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特開2024-90199ゴム輪継手用樹脂管及びゴム輪継手構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090199
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ゴム輪継手用樹脂管及びゴム輪継手構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 21/04 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
F16L21/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205925
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 悠平
(72)【発明者】
【氏名】赤井 嘉明
【テーマコード(参考)】
3H015
【Fターム(参考)】
3H015CA01
3H015CA03
3H015CA12
3H015CA14
(57)【要約】
【課題】本発明は、ゴム輪継手から抜け難いゴム輪継手用樹脂管及びゴム輪継手により樹脂管を接続したゴム輪継手構造を提供する。
【解決手段】本発明のゴム輪継手用樹脂管10は、受口33の内面にゴム輪50が配備されたゴム輪継手30に接続され、少なくとも外周が樹脂製のゴム輪継手用樹脂管10であって、前記外周の表面粗さRaが0.5μm以上である。また、本発明のゴム輪継手構造20は、受口33の内面にゴム輪50が配備されたゴム輪継手30に、上記ゴム輪継手用樹脂管10を接続してなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受口の内面にゴム輪が配備されたゴム輪継手に接続され、少なくとも外周が樹脂製のゴム輪継手用樹脂管であって、
前記外周の表面粗さRaが0.5μm以上である、
ゴム輪継手用樹脂管。
【請求項2】
前記外周の表面粗さRaは6μm以下である、
請求項1に記載のゴム輪継手用樹脂管。
【請求項3】
管厚方向に複数の層からなる多層管である、
請求項1に記載のゴム輪継手用樹脂管。
【請求項4】
前記外周は、樹脂と強化材を含む、
請求項3に記載のゴム輪継手用樹脂管。
【請求項5】
受口の内面にゴム輪が配備されたゴム輪継手に、請求項1乃至請求項4の何れかに記載のゴム輪継手用樹脂管を接続してなる、
ゴム輪継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム輪継手によって接続可能なゴム輪継手用樹脂管と、当該ゴム輪継手用樹脂管とゴム輪継手を接続してなるゴム輪継手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多層管などの樹脂管は、通常継手に接続して使用される。継手と樹脂管の接続には、一般的に接着剤を用いた工法と熱融着を用いた工法が使用される。しかしながら、接着剤を用いた工法は、接着剤中の溶剤によるソルベントクラックの発生による管材質への影響、また、有機溶剤が揮発することによる施工環境への影響が懸念される。熱融着を用いた工法は、熱融着を行うための融着装置の準備や電源の確保等、施工手間が大きく増加する。このため、下水管、排水管など、管路に通常圧力が発生しない無圧管路の場合、樹脂管どうしの接続には、ゴム輪継手を用いた工法が使用される。ゴム輪継手は、管が挿入される受口内面にゴム輪を有する継手である。受口に管を挿入し、受口内でゴム輪を圧縮することで、継手と管を気密に接続したゴム輪継手構造が構成される。
【0003】
このようなゴム輪継手構造では、管の抜け止めがなければ、管が継手から抜けてしまうことがある。そこで、たとえば、特許文献1では、ゴム輪継手に係止部材と抜止部材を装着することで、抜止め性を高めている。係止部材として、金属ワイヤが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-156431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゴム輪継手に、ゴム輪の他、係止部材や抜止部材を設けることで、継手の構造が複雑になり、コスト増にも繋がる。また、金属製の係止部材を使用すると、樹脂管の外面に傷が付いてしまうことがある。
【0006】
発明者らは、ゴム輪継手側の構造を改良するのではなく、ゴム輪継手用樹脂管側の構成を改良することで、ゴム輪継手用樹脂管が抜け難いゴム輪継手構造の発明に至った。
【0007】
