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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090289
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】液状製品の製造システム
(51)【国際特許分類】
   B67C 3/00 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
B67C3/00 Z
B67C3/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206083
(22)【出願日】2022-12-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-21
(71)【出願人】
【識別番号】000157946
【氏名又は名称】岩井機械工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 充博
(72)【発明者】
【氏名】古平 裕二
(72)【発明者】
【氏名】山下 暢
【テーマコード(参考)】
3E079
【Fターム(参考)】
3E079AA02
3E079BB05
3E079EE01
3E079EE13
3E079GG10
(57)【要約】
【課題】トラブル等で製造を停止した後にタンクに原料液が貯留された状態において、原料液を廃棄することなく製造を再開することができる液状製品の製造システムを提供する。
【解決手段】殺菌装置2と、被処理液として原料液を無菌で貯留することが可能なタンク3と、原料液に炭酸ガスを溶解させて炭酸飲料にするカーボネーター4と、タンク3をバイパスして殺菌装置2からカーボネーター4に冷却水が流通するバイパス流路Bと、被処理液の送液先をタンク3又はバイパス流路Bの何れか一方に切り替える切替手段6と、を備え、切替手段6は、殺菌装置2で処理された原料液の送液先をタンク3とし、殺菌装置2で処理された冷却水の送液先をバイパス流路Bとする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料液に炭酸ガスを溶解させて液状製品を製造する液状製品の製造システムであって、
原料液又は冷却水を供給する供給手段と、
前記供給手段の下流側に配置され、原料液を無菌で貯留することが可能なタンクと、
前記タンクの下流側に接続され、原料液に炭酸ガスを溶解させて液状製品にするカーボネーターと、
前記タンクをバイパスして前記供給手段から前記カーボネーターへ冷却水が流通するバイパス流路と、
前記供給手段から供給される原料液又は冷却水の送液先を前記タンク又は前記バイパス流路の何れか一方に切り替える切替手段と、を備え、
前記切替手段は、
前記供給手段から供給される原料液の送液先を前記タンクとし、
前記供給手段から供給される冷却水の送液先を前記バイパス流路とする
ことを特徴とする液状製品の製造システム。
【請求項2】
請求項1に記載の液状製品の製造システムであって、
前記供給手段は、原料液を殺菌して所定温度に冷却し、水を殺菌して所定温度に冷却して冷却水とすることが可能な殺菌装置であり、
前記切替手段は、
前記殺菌装置で加熱殺菌及び所定温度に冷却された原料液の送液先を前記タンクとし、
前記殺菌装置で加熱殺菌及び所定温度に冷却された冷却水の送液先を前記バイパス流路とする
ことを特徴とする液状製品の製造システム。
【請求項3】
請求項2に記載の液状製品の製造システムであって、
製造工程及び冷却工程を実行可能であり、
前記製造工程は、前記切替手段が原料液の送液先を前記タンクとし、原料液から液状製品を製造する工程であり、
前記冷却工程は、前記切替手段が冷却水の送液先を前記バイパス流路とし、前記殺菌装置から前記バイパス流路を経由して前記カーボネーターに冷却水を供給して冷却する工程であり、
前記製造工程を停止したときに前記タンクに無菌で原料液を貯留させ、前記冷却工程を実施してから前記製造工程を再開する
ことを特徴とする液状製品の製造システム。
【請求項4】
請求項3に記載の液状製品の製造システムであって、
前記カーボネーターを洗浄及び滅菌するCIP/SIP装置を備え、
前記CIP/SIP装置により前記カーボネーターを洗浄び滅菌するCIP/SIP工程を実行可能であり、
前記製造工程を停止したときに前記タンクに無菌で原料液を貯留させ、CIP/SIP工程、前記冷却工程の順に実施してから前記製造工程を再開する
