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特開2024-90317ウレタン(メタ)アクリレート及びその製造方法、並びにそれを用いた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090317
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ウレタン(メタ)アクリレート及びその製造方法、並びにそれを用いた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/67 20060101AFI20240627BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20240627BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20240627BHJP
   C08F 299/06 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C08G18/67 010
C08G18/73
C08G18/44
C08F299/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206136
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000145965
【氏名又は名称】株式会社昭和インク工業所
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安本 晴信
(72)【発明者】
【氏名】生田 直也
(72)【発明者】
【氏名】中村 光弘
(72)【発明者】
【氏名】小岩 健太郎
【テーマコード(参考)】
4J034
4J127
【Fターム(参考)】
4J034BA03
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA15
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB07
4J034CC03
4J034CC12
4J034CC26
4J034CC44
4J034CC45
4J034CC52
4J034CC61
4J034CC62
4J034CC65
4J034CC67
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DC25
4J034DC34
4J034DC43
4J034DF02
4J034FA02
4J034FB01
4J034FC01
4J034FD01
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA08
4J034HB05
4J034HB08
4J034HC03
4J034HC09
4J034HC22
4J034HC35
4J034HC45
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA02
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC16
4J034KC17
4J034KC23
4J034KD02
4J034KD08
4J034KE02
4J034LA23
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB12
4J034QB14
4J034QB17
4J034RA05
4J034RA07
4J034RA11
4J034RA12
4J127AA01
4J127AA03
4J127BB031
4J127BB041
4J127BB091
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC061
4J127BC151
4J127BD441
4J127BD461
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BF141
4J127BF14X
4J127BF611
4J127BF61X
4J127BF621
4J127BF62X
4J127BF641
4J127BF64Y
4J127BG041
4J127BG04X
4J127BG091
4J127BG09X
4J127BG191
4J127BG19X
4J127BG271
4J127BG27Y
4J127BG281
4J127BG28Y
4J127BG311
4J127BG31X
4J127CA01
4J127FA08
(57)【要約】
【課題】優れた耐擦傷性、成形加工性、耐薬品性及び耐候性を兼ね備えた硬化膜が得られるウレタン(メタ)アクリレートを提供する。
【解決手段】下記(A)、(B)及び(C)を反応させて得られ、その硬化膜は引張弾性率が5~100MPaであり且つ破断伸度が100%以上である、ウレタン(メタ)アクリレート。
(A)イソソルビド、イソマンニド、及びイソイディッドから選択される少なくとも一つに由来する構造単位(a1)と、炭素数が4~6で1級水酸基である脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a2)とを有し、前記構造単位(a1)と前記構造単位(a2)の割合がモル比率で20:80~60:40であり、数平均分子量が400~1,200である、ポリカーボネートジオール
(B)炭素数が4~6の直鎖脂肪族ジイソシアネートを含むポリイソシアネート
(C)特定構造の(メタ)アクリル酸エステル
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を反応させて得られる、数平均分子量が3,000~30,000のウレタン(メタ)アクリレートであって、
活性エネルギー線により硬化した前記ウレタン(メタ)アクリレートの硬化膜は、引張弾性率が5~100MPaであり、破断伸度が100%以上である、ウレタン(メタ)アクリレート。
(A)成分:イソソルビド、イソマンニド、及びイソイディッドから選択される少なくとも一つに由来する構造単位(a1)と、炭素数が4~6であり且つ1級水酸基を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a2)とを有し、前記構造単位(a1)と前記構造単位(a2)の割合がモル比率で20:80~60:40であり、数平均分子量が400~1,200であるポリカーボネートジオール
(B)成分:(B1)炭素数が4~6である直鎖脂肪族ジイソシアネートを含むポリイソシアネート
(C)成分:下記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル
CH=C(R)-COO-R-OH (式1)
(式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数2~6の脂肪族炭化水素基である。)
【請求項2】
請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレートであって、
前記(B)成分は、(B2)炭素数が4~6である直鎖脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート型、ビウレット型、及びアロファネート型ポリイソシアネート、分岐鎖を有する脂肪族ポリイソシアネート、並びに環状脂肪族ジイソシアネートから選択される少なくとも一つを含み、
前記(B1)と前記(B2)の割合がイソシアネート基モル比率で50:50~95:5である、ウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のウレタン(メタ)アクリレートの製造方法であって、
前記(A)成分と前記(B)成分とを反応させてイソシアネート基末端を有するウレタンプレポリマーを得る工程と、
