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特開2024-90187弾性素材の緊締紐体および伊達締めによる着物の着付け方法
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  • 特開-弾性素材の緊締紐体および伊達締めによる着物の着付け方法 図1
  • 特開-弾性素材の緊締紐体および伊達締めによる着物の着付け方法 図2
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  • 特開-弾性素材の緊締紐体および伊達締めによる着物の着付け方法 図10
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  • 特開-弾性素材の緊締紐体および伊達締めによる着物の着付け方法 図15
  • 特開-弾性素材の緊締紐体および伊達締めによる着物の着付け方法 図16
  • 特開-弾性素材の緊締紐体および伊達締めによる着物の着付け方法 図17
  • 特開-弾性素材の緊締紐体および伊達締めによる着物の着付け方法 図18
  • 特開-弾性素材の緊締紐体および伊達締めによる着物の着付け方法 図19
  • 特開-弾性素材の緊締紐体および伊達締めによる着物の着付け方法 図20
  • 特開-弾性素材の緊締紐体および伊達締めによる着物の着付け方法 図21
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090187
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】弾性素材の緊締紐体および伊達締めによる着物の着付け方法
(51)【国際特許分類】
   A41F 19/00 20060101AFI20240627BHJP
   A41D 1/00 20180101ALI20240627BHJP
【FI】
A41F19/00 A
A41D1/00 101
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205910
(22)【出願日】2022-12-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年4月4日に、株式会社猫紋が、安在美苗が発明した弾性素材の緊締紐体および伊達締めによる着物の着付け方法の実演動画をウェブサイトに公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】520114351
【氏名又は名称】株式会社猫紋
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】安在 美苗
【テーマコード(参考)】
3B030
【Fターム(参考)】
3B030BA00
3B030BB01
3B030BC07
(57)【要約】
【課題】伊達締め等の緊締作業を確実に行え、均整の取れた着付けが行える着物の着付け方法を提供すること。
【解決手段】この発明では、着物腰部に対応するゆとり部30の折り返し内側に腰紐21を囲繞緊締すると共にその上方近傍に位置に予め用意した弾性素材の緊締紐体10を上下二本囲繞して着物腰部におけるゆとり部30の折り返し部分の均整の取れた整形を行いその後に伊達締め緊締作業を行う。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着物腰部に対応するゆとり部の折り返し内側に腰紐を囲繞緊締すると共にその上方近傍の位置に予め用意した弾性素材の緊締紐体を上下二本囲繞して着物腰部における前記ゆとり部の折り返し部分の均整の取れた着付け整形を行い、その後に伊達締め緊締作業を行うことを特徴とする弾性素材の緊締紐体および伊達締めによる着物の着付け方法。
【請求項2】
前記緊締紐体を一端部に設けた係合フック体を介して両端部を連結自在に構成した、請求項1に記載の弾性素材の緊締紐体および伊達締めによる着物の着付け方法。
【請求項3】
前記緊締紐体の中途部には、当該紐体の長さを調節するための長さ調節具を介設した、請求項1に記載の弾性素材の緊締紐体および伊達締めによる着物の着付け方法。
【請求項4】
