(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090267
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】画像復号装置、画像復号方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 19/105 20140101AFI20240627BHJP
H04N 19/159 20140101ALI20240627BHJP
H04N 19/176 20140101ALI20240627BHJP
【FI】
H04N19/105
H04N19/159
H04N19/176
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206035
(22)【出願日】2022-12-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、「3次元空間データの無線伝送に向けた高能率圧縮技術の研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木谷 佳隆
【テーマコード(参考)】
5C159
【Fターム(参考)】
5C159MA04
5C159MA05
5C159MA19
5C159MA21
5C159MC11
5C159RC12
5C159TA25
5C159TA31
5C159TB08
5C159TC08
5C159TC18
5C159TC26
5C159TC27
5C159TC42
5C159TD10
5C159UA02
5C159UA05
(57)【要約】
【課題】予測精度を向上させ、符号化性能を改善すること。
【解決手段】本発明に係る画像復号装置200において、イントラ予測部204は、復号対象ブロックに隣接する復号済み画素及び復号対象ブロック近傍の復号済み画素から2種類以上のイントラ予測モードを導出して、イントラ予測モード及び復号対象ブロックに隣接する復号済み画素を用い第1予測画素を生成し、合成部209は、イントラ予測モードに応じて、第1予測画素及び第2予測画素の合成方法を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像復号装置であって、
制御情報を復号する復号部と、
復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成するイントラ予測部と、
前記復号済み画素を蓄積する蓄積部と、
前記蓄積された復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する動き補償部と、
前記第1予測画素及び前記第2予測画素の少なくとも一方と前記制御情報とに基づいて、第3予測画素を生成する合成部とを具備し、
前記イントラ予測部は、復号対象ブロックに隣接する復号済み画素及び前記復号対象ブロック近傍の復号済み画素から2種類以上のイントラ予測モードを導出して、前記イントラ予測モード及び前記復号対象ブロックに隣接する復号済み画素を用いて、前記第1予測画素を生成し、
前記合成部は、前記イントラ予測モードに応じて、前記第1予測画素及び前記第2予測画素の合成方法を制御することを特徴とする画像復号装置。
【請求項2】
画像復号装置であって、
制御情報並びに量子化値を復号する復号部と、
復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成するイントラ予測部と、
前記復号済み画素を蓄積する蓄積部と、
前記蓄積された復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する動き補償部と、
前記第1予測画素及び前記第2予測画素の少なくとも一方と前記制御情報とに基づいて、第3予測画素を生成する合成部とを具備し、
前記イントラ予測部は、復号対象ブロックに隣接する復号済み画素及び前記復号対象ブロック近傍の復号済み画素から1種類のイントラ予測モードを導出して、前記イントラ予測モードと前記復号対象ブロックに隣接する復号済み画素と前記復号対象ブロック近傍の復号済み画素とを用いて、前記第1予測画素を生成し、
前記合成部は、前記イントラ予測モードに応じて、前記第1予測画素及び前記第2予測画素の合成方法を制御することを特徴とする画像復号装置。
【請求項3】
前記イントラ予測部は、選択可能なイントラ予測モードのそれぞれに対応する前記復号対象ブロックに隣接する復号済み画素及び前記復号対象ブロック近傍の復号済み画素から算出されるコストの大小関係に応じて、前記イントラ予測モードを導出することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像復号装置。
【請求項4】
前記イントラ予測部は、選択可能なイントラ予測モードのそれぞれに対応する復号対象ブロック近傍の復号済み画素から算出される勾配ヒストグラムの大小関係に応じて、前記イントラ予測モードを導出することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像復号装置。
【請求項5】
前記合成部は、前記イントラ予測モードが角度モードであるか否かに応じて、前記合成方法を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像復号装置。
【請求項6】
前記合成部は、前記2種類以上のイントラ予測モードがいずれも角度モードであり且つ前記2種類以上のイントラ予測モードの角度方向が一致する場合、前記一致する角度方向に前記復号対象ブロックを4等分割した小領域ごとに決定される重み値に基づいて、前記第1予測画素及び前記第2予測画素を合成することを特徴とする請求項1に記載の画像復号装置。
【請求項7】
前記合成部は、前記2種類以上のイントラ予測モードがいずれも角度モードであり且つ前記2種類以上のイントラ予測モードの角度方向が一致しない場合、それぞれの角度方向に前記復号対象ブロックをそれぞれ4等分割した小領域ごとに決定される第1重み値から、前記復号対象ブロックを16等分割した第2重み値を導出し、前記第2重み値に基づいて、前記第1予測画素及び前記第2予測画素を合成することを特徴とする請求項1に記載の画像復号装置。
【請求項8】
前記合成部は、前記2種類以上のイントラ予測モードのうち一方が角度モードであり且つ他方が非角度モードである場合、選択可能なイントラ予測モードのそれぞれに対応する前記復号対象ブロックに隣接する復号済み画素及び前記復号対象ブロック近傍の復号済み画素から算出されるコスト或いは前記選択可能なイントラ予測モードのそれぞれに対応する前記復号対象ブロック近傍の復号済み画素から算出される勾配ヒストグラムの大小関係に応じて、前記2種類以上のイントラ予測モードに対応する合成方法を優先的に適用するイントラ予測モードを決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像復号装置。
【請求項9】