前記ウレタンプレポリマーと前記(C)成分とを反応させる工程を有する、ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のウレタン(メタ)アクリレートを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐擦傷性(擦傷自己修復性)、成形加工性、耐薬品性及び耐候性を有する硬化物を形成し得るウレタン(メタ)アクリレート及びその製造方法、並びにそれを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加飾樹脂成形品の生産の合理化を目的に、成形品の表面に加飾フィルムを積層することで加飾した加飾樹脂成形品が、車両内装部品などの各種用途で使用されている。このような加飾樹脂成形品の成形方法としては、インサート成形法や射出成形同時加飾法などがある。インサート成形法は、加飾フィルムを真空成形型により予め立体形状に成形しておき、成形した加飾フィルムを射出成形型に挿入し、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と加飾フィルムを一体化する。射出成形同時加飾法は、射出成形の際に金型内に挿入された加飾フィルムを、キャビティ内に射出注入された溶融樹脂と一体化させ、樹脂成形体表面に加飾を施す。
【0003】
加飾樹脂成形品には、表面の傷付きや変質による加飾部の視認性の低下を抑制する目的で表面保護層が設けられている。表面保護層の材料としては、成形加工時の加飾フィルムの変形に追従可能な延伸性(成形加工性)に優れた硬化膜を提供することができるウレタン(メタ)アクリレートからなる活性エネルギー線硬化性樹脂が広く用いられている。また、従来の表面保護層は、特定構造の成分の利用やウレタン(メタ)アクリレートの架橋密度の向上により、耐擦傷性、耐薬品性、及び耐候性等を向上している(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-036290号公報
【特許文献2】特開2019-104886号公報
【特許文献3】特開2022-089545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、耐擦傷性、成形加工性は示されているが、日焼け止めクリームなどの化粧料に対する耐薬品性が示されていない。特許文献2には、優れた耐薬品性が示されているが、耐擦傷性及び成形加工性は示されていない。特許文献3では、成形加工性と耐薬品性は示されているが、耐擦傷性が示されていない。
【0006】
そこで、本発明は、優れた耐擦傷性(擦傷自己修復性)、成形加工性、耐薬品性及び耐候性を有する硬化物を形成し得るウレタン(メタ)アクリレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる事情を鑑み鋭意研究を重ねた結果、特定構造のポリカーボネートジオールと特定構造のポリイソシアネート化合物を用いて得られたウレタン(メタ)アクリレートを硬化させた場合に、優れた耐擦傷性(擦傷自己修復性)、成形加工性、耐薬品性及び耐候性を兼ね備えた硬化膜が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明は以下の構成を有する。
下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を反応させて得られる、数平均分子量が3,000~30,000のウレタン(メタ)アクリレートであって、
活性エネルギー線により硬化した前記ウレタン(メタ)アクリレートの硬化膜は、引張弾性率が5~100MPaであり、破断伸度が100%以上である、ウレタン(メタ)アクリレート。
(A)成分:イソソルビド、イソマンニド、及びイソイディッドから選択される少なくとも一つに由来する構造単位(a1)と、炭素数が4~6であり且つ1級水酸基を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a2)とを有し、前記構造単位(a1)と前記構造単位(a2)の割合がモル比率で20:80~60:40であり、数平均分子量が400~1,200であるポリカーボネートジオール
(B)成分:(B1)炭素数が4~6である直鎖脂肪族ジイソシアネートを含むポリイソシアネート
(C)成分:下記式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル
CH=C(R)-COO-R-OH (式1)
(式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数2~6の脂肪族炭化水素基である。)
【0009】
なお、本明細書において「Y~Z」で示される数値範囲は、その上限及び下限を含む範囲を意味する。つまり、「Y~Z」は「Y以上、Z以下」を意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のウレタン(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線により硬化した際に、優れた耐擦傷性(擦傷自己修復性)、成形加工性、耐薬品性及び耐候性を兼ね備えた硬化膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。なお、本明細書において「ウレタン(メタ)アクリレート」の用語は「ウレタンアクリレート」および「ウレタンメタクリレート」の総称である。また同様に、「(メタ)アクリル酸エステル」の用語は「アクリル酸エステル」および「メタクリル酸エステル」の総称である。
【0012】
本発明のウレタン(メタ)アクリレートは、(A)ポリカーボネートジオール、(B)ポリイソシアネート、及び(C)(メタ)アクリル酸エステルを反応させて得られる。以下、各成分について説明する。
【0013】
<(A)成分:ポリカーボネートジオール>
(A)ポリカーボネートジオールは、イソソルビド、イソマンニド、及びイソイディッドとから選択される少なくとも一つに由来する構造単位(a1)と、炭素数が4~6であり且つ1級水酸基を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a2)を含む。
【0014】
構造単位(a1)の構造上の第1の特徴は、フラン環が2個縮環した自由度の小さな剛直な構造である点にある。このため、(A)ポリカーボネートジオールでは、構造単位(a1)の部分において剛直性が発現される。また、第2の特徴は、カーボネート基が、メチレン基などの自由回転可能な基を介することなく、直接縮環フラン環に結合しているため、この部分においても自由度が小さく、極めて剛直な構造となっている点にある。
【0015】
一方、構造単位(a2)は、構造単位(a1)の極めて剛直な構造を補い、(A)ポリカーボネートジオールに適度の柔軟性を付与する。
【0016】
(A)ポリカーボネートジオールに含まれる構造単位(a1)と構造単位(a2)の割合は、モル比率で20:80~60:40である。この範囲よりも構造単位(a1)の含有割合が多く、構造単位(a2)の含有割合が少ないと、(A)ポリカーボネートジオールの粘度が高くなり、ウレタン(メタ)アクリレートの耐擦傷性(擦傷自己修復性)が低下する場合がある。一方、この範囲よりも構造単位(a1)の含有割合が少なく、構造単位(a2)の含有割合が多いと、ウレタン(メタ)アクリレートの耐薬品性が十分ではない可能性がある。
【0017】
構造単位(a1)の由来となるジオールは、イソソルビド、及びその立体異性体であるイソマンニド、イソイディッドであり、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。中でもソルビトールの脱水反応で容易に得られ、工業的な量で市販もされているイソソルビドが好ましい。
【0018】
構造単位(a2)の由来となるジオールは、炭素数が4~6で、1級水酸基を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物である。例えば、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールである。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