ことを特徴とする液状製品の製造システム。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の液状製品の製造システムであって、
前記製造システムの異常を検知したときに前記製造工程を停止させ、前記タンクに無菌で原料液を貯留させる
ことを特徴とする液状製品の製造システム。
【請求項6】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の液状製品の製造システムであって、
前記カーボネーターの下流側に液状製品を容器に充填する充填機を備える
ことを特徴とする液状製品の製造システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸飲料などの炭酸を含有した液状製品を製造する液状製品の製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸飲料を製造する製造システムとして、原料液を殺菌し、アセプティックタンクサージタンク(以下、ACT)にて無菌状態を維持したまま所定温度で貯留し、その後カーボネーターで原料液に炭酸ガスを溶解させて炭酸飲料を製造し、充填機にて容器に炭酸飲料を充填する製造システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような製造システムでは、炭酸飲料の製造時に各種装置にトラブルが生じた場合、製造を停止させている。トラブルの原因を解消する際には、カーボネーターや充填機など各種装置を点検・修理・部品の交換等を行うが、それにより各種装置が無菌状態ではなくなる。このため、ACTに貯留されている原料液を廃棄してACTを空にした上で、洗浄用流体及び殺菌用流体を流通させて各種装置を洗浄及び滅菌している。また、殺菌後は、殺菌用流体により高温となった各種装置(特に低温であることを要するカーボネーター)を冷却水で冷却している。
【0004】
このように、トラブル等で製造を停止させた後は、洗浄用流体及び殺菌用流体、並びに冷却水を各種装置に流通させる必要があるので、ACTに貯留されている原料液を廃棄しなければならず、原料液が無駄になってしまうという問題がある。なお、このような問題は、炭酸飲料に限らず、炭酸を含む液状製品について存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-122915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、トラブル等で製造を停止した後にタンクに原料液が貯留された状態において、原料液を廃棄することなく製造を再開することができる液状製品の製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、原料液に炭酸ガスを溶解させて液状製品を製造する液状製品の製造システムであって、原料液又は冷却水を供給する供給手段と、前記供給手段の下流側に配置され、原料液を無菌で貯留することが可能なタンクと、前記タンクの下流側に接続され、原料液に炭酸ガスを溶解させて液状製品にするカーボネーターと、前記タンクをバイパスして前記供給手段から前記カーボネーターへ冷却水が流通するバイパス流路と、前記供給手段から供給される原料液又は冷却水の送液先を前記タンク又は前記バイパス流路の何れか一方に切り替える切替手段と、を備え、前記切替手段は、前記供給手段から供給される原料液の送液先を前記タンクとし、前記供給手段から供給される冷却水の送液先を前記バイパス流路とすることを特徴とする液状製品の製造システムにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トラブル等で製造を停止した後にタンクに原料液が貯留された状態において、原料液を廃棄することなく製造を再開することができる液状製品の製造システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】製造システムの概略構成を示す図である。
図2】製造システムの製造工程を示す図である。
図3】製造システムのCIP/SIP工程を示す図である。
図4】製造システムの冷却工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本実施形態では、原料液に炭酸ガスを溶解させた液状製品として炭酸飲料を製造する製造システムについて説明する。なお、実施形態の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る製造システムの概略構成を示す図である。製造システム1は、殺菌装置2(図中ではAUHTと表記している)、タンク3、カーボネーター4、充填機5、バイパス流路B、切替手段6、CIP/SIP装置7、制御装置8を備えている。
