、とりわけ準静的ガルバノメトリックスキャナにより、試料にて経路沿いに動かす。原理的には、共鳴ガルバノメトリックスキャナも用いることができる。これらのスキャナはとりわけxy走査用に設けられる。そのxy平面は、試料ホルダ及び対物系に平行だが、光ビーム路に対しては直交している。原理的には、z方向沿い走査を、とりわけその光ビームのビーム路内に配置された、SLM又は可動レンズとりわけ動力付レンズにより、行うことができる。
【0076】
本発明のある態様では、光ビームの経路上にあるシャッタ手段を閉じることで試料の加熱を中断させ、概して光ビームの加熱温度より低い明確規定温度にて、流体力学流を好ましくは蛍光撮像により観測する。シャッタ手段により試料の加熱を中断させることで、蛋白質濃度の計測を行えるようにすることができる。
【0077】
冷却手段が設けられているため、また好ましくも試料が小体積であるため、試料の温度を冷却装置/冷却手段の温度まで非常に素早く低下させることができる。従って、シャッタ手段を閉じることでその試料内の温度が明確に定まる。
【0078】
好ましくは、上記指定個所を、光ビームにより経路又は指定軌跡に沿い反復的に動かす。無接触有向流体力学流が、光ビームの所定軌跡沿い移動1回で引き起こされることもあろう。しかしながら、試料内の液を流動状態に保つには、光ビームの所定軌跡沿い反復移動が有益である。光ビームによるこの軌跡又は経路反復描出により、その試料内でポンピング効果が引き起こされる。
【0079】
本発明の更なる態様では、少なくとも1個の光源により、試料、伝熱粒子例えば金粒子、染料、及び/又は、吸熱層とりわけ炭素層であり、その試料内又は上にあるもののうち、少なくとも一つが加熱される。好ましくは、光ビームの焦点体積がその試料の液体部分内にあるようにする。とはいえ、試料における軌跡沿い規定加熱を、補助又は補充物体を加熱することによって行ってもよい。例えば、試料内の吸熱粒子例えば金又は吸光染料を、流体それ自体に加え又は代え加熱してもよかろう。
【0080】
また、試料のうち表層及び/又はある特定の層のみを加熱し及び/又は運動させたい場合、吸熱層例えば炭素層を試料上及び/又は内に設けることができ、それを加熱して光ビームのエネルギを吸収させることができる。吸収されたエネルギは、その吸収層上における光ビームの取込み軌跡に沿い、周囲の流体へと移送される。
【0081】
本発明の方法のひときわ好適な実施形態は、流れ付勢刺激に対する試料の応答を記録することを特徴とする。その流れ付勢刺激は単独、反復、周期又は掃引刺激とすることができる。試料の応答の記録は、標本の物質特性及び/又はその標本の分類を助けうる現象学的応答係数を推論する目的で、役立てることができる。
【0082】
流れ付勢刺激が周期刺激である場合、周期刺激に対し所定の位相関係、例えば一定位相関係を呈する時点で顕微鏡画像を撮影するのが望ましい。これには、その顕微鏡データをより速やかに評価できる、という利点がある。
【0083】
本発明の方法のひときわ好適な実施形態では、基準マーカの追跡により粒子追跡が実行され、とりわけその後にその基準マーカの軌跡がフーリエ解析される。この文脈における粒子(particle)の語は、試料とりわけ生体試料の一部であると理解されたい。例えば、細胞の構成要素の動きを、本発明の方法で以て追跡することができる。
【0084】
基準マーカとしては、蛍光蛋白質複合体例えばμNSトレーサ粒子か、その他の細胞小器官例えば小顆粒かが、用いられる。ある実在を基準マーカ候補として適格視するための基本的な条件は、それを標準的な顕微法技術で以て検出できること、とりわけ、必須ではないが蛍光顕微法で以て検出できることである。
【0085】
本発明は、粒子の整列及び操作に関わる多くの有用な用途を有している。
【0086】
より具体的には、粒子の位置特定を、その流体力学流場の典型的なサイズよりも高い精度で以て実行することができよう。これが最も容易に達成されるのは単一粒子の場合であるが、複数粒子の場合にも達成できよう。流体力学流場(hydrodynamic flow field)、縮めて流れ場(flow field)が意味するのは、その試料の空間における流体力学流の方向及び大きさを示すベクトル場である。より具体的には、流れ場なる語は、制限され予め定められている期間に亘り、上述の如く試料の内部及び/又は表面を動的に加熱することで、全面的に又は少なくとも部分的に引き起こされる流体力学流場、のことを指している。
【0087】
例えば、複数粒子の位置特定を、流れにより引き起こされた又は自発的な粒子位置変化に従い流体力学流場を順次選択し一連の流体力学流場を適用することによって、達成することができよう。即ち、第1流れ場をある有限期間に亘り適用することで粒子を幾ばくかの距離に亘り動かし、その後に別の第2流れ場、その後に第3流れ場等々と適用することで粒子を動かし、それらの想定行先に十分に近づけること及び/又は所望の相対空間構成又は間隔にすることができよう。