(A)ポリカーボネートジオールは、上記の構造単位(a1)及び(a2)の由来となるジオールを用いて公知の方法により製造可能であり、例えば、ジオールと炭酸ジエステルとのエステル交換による製造法が挙げられる。その際に用いることができる炭酸ジエステルとしては、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、アルキレンカーボネートが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
ジアルキルカーボネートの例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、エチル-n-ブチルカーボネート、エチルイソブチルカーボネート等が挙げられ、好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートである。
【0021】
ジアリールカーボネートの例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボネート等が挙げられ、好ましくはジフェニルカーボネートである。
【0022】
アルキレンカーボネートの例としては、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,2-プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、1,3-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、1,3-ペンチレンカーボネート、1,4-ペンチレンカーボネート、1,5-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、2,4-ペンチレンカーボネート、ネオペンチルカーボネート等が挙げられ、好ましくはエチレンカーボネートである。
【0023】
また、(A)ポリカーボネートジオールとしては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のBENEBiOL HS0840B、BENEBiOL HS0830B、BENEBiOL HS0850H、BENEBiOL HS0840H等のイソソルビド系ポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0024】
(A)ポリカーボネートジオールの数平均分子量は400~1,200である。数平均分子量が400未満では、ウレタン(メタ)アクリレートの耐薬品性が十分に得られない場合がある。一方、数平均分子量が1,200を超えると粘度が上がり、ウレタン(メタ)アクリレートを製造する際の取扱い性を損なう可能性がある。なお、本明細書における数平均分子量は、別途記載が無い限り、後述するゲル浸透クロマトグラフィー法で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量を意味する。また、分子量とのみ記載がある場合も、数平均分子量を意味する。
【0025】
<(B)成分:ポリイソシアネート>
(B)ポリイソシアネートは、(B1)炭素数が4~6である直鎖脂肪族ジイソシアネートを含む。具体的には、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートである。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
(B1)直鎖脂肪族ジイソシアネートを使用することにより、ウレタン(メタ)アクリレートのウレタン結合基間で立体的障害を受けることなく水素結合が形成され、分子間の凝集力が上がり、架橋密度を上げることなく、耐薬品性を向上させることができる。
【0027】
(B)ポリイソシアネートは、(B1)直鎖脂肪族ジイソシアネートに加え、(B2)炭素数が4~6である直鎖脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート型、ビウレット型、及びアロファネート型ポリイソシアネート、分岐鎖を有する脂肪族ポリイソシアネート、並びに環状脂肪族ジイソシアネートから選択される少なくとも一つを含むことが好ましい。(B)ポリイソシアネートが(B1)及び(B2)を含む場合、(B1)と(B2)の割合は、イソシアネート基モル比率で50:50~95:5である。
【0028】
(B)ポリイソシアネートが(B2)を所定の割合で含有することによって、ウレタン(メタ)アクリレートの分子間水素結合に起因する強い凝集力を調整することができ、溶剤溶解性が向上するため、ウレタン(メタ)アクリレート溶液の貯蔵安定性を向上することができる。
【0029】
炭素数が4~6である直鎖脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート型、ビウレット型、あるいはアロファネート型ポリイソシアネートの例として、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのポリビウレット、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのポリアロファネートが挙げられる。
【0030】
分岐鎖を有する脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、リジンジイソシアネートの各種エステル、リジントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートが挙げられる。
【0031】
環状脂肪族ジイソシアネートとしては、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)、ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0032】
炭素数が4~6である直鎖脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート型、ビウレット型、又はアロファネート型ポリイソシアネートとしては市販品を用いてもよい。例えば、イソシアヌレート型ポリイソシアネートとしては、デュラネートTPA-100(旭化成株式会社製)、TKA-100(同)が挙げられる。ビウレット型ポリイソシアネートしては、デュラネート24A-100(旭化成株式会社製)が挙げられる。アロファネート型ポリイソシアネートとしては、デュラネートD101(旭化成株式会社製)、D201(同)、D-178NL(三井化学株式会社製)、C-2793(東ソー株式会社製)などが挙げられる。
【0033】
<(C)成分:(メタ)アクリル酸エステル>
(C)(メタ)アクリル酸エステルは、下記式1で表される化合物である。
CH=C(R)-COO-R-OH (式1)
(式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数2~6の脂肪族炭化水素基である。)
【0034】
(C)(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0035】
<他の原料化合物>
ウレタン(メタ)アクリレートを得る際には、本発明の効果が阻害されない限り、(A)~(C)成分に加えて他の原料化合物をさらに反応させてもよい。このような化合物としては、例えば、(A)ポリカーボネートジオール以外の数平均分子量400以上の高分子量ポリオール、数平均分子量400未満の低分子量ポリオール、及び鎖延長剤が挙げられる。
【0036】
高分子量ポリオールは、(A)ポリカーボネートジオールに該当しない構造を有し、数平均分子量が400以上であり、2個以上の水酸基を有する化合物である。高分子量ポリオールの数平均分子量の上限は、得られるウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量が30,000以下であれば特に限定されないが、4,000以下であることが好ましい。高分子量ポリオールは、1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0037】
