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特開2024-90308情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090308
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20240627BHJP
   B29C 45/03 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206120
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】坂井 公則
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AP04
4F206AP06
4F206AP15
4F206JA07
4F206JL02
4F206JP11
4F206JP12
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP15
4F206JQ88
4F206JT32
4F206JT38
(57)【要約】
【課題】射出成形機に使用されているボールねじの寿命を精度よく予測する。
【解決手段】射出成形機10における型締モータ116の情報を取得するデータ取得部と、ボールねじ117の寿命を計算する処理部と、を備え、この処理部は、取得した電流値に基づいて、型締モータ116のトルクであるモータトルクを計算し、型締モータ116の回転軸とボールねじ117とを含む回転体の慣性モーメントおよび取得した回転角から算出される型締モータ116の駆動時の角加速度に基づいて、型締モータ116がボールねじ117を軸回りに回転させるのに要するトルクである加減速トルクを計算し、モータトルクおよび加減速トルクに基づいて、型締モータ116が射出成形機を作動させるのに要するトルクである負荷トルクを計算し、負荷トルクに基づいてボールねじ117に作用する平均荷重を計算し、平均荷重に基づいてボールねじ117の寿命を計算する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータの回転駆動力をボールねじにより伝達して作動する射出成形機において当該電動モータに供給される電流の電流値および当該電動モータの回転角の情報を取得する取得手段と、
前記電流値および前記回転角の情報と前記電動モータおよび前記ボールねじの特性とに基づき当該ボールねじの寿命を計算する計算手段と、を備え、
前記計算手段は、
取得した前記電流値に基づいて、前記電動モータのトルクであるモータトルクを計算し、
前記電動モータの回転軸と前記ボールねじとを含む回転体の慣性モーメントおよび取得した前記回転角から算出される当該電動モータの駆動時の角加速度に基づいて、当該電動モータが当該ボールねじを軸回りに回転させるのに要するトルクである加減速トルクを計算し、
前記モータトルクおよび前記加減速トルクに基づいて、前記電動モータが前記射出成形機を作動させるのに要するトルクである負荷トルクを計算し、
前記負荷トルクに基づいて前記ボールねじに作用する平均荷重を計算し、
前記平均荷重に基づいて前記ボールねじの寿命を計算することを特徴とする、情報処理装置。
【請求項2】
前記計算手段は、
ある時点で算出した前記ボールねじの寿命から算出される当該ボールねじの基本動定格荷重に対し、当該時点の後に行われた1または複数のショットに基づく変換を行って当該ショットの実施後の基本動定格荷重である変換後基本動定格荷重を計算し、
前記変換後基本動定格荷重に基づいて、前記ショットの実施後における前記ボールねじの残寿命を計算することを特徴とする、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記計算手段は、ある時点で算出した前記ボールねじの残寿命から算出される当該ボールねじの基本動定格荷重に対し、当該時点の後に行われた1または複数のショットにおいて得られた前記電流値および前記回転角の情報に基づいて計算される当該ショットの実施後における当該ボールねじの平均荷重を用いた変換を行って前記変換後基本動定格荷重を計算することを特徴とする、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記計算手段は、前記時点の後に行われた1または複数のショットにおいて得られた前記電流値および前記回転角の情報に基づいて当該ショットにおける前記負荷トルクを計算し、当該負荷トルクに基づいて当該ショットの実施後における前記ボールねじの平均荷重を計算することを特徴とする、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
電動モータの回転駆動力をボールねじにより伝達して作動する射出成形機により行われた動作の設定情報を取得する取得手段と、
前記射出成形機における動作の設定情報と、当該設定情報に従って当該射出成形機が動作した場合にボールねじに作用する平均荷重との関係を表す機械学習モデルを記憶した記憶手段と、
前記取得手段により取得した前記設定情報を前記機械学習モデルに適用して前記ボールねじに作用する平均荷重を求め、当該平均荷重に基づいて当該ボールねじの寿命を計算する計算手段と、
を備えることを特徴とする、情報処理装置。
【請求項6】
コンピュータが、電動モータの回転駆動力をボールねじにより伝達して作動する射出成形機から当該電動モータに供給される電流の電流値および当該電動モータの回転角の情報を取得し、
