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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090172
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
H02M3/28 C
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205888
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】種村 恭佑
(72)【発明者】
【氏名】ゴー・テックチャン
(72)【発明者】
【氏名】戸村 修二
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS01
5H730BB27
5H730DD03
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE03
5H730EE07
5H730EE13
5H730EE57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD21
5H730FG05
5H730XC09
5H730XX02
5H730XX15
5H730XX22
5H730XX35
5H730ZZ16
(57)【要約】
【課題】本発明は、電力変換装置に起動時に流れる電流を抑制することを目的とする。
【解決手段】第1スイッチング回路10および第2スイッチング回路12はトランス18によって結合する。第1スイッチング回路10は、スイッチングブリッジX1およびY1を備える。第2スイッチング回路12は、スイッチングブリッジX2およびY2を備える。各スイッチングブリッジは、直列に接続された2つのスイッチング素子を備える。第2スイッチング回路12は、スイッチングブリッジX2およびY2の両端に接続された中間コンデンサCMを備える。起動モードの動作では、各スイッチングブリッジが備える一方のスイッチング素子は、他方のスイッチング素子に対して所定の位相遅れでスイッチングをする。定常モードの動作では、各スイッチングブリッジが備える一方のスイッチング素子は、他方のスイッチング素子に対してオンとオフを反転したスイッチングをする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスによって結合するプライマリ回路およびセカンダリ回路を備え、
前記プライマリ回路は、
直列に接続された2つのスイッチング素子を備えるプライマリブリッジを備え、
前記セカンダリ回路は、
直列に接続された2つのスイッチング素子を備えるセカンダリブリッジと、
前記セカンダリブリッジの両端に接続された中間コンデンサと、を備え、
前記プライマリブリッジおよび前記セカンダリブリッジは、起動時および定常状態時に、それぞれ、起動モードおよび定常モードで動作し、
前記起動モードの動作では、前記プライマリブリッジおよび前記セカンダリブリッジのそれぞれが備える一方のスイッチング素子は、他方のスイッチング素子に対して所定の位相遅れでスイッチングをし、
前記定常モードの動作では、前記プライマリブリッジおよび前記セカンダリブリッジのそれぞれが備える一方のスイッチング素子は、他方のスイッチング素子に対してオンとオフを反転したスイッチングをすることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置であって、前記起動モードの動作では、前記プライマリブリッジおよび前記セカンダリブリッジのそれぞれが備える各スイッチング素子は、オンとなる時間が時間経過と共に増加するスイッチングをすることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記中間コンデンサの充電電圧が所定の目標値に達するまでの間、前記プライマリブリッジおよび前記セカンダリブリッジは、前記起動モードの動作をし、
前記中間コンデンサの充電電圧が前記目標値に達した時から所定の休止時間の間、前記プライマリブリッジおよび前記セカンダリブリッジは、スイッチングを停止し、
前記中間コンデンサの充電電圧が前記目標値に達した時から前記休止時間が経過した後に、前記プライマリブリッジおよび前記セカンダリブリッジは、前記定常モードの動作をすることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置であって、
前記プライマリ回路は、
前記プライマリブリッジが備える2つのスイッチング素子の接続点に接続されたプライマリ巻線を備え、
前記中間コンデンサは、直列接続された第1分割コンデンサおよび第2分割コンデンサを備え、
前記セカンダリ回路は、
前記セカンダリブリッジが備える2つのスイッチング素子の接続点に接続され、前記プライマリ巻線と共に前記トランスを構成するセカンダリ巻線と、
前記セカンダリ巻線のタップと、前記第1分割コンデンサおよび前記第2分割コンデンサの接続点との間に接続されたリアクトルと、を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置であって、
前記プライマリブリッジの両端における入出力ポート、前記プライマリ巻線のタップと前記プライマリブリッジの一端との間における入出力ポート、および、前記中間コンデンサの両端における入出力ポートのうち少なくとも1つに電力源が接続され、
前記電力源が接続されていない入出力ポートがある場合には、その入出力ポートに負荷回路が接続されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置であって、
前記プライマリ回路は、並列接続された複数の前記プライマリブリッジを備え、
前記セカンダリ回路は、並列接続された複数の前記セカンダリブリッジを備え、
前記中間コンデンサは、直列接続された第1分割コンデンサおよび第2分割コンデンサを備え、
前記プライマリ回路は、
複数の前記プライマリブリッジのうちの1つにおける2つのスイッチング素子の接続点と、複数の前記プライマリブリッジのうちの他の1つにおける2つのスイッチング素子の接続点との間に接続されたプライマリ巻線を備え、
前記セカンダリ回路は、
複数の前記セカンダリブリッジのうちの1つにおける2つのスイッチング素子の接続点と、複数の前記セカンダリブリッジのうちの他の1つにおける2つのスイッチング素子の接続点との間に接続され、前記プライマリ巻線と共に前記トランスを構成するセカンダリ巻線と、
前記セカンダリ巻線のタップと、前記第1分割コンデンサおよび前記第2分割コンデンサの接続点との間に接続されたリアクトルと、を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電力変換装置であって、
各前記プライマリブリッジの両方の並列接続端における入出力ポート、前記プライマリ巻線のタップと各前記プライマリブリッジの一方の並列接続端との間における入出力ポート、および、前記中間コンデンサの両端における入出力ポートのうち少なくとも1つに電力源が接続され、
前記電力源が接続されていない入出力ポートがある場合には、その入出力ポートに負荷回路が接続されることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関し、特に、起動時の動作に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両に搭載されたバッテリから電力供給網を介して、一般家庭、オフィス等に電力を供給する技術につき研究が行われている。また、商用電源システムから独立した局所的な電力供給網についても研究が行われている。このような電力供給技術では、バッテリと電気機器との間の電力伝送経路に電力変換装置が用いられる。電力変換装置には、交流電力を直流電力に変換し、あるいは直流電力を交流電力に変換するAC/DC電力変換装置や、直流電圧のレベルを変換するDC/DC電力変換装置がある。
【0003】