高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルエステルジオール、(A)ポリカーボネートジオール以外のポリカーボネートジオール、ポリオレフィンポリオール、及びシリコンポリオール等が挙げられる。特に、得られる硬化膜の耐水性及び耐熱性を向上させる観点からポリカーボネートジオールが好ましい。
【0038】
(A)ポリカーボネートジオール以外のポリカーボネートジオールとしては、1,4-ブタンジオールと2-メチル-1,3-プロパンジオールと炭酸ジエステルとをエステル交換触媒を用いて反応させることによって製造されるポリカーボネートジオールが特に好ましい。
【0039】
低分子量ポリオールは、数平均分子量が400未満の2個以上の水酸基を有する化合物である。低分子量ポリオールは、1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,5-ペンタンジオール、2,3,5-トリメチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等の脂肪族ジオール;シクロプロパンジオール、シクロプロパンジメタノール、シクロプロパンジエタノール、シクロプロパンジプロパノール、シクロプロパンジブタノール、シクロペンタンジオール、シクロペンタンジメタノール、シクロペンタンジエタノール、シクロペンタンジプロパノール、シクロペンタンジブタノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、シクロヘキサンジプロパノール、シクロヘキサンジブタノール、シクロヘキセンジオール、シクロヘキセンジメタノール、シクロヘキセンジエタノール、シクロヘキセンジプロパノール、シクロヘキセンジブタノール、シクロヘキサジエンジオール、シクロヘキサジエンジメタノール、シクロヘキサジエンジエタノール、シクロヘキサジエンジプロパノール、シクロヘキサジエンジブタノール、水添ビスフェノールA、トリシクロデカンジオール、アダマンチルジオール等の脂環式ジオール;ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチルテレフタレート、ビスフェノール-A等の芳香族系ジオール;N-メチルジエタノールアミン等のジアルカノールアミン;ペンタエリスリトール;ソルビトール;マンニトール;グリセリン;及び、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0040】
低分子量ポリオールは、得られる硬化膜の耐候性の観点から、脂肪族ジオールや脂環式ジオールであることが好ましい。また、特に硬化物の機械的強度が求められる用途では、低分子量ポリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール等の水酸基間の炭素数が1~4の脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等の、2つの水酸基が脂環式構造を挟んで対称な位置に存在している脂環式ジオールであることが特に好ましい。
【0041】
低分子量ポリオールの数平均分子量は、硬化膜の伸度と弾性率とのバランスの観点から、50以上、250以下であることが好ましい。
【0042】
鎖延長剤は、イソシアネート基と反応する2基以上の活性水素を有する化合物である。鎖延長剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0043】
鎖延長剤としては数平均分子量400未満の低分子量ジアミン化合物等が挙げられ、例えば、2,4-もしくは2,6-トリレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4’-ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン;エチレンジアミン、1,2-プロピレンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2,2,4-もしくは2,4,4-トリメチルヘキサンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン等の脂肪族ジアミン;及び、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン(水添MDA)、イソプロピリデンシクロヘキシル-4,4’-ジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、トリシクロデカンジアミン等の脂環式ジアミンが挙げられる。
【0044】
<ウレタン(メタ)アクリレート>
本発明のウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量は3,000~30,000である。ウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量が3,000以上であると、得られる硬化膜の成形加工性が良好となる。また、ウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量が30,000以下であると、得られる硬化膜の耐薬品性が良好となる。そのため、数平均分子量が上記範囲内である場合には、成形加工性と耐薬品性とのバランスに優れる傾向となり好ましい。これは、成形加工性と耐薬品性が網目構造における架橋点間の距離に依存しており、この距離が長くなると柔軟で伸びやすい構造となり成形加工性に優れ、この距離が短くなると網目構造が強固な構造となり耐薬品性に優れるからであると推定される。
【0045】
ウレタン(メタ)アクリレートを活性エネルギー線で硬化させた膜は、後述する方法で測定した引張応力-ひずみ曲線図における引張弾性率が5~100MPaであり、好ましくは10~50MPaである。引張弾性率が5MPaより低い膜は、擦傷は比較的つきにくいが、その擦傷の自己修復力に乏しい。一方、引張弾性率が100MPaより大きい膜は、自己修復力はあるものの、修復できない程の傷がつきやすい。引張弾性率が5~100MPaの膜は、適度な弾力性があり擦傷が付きにくく、自己修復力も高いため、優れた耐擦傷性(擦傷自己修復性)を有する。
【0046】
ウレタン(メタ)アクリレートを活性エネルギー線で硬化させた膜は、後述の方法で測定した引張応力-ひずみ曲線図における破断伸度が100%以上である。本発明のウレタン(メタ)アクリレートを活性エネルギー線で硬化させた被膜を表面に有するプラスチックシート等をインサート成形等の加飾成形に利用する場合、該シートは成形加工時に大きく三次元伸長される。硬化膜の破断伸度が100%以上であることにより、成形加工時の三次元伸長によりクラック等の不具合が生じることを抑制できる。
【0047】
本発明のウレタン(メタ)アクリレートを活性エネルギー線で硬化させた膜は、優れた耐擦傷性(擦傷自己修復性)、成形加工性、耐薬品性及び耐候性を兼ね備える。
【0048】
<ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法>
次に、本発明のウレタン(メタ)アクリレートの製造方法について説明する。ウレタン(メタ)アクリレートは、(B)ポリイソシアネートに(A)ポリカーボネートジオールと(C)(メタ)アクリル酸エステルとを付加反応させることにより製造することができる。その他の原料化合物である高分子量ポリオール、低分子量ポリオール、及び鎖延長剤等を併用する場合は、(B)ポリイソシアネートに更にこれらの化合物も付加反応させることにより、ウレタン(メタ)アクリレートを製造することができる。
【0049】
これらの付加反応は、公知の何れの方法でも行うことができる。このような方法としては、例えば、以下の(1)~(3)の方法が挙げられる。