【0088】
本発明の方法のある好適な代替例は、従って、試料を一連の流れ場に供すること、とりわけその試料内の1個又は複数個の粒子が特定の行先に持ち込まれるようにすることを特徴とする。
【0089】
とりわけ、流れ場の適用後に粒子位置の相対変化を読み出すことが望ましかろう。これに相応し、本発明の更なる変種は、流れ場の各回適用後に一通り又は複数通りの粒子位置の相対変化を求めることを特徴とする。
【0090】
好ましいことに、一通り又は複数通りの粒子位置の相対変化を、後に適用される他の好適な流れ場の決定に、用いることができる。粒子所在及び/又は移動度についての情報を用いることで、他の好適な流れ場を予測、決定又は計算することができる。
【0091】
これに代え、精密な所在以外の粒子位置指標が変更されるよう、流れ場を適用するのも望ましかろう。好ましくは、流れ場を適用することで、少なくとも、試料内の粒子の密度、間隔及び/又は密集度を変化させる。
【0092】
更に、少なくとも1個の粒子が試料内で所定位置に保たれるよう、流れ場を適用することができる。これは、粒子位置を継続的に補正することで粒子位置揺らぎに対処するのが望ましい状況にて、有用となろう;そうした粒子位置揺らぎは、その粒子例えば標本の周囲における拡散運動及び/又はその他の運動源泉から発生することがあり、これに限られるものではないが毛細管力及び/又は生命活動に由来する流れがそれによりドリフトされる。
【0093】
本発明の方法の更に好適な変種では、部分的又は全面的に位置特定された粒子に係る空間的行先が連続的に又は離散的な時間ステップにて変化するよう、流れ場が適用される。これは、部分的又は全面的に位置特定された粒子の行先を離散的な時間ステップにて又は連続的に変化させること、ひいてはその流れ場により付勢される粒子をそれら経時変化する行先を結ぶ経路に沿い動かすことが望ましい状況にて、有用である。
【0094】
これに加え又は代え、流れ場を計算及び適用して粒子を所望経路に沿い、或いは複数個の粒子を複数通りの所望経路に沿い動かすことができる。
【0095】
更に、本発明によれば、命令群で構成されたコンピュータプログラム製品であり、そのプログラムがコンピュータにより実行されたときにそのコンピュータがある方法を実行することとなり、その方法が、その指定個所の所定軌跡に従い加熱対象試料の指定個所操作手段を制御するステップと、冷却装置上での温度読出し値を受け取るステップと、顕微鏡から撮像データを受け取るステップと、光源からパワー出力データを受け取るステップと、冷却装置の冷却強度及び光ビームの強度を相互依存的に及び/又は被照射試料の撮像情報に応じ制御するステップと、を有するものが、提供される。
【0096】
また、コンピュータ可読格納媒体であって、備わる命令群がコンピュータにより実行されたときに、そのコンピュータがある方法を実行することとなり、その方法が、その指定個所の所定軌跡に従い加熱対象試料の指定個所操作手段を制御するステップと、冷却装置上での温度読出し値を受け取るステップと、顕微鏡から撮像データを受け取るステップと、光源からパワー出力データを受け取るステップと、冷却装置の冷却強度及び光ビームの強度を相互依存的に及び/又は被照射試料の撮像情報に応じ制御するステップと、を有するものが、提供される。
【0097】
以下、提示される図面により本発明を更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0098】
図1】本発明のある好適実施形態に係る装置の模式図である。
図2】時間平均的に等しく加熱され有向流体力学流が現れる試料の例を示す図である。
図3】試料内有向流体力学流たる回転の引き起こし方の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0099】
図1に、本発明の好適実施形態であり、コヒーレント光輻射、好ましくはレーザ光26,28をもたらす装置と、試料24の操作をそれを介し観測できる顕微鏡25とを、有するものを示す。いわゆる当業者には理解される通り、本実施形態に備わる具体的な装置は専ら説明上のものであり、実施される実験に従い適合させることができる。
【0100】
[光ビームの操作]
本好適実施形態に係る装置30は光源1、好ましくはレーザ光源を備えている。その光源と顕微鏡25との間には幾つかの器具、とりわけ参照符号2~11、33及び34付の器具を設けることができる。ここで述べた参照符号付きの器具は、規定ビーム直径を有するコヒーレント平行輻射をもたらすように設計することができる。何らかの付加的、補充的又は代替的装置を同手段向けに又は代えて設けてもよい。
【0101】
光ビームのうち光源1とシャッタ手段11の個所との間にあるものを、光ビーム28と称している。同じ光ビームではあるが顕微鏡内にあるものを、光ビーム26と称している。
【0102】
