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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090273
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】電子機器及び電子機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/16 20060101AFI20240627BHJP
   G06F 1/18 20060101ALI20240627BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20240627BHJP
   H04M 1/02 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G06F1/16 312F
G06F1/16 312G
G06F1/18 A
H05K5/02 V
H04M1/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206047
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】森野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】山内 武仁
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 大輔
【テーマコード(参考)】
4E360
5K023
【Fターム(参考)】
4E360AB05
4E360AB08
4E360AB17
4E360AB18
4E360AB42
4E360BA01
4E360BA11
4E360BB12
4E360BB22
4E360BB23
4E360BB27
4E360BD05
4E360CA03
4E360EA14
4E360EA28
4E360EC14
4E360EC16
4E360ED02
4E360ED07
4E360ED16
4E360ED28
4E360GA07
4E360GA08
4E360GA12
4E360GA53
4E360GB26
4E360GB46
4E360GC04
4E360GC08
5K023AA07
5K023BB27
5K023DD08
5K023HH07
5K023KK07
5K023LL06
5K023QQ02
5K023QQ04
5K023QQ05
(57)【要約】
【課題】折り曲げ可能な領域を有するディスプレイでのしわの発生を抑制する。
【解決手段】電子機器は、第1筐体部材と、第2筐体部材と、第1筐体部材に支持される第1プレートと、第2筐体部材に支持され、第1プレートとの間に隙間を設けて並ぶ第2プレートと、可撓性を有するシート状に形成されたディスプレイと、第1プレートを第1筐体部材に対して固定する第1締結部と、第2プレートを第2筐体部材に対して固定する第2締結部とを備える。第1プレートは、裏面から突出する突出部を有し、第1筐体部材は、前記突出部と対向する壁部を有する。さらに、突出部と壁部との間に介在し、第1プレートと第2プレートの並び方向での第1筐体部材に対する第1プレートの相対移動を規制するストッパ部材を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
第1筐体部材と、
前記第1筐体部材と隣接し、前記第1筐体部材と相対的に回動可能に連結される第2筐体部材と、
前記第1筐体部材に支持される第1プレートと、
前記第2筐体部材に支持され、前記第1プレートとの間に隙間を設けて並ぶ第2プレートと、
可撓性を有するシート状に形成され、前記第1プレートの表面に固定される第1領域と、前記第2プレートの表面に固定される第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間で前記隙間を跨ぐように設けられる折り曲げ可能な折曲領域と、を有するディスプレイと、
前記第1プレートを前記第1筐体部材に対して固定する第1締結部と、
前記第2プレートを前記第2筐体部材に対して固定する第2締結部と、
を備え、
前記第1プレートは、裏面から突出する突出部を有し、
前記第1筐体部材は、前記突出部と対向する壁部を有し、
さらに、前記突出部と前記壁部との間に介在し、前記第1プレートと前記第2プレートの並び方向での前記第1筐体部材に対する前記第1プレートの相対移動を規制するストッパ部材を備える
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記突出部は、内側にねじ穴が設けられた円筒形状を有し、
前記ストッパ部材は、前記突出部に対して軸周りに相対回転可能に嵌合する偏心カムであり、
前記偏心カムは、外周面が前記壁部に当接した状態で、前記ねじ穴に螺合されたねじを用いて前記突出部と締結されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器であって、
さらに、前記偏心カムの端面と前記ねじの頭部との間に摩擦部材を備える
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器であって、
