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特開2024-9029可動電磁石アセンブリを介した3D混合および粒子送達
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  • 特開-可動電磁石アセンブリを介した3D混合および粒子送達 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009029
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】可動電磁石アセンブリを介した3D混合および粒子送達
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20240112BHJP
   B01J 19/08 20060101ALI20240112BHJP
   B03C 1/32 20060101ALI20240112BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20240112BHJP
   B01F 23/50 20220101ALI20240112BHJP
   B01F 33/451 20220101ALI20240112BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20240112BHJP
   G01N 1/38 20060101ALI20240112BHJP
   B01F 101/23 20220101ALN20240112BHJP
【FI】
B01J19/00 321
B01J19/08 D
B03C1/32
B03C1/00 A
B01F23/50
B01F33/451
G01N35/02 D
G01N1/38
B01F101:23
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023189941
(22)【出願日】2023-11-07
(62)【分割の表示】P 2020545011の分割
【原出願日】2018-11-20
(31)【優先権主張番号】62/589,098
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510075457
【氏名又は名称】ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ドン ダブリュー. アーノルド
(72)【発明者】
【氏名】トーマス アール. コービー
(72)【発明者】
【氏名】チャン リウ
(57)【要約】
【課題】好適な可動電磁石アセンブリを介した3D混合および粒子送達を提供すること。
【解決手段】流体と複数の磁性粒子とを含むためのサンプルチャンバを有するサンプル容器と、サンプルチャンバの中または外に移動可能に挿入されるように構成された少なくとも1つの可動磁気アセンブリとを含み得る流体処理システム。可動磁気アセンブリは、アセンブリが少なくとも部分的にサンプルチャンバの中に挿入されると、サンプルチャンバの少なくとも一部内に磁場を発生させる複数の電磁石を含むことができる。流体処理システムは、磁気アセンブリの電磁石に電気信号、例えば、AC電気信号を印加する信号発生器と、サンプルチャンバの一部内に複数の磁性粒子に磁気的に影響を及ぼすために効果的な磁場勾配を発生させるように、電磁石に印加される電気信号の位相を制御するように構成された信号発生器に結合されたコントローラとも含むことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、その内容全体が参照することによって本明細書に組み込まれる2017年11月21日に出願された米国仮出願第62/589,098号の優先権の利益を主張する。
(分野)
【0002】
本教示は、概して、流体を処理することに関し、より具体的に、流体内に配置された磁性粒子を操作するように構成された電磁気構造を使用して流体を処理する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
サンプルの調製は、化学的および生物学的分析研究の重要な段階である。精密かつ信頼性のある分析を達成するために、標的化合物が、複雑な未加工サンプルから処理され、分析機器に送達されなければならない。例えば、プロテオミクスの研究は、概して、単一のタンパク質またはタンパク質群に焦点を当てている。故に、生物学的サンプルは、標的タンパク質をサンプル中の他の細胞物質から単離するために処理される。タンパク質の単離(例えば、免疫沈降)、母材の一掃、消化、脱塩等の追加の処理が、多くの場合、要求される。塩、緩衝液、洗剤、タンパク質、酵素、および他の化合物等の非標的物質が、典型的に、化学的および生物学的サンプル中に見出される。これらの非標的物質は、例えば、分析機器によって検出される標的信号の量の低減を引き起こすことによって、分析を妨害し得る。したがって、複雑な未加工サンプルは、典型的に、非標的物質から着目化合物を単離させるために1つ以上の分離および/または抽出技法を受ける。
【0004】
液体クロマトグラフィ(LC)は、異なる物質の複雑な混合物中に存在する着目分析物の分離のための典型的な溶液ベースの技法である。LCは、概して、固体の不溶性母材に液体サンプルを流すことを伴う。液体サンプルは、ある条件、例えば、pH、塩分濃度、または溶媒組成条件下で母材に対する親和性を有する着目分析物を含み得る。LC中、混合物中の化学成分は、液体移動相の流動によって、固定相を通して搬送され得る。液体クロマトグラフィにおける分離は、移動相および固定相の両方との分析物の相互作用における差異に起因して生じる。高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)は、分析物が高圧力において液体移動相中の固定相を通して押し進められるLCのある形態である。高圧力を使用して分析物を押し進めることは、分離された成分が固定相に留まる時間、したがって、成分がカラム内に拡散せねばならない時間を減少させる。HPLCは、従来のLC技法と比較して、典型的に、より良好な分解能および感度を達成するための分析機器によって使用され得る処理済みサンプルをもたらす。しかしながら、LCは、サンプルを処理するために使用するために高価であり、かつ連続的プロセスである複雑な技法であり、それによって、複数の並列カラムが、複数のサンプルを同時に処理することを要求される。加えて、LCは、ある潜在的な標的物質を不可逆的に吸着および/または共溶出し得る。HPLCは、LCより迅速である(典型的に、サンプルを処理するために約10~30分を要求する)が、HPLCの複雑性およびコストは、例えば、プロセスを実行するために要求されるポンプおよび他の特殊な機器に起因して、従来のLCをはるかに上回る。