【0012】
殺菌装置2、タンク3、カーボネーター4、充填機5は、配管やバルブ(図示せず)等を介して直列的に接続されている。これらの装置、配管やバルブなどを製造ラインLと称する。製造ラインLには、殺菌装置2とタンク3との間から分岐したバイパス流路Bが接続されている。バイパス流路Bは、タンク3をバイパスし、殺菌装置2とカーボネーター4を接続している。製造ラインLとバイパス流路Bは、何れか一方に原料液等が流通するように切替手段6により切替えて使用される。
【0013】
図示しないが、殺菌装置2の上流には原料液を製造・供給する装置等がある。原料液は、炭酸飲料の原料であり、炭酸が溶解される前の液体である。また、製造ラインやバイパス流路Bを流通する液体は、製造ライン(または製造ラインの上流)の任意の箇所から供給される気体の圧力で下流に向けて圧送されるか、製造ライン(または製造ラインの上流)の任意の箇所に設けられたポンプにより圧送されるか、又は、製造ラインに高低差を付けることにより送液される。
【0014】
殺菌装置2は、被処理液を加熱殺菌し、さらに加熱後の被処理液を冷却することが可能な装置である。具体的には、例えば、高温短時間殺菌(HTST:high temperature short time)、超高温(UHT:ultra high temperature)又は無菌超高温(AUHT:aseptic ultra high temperature)式の殺菌装置である。被処理液とは、炭酸飲料の成分であり、炭酸を溶解させる前の原料液、又は冷却水である。殺菌装置2で処理された原料液はタンク3に、冷却水はバイパス流路Bに送液される。また、殺菌装置2は、請求項の供給手段の一例である。
【0015】
タンク3は、原料液を無菌で貯留することが可能なタンクである。具体的には、タンク3としてアセプティックサージタンクが好適である。タンク3は、後述する製造工程では殺菌装置2で処理された原料液を無菌で一時的に貯留し、下流のカーボネーター4へ供給する。また、後述するCIP/SIP工程及び冷却工程では、それらの工程で用いられる洗浄用液体、滅菌用流体、及び冷却水がタンク3の原料液に混入しないよう、バルブを閉じるなどしてタンク3の内部が無菌に維持されたまま密閉可能となっている。また、タンク3には原料液の温度を維持するための冷媒が流通するジャケットが設けられていてもよい。これにより貯留している原料液を所定温度に維持することができる。
【0016】
カーボネーター4は、原料液に炭酸ガスを溶解させて炭酸飲料にする装置である。また、カーボネーター4は、バイパス流路Bから冷却水も供給される。詳細は後述するが、カーボネーター4は、炭酸飲料の製造時にはタンク3から供給された原料液に炭酸を溶解させ、冷却時にはバイパス流路Bから供給される冷却水で冷却される。炭酸飲料及び冷却水は何れも充填機5に送液される。
【0017】
充填機5は、カーボネーター4の下流側に配置されており、カーボネーター4から供給された炭酸飲料を容器に充填する装置である。また、充填機5は、カーボネーター4を経由して冷却水が供給され、冷却水により冷却される。
【0018】
上述した殺菌装置2、タンク3、カーボネーター4、充填機5を含む製造ラインL(原料液等が流れる流路内)は、外気とは遮断した状態で原料液及び炭酸飲料が流通するようになっている。またバイパス流路Bも外気とは遮断した状態で冷却水が流通するようになっている。
【0019】
切替手段6は、殺菌装置2で処理された被処理液の送り先を切替えるための装置である。送り先は、タンク3、又はバイパス流路Bを経由したカーボネーター4である。切替手段6の具体的な装置構成としては、原料液や冷却水が外気と触れないように無菌を保ったままで、送り先を自動的に切替える密閉型管路切替装置(岩井機械工業株式会社製;特開2003-267492号公報参照)を用いることができる。また、当該装置に限定されず、他の切替手段6として、殺菌装置2からタンク3又はバイパス流路Bの何れか一方にのみ送液されるように設けたバルブを採用することができる。
【0020】
CIP/SIP装置7は、製造ラインLやバイパス流路Bを定置洗浄(CIP)及び定置滅菌(SIP)するための装置である。具体的には、CIP/SIPに用いる洗浄用液体及び滅菌用流体を供給するための装置や、それらを送液するための供給ラインS1、S2などの配管、送液・停止を制御するバルブやポンプなどの各種の装置群である。供給ラインS1は、CIP/SIP装置7からカーボネーター4の入口側に接続されており、供給ラインS2は、CIP/SIP装置7から充填機5の入口側に接続されている。また、カーボネーター4の出口側は製造ラインから排出ラインE1が分岐している。また、充填機5には洗浄用液体や滅菌用流体を排出する排出ラインE2が接続されている。洗浄用液体は、水に苛性ソーダ等のアルカリ性薬剤を添加したもの、水に酸性薬剤を添加したもの、界面活性剤を含む水、またはそれらの薬剤を含まない水などである。もちろん、これらは併用してもよい。滅菌用流体は、精製水などを加熱して得られた温水又は蒸気である。