電力変換装置には、特許文献1や非特許文献1に記載されているように、2つのスイッチング回路をトランスによって結合したものがある。これらの文献に記載の電力変換装置では、負荷に供給する電力を安定化させるためにコンデンサが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-60285号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「HVDC 用コンバータのディジタルソフトスタートについて」平成26年度電気・情報関係学会九州支部連合大会 12-2P-16 坂井努 丸田英徳 柴田裕一郎 黒川不二雄 廣瀬圭一
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、電力変換装置には、負荷に供給する電力を安定させるためのコンデンサが用いられる。したがって、電力変換装置の動作が停止した状態から動作を開始する起動時には、コンデンサを充電するための電流が電力変換装置に流れる。この起動時電流が大きいと、電力変換装置に用いられている部品の寿命が短くなることがある。
【0007】
電力変換装置の起動時の制御については、従来から様々な方法が提案されている。例えば非特許文献1には、電力変換装置としてのDC/DCコンバータについてソフトスタートを行うことが記載されている。しかし、電力変換装置の回路構成によっては、起動時電流を十分に抑制することが困難となることがある。
【0008】
本発明は、電力変換装置に起動時に流れる電流を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、トランスによって結合するプライマリ回路およびセカンダリ回路を備え、前記プライマリ回路は、直列に接続された2つのスイッチング素子を備えるプライマリブリッジを備え、前記セカンダリ回路は、直列に接続された2つのスイッチング素子を備えるセカンダリブリッジと、前記セカンダリブリッジの両端に接続された中間コンデンサと、を備え、前記プライマリブリッジおよび前記セカンダリブリッジは、起動時および定常状態時に、それぞれ、起動モードおよび定常モードで動作し、前記起動モードの動作では、前記プライマリブリッジおよび前記セカンダリブリッジのそれぞれが備える一方のスイッチング素子は、他方のスイッチング素子に対して所定の位相遅れでスイッチングをし、前記定常モードの動作では、前記プライマリブリッジおよび前記セカンダリブリッジのそれぞれが備える一方のスイッチング素子は、他方のスイッチング素子に対してオンとオフを反転したスイッチングをすることを特徴とする。
【0010】
望ましくは、前記起動モードの動作では、前記プライマリブリッジおよび前記セカンダリブリッジのそれぞれが備える各スイッチング素子は、オンとなる時間が時間経過と共に増加するスイッチングをする。
【0011】
望ましくは、前記中間コンデンサの充電電圧が所定の目標値に達するまでの間、前記プライマリブリッジおよび前記セカンダリブリッジは、前記起動モードの動作をし、前記中間コンデンサの充電電圧が前記目標値に達した時から所定の休止時間の間、前記プライマリブリッジおよび前記セカンダリブリッジは、スイッチングを停止し、前記中間コンデンサの充電電圧が前記目標値に達した時から前記休止時間が経過した後に、前記プライマリブリッジおよび前記セカンダリブリッジは、前記定常モードの動作をする。
【0012】
望ましくは、前記プライマリ回路は、前記プライマリブリッジが備える2つのスイッチング素子の接続点に接続されたプライマリ巻線を備え、前記中間コンデンサは、直列接続された第1分割コンデンサおよび第2分割コンデンサを備え、前記セカンダリ回路は、前記セカンダリブリッジが備える2つのスイッチング素子の接続点に接続され、前記プライマリ巻線と共に前記トランスを構成するセカンダリ巻線と、前記セカンダリ巻線のタップと、前記第1分割コンデンサおよび前記第2分割コンデンサの接続点との間に接続されたリアクトルと、を備える。
【0013】
望ましくは、前記プライマリブリッジの両端における入出力ポート、前記プライマリ巻線のタップと前記プライマリブリッジの一端との間における入出力ポート、および、前記中間コンデンサの両端における入出力ポートのうち少なくとも1つに電力源が接続され、前記電力源が接続されていない入出力ポートがある場合には、その入出力ポートに負荷回路が接続される。
【0014】
望ましくは、前記プライマリ回路は、並列接続された複数の前記プライマリブリッジを備え、前記セカンダリ回路は、並列接続された複数の前記セカンダリブリッジを備え、前記中間コンデンサは、直列接続された第1分割コンデンサおよび第2分割コンデンサを備え、前記プライマリ回路は、複数の前記プライマリブリッジのうちの1つにおける2つのスイッチング素子の接続点と、複数の前記プライマリブリッジのうちの他の1つにおける2つのスイッチング素子の接続点との間に接続されたプライマリ巻線を備え、前記セカンダリ回路は、複数の前記セカンダリブリッジのうちの1つにおける2つのスイッチング素子の接続点と、複数の前記セカンダリブリッジのうちの他の1つにおける2つのスイッチング素子の接続点との間に接続され、前記プライマリ巻線と共に前記トランスを構成するセカンダリ巻線と、前記セカンダリ巻線のタップと、前記第1分割コンデンサおよび前記第2分割コンデンサの接続点との間に接続されたリアクトルと、を備える。
【0015】
望ましくは、各前記プライマリブリッジの両方の並列接続端における入出力ポート、前記プライマリ巻線のタップと各前記プライマリブリッジの一方の並列接続端との間における入出力ポート、および、前記中間コンデンサの両端における入出力ポートのうち少なくとも1つに電力源が接続され、前記電力源が接続されていない入出力ポートがある場合には、その入出力ポートに負荷回路が接続される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電力変換装置に起動時に流れる電流を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る電力変換装置の構成を示す図である。
図2】定常モードおよび起動モードのそれぞれにおける制御信号を示す図である。
図3】スタート時における各制御信号、各電圧および各電流の時間波形の概形を示す図である。
図4】第2実施形態に係る電力変換装置の構成を示す図である。
図5】起動モードにおいて制御部が出力する制御信号を示す図である。
図6】第3実施形態に係る電力変換装置の構成を示す図である。
図7】第2実施形態に係る電力変換装置についてのシミュレーション結果を示す図である。
図8】第2実施形態に係る電力変換装置についてのシミュレーション結果を示す図である。
図9】第2実施形態に係る電力変換装置についてのシミュレーション結果を示す図である。
図10】第2実施形態に係る電力変換装置についてのシミュレーション結果を示す図である。
図11】第2実施形態に係る電力変換装置についてのシミュレーション結果を示す図である。
図12】第2実施形態に係る電力変換装置についての実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
各図を参照して本発明の実施形態について説明する。複数の図面に示された同一の構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。本明細書における「上」「下」等の方向を示す用語は、回路図における方向を示す。これらの方向を示す用語は、各構成要素を配置する際の姿勢を限定するものではない。
【0019】
図1には、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置100の構成が示されている。電力変換装置100は、第1スイッチング回路10、第2スイッチング回路12および制御部30を備えている。第1スイッチング回路10は、2つの入出力ポート(2対の端子)として、正極端子TP1および負極端子TN1と、正極端子TP2および負極端子TN2を備えている。第2スイッチング回路12は、1つの入出力ポートとして、正極端子TP3および負極端子TN3を備えている。第1スイッチング回路10および第2スイッチング回路12は、それぞれ、トランス18を構成するプライマリ巻線14およびセカンダリ巻線16を備えており、トランス18によって結合している。
