(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090288
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】施錠装置および金庫
(51)【国際特許分類】
E05B 65/00 20060101AFI20240627BHJP
E05B 47/00 20060101ALI20240627BHJP
E05B 65/06 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
E05B65/00 E
E05B47/00 R
E05B65/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206082
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000237639
【氏名又は名称】富士通フロンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海谷 拓実
(57)【要約】
【課題】扉の開放状態と閉鎖状態とを切り替える閂が、確実に閉鎖位置に到達してから施錠金具を施錠位置に移動させることができる施錠装置を提供すること。
【解決手段】施錠装置7は、扉の開放が可能な位置である開放位置と扉の開放を規制する位置である閉鎖位置との間で移動可能とされた閂8と、閂8が閉鎖位置から開放位置へ移動することを規制する位置である施錠位置と、閂8が閉鎖位置から開放位置へ移動することを許容する位置である開錠位置との間で移動可能とされた施錠部9と、閂8の移動に伴って移動する連動部13と、連動部13の位置に基づいて扉の閉鎖と開放を検出するスイッチ12と、を備える。閉鎖位置から開放位置に向けた閂8の移動範囲は第1の移動範囲R1と第2の移動範囲R2とに分けられる。第2の移動範囲では閂8の移動に連動した連動部13の移動は行われない。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を塞ぐ扉を施錠する施錠装置であって、
前記扉の開放が可能な位置である開放位置と前記扉の開放を規制する位置である閉鎖位置との間で移動可能とされた閂と、
前記閂が前記閉鎖位置から前記開放位置へ移動することを規制する位置である施錠位置と、前記閂が前記閉鎖位置から前記開放位置へ移動することを許容する位置である開錠位置との間で移動可能とされた施錠部と、
前記閉鎖位置から前記開放位置への前記閂の移動に伴って第1の位置から第2の位置に向けて移動する連動部と、
前記連動部の位置に基づいて前記扉が閉鎖されているか開放されているかを検出するスイッチと、を備え、
前記閂の移動範囲は、前記閉鎖位置から前記開放位置に向けた第1の移動範囲と、前記第1の移動範囲よりも前記開放位置側となる第2の移動範囲とに分けられ、
前記閂には、前記閂が前記開放位置から前記閉鎖位置に向けて移動する過程であって、前記第2の移動範囲を移動しているときは前記連動部に当接せず、前記第1の移動範囲を移動しているときに前記連動部に当接して前記連動部を前記第2の位置から前記第1の位置に向けて移動させる第1の当接部が設けられていることを特徴とする施錠装置。
【請求項2】
前記第1の位置から前記第2の位置に向かう前記連動部の移動を、前記第1の移動範囲と前記第2の移動範囲との境界に前記閂が到達したところで停止させる停止機構をさらに備え、
前記停止機構によって停止された位置が前記連動部の前記第2の位置となることを特徴とする請求項1に記載の施錠装置。
【請求項3】
前記停止機構は、前記連動部の移動方向に沿って延びるように前記連動部に形成された長孔と、前記長孔に貫通された貫通部と、を有し、
前記長孔の内側に前記貫通部が当接することで前記連動部の移動が停止されることを特徴とする請求項2に記載の施錠装置。
【請求項4】
前記第1の位置にある前記連動部に当接して前記連動部の移動を規制する規制位置と、前記第1の位置にある前記連動部から離れて前記連動部の移動を可能とする非規制位置とに移動可能とされた保持部と、
前記規制位置にある前記保持部は、前記閂が前記閉鎖位置から前記開放位置に向けて一定の距離を移動してから前記非規制位置へと移動することを特徴とする請求項1に記載の施錠装置。