コンピュータが、取得した前記電流値に基づいて、前記電動モータのトルクであるモータトルクを計算し、
コンピュータが、前記電動モータの回転軸と前記ボールねじとを含む回転体の軸回りの慣性モーメントおよび取得した前記回転角から算出される当該電動モータの駆動時の角加速度に基づいて、当該電動モータが当該ボールねじを軸回りに回転させるのに要するトルクである加減速トルクを計算し、
コンピュータが、前記モータトルクおよび前記加減速トルクに基づいて、前記電動モータが前記射出成形機を作動させるのに要するトルクである負荷トルクを計算し、
コンピュータが、前記負荷トルクに基づいて前記ボールねじに作用する平均荷重を計算し、
コンピュータが、前記平均荷重に基づいて前記ボールねじの寿命を計算することを特徴とする、情報処理方法。
【請求項7】
コンピュータが、電動モータの回転駆動力をボールねじにより伝達して作動する射出成形機により行われた動作の設定情報を取得し、
コンピュータが、前記射出成形機における動作の設定情報と、当該設定情報に従って当該射出成形機が動作した場合にボールねじに作用する平均荷重との関係を表す機械学習モデルを記憶装置から読み出し、取得した前記設定情報を当該機械学習モデルに適用して前記ボールねじに作用する平均荷重を求め、
コンピュータが、当該平均荷重に基づいて前記ボールねじの寿命を計算することを特徴とする、情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
電動モータの回転駆動力をボールねじにより伝達して作動する射出成形機から当該電動モータに供給される電流の電流値および当該電動モータの回転角の情報を取得する処理と、
取得した前記電流値に基づいて、前記電動モータのトルクであるモータトルクを計算する処理と、
前記電動モータの回転軸と前記ボールねじとを含む回転体の軸回りの慣性モーメントおよび取得した前記回転角から算出される当該電動モータの駆動時の角加速度に基づいて、当該電動モータが当該ボールねじを軸回りに回転させるのに要するトルクである加減速トルクを計算する処理と、
前記モータトルクおよび前記加減速トルクに基づいて、前記電動モータが前記射出成形機を作動させるのに要するトルクである負荷トルクを計算する処理と、
前記負荷トルクに基づいて前記ボールねじに作用する平均荷重を計算する処理と、
前記平均荷重に基づいて前記ボールねじの寿命を計算する処理と、
を実行させることを特徴とする、プログラム。
【請求項9】
コンピュータに、
電動モータの回転駆動力をボールねじにより伝達して作動する射出成形機により行われた動作の設定情報を取得する処理と、
前記射出成形機における動作の設定情報と、当該設定情報に従って当該射出成形機が動作した場合にボールねじに作用する平均荷重との関係を表す機械学習モデルを記憶装置から読み出し、取得した前記設定情報を当該機械学習モデルに適用して前記ボールねじに作用する平均荷重を求める処理と、
前記平均荷重に基づいて前記ボールねじの寿命を計算する処理と、
を実行させることを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電動サーボ式の射出成形機では、金型の開閉および型締めを行う型締装置および金型キャビティ内に溶融樹脂を供給する射出装置を動作させるためにボールねじを介して駆動力を伝達する構成が用いられる。このボールねじは有限寿命品である。このため、保守の観点等から、ボールねじの寿命を予測することが行われる。
【0003】
特許文献1には、型締装置および射出装置の作動を、ボールねじを介して電動モータの駆動制御により行うように構成した電動射出成形機において、単位時間内におけるボールねじの移動速度と電動モータの動作電流との積に電動モータのトルク定数を掛算してボールねじに加わる総エネルギー値Aを得ると共に、ボールねじに発生する力とその移動速度との積から寿命エネルギー値Bを設定し、総エネルギー値Aが寿命エネルギー値Bを越えた際に(A≧B)、ボールねじの寿命の限界と判定するボールねじ寿命予測方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、型開閉工程、型締工程、型緩工程の各工程においてトグル式型締装置のトグル機構を駆動する型締用ボールネジ機構について、型締用ボールネジ機構を劣化無く稼働することが可能な時間である稼働可能時間を変数が1個の1変数関数によって予測するようにし、1個の変数は型締工程において型締用ボールネジ機構に作用する軸方向荷重が最大になるときの型締力とする型締用ボールネジ機構の寿命予測方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-238106号公報
【特許文献2】特許第6635930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