前記復号部は、復号対象ブロックのサイズに応じて、前記イントラ予測部にて導出されるイントラ予測モードの種類の数を制限することを特徴とする請求項1に記載の画像復号装置。
【請求項10】
前記復号部は、復号対象ブロックのサイズに応じて、前記イントラ予測部における前記イントラ予測モードの導出方法を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像復号装置。
【請求項11】
前記復号部は、前記復号対象ブロックのサイズが所定サイズ未満である場合に、前記イントラ予測部において選択可能なイントラ予測モードのそれぞれに対応する復号対象ブロックに隣接する復号済み画素と前記復号対象ブロック近傍の復号済み画素とから算出されるコストの大小関係に応じて、前記イントラ予測モードを導出するか否かについて制御するフラグを復号することを特徴とする請求項1に記載の画像復号装置。
【請求項12】
前記復号部は、前記復号対象ブロックのサイズが所定サイズ未満である場合に、前記イントラ予測手部において選択可能なイントラ予測モードのそれぞれに対応する復号対象ブロック近傍の復号済み画素から算出される勾配ヒストグラムの大小関係に応じて、前記イントラ予測モードを導出するか否かについて制御するフラグを復号することを特徴とする請求項1に記載の画像復号装置。
【請求項13】
画像復号方法であって、
制御情報を復号する工程Aと、
復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成する工程Bと、
前記復号済み画素を蓄積する工程Cと、
前記蓄積された復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する工程Dと、
前記第1予測画素及び前記第2予測画素の少なくとも一方と前記制御情報とに基づいて、第3予測画素を生成する工程Eとを有し、
前記工程Bにおいて、復号対象ブロックに隣接する復号済み画素及び前記復号対象ブロック近傍の復号済み画素から2種類以上のイントラ予測モードを導出して、前記イントラ予測モード及び前記復号対象ブロックに隣接する復号済み画素を用いて、前記第1予測画素を生成し、
前記工程Eにおいて、前記イントラ予測モードに応じて、前記第1予測画素及び前記第2予測画素の合成方法を制御することを特徴とする画像復号方法。
【請求項14】
コンピュータを、画像復号装置として機能させるプログラムであって、
前記画像復号装置は、
制御情報を復号する復号部と、
復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成するイントラ予測部と、
前記復号済み画素を蓄積する蓄積部と、
前記蓄積された復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する動き補償部と、
前記第1予測画素及び前記第2予測画素の少なくとも一方と前記制御情報とに基づいて、第3予測画素を生成する合成部とを具備し、
前記イントラ予測部は、復号対象ブロックに隣接する復号済み画素及び前記復号対象ブロック近傍の復号済み画素から2種類以上のイントラ予測モードを導出して、前記イントラ予測モード及び前記復号対象ブロックに隣接する復号済み画素を用いて、前記第1予測画素を生成し、
前記合成部は、前記イントラ予測モードに応じて、前記第1予測画素及び前記第2予測画素の合成方法を制御することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像復号装置、画像復号方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、復号対象ブロックのインター予測画素(動き補償画素)及びイントラ予測画素を生成し、それらを合成することで最終的な予測画素を生成する技術である「インター・イントラ結合予測(CIIP:Combined Inter and Intra Prediction)」が開示されている。
【0003】
ここで、インター予測画素及びイントラ予測画素を合成する際の各予測画素の重み値は、復号対象ブロックに隣接する隣接ブロックにイントラ予測が適用されているか否かに応じて決定される。なお、各予測画素の重み値は、復号対象ブロック内の画素全体で均一である。
【0004】
非特許文献2には、CIIPのイントラ予測画素を生成するためのイントラ予測モードについて、テンプレートベースのイントラ予測モード導出を適用する技術(TIMD:Template-based Intra Mode Derivation)が開示されている。
【0005】
さらに、非特許文献2には、インター予測画素を生成するための動きベクトルをテンプレートマッチングで修正する技術(Template Matching)が開示されている。
【0006】
かかるテンプレートを利用したCIIP(CIIP with TM)では、イントラ予測画素及びインター予測画素を合成する際、TIMDによって導出されるイントラ予測モードが角度モードである場合、イントラ予測とインター予測の重み値は、かかる角度モードの方向(角度方向)に応じて、復号対象ブロックを水平方向或いは垂直方向に4等分した各小領域に適応的に決定される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ITU-T H.266/VVC
【非特許文献2】Algorithm description of Enhanced Compression Model 6(ECM 6)、JVET-AA2025
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1及び非特許文献2で開示されているCIIP及びCIIP with TMで最終的な予測画素を生成する際に導出されるイントラ予測モードは、1種類のみである。
【0009】
しかしながら、2種類以上のイントラ予測モードを用いて最終的な予測画素を生成することで、予測精度の向上、ひいては、符号化性能の改善させる余地があるという問題点があった。 そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、予測精度を向上させ、符号化性能を改善することができる画像復号装置、画像復号方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の特徴は、画像復号装置であって、制御情報を復号する復号部と、復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成するイントラ予測部と、前記復号済み画素を蓄積する蓄積部と、前記蓄積された復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する動き補償部と、前記第1予測画素及び前記第2予測画素の少なくとも一方と前記制御情報とに基づいて、第3予測画素を生成する合成部とを具備し、前記イントラ予測部は、復号対象ブロックに隣接する復号済み画素及び前記復号対象ブロック近傍の復号済み画素から2種類以上のイントラ予測モードを導出して、前記イントラ予測モード及び前記復号対象ブロックに隣接する復号済み画素を用いて、前記第1予測画素を生成し、前記合成部は、前記イントラ予測モードに応じて、前記第1予測画素及び前記第2予測画素の合成方法を制御することを要旨とする。