【請求項5】
前記保持部を前記非規制位置から前記規制位置に向かう方向に付勢する付勢部をさらに備え、
前記閂には、前記閂が前記閉鎖位置から前記開放位置に向けて一定の距離を移動してから前記保持部に当接して前記非規制位置へと移動させる第2の当接部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の施錠装置。
【請求項6】
一面に開口が設けられた箱体と、
前記開口を塞ぐ扉と、
前記扉に設けられた請求項1から5のいずれか1つに記載された施錠装置と、を備えることを特徴とする金庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉を施錠する施錠装置および金庫に関する。
【背景技術】
【0002】
貨幣を保管する金庫には、内部に貨幣を収容するとともに収容された貨幣を取り出すための開口が形成された筐体、およびその開口を開閉可能に塞ぐ扉が設けられている。扉には、閂が設けられている。閂は、扉を開放可能な開放位置と、扉の開放を規制する閉鎖位置との間で移動可能とされている。閉鎖位置では、例えば筐体の一部に閂が係合して扉の開放が規制される。
【0003】
金庫は、施錠装置を備える。施錠装置は、閉鎖位置にある閂に当接して開放位置への閂の移動を規制することで、扉の開放が不可能な施錠状態とする施錠金具を備える。施錠金具が、閂に当接しない位置に移動することで、扉の開放が可能な開錠状態となる。
【0004】
金庫の扉には、施錠金具の移動が電磁制御で行われるものがある。金庫への開錠操作を受け付けると、例えばソレノイドが励磁されて施錠金具が開錠位置に移動される。これにより、閂を開放位置に移動させて扉を開放することが可能となる。その後、閂が閉鎖位置に移動したことが検知されると、ソレノイドが消磁されて施錠金具が施錠位置に移動されて施錠状態とされる。
【0005】
例えば、閂の位置検出は接点を有するスイッチによって行われる(例えば特許文献1を参照)。スイッチは、可動部を有しており、可動部の移動に連動して接点のオン、オフが切り替えられる。例えば、スイッチの接点がオンのときに閂が開放位置にあること、すなわち扉が開放されていることが検知され、スイッチの接点がオフのときに閂が閉鎖位置にあること、すなわち扉が閉鎖状態であることが検出される。
【0006】
例えば、閂には、開放位置にあるときにスイッチの可動部に当接して押し込んで接点をオンにさせる当接部が形成されている。閂が閉鎖位置に向かって移動するにしたがって当接部も移動し、可動部の押し込みが解除されて接点がオフとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来技術では、閂の製造誤差およびスイッチのオン、オフが切り替えられる可動部の位置のずれなどによって、閂が閉鎖位置に到達する前、すなわち扉が閉鎖状態となる前にスイッチがオフとなって、扉が閉鎖状態であると誤って検出されてしまうおそれがある。この場合、閂が閉鎖位置に到達していないため、例えば施錠金具の移動経路に閂の一部が残っており、施錠位置に施錠金具が到達することができない。
【0009】
この状態で、ソレノイドが消磁されて施錠金具が施錠位置に移動されると、施錠金具は施錠位置に到達できないため、施錠状態であることが検知されているにも関わらず、閂を開放位置に移動させることが可能となってしまう。そのため、閂を開放位置に移動する操作が行われた場合に、施錠状態で扉が開放されるこじ開けが行われたとして警報が発せられてしまうという問題があった。
【0010】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、扉の開放状態と閉鎖状態とを切り替える閂が閉鎖位置に到達する前に、扉が閉鎖状態であると誤検出されてしまうことを防ぐことができる施錠装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の開示する施錠装置の一態様は、開口部を塞ぐ扉を施錠する施錠装置であって、扉の開放が可能な位置である開放位置と扉の開放を規制する位置である閉鎖位置との間で移動可能とされた閂と、閂が閉鎖位置から開放位置へ移動することを規制する位置である施錠位置と、閂が閉鎖位置から開放位置へ移動することを許容する位置である開錠位置との間で移動可能とされた施錠部と、閉鎖位置から開放位置への閂の移動に伴って第1の位置から第2の位置に向けて移動する連動部と、連動部の位置に基づいて扉が閉鎖されているか開放されているかを検出するスイッチと、を備え、閂の移動範囲のうち閉鎖位置から開放位置に向けた第1の移動範囲は、閉鎖位置から開放位置に向けた第1の移動範囲と、第1の移動範囲よりも開放位置側となる第2の移動範囲とに分けられ、閂には、閂が開放位置から閉鎖位置に向けて移動する過程であって、第2の移動範囲を移動しているときは連動部に当接せず、第1の移動範囲を移動しているときに連動部に当接して連動部を第2の位置から第1の位置に向けて移動させる第1の当接部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願の開示する施錠装置の一態様によれば、扉の開放状態と閉鎖状態とを切り替える閂が閉鎖位置に到達する前に、扉が閉鎖状態であると誤検出されてしまうことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる金庫の斜視図であって扉が閉鎖された状態を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかる金庫の斜視図であって扉が開放された状態を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態における扉を裏面側から見た図である。
【
図4】
図4は、実施形態における閂が閉鎖位置にあるときの閂と凹部との関係を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態における閂が解放位置にあるときの閂と凹部との関係を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、
図3に示すA部分を拡大した図であって施錠状態を示す図である。
【
図7】
図7は、
図3に示すA部分を拡大した図であって開錠状態を示す図である。
【
図8】
図8は、
図3に示すA部分を拡大した図であって閂が開放位置にある状態かつ連動部が第1の位置にある状態を示す図である。
【
図9】
図9は、
図3に示すA部分を拡大した図であって閂が開放位置にある状態かつ連動部が第2の位置にある状態を示す図である。
【
図10】
図10は、
図3に示すA部分を拡大した図であって閂が開放位置から閉鎖位置に向かって移動する過程で第1の移動範囲と第2の移動範囲の境界に位置している状態を示す図である。
【
図13】
図13は、実施形態における施錠装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本願の開示する貨幣取扱装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する貨幣取扱装置が限定されるものではない。
【実施例0015】
(金庫)
図1は、実施形態にかかる金庫の斜視図であって扉が閉鎖された状態を示す図である。
図2は、実施形態にかかる金庫の斜視図であって扉が開放された状態を示す図である。なお、金庫には、筐体の内部に貨幣を収容する容器および装置一般が含まれる。例えば、売上金を保管する入金機や、現金自動預払機等の貨幣取扱装置も金庫に含まれる。
【0016】
図1において、金庫における幅方向をX軸方向とし、前後方向をY軸方向とし、高さ方向をZ軸方向とする。
図1以降においても
図1と同様にX軸、Y軸、Z軸方向を示す。また、金庫を前方から見たときの左方をX軸に沿った正の方向とし、右方をX軸に沿った負の方向とする。
【0017】
金庫1は、前面2aの一部に開口2bが形成された筐体2と、開口2bを開閉可能に塞ぐ扉3とを備える。金庫1は、筐体2の内部に貨幣を収容して保管する容器である。扉3は、後述する施錠装置によって施錠可能とされている。なお、本実施の形態の説明において扉3が閉鎖された、とは、単に扉3が開口2bを塞いだ状態を意味し、後述する閂の位置などは限定されない。また、本実施の形態の説明において扉3が開放された、とは、単に扉3が開口2bを塞いでいない状態を意味し、後述する閂の位置などは限定されない。
【0018】