最初のステップとしては、光ビーム28を光ファイバの出射端からコリメータ33により集め、光源1の輻射を平行光化すればよい。そのコリメータ33の後段に偏向ビームスプリッタキューブ2を設け、直線偏向光を選択すればよい。その光輻射のうち偏向ビームスプリッタキューブ2を通過しない部分は、ビームダンプ3に差し向けて不要光を安全に阻止すればよく、またそのビームダンプをフォトダイオードとして光源1の実出力パワーを計測することもできよう。
【0103】
更に、少なくとも第1レンズ4及び第2レンズ5を有するテレスコープ(望遠鏡)をスキャナ8向け事前調整として設け、光源1のコリメータ33により引き起こされた発散を排してもよい。更に、半波長板6を用い光ビームの直線偏向状態を回転させ、そのスキャナ8の光軸に整合させてもよい。更に、可変光ビームエクスパンダ7(ズーム光学系、バリオ光学系)をスキャナ8の上流に設けてもよい。
【0104】
エクスパンダ7は、スキャナ8によりもたらされる試料24内走査パターンのサイズを変えることなく、ビーム直径を操作できるように設計する。走査パターンの分解能を標本のサイズに整合させることができるので、小規模な流れ場及び細胞内区画並びにより大規模なものを、撮像対物系の改変無しに生成することができる。対物系16は、試料24のうち少なくとも一部分を撮像及び/又は操作しうるよう工夫されている。
【0105】
スキャナ8を音響光デフレクタ(AOD)、ガルバノメトリックスキャナ、とりわけ準静的ガルバノメトリックスキャナ又はSLMとしてもよかろう。それ(8)の目的は、光ビーム26,28を試料24内の様々な個所に差し向けること、それによりその光ビーム26,28の焦点体積を試料24にてある軌跡又は経路に沿い動かすこと、として記述することができる。スキャナ8は光、とりわけレーザ光の操作にて周知なツールである。スキャナ8に少なくとも1個の鏡又は光屈折物体付を設け、光ビーム28に対する反射/屈折角を可調としてもよい。こうすれば、試料24におけるx軸及びy軸に少なくとも沿う軌跡に沿い、スキャナ8により光ビーム28を動的に案内することができる。それらの軸は、好ましくは光ビーム26に直交させる。好ましいことに、スキャナ8を用い試料24にて指定軌跡を反復照射し、当初引き起こされた流れを稼働状態に保つことができる。
【0106】
その反復はポンピング効果につながり、数百nmから数mmという長距離にも亘り維持されうる流れがもたらされることになる。光ビーム26が軌跡の終了点に達するとスキャナ8がその軌跡の開始点までジャンプする。好ましいことに、光源1をオフに切り替える必要がない。
【0107】
光ビーム伝搬方向に沿いスキャナ8の後段又は下流に、少なくとも第1レンズ9及び第2レンズ10を有する第2テレスコープを設けてもよい。この第2テレスコープを設けることで、スキャナにより引き起こされるビームの動きを、顕微鏡対物系の後方焦平面内に精密に転写させればよい。
【0108】
また、鏡34を、参照符号1~11の装置それぞれの間に設け、光ビーム28を方向転換させてもよい。
【0109】
更に、光ビーム伝搬方向に沿いスキャナ8の後段、好ましくは第2テレスコープの後段にシャッタ手段11が設けられており、光ビームを撮像光学系から分離させうるようにそれが設計されている。これは定量(蛍光)撮像で必要とされよう。例えば、試料24の操作を撮像するための染料として蛍光蛋白質が提供されているときには、その染料の放射活動が温度依存性となる。シャッタ手段11を閉じることでその温度をある精密規定温度に調整してもよく、そうすることで、明確に規定された濃度、明確に規定された染料/流体温度での、その試料の撮像が可能となる。
【0110】
撮像実験に先立ち、とりわけその放射活動及び/又は吸収活動における染料挙動の温度依存性を分析してもよい。その後、染料を同時提供して試料24を操作及び撮像する際に、その試料24内の特定エリアの実温度を、その染料の撮像情報をもとにリアルタイム判別してもよい。
【0111】
更に、試料24内に流れが引き起こされた後に、シャッタ手段11を閉ざして光ビーム取込みを中断させてもよい。それにより、冷却装置18によりもたらされる温度にほぼ等しい温度までその試料24が冷却される。
【0112】
[顕微鏡の構造]
手段2~11のうち何れかによる光ビームの操作の後段には、試料24の撮像及び操作双方のため顕微鏡25が設けられている。その光ビームを顕微鏡25の光路a)内に結合させるため、少なくとも1個の素子12が設けられている。この素子12は、光ビームを好適に反射させるが蛍光撮像に用いられる可視波長レジームでは透過させる、ダイクロイックミラーとするのが、望ましい。即ち、顕微鏡25に入る光ビームを素子12により方向転換させつつも、試料を撮像するのに必要な輻射がその素子12内を通過し顕微鏡25の対物系16に達するように、することができよう。
【0113】