【0020】
制御部30は、第1スイッチング回路10および第2スイッチング回路12のスイッチングを制御する。第1スイッチング回路10および第2スイッチング回路12がスイッチングをすることで、正極端子TP1と負極端子TN1との間、正極端子TP2と負極端子TN2との間、正極端子TP3と負極端子TN3との間の相互間で、電力の受け渡しが行われる。
【0021】
第1スイッチング回路10は、スイッチングブリッジX1、スイッチングブリッジY1、プライマリ巻線14、リアクトルL1、第1コンデンサC1および第2コンデンサC2を備えている。スイッチングブリッジX1は、直列に接続されたスイッチング素子S11およびS12を備え、スイッチングブリッジY1は、直列に接続されたスイッチング素子S13およびS14を備えている。
【0022】
本願明細書および図面に示される各スイッチング素子は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)であってよい。2つのIGBTが直列接続されるとは、一方のIGBTのエミッタ端子と他方のIGBTのコレクタ端子とが接続されることをいう。2つのMOSFETが直列接続されるとは、一方のMOSFETのソース端子が、他方のMOSFETのドレイン端子に接続されることをいう。なお、各スイッチング素子は、所定の駆動回路(図示せず)を介して制御信号によって制御されてよい。
【0023】
スイッチングブリッジX1、スイッチングブリッジY1および第2コンデンサC2は、並列接続されている。スイッチングブリッジX1、スイッチングブリッジY1および第2コンデンサC2の上側の並列接続端には正極端子TP2が接続され、下側の並列接続端には負極端子TN1およびTN2が接続されている。
【0024】
プライマリ巻線14の一端は、スイッチングブリッジX1が備えるスイッチング素子S11およびS12の接続点に接続され、プライマリ巻線14の他端は、スイッチングブリッジY1が備えるスイッチング素子S13およびS14の接続点に接続されている。リアクトルL1の一端はプライマリ巻線14の中途点に接続され、他端は正極端子TP1に接続されている。ここで、巻線の中途点はタップとも称される。中途点は、巻線を構成する導線の中途の点をいい、巻線から引き出されてもよい。正極端子TP1と負極端子TN1との間には第1コンデンサC1が接続されている。
【0025】
第2スイッチング回路12は、スイッチングブリッジX2、スイッチングブリッジY2、セカンダリ巻線16、リアクトルL2、および中間コンデンサCMを備えている。スイッチングブリッジX2は、直列に接続されたスイッチング素子S21およびS22を備え、スイッチングブリッジY2は、直列に接続されたスイッチング素子S23およびS24を備えている。中間コンデンサCMは、直列に接続された第1分割コンデンサCM1および第2分割コンデンサCM2を備えている。
【0026】
スイッチングブリッジX2、スイッチングブリッジY2および中間コンデンサCMは、並列接続されている。スイッチングブリッジX1、スイッチングブリッジY1および中間コンデンサCMの上側の並列接続端には正極端子TP3が接続され、下側の並列接続端には負極端子TN3が接続されている。
【0027】
セカンダリ巻線16の一端は、スイッチング素子S21およびS22の接続点に接続され、セカンダリ巻線16の他端は、スイッチング素子S23およびS24の接続点に接続されている。リアクトルL2の一端はセカンダリ巻線16の中途点に接続され、他端は第1分割コンデンサCM1と第2分割コンデンサCM2の接続端に接続されている。
【0028】
このように、電力変換装置100は、トランス18によって結合するプライマリ回路およびセカンダリ回路として、第1スイッチング回路10および第2スイッチング回路12を備えている。第1スイッチング回路10は、直列に接続された2つのスイッチング素子を備えるプライマリブリッジとして、スイッチングブリッジX1およびY1を備えている。第2スイッチング回路12は、直列に接続された2つのスイッチング素子を備えるセカンダリブリッジとして、スイッチングブリッジX2およびY2を備えている。また、第2スイッチング回路12は、スイッチングブリッジX2およびY2の両端に接続された中間コンデンサCMを備えている。
【0029】
電力変換装置100は、起動モードまたは定常モードのいずれかのモードで動作する。起動モードは、第1コンデンサC1および第2コンデンサC2の両端の電圧が0でない一方で、中間コンデンサCMの両端の電圧が0である初期状態から起動するときの動作モードである。定常モードは、中間コンデンサCM、第1コンデンサC1および第2コンデンサC2のそれぞれの両端の電圧が収束し、電力変換装置100が定常状態で動作しているときの動作モードである。定常モードの動作では、正極端子TP1と負極端子TN1との間、正極端子TP2と負極端子TN2との間、および正極端子TP3と負極端子TN3との間の相互間で、電力の受け渡しが行われるようなスイッチングが行われる。
【0030】
以下に説明するように、起動モードの動作では、スイッチングブリッジX1、Y1、X2およびY2のそれぞれが備える一方のスイッチング素子は、他方のスイッチング素子に対して所定の位相遅れ(本実施形態では180°)でスイッチングをする。定常モードの動作では、スイッチングブリッジX1、Y1、X2およびY2のそれぞれが備える一方のスイッチング素子は、他方のスイッチング素子に対してオンとオフを反転したスイッチングをする。
【0031】
起動モードおよび定常モードのいずれにおいても、第1スイッチング回路10が備えるスイッチング素子S11~S14は、それぞれ、第2スイッチング回路12が備えるスイッチング素子S21~S24と同期してスイッチングする。すなわち、スイッチング素子S11、S12、S13およびS14がオンであるときは、それぞれ、スイッチング素子S21、S22、S23およびS24もまたオンになり、スイッチング素子S11、S12、S13およびS14がオフであるときは、それぞれ、スイッチング素子S21、S22、S23およびS24もまたオフになる。
【0032】
図2(a)には、定常モードにおいて制御部30が各スイッチング素子に出力する制御信号が示されている。横軸は時間を示し、縦軸は制御信号の値を示す。ここで、制御信号g11、g12、g13、g21、g22、g23およびg24は、それぞれ、S11、S12、S13、S21、S22、S23およびS24を制御する信号である。制御信号の値がハイであるときは、その制御信号に対応するスイッチング素子はオンである。また、制御信号の値がローであるときは、その制御信号に対応するスイッチング素子はオフである。
【0033】
制御信号g11およびg14は同一のタイミングでローからハイになり、ハイからローになる。制御信号g12およびg13は同一のタイミングでローからハイになり、ハイからローになる。制御信号g21、g22、g23およびg24は、それぞれ、制御信号g11、g12、g13およびg14と同一のタイミングでローからハイになり、ハイからローになる。
【0034】
異なる観点から各制御信号を説明すると、次のようになる。制御信号g11およびg12は交互にハイ、ローが切り替わる。すなわち、制御信号g11がハイであるときは、制御信号g12はローになり、制御信号g11がローであるときは、制御信号g12はハイになる。同様に、制御信号g13およびg14は交互にハイ、ローが切り替わる。制御信号g21およびg22は交互にハイ、ローが切り替わり、制御信号g23およびg24は、交互にハイ、ローが切り替わる。
【0035】
したがって、定常モードにおいて各スイッチング素子は、次のように動作する。スイッチングブリッジX1を構成するスイッチング素子S11およびS12は、交互にオンオフする。すなわち、スイッチング素子S11がオンであるときは、スイッチング素子S12はオフになり、スイッチング素子S11がオフであるときは、スイッチング素子S12はオンになる。同様に、スイッチングブリッジY1を構成するスイッチング素子S13およびS14は交互にオンオフする。スイッチングブリッジX2を構成するスイッチング素子S21およびS22は交互にオンオフし、スイッチングブリッジY2を構成するスイッチング素子S23およびS24は交互にオンオフする。