【0011】
本発明の第2の特徴は、画像復号装置であって、制御情報並びに量子化値を復号する復号部と、復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成するイントラ予測部と、前記復号済み画素を蓄積する蓄積部と、前記蓄積された復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する動き補償部と、前記第1予測画素及び前記第2予測画素の少なくとも一方と前記制御情報とに基づいて、第3予測画素を生成する合成部とを具備し、前記イントラ予測部は、復号対象ブロックに隣接する復号済み画素及び前記復号対象ブロック近傍の復号済み画素から1種類のイントラ予測モードを導出して、前記イントラ予測モードと前記復号対象ブロックに隣接する復号済み画素と前記復号対象ブロック近傍の復号済み画素とを用いて、前記第1予測画素を生成し、前記合成部は、前記イントラ予測モードに応じて、前記第1予測画素及び前記第2予測画素の合成方法を制御することを要旨とする。
【0012】
本発明の第3の特徴は、画像復号方法であって、制御情報を復号する工程Aと、復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成する工程Bと、前記復号済み画素を蓄積する工程Cと、前記蓄積された復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する工程Dと、前記第1予測画素及び前記第2予測画素の少なくとも一方と前記制御情報とに基づいて、第3予測画素を生成する工程Eとを有し、前記工程Bにおいて、復号対象ブロックに隣接する復号済み画素及び前記復号対象ブロック近傍の復号済み画素から2種類以上のイントラ予測モードを導出して、前記イントラ予測モード及び前記復号対象ブロックに隣接する復号済み画素を用いて、前記第1予測画素を生成し、前記工程Eにおいて、前記イントラ予測モードに応じて、前記第1予測画素及び前記第2予測画素の合成方法を制御することを要旨とする。
【0013】
本発明の第4の特徴は、コンピュータを、画像復号装置として機能させるプログラムであって、前記画像復号装置は、制御情報を復号する復号部と、復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成するイントラ予測部と、前記復号済み画素を蓄積する蓄積部と、前記蓄積された復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する動き補償部と、前記第1予測画素及び前記第2予測画素の少なくとも一方と前記制御情報とに基づいて、第3予測画素を生成する合成部とを具備し、前記イントラ予測部は、復号対象ブロックに隣接する復号済み画素及び前記復号対象ブロック近傍の復号済み画素から2種類以上のイントラ予測モードを導出して、前記イントラ予測モード及び前記復号対象ブロックに隣接する復号済み画素を用いて、前記第1予測画素を生成し、前記合成部は、前記イントラ予測モードに応じて、前記第1予測画素及び前記第2予測画素の合成方法を制御することを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、予測精度を向上させ、符号化性能を改善することができる画像復号装置、画像復号方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る画像復号装置200の機能ブロックの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、TIMDについて説明するための図である。
【
図3】
図3は、イントラ予測モードの導出方法2について説明するための図である。
【
図4】
図4は、イントラ予測モードの導出方法3について説明するための図である。
【
図5】
図5は、イントラ予測画素及びインター予測画素の合成方法1について説明するための図である。
【
図6】
図6は、イントラ予測画素及びインター予測画素の合成方法3について説明するための図である。
【
図7】
図7は、イントラ予測画素及びインター予測画素の合成方法3について説明するための図である。
【
図8】
図8は、一実施形態に係る復号部201が制御情報を復号する動作の一例について示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、一実施形態に係る復号部201が制御情報を復号する動作の一例について示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、一実施形態に係る復号部201が制御情報を復号する動作の一例について示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、一実施形態に係る復号部201が制御情報を復号する動作の一例について示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は、適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組み合わせを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0017】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図11を参照して、本実施形態に係る画像復号装置200について説明する。
図1は、本実施形態に係る画像復号装置200の機能ブロックの一例について示す図である。
【0018】
図1に示すように、画像復号装置200は、符号入力部210と、復号部201と、逆量子化部202と、逆変換部203と、イントラ予測部204と、加算器206と、蓄積部207と、動き補償部208と、合成部209と、画像出力部220とを有する。
【0019】
符号入力部210は、画像符号化装置によって符号化された符号情報を取得するように構成されている。
【0020】
復号部201は、符号入力部210から入力された符号情報から、制御情報並びに量子化値を復号するように構成されている。例えば、復号部201は、かかる符号情報に対して可変長復号を行うことで制御情報及び量子化値を出力するように構成されている。
【0021】
ここで、量子化値は、逆量子化部202に送られ、制御情報は、動き補償部208、イントラ予測部204及び合成部209に送られる。なお、かかる制御情報は、動き補償部206、イントラ予測部204及び合成部207等の制御に必要な情報を含み、シーケンスパラメータセットやピクチャパラメータセットやピクチャヘッダやスライスヘッダ等のヘッダ情報を含んでもよい。
【0022】