射出成形機に用いられるボールねじの寿命の予測を精度よく行うことが求められており、この予測には改善の余地があった。本発明は、射出成形機に使用されているボールねじの寿命を精度よく予測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、電動モータの回転駆動力をボールねじにより伝達して作動する射出成形機において電動モータに供給される電流の電流値および電動モータの回転角の情報を取得する取得手段と、電流値および回転角の情報と電動モータおよびボールねじの特性とに基づきボールねじの寿命を計算する計算手段と、を備え、この計算手段は、取得した電流値に基づいて、電動モータのトルクであるモータトルクを計算し、電動モータの回転軸とボールねじとを含む回転体の慣性モーメントおよび取得した回転角から算出される電動モータの駆動時の角加速度に基づいて、電動モータがボールねじを軸回りに回転させるのに要するトルクである加減速トルクを計算し、モータトルクおよび加減速トルクに基づいて、電動モータが射出成形機を作動させるのに要するトルクである負荷トルクを計算し、負荷トルクに基づいてボールねじに作用する平均荷重を計算し、平均荷重に基づいてボールねじの寿命を計算することを特徴とする、情報処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、射出成形機に使用されているボールねじの寿命を精度よく予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態が適用される射出成形機の構成を示す図であり、型開完了時の射出成形機の状態を示す図である。
図2】本実施形態が適用される射出成形機の構成を示す図であり、型締時の射出成形機の状態を示す図である。
図3】制御装置の構成を示す図である。
図4】データ処理装置の構成を示す図である。
図5】制御装置およびデータ処理装置を実現するコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
図6】第2の手法を用いる場合のデータ処理装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<装置構成>
図1および図2は、本実施形態が適用される射出成形機の構成を示す図である。図1は、型開完了時の射出成形機の状態を示す図である。図2は、型締時の射出成形機の状態を示す図である。射出成形機10は、型締装置110と、射出装置120と、エジェクタ装置130と、制御装置140と、データ処理装置150と、表示装置160と、フレーム170とを備える。
【0011】
型締装置110は、金型800の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開の各工程を行う。型締装置110によるこれらの工程における動作を「型開閉動作」と呼ぶ場合がある。金型800は、固定金型810と可動金型820とを含む。図1および図2に示す射出成形機10において、型締装置110の型開閉方向は図1図2の横方向である。型締装置110は、固定プラテン111、可動プラテン112、トグルサポート113、タイバー114、トグル機構115、型締モータ116およびボールねじ117を有する。
【0012】
固定プラテン111は、フレーム170に固定されている。固定プラテン111における可動プラテン112との対向面には、固定金型810が取付けられている。可動プラテン112は、フレーム170に対し型開閉方向に移動可能に設けられている。可動プラテン112における固定プラテン111との対向面には、可動金型820が取付けられている。固定プラテン111に対して可動プラテン112を進退させることにより、金型800の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開が行われる。
【0013】
トグルサポート113は、固定プラテン111と間隔をおいて、フレーム170上に型開閉方向に移動可能に設けられる。タイバー114は、固定プラテン111とトグルサポート113とを、型開閉方向に間隔をあけた状態で連結する。
【0014】
トグル機構115は、可動プラテン112とトグルサポート113との間に配置され、トグルサポート113に対し可動プラテン112を型開閉方向に移動させる(図1図2のトグル機構115および可動プラテン112を参照)。トグル機構115は、クロスヘッド115a、一対のリンク群などで構成される。クロスヘッド115aは、ボールねじ117に対するナットである。後述のように、ボールねじ117を軸回りに回転させて、トグルサポート113に対してクロスヘッド115aを進退させると、リンク群が屈伸し、これによってトグルサポート113に対して可動プラテン112が進退する。
【0015】
型締モータ116およびボールねじ117は、トグルサポート113に取付けられており、トグル機構115を作動させる。型締モータ116は、電動モータの一例である。ボールねじ117は、型締モータ116の回転駆動を受けて軸回りに回転し、ナットであるクロスヘッド115aをトグルサポート113に対して進退させる。言い換えれば、ボールねじ117は、型締モータ116の回転運動をクロスヘッド115aの直線運動に変換する。また、型締モータ116には、負荷検出器116aが設けられている。型締モータ116の電流は、型締モータ116の負荷(例えば、トルク)を表す。したがって、負荷検出器116aとしては、例えば、電流検出器等が用いられる。負荷検出器116aは、型締モータ116の電流を検出し、その電流を示す信号を制御装置140にフィードバックする。
【0016】
型締装置110は、制御装置140による制御下で、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程および型開工程などを行う。型閉工程では、型締モータ116を駆動してボールねじ117を回転させ、クロスヘッド115aを設定移動速度で型閉完了位置まで前進させる。これにより、可動プラテン112が前進し、可動金型820が固定金型810に接触する。昇圧工程では、型締モータ116をさらに駆動してクロスヘッド115aを型閉完了位置から型締位置までさらに前進させる。これにより、金型800において型締力が生じる。
