(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090314
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】水素ステーションにおける水素放出システム
(51)【国際特許分類】
F17C 13/12 20060101AFI20240627BHJP
F17C 13/04 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
F17C13/12 301A
F17C13/04 301D
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206129
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000109428
【氏名又は名称】日本エア・リキード合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古本 理郎
(72)【発明者】
【氏名】亀澤 孝史
(72)【発明者】
【氏名】菊池 隆
(72)【発明者】
【氏名】グエン ダン クイ
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB05
3E172BB13
3E172DA75
3E172JA05
3E172JA08
3E172KA03
3E172KA22
(57)【要約】
【課題】複数の圧力リリーフ弁から同時に水素が放出されることを回避して、大気中の水素ガス濃度がサイト敷地境界で爆発下限界濃度の1/4(4%/4=1%)を超えることがない水素放出システムを提供する。
【解決手段】水素放出システム1は、2以上の蓄圧器と、安全弁よりも低い圧力で作動する圧力リリーフ弁と、2以上の蓄圧器の内部圧力を直接あるいは間接的に測定する圧力測定部と、を備え、前記圧力リリーフ弁は、前記圧力測定部で測定された蓄圧器内部圧力値が前記圧力リリーフ弁の開弁の圧力設定値を超えた場合に、前記圧力リリーフ弁が開弁し、前記圧力測定部で測定された蓄圧器内部圧力値が前記圧力リリーフ弁の閉弁の圧力設定値未満になった場合に、前記圧力リリーフ弁を閉弁し、前記圧力リリーフ弁の開弁の圧力設定値は、前記少なくとも2つの圧力リリーフ弁の作動開始のタイミングが同じにならないように、それぞれ異なる値に予め設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の蓄圧器と、
安全弁よりも低い圧力で作動する圧力リリーフ弁であって、前記2以上の蓄圧器に対し、設けられる少なくとも2つの圧力リリーフ弁と、
前記2以上の蓄圧器の内部圧力を直接あるいは間接的に測定する圧力測定部と、
前記圧力リリーフ弁は、
前記圧力測定部で測定された蓄圧器内部圧力値が前記圧力リリーフ弁の開弁の圧力設定値を超えた場合に、前記圧力リリーフ弁が開弁し、前記圧力測定部で測定された蓄圧器内部圧力値が前記圧力リリーフ弁の閉弁の圧力設定値未満になった場合に、前記圧力リリーフ弁を閉弁し、
前記圧力リリーフ弁の開弁の圧力設定値は、
前記少なくとも2つの圧力リリーフ弁の作動開始のタイミングが同じにならないように、それぞれ異なる値に予め設定されている、
水素ステーションの水素放出システム。
【請求項2】
前記圧力リリーフ弁の開弁の圧力設定値は、環境温度による蓄圧器のガス温度上昇率およびそれと相関する圧力上昇率から求められる、
請求項1に記載の水素放出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ステーションにおける水素放出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素ステーション(圧縮水素スタンドを含む)には、所定圧に圧縮された圧縮水素を貯留するために、複数の蓄圧器が設置されている。
これら蓄圧器には、安全弁が設けられ、蓄圧器の内部圧力が上昇した際に、安全弁が作動し(開弁し)蓄圧器内部の圧縮水素が大気中に放出される。
