(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090245
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント
(51)【国際特許分類】
A01M 23/08 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A01M23/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206000
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】507234427
【氏名又は名称】公立大学法人岩手県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正貴
(72)【発明者】
【氏名】辻 盛生
(72)【発明者】
【氏名】高橋 陽一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 未来
(72)【発明者】
【氏名】菅原 雄太
(72)【発明者】
【氏名】工藤 人己
(72)【発明者】
【氏名】石川 一希
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA06
2B121BA13
2B121BA36
2B121BA39
2B121BA42
2B121BA43
2B121BB02
2B121EA30
2B121FA02
2B121FA03
(57)【要約】
【課題】従来からある安価なザリガニ捕獲トラップを利用し、ザリガニの捕獲効率を向上させるとともに、構造が簡単で製作コストが安く、且つ、着脱しやすいザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントを提供すること。
【解決手段】ザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント30は、ザリガニ捕獲用の籠トラップ10に取り付けるものであり、可撓性を有する矩形状のシート31と、シート31に設けられザリガニを落下させる落し穴32と、シート31の一対の端部に設けられ円筒状に丸めたシート31の端部同士を接続する接続部材34とを備えている。シート31は、籠トラップ10の取出し口15から捕獲室14に出し入れ可能であり、シート31を円筒状に丸めて進入口22にシート31の縁部が重なるようにして接続部材34を接続し、且つ、落し穴32が下方を向くように配置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームに網が張られ内部に捕獲室が形成された籠本体と、前記籠本体の端部から内部に向かって縮径し進入口を介して前記捕獲室に連通する漏斗状部と、前記籠本体に開閉可能に設けられ捕獲されたザリガニを取り出し可能な取出し口とを備えた、ザリガニ捕獲用の籠トラップに取り付けるザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントであって、
可撓性を有する矩形状のシートと、前記シートに設けられ前記ザリガニを落下させる落し穴と、前記シートの一対の端部に設けられ円筒状に丸めた前記シートの前記端部同士を接続する接続部材とを備え、
前記シートは、前記取出し口から前記捕獲室に出し入れ可能であり、前記シートを円筒状に丸めて前記進入口に前記シートの縁部が重なるようにして前記接続部材を接続し、且つ、前記落し穴が下方を向くように配置することで前記籠トラップに着脱可能に設けられていることを特徴とするザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント。
【請求項2】
請求項1記載のザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントであって、
前記接続部材は、樹脂製のホックであり、前記シートの一対の端部に複数設けられていることを特徴とするザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントであって、
前記シートは、合成樹脂製で矩形状に形成され、シート前後方向の長さL1が30cm、シート横幅方向の長さL2が26cmであり、
前記落し穴は、矩形状に形成され、落し穴前後方向の長さL3が9cm、落し穴横幅方向の長さL4が9cmであることを特徴とするザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載のザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントであって、
前記シートは、材質がポリエステルまたはポリプロピレンであり、厚さが0.3mm以上0.6mm以下であることを特徴とするザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載のザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントであって、
前記シートは、半透明または不透明であることを特徴とするザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント。
【請求項6】
請求項1又は請求項2記載のザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントであって、
前記籠トラップは、前記籠本体の対向する端部から内部に向かって縮径し前記進入口を介して前記捕獲室に連通する2つの漏斗状部が対向して設けられ、
前記シートの筒状に丸められた状態の両側の縁部がそれぞれ対向する前記漏斗状部の前記進入口に重なるようにして取り付けられていることを特徴とするザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来からある市販の魚介類捕獲用トラップをアメリカザリガニ捕獲用に改良するアタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
全国各地の池、沼、農業水路などにはアメリカザリガニが生息している。アメリカザリガニは、日本生態学会による侵略的外来種ワースト100に指定されており、畦畔の深堀による水田の漏水や在来生物の捕食等による生態系の劣化を招くため、各地で駆除が実施されている。
【0003】
しかしながら、完全駆除に成功した事例はなく、効率の高い駆除技術の開発が求められている。このようなザリガニを捕獲する技術として、従来から網を構成要素とする籠を利用した特許文献1に開示された甲殻類等の捕獲用かごが知られている。
【0004】
特許文献1の甲殻類等の捕獲用かごは、重りを兼用した基部環体と、この環体に折り畳み自在に連接した張り骨体と、基部環体及び張り骨体により形成されるかご骨組みの外周に張設したかご網体と、このかご網体の側面中央部に侵入開口部を楕円形状に形成し、かご網体内部へ筒状に設けた甲殻類等の侵入孔と、この侵入孔のかご網体内部における楕円形状筒体の戻らず部とからなる。戻らず部の先端口縁部は糸を設けた自由端であり、進入孔の楕円形状に形成した内側開口縁と、この内側開口縁より内側に位置し、侵入開口部より内側に向けて徐々に縮径し、楕円形状の侵入路を形成し、先端縁部に向かってテーパ形状とし、且つ、侵入孔の内周面に連続して戻らず部を形成し、戻らず部がかご網体の周面より横方向内側に突出するように構成されている。
【0005】
アメリカザリガニは、エサの匂いにつられて、かご網体をよじ登り侵入孔を通り、戻らず部からかご網体内部へ落下する。しかし、アメリカザリガニは脚がかご網体に引っ掛かるため、一端捕獲されたアメリカザリガニの中には、かご網体内部をよじ登り、逆さま姿勢になっても落ちずに戻らず部から進入孔を逆に進み外部に逃げてしまう個体がある。このため、ザリガニの捕獲効率が低下する。
【0006】
また、ザリガニの捕獲効率を高める捕獲装置として特許文献2の捕獲装置が知られている。特許文献2の捕獲装置は、捕獲部と隔離部と自動給餌装置とを有する。捕獲部は捕獲室とアメリカザリガニの進入口とを有する。捕獲室は透光性を有しアメリカザリガニを収容可能である。進入口は外部から捕獲室へアメリカザリガニを進入させ、外部への脱出は阻止する。隔離部は収容室とアメリカザリガニの収容口とを有する。収容室は遮光性を有しアメリカザリガニを収容可能である。収容室は捕獲室の下部に隣接して設けられている。収容口は捕獲室から収容室へアメリカザリガニを進入させ、捕獲室への後退は阻止する。自動給餌装置は捕獲室の内部に定期的に給餌する。
【0007】
しかし、特許文献2の捕獲装置は、捕獲室と収容室の上下2段構造であり、それぞれに進入口を設け、自動給餌装置も必要となることから、構造が複雑で装置全体が高価になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭61-80663号公報
【特許文献2】特開2017-184644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、従来からある安価な魚介類捕獲用トラップを利用し、ザリガニの捕獲効率を向上させるとともに、構造が簡単で製作コストが安く、且つ、着脱しやすいザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
フレームに網が張られ内部に捕獲室が形成された籠本体と、前記籠本体の端部から内部に向かって縮径し進入口を介して前記捕獲室に連通する漏斗状部と、前記籠本体に開閉可能に設けられ捕獲されたザリガニを取り出し可能な取出し口とを備えた、ザリガニ捕獲用の籠トラップに取り付けるザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントであって、
可撓性を有する矩形状のシートと、前記シートに設けられ前記ザリガニを落下させる落し穴と、前記シートの一対の端部に設けられ円筒状に丸めた前記シートの前記端部同士を接続する接続部材とを備え、
前記シートは、前記取出し口から前記捕獲室に出し入れ可能であり、前記シートを円筒状に丸めて前記進入口に前記シートの縁部が重なるようにして前記接続部材を接続し、且つ、前記落し穴が下方を向くように配置することで前記籠トラップに着脱可能に設けられていることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、ザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントは、可撓性を有する矩形状のシートと、シートに設けられザリガニを落下させる落し穴と、シートの一対の端部に設けられ円筒状に丸めたシートの端部同士を接続する接続部材とを備えた簡単な構成であるので、製作コストを安くでき、簡単に作ることができる。さらに、シートは、取出し口から捕獲室に出し入れ可能であり、シートを円筒状に丸めて進入口にシートの縁部が重なるようにして接続部材を接続し、且つ、落し穴が下方を向くように配置することで籠トラップに着脱可能に設けることができるので、既存のザリガニ捕獲トラップに簡単に着脱することができる。さらに、ザリガニ捕獲用の籠トラップにシートで構成されたザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントを取り付けるので、一端捕獲されたザリガニが逃げようとしても、シートを掴むこができず外部に逃げることができないので、ザリガニの捕獲効率を向上させることができる。