(1)(C)(メタ)アクリル酸エステル以外の原料化合物を用いて、イソシアネート基が過剰となるような条件下で(A)ポリカーボネートジオールと(B)ポリイソシアネートとを反応させてイソシアネート末端を有するウレタンプレポリマーを得た後、得られたウレタンプレポリマーと(C)(メタ)アクリル酸エステルとを反応させるプレポリマー法。
(2)全原料化合物を同時に一括添加して反応させるワンショット法。
(3)(B)ポリイソシアネートと(C)(メタ)アクリル酸エステルとを先に反応させ、分子中に(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基とを同時に有するウレタン(メタ)アクリレートプレポリマーを合成した後、得られたプレポリマーに、それら以外の原料化合物を反応させる方法。
【0050】
これらのうち、(1)の方法によれば、(A)ポリカーボネートジオールと(B)ポリイソシアネートとをウレタン化反応させてウレタンプレポリマーが得られ、ウレタンプレポリマーと(C)(メタ)アクリル酸エステルとをウレタン化反応させてウレタン(メタ)アクリレートが得られる。そのため、分子量の制御が容易であり、末端にアクリロイル基が導入可能であるため好ましい。
【0051】
本発明のウレタン(メタ)アクリレートにおける全イソシアネート基の量と水酸基及びアミノ基等のイソシアネート基と反応する全官能基の量は、通常、理論的に等モルである。本発明のウレタン(メタ)アクリレートを製造する際は、(C)(メタ)アクリル酸エステルの使用量を、(A)ポリカーボネートジオール、(C)(メタ)アクリル酸エステル、並びに必要に応じて用いられるその他の原料化合物である高分子量ポリオール、低分子量ポリオール、及び鎖延長剤等のイソシアネートと反応する官能基を含む化合物の総使用量に対して、通常10モル%以上、好ましくは15モル%以上、更に好ましくは25モル%以上、また、通常70モル%以下、好ましくは50モル%以下とする。この割合に応じて、得られるウレタン(メタ)アクリレートの分子量を制御することができる。(C)(メタ)アクリル酸エステルの割合が多いと、ウレタン(メタ)アクリレートの分子量は小さくなる傾向となり、割合が少ないと分子量は大きくなる傾向となる。
【0052】
ウレタン(メタ)アクリレートの製造時において、粘度の調整を目的に溶剤を用いてもよい。溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。溶剤としては、本発明の効果が阻害されない限り、公知の溶剤のいずれも使用することができる。好ましい溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、1,3-ジオキソラン等が挙げられる。溶剤は、通常、反応系内の固形分100質量部に対して300質量部未満で使用される。
【0053】
ウレタン(メタ)アクリレートの製造に際しては付加反応触媒を用いることができる。付加反応触媒としては、本発明の効果が得られる限り公知の触媒を使用することができ、例えばジブチルスズラウレート、ジブチルスズジオクトエート、ジオクチルスズジラウレート、及びジオクチルスズジオクトエート等の錫系触媒、トリス(2-エチルヘキサン酸)ビスマス(III)、ネオデカン酸ビスマス(III)等のビスマスカルボン酸系触媒、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等のジルコニウム錯体系触媒等が挙げられる。付加反応触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。付加反応触媒は、環境適応性及び触媒活性、保存安定性の観点から、トリス(2-エチルヘキサン酸)ビスマス(III)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートが好ましい。
【0054】
付加反応触媒は、生成するウレタン(メタ)アクリレート及びその原料化合物の総含有量に対して、上限が通常2000ppm以下、好ましくは500ppm以下であり、下限が通常10ppm以上、好ましくは30ppm以上で用いられる。
【0055】
また、ウレタン(メタ)アクリレートの製造時には、反応系に(C)(メタ)アクリル酸エステルを含むため、重合禁止剤を併用することが好ましい。重合禁止剤としては、本発明の効果が阻害されない限り、公知の任意の重合禁止剤が使用可能であり、例えばハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノエチルエーテル、ジブチルヒドロキシトルエン等のフェノール類、フェノチアジン、ジフェニルアミン等のアミン類、ジブチルジチオカルバミン酸銅等の銅塩、酢酸マンガン等のマンガン塩、ニトロ化合物、ニトロソ化合物等が挙げられる。重合禁止剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。重合禁止剤は、これらのうち、フェノール類が好ましい。
【0056】
重合禁止剤は、生成するウレタン(メタ)アクリレート及びその原料化合物の総含有量に対して、上限が通常3000ppm以下、好ましくは1000ppm以下であり、特に好ましくは500ppm以下であり、下限が通常50ppm以上、好ましくは100ppm以上で用いられる。
【0057】
ウレタン(メタ)アクリレートの製造時において、反応温度は通常20℃以上であり、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。反応温度が20℃以上であると、反応速度が高くなり、製造効率が向上する傾向にあるために好ましい。また、反応温度は通常120℃以下であり、100℃以下であることが好ましい。反応温度が120℃以下であると、アロハナート化反応等の副反応が起きにくくなるために好ましい。また、反応系に溶剤を含む場合には、反応温度はその溶剤の沸点以下であることが好ましく、(C)(メタ)アクリル酸エステルが入っている場合には(メタ)アクリロイル基の反応防止の観点から70℃以下であることが好ましい。反応時間は通常5~20時間程度である。
【0058】
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物>
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(以下、「組成物」ともいう)は本発明のウレタン(メタ)アクリレートを含む。また、本発明の効果が阻害されない限り、ウレタン(メタ)アクリレート以外の他の成分をさらに含有することができる。このような他の成分としては、例えば、活性エネルギー線反応性モノマー、活性エネルギー線硬化性オリゴマー、各種熱可塑性樹脂、無機微粒子、光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、シリコン系添加剤、フッ素系添加剤、帯電防止剤、防曇剤、シランカップリング剤、有機ビーズ、レオロジーコントロール剤、重合開始剤、着色剤及び溶剤等が挙げられる。
【0059】
活性エネルギー線反応性モノマーとしては、例えばビニルエーテル類、(メタ)アクリルアミド類、及び(メタ)アクリレート類が挙げられる。これら反応性モノマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。添加する目的に応じで単官能でも二官能以上の多官能でもよい。その含有量は、組成物の粘度調整及び得られる硬化物の硬度、伸度等の物性調整の観点から、組成物全量に対して、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることがさらに一層好ましい。
【0060】
