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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090258
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 21/22 20060101AFI20240627BHJP
   B43K 21/00 20060101ALI20240627BHJP
   C09D 13/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B43K21/22 C
B43K21/00 Z
C09D13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206020
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】594148449
【氏名又は名称】北星鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157912
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 健
(74)【代理人】
【識別番号】100074918
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】杉谷 和俊
【テーマコード(参考)】
2C353
4J039
【Fターム(参考)】
2C353FA16
2C353FC12
2C353FE01
2C353FE02
2C353FE14
4J039BE01
4J039CA03
4J039GA30
(57)【要約】
【課題】資源を無駄にすることがなく使用することができる筆記具を提供する。
【解決手段】棒状の筆記芯50を取り付けて使用できる筆記具10であって、長手方向にスリット13が形成された筒状の軸体11と、前記軸体11の内部に摺動可能に配置されたスライド部材20と、前記軸体11の先端側に取り付けられる口金25と、を備え、前記軸体11の先端には、軸方向に形成された複数の割れ目33aによって分断されて拡開可能な保持部33が設けられ、前記保持部33に筆記芯50を挿通した状態で、前記保持部33の外周に前記口金25を取り付けて締め付けることで、前記保持部33が縮径して筆記芯50を保持可能であり、前記スライド部材20は、筆記芯50を先端方向に押し出す前方突出部21aと、前記スリット13から操作可能に突出する摘み部22aと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の筆記芯を取り付けて使用できる筆記具であって、
長手方向にスリットが形成された筒状の軸体と、
前記軸体の内部に摺動可能に配置されたスライド部材と、
前記軸体の先端側に取り付けられる口金と、
を備え、
前記軸体の先端には、軸方向に形成された複数の割れ目によって分断されて拡開可能な保持部が設けられ、
前記保持部に筆記芯を挿通した状態で、前記保持部の外周に前記口金を取り付けて締め付けることで、前記保持部が縮径して筆記芯を保持可能であり、
前記スライド部材は、筆記芯を先端方向に押し出す前方突出部と、前記スリットから操作可能に突出する摘み部と、を備える、
筆記具。
【請求項2】
前記保持部は、前記口金よりも先端に突出している、
請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記前方突出部は、筆記芯よりも小径で形成されている、
請求項1に記載の筆記具。
【請求項4】
前記スライド部材は、前記摘み部よりも反先端方向に突出する後方突出部を備える、
請求項1に記載の筆記具。
【請求項5】
前記軸体の後端部の外周に取り付けられる筒状部材を備える、
請求項1に記載の筆記具。
【請求項6】
前記軸体の後端側から前記軸体の内部に挿入される挿入突起を備える、
請求項1に記載の筆記具。
【請求項7】
前記前方突出部を密着コイルバネで形成した、
請求項1に記載の筆記具。
【請求項8】
前記スリットの前端および後端が閉じられることで、前記スライド部材が取り外しできないようになっている、
請求項1に記載の筆記具。
【請求項9】
筆記芯は顔料のみからなる、
請求項1に記載の筆記具。
【請求項10】
筆記芯として水溶性の顔料を細長く固めた芯を使用した、
請求項9に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、筆記芯を取り付けて使用できる筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な鉛筆は、木材で芯を挟んで接着して製造される。こうした鉛筆は、木材と芯を削ることで芯を露出させて使用される。
