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特開2024-90319土壌改良用浄水発生土の選別方法、土壌改良材の製造方法、混合土の製造方法及び混合土の施工方法、並びに土壌改良用浄水発生土の選別装置、土壌改良材の製造装置及び混合土の製造装置
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  • 特開-土壌改良用浄水発生土の選別方法、土壌改良材の製造方法、混合土の製造方法及び混合土の施工方法、並びに土壌改良用浄水発生土の選別装置、土壌改良材の製造装置及び混合土の製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090319
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】土壌改良用浄水発生土の選別方法、土壌改良材の製造方法、混合土の製造方法及び混合土の施工方法、並びに土壌改良用浄水発生土の選別装置、土壌改良材の製造装置及び混合土の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/02 20060101AFI20240627BHJP
   C09K 17/02 20060101ALI20240627BHJP
   C02F 11/121 20190101ALI20240627BHJP
   C02F 11/131 20190101ALI20240627BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B09C1/02
C09K17/02 H
C02F11/121 ZAB
C02F11/131
E02D3/12 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206140
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】593064180
【氏名又は名称】株式会社ハイクレー
(74)【代理人】
【識別番号】100128716
【弁理士】
【氏名又は名称】尼崎 浩史
(72)【発明者】
【氏名】大川 称三
【テーマコード(参考)】
2D040
4D004
4D059
4H026
【Fターム(参考)】
2D040AA08
2D040AB11
4D004AA02
4D004AA41
4D004AB01
4D004BA10
4D004CA07
4D004CA12
4D004DA09
4D059AA03
4D059BD18
4D059BE16
4D059BE26
4D059BF15
4D059CC04
4D059EA20
4D059EB20
4H026AA15
4H026AB04
(57)【要約】
【課題】耐水性に優れた土壌改良材を安定的に製造することが可能な浄水発生土の選別方法及び浄水発生土の選別装置を提供する。
【解決手段】本発明は、浄水場の汚泥を脱水及び/又は乾燥した浄水発生土を含む土壌改良材の製造方法であって、ロットの異なる複数の前記浄水発生土の液性限界値を測定する測定工程と、前記液性限界値が170%以上の浄水発生土を選別する選別工程と、を含むことを特徴とする土壌改良材の製造方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄水場の汚泥を脱水及び/又は乾燥した土壌改良用浄水発生土の選別方法であって、
ロットの異なる複数の前記浄水発生土の液性限界値を測定する測定工程と、
前記液性限界値が170%以上の浄水発生土を選別する選別工程と、を含むことを特徴とする土壌改良用浄水発生土の選別方法。
【請求項2】
前記液性限界値が200%以上350%以下であることを特徴とする請求項1に記載の土壌改良用浄水発生土の選別方法。
【請求項3】
塑性限界値が90%以上の浄水発生土を選別する第2選別工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の土壌改良用浄水発生土の選別方法。
【請求項4】
請求項1に記載の選別方法で選別された浄水発生土に対して、複数の粒子が団粒化した平均粒径が10mm以下の団粒土からなり、かつ含水比が20~150%の範囲内となるように粒度及び含水比を調整する調整工程を含むことを特徴とする土壌改良材の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法で製造された土壌改良材を、一般土壌に対して容積比で10~50体積%となるように混合する混合工程を含むことを特徴とする混合土の製造方法。
【請求項6】