前記偏心カムの端面は、一部に凹部を有し、
前記摩擦部材は、前記凹部に配置されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記第1締結部は、前記並び方向での前記第1プレート及び前記第1筐体部材の相対位置を、所定の調整幅を持って固定可能であり、
前記第2締結部は、前記並び方向での前記第2プレート及び前記第2筐体部材の相対位置を、実質的に調整幅なしで固定するものである
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記突出部と前記壁部は、前記並び方向に沿って並ぶように配置されると共に、前記突出部よりも前記壁部が前記第2プレート側に配置されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
互いに相対的に回動可能に連結される第1筐体部材及び第2筐体部材を備える電子機器の製造方法であって、
可撓性を有するシート状に形成されたディスプレイの第1領域を第1プレートの表面に固定し、第2領域を前記第1プレートとの間に隙間を設けて並べた第2プレートの表面に固定し、前記第1領域と前記第2領域との間で折り曲げ可能な折曲領域が前記隙間を跨いだ状態とする第1工程と、
前記第1工程の後、前記第2プレートを第2筐体部材に対して固定する第2工程と、
前記第2工程の後、前記第1プレートを前記第2プレートから離間する離間方向に向かって引っ張りながら前記第1筐体部材に対して固定する第3工程と、
前記第3工程の後、前記第1プレートの裏面から突出する突出部と、前記第1筐体部材に設けられて前記突出部と対向する壁部との間にストッパ部材を介在させ、前記第1プレートと前記第2プレートの並び方向での前記第1筐体部材に対する前記第1プレートの相対移動を規制する第4工程と、
を有する
ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の電子機器の製造方法であって、
前記突出部は、内側にねじ穴が設けられた円筒形状を有し、
前記ストッパ部材は、前記突出部に対して軸周りに相対回転可能に嵌合する偏心カムであり、
前記第4工程では、前記ねじ穴にねじを締め付けると同時に前記偏心カムを回転させることで、前記偏心カムの外周面を前記壁部に当接させた状態で該偏心カムを前記突出部に締結する
ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の筐体部材を相対的に回動可能に連結した電子機器及び該電子機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、有機EL(Electro Luminescence)等のフレキシブルディスプレイを用いることで、筐体だけでなくディスプレイまでも折り曲げ可能に構成した電子機器を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6971354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フレキシブルディスプレイは、左右の筐体部材を跨ぐ位置に折曲領域を有する。この折曲領域は、他の部材に固定せずにフリーな状態にしておく必要がある。このため、ディスプレイの折曲領域は、平板状に開いた際に凸状のしわや波を生じ、視認性や外観品質を低下させる。そこで、上記特許文献1では、互いの隣接する縁部同士が突き合う2枚のプレートを略V字状に配置してディスプレイを固定することで、プレート間を平板状に戻した際に折曲領域に張力を付与可能な方法を提案している。
【0005】
ところが、製造時にディスプレイに張力を付与し、しわ等の発生を防止していたとしても、例えば電子機器が衝撃等を受けた際にディスプレイを支持するプレートが筐体部材に対して位置ずれすると、再びディスプレイがしわ等を生じる可能性があることが分かってきた。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、折り曲げ可能な領域を有するディスプレイでのしわの発生を抑制できる電子機器及び該電子機器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る電子機器は、第1筐体部材と、前記第1筐体部材と隣接し、前記第1筐体部材と相対的に回動可能に連結される第2筐体部材と、前記第1筐体部材に支持される第1プレートと、前記第2筐体部材に支持され、前記第1プレートとの間に隙間を設けて並ぶ第2プレートと、可撓性を有するシート状に形成され、前記第1プレートの表面に固定される第1領域と、前記第2プレートの表面に固定される第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間で前記隙間を跨ぐように設けられる折り曲げ可能な折曲領域と、を有するディスプレイと、前記第1プレートを前記第1筐体部材に対して固定する第1締結部と、前記第2プレートを前記第2筐体部材に対して固定する第2締結部と、を備え、前記第1プレートは、裏面から突出する突出部を有し、前記第1筐体部材は、前記突出部と対向する壁部を有し、さらに、前記突出部と前記壁部との間に介在し、前記第1プレートと前記第2プレートの並び方向での前記第1筐体部材に対する前記第1プレートの相対移動を規制するストッパ部材を備える。