【0005】
磁性粒子またはビーズは、化学的および生物学的アッセイおよび診断のためのサンプル調製のために採用され得る別の技術である。例証的磁性粒子が、米国特許第4,582,622号(特許文献1)および米国特許第4,628,037号に説明されている。サンプルの分離および抽出のために磁性粒子を採用するデバイスおよび方法の例が、米国特許第4,554,088号および米国特許第8,361,316号に説明される。そのような磁性粒子は、Martin A. M. Gijsによって著され、Microfluid Nanofluid(2004;I:22-40)に公開された「Magnetic bead handling on-chip:new opportunities for analytical applications」と題された論説に開示されるもの等の微小流体システムにおいても使用されている。
【0006】
磁性粒子技術は、高性能(例えば、デバイス感度および正確度)を提供し、アッセイプロトコルの容易な自動化も提供するロバストな技術である。多くの用途に関して、磁性粒子の表面は、好適なリガンドもしくは受容体(混合物中の標的物質を他の物質と選択的に結合させ得る抗体、レクチン、オリゴヌクレオチド、または他の生体反応性分子等)でコーティングされる。磁性粒子の分離および取り扱い技術における1つの重要な要素は、標的物質と粒子表面との間の反応率を向上させるための効率的な混合である。懸濁された磁性粒子は、磁力によって作動させられ、サンプル溶液の撹拌をもたらし、混合プロセスを向上または発生させ得る。磁性粒子混合システムの例が、Suzuki et al.によって著され、Journal of Microelectromechanical Systems(2004;I:13:779-790)に公開された「A chaotic mixer for magnetic bead-based micro cell sorter」と題された論説、および、Wang et al.によって著され、Microfluid Nanofluid(2008;I:4:375-389)に公開された「A rapid magnetic particle driven micromixer」と題された論説に開示されている。
【0007】
米国特許第6,231,760号(特許文献2)、米国特許第6,884,357号、および米国特許第8,361,316号に開示されるもの等の磁性粒子を使用して流体を混合するための前述の技法は、機械的手段を使用して、静止している容器に対して磁石を移動させるか、または、静止している磁石に対して容器を移動させ、容器内の磁場勾配の相対的変位を誘発することを伴っている。そのような方法を使用した磁場勾配の変位は、磁性粒子を磁石位置の変化に伴って持続的に移動させるように誘導することによって、容器内にある混合を引き起こし得る。しかしながら、容器内での磁場勾配の形成は、粒子を容器の壁に近い領域に誘引し、閉じ込め得、それは、混合の効率および有効性を低減させる。国際特許出願公開第WO1991/09308号に説明される別の技法は、その中に配置された磁性粒子を有するチャンバの周囲で、互いに面している2つの電磁石の使用を伴う。十分な周波数において2つの電磁石に連続的に電気供給すること、および電気供給を停止すること(すなわち、2進のオン/オフ制御)は、磁性粒子をチャンバ内に配置された流体の中に懸濁させるように動作する。方法に従って2つの電磁石を作動させることから生じる粒子の移動は、チャンバ内の小さいエリアに限定され、比較的に弱い混合力を発生させる。加えて、磁性粒子の一部は、磁場によって影響を受けないこともある。影響を受けていない粒子は、チャンバ表面の近くで凝集し、混合または親和性結合に寄与しない。
【0008】
米国特許第8,585,279号(特許文献3)は、微小流体チップデバイス(Spinomix SA製の「MagPhase」デバイス)を開示し、それは、封入されたサンプル容器内の磁性粒子を作動させるために、統合されたポンプおよび流体チャネルとの組み合わせにおいて、無線周波数(RF)駆動電磁石を採用する。電磁石は、サンプル容器内の磁場勾配を変動させ、サンプル流体内の磁性粒子の移動をもたらすように構成されたシーケンスで作動させられる。しかしながら、MagPhaseデバイスを使用したサンプルの混合は、元来、微小流体デバイスの構成が限定された数のサンプルの同時の処理のみを可能にするので、本質的に連続的である。特定の構成に起因して、MagPhaseデバイスは、比較的に大きいサンプル体積の損失および磁性粒子の損失を被る。さらに、MagPhase微小流体デバイスの封入されたチャネルおよびサンプル容器は、デバイスからのサンプル体積の装填および回収の自動化に対する障壁をもたらし、処理されることが可能であるサンプル体積を限定する。MagPhaseデバイスを使用して処理されるサンプルは、それらが、デバイスの種々のチャネルおよび流体経路を通して進行することが要求されるので、必然的に大きい接触表面積にさらされる。故に、MagPhaseデバイスを介して処理されるサンプルは、例えば、非特異的な結合に起因して、高い飛沫同伴および低い回収が生じやすい。
【0009】
磁性粒子は、Anderson et al.によって著され、Journal of Proteome Research(2004;I:3:235-244)に公開された「Mass spectrometric quantitation of peptides and proteins using Stable Isotope Standards and Capture by Anti-Peptide Antibodies(SISCAPA)」と題された論説に説明されるSISCAPA技法等のサンプルプレート用途においても使用されている。例示的磁気サンプルプレートシステムは、Beckman Coulter,Inc.(Brea,California,United States)によって提供されるAgencourt SPRIPlate 96R - Ring Super Magnet Plate、およびAlpaqua(登録商標)(Beverly,Massachusetts,United States)によって提供されるMagnum FLXを含む。これらの用途では、サンプルプレートは、磁石が、サンプルウェル間で突出するか、またはサンプルウェルが輪形状磁石内に位置付けられることを可能にするかのいずれかであるように配置される複数の固定界磁石を含む。サンプルウェル内の磁性粒子は、撹拌され、混合を促進し得、磁性粒子は、次いで、永久磁石の影響を通して捕捉されることができる。他のタイプの自動化された混合デバイスは、概して、機械的撹拌によって(すなわち、サンプルプレートを振動させることによって)混合を達成するように試みる。サンプルを処理することの後、磁石は、ビーズをサンプルウェルの側面に閉じ込め、サンプル流体の除去を可能にするために使用され得る。しかしながら、従来の磁気サンプルプレート用途において使用される固定界磁石は、ロバストな混合を達成することが可能ではない。例えば、磁性粒子は、概して、サンプルウェルの別々のエリアにおいて凝集および密集する傾向にある。加えて、プレート自体が、分析のステップ間で移動させられる必要があり、それは、かなりの自動化を要求する。