【0036】
定常モードにおける電力変換装置100の動作について説明する。ここでは、正極端子TP1および負極端子TN1と、正極端子TP2および負極端子TN2に電圧源が接続され、正極端子TP3および負極端子TN3に負荷回路が接続されているものとする。
【0037】
スイッチングブリッジX1およびY1がスイッチングすることで、リアクトルL1に誘導起電力が発生し、第1コンデンサC1の両端の電圧に誘導起電力が加えられた電圧が、第2コンデンサC2に印加される。あるいは、第2コンデンサC2の両端の電圧から誘導起電力が差し引かれた電圧が、第1コンデンサC1に印加される。第1コンデンサC1の両端の電圧は、正極端子TP1と負極端子TN1との間の第1電圧V1となり、第2コンデンサC2の両端の電圧は、正極端子TP2と負極端子TN2との間の第2電圧V2となる。第1電圧V1に対する第2電圧V2の比率は、スイッチング素子S11およびS14のオンデューティ比で定まる。ここで、オンデューティ比とは、スイッチング周期に対するオンになる時間の比率をいう。
【0038】
スイッチングブリッジX1およびY1のスイッチングによって、第2電圧V2に基づく交流電圧がプライマリ巻線14に印加され、プライマリ巻線14に印加された交流電圧に応じた交流電圧がセカンダリ巻線16に現れる。スイッチング素子S21~S24は、それぞれ、スイッチング素子S11~S14と同期してスイッチングする。これによって、セカンダリ巻線16の両端に現れた交流電圧は、スイッチングブリッジX2およびY2によって直流電圧に変換されて中間コンデンサCMの両端に印加される。
【0039】
リアクトルL2には、スイッチング素子S21およびS24のオンデューティ比に応じた誘導起電力が発生する。セカンダリ巻線16の中途点よりも上側の部分に発生した電圧、リアクトルL2の誘導起電力、およびセカンダリ巻線16の中途点よりも下側の部分に発生した電圧によって、第1分割コンデンサCM1および第2分割コンデンサCM2が充電され、あるいは負荷回路に電流が流れる。
【0040】
定常モードでは、各スイッチング素子のオンデューティ比、トランス18の巻線比等に応じた電圧が、正極端子TP3および負極端子TN3に現れる。ここで、巻線比とは、プライマリ巻線14の巻き数に対するセカンダリ巻線16の巻き数の比率をいう。
【0041】
図2(b)には、起動モードにおいて制御部30が各スイッチング素子に出力する制御信号が示されている。定常モードと同様、制御信号g11およびg14は同一のタイミングでローからハイになり、ハイからローになる。制御信号g12およびg13は同一のタイミングでローからハイになり、ハイからローになる。制御信号g21~g24は、それぞれ、制御信号g11~g14と同一のタイミングでローからハイになり、ハイからローになる。
【0042】
制御信号g12は、制御信号g11に対して180°だけ位相が遅れている。また、制御信号g13は、制御信号g14に対して180°だけ位相が遅れている。これによって、スイッチング素子S11およびS14がオンであり、スイッチング素子S12およびS13がオフである第1状態、スイッチング素子S11~S14がオフである第2状態、スイッチング素子S11およびS14がオフであり、スイッチング素子S12およびS13がオンである第3状態、スイッチング素子S11~S14がオフである第2状態を動作の一巡として、この動作が巡回的に繰り返される。すなわち、第1状態、第2状態、第3状態、第2状態、第1状態、第2状態、・・・・・のように、第1状態と第3状態との間、および第3状態と第1状態との間に第2状態が介在するように、第1状態および第3状態が交互に繰り返される。
【0043】
起動モードにおける電力変換装置100の動作について説明する。ここでは、正極端子TP1および負極端子TN1に第1電圧源が接続され、正極端子TP2および負極端子TN2に第2電圧源が接続され、正極端子TP3および負極端子TN3に負荷回路が接続されているものとする。第1コンデンサC1の両端の電圧は、第1電圧源の出力電圧に至っており、第2コンデンサC2の両端の電圧は、第2電圧源の出力電圧に至っているものとする。また、第1分割コンデンサCM1および第2分割コンデンサCM2の両端の電圧は0であるものとする。
【0044】
第1状態では、第1スイッチング回路10におけるスイッチング素子S11およびS14と、第2スイッチング回路12におけるスイッチング素子S21およびS24がオンになり、その他のスイッチング素子がオフになる。これによって、正極端子TP2、スイッチング素子S11、プライマリ巻線14およびスイッチング素子S14を通って負極端子TN2に至る経路に電流J1が流れる。これと共に、プライマリ巻線14には、第2電圧V2が印加される。また、セカンダリ巻線16の上端から、スイッチング素子S21、中間コンデンサCMおよびスイッチング素子S24を通ってセカンダリ巻線16の下端に戻る電流J2が流れる。電流J2によって、中間コンデンサCMを構成する第1分割コンデンサCM1および第2分割コンデンサCM2が充電される。
【0045】
第2状態では、スイッチング素子S11~S14およびS21~S22がオフになる。 第3状態では、第1スイッチング回路10におけるスイッチング素子S12およびS13と、第2スイッチング回路12におけるスイッチング素子S22およびS23がオンになり、その他のスイッチング素子がオフになる。これによって、正極端子TP2、スイッチング素子S13、プライマリ巻線14およびスイッチング素子S12を通って負極端子TN2に至る経路に電流J3が流れる。これと共に、プライマリ巻線14には、第2電圧V2が印加される。ただし、プライマリ巻線14に印加される電圧の極性は、第1状態とは逆となる。また、セカンダリ巻線16の下端から、スイッチング素子S23、中間コンデンサCMおよびスイッチング素子S22を通ってセカンダリ巻線16の上端に戻る電流J4が流れる。電流J4によって、中間コンデンサCMを構成する第1分割コンデンサCM1および第2分割コンデンサCM2が充電される。
【0046】
制御部30は、各スイッチング素子のオンデューティ比を一定としてもよいし、各スイッチング素子のオンデューティ比を、時間経過と共に増加させる制御を行ってもよい。オンデューティ比の最大値は0.5であってよい。正極端子TP3と負極端子TN3との間には電圧計(図示せず)が接続されており、電圧計が正極端子TP3と負極端子TN3との間の第3電圧V3の測定値を制御部30に出力する。制御部30は、中間コンデンサCMの両端の電圧、すなわち第3電圧V3が増加し、第3電圧V3が目標値に達したときに起動モードでの制御を停止する。
【0047】
本実施形態に係る電力変換装置100は、第1スイッチング回路10および第2スイッチング回路12のスイッチングが停止した停止状態から、定常モードで動作する状態に至るまでのスタート時に、最初に起動モードで動作し、停止状態を経て定常モードの動作を開始する。図3には、スタート時における各制御信号g11、g21、g12、g22、g13、g23、g14およびg24の時間波形と、第1電圧V1、第2電圧V2、第1電流I1および第2電流I2の時間波形の概形が示されている。ここで、第1電流I1は、正極端子TP1から流入する電流であり、第2電流I2は、正極端子TP2から流入する電流である。
【0048】
時刻t=t0以降に制御部30は、電力変換装置100を起動モードで動作させるための各制御信号を、各スイッチング素子S11~S14および各スイッチング素子S21~S24に出力する。すなわち、制御部30は、図2(b)に示された各制御信号を、各スイッチング素子に出力する。これによって、電力変換装置100は起動モードで動作する。制御部30は、第3電圧V3が目標値VTに達したか否かを判定し、第3電圧V3が目標値VTに達していないときは、電力変換装置100を起動モードで動作させるための各制御信号を引き続き出力する。制御部30は、第3電圧V3が目標値VTに達したときは、各制御信号をローにし、各スイッチング素子をオフにする。図3では、時刻t=t1に第3電圧V3が目標値VTに達し、制御部30は、各スイッチング素子をオフにする。このように、電力変換装置100は、時刻t=t0~t=t1の起動モード期間に、起動モードで動作する。