【0012】
また、ザリガニ捕獲用の籠トラップは、フレームに網が張られ内部に捕獲室が形成された籠本体と、籠本体の端部から内部に向かって縮径し進入口を介して捕獲室に連通する漏斗状部と、籠本体に開閉可能に設けられ捕獲されたザリガニを取り出し可能な取出し口とを備えたものであり、一般に市販されている安価なものである。このような安価なザリガニ捕獲用の籠トラップに、安価なザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントを取り付けるので、全体としても製作コストを低減することができる。結果、従来からある安価なザリガニ捕獲トラップを利用し、構造が簡単で製作コストが安く、且つ、着脱しやすいザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントを提供することができる。
【0013】
好ましくは、前記接続部材は、樹脂製のホックであり、前記シートの一対の端部に複数設けられている。
【0014】
かかる構成によれば、接続部材は、樹脂製のホックであるので、長時間水中に入れておいても金属のように錆びることがなく、水中での耐久性を向上させることができる。さらに、接続部材は樹脂製のホックであり、シートの一対の端部に複数設けられているので、接続強度を向上させ、ザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント全体としての製品強度も向上させることができる。
【0015】
好ましくは、前記シートは、合成樹脂製で矩形状に形成され、シート前後方向の長さL1が30cm、シート横幅方向の長さL2が26cmであり、
前記落し穴は、矩形状に形成され、落し穴前後方向の長さL3が9cm、落し穴横幅方向の長さL4が9cmである。
【0016】
かかる構成によれば、シートは、合成樹脂製で矩形状に形成され、シート前後方向の長さL1が30cm、シート横幅方向の長さL2が26cmであり、落し穴は、矩形状に形成され、落し穴前後方向の長さL3が9cm、落し穴横幅方向の長さL4が9cmであるので、シートが簡単な形状であり、容易に且つ安価に製作することができる。さらに、落し穴は、矩形状に形成され、落し穴前後方向の長さL3が9cm、落し穴横幅方向の長さL4が9cmであるので、大型のアメリカザリガニであっても落とすことができ、さらにザリガニが逃げようとしてもシート部分の面積が広いので掴むことができず、外部に逃げることができないのでザリガニの捕獲効率を向上させることができる。
【0017】
好ましくは、前記シートは、材質がポリエステルまたはポリプロピレンであり、厚さが0.3mm以上0.6mm以下である。
【0018】
かかる構成によれば、シートは、材質がポリエステルまたはポリプロピレンであり、厚さが0.3mm以上0.6mm以下であるので、十分な耐久性を持たせることができる。また、シートは、材質がポリエステルまたはポリプロピレンであり、厚さが0.3mm以上0.6mm以下であるので、一般的に市販されている厚口のクリアホルダーをハサミやカッターで加工して製作でき、製作コストを安価にすることができる。
【0019】
好ましくは、前記シートは、半透明または不透明である。
【0020】
一般的に、ザリガニは狭い空間に長時間いるといわゆる共食いを行うことがあり、狭い空間に自身よりも大型のザリガニがいる場合は避けて近づかないことがある。この点、かかる構成によれば、シートは、半透明または不透明であるので、シートの裏側が見えない。先に落し穴から捕獲室に落下したザリガニがいた場合でも、次のザリガニがシート上を通過する際に捕獲室にいるザリガニが見えないので、避けることなくそのまま進み落し穴から捕獲室に落下する。そのため、ザリガニの捕獲効率を向上させることができる。
【0021】
好ましくは、前記籠トラップは、前記籠本体の対向する端部から内部に向かって縮径し前記進入口を介して前記捕獲室に連通する2つの漏斗状部が対向して設けられ、
前記シートの筒状に丸められた状態の両側の縁部がそれぞれ対向する前記漏斗状部の前記進入口に重なるようにして取り付けられている。
【0022】
かかる構成によれば、シートの筒状に丸められた状態の両側の縁部がそれぞれ対向する漏斗状部の進入口に重なるようにして取り付けられているので、籠トラップの両側からザリガニを誘い込むことができ、ザリガニの捕獲効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
従来からある安価なザリガニ捕獲トラップを利用し、ザリガニの捕獲効率を向上させるとともに、構造が簡単で製作コストが安く、且つ、着脱しやすいザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施例に係るザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントを籠トラップに取り付けた状態の斜視図である。
【
図2】実施例に係るザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントを籠トラップに取り付けた状態の側面図である。
【
図5】
図5(A)は実施例に係るザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントの平面図である。
