(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090223
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/80 20180101AFI20240627BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20240627BHJP
B60N 2/891 20180101ALI20240627BHJP
【FI】
B60N2/80
A47C7/38
B60N2/891
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205970
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100195224
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 宏憲
(72)【発明者】
【氏名】西本 直矢
(72)【発明者】
【氏名】松井 雄大
(72)【発明者】
【氏名】松本 学
(72)【発明者】
【氏名】平山 健太
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084DD07
3B087DC05
(57)【要約】
【課題】ヘッドレストフレームの強度を向上させることができる乗物用シートを提供する。
【解決手段】ヘッドレストを備える乗物用シートであって、ヘッドレストは、骨格を構成するヘッドレストフレームF3を備える。ヘッドレストフレームF3は、左右に離間して配置された上下に延びる一対のピラー部71、一対のピラー部71の上端からそれぞれ前方に延びる一対の上フレーム部72、および、一対の上フレーム部72の前端からそれぞれ下方に延びる一対の前フレーム部73を有するメインフレーム70と、一対の前フレーム部73の間に配置されて、一対の前フレーム部73に固定された板状の補強部材80とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストを備える乗物用シートであって、
前記ヘッドレストは、骨格を構成するヘッドレストフレームを備え、
前記ヘッドレストフレームは、
左右に離間して配置された上下に延びる一対のピラー部と、前記一対のピラー部の上端からそれぞれ前方に延びる一対の上フレーム部と、前記一対の上フレーム部の前端からそれぞれ下方に延びる一対の前フレーム部とを有するメインフレームと、
前記一対の前フレーム部の間に配置されて、前記一対の前フレーム部に固定された板状の補強部材と、を備えることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記補強部材は、前記上フレーム部の上端よりも下、かつ、前記前フレーム部の下端よりも上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記補強部材の前面は、前記前フレーム部の前面よりも後ろに配置されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記補強部材は、前板部と、前記前板部の縁部から後方に延びるフランジ部とを有し、
前記フランジ部は、前記フランジ部の上端部を含むフランジ上部と、前記フランジ上部よりも下に位置するフランジ下部とを有し、
前記フランジ上部は、前記フランジ下部よりも後方に突出していることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記補強部材は、前記フランジ部の上端部から後方に突出し、湾曲して下方に延びる舌部を有することを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記舌部は、前記フランジ部の上端部の左右中央部に位置し、左右の幅が前記フランジ部の上端部の左右の幅よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記フランジ部は、前記フランジ上部と前記フランジ下部の間に位置する脆弱部であって、前記フランジ下部の後端に対し前方に凹む形状の脆弱部を有することを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記前板部は、後方に凹む形状の凹部を有することを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記前板部は、前記凹部の底に、前後に貫通する貫通孔を有することを特徴とする請求項8に記載の乗物用シート。