【0017】
型締工程では、型締モータ116を駆動して、クロスヘッド115aの位置を型締位置に維持する。これにより、型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。また、型締工程では、可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間が形成される。射出装置120は、このキャビティ空間に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。
【0018】
脱圧工程では、型締モータ116を駆動してボールねじ117を上記の型閉工程および昇圧工程とは逆向きに回転させ、クロスヘッド115aを型締位置から型開開始位置まで後退させる。これにより、可動プラテン112が後退し、型締力が減少する。型開開始位置は、型閉工程および昇圧工程で述べた型閉完了位置と同じ位置であって良い。型開工程では、型締モータ116を駆動してクロスヘッド115aを設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させる。これにより、可動プラテン112が後退し、可動金型820を固定金型810から離隔させる。この後、エジェクタ装置130が可動金型820から成形品を突き出す。
【0019】
エジェクタ装置130は、制御装置140による制御下で、突き出し工程を行う。エジェクタ装置130は、可動プラテン112に取り付けられ、可動プラテン112と共に進退する。突き出し工程では、エジェクタ装置130が、可動金型820に設けられた可動部材を動作させ、成形品を可動金型820から突き出して離脱させる。
【0020】
射出装置120は、金型800に対して進退可能に配置される。射出装置120は、金型800に接触し、金型800内のキャビティ空間に成形材料を充填する。射出装置120は、制御装置140による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程とも呼ぶ。計量工程では、所定量の液状の成形材料が射出装置120に蓄積される。充填工程では、計量工程で蓄積された液状の成形材料が金型800内のキャビティ空間に充填される。保圧工程では、成形材料の保持圧力が設定圧に保たれる。
【0021】
制御装置140は、射出装置120および型締装置110の動作を制御する装置である。データ処理装置150は、射出装置120および型締装置110が動作するのに伴って得られるデータを処理する装置である。表示装置160は、制御装置140による射出装置120および型締装置110の制御に関する情報、データ処理装置150が取得したデータやデータ処理装置150の処理結果等を表示する。また、表示装置160は、制御装置140やデータ処理装置150に命令やデータを入力する操作を行うための操作画面を表示する。
【0022】
<制御装置140の構成>
図3は、制御装置140の構成を示す図である。制御装置140は、例えば、コンピュータにより実現される。制御装置140は、制御部141と、記憶部142とを備える。また、図示しないが、制御装置140は、外部装置とデータ交換を行うための入出力インターフェイスを備える。例えば、負荷検出器116aにより検出され、出力された型締モータ116の電流を示す信号が、入出力インターフェイスを介して入力される。制御装置140は、射出装置120および型締装置110を制御して、成形品の製造に係る工程を繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。成形品の製造に係る工程には、上述した計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、突き出し工程などが含まれる。以下、これらの製造に係る工程をまとめて「製造工程」と呼ぶことがある。また、成形品を得るための一連の動作、例えば、上記の製造工程における計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」、「成形サイクル」等と呼ぶ。なお、成形品を製造する上記の各工程は例示に過ぎない。例えば、1ショットで実行される工程として、上記に含まれない、他の工程を含んでも良い。
【0023】
制御部141は、制御情報に基づいて、射出装置120および型締装置110を制御する。制御情報は、ユーザが設定する条件であり、例えば、図示しない入力装置を用いてユーザが入力する。制御情報には、例えば、樹脂温度、金型温度(シリンダ温度)、射出保圧時間、計量値、V-P切り替え位置、保圧圧力、射出速度(充填速度)、スクリュー回転数、スクリュー背圧、型締力等の成形条件が含まれる。これらの成形条件は、成形品や金型に応じて複数の組み合わせが決められる。この成形条件の組み合わせデータを、以下、成形条件データセットとも呼ぶ。成形条件データセットは、成形品や金型の種類等に応じて用意され、記憶部142に格納されている。
【0024】