筐体2の天面2cには、金庫1の利用者が操作可能な操作部4が設けられている。例えば、操作部4はタッチパネルである。操作部4は、例えば扉3を開錠する際に操作される。操作部4で開錠操作が行われると、後述する施錠装置に向けて開錠信号が送信される。
【0019】
筐体2の前面2aには、紙幣入金口5と硬貨入金口6とが設けられている。金庫1では、紙幣入金口5に投入された紙幣が、紙幣入金口5を通して筐体2の内部に収容される。金庫1では、硬貨入金口6に投入された硬貨が、硬貨入金口6を通じて筐体2の内部に収容される。筐体2の開口2bを囲む辺のうち、X軸に沿った負の方向側となる1辺には、複数の凹部2dが形成されている。
【0020】
扉3は、筐体2の開口2bを囲む辺のうち凹部2dが形成された辺の対辺に回転可能に取り付けられている。扉3の外縁のうち開口2bの一辺に取り付けられた端部を固定端とし、固定端の反対側を自由端とする。また、扉3が閉鎖された状態で前方を向く面を表面3cとし、その裏側を裏面3dとする。
【0021】
図3は、実施形態における扉を裏面側から見た図である。扉3の裏面3dには、施錠装置7が設けられている。施錠装置7は、閂8と、施錠部9と、ソレノイド10と、リンク機構11と、スイッチ12と、連動部13と、保持部14と、付勢部15と、を備える。なお、
図3のように扉3を裏面3d側から見た図では、扉3が閉鎖された状態でのX軸、Y軸、Z軸を示すものとし、以降の図についても同様である。
【0022】
閂8は、扉3の裏面3dに設けられている。閂8は、X軸に沿った方向にスライド移動可能に設けられている。閂8は、扉の表面3cに設けられたレバー16を操作することで移動させることができる。閂8がX軸に沿った正の方向に移動した位置は、扉3の開放が規制された閉鎖位置である。また、閂8がX軸に沿った負の方向に移動した位置は、扉3の開放が可能な開放位置である。閂8には、X軸に沿った正の方向側となる端部に複数の凸部8aが形成されている。
【0023】
図4は、実施形態における閂が閉鎖位置にあるときの閂と凹部との関係を模式的に示す図である。
図5は、実施形態における閂が解放位置にあるときの閂と凹部との関係を模式的に示す図である。
図4および
図5は、閂8および筐体2をZ軸に沿って見た図となっている。
【0024】
図4に示すように、閂8が閉鎖位置にあるときには、閂8に形成された凸部8aが、筐体2の開口2bの縁に形成されている凹部2dに差し込まれている。この状態で扉3を開放させようとして、扉3の自由端をY軸方向に沿った負の方向に引っ張っても、凸部8aが凹部2dの内側に引っ掛かって、扉3を開放させることができない。すなわち、閂8が閉鎖位置にあるときには、凸部8aが凹部2dに差し込まれることで、扉3の開放が規制された閉鎖状態となる。
【0025】
図5に示すように、閂8が閉鎖位置から解放位置に移動すると、凹部2dに差し込まれていた凸部8aが凹部2dの外側に移動する。この状態で、扉3の自由端をY軸方向に沿った負の方向に引っ張れば、凸部8aは凹部2dの内側に引っ掛からないので、扉3を開くことができる。すなわち、閂8が解放位置にあるときには、凸部8aが凹部2dの外側に移動することで、扉3の開放が可能な開放状態となる。
【0026】
図6は、
図3に示すA部分を拡大した図であって施錠状態を示す図である。
図7は、
図3に示すA部分を拡大した図であって開錠状態を示す図である。
【0027】
閂8の上辺8fには、上方から下方に向けて凹んだ閂凹部8bが形成されている。閂凹部8bの内側面のうちX軸に沿った正の方向側を向く面は、後述する施錠部9に当接する規制面8cとなる。本実施形態では、閂8の上辺8fのうちX軸に沿った正の方向側端部に段差を設けることで閂凹部8bが形成されている。
【0028】
閂8には、連動部13に当接し、閂8の移動に連動して連動部13を移動させる第1の当接部8dが形成されている。なお、閂8の移動に連動した連動部13の移動の詳細については後に詳説する。
【0029】
閂8には、保持部14に当接し、閂8の移動に伴って保持部14を移動させる第2の当接部8eが形成されている。なお、閂8の移動に伴う保持部14の移動の詳細については後に詳説する。
【0030】