前記ゆとり部の折り返し部分の前記腰紐より上方の位置に囲繞した上下2本の前記緊締紐体の間に前記ゆとり部の折り返し部分を引き上げて上下方向に折り返し、前記ゆとり部の折り返し部分における前記腰紐より下方となる部分の長さを調節する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の弾性素材の緊締紐体および伊達締めによる着物の着付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弾性素材の緊締紐体および伊達締め等の紐体を使用した着物の着付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着物の着付け作業は着物を羽織った後に着物の左右の前身頃を重ね合わせて着用者の身体に巻き、腰位置や胸位置に紐を巻き、さらにその外側から伊達締めを巻き付けて襟合わせ面の緊締を行っている。これにより、着物が不用意にはだけないで着付け姿がスマートになるようにしている。より具体的には、まず腰位置に紐(以下、腰位置の紐を腰紐と呼称する)を締め、着物の着丈を調整することにより生じる腰回りゆとり部を下から上に内側に折り返し最終的な腰紐位置を確定しておく。着物折り返し部分の上部の胸位置に紐(以下、胸位置の紐を胸紐と呼称する)を緊締し、更にその上から伊達締めをして着崩れを防止している。腰部に巻き付ける腰紐は着物折り返し部分を緊締し、この折り返し位置で腰紐の緊締を行い着付けの基本の姿をととのえて次の胸紐、伊達締めの作業に移行する。従って、折り返し位置における腰紐緊締作業及び胸紐緊締作業はその後の伊達締めや帯を締める作業を含む着物の着付けの基礎となる。すなわち、着物の腰回りの腰紐緊締をはじめとして必要に応じて複数本の胸紐や伊達締めは着付けの基本の核心的な部分となり、更にその上から最終的に帯を締め着崩れのない完全な着付け作業が完了する。
【0003】
この様に着物の着付けにおいて重要な作業は、着物の腰部における腰部の着物ゆとり部分(おはしょり又はお端折とも呼称する)の折り返し作業及び、折り返し内部において腰紐を緊締する作業並びに、着物折り返しの上方位置における胸紐と伊達締めの緊締作業である。
【0004】
特許文献1には、お端折りが容易に作れるとともに着崩れを防止可能なウエストベルトと、該ウエストベルトを用いた着物の着付け方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2002-115114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる着物の着付け作業においては、まず着物の腰部に位置する折り返しのためのゆとり部分を折り返してその内部を腰紐で緊締する作業を行うが、その際に着付け作業の前面や背面に腕を回しながらゆとり部分の折り返しとその内側の腰紐緊締作業を行うと共にその上方位置の胸元の胸紐や伊達締め緊締作業を行わなければならない。しかし、着物の合わせ面がはだけないようにして腕を前後にまわしながら着崩れのないフィットした着付け作業を行うことは困難であり、長時間かかって着付けをしても、腰紐、胸紐、伊達締め等の緊締が確実に行われずに特に腰回りの左右脇部分や胸元が確実に折り返され合わせ面にたるみや変形が生じないようにすることは困難であり全体的に出来ばえの良いスマートな着付けとならない欠点を有していた。
【0007】
その結果、着崩れ、前身頃の合わせ面の弛緩若しくは歪みを生起して最終的に均整の取れた着付けとならない。
【0008】
また、特許文献1に開示されたウエストベルトは、第1ベルト、第2ベルト、第3ベルトとから成るため、これら複数のベルトの各々の取り付け位置や締め付け手順等が煩雑となり着付け手順が複雑化していた。
【0009】
この発明では、腰部に形成する着物のゆとり部の折り返し部分における上方近傍位置に予め用意した弾性素材の緊締紐体を囲繞して仮止めするゆとり部における折り返し部分やその上方位置の合わせ面の仮止めを行ってその後の伊達締め等の紐体による緊締作業を確実に行え、均整の取れた着付けが行える着物の着付け方法を提供せんとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、着物腰部に対応するゆとり部の折り返し内側に腰紐を囲繞緊締すると共にその上方近傍の位置に予め用意した弾性素材の紐体を上下二本囲繞して着物腰部における前記ゆとり部の折り返し部分の均整の取れた着付け整形を行う、ことを特徴とする弾性素材の紐体および伊達締めを使用した着物の着付け方法を提供せんとする。
【0011】