逆量子化部202は、復号部201から送られた量子化値を逆量子化して復号された変換係数とするように構成されている。かかる変換係数は、逆変換部203に送られる。
【0023】
逆変換部203は、逆量子化部202から送られた変換係数を逆変換して復号された予測残差とするように構成されている。かかる予測残差は、加算器206に送られる。
【0024】
イントラ予測部204は、復号済み画素と復号部201から送られた制御情報とに基づいて第1予測画素を生成するように構成されている。ここで、復号済み画素は、加算器206を介して得られて蓄積部207に蓄積されるものである。また、第1予測画素は、加算器206で予測残差と加算するための予測画素である。なお、第1予測画素は、加算器206又は合成部209に送られる。
【0025】
蓄積部207は、加算器206から送られた復号済み画素を累積的に蓄積するように構成されている。かかる復号済み画素は、蓄積部207を介して動き補償部208からの参照を受ける。
【0026】
動き補償部208は、蓄積部207に蓄積された復号済み画素と復号部201から送られた制御情報とに基づいて第2予測画素を生成するように構成されている。ここで、第2予測画素は、加算器206で予測残差と加算するための予測画素である。第2予測画素は、加算器206又は合成部209に送られる。
【0027】
なお、第2予測画素は、非特許文献1で開示されている2つの異なる動きベクトルから生成されるインター予測画素の合成(すなわち、双予測)によって生成されたインター予測画素であってもよい。
【0028】
また、インター予測画素の生成方法に関しては、非特許文献1で開示されている適応動きベクトル予測(AMVP:Adaptive Motion Vector Prediction)モードやマージモードを適用してもよい。
【0029】
或いは、インター予測画素の生成方法に関しては、非特許文献2で開示されているテンプレートマッチング(Template Matching)を利用したAMVPモードやマージモードを適用してもよい。
【0030】
加算器206は、逆変換部203から送られる予測残差と、入力された第1~第3予測画素のいずれかを加算して復号済み画素を得るように構成されている。かかる復号済み画素は、画像出力部220、蓄積部207及びイントラ予測部204へ送られる。
【0031】
合成部209は、上述の第1予測画素及び第2予測画素の少なくとも一方と制御情報とに基づいて、第3予測画素を生成するように構成されている。
【0032】
画像出力部220は、加算器206から送信された復号済み画素を出力するように構成されている。
【0033】
<イントラ予測モードの導出方法1>
イントラ予測部204は、予め決められた一意のイントラ予測モードに基づいて、第1予測画素(イントラ予測画素)を導出するように構成されていてもよい。
【0034】
ここで、イントラ予測部204は、一意のイントラ予測モードとして、例えば、非特許文献1で開示されているプレーナモード(Planarモード)を用いてもよい。
【0035】
或いは、イントラ予測部204は、非特許文献1で開示されている直流成分モード(DCモード)を用いてもよい。
【0036】
或いは、イントラ予測部204は、復号部201から送られた制御情報に基づいて、イントラ予測部204で選択可能なイントラ予測モードの中から、一意のイントラ予測モードを導出するように構成されていてもよい。
【0037】
イントラ予測部204は、上述の通り、一意のイントラ予測モード及び復号対象ブロックに隣接する復号済み画素(隣接復号済み画素)を用いて、第1予測画素(イントラ予測画素)を生成するように構成されている。
【0038】
<イントラ予測モードの導出方法2>
或いは、イントラ予測部204は、非特許文献2で開示されているテンプレートベースイントラ予測モード導出(TIMD:Template-based Intra Mode Derivation)及び復号対象ブロックに隣接する復号済み画素(隣接復号済み画素)を用いて、第1予測画素(イントラ予測画素)を生成するように構成されていてもよい。
【0039】
ここで、TIMDは、
図2に示すように、復号対象ブロックに隣接する復号済み画素(隣接復号済み画素)と、復号対象ブロックに隣接しない近傍の復号済み画素(非隣接復号済み画素)及びイントラ予測部204で選択可能な全てのイントラ予測モードに基づいて生成された隣接復号済み画素と同位置にある予測画素(隣接予測画素)の類似度(コスト)を算出し、かかるコストが最小のイントラ予測モードを導出する技術である。
【0040】
かかるコストを算出する際の隣接復号済み画素又は隣接予測画素をテンプレートと呼称する。
【0041】
例えば、上述のコストは、絶対値誤差和(SAD:Sum of Absolute Difference)或いはアダマール変換絶対値誤差和(SATD:Sum of Absolute Transformed Difference)であってもよい。
【0042】
ここで、イントラ予測部204は、TIMDによってコストが算出されるイントラ予測モードの対象を、イントラ予測部204で選択可能な全てのイントラ予測モードから一部制限してもよい。
【0043】
例えば、イントラ予測部204は、非特許文献1や非特許文献2で開示されている最尤モード(MPM:Most Probable Mode)リストを構築して、かかるMPMリスト内に含まれるイントラ予測モードのみに、TIMDによってコストが算出されるイントラ予測モードの対象を制限してもよい。
【0044】
かかる構成によれば、コストを比較するためのイントラ予測モードの種類数が限定されることで、コスト算出にかかる処理時間を削減できる。
【0045】
或いは、イントラ予測部204は、MPMリスト内のイントラ予測モードに加えて、Planarモード又はDCモード又は水平角度モード又は垂直角度モードについては、MPMリスト内に含まれているか否かに関わらず、TIMDによってコストが算出されるイントラ予測モードの対象に含めてもよい。
【0046】
かかる構成によれば、コストを比較するためのイントラ予測モードとして、予測精度が相対的に高いPlanarモード又はDCモード又は水平角度モード又は垂直角度モードを、TIMDによってコストが算出されるイントラ予測モードの対象に含めることで、処理時間の大幅な増加は抑えつつ予測精度を向上させられる。
【0047】
イントラ予測部204は、TIMDによって導出されるコストが最小の1種類のイントラ予測モード(TIMD第1イントラ予測モード)及び隣接復号済み画素を用いて、イントラ予測画素を生成してもよい。
【0048】
或いは、イントラ予測部204は、TIMDによって導出されるTIMD第1イントラ予測モード及びコストが次に小さいイントラ予測モード(TIMD第2イントラ予測モード)を導出してもよい。さらに、イントラ予測部204は、これら2種類のイントラ予測モード及び隣接復号済み画素を用いて、イントラ予測画素を生成してもよい。
【0049】