【0010】
上で言及されたそれらを含む磁性粒子を使用した従来のサンプル混合システムは、いくつかの欠点を被る。例えば、そのようなシステムは、単一の次元、主に、x-y平面内でサンプルを混合することに限定され得る。したがって、そのようなサンプル混合システムは、比較的に浅い、低容積サンプル容器を取り扱うことに制限される。故に、磁性粒子を使用したサンプル混合および分離の全体的な速度および効率を改良する必要性が存在し、それは、サンプル流体の超高速均質混合と、より大きいサンプル体積を有する多数のサンプル流体のアクセス可能な並行処理とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,582,622号明細書
【特許文献2】米国特許第6,231,760号明細書
【特許文献3】米国特許第8,585,279号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
ある側面において、流体と複数の磁性粒子とを含むための少なくとも1つのサンプルチャンバを含むサンプル容器と、該サンプルチャンバの中または外に移動可能に挿入されるように構成された少なくとも1つの可動電磁アセンブリ(本明細書では、MEMAとも称される)であって、少なくとも1つの可動電磁アセンブリは、アセンブリが少なくとも部分的に該サンプルチャンバの中に挿入されると、サンプルチャンバの少なくとも一部内に磁場を発生させるように配置された複数の電磁石を備えている、可動電磁アセンブリとを備えている流体処理システムが、開示される。流体処理システムは、電磁アセンブリの該電磁石に電気信号を印加するための少なくとも1つの信号発生器と、サンプルチャンバの該少なくとも一部内に複数の磁性粒子に磁気的に影響を及ぼすために効果的な磁場勾配を発生させるように、該電磁石に印加される電気信号の位相を制御するための該信号発生器に結合されるコントローラとも含むことができる。いくつかの実施形態において、信号発生器は、電磁石への印加のためのAC(交流)信号を生成するように構成される。一例として、AC信号は、約1Hz未満(例えば、0.5Hz)~約5,000Hzの範囲内の周波数を有することができる。そのような実施形態において、AC信号は、例えば、約1ボルト~約500ボルトの範囲内の振幅を有する電圧信号であることができる。
【0013】
いくつかの実施形態において、可動電磁アセンブリの複数の電磁石は、実質的に平面内、例えば、x-y平面内での磁性粒子の混合を引き起こすように配置されることができる。
【0014】
いくつかの実施形態において、可動電磁アセンブリの複数の電磁石は、第1、第2、第3、および第4の電磁石を含むことができ、コントローラは、以下の関係:
【数1】

に従って、該電磁石に複数の電気信号の印加をもたらすように構成され、式中、Ifirst、Ifirst、IfirstおよびIfirstは、それぞれ、第1、第2、第3、および第4の電磁石に印加される波形を表し、Iは、信号の振幅を表し、fは、信号の周波数を示す。
【0015】
いくつかの実施形態において、可動電磁アセンブリは、複数の電磁石が組み込まれたシェルを備えている。シェルは、サンプルチャンバの中への少なくとも部分的な挿入のために形状およびサイズを決定されることができる。
【0016】
いくつかの実施形態において、流体処理システムは、サンプルチャンバの周囲に配置された複数の電磁石を備えている少なくとも1つの磁気構造を含み、該少なくとも1つの磁気構造の該電磁石は、該信号発生器に電気的に結合される。そのような実施形態において、コントローラは、該サンプルチャンバの少なくとも一部内に磁性粒子に磁気的に影響を及ぼすために効果的な磁場勾配を発生させるように、磁気構造の電磁石に異なる位相を有する電気信号の印加をもたらすように構成されることができる。
【0017】
いくつかの実施形態において、磁気構造の電磁石は、該可動磁気アセンブリの電磁石から垂直に間隔を置かれ、該コントローラは、該垂直方向に沿った磁場勾配を発生させるように、磁気構造の該電磁石および該可動磁気アセンブリの電磁石に電気信号のあるパターンの印加をもたらす。
【0018】
流体処理システムのいくつかの実施形態において、可動磁気アセンブリおよび少なくとも1つのサンプルウェルを包囲する磁気構造の各々は、本明細書において第1、第2、第3、および第4の電磁石と称される4つの電磁石を含む。いくつかのそのような実施形態において、コントローラは、以下の関係:
【数2】

に従って、該電磁石に複数の電気信号の印加をもたらすように構成され、式中、Ifirst,MEMA、Isecond,MEMA、Ithird,MEMA、およびIfourth,MEMAは、それぞれ、磁場アセンブリの第1、第2、第3、および第4の電磁石に印加される波形を表し、Ifirst,MS、Ifirst,MS、Ifirst,MS、Ifirst,MSは、それぞれ、サンプルチャンバを包囲する磁気構造の第1、第2、第3、および第4の電磁石に印加される信号の波形を表し、Iは、信号の振幅を表しfは、信号の周波数を表し、Ifirst,MEMAとIfirst,MSとは、垂直に隣接し、Isecond,MEMAとIsecond,MSとは、垂直に隣接し、Ithird,MEMAとIthird,MSとは、垂直に隣接し、Ifourth,MEMAとIfourth,MSとは、垂直に隣接する。
【0019】
いくつかの実施形態において、流体処理システムは、可動電磁アセンブリの電磁石のうちの1つ以上にその中に磁性粒子を捕捉するための1つ以上のDC信号を印加するために、コントローラの制御下で動作するDC信号発生器をさらに含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、コントローラは、コントローラによる実行のための少なくとも1つのサンプル処理プロトコルを記憶するように構成された少なくとも1つのメモリモジュールを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、流体処理システムは、複数の流体的に隔離されたサンプルチャンバを提供するサンプル容器を含むことができる。いくつかのそのような実施形態において、各サンプルチャンバは、サンプルチャンバの周囲に配置された複数の電磁石を備えている磁気構造を含むことができ、磁気構造のうちの少なくとも2つは、1つ以上の電磁石を共有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、サンプル容器は、約1マイクロリットル~約1リットルの範囲内の容積を有する1つ以上のサンプルチャンバを含む。