【0008】
本発明の第2態様に係る電子機器の製造方法は、互いに相対的に回動可能に連結される第1筐体部材及び第2筐体部材を備える電子機器の製造方法であって、可撓性を有するシート状に形成されたディスプレイの第1領域を第1プレートの表面に固定し、第2領域を前記第1プレートとの間に隙間を設けて並べた第2プレートの表面に固定し、前記第1領域と前記第2領域との間で折り曲げ可能な折曲領域が前記隙間を跨いだ状態とする第1工程と、前記第1工程の後、前記第2プレートを第2筐体部材に対して固定する第2工程と、前記第2工程の後、前記第1プレートを前記第2プレートから離間する離間方向に向かって引っ張りながら前記第1筐体部材に対して固定する第3工程と、前記第3工程の後、前記第1プレートの裏面から突出する突出部と、前記第1筐体部材に設けられて前記突出部と対向する壁部との間にストッパ部材を介在させ、前記第1プレートと前記第2プレートの並び方向での前記第1筐体部材に対する前記第1プレートの相対移動を規制する第4工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記態様によれば、折り曲げ可能な領域を有するディスプレイでのしわの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る電子機器を閉じて0度姿勢とした状態を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す電子機器を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、図2に示す電子機器の内部構造を模式的に示す平面図である。
図4図4は、図3に示す電子機器の内部構造を模式的に示す底面図である。
図5図5は、図4中のV-V線に沿う模式的な断面図である。
図6図6は、図5に示す電子機器を0度姿勢とした状態を示す模式的な斜視断面図である。
図7図7は、図4に示す第1筐体部材及び第1プレートの一部を拡大した斜視図である。
図8A図8Aは、ストッパ部材及びその周辺部の模式的な底面図である。
図8B図8Bは、図8Aに示すストッパ部材を突出部に対してねじで締結する動作を示す図である。
図8C図8Cは、図8Bに示す状態からねじを締め付け、ストッパ部材を突出部と壁部との間に介在させた状態を示す図である。
図9A図9Aは、ストッパ部材及びその周辺部の模式的な側面断面図である。
図9B図9Bは、図9Aに示す状態からねじを締め付け、ストッパ部材を突出部と壁部との間に介在させた状態を示す図である。
図10A図10Aは、変形例に係るストッパ部材及びその周辺部の模式的な側面断面図である。
図10B図10Bは、図10Aに示す状態からねじを締め付け、ストッパ部材を突出部と壁部との間に介在させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電子機器及びその製造方法について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を閉じて0度姿勢とした状態を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示す電子機器10を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す斜視図である。図3は、図2に示す電子機器10の内部構造を模式的に示す平面図である。
【0013】
図1図3に示すように、電子機器10は、第1筐体12A及び第2筐体12Bと、ヒンジ装置14と、ディスプレイ16とを備える。本実施形態の電子機器10は、本のように折り畳み可能なタブレット型PC或いはノート型PCを例示する。電子機器10は、スマートフォン又は携帯用ゲーム機等であってもよい。
【0014】
各筐体12A,12Bは、互いに隣接して配置されている。第1筐体12Aは、第1筐体部材17Aと、第1カバー部材18Aとを備える。第1筐体部材17Aは、第2筐体12Bと隣接する縁部17Aa以外の3辺に立壁を形成した矩形の枠状部材である。第1カバー部材18Aは、第1筐体部材17Aの裏面開口を閉じるプレート状部材である(図5も参照)。同様に、第2筐体12Bは、第1筐体12Aと隣接する縁部17Ba以外の3辺に立壁を形成した第2筐体部材17Bと、第2筐体部材17Bの裏面開口を閉じる第2カバー部材18Bとを備える。筐体部材17A,17Bの表面開口は、ディスプレイ16で閉じられる。
【0015】
各部材17A,17B,18A,18Bは、例えばステンレスやマグネシウム、アルミニウム等の金属部材、或いは炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂板等で構成される。
【0016】
ヒンジ装置14は、筐体12A,12B間を相対的に回動可能に連結している。ヒンジ装置14は、図1に示す0度姿勢で形成される縁部17Aa,17Ba間の隙間を隠す背表紙としても機能する(図6も参照)。ディスプレイ16は、筐体12A,12B間に亘って延在している。
【0017】