前記混合土の液性限界値と間隙率とが、下記式(1)の関係にあることを特徴とする請求項5に記載の混合土の製造方法。
液性限界値 > 間隙率 (1)
【請求項7】
前記混合土の塑性限界値と自然含水比とが、下記式(2)の関係にあることを特徴とする請求項5に記載の混合土の製造方法。
塑性限界値 > 自然含水比 (2)
【請求項8】
風速8m/sで風洞試験機の吹き出し口の上方から前記混合土200gを1分で落下させて埃試験を行い、吹き出し口の下方の0.4mの範囲内に落下した混合土を残留重量、落下前の混合土を初期重量として、下記式により算出した残留率が50%以上であることを特徴とする請求項5に記載の混合土の製造方法。
残留率=残留重量÷初期重量×100
【請求項9】
請求項5に記載の混合土を舗装面に舗装する舗装工程を備えることを特徴とする混合土の施工方法。
【請求項10】
請求項5に記載の混合土に植物を植栽する植栽工程を備えることを特徴とする混合土の施工方法。
【請求項11】
浄水場の汚泥を脱水及び/又は乾燥した土壌改良用浄水発生土の選別装置であって、
ロットの異なる複数の前記浄水発生土の液性限界値を測定する測定手段と、
前記液性限界値が170%以上の浄水発生土を選別する選別手段と、を備えることを特徴とする土壌改良用浄水発生土の選別装置。
【請求項12】
請求項11に記載の選別装置で選別された浄水発生土に対して、複数の粒子が団粒化した平均粒径が10mm以下の団粒土からなり、かつ含水比が20~150%の範囲内となるように粒度及び含水比を調整する調整手段を備えることを特徴とする土壌改良材の製造装置。
【請求項13】
請求項12に記載の製造装置で製造された土壌改良材を、一般土壌に対して容積比で10~50体積%となるように混合する混合手段を備えることを特徴とする混合土の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、団粒が崩壊しにくく安定した耐水性を有する混合土を製造する用途において、高品質な浄水発生土を安定的に選別するための土壌改良用浄水発生土の選別方法、土壌改良材の製造方法、混合土の製造方法及び混合土の施工方法、並びに土壌改良用浄水発生土の選別装置、土壌改良材の製造装置及び混合土の製造装置に関する。
【0002】
水道局、浄水場で浄水過程において発生した浄水発生土を破砕し、乾燥や粒度調整、副資材を混合するなどして製造した土壌改良材が知られている。このような土壌改良材は、学校の校庭や公園、スポーツ施設などのクレイ舗装のぬかるみや土埃を抑える目的で使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリマー添加ペレット化濃縮法又はポリ塩化アルミニユーム処理法のいずれかの処理が施された上水汚泥を細砂以下の粒状に粉砕したのち、全体における容積比が20~80%となるように、シルト質及び/又は粘土質を有する舗装用土材料を混合して撹拌し、この混合物を舗装用基礎上にて整地、転圧して舗装面を形成する舗装方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、浄水場から得られる上水汚泥を原料とし、主に粒径0.425mm~4.75mmの粒度範囲のバインダー骨材粒子である粗粒部分及びそれ以下の細粒部分からなる土質改良材が開示されている。この土壌改良材の製造方法では、まず、上水汚泥を、その塑性限界付近の含水比に調整し、次いで粒径0.425mm~4.75mmの粒度範囲のバインダー骨材粒子が50重量%以上含有されるよう粒状化する。その後、上水汚泥中の含水比が最低含水比限界を下回らない範囲で乾燥処理される。
【0005】
さらに、特許文献3には、耐水性をもつ団粒構造を土壌に付与するために用いられる団粒構造安定化材を、(1)上水汚泥を脱水・乾燥して得られる脱水ケーキを解砕する工程、(2)工程(1)で得られた脱水ケーキ解砕物を、団粒化篩選別機に投入し、団粒化しながら篩い選別することにより、団粒構造を有し、粒径が所定値以下の安定化材原料を得る工程、(3)工程(2)で得られた安定化材原料を、粒径が所定値以下の多孔性材料と混合し、混練機で混練してさらに団粒化する工程、により製造する方法が記載されている。これにより、耐水性のある団粒構造が得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平01-041762号公報(請求項1等)
【特許文献2】特許第3547384号公報(要約、請求項1等)