イントラ予測部204は、イントラ予測画素を生成する際に、TIMDによって導出されるTIMD第1イントラ予測モードのみを用いてイントラ予測画素を生成するか、或いは、TIMD第1イントラ予測モード及びTIMD第2イントラ予測モードの2種類を用いてイントラ予測画素を生成するかを、それぞれのイントラ予測モードを用いて導出されたコストの比較により制御してもよい。
【0050】
例えば、イントラ予測部204は、TIMD第2イントラ予測モードに対応するコストが、TIMD第1イントラ予測モードに対応するコストのK倍未満である場合は、2種類のイントラ予測モード(TIMD第1イントラ予測モード及びTIMD第2イントラ予測モード)を用いてもよい。
【0051】
一方、イントラ予測部204は、TIMD第2イントラ予測モードに対応するコストが、TIMD第1イントラ予測モードに対応するコストのK倍以上である場合は、TIMD第1イントラ予測モードのみを用いてもよい。
【0052】
ここで、イントラ予測部204は、例えば、Kの値として、1.2、1.5、1.7、2.0といった値を用いてもよい。
【0053】
ここで、2種類のイントラ予測モード及び隣接復号済み画素を用いて生成されたイントラ予測画素を合成する際の重み値は、例えば、2種類のイントラ予測モードに対応するテンプレートのコストに応じて設定されてもよい。
【0054】
例えば、イントラ予測部204は、「コスト1/(コスト1+コスト2)」又は「コスト2/(コスト1+コスト2)」によって、TIMD第1イントラ予測モードの重み値(すなわち、重み値1)について算出し、「1-重み値1」によって、TIMD第2イントラ予測モードの重み値(すなわち、重み値2)について算出してもよい。
【0055】
ここで、コスト1及びコスト2は、それぞれTIMD第1イントラ予測モード及びTIMD第2イントラ予測モードに対応するテンプレートのコストである。
【0056】
また、イントラ予測部204は、TIMDによる1種類又は2種類のイントラ予測モードの導出において、復号対象ブロックの上部及び左部の双方の隣接復号済み画素及び隣接予測画素を用いてもよい。
【0057】
或いは、イントラ予測部204は、TIMDによる1種類又は2種類のイントラ予測モードの導出において、
図3に示すように、復号対象ブロックの上部及び左部のいずれか一方の隣接復号済み画素及び隣接予測画素を用いてもよい。
【0058】
ここで、イントラ予測部204は、復号対象ブロックの上部及び左部の隣接復号済み画素及び隣接予測画素双方を用いるか、或いは、復号対象ブロックの上部及び左部の隣接復号済み画素及び隣接予測画素のいずれか一方を用いるかを、復号対象ブロックの縦横比に応じて決定してもよい。
【0059】
例えば、イントラ予測部204は、縦横比が1(縦:横=1:1)の場合は、復号対象ブロックの上部及び左部の隣接復号済み画素及び隣接予測画素の双方を用いることを決定し、縦横比がR(縦:横=R:1)以上の場合は、左部の隣接復号済み画素及び隣接予測画素のみを用いることを決定し、縦横比が1/R(縦:横=1:R)以下の場合は、上部の隣接復号済み画素及び隣接予測画素のみを用いることを決定してもよい。
【0060】
ここで、イントラ予測部204は、Rの値として、例えば、2、4、8、16を用いてもよい。
【0061】
また、イントラ予測部204は、TIMDによる2種類のイントラ予測モードの導出において、
図3に示すように、復号対象ブロックの上部及び左部のそれぞれの隣接復号済み画素及び隣接予測画素からコストが最小のイントラ予測モードを1種類ずつ導出してもよい。
【0062】
このとき、イントラ予測部204は、復号対象ブロックの上部及び左部のそれぞれの隣接復号済み画素及び隣接予測画素のそれぞれのコスト(TIMDコスト上部、TIMDコスト左部)の大小関係、又は、復号対象ブロックの高さ及び幅に応じて設定される重み値によって、復号対象ブロックの上部及び左部のそれぞれの隣接復号済み画素及び隣接予測画素のそれぞれで1種類ずつ導出されるイントラ予測モードに基づいて、イントラ予測画素を合成してもよい。
【0063】
例えば、イントラ予測部204は、以下のように、TIMDコスト上部(TimdCostAbove)及びTIMDコスト左部(TimdCostLeft)の大小関係を比較し、重み値を決定してもよい。
【0064】
具体的には、イントラ予測部204は、TimdCostAbove>α×TimdCostLeftが満たされる場合、「wAbove(x,y)=Clip3(0,64,32+32×x/W-64×y/H)」によって、復号対象ブロックの上部の重み値(wAbove)を算出してもよい。
【0065】
ここで、x及びyは、復号対象ブロック内のx座標及びy座標であり、W及びHは、復号対象ブロックの幅及び高さである。また、αは、予め設定される係数であり、例えば、1.2、1.5、1.7、2.0といった値であってもよい。
【0066】
或いは、イントラ予測部204は、TimdCostAbove>α×TimdCostLeftが満たされない場合、「wAbove(x,y)=Clip3(0,64,32+64×x/W-32×y/H)」によって、復号対象ブロックの上部の重み値(wAbove)を算出してもよい。
【0067】
ここで、イントラ予測部204は、「wLeft(x,y)=64-wAbove(x,y)」によって、復号対象ブロックの左部の重み値(wLeft)を算出してもよい。
【0068】
<イントラ予測モードの導出方法3>
イントラ予測部204は、非特許文献2で開示されているデコーダサイドイントラ予測モード導出(DIMD:Docoder-side Intra Mode Derivation)を用いて、イントラ予測モードを導出してもよい。
【0069】
第1に、DIMDは、
図4に示すように、復号対象ブロックに隣接する近傍複数ライン(例えば、3ラインや4ライン)に対して、例えば、3×3画素単位のソーベル(Sobel)フィルタを適用し、勾配を算出する。
【0070】
第2に、DIMDは、勾配に対応する角度モードを特定し、かかる近傍複数ラインの全てでのヒストグラムを作成し、頻出順で予め決められたPlanarモード以外の1種類以上(例えば、2種類、3種類、4種類、5種類、6種類)のイントラ予測モードをPlanarモードと合成する。
【0071】
ここで、Planarモードに対して合成するイントラ予測モードの種類数は、予め固定値として設定されてもよいし、シーケンス単位、ピクチャ単位、スライス単位或いはブロック単位で、制御情報によって適応的に指定されてもよい。
【0072】
イントラ予測部204は、DIMDによるヒストグラムの計算で最頻出のイントラ予測モード及び隣接復号済み画素を用いて、第1予測画素(イントラ予測画素)を生成してもよい。
【0073】
或いは、イントラ予測部204は、DIMDによるヒストグラムの計算で最頻出のイントラ予測モード及び次に頻出のイントラ予測モードの2種類及び隣接復号済み画素を用いて、第1予測画素(イントラ予測画素)を生成してもよい。
【0074】
イントラ予測部204は、復号部201から送られる制御情報に基づいて、上述したイントラ予測モードの導出方法のいずれを用いるかを制御してもよい。詳細は、後述する。