以下、電子機器10について、筐体12A,12Bの並び方向をX方向、これと直交する縁部17Aa,17Baに沿う方向をY方向、筐体12A,12Bの厚み方向をZ方向、と呼んで説明する。X方向については、第2筐体12Bから第1筐体12Aに向かう方向をX1方向、その逆をX2方向と呼ぶこともある。また、筐体12A,12B間の角度姿勢について、互いに面方向で重なるように積層された状態を0度姿勢(図1参照)と呼び、互いに面方向と垂直する方向(X方向)に並んだ状態を180度姿勢(図2参照)と呼んで説明する。0度と180度の間の姿勢は適宜角度を刻んで呼ぶことができ、例えば筐体12A,12Bの互いの面方向が直交した状態が90度姿勢となる。これらの角度は説明の便宜上のものであり、実際の製品では角度数字の示す正確な角度位置から多少ずれた角度位置となることも当然生じ得る。
【0018】
図4は、図3に示す電子機器10の内部構造を模式的に示す底面図である。図4は、カバー部材18A,18Bを取り外した筐体12A,12Bを底面側から見た図である。図5は、図4中のV-V線に沿う模式的な断面図である。図6は、図5に示す電子機器10を0度姿勢とした状態を示す模式的な斜視断面図である。
【0019】
図1及び図6に示す0度姿勢において、筐体12A,12Bは、二つ折りに折り畳まれた状態となる。ディスプレイ16は、可撓性を有するシート状のフレキシブルディスプレイであり、例えば有機ELで構成されている。0度姿勢時、ディスプレイ16は、図2に示す第1筐体12A側の第1領域R1と第2筐体12B側の第2領域R2とが対向するように配置され、領域R1,R2間の境界領域である折曲領域R3が円弧状に折り曲げられた状態となる。図2及び図5に示す180度姿勢において、筐体12A,12Bは、互いに左右に並んで配置される。この際、ディスプレイ16は、領域R1,R2及び折曲領域R3がXY平面上に並んで配置され、全体として1枚の平板形状を成す。
【0020】
ディスプレイ16は、第1領域R1が第1筐体12Aに対して相対的に固定され、第2領域R2が第2筐体12Bに対して相対的に固定される。具体的には、第1領域R1の裏面16aが第1プレート20Aを介して第1筐体12Aと固定され、第2領域R2の裏面16aが第2プレート20Bを介して第2筐体12Bと固定される。ディスプレイ16の折曲領域R3は、ヒンジ装置14を構成する第1サポートプレート22A、ヒンジベース23、及び第2サポートプレート22Bで支持される。
【0021】
図3図6に示すように、プレート20A,20Bは、相互間にヒンジ装置14を挟んで左右に配置され、それぞれの表面20Aa,20Baでディスプレイ16の裏面16aを支持する。ディスプレイ16の裏面16aは、第1領域R1が第1プレート20Aの表面20Aaに固定され、第2領域R2が第2プレート20Bの表面20Baに固定される。領域R1,R2は、例えば両面テープ等の粘着材19を用いてプレート20A,20Bに固定される(図5参照)。
【0022】
本実施形態のプレート20A,20Bは、ベースプレート24と、金属フレーム25とで構成されている。ベースプレート24は、例えば炭素繊維にエポキシ樹脂等のマトリクス樹脂を含侵させた炭素繊維強化樹脂板である。金属フレーム25は、例えばマグネシウム合金等で形成され、ベースプレート24の裏面24aの外周縁部に固定されている。プレート20A,20Bは、炭素繊維強化樹脂板であるため、高い平面度の確保と、薄型化及び軽量化とが可能である。但し、炭素繊維強化樹脂板は、炭素繊維が外周端面(エッジ)から粉吹き状に脱落する懸念があり、また、形状加工やねじ加工等も難しい。そこで、プレート20A,20Bは、ベースプレート24の外周端面及び裏面24aの外縁部を囲むように金属フレーム25を接着剤等で固定している。
【0023】
第1プレート20Aは、第1筐体部材17Aに支持される。第2プレート20Bは、第2筐体部材17Bに支持される。図5に示す180度姿勢時、プレート20A,20Bは、互いに対向する縁部20Ab,20Bb間に隙間Gを設けてX方向に並ぶ。ディスプレイ16の折曲領域R3は、この隙間Gを跨ぐように配置され、その裏面16aが隙間Gを埋めるように配置されるヒンジ装置14で支持される。
【0024】
第1プレート20Aの金属フレーム25には、複数のボス26が形成されている。各ボス26は、例えば円錐台形状を有し、内周面に雌ねじを形成したねじ穴26aが設けられている。各ボス26は、ベースプレート24の裏面24aから突出するように設けられ、第1プレート20Aの外周縁部に沿って並んでいる。図5では、第2プレート20B側のボス26及びねじ穴26aの具体的な構造のみを例示しているが、第1プレート20A側のボス26及びねじ穴26aの構造はこれと同一又は同様でよい。
【0025】
第1筐体部材17Aは、各ねじ穴26aとオーバーラップする位置にそれぞれX方向に延びた略楕円形状の長孔17Abを有する(図4参照)。各長孔17Abは、それぞれねじ27が挿通され、各ねじ穴26aに螺合される(図7参照)。これにより第1プレート20Aが第1筐体部材17Aにねじ27を用いて締結固定される。つまりねじ穴26a、長孔17Ab、及びねじ27は、第1プレート20Aを第1筐体部材17Aに締結する第1締結部28Aを構成する。
【0026】