活性エネルギー線硬化性オリゴマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。活性エネルギー線硬化性オリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、本発明のウレタン(メタ)アクリレート以外のウレタン(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート及びアクリル(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。その含有量は、得られる硬化物の硬度、伸度等の物性調整の観点から、組成物全量に対して、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることがさらに一層好ましい。
【0061】
各種熱可塑性樹脂は、組成物の硬化物の基材密着性や柔軟性等、所望の性能を向上させる目的で添加されるものであり、公知慣用の種々の樹脂を用いることができる。一例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、石油樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらを用いる場合には、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の合計に対し、本発明のウレタン(メタ)アクリレートが60質量%以上となることが好ましく、80質量%以上となることがより好ましく、90質量%以上となることが特に好ましい。
【0062】
無機微粒子は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化塗膜における硬度や屈折率等を調整する等の目的で添加されるものであり、公知慣用の種々の無機微粒子を用いることができる。一例としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、チタン酸バリウム、三酸化アンチモン等の微粒子が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。このうち特に汎用性が高いシリカ粒子は、フュームドシリカや、沈殿法シリカ、ゲルシリカ、ゾルゲルシリカ等と呼ばれる湿式シリカなど様々な種類があるが、いずれを用いてもよい。また、無機微粒子の表面はシランカップリング剤等で修飾されていてもよい。無機微粒子の粒子径は所望の塗膜性能等に応じて適宜調節されるが、動的光散乱法による測定値が10~250nmの範囲であることが好ましい。無機微粒子を用いる場合、その添加量は、組成物の溶剤以外の成分の合計に対し、0.1~60質量%の範囲であることが好ましい。
【0063】
光重合開始剤は、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を光重合にて硬化させる場合に用いるものであり、照射する活性エネルギー線の種類等により適切なものを選択して用いればよい。また、アミン化合物、尿素化合物、含硫黄化合物、含燐化合物、含塩素化合物、ニトリル化合物等の光増感剤と併用してもよい。光重合開始剤の具体例としては、例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等のアルキルフェノン系光重合開始剤、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、ベンゾフェノン化合物等の分子内水素引き抜き型光重合開始剤等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。光重合開始剤の添加量は、組成物の溶剤以外の成分の合計に対し0.05~15質量%の範囲であることが好ましく、0.1~10質量%の範囲であることがより好ましい。
【0064】
紫外線吸収剤は、例えば、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン誘導体、2-(2’-キサンテンカルボキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-o-ニトロベンジロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-キサンテンカルボキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン、2-o-ニトロベンジロキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0065】
光安定剤は、例えばビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-オクタノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ジフェニルメタン-p,p’-ジカーバメート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ベンゼン-1,3-ジスルホネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)フェニルホスファイト等のヒンダードアミン類があげられる。これらの剤は単独で使用しても2種類以上を併用してもよい。
【0066】
酸化防止剤は、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、有機硫黄系酸化防止剤、リン酸エステル系酸化防止剤等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0067】
シリコン系添加剤は、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロゲンポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、フッ素変性ジメチルポリシロキサン共重合体、アミノ変性ジメチルポリシロキサン共重合体、アルキル基やフェニル基を有するポリオルガノシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0068】
フッ素系添加剤は、例えば、フッ素含有化合物、水酸基含有フッ素系化合物、架橋性官能基含有フッ素系化合物から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0069】
フッ素含有化合物としては、市販品としては、例えば、DIC(株)製のメガファックシリーズ、AGCセイミケミカル(株)製のサーフロンシリーズ、住友スリーエム(株)製のFCシリーズ、(株)ネオス製のフタージェントシリーズ、北村化学産業(株)製のPFシリーズ等が挙げられる。
【0070】
帯電防止剤は、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド又はビス(フルオロスルホニル)イミドのピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、アンモニウム、又はリチウム塩が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0071】