本発明の目的は、ゴム輪継手から抜け難いゴム輪継手用樹脂管及びゴム輪継手により樹脂管を接続したゴム輪継手構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のゴム輪継手用樹脂管は、
受口の内面にゴム輪が配備されたゴム輪継手に接続され、少なくとも外周が樹脂製のゴム輪継手用樹脂管であって、
前記外周の表面粗さRaが0.5μm以上である。
【0009】
前記外周の表面粗さRaは6μm以下とすることが望ましい。
【0010】
管厚方向に複数の層からなる多層管とすることが望ましい。
【0011】
前記外周は、樹脂とガラス繊維等の強化材を含むことが望ましい。
【0012】
また、本発明のゴム輪継手構造は、
受口の内面にゴム輪が配備されたゴム輪継手に、上記記載のゴム輪継手用樹脂管を接続してなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のゴム輪継手用樹脂管は、外周の表面粗さRaを大きくしたことで、ゴム輪に対する摩擦力を大きくすることができ、ゴム輪継手用樹脂管をゴム輪継手から抜け難くすることができる。また、ゴム輪継手用樹脂管の外周の表面粗さRaが大きいから、作業者が掴んだときにも滑り難く、取扱いが容易である。
【0014】
本発明のゴム輪継手構造は、ゴム輪継手用樹脂管の外周の表面粗さRaが大きいから、ゴム輪継手を複雑化することなく、ゴム輪継手用樹脂管の抜けを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明のゴム輪継手用樹脂管の外観を示す写真である。
図2図2は、ゴム輪継手用樹脂管とゴム輪継手の締付前の部分断面図である。
図3図3は、締付後の部分断面図である。
図4図4は、本発明のゴム輪継手用樹脂管の製造ラインの模式図である。
図5図5は、耐圧試験装置の説明図である。
図6図6は、耐圧試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のゴム輪継手用樹脂管10(以下、単に「樹脂管」という)と、ゴム輪継手構造20について説明する。
【0017】
<樹脂管10>
樹脂管10は、内部に中空の流路が形成された樹脂製のパイプである。
【0018】
使用される樹脂は、使用温度により選定することができ、たとえば、80℃~120℃の高温用途として、ポリブテン樹脂、架橋ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、耐熱ポリ塩化ビニルなどの耐熱性プラスチック材料を挙げることができる。また、80℃~-50℃の低温用途では、高密度ポリエチレン、半硬質ないし軟質ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどを挙げることができる。
【0019】
樹脂管10は、単層管又は管厚方向に複数の層を有する多層管とすることができる。多層管の場合、外層は、樹脂にガラス繊維などの強化材を含む層とすることができる。
【0020】
強化材、例えばガラス繊維を含むことで、樹脂管10の強度、剛性、引張り伸びを高めることができる。外層中に含まれるガラス繊維の下限は、外層の5質量%以上が好適であり、望ましくは10質量%である。なお、外層中に含まれるガラス繊維の含有量を多くすることで、下記する樹脂管10の外周面表面粗さRaを粗くすることができる。従って、この場合、ガラス繊維は、5質量%以上含有することが好適であり、10質量%以上含有させることが望ましい。なお、過大にガラス繊維を含有させると、外層の成形性が低下するため、ガラス繊維の含有量の上限は、外層の45質量%以下、望ましくは40質量%以下である。
【0021】
ガラス繊維の平均繊維長は、低線膨張性や剛性、次に示す配向性を確保するために、150μm以上とすることが好適であり、200μm以上がより望ましい。一方で、成形性を具備するために、ガラス繊維の平均繊維長は700μm以下、望ましくは650μm以下とする。同様の理由で、ガラス繊維の平均繊維径の下限は、1μm以上が好適であり、望ましくは5μm以上、上限は30μm以下が好適であり、15μm以下が望ましい。
【0022】
樹脂管の熱伸縮を抑えるという意味では、ガラス繊維は、50%以上が軸方向に配向していることが好適であり、70%以上が軸方向に配向していることがより望ましい。「ガラス繊維が軸方向に配向している」とは、ガラス繊維の平均繊維長の10%以上の長さを有する繊維のうち、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%の繊維の方向が、当該軸方向に対して±15°以内であることをいう。樹脂管を押出成形機を用いて成形する際、押出成形機や賦形する金型のタイプや形状、および樹脂温度等の成形条件は、特に限定されない。ガラス繊維の配向は、ガラス繊維を含む樹脂組成物を金型内の任意形状の流路を通すことで、ガラス繊維が樹脂組成物の軸方向の流れに沿って自然と配向することで概ね実施できる。その後、樹脂組成物が円筒形状の金型出口から押し出され、水槽内で冷却賦形されるまでの過程(樹脂に流動性が残っている状態)で、延伸、縮径・拡径等の作用を付与することで、配向率を調整することができる。