同様に、第2プレート20Bの金属フレーム25にもねじ穴26aを形成した複数のボス26が設けられている(図5参照)。但し、第2筐体部材17Bは、第2プレート20Bの各ねじ穴26aとオーバーラップする位置にそれぞれ真円形状の孔部17Bbを有する(図4参照)。第2プレート20は、各孔部17Bbを通してねじ穴26aに螺合されるねじ27によって第2筐体部材17Bに締結固定される。つまりねじ穴26a、孔部17Bb、及びねじ27は、第2プレート20Bを第2筐体部材17Bに締結する第2締結部28Bを構成する。
【0027】
ベースプレート24は、炭素繊維強化樹脂板ではなく、金属材料や樹脂材料で形成されてもよい。この場合、金属フレーム25は省略してもよく、ねじ穴26aはベースプレート24に設けてもよい。
【0028】
図5及び図6に示すように、ディスプレイ16の折曲領域R3は、筐体12A,12Bに対して相対移動可能である。180度姿勢時、折曲領域R3の裏面16aは、ヒンジベース23及びサポートプレート22A,22Bで支持される。0度姿勢時、折曲領域R3は、円弧状に折り曲げられ、裏面16aの一部がサポートプレート22A,22Bで支持され、大部分はヒンジ装置14から離間する。
【0029】
図3図5及び図6に示すように、本実施形態のヒンジ装置14は、ヒンジベース23と、第1サポートプレート22Aと、第2サポートプレート22Bとを有する。
【0030】
ヒンジベース23は、筐体12A,12Bの縁部17Aa,17Baを跨ぐ位置に設けられ、縁部17Aa,17Baに沿ってY方向で略全長に亘って延在している。ヒンジベース23は、アルミニウム等の金属材料で形成されたブロック状部品である。ヒンジベース23には、180度姿勢でX方向に並ぶ2本のヒンジ軸14A,14Bが支持されている。
【0031】
第1ヒンジ軸14Aには、第1リンクアーム30Aの第1端部が軸周りに回転可能に支持されている。第2ヒンジ軸14Bには、第2リンクアーム30Bの第1端部が軸周りに回転可能に支持されている。リンクアーム30A,30Bは、ヒンジ軸14A,14Bから離間する方向に向かって次第に筐体12A,12Bの内面12Ab,12Bbに近接するブーメラン状の湾曲形状を有する。
【0032】
第1リンクアーム30Aの第2端部は、第1ブラケット31Aに対して回転軸34を用いて相対回転可能に連結されている。第1ブラケット31Aは、第1筐体部材17Aに対して第1プレート20Aと共にねじ27で共締めされる。第2リンクアーム30Bの第2端部は、第2ブラケット31Bに対して回転軸35を用いて相対回転可能に連結されている。第2ブラケット31Bは、第2筐体部材17Bに対して第2プレート20Bと共にねじ27で共締めされる。図5では、第2ブラケット31Bを第2筐体部材17Bに固定する構造のみを例示しているが、第1ブラケット31Aを第1筐体部材17Aに固定する構造はこれと左右対称である以外は同一又は同様でよい。
【0033】
リンクアーム30A,30B及びブラケット31A,31Bは、ヒンジベース23の長手方向(Y方向)に沿って複数並ぶように設けられている(図3参照)。これによりヒンジベース23は、筐体12A,12B間を相対的に回動可能に連結している。ヒンジベース23内には、筐体12A,12B間の回動動作を同期させるギヤ機構や、筐体12A,12B間の回動動作に所定の回動トルクを付与するトルク機構等も設けられている。ヒンジベース23の外面には、化粧カバーとなる背表紙部品36が取り付けられている。
【0034】
図5に示す180度姿勢時、ヒンジベース23は、その表面23aでディスプレイ16の折曲領域R3の裏面16aを支持する。この際、ヒンジベース23及び背表紙部品36は、筐体12A,12B内に収納され、互いに近接又は当接した縁部17Aa,17BaをX方向に跨いだ配置となる。図6に示す0度姿勢時、ヒンジベース23及び背表紙部品36は、大きく離間した縁部17Aa,17Baの内面間の隙間を塞ぐように配置され、本のように折り畳まれた電子機器10の背表紙となる。
【0035】
サポートプレート22A,22Bは、アルミニウム等の金属材料で形成されたプレートであり、左右対称形状である。サポートプレート22A,22Bは、筐体12A,12Bの内面12Ab,12Bb側に設けられ、縁部17Aa,17Baに沿ってY方向で略全長に亘って延在している。
【0036】
第1サポートプレート22Aは、第1プレート20Aとヒンジベース23との間に配置される。第1サポートプレート22Aは、第1プレート20A側の縁部が第1ブラケット31Aに対して回転軸38を介して相対回転可能に連結されている。第1サポートプレート22Aは、ヒンジベース23側の縁部がヒンジベース23に対して相対移動可能である。第2サポートプレート22Bは、第2プレート20Bとヒンジベース23との間に配置される。第2サポートプレート22Bは、第2プレート20B側の縁部が第2ブラケット31Bに対して回転軸39を介して相対回転可能に連結されている。第2サポートプレート22Bは、ヒンジベース23側の縁部がヒンジベース23に対して相対移動可能である。
【0037】
サポートプレート22A,22Bは、筐体12A,12Bの回動動作に応じて、回転軸38,39を回転中心として揺動する。180度姿勢時、サポートプレート22A,22Bは、その表面22Aa,22Baによってディスプレイ16の折曲領域R3の裏面16aを支持する。180度以外の角度姿勢では、サポートプレート22A,22Bは、ディスプレイ16との間に隙間を設けた状態、又はディスプレイ16を変形させない程度の僅かな力でディスプレイ16に接触する(図6参照)。