顕微鏡25は、標準的な顕微鏡でよいが、個別の励起、ダイクロイック及び放射フィルタで構成される少なくとも1個の(蛍光)フィルタキューブ13、撮像用光源(例.蛍光光源又は明視野照明)14、撮像輻射検出器15、とりわけ定量(蛍光)撮像を行える高速高感度カメラ、並びに顕微鏡対物系16のうち、何れかを有するものとするのが望ましい。撮像輻射源14及び/又は撮像輻射検出器15(例.カメラ)を、顕微鏡ビーム路a)内に設けてもよく、及び/又は、例えば放射フィルタ13の働きでそこに投射してもよい。図1には、照射ビーム路a)内に投射される撮像輻射27のビーム路が示されている。
【0114】
連続的な矢印線によって、それに沿い光ビームが供給される検出ビーム路b)及び照射ビーム路c)の方向が示されている。検出ビーム路b)は、試料24に始まり対物系16内を通り撮像輻射検出器15に至っている。撮像輻射用の照射ビーム路a)は、撮像輻射源14に始まり対物系16内を通り試料24に至っている。
【0115】
顕微鏡対物系16は、好ましいことに高い数値開口を有しており、同時的な高分解能(蛍光)撮像及び精密光ビーム(例.赤外レーザ)走査を行うことができる。好ましいことに重水及びシリコーンオイルが個別対物系用に浸漬液29として供給されている。また、高NA空気対物系を用いてもよい。浸漬液29は、好ましくは標本チャンバ17・対物系16間に配置される。これにより、被撮像試料24の分解能を低下させかねない気相(空気)による付加的な位相遷移が排される。
【0116】
試料24は標本チャンバ17内に準備すればよい。その標本チャンバ17を以て、試料24向け規定体積が設けられた場所と見なせばよい。試料24は、単細胞又は多細胞の生命形態でも、その内部に少なくとも1個の粒子があり又は他の何らかの液体標本を伴う流体でも、細胞可溶化物や胚性抽出物でも、流体力学的又は熱的に可動な粘弾性物質でもよい。標本チャンバ17を、第1チャンバ閉じ込め面を提供する第1カバー付で設けてもよく、またそれがサファイア、ダイアモンドその他の何らかの高伝熱性及び/又は透明素材を備えるのが望ましい。透明性は、少なくとも、本発明に従い撮像、操作及び/又はバックライトに用いられる可視光及び/又は他の何らかの輻射に関し、提供すればよい。また、その第1カバーの表面を標準的な顕微鏡スリップとしてもよい。
【0117】
標本チャンバ17は第2チャンバ閉じ込め面により範囲制限するのが望ましく、またそれを冷却装置18の一部分としてもよいし、高スループット実験では開放マルチウェルプレートとしてもよい。第2チャンバ閉じ込め面は、サファイア、ダイアモンドその他の何らかの高伝熱性透明素材を備えるものとするのが望ましい。これに代え、ガラス面例えばカバースリップ/カバーガラスを第2閉じ込め面として設けてもよい。透明性は、少なくとも、本発明に従い撮像、操作及び/又はバックライトに用いられる可視光及び/又は他の何らかの輻射に関し、提供すればよい。冷却装置18の第2チャンバ閉じ込め面の下方に冷却素子31、好ましくは少なくとも1個のペルチエ素子を設けてもよい。いわゆる当業者には理解されるように、どの冷却素子も、とりわけ、散逸させることが必要な排熱の形態で熱を出す。そのため、冷却素子31から除熱する熱管理システム32を設けてもよい。
【0118】
その熱管理システム32は、交換冷却液好ましくは水を熱ダンプとしてそこに供給しうる、金属又は別の伝熱面を備えるものとするのが望ましい。また、受動冷却を行ってもよい。好ましいことに、冷却装置18の背後には試料24用に明又は暗視野照明19が設けられている。熱管理システム32に開口又は透明層を設け、その明又は暗視野照明19で試料24を照射しうるようにするのが望ましい。これに加え又は代え、明又は暗視野照明19を撮像センサ15の在処に設けてもよいし、図1に従い逆に設けてもよい。
【0119】
加えてコンピュータ20を設けてもよく、好ましくはそれを光源1、スキャナ8、顕微鏡25、撮像センサ15、シャッタ11及び/又は冷却素子31に接続する。そのコンピュータと冷却素子31の間に比例積分微分(PID)制御23を設けてもよく、好ましくもそれを助けにして、冷却温度の再調整が必要なときに冷却素子31の温度振動を避けることができる。装置21及び22が好ましくもスキャナ8・コンピュータ20間に設けられているので、それらにより構成されるPCIコントローラカード21によりスキャナ制御ボックス22向けにアナログ信号を供給し、そのスキャナ制御ボックス22内の電子的発振器及び電子的増幅器でスキャナ8を動作させることができる。
【0120】
コンピュータ20は、好ましくもあるコンピュータプログラム製品で以て且つそれに従いセットアップされているので、そのプログラムをコンピュータにより実行したときには、協調的に、試料24への光輻射の適用(光ビーム、レーザビーム)、光源1のパワー出力を基準とした冷却素子31による調整冷却、所定軌跡に従ったスキャナ8の動き、ひいてはその所定軌跡に沿い動く試料24内での光ビーム26の焦点体積の発現、及び/又は、試料24のリアルタイム撮像が行われることとなる。
【0121】