【0049】
時刻t=t1から休止時間T2が経過する休止期間の間、制御部30は、各スイッチング素子をオフに維持する。時刻t=t1から休止時間T2が経過した時刻t=t2以降に、制御部30は、電力変換装置100を定常モードで動作させるための各制御信号を各スイッチング素子に出力する。すなわち、制御部30は、図2(a)に示された各制御信号と同様の各制御信号を、各スイッチング素子に出力する。これによって、時刻t=t2以降の定常モード期間に、電力変換装置100は定常モードで動作する。
【0050】
電力変換装置100の起動時に、図2(a)に示される定常モードのスイッチングを行ってしまうと、各スイッチング素子のオンデューティ比が0.5から離れた値になる程、プライマリ巻線14およびセカンダリ巻線16に流れる電流が大きくなる。これによって、中間コンデンサCMに流れる電流が大きくなってしまう。そこで、図2(b)に示される起動モードのスイッチングを行うことで、スタート時において中間コンデンサCMに流れる電流が抑制される。その原理は、第1状態と第3状態との間に第2状態を介在させると共に、1周期における第1状態および第3状態に対応する時間を短くすることで、第1状態および第3状態において、プライマリ巻線14およびセカンダリ巻線16に流れる電流が抑制されることにある。
【0051】
図3に示されているように、第3電圧V3が0から目標値VTに達するまでの間、電力変換装置100は起動モードで動作し、第3電圧V3が目標値VTに達してから休止時間T2が経過するまでの間、電力変換装置100はスイッチングを停止する。その後に、電力変換装置100が定常モードで動作することで、中間コンデンサCMに流れる電流が抑制される。
【0052】
なお、上記では、正極端子TP1および負極端子TN1に電力源として第1電圧源が接続され、正極端子TP2および負極端子TN2に電力源として第2電圧源が接続され、正極端子TP3および負極端子TN3に負荷回路が接続された場合の動作が示された。電力源は、正極端子TP1と負極端子TN1との間、正極端子TP2と負極端子TN2との間、および正極端子TP3と負極端子TN3との間のうち少なくとも1つの端子対(入出力ポート)に接続されていればよい。電力源が接続されていない入出力ポートがある場合には、その入出力ポートに負荷回路が接続されてよい。電力源は二次電池や、商用電源システムとの間で電力を受け渡しする電源装置であってよい。
【0053】
図4には、本発明の第2実施形態に係る電力変換装置101の構成が示されている。電力変換装置101は、3相スイッチング回路10a、XY相スイッチング回路121、YZ相スイッチング回路122、ZX相スイッチング回路123および制御部32を備えている。3相スイッチング回路10aは、2つの入出力ポートとして、正極端子TPaおよび負極端子TNaと、正極端子TPbおよび負極端子TNbを備えている。XY相スイッチング回路121、YZ相スイッチング回路122およびZX相スイッチング回路123のそれぞれは、1つの入出力ポートとして、正極端子TPcおよび負極端子TNcを備えている。
【0054】
XY相スイッチング回路121、YZ相スイッチング回路122およびZX相スイッチング回路123のそれぞれは、第1実施形態における第2スイッチング回路12と同様の構成を有している。XY相スイッチング回路121、YZ相スイッチング回路122およびZX相スイッチング回路123は、それぞれセカンダリ巻線161、162および163を備えている。3相スイッチング回路10aは3つのプライマリ巻線141~143を備えている。プライマリ巻線141、142および143は、それぞれ、XY相スイッチング回路121が備えるセカンダリ巻線161、YZ相スイッチング回路122が備えるセカンダリ巻線162、およびZX相スイッチング回路123が備えるセカンダリ巻線163に結合する。プライマリ巻線141とセカンダリ巻線161はトランス181を構成する。プライマリ巻線142とセカンダリ巻線162はトランス182を構成し、プライマリ巻線142とセカンダリ巻線162はトランス183を構成する。
【0055】
制御部32は、3相スイッチング回路10a、XY相スイッチング回路121、YZ相スイッチング回路122およびZX相スイッチング回路123のスイッチングを制御する。制御部32が各スイッチング回路を制御することにより、正極端子TPaと負極端子TNaとの間、正極端子TPbと負極端子TNbとの間、XY相スイッチング回路121、YZ相スイッチング回路122およびZX相スイッチング回路123のそれぞれにおける正極端子TPcと負極端子TNcとの間の相互間で、電力の受け渡しが行われる。
【0056】
3相スイッチング回路10aは、スイッチングブリッジXa、スイッチングブリッジYa、スイッチングブリッジZa、プライマリ巻線141~143、リアクトルLa1~La3、第1コンデンサCaおよび第2コンデンサCbを備えている。スイッチングブリッジXaは、直列に接続されたスイッチング素子Sa1およびSa2を備えている。スイッチングブリッジYaは、直列に接続されたスイッチング素子Sa3およびSa4を備え、スイッチングブリッジZaは、直列に接続されたスイッチング素子Sa5およびSa6を備えている。
【0057】
スイッチングブリッジXa、スイッチングブリッジYa、スイッチングブリッジZaおよび第2コンデンサCbは並列接続されている。スイッチングブリッジXa、スイッチングブリッジYa、スイッチングブリッジZaおよび第2コンデンサCbの上側の並列接続端には正極端子TPbが接続され、下側の並列接続端には負極端子TNaおよびTNbが接続されている。
【0058】
スイッチング素子Sa1およびSa2の接続点と、スイッチング素子Sa3およびSa4の接続点との間にはプライマリ巻線141が接続されている。スイッチング素子Sa3およびSa4の接続点と、スイッチング素子Sa5およびSa6の接続点との間にはプライマリ巻線142が接続されている。スイッチング素子Sa5およびSa6の接続点と、スイッチング素子Sa1およびSa2の接続点との間にはプライマリ巻線143が接続されている。リアクトルLa1の一端は、プライマリ巻線141の中途点に接続されている。リアクトルLa2の一端は、プライマリ巻線142の中途点に接続され、リアクトルLa3の一端は、プライマリ巻線143の中途点に接続されている。リアクトルLa1~La3のそれぞれの他端は、正極端子Tpaに共通に接続されている。正極端子TPaと負極端子TNaとの間には第1コンデンサCaが接続されている。
【0059】
XY相スイッチング回路121は、スイッチングブリッジA、スイッチングブリッジB、セカンダリ巻線161、リアクトルLb1、および中間コンデンサCcを備えている。スイッチングブリッジAは、直列に接続されたスイッチング素子S1およびS2を備え、スイッチングブリッジBは、直列に接続されたスイッチング素子W3およびW4を備えている。中間コンデンサCcは、直列に接続された第1分割コンデンサCc1および第2分割コンデンサCc2を備えている。
【0060】
スイッチングブリッジA、スイッチングブリッジBおよび中間コンデンサCcは、並列接続されている。スイッチングブリッジA、スイッチングブリッジBおよび中間コンデンサCcの上側の並列接続端には正極端子TPcが接続され、下側の並列接続端には負極端子TNcが接続されている。
【0061】
セカンダリ巻線161の一端は、スイッチングブリッジAが備えるスイッチング素子S1およびS2の接続点に接続され、セカンダリ巻線16の他端は、スイッチングブリッジBが備えるスイッチング素子W3およびW4の接続点に接続されている。リアクトルLb1の一端はセカンダリ巻線161の中途点に接続され、他端は第1分割コンデンサCc1と第2分割コンデンサCc2の接続端に接続されている。
【0062】