また、本発明に係る着物の着付け方法において、弾性素材の緊締紐体は両端部に設けた係合フック体を介して連結自在に構成したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る着物の着付け方法において、前記弾性素材の紐体の中途部には当該紐体の長さを調節するための長さ調節具を介設したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る着物の着付け方法において、前記ゆとり部の折り返し部分の前記腰紐より上方の位置に囲繞した前記弾性素材の緊締紐体に前記ゆとり部の折り返し部分を部分的に挟みこむことにより、前記ゆとり部の折り返し部分における前記腰紐より下方となる部分の長さを調節する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この請求項1の発明によれば、着物腰部に対応するゆとり部の折り返し内側に腰紐を囲繞緊締すると共に、その上方胸部近傍の位置に予め用意した弾性素材の緊締紐体を2本囲繞し、着物腰部におけるゆとり部の折り返し部分の形成や腰紐、胸紐、伊達締め等による着物合わせ面の均整の取れた着付け整形を行う。これにより、着物の合わせ面が弾性素材の緊締紐体で固定され、しかも、緊締紐体は弾性素材であるため、その弾性力により確実な緊締が可能となる。したがって、その後の伊達締め等の装着作業が腕を前後方向に自由に回して容易に行える効果がある。また、紐体は、人の呼吸に合わせて伸縮可能な弾性素材であることから、着用者の胸部位置に装着した状態でも着用者に息苦しさを与えないという効果もある。
【0015】
請求項2の発明によれば、弾性素材の緊締紐体は両端部に設けた係合フック体を介して連結自在に構成したことから、緊締紐体の緊締および解除作業が容易に行える。
【0016】
請求項3の発明によれば、緊締紐体の中途部には紐体の長さを調節するための長さ調節具を介設したこと、緊締紐体による締め付けの強さを、着物着用者の胴回りに応じて容易に調製することが可能となる。
【0017】
請求項4の発明によれば、弾性素材の緊締紐体に着物のゆとり部の折り返し部分を部分的に挟みこむことで着物のゆとり部の長さを調節している。弾性素材の緊締紐体は容易に伸長させることができることから、弾性素材の緊締紐体に着物のゆとり部の一部を緊締紐体よりも上方に位置させ、所望の長さだけ挟む作業が容易に行える。また、伸ばした状態の緊締紐体から手を離すだけで緊締紐体の弾性力により着物の外側から内側に締める力を働かせることができ、調整した着物のゆとり部の折り返し部分を所定の長さで整えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る着物の着付け方法に用いる緊締紐体の斜視図である。
図2】本発明に係る着物の着付け方法に用いる緊締紐体の正面図である。
図3】本発明に係る着物の着付け方法に用いる緊締紐体の背面図である。
図4】本発明に係る着物の着付け方法に用いる緊締紐体の右側面図である。
図5】本発明に係る着物の着付け方法に用いる緊締紐体の左側面図である。
図6】本発明に係る着物の着付け方法に用いる緊締紐体の平面図である。
図7】本発明に係る着物の着付け方法に用いる緊締紐体の底面図である。
図8】本発明に係る着物の着付け方法に用いる緊締紐体の使用の状態を示す説明図である。
図9】本発明に係る着物の着付け方法に用いる緊締紐体の使用の状態を示す説明図である。
図10】本発明に係る着物の着付け方法の手順を示す説明図である。
図11】本発明に係る着物の着付け方法の手順を示す説明図である。
図12】本発明に係る着物の着付け方法の手順を示す説明図である。
図13】本発明に係る着物の着付け方法の手順を示す説明図である。
図14】本発明に係る着物の着付け方法の手順を示す説明図である。
図15】本発明に係る着物の着付け方法の手順を示す説明図である。
図16】本発明に係る着物の着付け方法の手順を示す説明図である。
図17】本発明に係る着物の着付け方法の手順を示す説明図である。
図18】本発明に係る着物の着付け方法の手順を示す説明図である。
図19】本発明に係る着物の着付け方法の手順を示す説明図である。
図20】従来の着物の着付け方法の手順を示す説明図である。
図21】従来の着物の着付け方法の手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の要旨は、着物腰部に対応するゆとり部の折り返し内側に腰紐を囲繞緊締すると共にその上方近傍に位置に予め用意した弾性素材の緊締紐体を上下二本囲繞して仮止めし着物腰部におけるゆとり部の折り返し部分の均整の取れた着付け整形を行いその後に伊達締め緊締作業を行うことを特徴とする腰紐、胸紐、若しくは伊達締めによる着物の着付け方法に関する。