即ち、光源1による出力エネルギの変化が、冷却素子31の付加的な冷却パワーにより補償されうるので、各時点における撮像情報を、光源1の出力パワーと、試料24にあり光ビーム26又はその焦点体積により照射される実際の点又はエリアとに、それぞれ多少とも一定な温度にて脈絡付けることができる。
【0122】
[技術]
流体力学流の実際の動きは、その流体の流れで以て運ばれる粒子の運動により観測すればよい。本発明に係る流体の流動速度は、その流れにおける粒子の移動速度とすればよい。好ましいことに、その流れの方向が光ビーム移動の軌跡とは逆になる。
【0123】
更に、その流れを染料の使用により観測してもよいところ、温度勾配及び/又は濃度勾配を撮像検出器15で記録しうることから、液/流体の流れを代表する染料の流動速度を決定することができる。
【0124】
試料の区画のみ、例えばその試料の表面エリアのみを、光路方向に沿いその区画の上方及び/又は下方にある他の流体を加熱することなく、光源1により動的に加熱したい場合、ある種の粒子又は層をその所望動的加熱エリア内に設けて相応波長の光を吸収させ、ひいてはその光ビーム又は焦点体積によりそれぞれ加熱させればよい。
【0125】
その波長及び粒子/層素材は、その試料の流体により好ましくも吸収されない波長を吸収するよう選択すればよい。その粒子を例えば金粒子とし、それに光ビームを照射して加熱してもよい。持ち込まれたエネルギが、その後、周囲の液に運ばれることで、最終的には、その軌跡沿いの粒子が動的に加熱されたときにその液中に流体力学流がもたらされることになる。いわゆる当業者には理解される通り、それら粒子のうち幾つかが、その流体又は試料24における流体力学流の軌跡沿いに供給される必要がある。その流体内の粒子に加え又は代え、ある層をその試料24上又は試料24内に設け、それに光ビームを照射しひいては加熱してもよい。
【0126】
光ビームは好ましくは軌跡沿いに動かされ、それによりある特定の経路が加熱される。その層の下方及び/又は上方にある至近の液により、その層からの熱が吸収されることで、その層付近に局所的な流体力学流が発生する。その層を薄い炭素層又はそれに比肩する素材とし、それにより光ビーム、好ましくは赤外レーザの吸収を行う一方、それにより可視光の伝搬を許容し試料の蛍光撮像を行えるようにしてもよかろう。とはいえ、その光ビームが他の非赤外波長を併せ含んでいてもよい。
【0127】
図2に係る縦線及び横線は軌跡を表しており、それに沿いレーザビームの焦点体積を試料内で動かすことができる。図2に係る線同士は小さな距離であるので、試料が均等加熱されるものと見なすことができる。各線に沿い焦点体積が2回動かされる。それら線上の矢印は焦点体積の移動方向を示している。
【0128】
線1及び3における動きは、左から右へのもの及び右から左へのものである。
【0129】
従って、とりわけ逆向きの2方向に沿いほぼ同時に流れが引き起こされるため、これらの線にて引き起こされる流体力学流は中性化される。線2においては、焦点体積が左側から右側へと(又はその逆の向きで)2回動くので、双方の焦点体積移動にて引き起こされる流れが同じ方向となる。
【0130】
従って、平均温度がほぼ均一に分布しているのに流体力学流が引き起こされる。線2における流れは、焦点体積の移動方向とは逆の方向に沿い引き起こされる。
【0131】
また、レーザは、図3中の方式に従い試料を通じ動かせばよい。
【0132】
図中の正方形1~8は、試料の少なくとも抜粋を、本発明に従い定まる如くに表したものである。
【0133】
各正方形1~8は、別々の時点における試料内のほぼ同じエリアを表している。
【0134】
これら8個の正方形は、8通りの相異なる焦点体積光ビームパターン、即ち試料が好ましくは昇順に従い相次いで露出されるパターンを表している。
【0135】
操作される試料は、それら正方形に比し小さなサイズ、大きなサイズ又は同サイズとすることができる。
【0136】
局所的温度変化によりその正方形内で粘度が相応に経時変化することで、その試料内の流体の旋回運動を発生させることができる。
【0137】
これら正方形内の各破線エリアは、その試料内の加熱エリアを表象している。そのエリアに、個別的に加熱される多数の加熱個所、及び/又は、共に動く軌跡を設けることで、時間平均的に加熱エリアを提供してもよい。好ましくは、個別の正方形内の各加熱エリアを、その試料内に次から次へと、但しある正方形から別の正方形へのパターン変化がもたらされるのよりも高速で発生させる。従って、時間平均的に、各正方形内の破線に係る加熱エリアがもたらされる。
【0138】
好ましいことに、1周期全体を経て全8個の正方形に係るパターンが導入された後には、各破線エリアが同等に加熱されている。
【0139】
加熱個所/軌跡又は正方形、即ちサイクルの構成部分の個数は適合化させることができ、2以上の任意個数にすることができる。
【0140】
本発明によれば、振動性流体力学流に依拠し、能動的無プローブマイクロレオロジーを実現することができる。より具体的には、本発明では、生体細胞の細胞内要素例えば細胞質又は染色質のレオロジー的物質特性を能動的に計測すべく、能動的無プローブマイクロレオロジーが開発されている。