制御部141は、上記の成形条件データセットを用いて射出装置120および型締装置110を制御し、上記の各工程等を含む成形品の製造(ショット)に係る工程を実施する。制御部141は、成形品の製造開始時などに、製造しようとする成形品に対応する成形条件データセットを記憶部142から読み出す。そして、制御部141は、読み出した制御情報に基づいて射出装置120および型締装置110の動作を制御する。具体的には、制御部141は、製造工程において射出装置120および型締装置110から得られるデータが、成形条件データセットの設定値と一致するように、射出装置120および型締装置110を制御する。また、制御部141は、記憶部142から読み込んだ成形条件データセットを表示装置160に表示させても良い。ユーザは、表示装置160に表示された成形条件のデータを参照し、必要に応じて値の修正等の操作を行っても良い。
【0025】
記憶部142は、射出装置120および型締装置110の制御に用いられる制御情報を保持する。制御情報に含まれる成形条件データセットは、製造対象の成形品や金型に対応付けられて用意されている。記憶部142は、製造対象の成形品や金型ごとの成形条件データセットを保持する。また、記憶部142は、制御部141が射出装置120および型締装置110を制御するためのプログラムを保持している。詳しくは後述するが、制御装置140においてプロセッサが記憶部142に保持されたプログラムを読み込んで実行することにより、制御部141の機能が実現される。
【0026】
<データ処理装置150の構成>
図4は、データ処理装置150の構成を示す図である。データ処理装置150は、射出装置120および型締装置110が上記の成形品の製造に係る工程における動作を実行するのに伴って得られるデータを取得し、処理する。データ処理装置150は、例えば、コンピュータにより実現される。データ処理装置150は、データ取得部151と、処理部152と、記憶部153と、表示制御部154とを備える。データ処理装置は、情報処理装置の一例である。
【0027】
データ取得部151は、射出装置120および型締装置110から処理対象のデータを取得する。射出装置120および型締装置110には、種々のセンサ、検出器、計測機器等が取り付けられている。これらのセンサ、検出器、計測機器等により取得されるデータは、射出装置120および型締装置110による成形結果を表す情報であり、成形品の品質管理に用いられる。データ取得部151は、センサ、検出器、計測機器等から送信された取得データを受信し、記憶部153に格納する。本実施形態のデータ取得部151は、特に、型締モータ116の電流および角加速度の情報を取得する。これらの情報は、型締モータ116から直接取得しても良いし、制御装置140から取得しても良い。データ取得部151は、取得手段の一例である。
【0028】
処理部152は、記憶部153に格納された取得データを処理する。具体的には、処理部152は、各工程における取得データの代表値の抽出、各工程における取得データを時系列化した時系列データの生成等の処理を行う。また、処理部152は、取得された型締モータ116の電流および角加速度の情報に基づいて型締装置110におけるボールねじ117の基本動定格荷重を計算し、算出した基本動定格荷重に基づき、ボールねじ117の寿命を計算する。処理部152は、計算手段の一例である。
【0029】
記憶部153は、データ取得部151により取得された取得データを保持する。記憶部153は、処理部152がデータ処理を実行するためのプログラム、表示制御部154が表示装置160に画面を表示させるためのプログラムを保持している。詳しくは後述するが、データ処理装置150においてプロセッサが記憶部153に保持されたプログラムを読み込んで実行することにより、処理部152および表示制御部154の機能が実現される。
【0030】
表示制御部154は、処理部152による処理結果をユーザに報知するための画面を生成し、表示装置160に表示させる。一例として、表示制御部154は、処理部152により算出されたボールねじ117の寿命を提示する画面を表示装置160に表示させる。また、算出されたボールねじ117の寿命に基づいて閾値を設定し、射出成形機10の使用実績が閾値に達した場合には、表示制御部154は、ユーザにボールねじ117の交換を促すメッセージを表示装置160に表示させても良い。また、表示制御部154は、ユーザが種々の操作を行うための操作画面やその他の種々の画面を生成し、表示装置160に表示させる。
【0031】
<制御装置140およびデータ処理装置150のハードウェア構成>
図5は、制御装置140およびデータ処理装置150を実現するコンピュータ400のハードウェア構成例を示す図である。図5に示すコンピュータは、演算手段であるプロセッサ401と、記憶手段である主記憶装置(メイン・メモリ)402および補助記憶装置403を備える。プロセッサ401としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の種々の演算回路が用い得る。プロセッサ401は、補助記憶装置403に格納されたプログラムを主記憶装置402に読み込んで実行する。主記憶装置402としては、例えば、RAM(Random Access Memory)が用いられる。補助記憶装置403としては、例えば、磁気ディスク装置やSSD(Solid State Drive)等が用いられる。また、コンピュータは、表示装置(ディスプレイ)160に表示出力を行うための表示機構404と、コンピュータのユーザによる入力操作が行われる入力手段としての入力デバイス405とを備える。入力デバイス405としては、例えば、キーボードやマウス等が用いられる。なお、図5に示すコンピュータの構成は一例に過ぎず、本実施形態で用いられるコンピュータは図5の構成例に限定されるものではない。例えば、記憶装置としてフラッシュ・メモリ等の不揮発性メモリやROM(Read Only Memory)を備える構成としても良い。