閂8は、上述したように、閉鎖位置と開放位置との間を移動範囲とする。閂8の移動範囲は、閉鎖位置から開放位置に向けた一定の範囲である第1の移動範囲R1と、第1の移動範囲R1よりも開放位置側となる第2の移動範囲R2とに分けられる。なお、図面では、第1の移動範囲R1と第2の移動範囲R2とを、第1の当接部8dの移動範囲で示している。
【0031】
施錠部9は、施錠位置にある閂8が解放位置に移動することを規制して、レバー16を操作しようとしても扉3を解放できない施錠状態とするための部材である。施錠部9は、ガイド部材17によって、上下方向に移動可能に保持されている。
【0032】
施錠部9が下方に移動した位置は施錠位置となる。
図6に示すように、施錠位置にある施錠部9は、閉鎖位置にある閂8の閂凹部8bに差し込まれている。この状態では、閂8を解放位置に移動させようとしても規制面8cが施錠部9に当接するため、閂8を解放位置に移動させることができない。すなわち、施錠部9が施錠位置にある状態は、レバー16を操作しても扉3を開放させることができない施錠状態となる。
【0033】
施錠部9が上方に移動した位置は開錠位置となる。開錠位置にある施錠部9は、
図7に示すように、開錠位置にある施錠部9は、閉鎖位置にある閂8の閂凹部8bから外れた位置にある。この状態では、閂8を開放位置に移動させようとしたときに規制面8cは施錠部9に当接しないため、閂8が開放位置に移動させることができる。すなわち、施錠部9が開錠位置にある状態は、閂8が開放位置に移動することが許容されており、レバー16を操作して扉3を開放させることができる開錠状態となる。
【0034】
ソレノイド10は、リンク機構11を介して施錠部9と連結されている。ソレノイド10は、上述した開錠信号に基づいて励磁される。ソレノイド10は、励磁されるとリンク機構11を介して施錠部9を開錠位置に移動させる。また、ソレノイド10は、後述する施錠信号に基づいて消磁される。ソレノイド10は、施錠信号に基づいて消磁されると、リンク機構11を介して施錠部9を施錠位置に移動させる。
【0035】
スイッチ12は、後述する連動部13の位置に基づいて、閂8が開放状態であるか閉鎖状態であるかを検出する。スイッチ12は、本体12aと可動部12bとを備える。本体12aの内部には、図示を省略した接点が設けられている。可動部12bは、本体12aに対して相対的に移動可能に設けられている。スイッチ12では、可動部12bが本体12a側に押し込まれることで接点がオンとなる。また、スイッチ12では、可動部12bが本体から突出することで接点がオフとなる。金庫1では、スイッチ12がオンのときに扉3が閉鎖状態であることを検出し、スイッチ12がオフのときに扉3が開放状態であることを検出する。
【0036】
スイッチ12では、オンからオフに切り替わるときの本体12aからの可動部12bの突出量D1と、オフからオンに切り替わるときに本体12aからの可動部12bの突出量D2とが異なっていることが一般的である。例えば、
図6に示すように、D2>D1となっている。
【0037】
連動部13は、回転軸18を中心に回転可能に扉3に取り付けられた板状の部材である。
図8は、
図3に示すA部分を拡大した図であって閂が開放位置にある状態かつ連動部が第1の位置にある状態を示す図である。
図9は、
図3に示すA部分を拡大した図であって閂が開放位置にある状態かつ連動部が第2の位置にある状態を示す図である。
図10は、
図3に示すA部分を拡大した図であって閂が開放位置から閉鎖位置に向かって移動する過程で第1の移動範囲と第2の移動範囲の境界に位置している状態を示す図である。
【0038】
図8から
図10に示すように、連動部13は、回転軸18を中心に回転することで、スイッチ12の可動部12bを押し込む位置と、可動部12bを押し込まない位置との間を移動可能とされている。
図8に示したように、連動部13がスイッチ12の可動部12bを押し込んだ位置が第1の位置である。
【0039】
連動部13には、回転軸18を中心とする円弧状に延びる長孔13cが形成されている。長孔13cは、連動部13の移動方向に沿って延びるように形成されているとも換言できる。長孔13cには、扉3の裏面3dから突出するように形成された貫通部3eが貫通されている。連動部13は、長孔13cの内側面に貫通部3eが当接することで移動範囲が限定されている。
【0040】