【0141】
本発明の諸実施形態では、この点に関する根幹発想に、弱い振動性流体力学流刺激を引き起こすことと、細胞向け基準マーカを追跡することでその物質の応答をそれと同時に計測することとが含まれている。基準マーカは、どのような表現蛍光蛋白質複合体即ちμNSトレーサ粒子とも、また標準的な顕微法技術で以て検出できる他の細胞小器官例えば小顆粒とも、することができる。
【0142】
振動性流体力学流を引き起こすには、流れを例えば交番的に反対方向に適用すればよく、典型的には80msの半周期に亘り適用した後に流れを反転させればよい(全周期では160ms)。これによりもたらされる細胞物質実効振動周波数は6.25Hzとなる。その技術的詳細、即ちレーザ走査周波数及び走査回数を表1に例示記述してある。所与レーザ走査周波数にて走査回数を変化させることで、振動周波数を少なくとも二桁の振幅に亘り調整することができる。
【0143】
引き起こされた振動性流体力学流に対するその物質の応答は、典型的には、基準マーカを追跡した後に粒子軌跡をフーリエ解析することで実行することができる。この場合、各流動周期を2枚のカメラ画像で以て記録することが望ましい。典型的には、計測毎に合計128周期にて1周期当たり画像8枚を用いることができる。その詳細を表1に示す。
【0144】
既存のマイクロレオロジー技術、例えば磁気ピンセット又は光ピンセットに勝る本発明の技術的長所は、本発明の装置及び本発明の方法では標本の修正やプローブの注入が必要ないことである。この特徴は、往々にして粒子導入にひどく影響される閉幾何内、例えば生体胚及び細胞内での作業向けにひときわ重要である。
【0145】
【表1】
【符号の説明】
【0146】
1 光源、8 スキャナ、24 試料、25 顕微鏡、30 装置。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-12-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱パターンを変更することにより、試料(24)内の無接触有向流体力学流の同時的撮像兼遂行装置(30)であって、
可視光を提供する光源(14)と試料(24)の少なくとも一部の蛍光イメージングのための対物系(16)とを有する顕微鏡(25)と、
試料(24)の少なくとも1つの指定された位置を動的に加熱するように適合される赤外レーザ源(1)と、
加熱される試料(24)の指定された位置を操作するための手段(8)と、
撮像輻射(27)及び赤外光のビーム(26)にアクセス可能試料(24)用の標本チャンバ(17)と、
を含み、
赤外レーザ源(1)からの光を顕微鏡(25)の光路に結合するための手段(12)が、試料(24)の指定された位置を操作するための手段(8)の下流に配置され、
顕微鏡(25)の対物系(16)は、赤外レーザ源(1)の光ビーム(26)を試料(24)の中及び/又は上に導き、焦点を合わせて、試料(24)の少なくとも1つの指定された位置を加熱するようにさらに適合され、対物系(16)を介した試料の同時撮像及び操作を可能にし、
上記対物系(16)は浸漬対物系であり、上記対物系(16)と上記試料(24)との間に重水が配置されている、
装置。
【請求項2】
請求項1に係る装置(30)であって、
上記光ビーム(26)の焦点体積の操作手段である可変光ビームエクスパンダ(7)が、光ビーム路の平行光区間(28)にて上記光源(1)・上記顕微鏡(25)間に設けられたことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1及び2のうち一方に係る装置(30)であって、
記手段(8)が、音響光デフレクタ、ガルバノメトリックスキャナ、又は、準静的ガルバノメトリックスキャナであることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1~3のうち一項に係る装置(30)であって、
シャッタ手段(11)が、上記顕微鏡(25)の光路内への上記光ビーム(28)の結合を遮断しうるよう設けられ工夫されたことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1~4のうち一項に係る装置(30)であって、
上記顕微鏡(25)が、共焦点顕微鏡、蛍光レーザ走査顕微鏡、広視野光顕微鏡及び/又は2光子蛍光顕微鏡のうち、少なくとも一つであることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1~5のうち一項に係る装置(30)であって、
上記対物系(16)が、少なくとも0.5、0.95、1.2、又は、1.4なる数値開口を有することを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1~6のうち一項に係る装置(30)であって、