また、この安全弁が作動する前に、蓄圧器の圧力が所定圧に達した際に作動する(開弁する)圧力リリーフ弁(PRV)が設けられている。この圧力リリーフ弁(PRV)の設定値は、圧力設定値のみで定義されており、圧力上昇のプロセスなどは考慮されていない。したがって、環境温度の上昇などに伴う熱膨張などに起因する場合、複数の蓄圧器それぞれに設置されている圧力リリーフ弁(PRV)が同時に開く場合がある。
【0003】
特許文献1は、水素ステーション内に発生した水素圧の異常昇圧を制御する方法として、放散弁(圧力リリーフ弁に相当する。)は、開状態と閉状態とを切替える所定の条件として、開状態とする条件を安全弁の吹出し圧力よりも低く設定した所定の設定圧力とし、かつ、閉状態とする条件を流路に想定される最高温度に達しても安全弁の吹出し圧力未満となる圧力とした構成を開示している。
特許文献2は、容器内のガス温度を監視することにより、燃料電池自動車(FCV)への蓄圧器ガス供給間の温度差を最小限に抑える制御システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-156435号公報
【特許文献2】特許第4622857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および2では、圧力リリーフ弁(PRV)が同時に開く場合およびその問題については言及されていない。そのため水素ステーションにおいて、複数の蓄圧器に貯蔵されている水素ガスが、環境温度の上昇などに伴う熱膨張などに起因して、各々に設置されている圧力リリーフ弁(PRV)から同時に放出される可能性がある。その結果、大気中の水素ガス濃度がサイト敷地境界で爆発下限界濃度(LEL)の1/4(4%/4=1%)を超えることが懸念される。なお、一般高圧ガス保安規則(一般則)ではサイト敷地境界で爆発下限界濃度(LEL)の1/4未満と規定されている。
【0006】
上記の課題を解決するため、本開示は、複数の圧力リリーフ弁(PRV)から同時に水素が放出されることを回避して、大気中の水素ガス濃度がサイト敷地境界で爆発下限界濃度(LEL)の1/4(4%/4=1%)を超えることがない水素放出システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の水素ステーションの水素放出システムは、
2以上の蓄圧器と、
安全弁よりも低い圧力で作動する圧力リリーフ弁であって、前記2以上の蓄圧器に対し、設けられる少なくとも2つの圧力リリーフ弁と、
前記2以上の蓄圧器の内部圧力を直接あるいは間接的に測定する圧力測定部と、
前記圧力リリーフ弁は、
前記圧力測定部で測定された蓄圧器内部圧力値が前記圧力リリーフ弁の開弁の圧力設定値を超えた場合に、前記圧力リリーフ弁が開弁し、前記圧力測定部で測定された蓄圧器内部圧力値が前記圧力リリーフ弁の閉弁の圧力設定値未満になった場合に、前記圧力リリーフ弁を閉弁し、
前記圧力リリーフ弁の開弁の圧力設定値は、
前記少なくとも2つの圧力リリーフ弁の作動開始のタイミングが同じにならないように、それぞれ異なる値に予め設定されている。
【0008】
本開示の水素ステーションの水素放出システムは、
2以上の蓄圧器(HP1、HP2、MP1・・MP4)と、
所定の圧力で作動する安全弁(PSV1、PSV2、PSV3)であって、前記2以上の蓄圧器に設けられる少なくとも1つの安全弁(PSV1、PSV2、PSV3)と、
前記安全弁(PSV1、PSV2、PSV3)よりも低い圧力で作動する圧力リリーフ弁(PRV1、PRV2、PRV3)であって、前記2以上の蓄圧器(HP1、HP2、MP1・・4)に対し、設けられる少なくとも2つの圧力リリーフ弁(PRV1、PRV2、PRV3)と、
前記圧力リリーフ弁(PRV1、PRV2、PRV3)の作動において水素ガスを大気に放出する大気放出配管(ARP1、ARP2、ARP3)と、
前記2以上の蓄圧器(HP1、HP2、MP1・・4)の内部圧力を直接あるいは間接的に測定する圧力測定部(PT1、PT2、PT3)と、