また、筆記芯を取り付けて使用できる筆記具として、シャープペンシルが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-237162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の鉛筆は、製造時に削った木材が無駄になったり、使用時に削った木材や芯が無駄になったりする問題があった。また、鉛筆が短くなると使用できなくなるため、使えない部分が残るという問題があった。
【0005】
この点、シャープペンシルであれば、木材は無駄にならないが、チャック部分から先端までの距離が必要であるため、芯を最後まで使うことはできなかった。また、色鉛筆のように芯が柔らかいものや温度や湿度によって芯が柔らかくなるものは、シャープペンシルにすることができなかった。すなわち、芯がやわらかいと、チャックでつかんだときに芯に爪が食い込んでくっついてしまい、芯が正常に繰り出されなくなったり、芯が削れた粉が目詰まりして芯が出なくなったりするおそれがあった。
そこで、本発明は、資源を無駄にすることがなく使用することができる筆記具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するため、本発明は、棒状の筆記芯を取り付けて使用できる筆記具であって、長手方向にスリットが形成された筒状の軸体と、前記軸体の内部に摺動可能に配置されたスライド部材と、前記軸体の先端側に取り付けられる口金と、を備え、前記軸体の先端には、軸方向に形成された複数の割れ目によって分断されて拡開可能な保持部が設けられ、前記保持部に筆記芯を挿通した状態で、前記保持部の外周に前記口金を取り付けて締め付けることで、前記保持部が縮径して筆記芯を保持可能であり、前記スライド部材は、筆記芯を先端方向に押し出す前方突出部と、前記スリットから操作可能に突出する摘み部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上記の通りであり、使用者が摘み部を操作することでスライド部材を摺動させ、筆記芯を先端方向に押し出すようになっているので、木材を削らなくても使用することができ、木材が無駄にならない。また、保持部の外周に口金を取り付けて締め付けることで、保持部が縮径して筆記芯を保持可能であるため、芯の端部だけを保持すればよく、従来の鉛筆やシャープペンシルよりも芯を最後まで使うことができる。よって、木材や筆記芯を無駄にすることなく使用することができる。
【0008】
また、本発明は、色鉛筆のように芯が柔らかいものや温度や湿度によって芯が柔らかくなるものであっても使用することができる。例えば、筆記芯として水溶性の顔料を細長く固めた芯(水彩色鉛筆の芯)を使用することもできる。水溶性の筆記芯を使用する場合、残った芯は水で溶くなどして固形水彩絵の具として使用できるので、更に無駄をなくすことができる。
【0009】
また、スライド部材を動かすことで筆記芯を好きなだけ出すことができる。すなわち、シャープペンシルのように必ず一定量の芯が出てくる構造ではないため、用途や好みによって筆記芯の突出量を容易に調節することができる。
また、筆記芯の残量に応じてスライド部材が移動するため、摘み部の位置を見れば、筆記芯の残量を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)筆記具の正面図、(b)筆記具の側面図である。
図2】(a)軸体の正面図、(b)軸体を後端側から見た図、(c)軸体を先端側から見た図である。
図3】(a)スライド部材の側面図、(b)操作部材の側面図、(c)密着コイルバネの側面図である。
図4】(a)筒状部材の正面図、(b)筒状部材の底面図、(c)キャップの正面図、(d)キャップの底面図である。
図5】後端部分の組み付け方を説明する図であって、(a)組み付け前の図、(b)組み付け後の図である。
図6】(a)先端部材の側面図、(b)先端部材の底面図、(c)口金の側面図である。
図7】先端部材と口金とを組み合わせた状態を説明する図である。
図8】先端部分の組み付け方を説明する図であって、(a)先端部材を取り付ける前の図、(b)先端部材を取り付けた後の図である。
図9】先端部材で筆記芯を保持した状態を説明する図である。
図10】筆記芯を出す操作を説明する図であって、(a)筆記芯を出す前の図、(b)口金を緩めて筆記芯を出した図である。
図11】先端部材で筆記芯の端部を保持した状態を説明する図である。
図12】変形例に係るスライド部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。なお、以下の記述においては、筆記芯50が突出する方向を先端方向、その反対方向を後端方向として説明する。
【0012】
本実施形態に係る筆記具10は、顔料のみからなる棒状の筆記芯50を取り付けて使用できるものであり、図1に示すように、軸体11、スライド部材20、筒状部材40、キャップ45、先端部材30、口金25、を備えて構成される。
【0013】
軸体11は、図2に示すような筒状の部材である。本実施形態に係る軸体11は、木材で形成されているが、プラスチックや金属などの別の材料で形成してもよい。軸体11の内部には、長手方向に貫通する貫通孔12が形成されている。本実施形態の貫通孔12は断面円形であり、長手方向全長に渡って同じ径で形成されている。この貫通孔12には、筆記芯50を1本だけ挿入することができる。挿入された筆記芯50は、後述するスライド部材20によって先端11aの方向に押し出すことができる。