YZ相スイッチング回路122は、XY相スイッチング回路121と同様の構成を有している。ただし、説明の便宜上、XY相スイッチング回路121におけるスイッチング素子S1、S2、W3およびW4に対応するスイッチング素子は、それぞれ、スイッチング素子S3、S4、W5およびW6と表記されている。また、XY相スイッチング回路121におけるリアクトルLb1に対応するリアクトルは、リアクトルLb2と表記され、セカンダリ巻線161に対応する巻線は、セカンダリ巻線162と表記されている。
【0063】
ZX相スイッチング回路123もまた、XY相スイッチング回路121と同様の構成を有している。ただし、説明の便宜上、XY相スイッチング回路121におけるスイッチング素子S1、S2、W3およびW4に対応するスイッチング素子は、それぞれ、スイッチング素子S5、S6、W1およびW2と表記されている。また、XY相スイッチング回路121におけるリアクトルLb1に対応するリアクトルは、リアクトルLb3と表記され、セカンダリ巻線161に対応する巻線は、セカンダリ巻線163と表記されている。
【0064】
制御部32は、スイッチング素子Sa1~Sa6をそれぞれ制御する制御信号ga1~ga6を出力する。また、制御部32は、スイッチング素子S1~S6をそれぞれ制御する制御信号g1~g6を出力し、スイッチング素子W1~W6をそれぞれ制御する制御信号gW1~gW6を出力する。
【0065】
このように、電力変換装置101は、プライマリ回路として3相スイッチング回路10aを備えている。また、電力変換装置101は、プライマリ回路にトランスによって結合するセカンダリ回路として、XY相スイッチング回路121、YZ相スイッチング回路122およびZX相スイッチング回路123を備えている。
【0066】
3相スイッチング回路10aは、直列に接続された2つのスイッチング素子を備えるプライマリブリッジとして、スイッチングブリッジXa、YaおよびZaを備えている。 XY相スイッチング回路121、YZ相スイッチング回路122およびZX相スイッチング回路123のそれぞれは、直列に接続された2つのスイッチング素子を備えるセカンダリブリッジとして、スイッチングブリッジAおよびBを備えている。また、各相のスイッチング回路121~123は、スイッチングブリッジAおよびBの両端に接続された中間コンデンサCcを備えている。
【0067】
以下に説明するように、起動モードの動作では、スイッチングブリッジXa、Ya、Za、AおよびBのそれぞれが備える一方のスイッチング素子は、他方のスイッチング素子に対して所定の位相遅れ(本実施形態では180°)でスイッチングをする。定常モードの動作では、スイッチングブリッジXa、Ya、Za、AおよびBのそれぞれが備える一方のスイッチング素子は、他方のスイッチング素子に対してオンとオフを反転したスイッチングをする。
【0068】
電力変換装置102の動作について説明する。ここでは、正極端子TPaおよび負極端子TNaに第1電圧源が接続され、正極端子TPbおよび負極端子TNbに第2電圧源が接続され、正極端子TPcおよび負極端子TNcに負荷回路が接続されているものとする。起動前において第1コンデンサCaの両端の電圧は、第1電圧源の出力電圧に至っており、第2コンデンサCbの両端の電圧は、第2電圧源の出力電圧に至っているものとする。また、起動前において第1分割コンデンサCc1および第2分割コンデンサCc2の両端の電圧は0であるものとする。
【0069】
起動モードおよび定常モードのいずれにおいても、XY相スイッチング回路121が備えるスイッチングブリッジAおよびBは、それぞれ、3相スイッチング回路10aが備えるスイッチングブリッジXaおよびYaと同期してスイッチングする。すなわち、スイッチング素子S1、S2、W3およびW4は、それぞれ、スイッチング素子Sa1、Sa2、Sa3およびSa4と同期してスイッチングをする。同様に、YZ相スイッチング回路122が備えるスイッチングブリッジAおよびBは、それぞれ、3相スイッチング回路10aが備えるスイッチングブリッジYaおよびZaと同期してスイッチングする。ZX相スイッチング回路123が備えるスイッチングブリッジAおよびBは、それぞれ、3相スイッチング回路10aが備えるスイッチングブリッジZaおよびXaと同期してスイッチングする。
【0070】
電力変換装置101の定常モードの動作について説明する。定常モードでは、3相スイッチング回路10aが備えるスイッチングブリッジXa、YaおよびZaのそれぞれにおいて、上下のスイッチング素子が交互にオンオフする。スイッチング素子Sa3のスイッチング位相は、スイッチング素子Sa1に対して120°遅れる。スイッチング素子Sa5のスイッチング位相は、スイッチング素子Sa3に対して120°遅れ、スイッチング素子Sa1のスイッチング位相は、スイッチング素子Sa5に対して120°遅れる。すなわち、スイッチングブリッジYaのスイッチング位相は、スイッチングブリッジXaに対して120°遅れる。スイッチングブリッジZaのスイッチング位相は、スイッチングブリッジYaに対して120°遅れる。スイッチングブリッジXaのスイッチング位相は、スイッチングブリッジZaに対して120°遅れる。
【0071】
定常モードでは、トランス181~183の巻線比、各スイッチング素子のオンデューティ比等に応じた電圧が、および正極端子TPcと負極端子TNcとの間に現れる。
【0072】
次に、電力変換装置101の起動モードの動作について説明する。図5には、起動モードにおいて制御部32が各スイッチング素子に出力する制御信号ga1~ga6が示されている。横軸は時間を示し、縦軸は制御信号の値を示す。ここで、制御信号ga1~ga6は、それぞれ、Sa1~Sa6を制御する信号である。
【0073】
制御信号ga1~ga6のそれぞれは、スイッチング周期ごとにローからハイに立ち上がって、所定のオン時間だけハイとなった後、ローに立ち下がる。制御信号ga3の位相は、制御信号ga1に対して180°遅れる。制御信号ga5の位相は、制御信号ga3に対して120°遅れ、制御信号ga1は、制御信号ga5に対して120°遅れる。
【0074】
制御信号ga2の位相は、制御信号ga1に対して180°遅れる。制御信号ga4の位相は、制御信号ga3に対して180°遅れる。制御信号ga6の位相は、制御信号ga5に対して180°遅れる。
【0075】
これによって、スイッチング素子Sa3は、スイッチング素子Sa1に対して120°遅れた位相でスイッチングする。スイッチング素子Sa5は、スイッチング素子Sa3に対して120°遅れた位相でスイッチングする。スイッチング素子Sa1は、スイッチング素子Sa5に対して120°遅れた位相でスイッチングする。
【0076】
スイッチング素子Sa2は、スイッチング素子Sa1に対して180°遅れた位相でスイッチングする。スイッチング素子Sa4は、スイッチング素子Sa3に対して120°遅れた位相でスイッチングする。スイッチング素子Sa6は、スイッチング素子Sa5に対して180°遅れた位相でスイッチングする。
【0077】
定常モードでは、各スイッチングブリッジにおける上下のスイッチング素子は、互いにオンオフを反転したスイッチングをする。これに対し、起動モードでは、各スイッチングブリッジにおける下側のスイッチング素子は、上側のスイッチング素子に対して180°遅れた位相でスイッチングする。
【0078】
電力変換装置101の起動時に定常モードのスイッチングを行うと、各スイッチング素子のオンデューティ比が0.5から離れた値になる程、プライマリ巻線14iおよびセカンダリ巻線16i(i=1~3)に流れる電流が大きくなり、各相のスイッチング回路12iの中間コンデンサCcに流れる電流が大きくなってしまう。そこで、起動モードのスイッチングを行うことで、起動時において中間コンデンサCcに流れる電流が抑制される。その原理は、各スイッチングブリッジにおける上下のスイッチング素子を別々にオンまたはオフにすると共に各スイッチング素子をオンにする時間を短くすることで、プライマリ巻線14iおよびセカンダリ巻線16iに流れる電流が抑制されることにある。
【0079】