図5(B)は実施例に係るザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントを円筒状にした斜視図である。
【
図6】
図6(A)は実施例に係るザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントを籠トラップに入れる作用図である。
図6(B)は実施例に係るザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントを籠トラップに取り付ける作用図である。
図6(C)は実施例に係るザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントを籠トラップに取り付けた状態の作用図である。
【
図7】
図7(A)は比較例に係る籠トラップの作用図である。
図7(B)は実施例に係るザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントを取り付けた籠トラップの作用図である。
【
図8】比較例に係る籠トラップを使用した場合の捕獲個体数と、実施例に係るザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントを籠トラップに取り付けた場合の捕獲個体数を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は、ザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント及び籠トラップを概念的(模式的)に示すものとする。
【実施例0026】
図1から
図3に示すように、ザリガニ捕獲用の籠トラップ10は、略螺旋状を呈し伸縮可能なフレーム12に網13が張られ内部に捕獲室14が形成された籠本体11と、籠本体11の一対の端部からそれぞれ内部に向かって縮径し進入口22を介して捕獲室14に連通する漏斗状部21と、対向する進入口22にそれぞれ設けられ互いに引っ張り合うことで漏斗状部21を支持する引っ張り紐23とを備えている。フレーム12は、弾性を有し、一対の端部を左右方向に広げるように付勢しており、自然状態では広がっている。
【0027】
また、ザリガニ捕獲用の籠トラップ10は、籠本体11に開閉可能に設けられ捕獲されたザリガニ40(
図7参照)を取り出し可能な取出し口15と、籠本体11の上部に開閉可能に設けられたエサ入れ口16と、籠本体11の上部にエサ入れ口16に連通して設けられエサを入れるエサ袋17とを備えている。取出し口15及びエサ入れ口16は、ファスナーにより開閉可能となっている。
【0028】
図4に示されるように、フレーム12を縮めて籠本体11を折り畳み、抑え紐19を巻き付けることで、ザリガニ捕獲用の籠トラップ10をコンパクトにまとめることができる。これにより、スペースを取らずに持ち運びを容易にすることができる。
【0029】
図1から
図3及び
図5に示されるように、ザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント30は、ザリガニ捕獲用の籠トラップに着脱可能に取り付けるものであり、可撓性を有する矩形状のシート31と、シート31に設けられザリガニ40を落下させる落し穴32と、シート31の一対の端部に設けられ円筒状に丸めたシート31の端部33同士を接続する接続部材34とを備えている。
【0030】
シート31は、合成樹脂製で矩形状に形成され、シート前後方向の長さL1が30cm、シート横幅方向の長さL2が26cmである。落し穴32は、矩形状に形成され、落し穴前後方向の長さL3が9cm、落し穴横幅方向の長さL4が9cmである。
【0031】
このように、シート31は、合成樹脂製で矩形状に形成され、シート前後方向の長さL1が30cm、シート横幅方向の長さL2が26cmであり、落し穴32は、矩形状に形成され、落し穴前後方向の長さL3が9cm、落し穴横幅方向の長さL4が9cmであるので、シート31が簡単な形状であり、容易に且つ安価に製作することができる。さらに、落し穴32は、矩形状に形成され、落し穴前後方向の長さL3が9cm、落し穴横幅方向の長さL4が9cmであるので、大型のアメリカザリガニであっても落とすことができ、さらにザリガニが逃げようとしてもシート31部分の面積が広いので掴むことができず、外部に逃げることができないのでザリガニの捕獲効率を向上させることができる。
【0032】
また、シート31は、材質がポリエステル(PET)またはポリプロピレン(PP)であり、厚さが0.3mm以上0.6mm以下である。
【0033】
このように、シート31は、材質がポリエステルまたはポリプロピレンであり、厚さが0.3mm以上0.6mm以下であるので、十分な耐久性を持たせることができる。また、シート31は、材質がポリエステルまたはポリプロピレンであり、厚さが0.3mm以上0.6mm以下であるので、一般的に市販されている厚口のクリアホルダーをハサミやカッターで加工して製作でき、製作コストを安価にすることができる。
【0034】
なお、実施例では、シート31は、材質がポリエステルまたはポリプロピレンとしたが、これに限定されず、可撓性を有し、水に対して耐久性があれば、ポリスチレン(PS)やポリカーボネート(PC)など他の一般的な合成樹脂の材質でもよい。また、実施例では、シート31の厚さを0.3mm以上0.6mm以下としたが、シート31の厚さは0.5mmとした方がより好ましい。シート31の厚さが0.5mmであれば、市販の厚口のクリアホルダー(クリアファイル)を使用でき、1トラップ当たりの材料コストを123.5円に低減でき、製品強度、作りやすさ、籠トラップ10への着脱のしやすさ、いずれも良好にすることができる。なお、市販のクリアホルダー(クリアファイル)を使用した場合は、シート31の中央部に折り目線(不図示)が形成され、持ち運びや収納の際の折り畳みを容易に行うことができる。