【特許文献3】特開2002-69444号公報(要約、請求項1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの技術では、浄水発生土を一般土に適量混合したことにより、一般土の耐水性を向上させ、ぬかるみや埃を抑えることが可能となる。一方で、浄水発生土には、土壌改良材の原料として適性を示さず、製造された土壌改良材の耐水性が低くなるものがあることが確認された。ここで、「耐水性」とは、浄水発生土と一般土とを混合して形成された団粒(土塊)が水中で崩壊しにくい性質を示す。
【0008】
このため、土壌改良材としての用途に対して不適正な浄水発生土の使用を極力少なくし、浄水発生土を原料とする土壌改良製品への市場の信頼度を向上させるとともに、浄水発生土のリサイクル利用が促進させることが望まれている。
【0009】
また、特許文献3のように機械によって理想的な団粒構造を作ることができたとしても、降雨時や積雪時においても、土壌がぬかるみや崩壊することなく、安定した団粒構造を維持するには、団粒物自体が高い耐水性を示す必要がある。団粒物は、土壌改良材と土壌を混合した混合土であるが、その耐水性は、土壌改良材自体の耐水性、さらには土壌改良材の原料である浄水発生土(汚泥)の耐水性と、被改良土に対する耐水効果の発現能力に依存する。浄水発生土の耐水効果は、これに添加された凝集剤の残存効果によるもので、すべての浄水発生土が高い耐水性を有しているわけではない。このため、耐水性を有する土壌改良材や、これを土壌に混合して得られる耐水性の高い混合土の耐水性を安定的に製造するための技術が求められていた。
【0010】
本発明の目的は、耐水性に優れた土壌改良材を安定的に製造することが可能な浄水発生土の選別方法及び浄水発生土の選別装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、このような浄水発生土を使用した耐水性の高い土壌改良材の製造方法と製造装置を提供することにある。さらに、本発明のさらなる他の目的は、耐水性に優れた混合土の製造方法及び混合土の製造装置並びに混合土の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、液性限界値が所定の数値以上の浄水発生土を原料として土壌改良材に使用することで、土壌改良された混合土の耐水性が向上することを見出した。そして、浄水発生土の液性限界値を事前に測定して選別することで、耐水性に優れた土壌改良材を得ることがわかり、本発明を完成させた。本発明は以下のとおり。
【0012】
〔1〕浄水場の汚泥を脱水及び/又は乾燥した土壌改良用浄水発生土の選別方法であって、ロットの異なる複数の前記浄水発生土の液性限界値を測定する測定工程と、前記液性限界値が170%以上の浄水発生土を選別する選別工程と、を含むことを特徴とする土壌改良用浄水発生土の選別方法。
【0013】
このように、ロットの異なる複数の前記浄水発生土の液性限界値を測定し、液性限界値が170%以上の浄水発生土を選別することで、この浄水発生土を原料とする土壌改良材の耐水性が高くなる。
【0014】
〔2〕前記液性限界値が200%以上350%以下であることを特徴とする上記〔1〕に記載の土壌改良用浄水発生土の選別方法。
【0015】
このように、液性限界値が200%以上350%以下の浄水発生土を選別することで、この選別した浄水発生土を原料とする土壌改良材の耐水性がさらに高くなる。
【0016】
〔3〕塑性限界値が90%以上の浄水発生土を選別する第2選別工程を更に含むことを特徴とする上記〔1〕に記載の土壌改良用浄水発生土の選別方法。
【0017】
一般土に比較して、液性限界値の高い土壌は、塑性限界値も総じて高い値を示す。170%以上の液性限界値を示す浄水発生土において、更に塑性限界値が90%以上の浄水発生土を選別することで、得られる混合土の塑性指数が大きくなり、保水性・保肥性に富み、埃になりにくい混合土とすることができる。
【0018】
〔4〕上記〔1〕に記載の選別方法で選別された浄水発生土に対して、複数の粒子が団粒化した平均粒径が10mm以下の団粒土からなり、かつ含水比が20~150%の範囲内となるように粒度及び含水比を調整する調整工程を含むことを特徴とする土壌改良材の製造方法。
【0019】
このように、上記で選別された浄水発生土を原料とし、平均粒径と含水比を調整することで、耐水性の高い土壌改良材を得ることができる。
【0020】
〔5〕上記〔4〕に記載の製造方法で製造された土壌改良材を、一般土壌に対して容積比で10~50体積%となるように混合する混合工程を含むことを特徴とする混合土の製造方法。
【0021】
このように、上記で製造された土壌改良材に一般土壌を混合することで、耐水性の高い混合土を得ることができる。
【0022】
〔6〕前記混合土の液性限界値と間隙率とが、下記式(1)の関係にあることを特徴とする上記〔5〕に記載の混合土の製造方法。
液性限界値 > 間隙率 (1)
【0023】