図6には、第3実施形態に係る電力変換装置102の構成が示されている。電力変換装置102は、3相スイッチング回路10a、コンデンサ分割型3相スイッチング回路10bおよび制御部34を備えている。電力変換装置102は、第2実施形態に係る電力変換装置101が備えるXY相スイッチング回路121、YZ相スイッチング回路122およびZX相スイッチング回路123を、コンデンサ分割型3相スイッチング回路10bに置き換えたものである。
【0080】
コンデンサ分割型3相スイッチング回路10bはセカンダリ巻線161~163を備えている。セカンダリ巻線161~163は、それぞれ、3相スイッチング回路10aが備えるプライマリ巻線141~143に結合し、それぞれ、トランス181~183を構成する。
【0081】
制御部34は、スイッチング回路10aおよびコンデンサ分割型スイッチング回路10bのスイッチングを制御する。制御部34が各スイッチング回路を制御することにより、正極端子TPaと負極端子TNaとの間、正極端子TPbと負極端子TNbとの間、コンデンサ分割型3相スイッチング回路10bにおける正極端子TPcと負極端子TNcとの間の相互間で、電力の受け渡しが行われる。
【0082】
コンデンサ分割型3相スイッチング回路10bは、スイッチングブリッジXb、スイッチングブリッジYb、スイッチングブリッジZb、セカンダリ巻線161~163、リアクトルLb1~Lb3、中間コンデンサCcを備えている。中間コンデンサCcは、直列に接続された第1分割コンデンサCc1および第2分割コンデンサCc2を備えている。スイッチングブリッジXbは、直列に接続されたスイッチング素子Sb1およびSb2を備えている。スイッチングブリッジYbは、直列に接続されたスイッチング素子Sb3およびSb4を備え、スイッチングブリッジZbは、直列に接続されたスイッチング素子Sb5およびSb6を備えている。
【0083】
スイッチングブリッジXb、スイッチングブリッジYb、スイッチングブリッジZbおよび中間コンデンサCcは並列接続されている。スイッチングブリッジXb、スイッチングブリッジYb、スイッチングブリッジZbおよび中間コンデンサCcの上側の並列接続端には正極端子TPcが接続され、下側の並列接続端には負極端子TNcが接続されている。
【0084】
スイッチング素子Sb1およびSb2の接続点と、スイッチング素子Sb3およびSb4の接続点との間にはセカンダリ巻線161が接続されている。スイッチング素子Sb3およびSb4の接続点と、スイッチング素子Sb5およびSb6の接続点との間にはセカンダリ巻線162が接続されている。スイッチング素子Sb5およびSb6の接続点と、スイッチング素子Sb1およびSb2の接続点との間にはセカンダリ巻線163が接続されている。リアクトルLb1の一端は、セカンダリ巻線161の中途点に接続されている。リアクトルLb2の一端は、セカンダリ巻線162の中途点に接続され、リアクトルLb3の一端は、セカンダリ巻線163の中途点に接続されている。リアクトルLb1~Lb3のそれぞれの他端は、第1分割コンデンサCc1および第2分割コンデンサCc2の接続点に共通に接続されている。
【0085】
制御部34は、スイッチング素子Sa1~Sa6をそれぞれ制御する制御信号ga1~ga6を出力する。また、制御部34は、スイッチング素子Sb1~Sb6をそれぞれ制御する制御信号gb1~gb6を出力する。
【0086】
このように、電力変換装置102は、プライマリ回路として3相スイッチング回路10aを備えている。また、電力変換装置102は、プライマリ回路にトランスによって結合するセカンダリ回路として、コンデンサ分割型3相スイッチング回路10bを備えている。
【0087】
3相スイッチング回路10aは、直列に接続された2つのスイッチング素子を備えるプライマリブリッジとして、スイッチングブリッジXa、YaおよびZaを備えている。コンデンサ分割型3相スイッチング回路10bは、直列に接続された2つのスイッチング素子を備えるセカンダリブリッジとして、スイッチングブリッジXb、YbおよびZbを備えている。また、コンデンサ分割型3相スイッチング回路10bは、スイッチングブリッジXb、YbおよびZbの両端に接続された中間コンデンサCcを備えている。
【0088】
以下に説明するように、起動モードの動作では、スイッチングブリッジXa、Ya、Za、Xb、YbおよびZbのそれぞれが備える一方のスイッチング素子は、他方のスイッチング素子に対して所定の位相遅れ(本実施形態では180°)でスイッチングをする。定常モードの動作では、スイッチングブリッジXa、Ya、Za、Xb、YbおよびZbのそれぞれが備える一方のスイッチング素子は、他方のスイッチング素子に対してオンとオフを反転したスイッチングをする。
【0089】
ここでは、正極端子TPaおよび負極端子TNaに第1電圧源が接続され、正極端子TPbおよび負極端子TNbに第2電圧源が接続され、正極端子TPcおよび負極端子TNcに負荷回路が接続されているものとする。起動前において第1コンデンサCaの両端の電圧は、第1電圧源の出力電圧に至っており、第2コンデンサCbの両端の電圧は、第2電圧源の出力電圧に至っているものとする。また、起動前において第1分割コンデンサCc1および第2分割コンデンサCc2の両端の電圧は0であるものとする。
【0090】
起動モードおよび定常モードのいずれにおいても、本実施形態における3相スイッチング回路10aは、第2実施形態における3相スイッチング回路10aと同様のスイッチングをする。定常モードでは、トランス181~183の巻線比、各スイッチング素子のオンデューティ比等に応じた電圧が、および正極端子TPcとTNcとの間に現れる。
【0091】
起動モードおよび定常モードのいずれにおいても、コンデンサ分割型スイッチング回路10bが備えるスイッチングブリッジXb、YbおよびZbは、3相スイッチング回路10aが備えるスイッチングブリッジXa、YaおよびZaと同期してスイッチングする。すなわち、スイッチング素子Sb1~Sb6は、それぞれ、スイッチング素子Sa1~Sa6と同期したスイッチングをする。スイッチング素子Saj(j=1~6)がオンであるときは、スイッチング素子Sbjもオンであり、スイッチング素子Sajがオフであるときは、スイッチング素子Sbjもオフである。
【0092】
本実施形態に係る電力変換装置102においても、起動モードのスイッチングを行うことで、起動時において中間コンデンサCcに流れる電流が抑制される。その原理は、各スイッチングブリッジにおける上下のスイッチング素子を別々にオンまたはオフにすると共に各スイッチング素子をオンにする時間を短くすることで、プライマリ巻線14iおよびセカンダリ巻線16iに流れる電流と、第1分割コンデンサCc1および第2分割コンデンサCc2に流れる電流が抑制されることにある。
【0093】
なお、第2および第3実施形態については、正極端子TPaおよび負極端子TNaに電力源として第1電圧源が接続され、正極端子TPbおよび負極端子TNbに電力源として第2電圧源が接続され、正極端子TPcおよび負極端子TNcに負荷回路が接続された場合の動作が示された。電力源は、正極端子TPaと負極端子TNaとの間、正極端子TPbと負極端子TNbとの間、および正極端子TPcと負極端子TNcとの間のうち少なくとも1つの入出力ポートに接続されていればよい。電力源が接続されていない入出力ポートがある場合には、その入出力ポートに負荷回路が接続されてよい。
【0094】
図7図11には第2実施形態に係る電力変換装置101についてのシミュレーション結果が示されている。各図の横軸は時間を示す。図7の上段には、正極端子TPaと負極端子TNaとの間の電圧Va、正極端子TPbと負極端子TNbとの間の電圧Vb、および正極端子TPcと負極端子TNcとの間の電圧Vcが示されている。図7の中段には、正極端子TPaに流入する電流Iaおよび正極端子TPbに流入する電流Ibが示されている。図11の下段には、制御信号g11~g16が示されている。上段に示されているように、電圧VaおよびVbは、それぞれ、第1電圧源および第2電圧源によって一定に保たれている。電圧Vc、すなわち、中間コンデンサCcの両端の電圧は、0から時間経過と共に増加し、電圧Vaよりも大きく電圧Vbよりも小さい値に漸近的に収束している。
【0095】