【0023】
関連する側面において、流体と複数の磁性粒子とを含むための少なくとも1つのサンプルチャンバを含むサンプル容器と、1つの電磁石を備え、該サンプルチャンバの中または外に移動可能に挿入されるように構成された少なくとも1つの可動電磁アセンブリと、該サンプルチャンバの周囲に配置された複数の電磁石を備えている磁気構造と、該可動磁気アセンブリの該電磁石および磁気構造の該電磁石に電気信号を印加するための少なくとも1つの信号発生器と、サンプルチャンバの少なくとも一部内に複数の磁性粒子に磁気的に影響を及ぼすために効果的な磁場勾配を発生させるように、該電磁石に印加される電気信号の位相を制御するための該信号発生器に結合されたコントローラとを含む流体処理システムが、開示される。いくつかのそのような実施形態において、コントローラは、磁気構造の該電磁石に印加される信号の位相と異なる位相を有する信号の印加を可動磁気アセンブリの該電磁石にもたらすように構成される。
【0024】
関連する側面において、流体サンプルおよび複数の磁性粒子を該流体チャンバの周囲に配置された複数の電磁石を備えている磁気構造を有する流体チャンバに送達することと、可動電磁アセンブリを少なくとも部分的に該流体チャンバの中に挿入することであって、該可動電磁アセンブリは、少なくとも1つの電磁石を備えている、ことと、該流体チャンバの少なくとも一部内に磁性粒子に磁気的に影響を及ぼすために効果的な磁場を発生させ、それによって、流体の混合を引き起こすように、該磁気構造の該電磁石および可動電磁アセンブリの該少なくとも1つの電磁石にRF電気信号を印加することとを含む流体を処理する方法が、開示される。
【0025】
いくつかの実施形態において、方法は、流体の混合に続いて、電磁石への電気信号の印加を終了させるステップと、可動電磁アセンブリの電磁石のうちの少なくとも1つ、多くの実施形態において、その電磁石の全てに可動電磁アセンブリ内の磁性粒子の少なくとも一部を捕捉するための少なくとも1つのDC信号を印加するステップとをさらに含むことができる。捕捉された磁性粒子は、別のデバイスおよび/または容器、例えば、別のサンプルガラス瓶に送達されることができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、捕捉された粒子は、受け取りサンプルチャンバ、例えば、サンプルガラス瓶の中に粒子を放出するように、電磁アセンブリの電磁石のうちの少なくとも1つに印加されるDC信号(例えば、DC電圧)をオフにすることによって、別のサンプルガラス瓶に移動させられることができる。いくつかの実施形態において、受け取りサンプルチャンバ、例えば、サンプルガラス瓶は、例えば、下で議論される様式でそのチャンバを包囲する1つ以上の電磁石を含むことができる。いくつかのそのような実施形態において、チャンバを包囲する電磁石のうちの1つ以上への1つ以上のACおよび/またはDC信号の印加は、電磁可動アセンブリからサンプルチャンバの中への粒子の移送を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、複数のサンプルウェルを提供する容器と、サンプルウェルの中への挿入のために構成された複数の可動電磁アセンブリとを含む本教示のある実施形態による流体処理システムを図式的に描写する。
【0028】
図2図2は、例示的サンプルウェル、およびサンプルウェルの中への挿入のために構成された例示的可動電磁アセンブリを図式的に描写する。
【0029】
図3図3は、本明細書に開示される電磁石に印加される信号に対応し得る位相遅延の例を図式的に図示する。
【0030】
図4図4は、本明細書に開示されるいくつかの実施形態の中で説明される電磁石にRF電流信号を印加することによって発生させられ得る例示的磁場を描写する。
【0031】
図5図5は、本明細書に開示されるいくつかの実施形態によるサンプルウェル102の例および電磁アセンブリの例を図示する。
【0032】
図6図6は、本明細書に開示されるいくつかの実施形態による流体を混合するための手順のフロー図である。
【0033】
図7図7は、本明細書に開示されるいくつかの実施形態と共に使用され得る例示的コントローラのブロック図である。
【0034】
図8-1】図8A-8Cは、サンプルを1つのサンプルガラス瓶から別のものに移動させるための本教示による可動電磁アセンブリの使用を図式的に描写する。
図8-2】図8A-8Cは、サンプルを1つのサンプルガラス瓶から別のものに移動させるための本教示による可動電磁アセンブリの使用を図式的に描写する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、概して、流体を混合するためのシステムおよび方法に関し、磁場勾配が、流体中に散乱させられた磁性粒子を撹拌し、それによって、流体を混合するために採用される。より具体的に、多くの実施形態において、流体と散乱させられた磁性粒子とを含むサンプルウェルのうちの1つ以上のものの中への挿入のために構成された1つ以上の可動電磁アセンブリと、それらのサンプルウェルに関連付けられた磁気構造との組み合わせが、流体の3次元(3D)混合を引き起こすために採用される。例えば、可動電磁アセンブリおよび/またはサンプルウェルに関連付けられた磁気構造へのRF信号の印加は、磁場勾配を発生させることができ、磁場勾配は、磁性粒子が移動すること、スピンすること、振動すること、または別様に撹拌されることを引き起こし、それによって、流体を混合する。種々の用語が、当技術分野におけるそれらの通常の意味に従って、本明細書で使用される。本明細書で使用されるように、サンプルウェルに関連付けられた磁気構造の電磁石(電磁石A)は、可動電磁アセンブリの電磁石(電磁石B)に対して垂直に隣接し、電磁石Bは、電磁石Bに対する電磁石Aの側方の分離が、磁気構造の他の電磁石に対する電磁石Aのそれぞれの側方の分離より小さいとき、サンプルウェルの中に挿入される。言い換えると、ある場合、2つの垂直に隣接する電磁石は、側方のオフセットを示すことはないが、他の場合、2つの垂直に隣接する電磁石は、側方のオフセットを示し得る。用語「磁気サンプル」は、本明細書で使用されるように、磁性粒子を含むか、または別様に磁性であるサンプルを指す。
【0036】