前記圧力測定部(PT1、PT2、PT3)で測定された蓄圧器内部圧力値(PT1_v、PT2_v、PT3_v)が前記圧力リリーフ弁(PRV1、PRV2、PRV3)の開弁の圧力設定値(PSHH1、PSHH2、PSHH3)を超えた場合に、前記圧力リリーフ弁(PRV1、PRV2、PRV3)を開弁させ、前記圧力測定部(PT1、PT2、PT3)で測定された蓄圧器内部圧力値(PT1_v、PT2_v、PT3_v)が前記圧力リリーフ弁(PRV1、PRV2、PRV3)の閉弁の圧力設定値(PSH1、PSH2、PSH3)未満になった場合に、前記圧力リリーフ弁(PRV1、PRV2、PRV3)を閉弁させるように制御する制御部(50)と、を備え、
前記圧力リリーフ弁の開弁の圧力設定値(PSHH1、PSHH2、PSHH3)は、
前記少なくとも2つの圧力リリーフ弁(PRV1、PRV2、PRV3)の作動開始(開弁開始)のタイミングが同じにならないように、それぞれ異なる値に予め設定されていることを特徴とする。
前記圧力リリーフ弁の開弁の圧力設定値(PSHH1、PSHH2、PSHH3)は、環境温度による蓄圧器のガス温度上昇率およびそれと相関する圧力上昇率から求められていてもよい。
前記圧力リリーフ弁(PRV1、PRV2)は、前記蓄圧器(HP1、HP2)の1つに対し1つの圧力リリーフ弁(PRV1、PRV2)が設けられ、2つ以上の前記蓄圧器(MP1、・・、MP4)に対し1つの圧力リリーフ弁(PRV3)が設けられていてもよい。
【0009】
前記制御部(50)は、
前記圧力測定部(PT1、PT2、PT3)で測定された蓄圧器内部圧力値(PT1_v、PT2_v、PT3_v)と、前記圧力リリーフ弁(PRV1、PRV2、PRV3)の開弁の圧力設定値(PSHH1、PSHH2、PSHH3)とから、圧力設定値と蓄圧器内圧力値との差を圧力設定値で除した第一警告条件値(v1、v2、v3)の100分率(式1)と、単位時間(例えば、1時間など)あたりの圧力上昇率(dP1、dP2、dP3)(式2)と、開弁の圧力設定値と蓄圧器内圧力値との差を圧力上昇率で除した第二警告条件値(t1、t2、t3)(式3)を算出し、
第一警告条件値(v1、v2、v3)が第一所定値(例えば、3%)未満であり、かつ、
第二警告条件値(t1、t2、t3)が第二所定値(例えば、3hours)未満であり、
第二警告条件値(t1、t2、t3)の任意の2つの値の比が所定範囲(例えば、0.9から1.1の範囲)に含まれている場合に、警告情報(例えば、水素ガス放出タイミングを知らせる旨の情報など)を出力してもよい。
圧力リリーフ弁が3つとしているが、2つ、4つ以上でもあっても同様である。
【0010】
(式1)
第一警告条件値=(開弁の圧力設定値-現時刻の蓄圧器内部圧力値)/開弁の圧力設定値<第一所定値(例えば、2%)
v1=(PSHH1-PT1_v)/PSHH1 < 2%
v2=(PSHH2-PT2_v)/PSHH2 < 2%
v3=(PSHH3-PT3_v)/PSHH3 < 2%
【0011】
(式2)
圧力上昇率(dP1、dP2、dP3)=第二時刻の蓄圧器内部圧力値(PT1_v2、PT2_v2、PT3_v2)-第一時刻の蓄圧器内部圧力値(PT1_v1、PT2_v1、PT3_v1)/第一時刻と第二時刻の時間差(dt)
【0012】
(式3)
第二警告条件値=(開弁の圧力設定値-現時刻の蓄圧器内部圧力値)/圧力上昇率 <第二所定値(例えば、2時間)
t1=(PSHH1-PT1_v)/dP1 < 2 hours
t2=(PSHH2-PT2_v)/dP2 < 2 hours
t3=(PSHH3-PT3_v)/dP3 < 2 hours
【0013】
(式4)
警告出力条件:例えば、0.9から1.1の範囲内に含まれている場合
0.9<(t1/t2 or t2/t3 or t3/t1)<1.1
【0014】
(作用効果)
圧力リリーフ弁の作動開始(開弁開始)のタイミングがそれぞれ異なることで、同時に弁が開くことがなく、大気放出される水素ガスの濃度が、水素ステーションのサイト敷地境界で1%を超えることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】水素放出システムの一例を説明する図である。
【
図2】圧力リリーフ弁の作動(開弁・閉弁)フローの一例を示す図である。
【
図3】温度上昇の経過に対応した蓄圧器内部圧力の上昇と圧力リリーフ弁の作動による圧力降下を示す一例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0017】
(実施形態1)