【0021】
制御装置8は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、又はシーケンサーとも呼ばれる装置である。制御装置8は、製造システム1を構成する上記の各種装置を制御することで炭酸飲料の製造工程、CIP/SIP工程、各種装置の冷却工程を実行する。
【0022】
図2は製造システムの製造工程を示す図である。矢印は原料液や炭酸飲料の流れを示している。製造工程では、切替手段6が殺菌装置2で処理された原料液の送液先をタンク3とし、炭酸飲料を製造する。具体的には、原料液が殺菌装置2に供給される。殺菌装置2では、原料液が所定温度(例えば130℃)の加熱により滅菌された後、それより低い所定温度(例えば20℃)にまで冷却される。殺菌装置2で処理された原料液は、切替手段6を経由してタンク3に送液され、無菌で所定温度に保たれた状態で一時的に貯留される。タンク3に貯留された原料液は、カーボネーター4に供給され、カーボネーター4により二酸化炭素が溶解されて炭酸飲料となる。カーボネーター4により製造された炭酸飲料は、充填機5に送液され、容器に充填される。
【0023】
図3は製造システムのCIP/SIP工程を示す図である。矢印は洗浄用液体や滅菌用流体の流れを示している。充填機5などでトラブルがあった際には、制御装置8は製造工程を停止させる。CIP/SIP工程は、そのトラブルの原因を解消した後に行われる。
【0024】
具体的には、製造工程の停止後、タンク3の原料液の入口及び出口に連なるバルブ(図示せず)を閉じる。また切替手段6は、送液先をタンク3としたままである。これにより、タンク3に貯留された原料液は、外部から遮断され、無菌状態が維持される。一方、トラブルを解消するために点検、修理、交換などの作業を行うので、カーボネーター4や充填機5の炭酸飲料が流通する流路部分は外部に晒され、無菌状態ではなくなる。
【0025】
このようにトラブルが解消した後はカーボネーター4及び充填機5が無菌状態ではなくなるのでCIP/SIPを行う。具体的にはCIP/SIP装置7は、洗浄用流体を、供給ラインS1→カーボネーター4→排出ラインE1の経路に流通させ、供給ラインS2→充填機5→排出ラインE2の経路に流通させることでCIPを実施する。その後、同様にして滅菌用流体を流通させることでSIPを実施する。特に図示しないが、洗浄用流体及び滅菌用流体が上記経路を流通するように、製造ラインLの配管には適宜バルブが設けられている。
【0026】
なお、CIP/SIP装置7は、カーボネーター4及び充填機5を対象としたが、これらに限定されない。例えば、CIP/SIP装置7は殺菌装置2やバイパス流路Bを洗浄及び滅菌するようにしてもよい。また、カーボネーター4及び充填機5のそれぞれを個別に洗浄及び殺菌する例を説明したが、このようなCIP/SIPに限定されない。例えば、CIP/SIP装置7から供給した洗浄用液体及び滅菌用流体がカーボネーター4、充填機5の順に流通するようにしてCIP/SIPを行ってもよい。他にも、殺菌装置2やその上流に洗浄用液体及び滅菌用流体を供給し、殺菌装置2、バイパス流路B、カーボネーター4、充填機5の順に流通するようにしてCIP/SIPを行ってもよい。
【0027】
図4は製造システムの冷却工程を示す図である。CIP/SIPを行った後、冷却工程を行う。冷却工程では、殺菌装置2に水と熱交換用の熱媒を供給させる。これにより、水が所定温度(例えば130℃)の加熱により滅菌された後、それより低い所定温度(例えば20℃)にまで冷却され、無菌の冷却水となる。また、切替手段6は殺菌装置2で処理された冷却水の送液先をバイパス流路Bにする。冷却液をバイパス流路Bからカーボネーター4及び充填機5に流通させる。これにより、原料液に二酸化炭素を溶解させるために必要な温度までカーボネーター4及び充填機5が冷却される。
【0028】
以上に説明したように、製造システム1は、切替手段6により殺菌装置2で処理された原料液をタンク3に、冷却水の送液先をバイパス流路Bを介してカーボネーター4に切替えることができる。これにより、タンク3内に原料液を貯留したまま廃棄することなく、タンク3より上流の殺菌装置2から、タンク3より下流のカーボネーター4に冷却水を供給してカーボネーター4や充填機5を冷却することができる。また、タンク3から原料液を廃棄しないので、タンク3をCIP/SIPすることが不要となり、そのためのエネルギーや時間を節約することができる。