【0023】
樹脂管10の内径、外径、管厚は、要求される用途に応じて適宜決定されるが、たとえば、建築設備用の樹脂製排水管の場合、内径(呼び径)が40mmから300mm、管厚が1.8mmから17.3mmのものが、JIS K6741品として一般に使用されている。
【0024】
本発明の樹脂管10は、外周の表面粗さRaが0.5μm以上であることを特徴とする。樹脂管10の外周表面粗さRaを粗くすることで、ゴム輪継手30に接続された際に、ゴム輪50との摩擦を高め、樹脂管10の抜止め性を高めることができる。なお、表面粗さRaの測定は、JIS B0633(2001)「製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-表面性状評価の方式及び手順」の中の「7.触針式表面粗さ測定機による評価の方式及び手順」に従って行ない、測定値は、管の外表面を円周方向に4等分した位置における軸方向の表面粗さRaの測定値4ケの平均値とした。
【0025】
樹脂管10の抜止め性を高めるために、樹脂管10の外周表面粗さRaは、1μm以上であることが好適であり、望ましくは2μm以上、より望ましくは3μm以上である。
【0026】
一方、樹脂管10の外周表面粗さRaが大きくなると、ゴム輪継手30と接続したときにゴム輪50と樹脂管10の外周面との間に隙間が生じてしまうことがある。この隙間は樹脂管10の内部を流通する流体の漏洩を招くことがある。また、表面粗さRaが粗いと、ゴム輪継手構造20を長期に亘って使用したときに、管の収縮や振動等によりゴム輪50が摩耗して劣化し、同じく、流体の漏洩を招くことがある。従って、樹脂管10の外周表面粗さRaは6μm以下とすることが好適であり、5.7μm以下が望ましく5μm以下がより望ましい。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂管10の外観を示す写真である。図示の樹脂管10は、表面粗さRaが4.4μmである。図1(a)を参照すると、樹脂管10の外周面にはシボ加工の如き皺状の凹凸が形成されていることがわかる。なお、図1(b)は、凹凸が明確になるように、管端側の一部11を研磨して表面粗さRaを1.2μmとした小さくした樹脂管10の写真である。図1(b)を参照すると、本発明の樹脂管10は、比較的大きな凹凸を有していることがわかる。
【0028】
樹脂管10の外周表面粗さRaは、たとえば、樹脂管10の製造条件を調整することで設定することができる。具体的には、後述する樹脂管10の製造ライン60(図4参照)において、金型の成形温度を下げる、冷却筒65の表面粗さを粗くする、冷却水槽64の温度を下げる、冷却水槽64の真空度を下げるなどの方法が挙げられる。また、樹脂管10が外周にガラス繊維を含有する多層管の場合、ガラス繊維量を増やすことで樹脂管10の表面粗さRaを粗くすることができる。もちろん、樹脂管10の表面に型押しにより凹凸を形成することや、樹脂管10の表面を機械加工することで表面粗さRaを調整することもできる。
【0029】
本発明の樹脂管10は、外周の表面粗さRaを上記のとおり調整したことで、以下で説明するゴム輪継手30のゴム輪50に対する摩擦力を大きくすることができ、樹脂管10をゴム輪継手30から抜け難くすることができる。また、樹脂管10の表面粗さRaが大きいから、作業者が掴んだときにも滑り難く、取扱いが容易である。
【0030】
<ゴム輪継手30>
本発明の樹脂管10と接続されるゴム輪継手30は、受口33の内面側にゴム輪50が配備された継手である。ゴム輪継手30として、排水槽通気配管用防食継手(厨房排水配管用継手:所謂RD継手)、排水鋼管用可とう継手(所謂MD継手)などを例示できるが、これに限定されるものではない。
【0031】
図2及び図3はゴム輪継手30としてMD継手31を樹脂管10の接続に用いた実施形態を示す部分断面図であって、図2は締付前、図3は締付後を示す。MD継手31は、鋳鉄製の管状体の両端に受口33(図では一方の受口33のみを示す)が形成された継手本体32と、継手本体32の受口33に配備されるゴム輪50、継手本体32と共働してゴム輪50を圧縮する押輪40を主要構成とする。
【0032】