【0035】
また、シート31は、半透明または不透明である。一般的に、ザリガニ40(
図7参照)は狭い空間に長時間いるといわゆる共食いを行うことがあり、狭い空間に自身よりも大型のザリガニ40がいる場合は避けて近づかないことがある。この点、本発明の構成によれば、シート31は、半透明または不透明であるので、シート31の裏側が見えない。先に落し穴32から捕獲室14に落下したザリガニ40がいた場合でも、次のザリガニ40がシート31上を通過する際に捕獲室にいるザリガニ40が見えないので、避けることなくそのまま進み落し穴32から捕獲室14に落下する。そのため、ザリガニ40の捕獲効率を向上させることができる。
【0036】
接続部材34は、樹脂製のホックであり、シート31の一対の端部33、33に複数設けられている。このように、接続部材34は、樹脂製のホックであるので、長時間水中に入れておいても金属のように錆びることがなく、水中での耐久性を向上させることができる。さらに、接続部材34は樹脂製のホックであり、シート31の一対の端部33、33に複数設けられているので、接続強度を向上させ、ザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント30全体としての製品強度も向上させることができる。
【0037】
シート31は、取出し口15から捕獲室14に出し入れ可能であり、シート31を円筒状に丸めて進入口22にシート31の縁部35が重なるようにして接続部材34を接続し、且つ、落し穴32が下方を向くように配置することで籠トラップ10に着脱可能に設けられている。
【0038】
籠トラップ10は、籠本体11の対向する端部から内部に向かって縮径し進入口22を介して捕獲室14に連通する2つの漏斗状部21が対向して設けられ、シート31の筒状に丸められた状態の両側の縁部35がそれぞれ対向する漏斗状部21の進入口22に重なるようにして取り付けられている。
【0039】
次にザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント30の籠トラップ10への取り付け手順について説明する。
【0040】
図6(A)に示されるように、籠トラップ10の取出し口15を開き、シート31を曲げるなどしてザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント30を取出し口15から捕獲室14内に入れる。
【0041】
図6(B)に示されるように、引張紐23を覆うようにしてシート31を円筒状に丸め、漏斗状部21の進入口22にシート31の縁部35が重なるようにして接続部材34を接続し、且つ、落し穴32が下方を向くように配置することで、ザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント30を籠トラップ10に取り付ける。
【0042】
図6(C)に示されるように、籠トラップ10の取出し口15を閉じることで、ザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント30を籠トラップ10に取り付け完了状態となる。さらに、エサ入れ口16からエサ袋17にエサを入れて、籠トラップ10の準備が完了する。
【0043】
なお、籠トラップ10の持ち運びの際は、取出し口15を空け、接続部材34を外してシート31を取り外し、このシート31を取出し口15から取り出す。籠トラップ10を折り畳み(
図4参照)、シート31も折り畳むことで、全体として薄くコンパクトにでき、持ち運びや収納を容易に行うことができる。取り付け、取り外しの作業時間は、いずれも1分未満である。
【0044】
次に比較例に係る籠トラップの作用と、実施例に係るザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントを取り付けた籠トラップの作用について説明する。
【0045】
図7(A)に示されるように、比較例の籠トラップ10は、フレーム12に網13が張られ内部に捕獲室14が形成された籠本体11と、籠本体11の端部から内部に向かって縮径し進入口22を介して捕獲室14に連通する漏斗状部21と、この漏斗状部21の侵入口22に対向する漏斗状部(不図示)の進入口と互いに引っ張り合うことで支持する引っ張り紐23とを備えている。
【0046】
比較例の籠トラップ10では、ザリガニ40が漏斗状部22を伝って侵入口22から捕獲室14に一旦入るが、ザリガニ40の脚が網13に引っ掛かるためザリガニ40は漏斗状部21をよじ登り矢印(1)のように侵入口22から外部へ逃げてしまう。
【0047】
図7(A)に示されるように、実施例の籠トラップ10には、ザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント30が取り付けられている。ザリガニ40が漏斗状部22を伝って侵入口22からザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント30のシート31上に入り、落し穴32から捕獲室14に落ちる。
【0048】
実施例のザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント30を取り付けた籠トラップ10では、捕獲室14内のザリガニ40が漏斗状部40をよじ登ってもザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント30のシート31に脚が引っ掛からず矢印(2)のように捕獲室14内に再び落ちて外部へ逃げることができない。このため、実施例のザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント30を取り付けた籠トラップ10は、ザリガニの捕獲効率を向上させることができる。