【0075】
<イントラ予測画素の導出方法の変更例>
イントラ予測部204は、上述したイントラ予測モードの導出方法1~3によって導出された一意(1種類)のイントラ予測モード、隣接復号済み画素及び復号対象ブロックから1ライン離れた隣接復号済み画素(近傍復号済み画素)を用いて、イントラ予測画素を生成してもよい。
【0076】
かかる近傍復号済み画素としては、復号対象ブロック1ライン離れた隣接復号済み画素以外に、復号対象ブロックから2ラインや3ライン離れた隣接復号済み画素を用いてもよい。
【0077】
イントラ予測部204は、1種類のイントラ予測モードと隣接復号済み画素と近傍復号済み画素とを用いて、イントラ予測画素を生成する際、隣接復号済み画素及び近傍復号済み画素のそれぞれから生成されたイントラ予測画素を合成して、最終的なイントラ予測画素を生成する。
【0078】
イントラ予測部204は、例えば、隣接復号済み画素及び近傍復号済み画素のそれぞれから生成されたイントラ予測画素を3:1で合成してもよい。
【0079】
上述の例では、1つのイントラ予測モード及び1ラインの隣接復号済み画素によりイントラ予測画素を生成する事例を説明したが、1つのイントラ予測モード及び2ラインの隣接復号済み画素によりイントラ予測画素を生成することで、1つのイントラ予測モードを使用する場合であっても、予測精度を向上させられる。
【0080】
以下、本実施形態に係る画像復号装置200における特徴的な構成である合成部209について説明する。
【0081】
合成部209は、第1予測画素(イントラ予測画素)及び第2予測画素(インター予測画素)の少なくとも1つに基づいて、最終的な第3予測画素を生成して加算器206に出力するように構成されている。
【0082】
ここで、合成部209は、復号部201から送られる制御情報に応じて、第1予測画素(イントラ予測画素)及び第2予測画素(インター予測画素)の双方が存在する場合、これらを合成して最終的な第3予測画素を生成して加算器206に出力してもよい。
【0083】
イントラ予測画素及びインター予測画素の合成は、非特許文献1又は非特許文献2で開示されているインター・イントラ結合予測(CIIP:Combined Inter and Intra Prediction)が該当するが、CIIPで合成されるイントラ予測画素は、1種類のイントラ予測モードのみから生成されているため、予測精度の向上、ひいては、符号化性能の改善の余地がある。
【0084】
そこで、本発明では、CIIPにおけるイントラ予測モードとして、上述のTIMD又はDIMDの少なくとも1つによって導出された2種類以上のイントラ予測モードを適用する。
【0085】
ここで、合成部209は、以下のように、イントラ予測部204で導出されたイントラ予測モード、隣接ブロックの予測モード(イントラ予測及びインター予測のどちらが適用されているか)、復号対象ブロックのサイズ又は制御情報に応じて、CIIPにおけるイントラ予測画素及びインター予測画素を合成する際の重み値(wIntra、wInter)を決定してもよい。
【0086】
<イントラ予測画素及びインター予測画素の合成方法1>
かかる合成方法1では、1種類のイントラ予測モード(Planar/DCモード)が対象となっている。
【0087】
合成部209は、イントラ予測部204で導出されたイントラ予測モードが1種類であり且つPlanarモード又はDCモードである場合(非角度モードである場合)は、非特許文献1で開示されており且つ
図5に示すように復号対象ブロックに隣接する2つの隣接ブロックにイントラ予測が適用されているか否かに応じて、イントラ予測画素及びインター予測画素の合成方法を決定してもよい。
【0088】
なお、wIntraの値及びwInterの値は、復号対象ブロック内で一定(均一)である。
【0089】
<イントラ予測画素及びインター予測画素の合成方法2>
かかる合成方法2では、1種類のイントラ予測モード(Planar/DCモード)が対象となっている。
【0090】
合成部209は、イントラ予測部204で導出されたイントラ予測モードが1種類であり且つPlanarモード又はDCモードである場合(非角度モードである場合)は、隣接復号済み画素からの距離に応じて算出される重み値に基づいて、イントラ予測画素及びインター予測画素を合成してもよい。
【0091】
復号対象ブロック内のイントラ予測画素は、隣接復号済み画素からの距離が短いと予測精度が高い一方で、隣接復号済み画素からの距離が大きいと予測精度が低い。
【0092】
そのため、隣接復号済み画素からの距離が短い場合は、イントラ予測画素の重み値(wIntra)よりもインター予測画素の重み値(wInter)を小さくし、反対に、隣接復号済み画素からの距離が長い場合は、イントラ予測画素の重み値(wIntra)よりもインター予測画素の重み値(wInter)を大きくすることで、最終的に生成される第3予測画素の予測精度を向上させられ、結果として符号化性能を改善できる。
【0093】
<イントラ予測画素及びインター予測画素の合成方法3>
かかる合成方法3では、1種類のイントラ予測モード(角度モード)が対象となっている。
【0094】
合成部209は、イントラ予測手段で導出されたイントラ予測モードが1種類であり且つPlanarモード又はDCモードでない場合(角度モードである場合)は、非特許文献2で開示されており且つ
図6に示すように角度モードの方向に応じて、復号対象ブロックを水平方向或いは垂直方向に4等分した各小領域に、イントラ予測及びインター予測の重み値(wIntra、wInter)を適応的に決定してもよい。
【0095】
具体的に、合成部209は、例えば、導出された角度モードの方向が復号対象ブロックの水平方向(復号対象ブロックの対角線の左下から当該対角線の左上の範囲内)にある場合は、
図6に示すような予め設定されたwIntra及びwInterを用いて、復号対象ブロックを水平方向に4等分した各小領域において、イントラ予測画素及びインター予測画素を合成する。
【0096】
反対に、合成部209は、導出された角度モードの方向が復号対象ブロックの垂直方向(復号対象ブロックの対角線の左上から当該対角線の右上の範囲内)にある場合は、
図6に示すような予め設定されたwIntra及びwInterを用いて、復号対象ブロックを垂直方向に4等分した各小領域において、イントラ予測画素及びインター予測画素を合成する。
【0097】
そして、合成部209は、イントラ予測部204で導出されたイントラ予測モードが2種類以上である場合は、以下のように、wIntra及びwInterの値を適応的に決定してもよい。
【0098】
合成部209は、2種類のイントラ予測モードの双方が角度モードであり且つ両角度モードの方向が上述した水平方向或いは垂直方向の少なくとも一方で一致する場合は、上述した
図6に示すように、復号対象ブロックの水平方向或いは垂直方向に4等分した小領域ごとの重み値(wIntra及びwInter)を用いてもよい。