【0029】
なお、従来ではバイパス流路Bを備えていないので、殺菌装置2で処理された冷却液をカーボネーター4等に供給するためにはタンク3を経由する必要があった。このためタンク3に原料液を貯留することができずに廃棄する必要があった。また、タンク3から原料液を廃棄した後、CIP/SIPを行う必要があるので、そのためのエネルギーや時間を要していた。
【0030】
また、製造システム1は、製造工程の実施中にトラブル等で停止させる際には、タンク3に貯留していた原料液を無菌状態で所定温度に維持する(図2)。次に、CIP/SIP工程を実行してカーボネーター4や充填機5を無菌状態とする(図3)。次に、殺菌装置2により無菌の冷却水を製造してバイパス流路Bを介してカーボネーター4及び充填機5を冷却する(図4)。その後、製造工程を再開する。
【0031】
このように、CIP/SIPの実施後に冷却工程を実施するので、CIP/SIPにより高温となったカーボネーター4を製造工程の再開前に冷却した状態とすることができる。これにより、製造工程の再開後の初期に、カーボネーター4の熱で原料液の温度が上昇し、炭酸の溶解量が減ってしまうことを回避することができる。さらに、カーボネーター4を冷却するための冷却水は、原料液の殺菌に用いる殺菌装置2で得ることができるので、カーボネーター4を冷却するための専用の装置を設ける必要がない。これにより製造システム1の構築や運用に関するコストを削減できる。
【0032】
また、タンク3としてアセプティックサージタンクを用いることで、より確実に、原料液を無菌状態に維持することができる。
【0033】
本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
上記の製造システム1では、製造工程の中断後に、CIP/SIP工程、冷却工程を実施したが、このような動作に限定されない。例えば、製造工程の中断後に冷却工程を実施してもよい。このような製造システムは、トラブルなどで製造工程を中断したがカーボネーター4等の無菌状態を破ることなくトラブルを解決し、常温程度になったカーボネーター4を冷却して製造工程を再開する、といった場合に適用できる。
【0034】
製造工程の中断は例えば、次のように行う。例えば、異常に気付いた管理者が制御装置8を操作し、その制御装置8が製造工程を中断する。他にも、製造システム1を構成する各種装置の稼働状況や原料液・炭酸飲料等の状態などをセンサーで取得し、センサーによる測定値に基づいて異常を判定し、異常を検知したときに製造工程を中断してもよい。これにより、異常を検出したら直ちにタンク3の原料液を無菌状態で維持することができる。
【0035】
上記の製造システム1では、カーボネーター4の下流に充填機5を配置しているが、このような構成に限定されない。例えば、充填機5よりも上流にフィルター装置、一時的な貯留を行うタンク、さらに他の原料と調合するためのタンクなど任意の装置を設けてもよい。
【0036】
上記の製造システム1は、炭酸飲料を製造したがこれに限定されず、任意の炭酸を含む液状製品を製造する場合に適用することができる。
【0037】
上記の製造システム1の殺菌装置2は、原料液を加熱殺菌し、水を加熱したのち冷却して冷却水を得るものとしたが、これに限定されない。例えば殺菌装置2は原料液を加熱殺菌及び冷却せずに通過させてもよい。これは加熱殺菌を必要としない原料液を扱う場合に採用できる。
【0038】
また、供給手段は、原料液や冷却水を製造・供給する装置等であり、上記実施形態では殺菌装置2を例示したが、これに限定されない。例えば殺菌装置2とその殺菌装置2をバイパスする流路を供給手段としてもよい。この場合、加熱殺菌及び冷却を必要とする原料液については殺菌装置2で処理させ、加熱殺菌及び冷却を必要としない原料液については上記流路を介して殺菌装置2をバイパスさせる。このような供給手段は加熱殺菌を必要としない原料液を扱う場合に採用できる。
【0039】
また、殺菌装置2は加熱により殺菌する装置を例示したが、これに限定されず、フィルターにより滅菌する装置や、紫外線により滅菌する装置を採用できる。
【0040】
上記の製造システム1は、製造工程の中断後にCIP/SIP工程、冷却工程を行う場合について説明したがこのような動作に限定されない。例えば、炭酸飲料の製造開始時にも本発明は適用できる。具体的には、タンク3に原料液が貯留されていない状態で、殺菌装置2(供給手段)からバイパス流路Bを経由して冷却水をカーボネーター4に供給し、その後製造を開始するようにしてもよい。