図8には、図7において「拡大1」と示された時間帯の時間軸を引き延ばしたものが示されている。図8には、電力変換装置102が停止している状態から、起動モードで動作を開始したときの電圧Va、VbおよびVc、電流IaおよびIb、ならびに制御信号g11~g16が示されている。
【0096】
図9には、図7において「拡大2」と示された時間帯の時間軸を引き延ばしたものが示されている。図10には、図7において「拡大3」と示された時間帯の時間軸を引き延ばしたものが示されている。すなわち、図9および図10には、電力変換装置102が起動モードで動作しているときの電圧Va、VbおよびVc、電流IaおよびIb、ならびに制御信号g11~g16が示されている。起動モードでは、時間経過と共にオンデューティ比が増加する。制御信号g11~g16が示すオンデューティ比は、拡大2で示された時間帯よりも、拡大3で示された時間帯の方が大きくなる。
【0097】
図11には、図7において「拡大4」と示された時間帯の時間軸を引き延ばしたものが示されている。すなわち、図11には、電力変換装置102が停止している状態から、定常モードで動作を開始したときの電圧Va、VbおよびVc、電流IaおよびIb、ならびに制御信号g11~g16が示されている。
【0098】
図12には、電力変換装置101について、電圧Va、VbおよびVcと電流Iaを測定した実験結果が示されている。電圧VaおよびVbは、それぞれ、第1電圧源および第2電圧源によって一定に保たれている。電圧Vc、すなわち、中間コンデンサCcの両端の電圧は、0から時間経過と共に増加し、電圧Vaよりも大きく電圧Vbよりも小さい値に漸近的に収束している。
【0099】
図7図11のシミュレーション結果および図12の実験結果に示されているように、電圧Vcは目標値に漸近的に収束し、電流Iaの急激な増加が抑制されている。
【0100】
[本発明の構成]
構成1:
トランスによって結合するプライマリ回路およびセカンダリ回路を備え、
前記プライマリ回路は、
直列に接続された2つのスイッチング素子を備えるプライマリブリッジを備え、
前記セカンダリ回路は、
直列に接続された2つのスイッチング素子を備えるセカンダリブリッジと、
前記セカンダリブリッジの両端に接続された中間コンデンサと、を備え、
前記プライマリブリッジおよび前記セカンダリブリッジは、起動時および定常状態時に、それぞれ、起動モードおよび定常モードで動作し、
前記起動モードの動作では、前記プライマリブリッジおよび前記セカンダリブリッジのそれぞれが備える一方のスイッチング素子は、他方のスイッチング素子に対して所定の位相遅れでスイッチングをし、
前記定常モードの動作では、前記プライマリブリッジおよび前記セカンダリブリッジのそれぞれが備える一方のスイッチング素子は、他方のスイッチング素子に対してオンとオフを反転したスイッチングをすることを特徴とする電力変換装置。
構成2:
構成1に記載の電力変換装置であって、前記起動モードの動作では、前記プライマリブリッジおよび前記セカンダリブリッジのそれぞれが備える各スイッチング素子は、オンとなる時間が時間経過と共に増加するスイッチングをすることを特徴とする電力変換装置。
構成3:
構成1または2に記載の電力変換装置であって、
前記中間コンデンサの充電電圧が所定の目標値に達するまでの間、前記プライマリブリッジおよび前記セカンダリブリッジは、前記起動モードの動作をし、
前記中間コンデンサの充電電圧が前記目標値に達した時から所定の休止時間の間、前記プライマリブリッジおよび前記セカンダリブリッジは、スイッチングを停止し、
前記中間コンデンサの充電電圧が前記目標値に達した時から前記休止時間が経過した後に、前記プライマリブリッジおよび前記セカンダリブリッジは、前記定常モードの動作をすることを特徴とする電力変換装置。
構成4:
構成1から構成3のいずれか1つに記載の電力変換装置であって、
前記プライマリ回路は、
前記プライマリブリッジが備える2つのスイッチング素子の接続点に接続されたプライマリ巻線を備え、
前記中間コンデンサは、直列接続された第1分割コンデンサおよび第2分割コンデンサを備え、
前記セカンダリ回路は、
前記セカンダリブリッジが備える2つのスイッチング素子の接続点に接続され、前記プライマリ巻線と共に前記トランスを構成するセカンダリ巻線と、
前記セカンダリ巻線のタップと、前記第1分割コンデンサおよび前記第2分割コンデンサの接続点との間に接続されたリアクトルと、を備えることを特徴とする電力変換装置。
構成5:
構成4に記載の電力変換装置であって、
前記プライマリブリッジの両端における入出力ポート、前記プライマリ巻線のタップと前記プライマリブリッジの一端との間における入出力ポート、および、前記中間コンデンサの両端における入出力ポートのうち少なくとも1つに電力源が接続され、
前記電力源が接続されていない入出力ポートがある場合には、その入出力ポートに負荷回路が接続されることを特徴とする電力変換装置。
構成6:
構成1から構成3のいずれか1つに記載の電力変換装置であって、
前記プライマリ回路は、並列接続された複数の前記プライマリブリッジを備え、
前記セカンダリ回路は、並列接続された複数の前記セカンダリブリッジを備え、
前記中間コンデンサは、直列接続された第1分割コンデンサおよび第2分割コンデンサを備え、
前記プライマリ回路は、
複数の前記プライマリブリッジのうちの1つにおける2つのスイッチング素子の接続点と、複数の前記プライマリブリッジのうちの他の1つにおける2つのスイッチング素子の接続点との間に接続されたプライマリ巻線を備え、
前記セカンダリ回路は、
複数の前記セカンダリブリッジのうちの1つにおける2つのスイッチング素子の接続点と、複数の前記セカンダリブリッジのうちの他の1つにおける2つのスイッチング素子の接続点との間に接続され、前記プライマリ巻線と共に前記トランスを構成するセカンダリ巻線と、
前記セカンダリ巻線のタップと、前記第1分割コンデンサおよび前記第2分割コンデンサの接続点との間に接続されたリアクトルと、を備えることを特徴とする電力変換装置。
構成7:
構成6に記載の電力変換装置であって、
各前記プライマリブリッジの両方の並列接続端における入出力ポート、前記プライマリ巻線のタップと各前記プライマリブリッジの一方の並列接続端との間における入出力ポート、および、前記中間コンデンサの両端における入出力ポートのうち少なくとも1つに電力源が接続され、
前記電力源が接続されていない入出力ポートがある場合には、その入出力ポートに負荷回路が接続されることを特徴とする電力変換装置。
【符号の説明】
【0101】
10 第1スイッチング回路、10a 3相スイッチング回路、10b コンデンサ分割型3相スイッチング回路、12 第2スイッチング回路、14,141~143 プライマリ巻線、16,161~163 セカンダリ巻線、18,181~183 トランス、30,32,34 制御部、100,101,102 電力変換装置、121 XY相スイッチング回路、122 YZ相スイッチング回路、123 ZX相スイッチング回路、A、B、X1,X2,Xa,Xb、Y1,Y2,Ya、Yb,Za,Zb スイッチングブリッジ、CM,Cc 中間コンデンサ、CM1,Cc1 第1分割コンデンサ、CM2,Cc2 第2分割コンデンサ、C1,Ca 第1コンデンサ、C2,Cb 第2コンデンサ、TP1,TP2,TP3,TPa,TPb,TPc 正極端子、TN1,TN2,TN3,TNa,TNb,TNc 負極端子、S11~S14,S21~S24,Sa1~Sa6,S1~S6,W1~W6,Sb1~Sb6 スイッチング素子、L1,L2,La1~La3,Lb1~Lb3 リアクトル、g11~g14,g21~g24,ga1~ga6,g1~g6,gW1~gW6,gb1~gb6 制御信号、V1 第1電圧,V2 第2電圧、V3 第3電圧。
図1
図2
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図5
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図7
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図10
図11
図12