【0014】
この軸体11には、長手方向(軸方向)に沿ってスリット13が形成されている。このスリット13は、一定の幅で後端11bから開始し、先端11aに到達する手前で終わっている。すなわち、このスリット13は、軸体11の後端11bにおいて開口しているが、軸体11の先端11aでは開口していない(先端側の端部が閉じている)。スリット13が軸体11の後端11bまで形成されていることで、スリット13の開口を利用してスライド部材20を取り付けることができる。また、スリット13が軸体11の先端11aまで開口していないので、後端11bから挿入したスライド部材20が先端11aから脱落することがない。
【0015】
また、この軸体11の後端11b付近には、後述する筒状部材40を取り付けるための取付部14が設けられている。この取付部14は、他の部分よりも小径で形成されており、筒状部材40を外側から嵌め込むことができるようになっている。この取付部14は、例えば軸体11の後端11b付近の外周面を削ることにより形成される。
【0016】
スライド部材20は、軸体11に内蔵した筆記芯50を先端方向に押し出すための部材であり、軸体11の内部に摺動可能に配置される。本実施形態に係るスライド部材20は、図3に示すように、密着コイルバネ21と操作部材22とを組み合わせて構成されている。
【0017】
操作部材22は、金属線材を屈折させて形成されている。この操作部材22は、中央に大きく突出する摘み部22aを備え、摘み部22aの両側に脚部22bを備える。摘み部22aは、図1に示すように、軸体11のスリット13から操作可能に突出する部位であり、本実施形態では逆U字形に形成されている。また、脚部22bは、密着コイルバネ21の内側に挿入される部位である。この脚部22bは、摘み部22aのU字形の両端から互いに反対方向に延設された一対の部位である。この脚部22bの中途部には、密着コイルバネ21の内周に係合する凸部22cが形成されている。本実施形態の凸部22cは、摘み部22aと同じ方向に逆V字形に突出した部位である。
【0018】
密着コイルバネ21は、一般的なバネであり、何も荷重をかけていない自然状態で、隣り合うコイルが密着するように形成されている。この密着コイルバネ21に操作部材22を取り付ける場合には、まず、密着コイルバネ21の内部に脚部22bを差し込み、摘み部22aが密着コイルバネ21の端部に当たるまで、操作部材22を押し込む。その後、密着コイルバネ21の端部の隙間に摘み部22aを差し込み、密着コイルバネ21の巻き方向に沿って操作部材22または密着コイルバネ21を回転させる。このような組み付けを行うことにより、図3(a)に示すように、摘み部22aの先端のみが密着コイルバネ21から突出した状態となる。
【0019】
このとき、摘み部22aよりも先端側に突出する密着コイルバネ21は、筆記芯50を先端方向に押し出す前方突出部21aを構成する。また、摘み部22aよりも後端側に突出する密着コイルバネ21は、後方突出部21bを構成する。後方突出部21bを設けることで、軸体11の貫通孔12に操作部材22を挿入したときに、軸体11の軸と密着コイルバネ21の軸とをできるだけ一致させることができる(芯出しすることができる)。なお、前方突出部21aは、後方突出部21bよりも長いことが望ましい。また、前方突出部21aと後方突出部21bとは、外径が等しく、同軸で形成されていることが望ましい。
【0020】
筒状部材40は、図4(a)および(b)に示すようなリング状の部材である。この筒状部材40は、金属製であり、軸体11の後端11bに形成された取付部14の外周に嵌め込まれる。筒状部材40の内周面41は、取付部14の外径とほぼ等しく形成されている。また、筒状部材40の外径は、軸体11の外径とほぼ等しく形成されている。この筒状部材40を取り付けることで、スリット13の後端が閉じられる。これにより、スリット13を開くような力に対して補強することができ、軸体11の割れや破損を防止することができる。また、軸体11に挿入したスライド部材20が軸体11の後端11bから脱落しないように、ストッパの役割を果たすことができる。
【0021】
キャップ45は、図4(c)および(d)に示すような円筒状の部材である。このキャップ45は、挿入突起45a、フランジ部45bを備える。挿入突起45aは、軸体11の後端11b側から軸体11の内部に挿入される部位である。フランジ部45bは、挿入突起45aの端部に形成された、挿入突起45aよりも大径の部位である。挿入突起45aの外径は、軸体11の貫通孔12の内径とほぼ等しく形成されている。また、フランジ部45bの外径は、軸体11の外径とほぼ等しく形成されている。このキャップ45を軸体11に挿入することで、軸体11を内側から補強することができる。
【0022】