【0041】
この場合、タンク3に冷却水を供給しないのでタンク3に冷却水が残留しない。したがって、タンク3に残留した冷却水を節約でき、またその残留した冷却水をタンク3から排水する時間を節約することができる。
【符号の説明】
【0042】
B…バイパス流路、L…製造ライン、1…製造システム、2…殺菌装置、3…タンク、4…カーボネーター、5…充填機、6…切替手段、7…CIP/SIP装置、8…制御装置
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料液に炭酸ガスを溶解させて液状製品を製造する液状製品の製造システムであって、
原料液又は冷却水を供給する供給手段と、
前記供給手段の下流側に配置され、原料液を無菌で貯留することが可能なタンクと、
前記タンクの下流側に接続され、原料液に炭酸ガスを溶解させて液状製品にするカーボネーターと、
前記タンクをバイパスして前記供給手段から前記カーボネーターへ冷却水が流通するバイパス流路と、
前記供給手段から供給される原料液又は冷却水の送液先を前記タンク又は前記バイパス流路の何れか一方に切り替える切替手段と
前記カーボネーターを洗浄及び滅菌するCIP/SIP装置と、を備え、
前記供給手段は、原料液を殺菌して所定温度に冷却し、水を殺菌して所定温度に冷却して冷却水とすることが可能な殺菌装置であり、
前記切替手段は、前記殺菌装置で加熱殺菌及び所定温度に冷却された原料液の送液先を前記タンクとし、前記殺菌装置で加熱殺菌及び所定温度に冷却された冷却水の送液先を前記バイパス流路とし、
製造工程、冷却工程、並びに前記CIP/SIP装置により前記カーボネーターを洗浄及び滅菌するCIP/SIP工程を実行可能であり、
前記製造工程は、前記切替手段が原料液の送液先を前記タンクとし、原料液から液状製品を製造する工程であり、
前記冷却工程は、前記切替手段が冷却水の送液先を前記バイパス流路とし、前記殺菌装置から前記バイパス流路を経由して前記カーボネーターに冷却水を供給して冷却する工程であり、
前記製造工程を停止したときに前記タンクに無菌で原料液を貯留させ、前記CIP/SIP工程、前記冷却工程の順に実施してから前記製造工程を再開する
ことを特徴とする液状製品の製造システム。
【請求項2】
請求項1に記載の液状製品の製造システムであって、
前記製造システムの異常を検知したときに前記製造工程を停止させ、前記タンクに無菌で原料液を貯留させる
ことを特徴とする液状製品の製造システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液状製品の製造システムであって、
前記カーボネーターの下流側に液状製品を容器に充填する充填機を備える
ことを特徴とする液状製品の製造システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、原料液に炭酸ガスを溶解させて液状製品を製造する液状製品の製造システムであって、原料液又は冷却水を供給する供給手段と、前記供給手段の下流側に配置され、原料液を無菌で貯留することが可能なタンクと、前記タンクの下流側に接続され、原料液に炭酸ガスを溶解させて液状製品にするカーボネーターと、前記タンクをバイパスして前記供給手段から前記カーボネーターへ冷却水が流通するバイパス流路と、前記供給手段から供給される原料液又は冷却水の送液先を前記タンク又は前記バイパス流路の何れか一方に切り替える切替手段と、前記カーボネーターを洗浄及び滅菌するCIP/SIP装置と、を備え、前記供給手段は、原料液を殺菌して所定温度に冷却し、水を殺菌して所定温度に冷却して冷却水とすることが可能な殺菌装置であり、前記切替手段は、前記殺菌装置で加熱殺菌及び所定温度に冷却された原料液の送液先を前記タンクとし、前記殺菌装置で加熱殺菌及び所定温度に冷却された冷却水の送液先を前記バイパス流路とし、製造工程、冷却工程、並びに前記CIP/SIP装置により前記カーボネーターを洗浄及び滅菌するCIP/SIP工程を実行可能であり、前記製造工程は、前記切替手段が原料液の送液先を前記タンクとし、原料液から液状製品を製造する工程であり、前記冷却工程は、前記切替手段が冷却水の送液先を前記バイパス流路とし、前記殺菌装置から前記バイパス流路を経由して前記カーボネーターに冷却水を供給して冷却する工程であり、前記製造工程を停止したときに前記タンクに無菌で原料液を貯留させ、前記CIP/SIP工程、前記冷却工程の順に実施してから前記製造工程を再開することを特徴とする液状製品の製造システムにある。