連動部13には、閂8の第1の当接部8dに当接されることで、閂8の移動に連動して連動部13を移動させる第1の被当接部13aが設けられている。具体的には、
図10に示すように、開放位置から閉鎖位置に向かって閂8が移動する過程で第1の移動範囲R1と第2の移動範囲R2との境界に閂8が到達したときに第1の当接部8dが第1の被当接部13aに当接する位置で、長孔13cの内側に貫通部3eが当接するようになっている。そのため、連動部13は、
図10に示した状態からさらに下方に回転することができない。すなわち、連動部13に形成された長孔13cと貫通部3eとで、連動部13の移動を停止させる停止機構が構成されている。
【0041】
回転移動が規制された連動部13の位置は、連動部13がスイッチ12の可動部12bを押し込んでいない位置であり、第2の位置である。その後、閂8が第2の移動範囲R2を移動している間は、閂8の第1の当接部8dは連動部13の第1の被当接部13aから離れていき、連動部13は移動せずに停止している。
【0042】
また、閂8が開放位置から閉鎖位置に向けて第2の移動範囲R2を移動している間も、閂8の第1の当接部8dは連動部13の第1の被当接部13aから離れているため、連動部13は移動せずに停止している。閂8が第1の移動範囲R1を移動している間は、閂8の第1の当接部8dは連動部13の第1の被当接部13aに当接し、連動部13は上方に向けて回転移動し、スイッチ12の可動部12bを押し込んでいく。
【0043】
連動部13には、後述する保持部14に形成された第2の保持凸部14dに当接されることで、連動部13の移動を規制する第2の被当接部13bが設けられている。第2の被当接部13bは、
図6および
図7に示すように、スイッチ12の可動部12bを押し込む第1の位置に連動部13がある状態で、X軸に沿った正の方向側となる端部にX軸に沿った負の方向側に凹む凹みを形成することで形成される。本実施形態では、板状の部材である連動部13の角部を切り欠くことで第2の被当接部13bが形成されている。
【0044】
図11は、実施形態における保持部の正面図である。
図12は、実施形態における保持部の側面図である。保持部14は、X軸に沿った方向に移動可能に扉3に取り付けられた板状の部材である。保持部14には、X軸に沿った方向に延びる長孔14aが形成されている。長孔14aには、扉3の裏面3dから突出するように形成された貫通部3fが貫通されている。長孔14aに貫通部3fが貫通することで、保持部14がX軸に沿った方向に移動可能となっている。なお、以下の説明において、保持部14がX軸に沿った負の方向側に移動した位置を規制位置と称し、保持部14がX軸に沿った正の方向側に移動した位置を非規制位置と称する。
【0045】
保持部14には、前方に向けて突出する第1の保持凸部14cが形成されている。
図7に示すように、第1の保持凸部14cは、保持部14が規制位置にあるときに、連動部13の第2の被当接部13bに当接して、連動部13が移動することを規制する。また、
図8に示すように、第1の保持凸部14cは、保持部14が非規制位置にあるときに、連動部13の第2の当接部8eに当接せず、連動部13の移動を可能とする。
【0046】
付勢部15は、X軸に沿った負の方向に向けて保持部14を付勢する。例えば、付勢部15は引っ張りばねである。
【0047】
保持部14には、後方に向けて突出する第2の保持凸部14dが形成されている。第2の保持凸部14dは、閂8の第2の当接部8eの移動経路に侵入するように設けられている。そして、第2の保持凸部14dは、第2の当接部8eよりもX軸に沿った正の方向側にある。なお、閂8が閉鎖位置にあるときに、第2の当接部8eと第2の保持凸部14dとは離れている。
【0048】
図7から
図9で示すように、閉鎖位置から開放位置に向かって一定の距離を閂8が移動し、第2の当接部8eが第2の保持凸部14dに当接すると、閂8の移動に伴って保持部14も規制位置から非規制位置に移動する。保持部14が非規制位置に移動すると、第1の保持凸部14cも第2の被当接部13bに当接しない位置に移動する。これにより、連動部13が移動可能となる。
【0049】
(扉の動作)