【請求項10】
シートクッションと、シートバックと、を備え、
前記シートクッションは、骨格を構成するシートクッションフレームと、前記シートクッションフレームを覆うシートクッションパッドと、前記シートクッションフレームおよび前記シートクッションパッドを覆うシートクッション表皮と、を備え、
前記シートバックは、骨格を構成するシートバックフレームと、前記シートバックフレームを覆うシートバックパッドと、前記シートバックフレームおよび前記シートバックパッドを覆うシートバック表皮と、を備え、
前記ヘッドレストは、前記ヘッドレストフレームの一部を覆うヘッドレストパッドと、前記ヘッドレストパッドを覆うヘッドレスト表皮と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレストを備える乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドレストとして、表皮と、表皮内に注入された発泡性ウレタンが硬化してなるパッド体と、表皮内に部分的に挿入配置されたステーとからなるものが知られている(特許文献1)。この技術では、ステーは、シートバックに装着される左右一対の直線状軸部を有するパイプ材からなり、直線状軸部の上端から、折曲部が前方かつ下方に延びて形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ヘッドレストのフレームについては、強度の向上が望まれている。
【0005】
そこで、ヘッドレストフレームの強度を向上させることができる乗物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
乗物用シートは、ヘッドレストを備える乗物用シートであって、前記ヘッドレストは、骨格を構成するヘッドレストフレームを備え、前記ヘッドレストフレームは、左右に離間して配置された上下に延びる一対のピラー部、前記一対のピラー部の上端からそれぞれ前方に延びる一対の上フレーム部、および、前記一対の上フレーム部の前端からそれぞれ下方に延びる一対の前フレーム部を有するメインフレームと、前記一対の前フレーム部の間に配置されて、前記一対の前フレーム部に固定された板状の補強部材と、を備える構成とすることができる。
【0007】
ヘッドレストフレームが補強部材を備えることで、ヘッドレストフレームの強度を向上させることができる。
【0008】
また、前記補強部材は、前記上フレーム部の上端よりも下、かつ、前記前フレーム部の下端よりも上に配置されている構成であってもよい。
【0009】
補強部材が、上フレーム部の上端よりも下、かつ、前フレーム部の下端よりも上に配置されていることで、補強部材をコンパクトに配置することができる。
【0010】
また、前記補強部材の前面は、前記前フレーム部の前面よりも後ろに配置されている構成であってもよい。
【0011】
補強部材の前面が前フレーム部の前面よりも後ろに配置されていることで、補強部材を前フレーム部に対して前に飛び出さないようにコンパクトに配置することができる。
【0012】
また、前記補強部材は、前板部と、前記前板部の縁部から後方に延びるフランジ部とを有し、前記フランジ部は、前記フランジ部の上端部を含むフランジ上部と、前記フランジ上部よりも下に位置するフランジ下部とを有し、前記フランジ上部は、前記フランジ下部よりも後方に突出している構成であってもよい。
【0013】
補強部材のフランジ部がフランジ下部よりも後方に突出するフランジ上部を有することで、荷重がかかりやすい補強部材の上部の剛性を向上させることができる。
【0014】
また、前記補強部材は、前記フランジ部の上端部から後方に突出舌部を有する構成であってもよい。
【0015】
補強部材がフランジ部の上端部から後方に突出し、湾曲して下方に延びる舌部を有することで、補強部材の上部の剛性をより向上させることができる。
【0016】
また、前記舌部は、前記フランジ部の上端部の左右中央部に位置し、左右の幅が前記フランジ部の上端部の左右の幅よりも小さい構成であってもよい。
【0017】
舌部の左右の幅がフランジ部の上端部の左右の幅よりも小さいことで、舌部により補強部材の上部の剛性を向上させつつ、補強部材のコンパクト化、軽量化を実現することができる。
【0018】