【0099】
また、合成部209は、2種類のイントラ予測モードの双方が角度モードであり且つ両角度モードの方向が上述した水平方向或いは垂直方向の少なくとも一方で一致しない場合は、
図7に示すように、復号対象ブロックを水平方向或いは垂直方向に4等分した小領域ごとの重み値(wIntra及びwInter)の平均値から、復号対象ブロックを上述した水平方向或いは垂直方向の4等分を考慮して16等分割した小領域ごとの重み値を算出し、これらを用いてもよい。
【0100】
また、合成部209は、2種類のイントラ予測モードのうち一方が角度モードであり且つ他方が非角度モード(Planarモード又はDCモード)である場合は、これらのイントラ予測モードを導出した際に算出した上述のTIMDのコストやDIMDのヒストグラムの大小関係に応じて、イントラ予測画素及びインター予測画素の合成方法を制御してもよい。
【0101】
具体的に、合成部209は、TIMDで2種類のイントラ予測モードが導出された場合は、コストが小さい方の合成方法を優先して適用する。
【0102】
例えば、合成部209は、コストが小さい方のイントラ予測モードが角度モードである場合は、上述したように、かかる角度モードの方向に応じて、復号対象ブロックを水平方向又は垂直方向に4等分割した小領域ごとの重み値(wIntra及びwInter)を導出して、使用してもよい。
【0103】
反対に、合成部209は、コストが小さい方のイントラ予測モードが非角度モード(Planarモード又はDCモード)である場合は、上述したように、復号対象ブロックに隣接する隣接ブロックにイントラ予測が適用されているか否かに応じて、上述の合成方法1又は合成方法2により重み値(wIntra及びwInter)を導出して、使用してもよい。
【0104】
次に、合成部209は、2種類のイントラ予測モードの双方が非角度モード(Planarモード又はDCモード)である場合は、上述したように、復号対象ブロックに隣接する隣接ブロックにイントラ予測が適用されているか否かに応じて、上述の合成方法1又は合成方法2により重み値(wIntra及びwInter)を導出して、使用してもよい。
【0105】
同様に、合成部209は、DIMDによってイントラ予測モードが導出された場合は、上述のコストの大小関係(コストが小さい方のイントラ予測モードに基づく合成方法の優先適用)を、上述のヒストグラムの大小関係(ヒストグラムが多い方のイントラ予測モードに基づく合成方法の優先適用)に置換して構成することができる。
【0106】
上述した例では、CIIPに対して2種類のイントラ予測モードを導出して、かかる2種類のイントラ予測モードによって生成されるイントラ予測画素を、導出されたイントラ予測モードの種別及び導出時のテンプレートコストやヒストグラムの比較によって、インター予測画素と合成する方法について説明した。
【0107】
一方で、合成部209は、CIIPに対して3種類上のイントラ予測モードが導出される場合においても、同様のコンセプトで、イントラ予測画素とインター予測画素との合成方法を決定できる。
【0108】
例えば、合成部209は、上述のコストが最小となるイントラ予測モードの合成方法、或いは、上述のヒストグラムが最大となるイントラ予測モードの合成方法を優先的に適用してもよい。
【0109】
以上のように、合成部209が、CIIPにおいて、イントラ予測部204で導出された2種類以上のイントラ予測が高精度にインター予測画素と合成できるため、結果として、合成部209から出力される最終的な予測画素(第3予測画素)の精度の向上が見込め、ひいては、符号化性能を改善することができる。
【0110】
なお、復号部201、イントラ予測部204又は合成部209は、復号対象ブロックのサイズが大きい場合には、上述のCIIP向けの2種類上のイントラ予測画素の導出及び合成を制限してもよい。
【0111】
例えば、復号部201、イントラ予測部204又は合成部209は、復号対象ブロックのサイズ(復号対象ブロック内の画素数)がN画素数以下である場合にのみ、CIIP向けの2種類以上のイントラ予測モードの導出、これらの合成、そしてインター予測画素との合成を許容してもよい。ここで、N画素としては、256画素、512画素、10244画素が用いられてもよい。
【0112】
かかる構成によれば、大きいサイズの復号対象ブロックに対しては予測精度が低いこと(隣接復号済み画素から距離が離れるため)が知られているイントラ予測について、複数のイントラ予測モードの適用を制限(禁止)できるため、符号化性能を維持しつつ、演算量の削減が期待できる。
【0113】
以降で、上述の合成方法について復号部201によって復号され制御情報について説明する。
【0114】
復号部201は、シーケンス単位、ピクチャ単位或いはスライス単位で、上述のCIIPが適用できるか否かについて制御するフラグ(例えば、非特許文献1と同じsps_ciip_enabled_flag)を復号してもよい。
【0115】
さらに、復号部201は、復号対象ブロック単位で、上述のCIIPを適用するか否かについて制御するフラグ(例えば、非特許文献1と同じciip_flag)を復号してもよい。
【0116】
復号部201は、所定条件によって、ciip_flagを復号するか否かについて判定してもよい。例えば、復号部201は、非特許文献1や非特許文献2と同様の条件が満たされる場合にのみ、ciip_flagを復号してもよい。
【0117】
さらに、復号部201は、ciip_flagが有効である場合(すなわち、CIIPを復号対象ブロックに適用する場合)において、イントラ予測モードの導出方法について制御するフラグ(又は、インデックス)を復号してもよい。
【0118】
例えば、復号部201は、上述のイントラ予測モードの導出方法の一つであるTIMDによるイントラ予測モードの導出が有効であるか否かについて制御するフラグとして、ciip_timd_flagを復号してもよい。
【0119】
ここで、ciip_timd_flagが1である場合、TIMDによるイントラ予測モードの導出が有効であり、ciip_timd_flagが0である場合は、TIMDによるイントラ予測モードの導出が無効であることを示す。
【0120】
なお、復号部201は、ciip_timd_flagを復号しない場合は、ciip_timd_flagを0と推定してもよい。
【0121】
イントラ予測部204は、ciip_timd_flagが1である場合(ciip_timd_flagが有効である場合)に、上述のイントラ予測モードの導出方法の一つであるTIMDによるイントラ予測モードの導出を適用する。
【0122】
或いは、復号部201は、上述のイントラ予測モードの導出方法一つであるDIMDによるイントラ予測モードの導出が有効であるかについて制御するフラグとして、ciip_dimd_flagを復号してもよい。
【0123】
ここで、ciip_dimd_flagが1である場合、DIMDによるイントラ予測モードの導出が有効であり、ciip_dimd_flagが0である場合は、DIMDによるイントラ予測モードの導出が無効であることを示す。