次に、金庫1が解錠されて扉3が開放されるまでの動作について説明する。まず、操作部4で開錠操作が行われ、開錠信号が送信されるとソレノイド10が励磁される。ソレノイド10が励磁されると施錠部9が引き上げられて開錠位置に移動される。これで、閂8が開放位置に移動可能となる。
【0050】
次に、レバー16が操作されて閂8が開放位置に向けて移動する。
図8に示すように、閂8が開放位置に向けて移動する途中で閂8の第2の当接部8eが保持部14の第2の保持凸部14dに当接する。さらに閂8が移動することで保持部14も移動し、保持部14の第1の保持凸部14cが第2の被当接部13bに当接しない位置に移動する。これにより、連動部13が移動可能となる。
【0051】
閂8が開放位置に移動することで第1の当接部8dも移動し、連動部13が下方に回転して移動する。連動部13が下方に回転して移動すると、スイッチ12の可動部が突出し、突出量がD1となったところでスイッチ12の接点がオフとなる。スイッチ12の接点がオフとなることで、扉3が開放状態であると検出される。扉3が開放状態であると検出されているときには、ソレノイド10は消磁されず、施錠部9も下方に移動しない。
【0052】
閂8が開放位置に移動すると、閂8の凸部8aが筐体2の凹部2dの外側に移動するため、扉3の自由端を移動させて扉3を開放することが可能となる。
【0053】
次に、扉3が閉鎖されて金庫1が施錠されるまでの動作について説明する。まず、扉3が閉鎖された状態で、レバー16が操作されて閂8が閉鎖位置に向けて移動する。閂8は、まず第2の移動範囲R2を移動する。
【0054】
閂8が第2の移動範囲R2を移動している間は、閂8の第1の当接部8dは連動部13の第1の被当接部13aに当接しない。そのため、閂8が第2の移動範囲R2を移動している間は、連動部13は移動しない。
【0055】
閂8が第2の移動範囲R2を越えて第1の移動範囲R1に入ると、第1の当接部8dが第1の被当接部13aに当接して、連動部13が上方に回転して移動する。連動部13が上方に回転して移動することで、連動部13によってスイッチ12の可動部12bが押し込まれる。可動部12bの突出量がD2となるまで押し込まれると接点がオンとなる。
【0056】
スイッチ12の接点がオンとなることで、閂8が閉鎖状態であることが検出される。閉鎖状態が検出された状態で、操作部4で施錠操作が行われると、ソレノイド10が消磁されて施錠部9が施錠位置に移動される。これにより、レバー16を操作しても閂8を開放位置に移動させることができない施錠状態となる。
【0057】
(効果)
スイッチ12の可動部12bは、上述したように、オンからオフに切り替わるときの本体12aからの可動部12bの突出量D1と、オフからオンに切り替わるときに本体12aからの可動部12bの突出量D2とが異なっており、D2>D1となっている。したがって、閂8が閉鎖位置から開放位置に移動する過程で開放状態が検出されるときの連動部13の位置と、閂8が開放位置から閉鎖位置に移動する過程で閉鎖状態が検出されるときの連動部13の位置とが異なる。具体的には、連動部13がより第2の位置に近い位置で閉鎖状態が検出される。そのため、閂8が閉鎖位置から開放位置に向かって移動を始めてすぐに連動部13が移動を開始して可動部12bを押し込んでしまうと、施錠部9が施錠位置に移動可能な位置まで閂8が移動する前に閉鎖状態になったと誤検出されてしまうおそれがある。
【0058】
閉鎖状態になったと誤検出された状態で操作部4において施錠操作が行われると、ソレノイド10が消磁されて施錠部9が施錠位置に向けて移動される。しかし、閉鎖状態になったと誤検出された状態では、施錠部9が施錠位置に向かう移動経路に、閂8の閂凹部8bが形成されていない上辺8f部分が残っている可能性がある。施錠部9が施錠位置に向かう移動経路に、閂8の閂凹部8bが形成されていない上辺8f部分が残っていると施錠部9が施錠位置に到達することができない。具体的には、閂8の上辺8fに施錠部9が当接した状態となる。なお、以下の説明では、閂8の上辺8fに施錠部9が当接して施錠位置に到達していない状態を、不完全な施錠状態と称する。
【0059】
不完全な施錠状態でレバー16が操作されると、閂8が開放位置に移動可能であるが、金庫1は施錠状態であると検出されているため、扉3に不正に開放操作が行われたこと、すなわちこじ開けが行われたと検出されて、警報が発せられてしまう。
【0060】