【0038】
図4に示すように、第1筐体12Aには、例えばCPUを実装したマザーボード40及びサブバッテリ装置41が搭載され、さらに各種の電子部品が搭載される。第2筐体12Bには、例えばメインバッテリ装置42、ディスプレイ16の制御基板43及びサブカード44が搭載され、さらに各種の電子部品が搭載される。サブカード44は、例えば電源ボタンやUSB規格に準拠した外部コネクタ等を実装した基板である。
【0039】
このように構成された電子機器10において、ディスプレイ16の折曲領域R3は、他の部材に固定されていない。このため、折曲領域R3は、図5に示す180度姿勢時にはプレート20A,20B間の隙間Gでヒンジ装置14の表面22Aa,22Ba,23aに置かれただけの状態となる。このため、折曲領域R3は、凸状のしわや波を生じ、視認性や外観品質を低下させる懸念がある。
【0040】
そこで、本実施形態の電子機器10は、製造時に折曲領域R3を幅方向(X方向)に引張させた状態とし、この引張状態を維持してしわや波の発生を抑制する構成を備える。図7は、図4に示す第1筐体部材17A及び第1プレート20Aの一部を拡大した斜視図である。
【0041】
図4図7に示すように、電子機器10は、第1筐体部材17Aに設けられた壁部48と、第1プレート20Aに設けられた突出部49と、壁部48と突出部49との間に介在するストッパ部材50と、を備える。
【0042】
壁部48は、第1筐体部材17Aに設けた立壁であり、X1方向を臨んでZ方向に起立している。壁部48は、第1プレート20Aの縁部20Abの下方、つまりヒンジ装置14に近接した位置に設けられている。従って、壁部48は、第1筐体部材17AのX方向幅において、ヒンジ装置14を避けた位置で最も縁部17Aa側に寄った位置にある。
【0043】
第1筐体部材17Aは、縁部17Aaから多少X2側にオフセットした位置にX1方向を向いたZ方向の段差17Acを有する(図4図7参照)。本実施形態の壁部48は、この段差17AcをX2側に凹ませて形成した凹状部51の内壁面の一部で構成されている。
【0044】
突出部49は、第1プレート20Aの金属フレーム25に形成されている。突出部49は、ベースプレート24の裏面24aから突出したボス状部分である。突出部49は、円筒形状を有し、内側に雌ねじを形成したねじ穴49aが設けられている。突出部49は、壁部48のX1側で所定の隙間を設けて配置され、壁部48と対向している。
【0045】
ストッパ部材50は、壁部48と突出部49との間に介在する剛体であり、例えばステンレスやアルミニウム等の金属部品である。ストッパ部材50は、突出部49に対してその軸周りに相対回転可能に嵌合する偏心カムである。ストッパ部材50は、偏心した軸孔50aと、外周面50bとを有する。
【0046】
軸孔50aは、突出部49が回転可能に挿入される。軸孔50aの内周面と突出部49の外周面とは、例えば0.05mm程度の極めて小さい公差をもって嵌め合いされ、ほぼがたつきがない。外周面50bは、例えば真円形状であるが、軸孔50aが偏心した位置にある。このため、ストッパ部材50は、突出部49の軸周りに回転した際、突出部49の軸心と外周面50bとの距離が変化し、壁部48に対して接離可能である。ストッパ部材50は、外周面50bを楕円形状としてもよく、要は、突出部49を中心として回転した際に外周面50bまでの径が変化し、壁部48に接離できる構成であるとよい。
【0047】
ストッパ部材50は、突出部49が軸孔50aに相対回転可能に嵌合した状態で、ねじ穴49aに対して螺合されたねじ52を用いて突出部49に締結され、これにより第1プレート20Aと固定される。つまりストッパ部材50の端面50cは、突出部49の頂面よりもZ方向に突出した位置にある。
【0048】
互いに締結されるストッパ部材50の端面50cと、ねじ52の頭部52aとの間には、摩擦部材54を介在させてもよい。摩擦部材54は、ねじ52の締結時に頭部52aと端面50cとがスリップして空回りすることを抑制し、ストッパ部材50をねじ52と同時に回転させるための部材である。摩擦部材54としては、例えば両面テープ、スポンジ、ゴム、又は接着剤等を例示できる。摩擦部材54は、ストッパ部材50の端面50cの一部のみに配設されることが好ましい。より好ましくは、端面50cの一部に浅い凹部50dを設け、この凹部50dに摩擦部材54を配置するとよい。
【0049】
次に、電子機器10の製造方法について、特に筐体部材17A,17Bに対するディスプレイ16の組付方法を例示して説明する。
【0050】
図8Aは、ストッパ部材50及びその周辺部の模式的な底面図である。図8Bは、図8Aに示すストッパ部材50を突出部49に対してねじ52で締結する動作を示す図である。図8Cは、図8Bに示す状態からねじ52を締め付け、ストッパ部材50を突出部49と壁部48との間に介在させた状態を示す図である。図9Aは、ストッパ部材50及びその周辺部の模式的な側面断面図である。図9Bは、図9Aに示す状態からねじ52を締め付け、ストッパ部材50を突出部49と壁部48との間に介在させた状態を示す図である。