図1を参照すると、ある実施形態による流体処理システム100は、複数のサンプルウェル102a-102fを提供するサンプル容器101と、サンプルウェルに関連付けられた複数の磁気構造104、105、106、107、108、109とを含む。本実施形態において、磁気構造104、105、106、107、108、109は、4つの電磁石が各サンプルウェルの周囲に配置されるようにサンプルウェルの周囲に分散させられた複数の電磁石104を含む。下でより詳細に議論されるように、これらの電磁石への異なる位相を伴うAC信号の印加は、サンプルウェル内に磁場を発生させることができ、それは、下でより詳細に議論されるように、それらのウェルの中に含まれる磁気サンプルの混合を引き起こすことができる。より具体的に、本実施形態において、電磁石104、105、106、107、108、109は、4つの電磁石が各サンプルウェルの周辺を包囲するように分散させられている。他の実施形態において、サンプルウェルを包囲する電磁石の数は、異なることができ、例えば、3つ、6つ、または8つの電磁石が、使用されることができる。一例として、サンプルウェル102aに焦点を当てると、4つの電磁石104a-dは、サンプルウェル102aの周辺を包囲し、サンプルウェル内の磁場の発生を介して、x-y平面状区分(すなわち、サンプルウェルの縦軸に対して略直交する容積区分)におけるサンプルウェル中に含まれる磁気サンプルの混合を引き起こすために効果的であり得る。本例示的実施形態において、6つのサンプルウェルのみが、例証的目的のために描写されるが、本教示は、任意の所望される数のサンプルウェルを使用して実装され得ることを理解されたい。
【0037】
流体処理システム100は、複数の可動電磁アセンブリ200をさらに含み、それらは、下でより詳細に議論されるように、少なくとも部分的にサンプルウェル内に設置され、サンプルウェル中に含まれる磁気サンプルの3次元の(3D)混合を引き起こすことができる。本実施形態において、磁気アセンブリ200は、サンプルウェル102a-102fの中へのそれらの挿入および外への移動を促進するバックプレート201(図1に示される)に結合されている。
【0038】
図2を参照すると、可動電磁アセンブリのうちの1つ200aに焦点を当てると、そのようなアセンブリは、4つの電磁石212a-212dが組み込まれたシェル210を含むことができる。電磁石212a-212dは、下で議論される様式で作動させられ、それがサンプルウェル中の磁気サンプルを混合するために挿入されるサンプルウェル内に磁場を発生させることができる。
【0039】
いくつかの実施形態において、シェルは、電磁石212a-212dによって発生させられる磁場の低吸収を示す材料から形成されることができる。一例として、いくつかの実施形態において、シェルは、ポリプロピレンおよびポリエチレン等のポリマー材料から形成されることができる。
【0040】
図2を継続して参照すると、電磁アセンブリ200aは、それぞれのサンプルウェル102aの中への少なくとも部分的な挿入のためにサイズおよび形状を決定される。上で議論されるように、本実施形態において、サンプルウェル102aは、4つの電磁石104a-104dによって包囲されている。
【0041】
図1に戻って参照すると、下でより詳細に議論されるように、コントローラ400の制御下で動作するAC信号発生器300が、サンプルウェル102a-102f中に含まれる磁気サンプルの混合を引き起こすように、電磁石104a-104dおよび212a-212dに異なる位相を伴うAC信号を印加することができる。
【0042】
図2に戻って参照すると、種々の電磁石は、特定の電磁石に印加される信号に対応する位相遅延に従って、a-dと標識される。例えば、電磁石104aおよび212aに印加されるAC信号は、同じ位相を示すことができるが、ある位相遅延が、可動電磁アセンブリ200a内の隣接する電磁石とサンプルウェルを包囲する電磁石104a-104dとの間に存在し得る。いくつかの実施形態において、電磁石212a-212dは、電磁石104a-104dに対して、例えば、約45度だけ角度シフトされ得る。
【0043】
図3は、本明細書に開示される電磁石に印加される信号に対応し得る位相遅延の例を図式的に図示する。図3に示される実施形態において、可動電磁アセンブリ200aの隣接する電磁石間、およびサンプルウェルを包囲するそれら間の位相遅延は、±90°である。一例として、a-dと標識された電磁石に印加されるRF電流は、以下の関係に従うことができる。
【数3】
【0044】
AC信号発生器300(図1に示される)は、他のサンプルウェルに関連付けられた他の可動電磁アセンブリの電磁石およびそれらのウェルを包囲する電磁石に同様のAC信号を印加することができる。本実施形態において、隣接する電磁石間の位相シフトは、±90°であるが、それにかかわらず、本教示が、30°の位相遅延、60°の位相遅延、90°の位相遅延、120°の位相遅延、150°の位相遅延、180°の位相遅延、210°の位相遅延、240°の位相遅延、270°の位相遅延、300°の位相遅延、330°の位相遅延等の他の位相シフト値が、本教示の種々の側面に従って使用され得るので、そのように限定されないことを理解されたい。
【0045】
種々の側面において、上記の例示的位相遅延の式による電磁石(例えば、電磁石104a-104d)の作動は、これらの電磁石によって発生させられる磁場勾配によって影響を受けるサンプルウェル102a中の磁性粒子(図示せず)がこれらの電磁石に関連付けられたx-y平面内で反時計回りの運動で混合されることを引き起こす(図3では、この反時計回りの運動は、概して、矢印301を使用して示される)。さらに、上記の例示的位相遅延の式による電磁石212a-212d(図2)の作動は、サンプルウェル中の磁性粒子をこれらの電磁石に関連付けられたx-y平面内で混合されることを引き起こす。さらに、下で議論されるように、可動電磁アセンブリ200aの電磁石212a-212dに印加されるAC信号とサンプルウェル102aに関連付けられた電磁石104a-104dとに印加されるAC信号との間の位相シフトは、x-y平面内における磁場勾配と、z方向(すなわち、サンプルウェルの縦軸)に沿った磁場勾配とを発生させ、粒子の3D混合を提供することができる。AC位相差の他のパターンも、電磁石104a-104dおよび212a-212dに印加され、混合の他のパターンを引き起こすことができる。本出願人の教示の種々の側面に従って撹拌される磁性粒子を使用して流体を混合することは、磁性粒子が各流体容器内で均質に3次元的に散乱させられることを引き起こす。
【0046】
図4は、上記の関係に従って電磁石104a-104dおよび/または212a-212dにAC電流信号を印加することによって発生させられ得る時間間隔T1-T5における例示的磁場を描写する。一般性のいかなる損失も伴わず、例示的磁場は、可動電磁アセンブリ200aの作動させられた電磁石212a-212dによって発生させられたそれらであると仮定される。本例示的実施形態において、磁場400aおよび400bの波形は、正弦波を表し、電磁石212a-212dによって発生させられた磁場の磁気影響下にある磁性粒子401の例示的な概略的移動を発生させる。磁場400a/400bは、互いに対して90°の位相シフトを有し、磁場400aは、電磁石212aおよび212cに対応し、磁場400bは、電磁石212bおよび212dに対応する。図4の例証的描写では、電磁石212a-212dが、流体サンプルに対して異なる場所に配置されており、それによって、各電磁石によって発生させられる磁場の向きが、同じ電気信号がそれに印加された場合、概して異なることを理解されたい。同様に、流体サンプルの反対側上に配置された電磁石に関して、そのような電極によって発生させられる磁場は、同じ大きさおよび反対の位相のAC信号がそれらに印加されると、同じ方向である。