【0020】
この発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。まず、従来の帯を締めるまでに至る着物の着付けの基本的な手順を、図20及び図21を参照して説明する。
【0021】
<第1ステップ>
着用者は、着物を羽織り裾の長さを決めて左右の身頃を合わせて腰紐21を緊締する。
【0022】
<第2ステップ>
腰紐21を内側にして腰紐より下方で折り返して着物のゆとり部の形状を整えてお端折を形成し、襟元を整える。このとき、身八つ口から着物の内側に手を差し入れる等して、左右の身頃の重なり部分を整える。
【0023】
<第3ステップ>
腰紐21より上方の胸部周囲を腰紐21と同様の紐(胸紐22)により囲繞緊締する。胸紐22は、二重巻にして緊締される。
【0024】
<第4ステップ>
腰紐21の緊締位置と胸紐の緊締位置との間の位置に、腰紐21及び胸紐22と同様の紐体23を囲繞緊締する。この紐体23は、図21に示すように、背中側に×印ができるように、二重巻に緊締される。
【0025】
<第5ステップ>
腰紐21より下方に折り返された着物のゆとり部(お端折)の上下方向の長さを適当な長さとするため、、腰回りの着物ゆとり部を下方から上方に引き上げて余剰となる着物の布地を紐体に挟み込む。このとき、背中側では、図21の紙面右側に示すように余剰となる着物の布地が紐体23による×印の中心を挟んだ左右の領域にはみ出すように当該紐体23により挟まれた状態で下方に折り返される。
【0026】
<第6ステップ>
胸紐22および紐体21の外側から着用者の胸部周囲を伊達締め24で囲繞緊締する。伊達締め24は、胸紐22および腰紐21に用いられる紐よりも幅広の薄い帯状の紐体である。伊達締め24は二重巻きに緊締される。
【0027】
<第7ステップ>
伊達締め24の上から帯25を締める。
【0028】
上記従来の着付けの手順においては、胸紐22と腰紐21の間に、胸紐22と腰紐21と同様の紐体23を、背部に紐の交差部が形成されるように二重巻にしている。このため、お端折の長さを調整するときに紐体より上にたくし上げられた着物の布地は、交差部の左右にはみ出すことになる。すなわち、背中側では引き上げた布地の余剰部分は、正面側のように横一線の折り目に沿って上下に折り畳まれず、交差部を中心として布地の先端が左右の脇に向かうように折り畳まれることから、射状のシワがよる状態となる。胸紐22および紐体23の緊締位置において外側からさらに、伊達締め24による緊締、および、帯25の緊締が行われることから、背部の紐体23の交差部の左右にはみ出させた着物の布地の余剰部分に、縦方向および斜め方向に走る複数のシワができる。このような複数のシワは、一度形成されてしまうとクリーニング等によっても取り除くことが困難であり、次にその着物を着用した際に、例えば、背中側の着物の布地に不自然な縦方向および斜め方向のシワが現れ、着用者の着こなしを損なうという問題が生じる。
【0029】
本願発明では、上記従来の着付け手順の第4ステップにおいて腰紐21及び胸紐22と同様の紐体23を背中側で×印を形成するように二重巻にしていたのに対し、弾性素材の緊締紐体10を腰紐21と胸紐22の間に上下2本囲繞緊締し、しかる後に当該2本の弾性素材の緊締紐体10の間に着物のゆとり部を引き上げてお端折の長さを調整することに特徴がある。
【0030】
以下、本発明の実施態様を詳細に説明する。
【0031】
まず、本発明に係る着付の方法に用いる弾性素材の緊締紐体10について、図1から図9を参照して説明する。
【0032】
緊締紐体10は、弾性素材である長尺伸縮体11に係止具および長さ調整具を配置して構成されている。長尺伸縮体11は、幅約1~2cm、長さ約70~90cmの平ゴムと呼称される、天然ゴム糸やポリウレタン糸などの弾性糸を含んで織られたゴム紐である。
【0033】
このような弾性素材の緊締紐体10は両端部を連結自在に構成されている。長尺伸縮体の一端には、長尺伸縮体11の端を折り返して筒状とした筒状部12が形成されている。また、長尺伸縮体11の他端には、長尺伸縮体11を挿通可能な孔部13と、筒状部12に係合するフック部14とから成る係合フック体15が設けられている。係合フック体15は、フック部14が筒状部12の係合を受け入れることで長尺伸縮体11を連結する係止具である。係合フック体15は、後述する長さ調整具によって形成される長尺伸縮体11の環状領域17に孔部13を介して移動可能に配置される。
【0034】