また、前記フランジ部は、前記フランジ上部と前記フランジ下部の間に位置する脆弱部であって、前記フランジ下部の後端に対し前方に凹む形状の脆弱部を有する構成であってもよい。
【0019】
フランジ部がフランジ上部とフランジ下部の間に脆弱部を有することで、補強部材に衝撃が加わった場合、補強部材は、脆弱部付近で曲がるように変形することができる。これにより、衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0020】
また、前記前板部は、後方に凹む形状の凹部を有する構成であってもよい。
【0021】
前板部が凹部を有することで、補強部材の剛性を向上させることができるので、補強部材によりヘッドレストフレームの強度をより向上させることができる。
【0022】
また、前記前板部は、前記凹部の底に、前後に貫通する貫通孔を有する構成であってもよい。
【0023】
前板部の貫通孔が凹部の底に形成されることで、貫通孔が形成されることによる補強部材の強度低下を抑制することができる。
【0024】
また、乗物用シートは、シートクッションと、シートバックと、を備え、前記シートクッションは、骨格を構成するシートクッションフレームと、前記シートクッションフレームを覆うシートクッションパッドと、前記シートクッションフレームおよび前記シートクッションパッドを覆うシートクッション表皮と、を備え、前記シートバックは、骨格を構成するシートバックフレームと、前記シートバックフレームを覆うシートバックパッドと、前記シートバックフレームおよび前記シートバックパッドを覆うシートバック表皮と、を備え、前記ヘッドレストは、前記ヘッドレストフレームの一部を覆うヘッドレストパッドと、前記ヘッドレストパッドを覆うヘッドレスト表皮と、を備える構成であってもよい。
【発明の効果】
【0025】
ヘッドレストフレームが補強部材を備えることで、ヘッドレストフレームの強度を向上させることができる。
【0026】
また、補強部材が、上フレーム部の上端よりも下、かつ、前フレーム部の下端よりも上に配置されていることで、補強部材をコンパクトに配置することができる。
【0027】
また、補強部材の前面が前フレーム部の前面よりも後ろに配置されていることで、補強部材を前フレーム部に対して前に飛び出さないようにコンパクトに配置することができる。
【0028】
また、補強部材のフランジ部がフランジ下部よりも後方に突出するフランジ上部を有することで、荷重がかかりやすい補強部材の上部の剛性を向上させることができる。
【0029】
また、補強部材がフランジ部の上端部から後方に突出し、湾曲して下方に延びる舌部を有することで、補強部材の上部の剛性をより向上させることができる。
【0030】
また、舌部の左右の幅がフランジ部の上端部の左右の幅よりも小さいことで、舌部により補強部材の上部の剛性を向上させつつ、補強部材のコンパクト化、軽量化を実現することができる。
【0031】
また、フランジ部がフランジ上部とフランジ下部の間に脆弱部を有することで、補強部材に衝撃が加わった場合、補強部材は、脆弱部付近で曲がるように変形することができる。これにより、衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0032】
また、前板部が凹部を有することで、補強部材の剛性を向上させることができるので、補強部材によりヘッドレストフレームの強度をより向上させることができる。
【0033】
また、前板部の貫通孔が凹部の底に形成されることで、貫通孔が形成されることによる補強部材の強度低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】実施形態に係る乗物用シートの斜視図である。
【
図2】シートクッションフレームとシートバックフレームの斜視図である。
【
図4】補強部材を前から見た斜視図(a)と、後ろから見た斜視図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、乗物用シートの実施形態について説明する。なお、本明細書において、前後、左右、上下は、シートに座った者(着座者)から見た、前後、左右、上下に対応する。
図1に示すように、実施形態に係る乗物用シートは、乗物の一例としての車両、具体的には、自動車に搭載される車両用シートSとして構成されている。車両用シートSは、自動車のリアシートであり、シートクッションS1と、シートバックS2と、ヘッドレストS3とを備える。
【0036】
図1および