継手本体32の受口33は、樹脂管10の端縁が挿入可能となっており、開口側の内周は、奥向きに縮径するテーパー状の圧接面34が形成されている。また、継手本体32の外周には、締付用のボルト21が貫通するボルト孔35が形成されている。
【0033】
ゴム輪50を圧縮する押輪40には、継手本体32側から奥向きに縮径するテーパー状の押面41が形成されている。また、押輪40の外周には上記した継手本体32のボルト孔35と対向する位置にボルト孔42が貫通開設されている。
【0034】
継手本体32と押輪40の間に挿入されるゴム輪50は、環状のシール部材である。ゴム輪50の材質は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム(VMQ)などの合成ゴムを例示できる。耐熱用途の場合、エチレンプロピレンジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素系ゴムが採用される。
【0035】
図示の実施形態では、ゴム輪50の押輪40側には、継手本体32側から奥向きにプッシュピン51、抜止めリング52及び抜止めコマ53が配設されている。プッシュピン51は、たとえばSUS304、抜止めリング52は、エチレンプロピレンジエンゴム、抜止めコマ53はSUS410から作製することができる。プッシュピン51は、締付時に抜止めコマ53を押面41の奥側に押し込む。
【0036】
<ゴム輪継手構造20>
然して、上記構成のMD継手31では、図2に示すように、樹脂管10を継手本体32、ゴム輪50、押輪40内に挿し込み、ボルト孔35,42にボルト21を嵌め、ナット22を締め付ける。これにより、図3に示すように、ゴム輪50が継手本体32と押輪40により圧縮され、受口33と樹脂管10の外周面を気密に接続する。また、ゴム輪50が圧縮されることで、プッシュピン51が抜止めコマ53を押輪40の押面41の奥側に押し込む。さらに、抜止めコマ53が樹脂管10と押輪40との間に入り込むことで、抜止め機能を発揮する。これにより、樹脂管10がゴム輪継手30により接続されたゴム輪継手構造20が構成される。
【0037】
MD継手31以外のゴム輪継手30についても同様に、樹脂管10を受口33に差し込むことで、ゴム輪50が圧縮されて、樹脂管10とゴム輪継手30が気密に接続される。
【0038】
本発明のゴム輪継手構造20では、樹脂管10の外周面の表面粗さRaを粗くしているから、樹脂管10は、表面粗さRaの小さい、たとえば、表面粗さRaが0.2μm程度の樹脂管に比べて、ゴム輪50との摩擦力を高めることができる。すなわち、ゴム輪継手30の抜止め構造を複雑化することなく、ゴム輪継手構造20の耐圧性を高めることができる。
【0039】
本発明の樹脂管10を耐熱性樹脂から作製することで、厨房等の高温排水用途に好適に使用できる。また、この場合、熱膨張・熱収縮の影響を受け難い鋳鉄製のMD継手31と組み合わせて使用することで、排水温度の変化による管の熱膨張・熱伸縮に追随できる。
【実施例0040】
<樹脂管10(多層管)の製造方法及び標準的な製造条件>
以下、図4に示す樹脂管10として内層と外層からなる2層構造の多層管の製造ライン60を例に挙げて、樹脂管10の外周の表面粗さRaの調整方法について説明する。もちろん、樹脂管10の製造方法は本実施例に限定されない。
【0041】
図4は、樹脂管10(多層管)の製造ライン60を模式的に示す平面図である。製造ライン60は、内層押出機61、外層押出機62、成形用金型63、冷却水槽64、引取り機66、切断機67を含む構成とすることができる。
【0042】
内層押出機61、及び外層押出機62は、内・外層材料となる樹脂材料を溶融混練し、押し出し、成形用金型63に吐出する。吐出量は、押出機の能力によって任意に設定される。成形用金型63は、内層の外周に外層材料を成形し、内層と外層からなる樹脂管10を構成する。成形用金型63の成形温度は、標準的な製造条件では、200℃~240℃であるが、成形温度を180℃~210℃、望ましくは180℃~200℃とすることで、金型通過時に溶融樹脂の金型表面の流動性が低下し、滑りにくくなるから、樹脂管10の外周の表面粗さRaを粗くすることができる。
【0043】
樹脂管10は、冷却水槽64に送られる。冷却水槽64は、樹脂管10が通過する冷却筒65を有しており、冷却水槽64に進入する樹脂管10は、冷却筒65を通過する際に、外径が規定され、冷却水槽64で冷却を受ける。冷却水槽64は、水、空気、油、ポリエチレングリコール等の腐食性がなく、熱交換性の高い流体が貯溜されている。
【0044】