【0047】
したがって、異なる混合パターンが、104a-104dおよび212a-212dの電磁石に印加されるAC波形を制御することによってもたらされ得ることを本教示に照らして理解されたい。一例として、別の流体混合パターンが、電磁石104a-104dおよび212a-212dに異なる位相遅延の以下の例示的AC信号を印加することによって得られることができ、基板a、b、c、dは、それぞれ、電磁石104a/212a、104b/221b、104c/212c、および104d/212dへの特定の信号の印加を示す。
【数4】

式中、I=電流、f=周波数、およびt=時間である。
【0048】
上記の式(5)-(8)によって示されるRF信号の印加は、サンプルウェル102a中の磁性流体が略反時計回りの様式で混合されることを引き起こすことができる。
【0049】
上記の実施形態において、正弦波のRF波形が、電磁石104a-104dおよび212a-212dに印加されるが、本教示は、そのように限定されない。実際に、任意のタイプの波形が、本出願人の教示に従って動作することが可能である電磁石に供給され得ることを理解されたい。非限定的な例として、各流体容器を包囲する電磁石の数、隣接する電磁石間の位相シフト(例えば、30°、60°、90°、120°、150°、180°、210°、240°、270°、300°、および330°の位相シフト)、および波形の形状は、本教示の種々の側面に従って変動させられることができる。電流波形の非限定的な例は、正方形、長方形、三角形、非対称的、鋸歯状、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、電磁石に供給される電流のタイプは、いくつかの実施形態に従って構成された流体処理システムの動作中に修正され得る。例えば、電磁石の少なくとも一部は、90°の位相シフトを伴うAC波形を受信し得る一方、別の部分は、180°の位相シフトを伴うAC波形を受信し得る。そのような実施形態において、各部分の位相シフトは、流体処理システムの動作中に修正され得る(例えば、位相シフトは、切り替えられ得る、同期させられ得る等)。いくつかの実施形態において、電磁石の少なくとも一部は、並行して、連続して、パルス化されて動作させられ得る等。種々の側面において、電磁石に供給される電流は、処理プロトコルに従って制御され得る。いくつかの実施形態において、処理プロトコルは、フィードバック、オペレータ入力、混合効率の検出、分析結果等の種々の要素に基づいて、流体処理システムの動作中に動的に改変され得る。
【0050】
加えて、または代替として、DC信号が、静磁場を発生させるためにDC信号発生器(図1に図式的に描写されるDC信号発生器200等)を介して電磁石104a-104dおよび212a-212dに印加されることができ、それによって、流体容器の片側に(かつバルク流体の外に)磁性粒子を引き込み、非限定的な例として、混合した後の容器からの流体移送を補助し、および/または、磁性粒子の吸引を防止する。
【0051】
図1および3を参照すると、可動電磁アセンブリ200の各々の電磁石と、それぞれのサンプルウェルに関連付けられた磁気構造104、105、106、107、108、109のそれらとの垂直の分離は、サンプル流体内での磁性粒子の垂直方向に沿った(すなわち、z軸に沿った)混合と、水平平面内(すなわち、x-y平面内)での混合とを引き起こし、それによって、磁性粒子の3次元の混合を提供することができる。再び、図2に描写される可動電磁アセンブリ200aとそれぞれのサンプルウェル102aとに焦点を当てると、電磁石212a、212b、212c、および212dは、それぞれ、電磁石104a、104b、104c、および104dに垂直に隣接している。上で議論されるように、電磁石は、例えば、上記の式(1)-(8)に従って、それらに印加されるAC信号の位相に従ってa-dと標識される。再び、上で議論されるように、電磁石104a-104dへの異なる位相、例えば、隣接する電磁石間での90度の位相差を伴うAC信号の印加は、x-y平面内でのサンプル流体中の磁性粒子の混合を引き起こし得る磁場を発生させることができる。同様に、電磁石212a-212dへの異なる位相、例えば、隣接する電磁石間での90度の位相差を伴うRF信号の印加は、x-y平面内での磁性粒子の混合を引き起こし得る磁場をもたらすことができる。加えて、電磁石104a-104dおよび212a-212dに印加されるAC信号のパターンは、垂直方向(すなわち、z方向)における磁場勾配を発生させ、それによって、加えて、磁性粒子の垂直の混合をもたらすために効果的であり得る。一例として、垂直に隣接する電磁石、例えば、電磁石104aと212aとへの±90°の位相シフトを有するAC信号の印加は、z方向に沿う磁場勾配を発生させることができる。いくつかの実施形態において、電磁石104a-104dおよび212a-212dに印加されるAC信号のパターンは、種々の電磁石によって発生させられる磁場勾配の組み合わせられた効果によって、サンプル流体内の磁性粒子が流体サンプル内で回転し、スピンし、および/または、水平に左右方向に移動し、および/または、垂直に上下方向に移動するように影響を及ぼすことができる。
【0052】
本教示の種々の側面に従って磁性粒子を撹拌することは、磁性粒子が各流体容器内で均質に、水平に、かつ垂直に散乱させられることを引き起こし、流体の最適な暴露および向上した混合を提供する。任意の数の混合パターンが、電磁石104a-104dおよび212a-212dに印加されるAC信号の位相および/または振幅を改変することによって提供されることができる。一例として、可動電磁アセンブリ200aの電磁石104a-104dに印加されるAC信号のパターンは、例えば、上で議論される様式で、発生させられた磁場が、それによって、磁性粒子の時計回りの混合を引き起こし得、電磁石212a-212bに印加されるAC信号のパターンが、磁性粒子の反時計回りの混合を引き起こし得る一方、104a-104dの電磁石に印加されるAC信号と212a-212dの電磁石に印加されるAC信号との間の位相シフトが、磁性粒子の垂直の混合を引き起こし得るように選択されることができる。
【0053】