図2に示すように、シートクッションS1は、骨格を構成するシートクッションフレームF1と、シートクッションフレームF1を覆うシートクッションパッドP1と、シートクッションフレームF1およびシートクッションパッドP1を覆うシートクッション表皮C1とを備える。シートクッションS1は、シートクッションフレームF1に、シートクッションパッドP1とシートクッション表皮C1を被せることで構成されている。
【0037】
シートクッションフレームF1は、例えば、金属製のパイプからなる。シートクッションフレームF1は、左右に間隔をあけて対向して配置された左右のシートクッションサイドフレーム11,12と、左右のシートクッションサイドフレーム11,12の前端部同士を連結するフロントフレーム13と、左右のシートクッションサイドフレーム11,12の後端部同士を連結するリアフレーム14とを有する。シートクッションパッドP1は、ウレタンフォームなどからなり、シートクッション表皮C1は、布地や皮革などからなる。
【0038】
シートバックS2は、骨格を構成するシートバックフレームF2と、シートバックフレームF2を覆うシートバックパッドP2と、シートバックフレームF2およびシートバックパッドP2を覆うシートバック表皮C2とを備える。シートバックS2は、シートバックフレームF2に、シートバックパッドP2とシートバック表皮C2を被せることで構成されている。
【0039】
シートバックフレームF2は、シートバックメインフレーム20と、第1クロスメンバ31と、第2クロスメンバ32と、パンフレーム40とを備える。
【0040】
シートバックメインフレーム20は、例えば、金属製のパイプからなる。シートバックメインフレーム20は、上フレーム部21と、上フレーム部21に対し間隔をあけて対向して配置された下フレーム部22と、上フレーム部21と下フレーム部22の左端部同士を連結する左フレーム部23と、上フレーム部21と下フレーム部22の右端部同士を連結し、左フレーム部23に対し間隔をあけて対向して配置された右フレーム部24とを有する。
【0041】
第1クロスメンバ31は、金属製のパイプからなり、左右方向における左フレーム部23と右フレーム部24の間の位置で、上フレーム部21と下フレーム部22を連結している。第2クロスメンバ32は、金属製のパイプからなり、左右方向における第1クロスメンバ31と右フレーム部24の間の位置で、上フレーム部21と下フレーム部22を連結している。
【0042】
上フレーム部21には、ヘッドレストガイドを保持する左右一対のホルダ25L,25Rが2組固定されている。左の一対のホルダ25Lは、左右方向における第1クロスメンバ31と左フレーム部23の間の位置で上フレーム部21の前面に溶接により固定されている。また、右の一対のホルダ25Rは、左右方向における第2クロスメンバ32と右フレーム部24の間の位置で上フレーム部21の前面に溶接により固定されている。
【0043】
パンフレーム40は、金属板を板金加工することにより形成されており、シートバックメインフレーム20を後ろから覆うように配置されている。パンフレーム40は、溶接などによりシートバックメインフレーム20に固定されている。また、パンフレーム40は、溶接などにより第1クロスメンバ31と第2クロスメンバ32にも固定されている。
【0044】
シートバックパッドP2は、ウレタンフォームなどからなり、シートバック表皮C2は、布地や皮革などからなる。
【0045】
図1に示すように、ヘッドレストS3は、骨格を構成するヘッドレストフレームF3(
図3参照)と、ヘッドレストフレームF3の一部を覆うヘッドレストパッドP3と、ヘッドレストパッドP3を覆うヘッドレスト表皮C3とを備える。
【0046】
ヘッドレストS3は、ヘッドレスト表皮C3内に、ヘッドレストフレームF3の一部を配置した後、ヘッドレストパッドP3の材料を注入して硬化させることで形成されている。ヘッドレストパッドP3は、ウレタンフォームなどの発泡樹脂からなり、ヘッドレスト表皮C3は、布地や皮革などからなる。
【0047】
図3に示すように、ヘッドレストフレームF3は、メインフレーム70と、板状の補強部材80とを備える。
メインフレーム70は、金属製のパイプを屈曲させることにより形成されており、一対のピラー部71と、一対の上フレーム部72と、一対の前フレーム部73と、接続フレーム部74とを有する。
【0048】
一対のピラー部71は、一対のホルダ25Lまたは一対のホルダ25Rに保持されたヘッドレストガイドに挿入される部分であり、それぞれ上下に延びている。一対のピラー部71は、左右に離間して配置されている。