実施形態1の水素放出システム1について
図1から3を用いて説明する。
図1の水素放出システム1は、第一高圧蓄圧器HP1、第二高圧蓄圧器HP2、第一から第四中圧蓄圧器MP1、MP2、MP3、MP4とを備える。
図1では圧縮機やディスペンサー、その配管、弁などは省略してある。
【0018】
安全弁PSV1は第一高圧蓄圧器HP1に接続され、PSV2は第二高圧蓄圧器HP2に接続され、PSV3は第一から第四中圧蓄圧器MP1、MP2、MP3、MP4のすべてに接続され、蓄圧器の内部圧力が所定値に達すると自動で開弁し、水素ガスを大気へ放出する。本実施形態では安全弁がそれぞれ三つ設置してあるが、蓄圧器の構成によって複数の安全弁が設けられていてもよい。
【0019】
第一圧力リリーフ弁PRV1は、第一高圧蓄圧器HP1に接続され、その第一大気放出配管ARP1を経て放出管(Vent)に接続される。第一圧力測定部PT1は、第一圧力リリーフ弁PRV1より上流側に設けられ、第一高圧蓄圧器HP1の内部のガス圧力を測定する。
第二圧力リリーフ弁PRV2は、第二高圧蓄圧器HP2に接続され、その第二大気放出配管ARP2を経て放出管(Vent)に接続される。第二圧力測定部PT2は、第二圧力リリーフ弁PRV2より上流側に設けられ、第二高圧蓄圧器HP2の内部のガス圧力を測定する。
第三圧力リリーフ弁PRV3は、第一から第四中圧蓄圧器MP1、MP2、MP3、MP4に接続され、その第三大気放出配管ARP3を経て放出管(Vent)に接続される。第三圧力測定部PT3は、第三圧力リリーフ弁PRV3より上流側に設けられ、第一から第四中圧蓄圧器MP1、MP2、MP3、MP4の内部のガス圧力を測定する。
【0020】
第一、第二、第三圧力リリーフ弁の開弁の圧力設定値PSHH1、PSHH2、PSHH3、閉弁の圧力設定値PSH1、PSH2、PSH3は、一例として以下の通り設定されている。
【表1】
第一、第二、第三圧力リリーフ弁の開弁の圧力設定値PSHH1、PSHH2、PSHH3はそれぞれ異なる値に設定してある。第一、第二高圧蓄圧器用の第一、第二圧力リリーフ弁の閉弁の圧力設定値PSH1、PSH2は、同じ値に設定している。第三圧力リリーフ弁の開弁と閉弁の圧力設定値は、中圧蓄圧器用であるため、高圧蓄圧器用のそれとは異なるタイミングとなるように、環境温度上昇に対応した圧力上昇の関係図(
図3)から設定する。
図3は、高圧蓄圧器と中圧蓄圧器における温度上昇に対応する蓄圧器内の圧力上昇の関係を示す。
図3によれば、まず、第二高圧蓄圧器の第二圧力リリーフ弁PRV2は、85.5MPaとなった場合に開弁し、84MPa未満になった場合に閉弁する。この閉弁後に、次いで、第一から第四中圧蓄圧器の第三圧力リリーフ弁PRV3は、42MPaとなった場合に開弁し、41MPa未満になった場合に閉弁する。この閉弁後に、最後に、第一高圧蓄圧器の第一圧力リリーフ弁PRV1は、86.5MPaとなった場合に開弁し、84MPa未満になった場合に閉弁する。つまり、それぞれの圧力リリーフ弁が同時に開弁している期間が重複しないように各圧力設定値を設定する。なお、上記各圧力設定値は一例であり、本実施形態の目的と水素ステーションの仕様などに対応して設定値が変更され、設定値は一定値に限定されず、所定の幅のある値であってもよい。高圧蓄圧器用の圧力リリーフ弁が複数ある場合に、お互いの開弁の圧力設定値(例えば、PSHH1とPSHH2と)の差が、例えば、0.5MPa以上2.0MPa以下の範囲であってもよい。中圧蓄圧器の圧力リリーフ弁が複数ある場合に、お互いの開弁の圧力設定値(例えば、PSHH1とPSHH2と)の差が、例えば、0.5MPa以上2.0MPa以下の範囲であってもよい。
【0021】
制御部50は、第一圧力測定部PT1で測定された蓄圧器内部圧力値(PT1_v)が第一圧力リリーフ弁PRV1の開弁の圧力設定値(PSHH1)を超えた場合に、第一圧力リリーフ弁PRV1を開弁させ、第一圧力測定部PT1で測定された蓄圧器内部圧力値(PT1_v)が第一圧力リリーフ弁PRV1の閉弁の圧力設定値(PSH1)未満になった場合に、第一圧力リリーフ弁PRV1を閉弁させるように制御する。