一方、本実施形態では、閂8が開放位置から閉鎖位置に向けて移動する過程であって、第2の移動範囲R2を移動している間、すなわち閂8が閉鎖位置に向けて一定の距離を移動するまでは連動部13に第1の当接部8dが当接しない。
【0061】
そのため、施錠部9が施錠位置に移動可能となる位置まで閂8を近づけてから、連動部13を移動させてスイッチ12の可動部12bが押し込まれるようにできる。そのため、本実施形態では、従来のように閂8が閉鎖位置にないにもかかわらず閉鎖状態であると誤検出されて不完全な施錠状態となってしまうことを防ぐことができる。また、不完全な施錠状態になることを防ぐことで、こじ開けの検出によって警報が発せられてしまうことを防ぐことができる。
【0062】
また、閂8が開放位置から閉鎖位置に向けて移動する過程であって、第1の移動範囲R1を移動している間は、第1の当接部8dが連動部13に当接して連動部13を移動させる。連動部13の移動によってスイッチ12の可動部12bが押し込まれるので、閂8が閉鎖位置にあること、すなわち扉3が閉鎖状態になったことを確実に検出することができる。
【0063】
また、閂8が閉鎖位置から開放位置に向けて移動しているときに第2の移動範囲R2と第1の移動範囲R1との境界に達した時点で、連動部13の移動は長孔13cの内側と貫通部3eとの当接によって停止される。このように、長孔13cと貫通部3eによって、連動部13が移動する範囲を適切な範囲に設定することができる。
【0064】
また、本実施形態では、閂8が直接スイッチ12の可動部12bを押し込まず、連動部13が可動部12bを押し込むように構成されている。さらに、閉鎖状態において、スイッチ12の可動部12bを押し込んだ位置にある連動部13の第2の被当接部13bに対して、規制位置にある保持部14の第1の保持凸部14cが当接している。これにより、可動部12bを押し込まない方向に連動部13が移動することが規制される。
【0065】
施錠状態において、施錠部9と閂8の規制面8cとの間には隙間が存在する場合がある。したがって、閂8は開放位置に向けてわずかに移動が可能な状態となっている場合がある。すなわち、閂8は隙間のぶん移動可能ながたつきがある状態となっている。本実施形態では、閂8ががたつきによって開放位置に向けて移動した場合であっても、連動部13が移動しなければスイッチ12の可動部12bの突出量は変化しない。そして、保持部14によって連動部13の移動が規制されている。そのため、閂8ががたつきによって開放位置に向けて移動した場合であっても、スイッチ12の可動部12bの突出量は変化しない。スイッチ12の可動部12bの突出量が変化すると、開放状態が誤検出されてしまう可能性が生じるが、本実施形態では閂8ががたつきによって開放位置に向けて移動してもスイッチ12の可動部12bが移動しないため、閂8のがたつきが原因で開放状態が誤検出されることがない。
【0066】
また、保持部14は付勢部15によって規制位置に向かう方向に付勢されているので、保持部14が規制位置からずれにくくなっている。そのため、連動部13に安定して位置している。そのため、連動部13の第2の被当接部13bに第1の保持凸部14cが当接した状態を確実に維持することができる。これにより、開放状態が誤検出されることをより確実に防ぐことができる。
【0067】
図13は、実施形態における施錠装置の変形例を示す図である。
図13に示すように、連動部13がX軸に平行に移動するように構成されている。また、スイッチ12は可動部12bの押し込み方向がX軸に平行となるように設置されている。また、保持部14は閂8の第2の当接部8eに当接されて上下に移動するように構成されている。具体的には第2の保持凸部14dが、YZ平面の上端をX軸に正の方向側に傾けた形状となっている。保持部14は、下方にある位置が規制位置であり、上方にある位置が非規制位置である。なお、変形例では保持部14が自重で移動できないので、X軸に沿った正の方向側に付勢する付勢部19も設けられている。一方、保持部14は自重で移動できるので、変形例では付勢部15を省略することができる。
【0068】
このような構成でも、上述したような不完全な施錠状態の防止、閂8ががたついたときに連動部13が移動してしまい扉の開放が検出されてしまうことの防止が図られる。