一対の上フレーム部72は、一対のピラー部71の上端からそれぞれ前方に延びている。
【0049】
一対の前フレーム部73は、一対の上フレーム部72の前端からそれぞれ下方に延びている。
接続フレーム部74は、左右に延びて、一対の前フレーム部73の下端同士を接続している。
【0050】
図4(a),(b)に示すように、補強部材80は、金属板を屈曲させることにより形成されており、前板部81と、フランジ部82と、舌部83とを有する。
前板部81は、略矩形状を有する。また、前板部81は、凹部81Aと、貫通孔81Bとを有する。凹部81Aは、後方に凹む形状の凹部である。本実施形態では、凹部81Aは、左右の長い略矩形状を有し、前板部81の上下方向における中央部の下寄りの位置に設けられている。
【0051】
貫通孔81Bは、前後に貫通する略円形の孔である。貫通孔81Bは、凹部81Aの底に形成されている。本実施形態では、貫通孔81Bは、2つ形成されている。2つの貫通孔81Bは、凹部81Aの底で左右に離間して配置されている。2つの貫通孔81Bは、補強部材80をメインフレーム70に溶接して固定する際に、補強部材80を支えるための治具を挿入する孔である。
【0052】
フランジ部82は、前板部81の縁部から後方に延びる部分である。フランジ部82は、前板部81の上縁部から後方に延びる上フランジ部82Aと、前板部81の下縁部から後方に延びる下フランジ部82Bと、前板部81の左縁部から後方に延びる左フランジ部82Cと、前板部81の右縁部から後方に延びる右フランジ部82Dとを一体に有している。左フランジ部82Cと右フランジ部82Dは、左右対称の形状を有する。前板部81とフランジ部82(82A~82D)との接続部84は、丸みを帯びた湾曲形状を有している(
図5および
図6も参照)。
【0053】
図5に示すように、フランジ部82は、フランジ上部821と、フランジ下部822と、脆弱部823とを有する。
フランジ上部821は、フランジ部82の上端部である上フランジ部82Aを含む。本実施形態では、フランジ上部821は、上フランジ部82Aと、左フランジ部82Cの上端部と、右フランジ部82D(
図4(b)参照)の上端部とからなる。
【0054】
フランジ下部822は、フランジ上部821よりも下に位置する。本実施形態では、フランジ下部822は、左フランジ部82Cの上下方向における中央部から下の部分と、右フランジ部82Dの上下方向における中央部から下の部分と、下フランジ部82Bとからなる。フランジ上部821は、フランジ下部822よりも後方に突出している。すなわち、フランジ上部821の前板部81から延びる方向の長さは、フランジ下部822の前板部81から延びる方向の長さよりも長い。
【0055】
脆弱部823は、フランジ上部821とフランジ下部822の間に位置する。脆弱部823は、左フランジ部82Cおよび右フランジ部82Dのうち、フランジ下部822の後端(一点鎖線参照)に対し前方に凹む形状の部分である。脆弱部823の前板部81から延びる方向の長さは、フランジ下部822の前板部81から延びる方向の長さよりも短い。
【0056】
図4(b)および
図5に示すように、舌部83は、上フランジ部82Aから後方に突出し、湾曲して下方に延びる部分である。
図6に示すように、舌部83は、左右方向において、上フランジ部82Aの左右中央部に対応する位置に位置している。舌部83は、左右の幅W83が上フランジ部82Aの左右の幅W82よりも小さい。舌部83の先端部に位置する左右の角部83Aは、角が取られて丸みを帯びた形状を有する。
【0057】
図7に示すように、補強部材80は、メインフレーム70の一対の前フレーム部73の間に配置されている。補強部材80は、一対の前フレーム部73に固定されている。詳しくは、補強部材80は、前板部81の左右の端部が溶接により一対の前フレーム部73に固定されている(溶接部W1,W2参照)。また、図示は省略するが、補強部材80は、左右のフランジ部82C,82Dの先端部(後端部)が、溶接部W1,W2の後ろの位置で、溶接により一対の前フレーム部73に固定されている。
【0058】
本実施形態では、溶接部W1,W2は、前フレーム部73が延びる方向における位置が凹部81Aと重なる。また、溶接部W1,W2は、前フレーム部73が延びる方向における位置が2つの貫通孔81Bと重なる。
【0059】
図8に示すように、補強部材80は、メインフレーム70の上フレーム部72の上端E1よりも下、かつ、前フレーム部73の下端E2よりも上に配置されている。補強部材80は、上下方向において、