【0124】
復号部201は、ciip_dimd_flagを復号しない場合は、ciip_dimd_flagを0と推定してもよい。
【0125】
イントラ予測部204は、ciip_dimd_flagが1である場合(ciip_dimd_flagが有効である場合)に、上述のイントラ予測モードの導出方法の一つであるDIMDによるイントラ予測モードの導出を適用する。
【0126】
或いは、復号部201は、上述のイントラ予測モードの導出方法であるTIMD及びDIMDによるイントラ予測モードの導出がそれぞれ有効であるかについて制御するフラグとして、ciip_timd_dimd_idxを復号してもよい。
【0127】
ここで、ciip_timd_dimd_idxが2である場合、DIMDによるイントラ予測モードの導出が有効であり、ciip_timd_dimd_idxが1である場合、TIMDによるイントラ予測モードの導出が有効であり、ciip_timd_dimd_idxが0である場合、DIMD及びTIMDによるイントラ予測モードの導出の双方が無効であることを示す。
【0128】
復号部201は、ciip_timd_dimd_idxを復号しない場合は、ciip_timd_dimd_idxを0と推定してもよい。
【0129】
イントラ予測部204は、ciip_timd_dimd_idxが1又は2である場合に、上述のイントラ予測モードの導出方法であるTIMD又はDIMDによるイントラ予測モードの導出を適用する。
【0130】
一変更例として、復号部201は、所定条件に基づいて、上述のciip_timd_flag、ciip_dimd_flag又はciip_timd_dimd_idxを復号するか否かについて判定してもよい。
【0131】
例えば、復号部201は、復号対象ブロックのサイズ(全画素数)がT画素未満である場合にのみ、上述のciip_timd_flag、ciip_dimd_flag又はciip_timd_dimd_idxを復号すると判定してもよい。
【0132】
例えば、復号部201は、T画素として、2048画素、1024画素、512画素、256画素、128画素(4のべき乗の画素数)を設定してもよい。
【0133】
TIMDやDIMDは、上述の通り、高精度なイントラ予測モードが導出できる一方で、上述のコストやヒストグラムの算出を伴うため、上述の構成によれば、イントラ予測が有効な小さいサイズの復号対象ブロックのみに対して適用を制限することで、符号化性能を維持しつつ、復号処理量を削減できる。
【0134】
なお、復号部201及びイントラ予測部204が、上述のciip_timd_flag、ciip_dimd_flag又はciip_timd_dimd_idxの復号結果或いは推定結果で、TIMD又はDIMDが無効であることを特定した場合に、イントラ予測部204は、上述のPlanarモード又はDCモードが対象である場合のイントラ予測モードの導出方法及びイントラ予測画素の生成方法により、イントラ予測モードを導出し、イントラ予測画素を生成してもよい。
【0135】
以下、
図8~
図11を参照して、本実施形態に係る復号部201が制御情報を復号する動作の一例について説明する。
【0136】
第1に、
図8に示すように、ステップS101において、復号部201は、ciip_flagを復号し、ciip_flagが1であるか否か(すなわち、ciip_flagが有効であるか否か)について判定する。
【0137】
ciip_flagが0である場合、本動作は、終了し、ciip_flagが1である場合、本動作は、ステップS102に進む。
【0138】
ステップS102において、復号部201は、ciip_timd_flagを復号する。
【0139】
第2に、
図9に示すように、ステップS201において、復号部201は、ciip_flagを復号し、ciip_flagが1であるか否か(すなわち、ciip_flagが有効であるか否か)について判定する。
【0140】
ciip_flagが0である場合、本動作は、終了し、ciip_flagが1である場合、本動作は、ステップS202に進む。
【0141】
ステップS202において、復号部201は、ciip_dimd_flagを復号する。
【0142】
第3に、
図10に示すように、ステップS301において、復号部201は、ciip_flagを復号し、ciip_flagが1であるか否か(すなわち、ciip_flagが有効であるか否か)について判定する。
【0143】
ciip_flagが0である場合、本動作は、終了し、ciip_flagが1である場合、本動作は、ステップS302に進む。
【0144】
ステップS302において、復号部201は、ciip_timd_dimd_idxを復号する。
【0145】
第4に、
図11に示すように、ステップS401において、復号部201は、ciip_flagを復号し、ciip_flagが1であるか否か(すなわち、ciip_flagが有効であるか否か)について判定する。
【0146】
ciip_flagが0である場合、本動作は、終了し、ciip_flagが1である場合、本動作は、ステップS402に進む。
【0147】
ステップS402において、復号部201は、復号対象ブロックのサイズ(全画素数)がT画素未満であるか否かについて判定する。
【0148】
復号対象ブロックのサイズ(全画素数)がT画素未満ではない場合、本動作は、終了し、復号対象ブロックのサイズ(全画素数)がT画素未満である場合、本動作は、ステップS403に進む。
【0149】
ステップS403において、復号部201は、ciip_timd_flagを復号する。
【0150】
ここで、ステップS403のciip_timd_flagは、上述のciip_dimd_flagまたはciip_timd_dimd_idxに置換されてもよい。
【0151】
本実施形態に係る画像復号装置200によれば、復号対象ブロックに対するCIIP(インター・イントラ結合予測)に際して、復号対象ブロック近傍の復号済み画素から高精度な2種類以上のイントラ予測モードを導出してイントラ予測画素を生成し、導出されたイントラ予測モードに応じて、生成されたイントラ予測画素及びインター予測画素を適応的な重み値で合成できるため、結果として符号化性能を改善することができる。
【0152】
上述の画像復号装置200は、コンピュータに各機能(各工程)を実行させるプログラムであって実現されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0153】
なお、本実施形態によれば、例えば、動画像通信において総合的なサービス品質の向上を実現できることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0154】
200…画像復号装置
201…復号部
202…逆量子化部
203…逆変換部
204…イントラ予測部
206…加算器
207…蓄積部
208…動き補償部
209…合成部
210…符号入力部
220…画像出力部