シランカップリング剤は、例えば、[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]トリアルキルシラン、[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]ジアルキルアルコキシシラン、[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]アルキルジアルコキシシラン、[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]トリアルコキシシラン等の(メタ)アクリロイルオキシ系シランカップリング剤;トリアルキルビニルシラン、ジアルキルアルコキシビニルシラン、アルキルジアルコキシビニルシラン、トリアルコキシビニルシラン、トリアルキルアリルシラン、ジアルキルアルコキシアリルシラン、アルキルジアルコキシアリルシラン、トリアルコキシアリルシラン等のビニル系シランカップリング剤;スチリルトリアルキル、スチリルジアルキルアルコキシシラン、スチリルアルキルジアルコキシシラン、スチリルトリアルコキシシラン等のスチレン系シランカップリング剤;(グリシジルオキシアルキル)トリアルキルシラン、(グリシジルオキシアルキル)ジアルキルアルコキシシラン、(グリシジルオキシアルキル)アルキルジアルコキシシラン、(グリシジルオキシアルキル)トリアルコキシシラン、[(3,4-エポキシシクロヘキシル)アルキル]トリメトキシシラン、[(3,4-エポキシシクロヘキシル)アルキル]トリアルキルシラン、[(3,4-エポキシシクロヘキシル)アルキル]ジアルキルアルコキシシラン、[(3,4-エポキシシクロヘキシル)アルキル]アルキルジアルコキシシラン、[(3,4-エポキシシクロヘキシル)アルキル]トリアルコキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;(イソシアネートアルキル)トリアルキルシラン、(イソシアネートアルキル)ジアルキルアルコキシシラン、(イソシアネートアルキル)アルキルジアルコキシシラン、(イソシアネートアルキル)トリアルコキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0072】
有機ビーズは、例えば、ポリメタクリル酸メチルビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリスチレンビーズ、ポリアクリルスチレンビーズ、シリコーンビ-ズ、ガラスビーズ、アクリルビーズ、ベンゾグアナミン系樹脂ビーズ、メラミン系樹脂ビーズ、ポリオレフィン系樹脂ビーズ、ポリエステル系樹脂ビーズ、ポリアミド樹脂ビーズ、ポリイミド系樹脂ビーズ、ポリフッ化エチレン樹脂ビーズ、ポリエチレン樹脂ビーズ等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。これら有機ビーズの平均粒径は1~30μmの範囲であることが好ましい。
【0073】
溶剤は、組成物の塗工粘度の調節等の目的で添加されるものであり、その種類や添加量は、所望の性能に応じて適宜選択される。一般には、組成物の合計に対し10~90質量%の範囲で用いられる。溶剤の具体例としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の環状エーテル溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族溶剤;カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【実施例0074】
次に、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の説明において、重さを表す単位「部」は質量部を意味する。
【0075】
実施例及び表中の記号、略号は以下の通りである。
PCD-A:イソソルビドに由来する構造単位50モル%と、1,4-ブタンジオールに由来する構造単位50モル%から構成される、数平均分子量が700のポリカーボネートジオール
PCD-B:イソソルビドに由来する構造単位40モル%と、1,4-ブタンジオールに由来する構造単位60モル%から構成される、数平均分子量が800のポリカーボネートジオール
PCD-C:イソソルビドに由来する構造単位30モル%と、1,4-ブタンジオールに由来する構造単位70モル%から構成される、数平均分子量が800のポリカーボネートジオール
PCD-D:イソソルビドに由来する構造単位50モル%と、1,6-ヘキサンジオールに由来する構造単位50モル%から構成される、数平均分子量が800のポリカーボネートジオール
PCD-E:イソソルビドに由来する構造単位40モル%と、1,6-ヘキサンジオールに由来する構造単位60モル%から構成される、数平均分子量が900のポリカーボネートジオール
PCD-X:イソソルビドに由来する構造単位75モル%と、1,6-ヘキサンジオールに由来する構造単位25モル%から構成される、数平均分子量が700のポリカーボネートジオール
PCD-Y:イソソルビドに由来する構造単位10モル%と、1,6-ヘキサンジオールに由来する構造単位90モル%から構成される、数平均分子量が800のポリカーボネートジオール
PCD-Z:1,4-ブタンジオールに由来する構造単位70モル%と、1,6-ヘキサンジオールに由来する構造単位30モル%から構成される、数平均分子量が1000のポリカーボネートジオール
PDI:1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(分子量154)
HDI:1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(分子量168)
PDIT:1,5-ペンタメチレンジイソシアネートの環化三量体であるイソシアヌレート基を有するイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物(分子量462)
HDIT:ヘキサメチレンジイソシアネートの環化三量体であるイソシアヌレート基を有するイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物(分子量505)
TMHDI:2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート
HXDI:1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(分子量194)
IPDI:イソホロンジイソシアネート(分子量222)
HMDI:4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(分子量262)
HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート(分子量116)
HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート(分子量144)
ZC-150:ジルコニウムテトラアセチルアセトネート(マツモトファイン株式会社)
BHT:2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール
MEK:メチルエチルケトン
DOX:1,3-ジオキソラン
【0076】
〔ウレタン(メタ)アクリレートの製造と評価〕
[実施例1]
攪拌機、冷却管、滴下容器、乾燥空気流入管、温度計を備えたフラスコに、MEKを60部、PDIを51.9部、ZC-150を0.15部仕込み、内温を60℃に上げ、乾燥空気バブリング下、PCD-Aを239.5部とMEKを140部とを均一に混合して、1時間かけて滴下投入した後、2時間反応を継続した。次に、HEAを8.7部とBHTを0.15部仕込み、2時間反応させた後、反応系のイソシアネート濃度を定法により測定し、実質0質量%で反応が終了したことを確認し、ウレタン(メタ)アクリレート(U1)を製造した。その後、DOXを100部追加し、樹脂分50質量%のウレタン(メタ)アクリレート溶液を得た。下記方法で算出したウレタン(メタ)アクリレート(U1)の数平均分子量(Mn)は8,420であった。なお、ウレタン(メタ)アクリレート溶液は、本明細書における「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」に相当する。
【0077】
<数平均分子量の算出方法>
数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー株式会社 高速GPC装置 HLC-8420GPC EcoSEC Elite)を用いてウレタン(メタ)アクリレートを測定し、測定結果をポリスチレン換算することにより算出した。なお、本明細書における数平均分子量は、別途記載が無い限り、本方法により算出される。
【0078】
[実施例2~6]
実施例1と同様にして、表1に示す原料を用いて、樹脂分50質量%のウレタン(メタ)アクリレート(U2~6)の溶液を得た。また、算出した各ウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