図8に示す2本の一点鎖線の間の位置に配置されている。また、補強部材80の前面80Fは、前フレーム部73の前面73Fよりも後ろに配置されている。言い換えると、補強部材80は、前フレーム部73よりも前に飛び出さないように配置されている。
【0060】
また、補強部材80の脆弱部823から下の部分は、前フレーム部73の後面73Rよりも前に配置されている。言い換えると、補強部材80の脆弱部823から下の部分は、前フレーム部73よりも後ろに飛び出さないように配置されている。さらに言えば、補強部材80の脆弱部823から下の部分は、前フレーム部73の前後方向における幅内に収まるサイズに形成されている。
【0061】
図8に仮想線で示したヘッドレスト表皮C3およびヘッドレストパッドP3は、ヘッドレストフレームF3のうち、メインフレーム70の一対のピラー部71の上端部、一対の上フレーム部72、一対の前フレーム部73および接続フレーム部74(
図3参照)と、補強部材80とを覆っている。一対のピラー部71の上端部よりも下の部分は、外部に露出しており、一対のホルダ25Lまたは一対のホルダ25Rに保持されたヘッドレストガイドに挿入されることで、ヘッドレストS3は、シートバックS2に取り付けられている。
【0062】
本実施形態の車両用シートSによれば、ヘッドレストフレームF3が補強部材80を備えることで、ヘッドレストフレームF3の強度を向上させることができる。
【0063】
また、補強部材80が、上フレーム部72の上端E1よりも下、かつ、前フレーム部73の下端E2よりも上に配置されていることで、補強部材80をコンパクトに配置することができる。
【0064】
また、補強部材80の前面80Fが前フレーム部73の前面73Fよりも後ろに配置されていることで、補強部材80を前フレーム部73に対して前に飛び出さないようにコンパクトに配置することができる。
【0065】
また、補強部材80のフランジ部82がフランジ下部822よりも後方に突出するフランジ上部821を有することで、荷重がかかりやすい補強部材80の上部の剛性を向上させることができる。
【0066】
また、補強部材80が上フランジ部82Aから後方に突出し、湾曲して下方に延びる舌部83を有することで、補強部材80の上部の剛性をより向上させることができる。
【0067】
また、舌部83の左右の幅W83が上フランジ部82Aの左右の幅W82よりも小さいことで、舌部83により補強部材80の上部の剛性を向上させつつ、補強部材80のコンパクト化、軽量化を実現することができる。また、舌部83が小さいことで、ヘッドレスト表皮C3内にヘッドレストフレームF3の一部を配置してヘッドレスト表皮C3内にヘッドレストパッドP3の材料を注入する際に、ヘッドレストパッドP3の材料を良好に流動させることができる。
【0068】
また、フランジ部82がフランジ上部821とフランジ下部822の間に脆弱部823を有することで、補強部材80に衝撃が加わった場合、補強部材80は、脆弱部823付近で曲がるように変形することができる。これにより、衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0069】
また、前板部81が凹部81Aを有することで、補強部材80の剛性を向上させることができるので、補強部材80によりヘッドレストフレームF3の強度をより向上させることができる。
【0070】
また、前板部81の貫通孔81Bが凹部81Aの底に形成されることで、貫通孔81Bが形成されることによる補強部材80の強度低下を抑制することができる。
【0071】
また、前板部81とフランジ部82との接続部84が丸みを帯びた湾曲形状を有すること、また、舌部83が湾曲した部分や丸みを帯びた形状の角部83Aを有することで、ヘッドレストフレームF3を覆うヘッドレストパッドP3の傷みを抑制することができる。
【0072】
また、接続部84が丸みを帯びた湾曲形状を有すること、また、舌部83が湾曲した部分や丸みを帯びた形状の角部83Aを有することで、ヘッドレスト表皮C3内にヘッドレストフレームF3の一部を配置してヘッドレスト表皮C3内にヘッドレストパッドP3の材料を注入する際に、ヘッドレストパッドP3の材料を良好に流動させることができる。
【0073】
また、補強部材80の脆弱部823から下の部分が前フレーム部73の前後方向における幅内に収まるサイズに形成されていることで、補強部材80のコンパクト化、軽量化を実現することができる。
【0074】