【0032】
制御装置140が図5に示すコンピュータにより実現される場合、制御部141の機能は、例えば、プロセッサ401がプログラムを読み込んで実行することにより実現される。記憶部142は、例えば、補助記憶装置403により実現される。
【0033】
データ処理装置150が図5に示すコンピュータにより実現される場合、データ取得部151および処理部152の機能は、例えば、プロセッサ401がプログラムを読み込んで実行することにより実現される。記憶部153は、例えば、補助記憶装置403により実現される。表示制御部154は、例えば、プログラムを読み込んで実行するプロセッサ401および表示機構404により実現される。
【0034】
<ボールねじ117の寿命の計算>
型締装置110におけるボールねじ117は有限寿命品であるため、保守の観点等から、ボールねじ117の寿命を予測することが求められる。なお、射出成形機10においては、型締装置110のボールねじ117以外にも、射出装置120やエジェクタ装置130等にボールねじが使用されており(何れも図示せず)、これらのボールねじについても同様に、寿命を予測することが求められる場合がある。本実施形態の手法は、何れのボールねじに対しても適用可能であるが、以下では、一例として型締装置110のボールねじ117を対象として寿命を予測する手法について説明する。ボールねじ117の寿命は、基本定格寿命(Basic Rating Life)であるL10寿命で表される。ショット数換算のL10寿命は、下記の数1の式により求まる。
【数1】
【0035】
上記の数1の式において、Rは、ボールねじ117のリードである。Kは、1ショットあたりのナット(クロスヘッド115a)の移動量(以下、「走行距離」と呼ぶ)である。Caは、ボールねじ117の基本動定格荷重である。fwは、荷重係数である。Fmは、ボールねじ117の平均荷重である。ここで、リードRは、射出成形機10に使用するボールねじ117が決まれば特定される値である。基本動定格荷重Caおよび荷重係数fwは、ボールねじ117のメーカー等により予め設定される値である。また、走行距離Kは、実際に成形品を製造する際における型締装置110の型締力や動作パターンで決まる。言い換えれば、走行距離Kは、射出成形機10の使用条件に依存する。そして、走行距離Kは、1ショット当たりの型締モータ116の動作量(例えば、回転数)とボールねじ117のリードRから算出可能である。型締モータ116の動作量は、型締モータ116のエンコーダの履歴から得られる。したがって、射出成形機10の仕様および動作パターンに応じてボールねじ117に作用する平均荷重が求まれば、ボールねじ117の寿命を計算することができる。平均荷重Fmは、下記の数2の式により求まる。
【数2】
【0036】
上記の数2の式において、liは、単位ステップあたりのナットの移動量である。Fiは、単位ステップにおいてボールねじ117に掛かる荷重(以下、「ボールねじ荷重」と呼ぶ)である。nは、1ショットの分割数(ステップ数)である。
【0037】
ここで、単位ステップあたりのナットの移動量liおよび1ショットの分割数nは、予め設定される値である。一方、ボールねじ荷重Fiは、実際に成形品を製造する際における型締装置110の型締力や動作パターンで決まる。言い換えれば、ボールねじ荷重Fiは、射出成形機10の使用条件に依存する。そして、ボールねじ荷重Fiは、測定が容易ではなく、型締装置110に設けられたセンサ等から得られる情報に基づき、演算により求める必要がある。
【0038】
一例として、型締モータ116において射出成形機10の作動(この場合は、型開閉動作)に要するトルク(以下、「負荷トルク」と呼ぶ)を用いて、この射出成形機10の作動によりボールねじ117が受ける負荷(以下、「ボールねじ負荷」と呼ぶ)を計算し、このボールねじ負荷を上記の数2の式に適用することができる。ボールねじ負荷Faは下記の数3の式により求まる。
【数3】
【0039】
上記の数3の式において、TLは、負荷トルクである。ηは、ボールねじ117の効率である。効率ηは、ボールねじ117のメーカー等により予め設定される値である。ここで、負荷トルクTLは、通常、直接計測することが困難である。しかしながら、負荷トルクTLは、射出成形機10の作動時における型締モータ116自体のトルク(以下、「モータトルク」と呼ぶ)と、型締モータ116が単に回転駆動するのに要するトルク(以下、「加減速トルク」と呼ぶ)とを用いて計算することができる。モータトルクは、負荷トルクと加減速トルクとの和として表される。したがって、負荷トルクTLは、下記の数4の式により求まる。
【数4】
【0040】
上記の数4の式において、Tは、モータトルクである。Taは、加減速トルクである。モータトルクTは、負荷検出器116aから取得された射出成形機10の作動時における型締モータ116の電流値に、型締モータ116のトルク定数を乗ずることにより計算される。したがって、モータトルクTは、射出成形機10の使用条件に依存する。加減速トルクTaは、型締モータ116が回転駆動する際に作用する慣性モーメント(イナーシャ)に基づいて計算される。ここで、型締モータ116が回転駆動する際に作用する慣性モーメントには、型締モータ116の回転軸回りの慣性モーメントと、ボールねじ117の軸回りの慣性モーメントとがある。そして、加減速トルクTaは、下記の数5の式により求まる。
【数5】
【0041】