図1を参照すると、混合プロセスが遂行された後、磁場アセンブリの電磁石、例えば、電磁石212a-212d、およびサンプルウェルの磁気構造に関連付けられたそれら、例えば、電磁石104a-104dへのRF信号の印加は、終了されることができ、例えば、約1ボルト~約100ボルトの範囲内の1つ以上のDC電圧が、例えば、DC電圧源111によって、磁気アセンブリのうちの1つ以上の電磁石のうちの1つ以上に印加され、アセンブリの表面上に磁性粒子を捕捉することができる。一例として、可動電磁アセンブリ200aの電極212a-212dへのDC電圧の印加は、シェル210の表面上への磁性粒子の捕捉を引き起こすことができる。可動電磁アセンブリ200aは、次いで、別のデバイス、例えば、サンプル処理/洗浄ガラス瓶、または開放ポート(OPP)サンプリングデバイス等のサンプリングデバイスに捕捉された粒子を送達するために使用されることができる。
【0054】
図5を参照すると、本教示のいくつかの実施形態において、可動電磁アセンブリ500は、シェル510内に配置された単一の電磁石512を有し、例えば、相互汚染を排除することができる。そのような実施形態において、それぞれのサンプルウェル502aの電磁石504a-504dに印加される信号の任意のもの位相と異なる位相を伴うAC信号の電磁石512への印加は、3D磁気混合を引き起こすことができる。一例として、サンプルウェル502aに関連付けられた電磁石504a-504dに印加される信号は、上記の式(1)-(4)に従い得る一方、可動アセンブリ500の電磁石512に印加される信号は、以下の関係に従い得る。
【数5】

式中、IMEMAは、電磁石512内の時間変動電流を示し、Iは、電流の振幅を示し、fは、信号の周波数である。
【0055】
前述の実施形態と同様に、DC磁場が、粒子の捕捉および送達のために使用されることができる。単一の可動電磁アセンブリは、単純な設計を有し、いくつかの実施形態において、それは、より多くの電磁石を有する可動電磁アセンブリより小さいサイズを伴って形成されることができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、可動磁気アセンブリの電磁石、および/または、サンプルウェルに関連付けられた磁気構造のそれらに印加される信号は、約1Hz未満(例えば、0.5Hz)~約5,000Hzの範囲内の周波数を有することができる。
【0057】
図6を参照すると、流体を混合するための本教示のある実施形態による方法において、複数の磁性粒子が、流体内に散乱させられ(610)、磁性粒子を含む流体は、流体チャンバの周囲に配置された複数の電磁石を備えている磁気構造を有する少なくとも1つの流体チャンバに送達される(620)。少なくとも1つの電磁石を有する可動電磁アセンブリが、少なくとも部分的に流体チャンバの中に挿入される(630)。電気作動信号、例えば、上で議論されるそれら等のAC信号が、磁性粒子に磁気的に影響を及ぼすために効果的な流体チャンバの少なくとも一部の中に磁場勾配を発生させ、それによって、流体の混合を引き起こすように、流体チャンバに関連付けられた磁気構造の電磁石、および/または可動電磁アセンブリのそれらに印加される(640)。可動電磁アセンブリの電磁石およびサンプルウェルのそれらに印加される電気信号のパターンは、例えば、上で議論される様式で調節されることができ、サンプルウェルの水平な容積部分における異なる混合パターンと、サンプルウェルの垂直方向に沿った種々の異なる混合パターンとを生成する。
【0058】
コントローラ400は、ハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアにおいて実装されることができる。例えば、図7を参照すると、コントローラ400は、プロセッサ700と、少なくとも1つのランダムアクセスメモリ(RAM)モジュール702と、少なくとも1つの永久メモリモジュール703と、これらのコンポーネントが互いに通信することを可能にする1つ以上の通信バス704とを含むことができる。磁性粒子を混合するためのプロトコルが、例えば、永久メモリモジュール703に記憶されることができ、可動電磁アセンブリの電磁石およびサンプルウェルに関連付けられた磁気構造の選択的な作動のために、プロセッサ700を介してランタイム中にRAM702の中にロードされることができる。
【0059】
上で記載されるように、いくつかの実施形態において、本教示による可動電磁アセンブリが、磁性粒子、例えば、磁性ビーズを1つのサンプルチャンバ、例えば、サンプルガラス瓶から別のものに移送するために採用されることができる。さらなる例証として、図8Aから8Cを参照すると、一実施形態において、可動電磁アセンブリが挿入されたサンプルガラス瓶Aの電磁石に印加されるAC信号は、オフにされることができ、DC信号が、可動電磁アセンブリの電磁石のうちの少なくとも1つに印加され、サンプルガラス瓶A内の磁性粒子の少なくとも一部を可動電磁アセンブリの表面上に回収することができる(図8A)。可動電磁アセンブリは、次いで、サンプルガラス瓶Aから除去され、別のサンプルガラス瓶Bに移送されることができる(図8B)。可動電磁アセンブリに印加されるDC信号は、オフにされ、可動電磁アセンブリ上に回収された粒子が、サンプルガラス瓶Bに進入することを可能にすることができる。サンプルガラス瓶Bが、サンプルガラス瓶Bを包囲する上で議論されるそれら等の複数の電磁石を備えている磁気構造を含むいくつかの実施形態において、上で議論されるAC信号等の1つ以上の信号が、サンプルガラス瓶Bを包囲する電磁石のうちの1つ以上に印加され、可動電磁アセンブリからガラス瓶Bの中、例えば、ガラス瓶Bの中の溶液の中への磁性粒子の放出を促進することができる。当業者は、種々の修正が、本発明の範囲から逸脱することなく、上記の実施形態に成され得ることを理解するであろう。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
流体処理システムであって、前記流体処理システムは、
流体と複数の磁性粒子とを含むための少なくとも1つのサンプルチャンバを含むサンプル容器と、
前記サンプルチャンバの中または外に移動可能に挿入されるように構成された少なくとも1つの可動磁気アセンブリであって、前記可動磁気アセンブリは、複数の電磁石を備え、前記複数の電磁石は、前記アセンブリが少なくとも部分的に前記サンプルチャンバの中に挿入されると、前記サンプルチャンバの少なくとも一部内に磁場を発生させるように配置されている、可動磁気アセンブリと、
前記磁気アセンブリの電磁石に電気信号を印加するための少なくとも1つの信号発生器と、
前記信号発生器に結合されたコントローラと
を備え、
前記コントローラは、前記電磁石に印加される前記電気信号の位相を制御することによって、前記サンプルチャンバの前記少なくとも一部内に前記複数の磁性粒子に磁気的に影響を及ぼすために効果的な磁場勾配を発生させる、流体処理システム。
(項目2)
前記信号発生器は、前記電磁石への印加のためのAC信号を発生させるように構成されている、項目1に記載の流体処理システム。
(項目3)