上記したスライド部材20、筒状部材40、キャップ45は、図5に示すような態様で軸体11に組み付けられる。すなわち、まず、軸体11の後端11bから、貫通孔12の内部にスライド部材20を挿入する。このとき、摘み部22aがスリット13を通過するようにする。その後、筒状部材40を取り付け、更にキャップ45を取り付ける。キャップ45は、接着等により軸体11に固定することが望ましい。また、キャップ45の挿入突起45aの外周に凹凸形状(オネジ形状など)を設け、軸体11への取付強度を高めてもよい。このように取り付けることで、スリット13の前端および後端が閉じられ、スライド部材20が軸体11から取り外しできないようになる。ただし、スライド部材20は、スリット13から突出した摘み部22aが操作されることで、軸体11の軸方向に移動することができる。
【0023】
先端部材30は、ペン先を構成する部材であり、図6(a)および(b)に示すような円筒状の部材である。この先端部材30は、一定の弾性を有する材料で形成することができ、例えば金属やプラスチックなどで形成することができる。本実施形態に係る先端部材30は、挿入部31、オネジ部32、保持部33を有している。
【0024】
挿入部31は、軸体11に取り付けるために、軸体11の貫通孔12に挿入される部位である。この挿入部31の外径は、軸体11の貫通孔12の内径とほぼ等しく形成されている。
【0025】
オネジ部32は、挿入部31よりも先端側に配置され、外周にオネジが形成された部位である。このオネジ部32は、口金25の内周に形成されたメネジ(図示せず)と螺合する。
【0026】
保持部33は、筆記芯50を保持するための部位である。保持部33は、先端部材30の先端に形成されており、先端が円錐台状のテーパ部33bとなっている。この保持部33は、軸方向に形成された複数の割れ目33aによって分断されて拡開可能となっている。
【0027】
なお、この先端部材30の内部には、筆記芯50を挿通可能な挿通孔34が掲載されている。この挿通孔34は、先端(テーパ部33b付近)に小径部34aを備える。小径部34aは、後端側よりも小径で形成されており、筆記芯50を掴みやすくなっている。この挿通孔34の内径は、小径部34aを含め、筆記芯50の外径よりも大きい。ただし、口金25を取り付けると、小径部34aは筆記芯50の外径よりも小さく縮径することが可能である。具体的には、口金25で締め付けられていない状態(割れ目33aが拡開した状態)では、小径部34aの内径が筆記芯50の外径よりも大きいので、挿通孔34の内部を自由に筆記芯50が通過可能である。一方、口金25で締め付けられた状態(割れ目33aが閉じた縮径状態)では、小径部34aの内径が筆記芯50の外径よりも小さくなるので、小径部34aが筆記芯50を掴んで保持することができる。
【0028】
口金25は、軸体11の先端11a側に取り付けられる部品であり、先端部材30の外周に取り付けられる。この口金25は、図6(c)に示すようなコーン形状の部材である。この口金25は、円筒部25aと、先細り部25bを備える。円筒部25aの内周面(図示せず)には、先端部材30のオネジ部32と螺合するメネジが形成されている。また、先細り部25bの内周面は、先端部材30のテーパ部33bよりも緩やかなテーパ角度で形成されている。
【0029】
この口金25は、図7に示すように、先端部材30に取り付けられる。ネジ作用により口金25を先端部材30に取り付けて締め付けると、先細り部25bが先端部材30のテーパ部33bに係合する。テーパ部33bの方が先細り部25bよりもテーパ角が大きいため、口金25が締め込まれることでテーパ部33bが中心へと絞り込まれる。これにより、保持部33が縮径するようになっている。
【0030】
上記した先端部材30、口金25は、図8に示すような態様で軸体11に組み付けられる。すなわち、まず、軸体11の先端11aに先端部材30を取り付ける。具体的には、挿入部31を貫通孔12の内部に挿入する。先端部材30は、接着等により軸体11に固定することが望ましい。また、先端部材30の挿入部31の外周に凹凸形状(オネジ形状など)を設け、軸体11への取付強度を高めてもよい。その後、ネジ作用により、口金25を先端部材30に取り付ける。口金25はネジ作用で取り付けられているだけなので、先端部材30に対して着脱自在である。筆記芯50を取り付ける際には、口金25を緩め、先端側から筆記芯50を挿入する。そして、保持部33に筆記芯50を挿通した状態で、口金25を締め付ければ、図9に示すように、保持部33が縮径して筆記芯50を保持することができる。
【0031】
筆記芯50がすり減ってしまった場合は、図10に示すように、口金25を緩めれば、筆記芯50を移動させることができる。筆記芯50を出す場合には、まず口金25を緩め、スライド部材20を先端方向に移動させて筆記芯50を押し出す。所望の突出量となるように筆記芯50を押し出したら、口金25を締めて固定する。
【0032】
なお、本実施形態に係る筆記具10は、口金25を締めた状態で、保持部33(先端部材30)が口金25よりも先端に突出するようになっている。このため、筆記具10のできるだけ先端において、筆記芯50を保持することができる。このような構成によれば、保持した筆記芯50をできるだけ先端に突出させることで先端が視認しやすくなっているので、描きやすい筆記具10を提供できる。また、筆記芯50の端部を保持することで、筆記芯50を最後まで使える。例えば、図11に示すように、短くなった筆記芯50の端部を保持することができ、筆記芯50を無駄なく使うことができる。