上記の数5の式において、JMは、型締モータ116の回転軸回りの慣性モーメントである。JBは、ボールねじ117の軸回りの慣性モーメントである。αは、射出成形機10の作動時における型締モータ116の角加速度である。慣性モーメントJM、JBは、射出成形機10に使用する型締モータ116およびボールねじ117が決まれば特定される値である。角加速度αは、型締モータ116のエンコーダのデータから算出される。エンコーダのデータには、型締モータ116の動作における回転角の情報が含まれる。この角加速度αは、射出成形機10の作動中に計算し取得することができる。したがって、加減速トルクTaは、射出成形機10の使用条件に依存する。なお、本実施例においては、型締モータ116の回転軸およびボールねじ117のみが回転することを想定し、型締モータ116の回転軸回りの慣性モーメントJMとボールねじ117の軸回りの慣性モーメントJBの和に角加速度αを乗ずることで加減速トルクTaを算出した。ここで、型締モータ116の回転軸およびボールねじ117の一方または双方に対して他の付属物が付属し、この付属物によるトルクやボールねじの寿命算出への影響が無視できない場合がある。このような場合、型締モータ116の回転軸、ボールねじ117および付属物からなる回転体(言い換えれば、型締モータ116の回転軸およびボールねじ117を含む回転体)を対象とし、この回転体の慣性モーメントに角加速度αを乗ずることで加減速トルクTaを算出する。また、このような付属物以外にもトルクやボールねじの寿命算出への影響を無視できない要素を併せて考慮しても良い。
【0042】
以上のようにして、型締モータ116およびボールねじ117の仕様やメーカー等により設定された値等の予め特定されたデータと、射出成形機10の作動に応じて得られるデータとに基づき、ボールねじ負荷Faが求められた。このボールねじ負荷Faをボールねじ荷重Fiとして用い、数2の式に適用することにより、ボールねじ117の平均荷重Fmが算出され、この平均荷重Fmに基づいて数1の式によりボールねじ117の寿命が算出される。言い換えれば、上記の計算手法では、モータトルクTおよび型締モータ116の加減速パターンからボールねじ負荷Faを計算し、このボールねじ負荷Faを用いてボールねじ117の寿命を推定した。
【0043】
上記の計算手法において、予め特定されるデータ、具体的には、リードR、基本動定格荷重Ca、荷重係数fw、移動量li、分割数n、効率η、トルク定数、慣性モーメントJM、JBの各々は、予め、データ処理装置150の記憶部153等に格納して保持される。射出成形機10の使用条件に依存するデータ、具体的には、走行距離K、モータトルクT、加減速トルクTaの各々は、射出成形機10の作動に応じて得られる型締モータ116の電流値およびエンコーダのデータに基づいて計算される。
【0044】
<ボールねじ117の残寿命の計算>
射出成形機10が継続的に使用されると、これに応じてボールねじ117が次第に劣化することが想定される。そこで、劣化したボールねじ117を想定して、ある時点からのボールねじ117の寿命(以下、「残寿命」と呼ぶ)を計算することが考えられる。単純な手法としては、例えば、ボールねじ117の基本動定格荷重に関して、使用程度に応じてボールねじ117の劣化の進み具合を想定して設定した劣化曲線や変換式を用いる手法が考えられる。具体的には、ある時点におけるボールねじ117の使用実績に基づき、この劣化曲線や変換式を適用して変換した基本動定格荷重(以下、「変換後基本動定格荷重」と呼ぶ)を用いて、この時点以後のボールねじ117の残寿命を計算する。
【0045】
また、射出成形機10において、型締力、金型、動作パターン等の使用条件が変更されることがある。そして、上記の数1~数5の式には射出成形機10の使用条件に依存するデータが用いられているため、上記の数1~数5の式を用いて計算したボールねじ117の寿命は、かかる使用条件の変更の影響を受ける。そこで、ある時点までに実施されたショットにおける射出成形機10の使用条件に基づき、かかるショットにおいて得られた型締モータ116の電流値およびエンコーダのデータを用いて変換後基本動定格荷重を計算することが考えられる。
【0046】
ある時点(時点I)におけるボールねじ117の変換後基本動定格荷重をC’aIとすると、時点Iにおけるボールねじ117のショット数換算のL10寿命を計算する式は、基本動定格荷重Caの代わりに変換後基本動定格荷重C’aIを用いて、下記の数6の式の様になる。
【数6】
【0047】
ここで、時点Iから遡るある時点(時点I-1)における変換後基本動定格荷重をC’a(I-1)とし、時点I-1から時点Iまでの間(サンプル間隔)に実施されたショットの数をΔshotとすると、時点Iにおける変換後基本動定格荷重C’aIは、下記の数7の式により計算される。
【数7】
【0048】
上記の数7の式には、時点I-1から時点Iまでのサンプル間隔において実施されたショットの際の平均荷重Fmが含まれている。このため、変換後基本動定格荷重C’aIには、このサンプル間隔に実施されたショットにおいて得られた型締モータ116の電流値およびエンコーダのデータが反映される。なお、ボールねじ117が未使用状態である場合、変換後基本動定格荷重C’a(I-1)は初期値であるので、C’a(I-1)=Caである。
【0049】
<ボールねじ117の寿命の他の計算手法>