樹脂管10は、冷却筒65の表面粗さRaを粗くすることで、外周の表面粗さRaを粗くすることができる。また、冷却水槽64の水温は、標準的な製造条件では30℃~50℃であるが、水温を10℃~20℃に下げることで、溶融樹脂が滑らかになる前に固まることから、樹脂管10の外周の表面粗さRaを粗くすることができる。さらには、冷却水槽64の真空度は、標準的な製造条件では-20~-60kPa、望ましくは-25~-55kPaであるが、冷却水槽64の真空度を-20~-35kPa、望ましくは-20~-30kPaと低く設定することで、樹脂が冷却塔に押し当てられる力が弱くなるから、樹脂管10の外周の表面粗さRaを粗くすることもできる。
【0045】
そして、引取り機66で引き取られた樹脂管10は、切断機67に送られ、所定長さに切断すればよい。
【0046】
<耐圧試験>
外周の表面粗さRaの異なる発明例1と比較例1の樹脂管を準備し、ゴム輪継手と接続し、耐圧試験を実施した。
【0047】
発明例1は、外周にガラス繊維を含む樹脂を採用した多層管であり、表面粗さRaが4.4μm、外径89mm、内径79mm、長さ500mmである。表面粗さRaの調整は、成形用金型の温度、及び、冷却水槽の真空度を調整することにより行なった。
【0048】
比較例1は、外径89mm、内径77mm、長さ500mmのVP管(硬質ポリ塩化ビニル管)を使用した。比較例1の表面粗さRaを測定したところ、0.2μmであった。
【0049】
ゴム輪継手30は、図2図3に示すMD継手(S(MD)呼び径2;ダイドレ株式会社)を採用した。ゴム輪50の材質は、EPDMである。
【0050】
耐圧試験は、図5に示す耐圧試験装置70により実施できる。耐圧試験装置70は、樹脂管10の先端をキャップ71で塞ぎ、ゴム輪継手30の開放端からポンプ72を用いて樹脂管10内に種々の水圧を掛けたときに、樹脂管10がゴム輪継手30に対してどの程度変位するかを測定する装置である。樹脂管10の変位は、キャップ71に管軸に沿う方向の変位を測定するダイヤルゲージ73を装着している。
【0051】
加える水圧は、ポンプ72の出力を調整し、0Mpaから10分ごとに0.5MPaずつ上昇させ、最大0.35MPaまで変化させた。結果を表1及び図6に示す。ダイヤルゲージ73による変位測定は、試験開始20分後から10分ごとに実施した。
【0052】
【表1】
【0053】
表1及び図6を参照すると、発明例1は、比較例1に比べて変位を小さくできたことがわかる。発明例1は、たとえば0.25Mpaでは、樹脂管10の変位を1/2以下に抑えることができている。これは、発明例1の樹脂管10の外周の表面粗さRaが4.4μmと大きい値であったことにより、ゴム輪継手30のゴム輪50との摩擦力を大きくできたことによる。一方、比較例1は、外周の表面粗さRaが0.2μmと小さいため、ゴム輪50との摩擦力が小さく、水圧による変位に耐えることができなかった。
【0054】
なお、水圧を掛けたときに、発明例1、比較例1の何れにも、0.3MPaまでは樹脂管10とゴム輪継手30の接続部分からの漏水は確認されなかった。発明例として、表面粗さRaが5.7μmの樹脂管10を製造し、上記と同様の試験を行なったが、当該樹脂管10とゴム輪継手30の接続部分からも漏水は確認されなかった。一方、表面粗さRaが6.2μmの樹脂管10では、水圧0.3MPaで樹脂管10とゴム輪50との間から僅かではあるが漏水が確認された。
【0055】
<表面粗さRaの調整>
下記する要領で、上記発明例1に採用した樹脂管10の表面粗さRaを調整できた。なお、以下の条件は、図4に示す製造ライン60における上記した標準的な製造条件からの変更点を示す。
【0056】
成形用金型63の成形温度を190℃(10℃低い)にすることで、表面粗さRaを4.5μmに調整できた。
【0057】
冷却水槽64の温度を標準よりも5℃~20℃下げることで、表面粗さRaを5.1μmに調整できた。
【0058】
冷却水槽64の真空度を20%上昇させることで、表面粗さRaを3.6μmに調整できた。
【0059】
金型の成形温度を10℃上げることで、表面粗さRaを4.0μmに調整できた。また、金型成形温度を20℃上げることで、表面粗さRaを3.7μmに調整できた。
【0060】
金型成形温度を20℃上げ、冷却水槽64の真空度を20%上昇させることで、表面粗さRaを3.5μmに調整できた。金型成形温度を20℃上げ、冷却水槽64の真空度を35%上昇させることで、表面粗さRaを3.2μmに調整できた。
【0061】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
10 ゴム輪継手用樹脂管
20 ゴム輪継手構造
30 ゴム輪継手
50 ゴム輪
60 製造ライン
70 耐圧試験装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6