上記赤外レーザ源(1)は、1000nmから0.1mmの範囲又は1300nmから0.05mmの範囲の波長を有することを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1~7のうち一項に係る装置(30)であって、
上記標本チャンバ(17)が、第1標本チャンバ閉じ込め面を伴う試料ホルダと、その試料ホルダ上にあり規定標本厚をもたらす少なくとも1個のスペーサと、第2チャンバ閉じ込め面を伴う冷却装置(18)と、を備え、そのスペーサがそれら第1及び第2閉じ込め面間に設けられたことを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項8に係る装置(30)であって、
上記冷却装置の第2のチャンバ閉じ込め面は、熱伝導性の透明材料を含み、及び/又は冷却装置(18)は、伝導性素材を冷却するように適合された少なくとも1つの冷却素子(31)を更に含む、
装置。
【請求項10】
請求項8又は9に係る装置(30)であって、
上記冷却装置(18)が、冷却素子(31)から除熱するよう工夫された熱管理システム(32)を備えることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1~10のうち一項に係る装置(30)であって、
上記顕微鏡(25)の対物系(16)を介した上記試料(24)の直接又は間接検査をサポートする明又は暗視野照明(19)が設けられたことを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1~11のうち一項に係る装置(30)であって、
データ処理装置(20)が設けられ冷却装置(18)、上記顕微鏡(25)、シャッタ(11)及び上記光源(1)に接続されており、それによって、その冷却装置(18)の冷却強度及び上記光ビーム(26,28)の強度を、相互依存的に及び/又は上記試料(24)の撮像情報に応じ設定できることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12に係る装置(30)であって、
上記データ処理装置(20)が、更に、上記光ビーム(26)の上記手段(8)に接続されており、それにより上記試料(24)内を通る光ビーム(26)の制御下運動がもたらされることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項1~13のうち一項に係る装置(30)であって、
記手段(8)が少なくとも1個の空間光変調器を有することを特徴とする装置。
【請求項15】
試料(24)内の無接触有向流体力学流の同時的撮像兼遂行方法であって、
光源(14)によって提供される可視光を使用して、顕微鏡(25)の対物系(16)を介して試料(24)の蛍光イメージングを行い、
赤外レーザ(1)からのレーザービーム(26)によって、試料(24)の内部及び/又は表面を動的に加熱し、
光ビーム(26)を試料(24)の指定された位置に可変的に導くことにより、加熱される試料(24)の指定された位置を操作することにより、試料(24)内の熱パターンを変化させることにより、試料(24)内に流体力学的流れを誘発し、
赤外レーザ(1)の赤外線光を、加熱される試料(24)の指定位置を操作する手段(8)の下流にある顕微鏡(25)の光路に結合し、
赤外レーザ源(1)のビーム(26)を、顕微鏡(25)の対物系(16)を通して試料(24)に導き、
上記対物系(16)として浸漬対物系を用い、
上記対物系(16)と上記試料(24)との間に重水を浸漬液として用いる、
方法。
【請求項16】
請求項15に係る方法であって、
上記光ビーム(26)の焦点体積を、音響光デフレクタ、準静的ガルバノメータスキャナ、共鳴ガルバノメータスキャナ、又は、空間光変調器によって、上記試料(24)にてある経路沿いに動かすことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15又は16に係る方法であって、
上記光ビーム(26)の経路上にあるシャッタ手段(11)を閉ざすことで上記試料(24)の加熱を中断させ、ある明確規定温度にて流体力学流を蛍光撮像により観測することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1517のうち一項に係る方法であって、
上記指定位置を、上記光ビーム(26)によりある経路又は軌跡に沿い反復的に動かすことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項15~18のうち一項に係る方法であって、
加熱された特定の位置の軌道は、試料(24)全体にわたって均一な温度分布が達成されるように選択されることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1519のうち一項に係る方法であって、