上記の計算手法(以下、「第1の手法」と呼ぶ)では、モータトルクTおよび型締モータ116の加減速パターンからボールねじ負荷Faを計算し、このボールねじ負荷Faを用いてボールねじ117の平均荷重Fmを計算し、さらにこの平均荷重Fmからボールねじ117の寿命を計算した。他の計算手法(以下、「第2の手法」と呼ぶ)として、機械学習モデルを用いてボールねじ117の平均荷重Fmを求め、この平均荷重Fmからボールねじ117の寿命を計算することが考えられる。
【0050】
図6は、第2の手法を用いる場合のデータ処理装置150の構成を示す図である。第2の手法を用いる場合のデータ処理装置150は、図4に示した第1の手法を用いる場合のデータ処理装置150の構成と同様に、データ取得部151と、処理部152と、記憶部153と、表示制御部154とを備える。ただし、記憶部153には、ボールねじ117の平均荷重Fmを計算するための機械学習モデル153aが格納されている。機械学習モデル153aは、型締装置110における型開閉動作の設定情報と、ボールねじ117の平均荷重Fmとの関係を表す。機械学習モデル153aは、例えば、成形品や金型の種類等に応じて用意される。
【0051】
データ取得部151は、型締装置110において実際に型開閉動作が行われる際の設定情報を取得する。処理部152は、記憶部153から機械学習モデル153aを読み出し、データ取得部151により取得された設定情報を読み出した機械学習モデル153aに適用して平均荷重Fmを求める。そして、処理部152は、得られた平均荷重Fmを用いて数1の式によりボールねじ117の寿命を計算する。
【0052】
機械学習モデル153aは、次のような方法で作成される。まず、予め用意された型開閉動作の設定情報を用いてコンピュータ・シミュレーションを行い、設定情報に従って型締装置110を動作させた場合におけるボールねじ117の平均荷重Fmを計算する。そして、シミュレーションに用いた設定情報と算出された平均荷重Fmのデータセットを蓄積し、これを教師データとして機械学習を行い、機械学習モデル153aを得る。
【0053】
なお、上記の例では、機械学習モデル153aを用いてボールねじ117の平均荷重Fmを求め、数1の式によりボールねじ117の寿命を計算した。これにより、第1の手法の場合と同様に、数1の式における基本動定格荷重Caの代わりに変換後基本動定格荷重C’aIを用いることで、ある時点におけるボールねじ117の残寿命を計算することができる。
【0054】
これに対し、型締装置110における型開閉動作の設定情報を入力して型締モータ116の負荷トルクTLを出力する機械学習モデルを用い、実際に型開閉動作が行われる際の設定情報から得られた負荷トルクTLに基づいて数3、数2、数1の式によりボールねじ117の寿命を計算しても良い。同様に、型開閉動作の設定情報を入力してボールねじ負荷Faを出力する機械学習モデルを用い、実際に型開閉動作が行われる際の設定情報から得られたボールねじ負荷Faに基づいて数2、数1の式によりボールねじ117の寿命を計算しても良い。これらの手法を用いた場合も、上記の第2の手法と同様に、変換後基本動定格荷重C’aIを用いて、ある時点におけるボールねじ117の残寿命を計算することができる。
【0055】
一方、射出成形機10の使用程度に応じたボールねじ117の残寿命を計算する必要がない場合、型締装置110における型開閉動作の設定情報に基づいてボールねじ117の寿命を出力する機械学習モデルを用い、実際に型開閉動作が行われる際の設定情報からボールねじ117の寿命を直接出力する構成としても良い。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態には限定されない。例えば、上記の実施形態では、射出成形機10が制御装置140、データ処理装置150および表示装置160を備える構成として説明したが、かかる構成には限定されない。例えば、データ処理装置150の処理部152におけるボールねじ117の寿命を計算する機能をパーソナルコンピュータ等の情報処理装置で実現し、データ処理装置150から型締モータ116の電流値およびエンコーダのデータを取得して、ボールねじ117の寿命を計算する構成としても良い。
【0057】
また、上記の実施形態では、データ処理装置150の処理部152により計算されたボールねじ117の寿命の情報を表示制御部154が表示装置160に表示する構成としたが、ボールねじ117の寿命の情報をユーザが所持する携帯型情報端末へ送信し、表示させる構成としても良い。
【0058】
なお、本実施形態では、型締装置110のボールねじ117を対象として説明したが、射出成形機10では、射出装置120において金型800に成形材料を充填する際の動作や、エジェクタ装置130において成形品を可動金型820から突き出す際の動作においてもボールねじが使用される。これら射出装置120およびエジェクタ装置のボールねじやその他のボールねじに対しても、本実施形態の手法を適用し、ボールねじの寿命を計算することができる。その他、本発明の技術思想の範囲から逸脱しない様々な変更や構成の代替は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
10…射出成形機、110…型締装置、112…可動プラテン、113…トグルサポート、115…トグル機構、115a…クロスヘッド、116…型締モータ、116a…負荷検出器、117…ボールねじ、120…射出装置、130…エジェクタ装置、140…制御装置、141…制御部、142…記憶部、150…データ処理装置、151…データ取得部、152…処理部、153…記憶部、154…表示制御部、160…表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6