各ウレタン(メタ)アクリレート(U1~6)を下記試験方法により評価した。その結果を下記表2に示す。
【0081】
<ウレタン(メタ)アクリレート溶液の濃度調整>
試験試料1~3を調製するため、各実施例で得られた樹脂分50質量%のウレタン(メタ)アクリレート溶液を試験試料の作製に適した濃度にDOXを用いて希釈した。
【0082】
<試験試料1の作製>
ガラス板に硬化膜厚が50μmとなる様にウレタン(メタ)アクリレート溶液を塗布した後、常温で2時間放置し、更に60℃で2時間加熱して溶剤を揮発させた。その後、窒素雰囲気中で、電子線加速器(岩崎電気社製エレクトロカーテンEC250/15/180L)175Kvで5Mrad電子線を照射し、ウレタン(メタ)アクリレートを硬化させた。そのガラス板からウレタン(メタ)アクリレートの硬化膜を剥がし、試験試料1を得た。
【0083】
<試験試料2の作製>
膜厚125μmのアクリルフィルムに硬化膜厚10μmとなる様にウレタン(メタ)アクリレート溶液を塗布した後、60℃で5分加熱して溶剤を揮発させた。その後、窒素雰囲気中で、電子線照射装置(岩崎電気株式会社製 エレクトロカーテン EC250/15/180L)を用いて175kVで 5Mrad電子線を照射し、ウレタン(メタ)アクリレートを硬化させ、試験試料2を得た。
【0084】
<試験試料3の作製>
厚さ475μmのABS樹脂シートに硬化膜厚10μmとなる様にウレタン(メタ)アクリレート溶液を塗布した後、60℃で5分加熱して溶剤を揮発させた。その後、窒素雰囲気中で、電子線照射装置(岩崎電気株式会社製 エレクトロカーテン EC250/15/180L)を用いて175kVで 5Mrad電子線を照射し、ウレタン(メタ)アクリレートを硬化させ、試験試料3を得た。
【0085】
<引張弾性率>
試験試料1から幅25mm×長さ60mmの試験片を切り取り、チャック間25mmに設定したオートグラフ試験機(株式会社島津製作所製 島津オートグラフ AG-IS MO形シリーズ)に試験片をセットし、温度23℃、相対湿度50%、引張速度50mm/分の条件で引張試験を行い、応力-ひずみ曲線のひずみ1%とひずみ2%の間の傾きから算出した値を引張弾性率とした。なお、本明細書における引張弾性率は、別途記載が無い限り、本方法により算出される。
【0086】
<耐擦傷性(擦傷自己修復性)>
試験試料3から50mm角の試験片を切り取り、1kgf/15.9cmの圧力にてスチールウール#0000を用い5往復した。試験後の塗膜表面を試験直後及び5分後に目視で観察し、以下の基準で評価した。
5:変化がない。
4:極僅かな傷が見られるが、実用上問題無い程度の変化。
3:若干の傷が見られる。
2:傷が見られる。
1:外観を損なう著しい変化が見られる。
【0087】
<破断伸度(成形加工性)>
試験試料2から25mm×60mmに試験片を切り取り、チャック間を25mmにセッティングしたオートグラフ試験機(株式会社島津製作所製 島津オートグラフ AG-IS MO形シリーズ)に試験片をセットし、恒温測定層を150℃に設定、昇温し、試験片温度が110℃に達すると同時に1000mm/分の引張速度にて測定を開始し、応力-ひずみ曲線より、試験片(硬化膜)の破断伸度を読み取った。なお、本明細書書における破断伸度は、別途記載が無い限り、本方法により測定される。
【0088】
<耐サンオイル性(耐薬品性)>
試験試料3の試験片に日焼け止め液(ニベア花王株式会社製 ニベアSUN高密着ケア UVミルキィジェル SPF50+)を0.1g滴下した。80℃の環境下に保持し、4時間後に試験片を取り出した。脱脂綿にて日焼け止め液の拭き取りを行い目視にて観察し、以下の基準で評価した。
5:変化がない。
4:極僅かな変化が見られるが、実用上問題無い程度の変化。
3:若干の変化が見られる。
2:変化が見られる。
1:外観を損なう著しい変化が見られる。
【0089】
<アルコールラビング試験(耐薬品性)>
試験試料3を30mm×150mmのサイズに切り取り、中央付近にカッターナイフでクロスカットの切り込みを施した。切り取った試験片を摩擦堅牢度試験機(株式会社大栄科学精器製作所製 RT-200 H-3150)にセットした。ガーゼにエタノール(純度99%)を染み込ませ、200g荷重、30回/分の速度にて試験を行った。クロスカット部分に剥がれが見られた回数を目視で確認し、以下の基準で評価した。
〇:50回以上
△:49~30回
×:29回以下
【0090】
<アルコール滴下試験(耐薬品性)>
試験試料3から50mm角の試験片を切り取り、その試験片にエタノール(純度99%)を0.1g滴下し、室温にて10分保持し、十分に乾いた事を確認してから乾いたガーゼで表面を軽く拭き取った。その後、目視にて塗膜表面を観察し、以下の基準で評価した。
〇:変化がない。
×:白化等の何らかの変化が見られる。
【0091】
<耐候性>
試験試料2から50mm角の試験片を切り取り、切り取った試験片を耐候試験機(岩崎電気株式会社製 アイスーパーUVテスター SUV-W161)にセットした。20時間照射(照射強度120mW/cm、ブラックパネル温度63℃、相対湿度40%)と4時間結露を1サイクルとして、100時間後の試験片表面の外観を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
〇:変化がない。
×:白化やクラックなどの劣化が見られる。
【0092】
<溶液貯蔵安定性>
ウレタン(メタ)アクリレート溶液(樹脂分50%)に、MEK/DOX=2/1混合溶剤を加え、樹脂分を40%に調整した。ウレタン(メタ)アクリレート溶液(樹脂分40%)を、遮光性ガラス瓶に容積の1/4の空気層を残すよう3/4まで入れ、蓋で密閉し、25℃恒温槽で90日保管した。その後、ウレタン(メタ)アクリレート溶液(樹脂分40%)を以下の基準で評価した。
〇:変化がない。
△:結晶、ゲル状物の生成が見られるが、40℃に加熱し攪拌することで、試験前の状態に戻る。
×:結晶、ゲル状物の生成或いは粘度の上昇が見られ、40℃に加熱し攪拌しても、試験前の状態に戻らない。
【0093】
【表2】

[実施例7~12]
実施例1と同様にして、表3に示す原料を用いて、樹脂分50質量%のウレタン(メタ)アクリレート(U7~12)の溶液を得た。各ウレタン(メタ)アクリレートを上記試験方法により評価した結果を表4に示す。
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
[比較1~6]
実施例1と同様にして、表5に示す原料を用いて、樹脂分50質量%のウレタン(メタ)アクリレート(H1~6)の溶液を得た。各ウレタン(メタ)アクリレートを上記試験方法により評価した結果を表6に示す。
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
実施例1~6のウレタン(メタ)アクリレートは、優れた耐擦傷性(耐擦傷自己修復性)、成形加工性、耐薬品性(耐サンオイル性、耐アルコール性)、及び耐候性を兼ね備えた硬化膜が得られた。実施例7~12のウレタン(メタ)アクリレートでは、更に溶液貯蔵安定性を向上できた。比較例1及び2のウレタン(メタ)アクリレートは、(B1)成分を含有しないため、耐薬品性又は耐擦傷性が劣っていた。比較例3~5のウレタン(メタ)アクリレートは、(A)成分を含有しないため、耐擦傷性、成形加工性、及び耐薬品性の少なくとも一つが劣っていた。比較例6のウレタン(メタ)アクリレートは、硬化膜の引張弾性率が所定の範囲内でないため、耐擦傷性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート、及びそれを構成原料として用いた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、各種フィルム及びシートの表面保護コーティング剤として好適である。この硬化膜を表面に有するフィルム及びシートは、塗装代替用フィルム及びシートとして用いることができ、例えば内装・外装用の建装材や自動車、家電等の各種部材等に有効に適用することが可能である。