また、緊締紐体10の中途部には紐体の長さを調節するための長さ調節具を介設している。より具体的には、長尺伸縮体11の長さ調整には、エイト環16から成る長さ調整具を採用し、エイト環16を利用して環状とした長尺伸縮体11の環状領域17によって長尺伸縮体11が2重となる長さを調整することにより、緊締紐体10の全体としての長さを調整している。緊締紐体10を使用する前に、着物の着用者の胴回りに応じて、エイト環16の位置を移動させて緊締紐体10の長さ調整しておくとよい。
【0035】
このような構成の緊締紐体10を用いて着物を着つけるときには、着用者が着物を羽織った状態で腰紐21を緊締し、襟元を合わせて着物ゆとり部30を身体に沿わせて折り返してお端折31を形成し(図11参照)、さらに襟元の合わせを胸紐22の緊締により固定した後に、身体の正面に係合フック体15のフック部が位置するように、着用者の胴回りに緊締紐体10を巻く。そして、長尺伸縮体11の一端の筒状部12を係合フック体15のフック部14に係合させ、緊締紐体10の両端部を連結する(図8及び図9参照)。必要に応じてエイト環16の位置を移動させて緊締紐体10による緊締状態(締まりの強さ)を調整する。なお、係合フック体15およびエイト環16は、図6及び図7に示すように、それ自体に厚みがないことから、従来の紐体のように紐の結び目が邪魔になることがない。なお、この明細書において、着物のゆとり部30とは、着物を着用者の身丈に合わせたときに、腰回り付近にできる着物布地の余剰部分であり、形状を整えたお端折31を含む部分である。
【0036】
本発明に係る着物の着付の方法の実施手順を図10から図19を参照して詳細に説明する。なお、以下の手順では、着物の着用者が自身で着物を着る場合を例に説明する。
【0037】
<第1ステップ(図10参照)>
着用者は、着物を羽織り裾の長さを決めて左右の身頃を合わせて着物を身体に巻き付ける。そして身丈に合わせて腰紐21を緊締する。
【0038】
<第2ステップ(図11参照)>
腰紐21を内側にして、腰紐21より上方に外側に膨らんだ状態の着物のゆとり部30を身体に沿うように腰紐21より下方で折り返してゆとり部30の形状を身体に沿うように整えて所謂お端折31を形成し、襟元を整える。このとき、身八つ口から着物の内側に手を差し入れる等して、左右の身頃の重なり部分を調整する。
【0039】
<第3ステップ(図12参照)>
腰紐21より上方の胸部位置に胸紐22を緊締し、襟元の合わせを固定する。
【0040】
<第4ステップ(図13、14参照)>
腰紐21の緊締位置と胸紐22の緊締位置との間に、弾性素材からなる2本の緊締紐体10a,10bを上下に緊締する。2本の緊締紐体10a,10bは、着用者の胴部の上下に互いに略平行に配置される。
【0041】
<第5ステップ(図15,16,17参照)>
腰紐21より下方に折り返した着物ゆとり部30(お端折31)の上下方向の長さを適当な長さとするため、若しくは、腰回りの布量を調整するために、2本の緊締紐体10a,10bの間の着物の布地を上方に引き上げる。これにより、腰紐21より下となる腰回りのお端折31の上下方向の長さが短くなり、お端折31を引き上げたことにより生じた余剰となる布地が2本の緊締紐体10a,10bの間に折り返される。より詳しくは、図15に拡大して示すように、2本の緊締紐体10a,10bのうち下側の緊締紐体10aを内側として、着物の胴回りの余剰の布地が、身体の正面側及び背面側において大凡横一線の折り目に沿って上から下に折り返されて布地が2重となる折返し部32が形成される。したがって、従来のように布地に斜め方向や縦方向のシワがよることを防止できる。
【0042】
なお、1本の緊締紐体10aのみを緊締し、緊締紐体10bがない状態では、緊締紐体10aより上方にたくし上げた着物の布地部分が襟や脇部分の弛みを生じさせる。したがって、本発明に係る着物の着付け方法においては、2本の緊締紐体10a、10bを用い、下側の緊締紐体10aより上方にたくし上げた着物の布地を、上側となる他の緊締紐体10bによる緊締によって、それにより上側にずり上がるのを防止し、襟や脇に弛みが生じさせることなく、腰回りおよび胴回りにおいて余剰となる布地を、身体に沿わせて折り返すことが可能となる。
【0043】
<第6ステップ(図18参照)>
着用者の胴部分において、胸紐による緊締位置、2本の緊締紐体10a,10bによる緊締位置を含む胸部周囲を伊達締め24等で囲繞緊締する。伊達締め24による緊締を行う際には、伊達締め24の中央部分を身体の正面に置き、背中側で伊達締め24を交差させ、両端を身体の正面に結び目がくるように結び、紐の端を身体の左右側で身体に巻き回された状態の伊達締め24に挟み込む。このようにして二重巻の伊達締めが完成する。