【0049】
実際の池において、比較例に係る籠トラップ(アタッチメントなし)を使用した場合の捕獲個体数と、実施例に係るザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントを籠トラップに取り付けた場合の捕獲個体数の実験結果について説明する。
【0050】
図8に示されるように、実際の池では4月から10月までの2週間毎の捕獲したザリガニの個体数は、比較例の籠トラップ(アタッチメントなし)を使用した場合は203匹であり、実施例のザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントを取り付けた籠トラップを使用した場合は940匹であった。実施例の捕獲効率は比較例の捕獲効率の4倍以上となる。実施例のザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントを取り付けた籠トラップでは、比較例の籠トラップ(アタッチメントなし)に比較して、いずれの調査回(2週間に1回)においても多くの個体数が捕獲された。
【0051】
なお、ザリガニ40の全個体数を16匹とした室内実験においては、比較例の籠トラップ(アタッチメントなし)を使用した場合の捕獲率は20.7%であり、実施例のザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントを取り付けた籠トラップを使用した場合の捕獲率は62.5%であった。実施例のザリガニ捕獲トラップ用アタッチメントを取り付けた籠トラップでは、大型個体を中心に小型個体も捕獲されており、籠トラップ内への侵入を確認した10個体中9個体は籠トラップから脱出できなかった。
【0052】
次に実施例のザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント30の作用効果について説明する。
以上に述べたように、ザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント30は、可撓性を有する矩形状のシート31と、シート31に設けられザリガニ40を落下させる落し穴32と、シート31の一対の端部に設けられ円筒状に丸めたシート31の端部同士を接続する接続部材34とを備えた簡単な構成であるので、製作コストを安くでき、簡単に作ることができる。さらに、シート31は、取出し口15から捕獲室14に出し入れ可能であり、シート31を円筒状に丸めて進入口22にシート31の縁35部が重なるようにして接続部材34を接続し、且つ、落し穴32が下方を向くように配置することで籠トラップに着脱可能に設けることができるので、既存のザリガニ捕獲トラップに簡単に着脱することができる。
【0053】
さらに、ザリガニ捕獲用の籠トラップ10にシート31で構成されたザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント30を取り付けるので、一端捕獲されたザリガニ40が逃げようとしても、シート31を掴むこができず外部に逃げることができないので、ザリガニ40の捕獲効率を向上させることができる。
【0054】
また、ザリガニ捕獲用の籠トラップ10は、フレーム31に網13が張られ内部に捕獲室14が形成された籠本体11と、籠本体11の端部から内部に向かって縮径し進入口22を介して捕獲室14に連通する漏斗状部21と、籠本体11に開閉可能に設けられ捕獲されたザリガニ40を取り出し可能な取出し口15とを備えたものであり、一般に市販されている安価なものである。このような安価なザリガニ捕獲用の籠トラップ10に、安価なザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント30を取り付けるので、全体としても製作コストを低減することができる。結果、従来からある安価なザリガニ捕獲トラップを利用し、構造が簡単で製作コストが安く、且つ、着脱しやすいザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント30を提供することができる。
【0055】
さらに、シート31の筒状に丸められた状態の両側の縁部がそれぞれ対向する漏斗状部21の進入口22に重なるようにして取り付けられているので、籠トラップ10の両側からザリガニ40を誘い込むことができ、ザリガニ40の捕獲効率を向上させることができる。
【0056】
尚、実施例のザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント30は、籠本体11の両側に漏斗状部21及び侵入口22を設けた籠トラップ10に取り付けたが、これに限定されず、ザリガニ捕獲トラップ用アタッチメント30は籠本体11の一端部にのみ漏斗状部21及び侵入口22を設けた籠トラップ10に取り付けてもよく、取り付けることができれば籠トラップ10の構成はいずれであってもよい。
【0057】
また、実施例では、シート31を半透明又は不透明としたが、これに限定されず、透明なシート31を使用してもよい。また、実施例では、シート31を合成樹脂製としたが、これに限定されず、ゴム製など筒状に形成できれば他の材質であってもよい。
【0058】
即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。