制御部50は、第二圧力測定部PT2で測定された蓄圧器内部圧力値(PT2_v)が第二圧力リリーフ弁PRV2の開弁の圧力設定値(PSHH2)を超えた場合に、第二圧力リリーフ弁PRV2を開弁させ、第二圧力測定部PT2で測定された蓄圧器内部圧力値(PT2_v)が第二圧力リリーフ弁PRV2の閉弁の圧力設定値(PSH2)未満になった場合に、第二圧力リリーフ弁PRV2を閉弁させるように制御する。
制御部50は、第三圧力測定部PT3で測定された蓄圧器内部圧力値(PT3_v)が第三圧力リリーフ弁PRV3の開弁の圧力設定値(PSHH3)を超えた場合に、第三圧力リリーフ弁PRV3を開弁させ、第三圧力測定部PT3で測定された蓄圧器内部圧力値(PT3_v)が第三圧力リリーフ弁PRV3の閉弁の圧力設定値(PSH3)未満になった場合に、第三圧力リリーフ弁PRV3を閉弁させるように制御する。
【0022】
図2に圧力リリーフ弁の作動(開弁・閉弁)フローを示す。
水素ステーションは、運転稼働あるいは待機中において、各蓄圧器には所定圧の水素ガスが充填されている。通常時において、各圧力リリーフ弁は閉じられた状態である(S11、S21、S31)。
環境温度が日照時間などに応じて上昇し、蓄圧器内の温度も上昇し、内部圧力が上がる(S12、S22、S32)。
それぞれの圧力リリーフ弁において以下の処理が実行される。
第一圧力測定部PT1で測定された第一蓄圧器内部圧力値(PT1_v)が第一圧力リリーフ弁PRV1の開弁の圧力設定値(PSHH1)を超えたか否かが判断される(S13)。超えた場合に、第一圧力リリーフ弁PRV1が開弁する(S14)。その後、圧力が急激に低下し、第一圧力測定部PT1で測定された第一蓄圧器内部圧力値(PT1_v)が閉弁の圧力設定値(PSH1)未満か否かが判断される(S15)。未満になった場合に、第一圧力リリーフ弁PRV1を閉弁する(S16)。
第二圧力測定部PT2で測定された第二蓄圧器内部圧力値(PT2_v)が第二圧力リリーフ弁PRV2の開弁の圧力設定値(PSHH2)を超えたか否かが判断される(S23)。超えた場合に、第二圧力リリーフ弁PRV2が開弁する(S24)。その後、圧力が急激に低下し、第二圧力測定部PT2で測定された第二蓄圧器内部圧力値(PT2_v)が閉弁の圧力設定値(PSH2)未満か否かが判断される(S25)。未満になった場合に、第二圧力リリーフ弁PRV2を閉弁する(S26)。
第三圧力測定部PT3で測定された第三蓄圧器内部圧力値(PT3_v)が第三圧力リリーフ弁PRV3の開弁の圧力設定値(PSHH3)を超えたか否かが判断される(S33)。超えた場合に、第三圧力リリーフ弁PRV3が開弁する(S34)。その後、圧力が急激に低下し、第三圧力測定部PT3で測定された第三蓄圧器内部圧力値(PT3_v)が閉弁の圧力設定値(PSH3)未満か否かが判断される(S35)。未満になった場合に、第三圧力リリーフ弁PRV3を閉弁する(S36)。
それぞれのフローにおいて圧力リリーフ弁が閉弁した後、水素ガス圧力が継続的に上昇する場合は、この処理が繰り返される。
【0023】
(警告情報)
環境温度上昇に対応した圧力上昇の関係図(
図3)は、ある任意の想定される環境状態である。そのため、環境変化、ステーション設置位置(場所)、季節などに対応して変更されてもよい。
各蓄圧器の内部圧力の初期値についても変動しうる。そのため、上記関係図(
図3)からの変動があっても対応できるように警告情報を出力する構成を追加する。
【0024】
制御部50は、圧力測定部(PT1、PT2、PT3)で測定された蓄圧器内部圧力値(PT1_v、PT2_v、PT3_v)と、圧力リリーフ弁(PRV1、PRV2、PRV3)の開弁の圧力設定値(PSHH1、PSHH2、PSHH3)とから、圧力設定値と蓄圧器内圧力値との差を圧力設定値で除した第一警告条件値(v1、v2、v3)の100分率(式1)と、単位時間(例えば、1時間など)あたりの圧力上昇率(dP1、dP2、dP3)(式2)と、圧力設定値と蓄圧器内圧力値との差を圧力上昇率で除した第二警告条件値(t1、t2、t3)(式3)を算出し、
第一警告条件値(v1、v2、v3)が第一所定値(例えば、3%)未満であり、かつ、
第二警告条件値(t1、t2、t3)が第二所定値(例えば、3hours)未満であり、