【0033】
また、本実施形態に係る密着コイルバネ21(前方突出部21)は、筆記芯50よりも小径で形成されている。これは、保持部33で確実に筆記芯50を保持するためである。すなわち、図11に示すように、密着コイルバネ21がテーパ部33b付近まで到達している場合、密着コイルバネ21が太すぎると、口金25を締めて保持部33の割れ目33aを閉じたときに、保持部33が筆記芯50ではなく密着コイルバネ21を掴んでしまい、筆記芯50が脱落するおそれがある。このような問題を避けるため、密着コイルバネ21を筆記芯50よりも小径とし、確実に筆記芯50を掴むようにしている。
【0034】
この筆記具10は、様々な種類の筆記芯50を使用することができる。すなわち、黒鉛を使用した一般的な鉛筆や、色鉛筆として使用してもよい。また、ボールペンのリフィルを筆記芯50として使用してもよい。また、水溶性の顔料を細長く固めた筆記芯50を使用して、水彩色鉛筆として使用してもよい。本実施形態に係る筆記具10であれば、水溶性の筆記芯50のような柔らかい芯であっても使用することができる。
【0035】
水溶性の筆記芯50を使用する場合、筆記芯50を長めに出して、芯だけを削って調合したり、濡れた筆で芯を撫でて使用したりしてもよい。また、図11に示すように、ぎりぎりまで使用した筆記芯50の残りを取っておき、固形水彩絵の具として使用することも可能である。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、使用者が摘み部22aを操作することでスライド部材20を摺動させ、筆記芯50を先端方向に押し出すようになっているので、木材を削らなくても使用することができ、木材が無駄にならない。また、保持部33の外周に口金25を取り付けて締め付けることで、保持部33が縮径して筆記芯50を保持可能であるため、芯の端部だけを保持すればよく、従来の鉛筆やシャープペンシルよりも芯を最後まで使うことができる。よって、木材や筆記芯50を無駄にすることなく使用することができる。
【0037】
また、色鉛筆のように芯が柔らかいものや温度や湿度によって芯が柔らかくなるものであっても使用することができる。例えば、筆記芯50として水溶性の顔料を細長く固めた芯(水彩色鉛筆の芯)を使用することもできる。水溶性の筆記芯50を使用する場合、残った芯は水で溶くなどして固形水彩絵の具として使用できるので、筆記芯50を全く無駄にせずに使用することができる。
【0038】
また、スライド部材20を動かすことで筆記芯50を好きなだけ出すことができる。すなわち、シャープペンシルのように必ず一定量の芯が出てくる構造ではないため、用途や好みによって筆記芯50の突出量を容易に調節することができる。
また、筆記芯50の残量に応じてスライド部材20が移動するため、摘み部22aの位置を見れば、筆記芯50の残量を把握することができる。
【0039】
なお、上記した実施形態においては、スライド部材20を、密着コイルバネ21と操作部材22とで構成した。これは、スライド部材20を組み付け容易かつ安価に構成できるからであり、また、操作部材22が密着コイルバネ21から脱落するおそれがほとんどないためである。このようにスライド部材20を密着コイルバネ21で構成する場合、スライド部材20は伸び縮みする必要はないため、自然状態よりも短くならない密着コイルバネ21を使用することが望ましい。
【0040】
ただし、スライド部材20は密着コイルバネ21を使用しなくても構成可能である。例えば、図12に示すように、密着コイルバネ21の代わりに、密着コイルバネ21と同等の径を有するパイプ47を使用してもよい。この場合、操作部材22の両側の脚部22bの外周に、それぞれパイプ47を取り付ければよい。また、スライド部材20を、一体成型された部品で構成してもよい。
【0041】
また、上記した実施形態においては、軸体11の後端11bに筒状部材40を取り付けたが、筒状部材40として、鉛筆用のフェルールを使用し、軸体11の後端11bに消しゴムを取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 筆記具
11 軸体
11a 先端
11b 後端
12 貫通孔
13 スリット
14 取付部
20 スライド部材
21 密着コイルバネ
21a 前方突出部
21b 後方突出部
22 操作部材
22a 摘み部
22b 脚部
22c 凸部
25 口金
25a 円筒部
25b 先細り部
30 先端部材
31 挿入部
32 オネジ部
33 保持部
33a 割れ目
33b テーパ部
34 挿通孔
34a 小径部
40 筒状部材
41 内周面
45 キャップ
45a 挿入突起
45b フランジ部
47 パイプ
50 筆記芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12