【0044】
<第7ステップ(図19参照)>
二重巻きの伊達締め24の上から帯25を締める。
【0045】
上述のように、本発明に係る着物の着付の方法によれば、伊達締め24を緊締する際に、緊締位置を予め弾性素材による2本の緊締紐体10a、10bによって決めることができる。このため、伊達締め24を締める際に、お端折31の位置がズレたりすることがなく、腕を前後方向に自由に回して作業を行うことができる。また、伊達締め24を締める位置が緊締紐体10a、10bによってわかることから、伊達締め24を後ろ手で交差させたときの位置ズレの修正が容易にでき、確実に伊達締め24等を所望の位置に締めることができる。したがって、例えば、お端折31の下端線が左方下がりに傾く等の、帯25を締めた後の着崩れが防止できる。
【0046】
また、緊締紐体10は係合フック体15により容易に取り付け、取り外しが可能であることから、着用者は着物の着付けをスムーズに行うことができるとともに、着物を脱ぐ際にも、従来のように固く結んだ紐を解く作業を行う必要がなくなる。また、緊締紐体10は弾性素材からなるため胸回り等を過度に締め付けられ続けることがない。また、従来の第4,第5ステップで説明した紐体23を結ぶ場合では、一度紐の結び目が緩むと緊締が不十分となり着崩を起こすことがあったが、緊締紐体10は弾性力により一定の緊締状態を保つことができるため、着崩れのない着物の着こなしが可能である。
【0047】
また、緊締紐体10は長さ調整具を備えていることから、着用者の体格に応じて、緊締紐体10の長さを柔軟に変更できるとともに、緊締紐体10による締め付けの強さも容易に変更可能である。
【0048】
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、本開示に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 緊締紐体
11 長尺伸縮体
12 筒状部
13 孔部
14 フック部
15 係合フック体(係合具)
16 エイト環(長さ調整具)
17 環状領域
21 腰紐
22 胸紐
24 伊達締め
25 帯
30 ゆとり部
31 お端折
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【手続補正書】
【提出日】2024-06-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着物腰部に対応するゆとり部の折り返し内側に腰紐を囲繞緊締し、前記腰紐より上方の胸部に対応する位置に胸紐を緊締すると共に、前記腰紐の緊締位置と前記胸紐の緊締位置との間の位置に予め用意した弾性素材の緊締紐体を上下二本囲繞し、前記ゆとり部の折り返し部分の前記腰紐より上方の位置に囲繞した上下2本の前記緊締紐体の間に前記ゆとり部の折り返し部分を引き上げて上下方向に折り返し、前記ゆとり部の折り返し部分における前記腰紐より下方となる部分の長さを調節する着付け整形を行い、その後に伊達締め緊締作業を行うことを特徴とする弾性素材の緊締紐体および伊達締めによる着物の着付け方法。
【請求項2】
前記緊締紐体を一端部に設けた係合フック体を介して両端部を連結自在に構成した、請求項1に記載の弾性素材の緊締紐体および伊達締めによる着物の着付け方法。
【請求項3】
前記緊締紐体の中途部には、当該紐体の長さを調節するための長さ調節具を介設した、請求項1に記載の弾性素材の緊締紐体および伊達締めによる着物の着付け方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
この発明は、着物腰部に対応するゆとり部の折り返し内側に腰紐を囲繞緊締し、前記腰紐より上方の胸部に対応する位置に胸紐を緊締すると共に、前記腰紐の緊締位置と前記胸紐の緊締位置との間の位置に予め用意した弾性素材の緊締紐体を上下二本囲繞し、前記ゆとり部の折り返し部分の前記腰紐より上方の位置に囲繞した上下2本の前記緊締紐体の間に前記ゆとり部の折り返し部分を引き上げて上下方向に折り返し、前記ゆとり部の折り返し部分における前記腰紐より下方となる部分の長さを調節する着付け整形を行い、その後に伊達締め緊締作業を行うことを特徴とする弾性素材の緊締紐体および伊達締めによる着物の着付け方法を提供せんとする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】