【0051】
先ず、プレート20A,20Bにディスプレイ16の領域R1,R2を粘着材19で固定したディスプレイアセンブリを形成する。この際、プレート20A,20Bの縁部20Ab,20Bb間には隙間Gを形成しておく。
【0052】
次に、このようなディスプレイアセンブリを筐体部材17A,17Bに固定する。筐体部材17A,17Bは、予めヒンジ装置14を組み付け、互いに相対的に回動可能な状態に連結しておく。
【0053】
先ず、第2締結部28Bを締結し、第2プレート20Bを第2筐体部材17Bに固定する。第2筐体部材17Bの孔部17Bbは、真円形状であってねじ27のがたつきがほとんどない。このため、第2締結部28Bは、第2プレート20Bと第2筐体部材17Bとを精度よく位置決め固定することができる。
【0054】
続いて、第1締結部28Aを締結し、第1プレート20Aを第1筐体部材17Aに固定する。この際、第1プレート20Aを第2プレート20Bから離間するX1方向に向かって引っ張ることで、ディスプレイ16の折曲領域R3にX方向の張力を付与する。そして、このように折曲領域R3に張力を付与した状態を維持したまま第1締結部28Aを締結し、第1プレート20Aを第1筐体部材17Aに固定する。
【0055】
ここで、第1筐体部材17Aの長孔17Abは、X方向に延在している。つまり第1締結部28Aは、第1プレート20Aと第1筐体部材17AとをX方向での所定の調整幅(例えば、0.4mm程度)を持って固定可能である。このため、第1プレート20Aは、第2プレート20Bを第2筐体部材17Bに固定した後、折曲領域R3を引張させた所望のX方向位置で第1筐体部材17Aに固定することができる。これによりディスプレイ16は、折曲領域R3でのしわや波打ちが抑制された状態で、プレート20A,20Bを介して筐体部材17A,17Bに対して相対的に固定される。
【0056】
最後に、ストッパ部材50を締結する。先ず、図8A及び図9Aに示すように、ストッパ部材50の軸孔50aに突出部49を嵌合させる。この際、摩擦部材54を設けた端面50cがねじ52側、つまり第1プレート20A側とは逆側を向いた状態とする。
【0057】
続いて、図8B及び図9Aに示すように、ねじ52を突出部49のねじ穴49aに螺合させて締め付ける。この際、ねじ52の頭部52aとストッパ部材50の端面50cとの間には、摩擦部材54が介在している。摩擦部材54は、端面50cから突出するように配置しておく(図9A参照)。このため、ねじ52を締め付けると、頭部52aが摩擦部材54を介してストッパ部材50を同時に回転させる。つまりストッパ部材50がねじ52と連れ回る。そして、偏心カムであるストッパ部材50は、ねじ52と共に回転しつつ、いずれ外周面50bが壁部48に当接する(図8C及び図9B参照)。
【0058】
ねじ52は、ストッパ部材50の外周面50bが壁部48に当接した後も所定の締結トルクまで締め付ける。そうすると、外周面50bが壁部48に当接したストッパ部材50はそれ以上回転せず、ねじ52の頭部52aが摩擦部材54を押し潰しながらストッパ部材50を突出部49に対して締め付ける。最終的には図8C及び図9Bに示すように、摩擦部材54が凹部50d内で潰され、頭部52aが端面50cに圧接され、ストッパ部材50が突出部49、つまり第1プレート20Aに締結固定される。その結果、ストッパ部材50が、壁部48と突出部49との間に介在し、第1プレート20Aと第1筐体部材17AのX方向の相対移動を規制した状態となる。
【0059】
以上のように、本実施形態の電子機器10は、可撓性を有するシート状に形成され、第1プレート20Aの表面Aaに固定される第1領域R1と、第2プレート20Bの表面20Baに固定される第2領域R2と、第1領域R1と第2領域R2との間でプレート20A,20B間の隙間Gを跨ぐように設けられる折り曲げ可能な折曲領域R3とを有するディスプレイ16と、第1プレート20Aを第1筐体部材17Aに対して固定する第1締結部28Aと、第2プレート20Bを第2筐体部材17Bに対して固定する第2締結部28Bと、を備える。ここで、第1プレート20Aは、裏面から突出する突出部49を有し、第1筐体部材17Aは、突出部49と対向する壁部48を有する。さらに、電子機器10は、突出部49と壁部48との間に介在し、第1プレート20Aと第2プレート20Bの並び方向での第1筐体部材17Aに対する第1プレート20Aの相対移動を規制するストッパ部材50を備える。
【0060】
従って、電子機器10は、180度姿勢において、ディスプレイ16の折曲領域R3がX方向の張力が付与されて引き伸ばされ、しわや波を抑制した状態を維持することができる。すなわち、仮にストッパ部材50を持たない構成とした場合、電子機器10が衝撃等を受けた際にねじ27による第1締結部28Aで第1筐体部材17Aと第1プレート20Aとが位置ずれし、折曲領域R3がしわや波を生じる可能性がある。この点、当該電子機器10は、ストッパ部材50によって第1筐体部材17Aと第1プレート20AとのX方向での位置ずれが抑えられているため、折曲領域R3がしわや波を生じることを抑制することができる。
【0061】