前記AC信号は、約0.1Hz~約5,000Hzの範囲内の周波数を有する、項目2に記載の流体処理システム。
(項目4)
前記AC信号は、約1ボルト~約100ボルトの範囲内の振幅を有する電圧信号である、項目3に記載の流体処理システム。
(項目5)
前記電磁石は、実質的に平面内で前記磁性粒子の混合を引き起こすように配置されている、項目1に記載の流体処理システム。
(項目6)
前記複数の電磁石は、第1、第2、第3、および第4の電磁石を備え、前記コントローラは、以下の関係:
【数6】
に従って、前記電磁石に複数の電気信号の前記印加をもたらすように構成され、式中、I first 、I first 、I first 、およびI first は、それぞれ、前記第1、第2、第3、および第4の電磁石に印加される波形を表し、I は、信号の振幅を表し、fは、信号の周波数を示す、項目1に記載の流体処理システム。
(項目7)
前記可動磁気アセンブリは、前記複数の電磁石が組み込まれたシェルを備え、前記シェルは、前記サンプルチャンバの中への少なくとも部分的な挿入のために形状およびサイズを決定されている、項目1に記載の流体処理システム。
(項目8)
前記サンプルチャンバの周囲に配置された複数の電磁石を備えている少なくとも1つの磁気構造をさらに備え、前記少なくとも1つの磁気構造の前記電磁石は、前記信号発生器に電気的に結合されている、項目1に記載の流体処理システム。
(項目9)
前記コントローラは、前記磁気構造の前記電磁石に異なる位相を有する電気信号の印加を引き起こすことによって、前記サンプルチャンバの前記少なくとも一部内に前記磁性粒子に磁気的に影響を及ぼすために効果的な磁場勾配を発生させるように構成されている、項目8に記載の流体処理システム。
(項目10)
前記磁気構造の前記電磁石は、前記可動磁気アセンブリの前記電磁石から垂直に間隔を置かれており、前記コントローラは、前記磁気構造の前記電磁石および前記可動磁気アセンブリの前記電磁石に電気信号のあるパターンの印加をもたらすことによって、垂直方向に沿った磁場勾配を発生させる、項目9に記載の流体処理システム。
(項目11)
前記可動磁気アセンブリの前記複数の電磁石は、第1、第2、第3、および第4の電磁石を備え、前記磁気構造の前記電磁石は、第1、第2、第3、および第4の電磁石を備え、前記コントローラは、以下の関係:
【数7】
に従って、前記電磁石に複数の電気信号の前記印加をもたらすように構成され、式中、I first,MEMA 、I second,MEMA 、I third,MEMA 、およびI fourth,MEMA は、それぞれ、前記磁場アセンブリの前記第1、第2、第3、および第4の電磁石に印加される波形を表し、I first,MS 、I first,MS 、I first,MS 、I first,MS は、それぞれ、前記サンプルチャンバを包囲する前記磁気構造の前記第1、第2、第3、および第4の電磁石に印加される信号の波形を表し、I は、信号の振幅を表し、fは、信号の周波数を表し、
first,MEMA とI first,MS とは、垂直に隣接し、I second,MEMA とI second,MS とは、垂直に隣接し、I third,MEMA とI third,MS とは、垂直に隣接し、I fourth,MEMA fourth,MS とは、垂直に隣接している、項目10に記載の流体処理システム。
(項目12)
前記コントローラは、前記コントローラによる実行のための少なくとも1つのサンプル処理プロトコルを記憶するように構成された少なくとも1つのメモリモジュールを備えている、項目1に記載の流体処理システム。
(項目13)
前記コントローラの制御下で動作するDC信号発生器をさらに備え、前記DC信号発生器は、前記電磁石のうちの1つ以上に前記磁性粒子を捕捉するための1つ以上のDC信号を印加する、項目1に記載の流体処理システム。
(項目14)
前記少なくとも1つのサンプルチャンバは、複数の流体的に隔離されたサンプルチャンバを備えている、項目8に記載の流体処理システム。
(項目15)
前記少なくとも1つの磁気構造は、前記複数のサンプルチャンバに関連付けられた複数の磁気構造を備え、前記磁気構造のうちの少なくとも2つは、少なくとも1つの電磁石を共有している、項目14に記載の流体処理システム。
(項目16)
前記少なくとも1つのサンプルチャンバは、約1マイクロリットル~約1リットルの範囲内の容積を有する、項目1に記載の流体処理システム。
(項目17)
流体処理システムであって、前記流体処理システムは、
流体と複数の磁性粒子とを含むための少なくとも1つのサンプルチャンバを含むサンプル容器と、
1つの電磁石を備えている少なくとも1つの可動磁気アセンブリであって、前記少なくとも1つの可動磁気アセンブリは、前記サンプルチャンバの中または外に移動可能に挿入されるように構成されている、少なくとも1つの可動磁気アセンブリと、
前記サンプルチャンバの周囲に配置された複数の電磁石を備えている磁気構造と、
前記可動磁気アセンブリの前記電磁石および前記磁気構造の前記電磁石に電気信号を印加するための少なくとも1つの信号発生器と、
前記信号発生器に結合されたコントローラと
を備え、
前記コントローラは、前記電磁石に印加される前記電気信号の位相を制御することによって、前記サンプルチャンバの前記少なくとも一部内に前記複数の磁性粒子に磁気的に影響を及ぼすために効果的な磁場勾配を発生させる、流体処理システム。
(項目18)
前記コントローラは、前記磁気構造の前記電磁石に印加される前記信号の位相と異なる位相を有する信号の印加を前記可動磁気アセンブリの前記電磁石にもたらすように構成されている、項目17に記載の流体処理システム。
(項目19)
流体を処理する方法であって、前記方法は、
流体サンプルおよび複数の磁性粒子を磁気構造を有する流体チャンバに送達することであって、前記磁気構造は、前記流体チャンバの周囲に配置された複数の電磁石を備えている、ことと、
可動電磁アセンブリを少なくとも部分的に前記流体チャンバの中に挿入することであって、前記可動電磁アセンブリは、少なくとも1つの電磁石を備えている、ことと、
前記磁気構造の前記電磁石および前記可動電磁アセンブリの前記少なくとも1つの電磁石にAC電気信号を印加することによって、前記流体チャンバの少なくとも一部内に前記磁性粒子に磁気的に影響を及ぼすために効果的な磁場を発生させ、それによって、前記流体の混合を引き起こすことと
を含む、方法。
(項目20)
前記流体の混合に続いて、前記電磁石への前記AC電気信号の印加を終了させることと、
前記可動電磁アセンブリの前記少なくとも1つの電磁石に前記可動電磁アセンブリにおける前記磁性粒子の少なくとも一部を捕捉するための少なくとも1つのDC信号を印加することと
をさらに含む、項目19に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
【外国語明細書】