第二警告条件値(t1、t2、t3)の任意の2つの値の比が所定範囲(例えば、0.9から1.1の範囲)に含まれている場合に、警告情報(例えば、水素ガス放出タイミングを知らせる旨の情報など)を出力する。
「出力」は、モニターへの表示、印刷、記憶媒体への記憶、スピーカーへの警告音(音声を含む)、携帯端末(スマートフォン、ウエアラブル機器など)への送信、外部装置(サーバ、コンピュータなど)への送信など各種出力形態であってもよい。
【0025】
(式1)
第一警告条件値=(開弁の圧力設定値-現時刻の蓄圧器内部圧力値)/開弁の圧力設定値 <第一所定値(例えば、2%)
v1=(PSHH1-PT1_v)/PSHH1 < 2%
v2=(PSHH2-PT2_v)/PSHH2 < 2%
v3=(PSHH3-PT3_v)/PSHH3 < 2%
【0026】
(式2)
圧力上昇率(dP1、dP2、dP3)=第二時刻の蓄圧器内部圧力値(PT1_v2、PT2_v2、PT3_v2)-第一時刻の蓄圧器内部圧力値(PT1_v1、PT2_v1、PT3_v1)/第一時刻と第二時刻間の時間差(dt)
【0027】
(式3)
第二警告条件値=(開弁の圧力設定値-現時刻の蓄圧器内部圧力値)/圧力上昇率 <第二所定値(例えば、2時間)
t1=(PSHH1-PT1_v)/dP1 < 2 hours
t2=(PSHH2-PT2_v)/dP2 < 2 hours
t3=(PSHH3-PT3_v)/dP3 < 2 hours
【0028】
(式4)
警告出力条件:例えば、0.9から1.1の範囲内に含まれている場合
0.9<(t1/t2 or t2/t3 or t3/t1)<1.1
【0029】
制御部50は、警告情報を出力することに替わり、第一、第二、第三圧力リリーフ弁(PRV1、PRV2、PRV3)の開弁の圧力設定値(PSHH1、PSHH2、PSHH3)の1つ以上を変更してもよい。警告出力条件(式4)を満足していない圧力リリーフ弁の開弁の圧力設定値を変更してもよい。例えば、t1/t2が0.9から1.1の範囲内であった場合、圧力リリーフ弁(PRV1、PRV2)の開弁の圧力設定値(PSHH1、PSHH2)について、お互いの差を大きくするように変更してもよい。
【0030】
制御部50は、警告情報を出力することに替わり、第一、第二、第三圧力リリーフ弁(PRV1、PRV2、PRV3)の1つ以上を開閉してもよい。警告出力条件(式4)を満足していない圧力リリーフ弁を開弁してもよい。例えば、t1/t2が0.9から1.1の範囲内であった場合、圧力リリーフ弁(PRV1、PRV2)のいずれかを開弁してもよい。
【0031】
(別実施形態)
(1)高圧蓄圧器は、2つに限らず、1つでもよく3つ以上でもよい。
(2)中圧蓄圧器は、4つに限らず、1から3つ、5つ以上でもよい。
(3)高圧蓄圧器が1つに対し、1つの圧力リリーフ弁に限定されない。
(4)中圧蓄圧器が4つに対し、1つの圧力リリーフ弁に限定されず、中圧蓄圧器3以下に対して1つの圧力リリーフ弁を設けてあってもよい。
(5)中圧蓄圧部のセット(一式)が、4つに限定されず、2つ、3つ、5つ以上であってもよい。
(6)圧力リリーフ弁と共に流量を制限するオリフィスを備えていてもよい。
(7)制御部50は、情報処理装置、専用回路、一つ以上のプロセッサーとプロセッサーを動作させる制御プログラム格納するメモリを有する構成、ファームウエア、サーバ、PLCなどの1種以上の組み合わせで構成されていてもよい。
(8)圧力リリーフ弁は、特に制限されず、開弁の圧力設定値と閉弁の圧力設定値を予め設定できる構成であってもよく、プロセス設計に対応して開弁の圧力設定値と閉弁の圧力設定値を更新できる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 水素放出システム
50 制御部
ARP1 第一大気放出配管
ARP2 第二大気放出配管
ARP3 第三大気放出配管
HP1 第一高圧蓄圧器
HP2 第二高圧蓄圧器
MP1 第一中圧蓄圧器
MP2 第二中圧蓄圧器
MP3 第三中圧蓄圧器
MP4 第四中圧蓄圧器
PT1 第一圧力測定部
PT2 第二圧力測定部
PT3 第三圧力測定部
PRV1 第一圧力リリーフ弁
PRV2 第二圧力リリーフ弁
PRV3 第三圧力リリーフ弁
PSV1 第一安全弁
PSV2 第二安全弁
PSV3 第三安全弁