特に、当該電子機器10では、第1締結部28Aは、第1プレート20Aと第1筐体部材17Aとの間を長孔17Abの長さ分のX方向での調整幅を持って固定する。一方、第2締結部は、第2プレート20Bと第2筐体部材17Bとの間を実質的にX方向での調整幅なしで固定する。このため、第2プレート20Bは、高精度に第2筐体部材17Bに位置決め固定することができる。一方、第1プレート20Aは、長孔17Abによる調整幅の分だけ、X方向位置を調整して第1締結部28Aを締結することができるため、折曲領域R3に対する適切な張力を付与することができる。反面、第1締結部28Aは、このような調整幅のために、衝撃等受けた際にねじ27に対して第1筐体部材17Aの長孔17Abが位置ずれし、第1プレート20Aが移動して折曲領域R3が緩んでしまう可能性も一層高い。
【0062】
この点、当該電子機器10は、第1締結部28Aで締結した第1プレート20Aと第1筐体部材17Aとの間に、ストッパ部材50を設置したことで、このような第1プレート20Aの位置ずれによる折曲領域R3の緩みを抑制することを可能としている。なお、第1締結部28Aは、長孔17Abに代えて、真円状の孔部を用いた構成としてもよい。この場合も第1締結部28Aはある程度の公差を必要とし、この公差の分だけ第1プレート20Aが位置ずれを生じる懸念があるためである。
【0063】
ストッパ部材50は、突出部49に対して軸周りに相対回転可能に嵌合する偏心カムであることが好ましい。そうすると、ストッパ部材50は、ねじ52で突出部49に締め付ける際、同時に回転させてその外周面50bを容易に壁部48に当接させることができる。その結果、ストッパ部材50は、ディスプレイ16に付与した張力によって変化する突出部49と壁部48との間の隙間の間隔に対して実質的に無段階で対応することが可能となる。またストッパ部材50の組付作業の作業効率も向上する。
【0064】
当該電子機器10は、ストッパ部材50の端面50cとねじ52の頭部との間に摩擦部材54を備えることが好ましい。そうすると、ねじ52とストッパ部材50とのスリップを防止でき、ストッパ部材50の組付作業の作業効率が一層向上する。
【0065】
摩擦部材54は、ストッパ部材50の端面50cの一部に設けた凹部50dに配置することが好ましい。端面50cに凹部50dを設けると、ねじ52でストッパ部材50を完全に締結した際、摩擦部材54が端面50cと頭部52aとの間に挟み込まれてクッション材として機能してしまうことを防止できる。その結果、ねじ52は、頭部52aが確実に端面50cに当接して強固な締結状態が得られる(図9B参照)。また、ねじ52の締結後に、ストッパ部材50が逆に滑り材として機能し、ねじ52が緩んでしまうことも防止できる。
【0066】
図3及び図4に示すように、ストッパ部材50は、第1プレート20Aの縁部20Abに沿って複数設けられる。本実施形態では、ストッパ部材50は、縁部20AbのY方向両端付近にそれぞれ設けられ、合計2個設けられている。これにより第1プレート20Aは、Y方向に並んだ複数のストッパ部材50によって第1筐体部材17Aに対する相対移動を一層確実に抑えることができ、第1プレート20AがXY平面上で回転することも防止できる。
【0067】
ストッパ部材50は、偏心カム以外でもよい。図10Aは、変形例に係るストッパ部材60及びその周辺部の模式的な側面断面図である。図10Bは、図10Aに示す状態からねじ52を締め付け、ストッパ部材60を突出部49と壁部48との間に介在させた状態を示す図である。
【0068】
図10A及び図10Bに示すストッパ部材60は、例えば断面略台形状且つ平面視略矩形状に形成された楔形部材である。この構成例においては、突出部49の外周面に傾斜した平面であるテーパ面49bが設けられ、同様なテーパ面は壁部48にも設けられている。このストッパ部材60では、ねじ52を締め付けるとストッパ部材60が壁部48と突出部49との間に次第に進入する。そして、ねじ52の締結後、ストッパ部材60も、上記したストッパ部材50と同様に壁部48と突出部49との間に介在し、第1筐体部材17Aに対する第1プレート20AのX方向での相対移動を規制でき、折曲領域R3がしわや波を生じることを抑制することができる。
【0069】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0070】
上記では、本のように二つ折りに折り畳み可能な電子機器10を例示したが、本発明は、同形の筐体同士を二つ折りに折り畳む構成以外、例えば大形の筐体の左右縁部にそれぞれ小形の筐体を折り畳み可能に連結した観音開きの構成、1つの筐体の左右縁部にそれぞれ折り畳み方向の異なる筐体を連結したS型の折り畳み構成、大形の筐体の左右一方の縁部に小形の筐体を折り畳み可能に連結したJ型の折り畳み構成等、各種構成に適用可能であり、筐体の連結数は4以上としてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10 電子機器
12A 第1筐体
12B 第2筐体
14 ヒンジ装置
16 ディスプレイ
17A 第1筐体部材
17B 第2筐体部材
20A 第1プレート
20B 第2プレート
28A 第1締結部
28B 第2締結部
48 壁部
49 突出部
50,60 ストッパ部材
54 摩擦部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B