このように、混合土の液性限界値が間隙率よりも高いことで、耐水性が高い混合土となる。
【0024】
〔7〕前記混合土の塑性限界値と一般土壌の塑性限界値とが、下記式(2)の関係にあることを特徴とする上記〔5〕に記載の混合土の製造方法。
混合土の塑性指数 > 一般土壌の塑性指数 (2)
【0025】
真砂土などの一般土壌に土壌改良材を添加することにより、混合土の液性限界値を上昇させるとともに、塑性限界値、塑性指数も上昇させる。塑性限界値は塑性体から半固体に混合土が遷移するときの境界の含水比であり、塑性指数とは、混合土の液性限界値から塑性限界値までの幅を示し、土壌としての塑性を示せる理想的な水分量の範囲を表す指標となる。塑性指数が大きい土壌ほど保水性、保肥性に富み、埃になりにくいことから、塑性指数が大きいことが好ましい。
【0026】
〔8〕風速8m/sで風洞試験機の吹き出し口の上方から前記混合土200gを1分で落下させて埃試験を行い、吹き出し口の下方の0.4mの範囲内に落下した混合土を残留重量、落下前の混合土を初期重量として、下記式により算出した残留率が50%以上であることを特徴とする請求項5に記載の混合土の製造方法。
残留率=残留重量÷初期重量×100
【0027】
このように、本発明の土壌改良材は、混合土の液性限界値、塑性限界値、塑性指数を上昇させるため、埃が生じにくい混合土を得ることができる。
【0028】
〔9〕上記〔5〕に記載の混合土を舗装面に舗装する舗装工程を備えることを特徴とする混合土の施工方法。
【0029】
このように、耐水性の高い混合土を舗装面に舗装することで、水による舗装の破壊剥がれが生じにくく、長寿命化を図ることができる。
【0030】
〔10〕上記〔5〕に記載の混合土に植物を植栽する植栽工程を備えることを特徴とする混合土の施工方法。
【0031】
このように、耐水性の高い混合土に植物を植栽することで、植物を安定的に育成することができる。
【0032】
〔11〕浄水場の汚泥を脱水及び/又は乾燥した土壌改良用浄水発生土の選別装置であって、ロットの異なる複数の前記浄水発生土の液性限界値を測定する測定手段と、前記液性限界値が170%以上の浄水発生土を選別する選別手段と、を備えることを特徴とする土壌改良用浄水発生土の選別装置。
【0033】
このように、ロットの異なる複数の前記浄水発生土の液性限界値を測定し、液性限界値が170%以上の浄水発生土を選別することで、この浄水発生土を原料とする土壌改良材の耐水性が高くなる。
【0034】
〔12〕上記〔11〕に記載の選別装置で選別された浄水発生土に対して、複数の粒子が団粒化した平均粒径が10mm以下の団粒土からなり、かつ含水比が20~150%の範囲内となるように粒度及び含水比を調整する調整手段を備えることを特徴とする土壌改良材の製造装置。
【0035】
このように、上記で選別された浄水発生土を原料とし、平均粒径と含水比を調整することで、耐水性の高い土壌改良材を得ることができる。
【0036】
〔13〕上記〔12〕に記載の製造装置で製造された土壌改良材を、一般土壌に対して容積比で10~50体積%となるように混合する混合手段を備えることを特徴とする混合土の製造装置。
【0037】
このように、上記で製造された土壌改良材に一般土壌を混合することで、耐水性の高い混合土を得ることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、耐水性に優れた土壌改良材を安定的に製造することが可能な浄水発生土の選別方法及び浄水発生土の選別装置を提供することが可能となる。また、本発明によれば、このような浄水発生土を使用した耐水性の高い土壌改良材の製造方法と製造装置を提供することが可能となる。さらに、本発明によれば、耐水性に優れた混合土の製造方法及び混合土の製造装置並びに混合土の施工方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】実施例における浄水発生土と混合土の試験用の容器を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の土壌改良用浄水発生土の選別方法、土壌改良材の製造方法、混合土の製造方法、土壌改良用浄水発生土の選別装置、土壌改良材の製造装置、混合土の製造装置について詳細に説明する。
【0041】
1.土壌改良用浄水発生土の選別方法・選別装置
本発明の選別方法は、浄水場の汚泥を脱水及び/又は乾燥した土壌改良用浄水発生土の選別方法であって、ロットの異なる複数の浄水発生土の液性限界値を測定する測定工程と、この液性限界値が170%以上の浄水発生土を選別する選別工程と、を含む。
【0042】