また、溶接部W1,W2の、前フレーム部73が延びる方向における位置が凹部81Aと重なることで、前板部81(補強部材80)の剛性が向上した部分の近くで補強部材80をメインフレーム70に固定することができる。これにより、補強部材80のメインフレーム70に対する取付強度を向上させることができるので、ヘッドレストフレームF3の強度をより向上させることができる。
【0075】
以上、実施形態について説明したが、乗物用シートは以下に例示するように適宜変形して実施することができる。
【0076】
前記実施形態では、舌部83が上フランジ部82Aの左右中央部に対応する位置に位置していたが、例えば、舌部は、左また右に寄った位置に位置していてもよい。また、前記実施形態では、舌部83の左右の幅W83が上フランジ部82Aの左右の幅W82よりも小さかったが、例えば、舌部の左右の幅は、フランジ部の上端部の左右の幅と略同じであってもよい。また、補強部材は、舌部を備えない構成であってもよい。
【0077】
前記実施形態では、フランジ部82が脆弱部823を有する構成であったが、例えば、フランジ部は、脆弱部が形成されていない構成であってもよい。
【0078】
前記実施形態では、フランジ部82がフランジ上部821とフランジ下部822を有し、フランジ上部821がフランジ下部822よりも後方に突出している構成であったが、例えば、フランジ上部とフランジ下部の後方への突出量は、略同じであってもよい。
【0079】
前記実施形態では、前板部81が凹部81Aの底に2つの貫通孔81Bを有する構成であったが、例えば、貫通孔の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、凹部の底に貫通孔が形成されていない構成であってもよい。
【0080】
前記実施形態では、前板部81が後方に凹む形状の1つの凹部81Aを有する構成であったが、例えば、前板部は、複数の凹部を有する構成であってもよい。また、前板部は、後方に凹む形状の凹部が形成されていない構成であってもよい。
【0081】
前記実施形態では、補強部材80の前面80Fが前フレーム部73の前面73Fよりも後ろに配置されていたが、例えば、補強部材は、前フレーム部の前面に対して多少前に飛び出した状態で配置されていてもよい。
【0082】
前記実施形態では、補強部材80が、上フレーム部72の上端E1よりも下、かつ、前フレーム部73の下端E2よりも上に配置されていたが、例えば、補強部材は、上端が上フレーム部の上端よりも多少上に位置していてもよい。また、補強部材は、下端が前フレーム部の下端よりも多少下に位置していてもよい。
【0083】
前記実施形態では、補強部材80が、前板部81と、前板部81の上下左右の縁部から後方に延びる一連のフランジ部82とを有する略箱形状であったが、例えば、補強部材は、前板部と、前板部の左右の縁から後方に延びる左右の側板部とを有する略U字形状であってもよい。また、補強部材は、前板部のみからなるような平らな板状であってもよい。
【0084】
前記実施形態では、メインフレーム70が一対の前フレーム部73の下端同士を接続する接続フレーム部74を有する構成であったが、例えば、メインフレームは、接続フレーム部を有しない構成であってもよい。
【0085】
前記実施形態では、乗物用シートとして、自動車に搭載される車両用シートSを例示したが、例えば、車両用シートは、鉄道車両などに搭載されるシートであってもよい。また、乗物用シートは、車両以外の乗物、例えば、飛行機や船舶などに搭載されるシートであってもよい。
【0086】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素は、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0087】
70 メインフレーム
71 ピラー部
72 上フレーム部
73 前フレーム部
73F 前面
80 補強部材
80F 前面
81 前板部
81A 凹部
81B 貫通孔
82 フランジ部
82A 上フランジ部
83 舌部
821 フランジ上部
822 フランジ下部
823 脆弱部
C1 シートクッション表皮
C2 シートバック表皮
C3 ヘッドレスト表皮
E1 上端
E2 下端
F1 シートクッションフレーム
F2 シートバックフレーム
F3 ヘッドレストフレーム
P1 シートクッションパッド
P2 シートバックパッド
P3 ヘッドレストパッド
S 車両用シート
S1 シートクッション
S2 シートバック
S3 ヘッドレスト