上記少なくとも1個の光源(1)で、上記試料(24)、伝熱粒子、及び/又は、その試料(24)内又は上の吸熱層のうち、少なくとも一つを加熱することを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1520のうち一項に係る方法であって、
固体プローブ粒子をプローブとして用いず上記試料を加熱することを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項1521のうち一項に係る方法であって、
流れ付勢刺激に対する上記試料の応答を記録し、標本の物質特性及び/又は現象学的応答係数でありその標本の分類を助けうるものを推論しうるようにすることを、特徴とする方法。
【請求項23】
請求項15~22のうち一項に係る方法であって、
振動流を使用して、標本を変更することなく、粘弾性物質の物質状態を調べることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項15~23のうち一項に係る方法であって、
試料の第1の位置と第2の位置との間で熱を動的に変化させることにより、試料の流体の往復輸送又は振動を誘発することを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項15~24のうち一項に係る方法であって、
赤外線放射を単方向に複数回スキャンし、次に単方向スキャンを逆にすることにより、試料内に特定の周波数で振動流を誘導することを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項15~25のうち一項に係る方法であって、
粒子追跡は、マーカの追跡によって実行され、マーカの軌跡のフーリエ解析が続く、ことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項1526のうち一項に係る方法であって、
上記試料(24)を一連の流れ場に供し、それによりその試料内の1個又は複数個の粒子を特定の行先に行かせることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項1527のうち一項に係る方法であって、
一通り又は複数通りの粒子位置の相対変化を、流れ場の各回適用後に求めることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項1528のうち一項に係る方法であって、
流れ場を適用することで、部分的又は全面的に位置特定された粒子に関し、空間的行先を連続的に又は離散的な時間ステップにて変化させることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項1529のうち一項に係る方法であって、
流れ場を計算し適用することで、少なくとも1個の粒子を所望経路に沿い動かすことを特徴とする方法。
【請求項31】
命令群が備わるコンピュータプログラム製品であって、
そのプログラムがコンピュータによって実行されたときに、そのコンピュータが
料(24)の指定個所を操作する手段(8)を、その指定個所の所定軌跡に従い制御するステップと、
冷却装置(18)上での温度読出し値を受け取るステップと、
顕微鏡(25)から撮像データを受け取るステップと、
光源からパワー出力データを受け取るステップと、
上記冷却装置(18)の冷却強度及び光ビーム(26,28)の強度を、相互依存的に及び/又は試料(24)の撮像情報に応じ制御するステップと、
を有する請求項15~30のうち一項に係る方法を実行することとなるコンピュータプログラム製品。
【請求項32】
命令群が備わるコンピュータ可読格納媒体であって、コンピュータによって実行されたときに、そのコンピュータが
料(24)の指定個所を操作する手段(8)を、その指定個所の所定軌跡に従い制御するステップと、
冷却装置(18)上での温度読出し値を受け取るステップと、
顕微鏡(25)から撮像データを受け取るステップと、
光源からパワー出力データを受け取るステップと、
上記冷却装置(18)の冷却強度及び光ビーム(26,28)の強度を、相互依存的に及び/又は試料(24)の撮像情報に応じ制御するステップと、
を有する請求項15~30のうち一項に係る方法を実行することとなるコンピュータ可読格納媒体。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、請求項1に係る試料内無接触有向流体力学流の同時的撮像兼遂行装置、請求項15に係る試料内無接触有向流体力学流の同時的撮像兼遂行方法、請求項31に係るコンピュータプログラム製品、並びに請求項32に係るコンピュータ可読格納媒体を指向している。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明によれば、このタスクが、請求項1に係る装置、請求項15に係る方法、請求項3に係るコンピュータプログラム製品、並びに請求項3に係るコンピュータ可読格納媒体により解決される。