ここで、浄水場とは、河川などの水を浄化して上水道にするための浄水場を意味する。また、浄水発生土とは、浄水場内で水道水を製造する過程で、原水中にある懸濁物質(主に粘土の微細粒子)を効率よく凝集して除去するために、凝集剤等を使用して急速濾過、沈降させた懸濁物質(汚泥)を濃縮し、機械脱水又は天日乾燥により減量化したものである。全国の浄水場では、浄化の過程で凝集剤が使用されている。取水する河川やダム等の水の濁度や温度、水質などの条件によって、凝集剤の添加量を調整し、浄水工程における適性添加量を維持している。
【0043】
凝集剤によって凝集沈降させた濃縮汚泥は、排水処理工程により脱水工程を経て浄水発生土となる。このような浄水発生土は浄水場から日々発生し、産業廃棄物として処分されている。このように、本発明の土壌改良用の原料である浄水発生土は、天然の河川などに含まれる汚泥が原料であり、後述するように凝集剤などは含まれるが、人間が飲料できる上水を製造する工程で生じるものなので、有害な薬剤などは含まれない。
【0044】
次に、浄水場における浄水処理について説明する。浄水場では、河川などから取水し、凝集剤や必要に応じてこれに凝集助剤を添加して固液分離を行い、上水を殺菌して上水道として使用する。固液分離された汚泥(ヘドロ)は凝集し、後述する乾燥処理を行って浄水発生土とする。なお、凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)などのアルミニウム塩を挙げることができる。これらのうち凝集剤としては主にPACが使用されている。なお、PACは弱酸性の水に対して使いやすい性質を有しているが、河川の水質はアルカリ側に寄っているため、河川に対してはPACの凝集効果が低下しやすい。このため、高塩基PACなども開発されている。また、凝集助剤としては、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーなどを挙げることができる。
【0045】
浄水場の汚泥とは、浄水場において、河川などの水を浄化して上水道とする際に発生する残渣であり、河川等に含まれる有機物や微生物などが含まれる。浄水場の汚泥は、約80質量%が粘土であり、残り20質量%程度が枯葉や藻などの有機物である。汚泥の主成分はマイナス電荷を帯びた粘土であり、ポリ塩化アルミニウムはアルカリ分と反応してプラス電荷の水酸化アルミニウムとなる。この水酸化アルミニウムのプラス電荷と粘土のマイナス電荷とが中和反応することで、粘土を凝集・沈降させてフロックを形成させる。凝集助剤のポリマーは、フロックを吸着して粗大化させる。
【0046】
このような凝集剤を含む浄水発生土の土塊は、一般的な土壌と比べて、電荷による粒子間の結びつきが強く、常気圧下において水浸状態であっても土粒子の間隙以上に含水(吸水)しない性質を有する。また、凝集剤による残存効果を一定以上示す浄水発生土を選別し、土壌改良材として一般土譲に適量混合して混合土とすることにより、混合土の耐水性を向上させ、ぬかるみや埃を抑制する効果を示す。
【0047】
汚泥の乾燥方法は、機械乾燥と天日乾燥の2つに大別される。機械乾燥は、アコーデオン状のろ布に汚泥を入れて左右から圧縮することで脱水する方法である。機械乾燥では、後述する天日乾燥と比較して、乾燥汚泥中に雑草の種子など雑物が入りにくい。機械乾燥した汚泥は乾燥ケーキとなり、これは園芸用土などで有効利用されている。
【0048】
一方、天日乾燥は、汚泥をプール(天日乾燥床)に収容して天日で乾燥する方法である。天日乾燥では、水を96質量%程度含む状態から50質量%くらいまで乾燥させるのに、4~6カ月程度かかる。また、天日乾燥では、解放プールで乾燥するため、雑草の種子など夾雑物が汚泥に入りやすい。このように、天日乾燥した汚泥は、夾雑物が含まれるなどの理由から、機械乾燥と比べて十分に有効利用できていない。このため、浄水処理施設のコストや管理運営などの観点から、天日乾燥の汚泥を有効活用したいというニーズがある。本発明では、機械乾燥であっても天日乾燥であってもいずれの浄水発生土も土壌改良材として好適に使用することができる。
【0049】
浄水発生土に含まれる成分及び組成としては、取水する河川や浄水場の処理設備等によって若干異なるが、一般的には以下の範囲内のものが好ましい(左側のカッコ内は分析法)。
<成分及び組成>
・ケイ酸(SiO):30~70質量%(肥料分析法4.4.1 塩酸法)
・酸化アルミニウム(Al):1.0~10.0質量%(土壌養分分析法8.4.2に準拠)
・酸化鉄(III)(Fe):1.0~10.0質量%(肥料分析法4.13.1)
・五酸化リン(P):0.05~2.0質量%(肥料分析法4.2.1)
・酸化カルシウム(CaO):0.05~2.0質量%(肥料分析法4.5.1)
・酸化マグネシウム(MgO);0.05~2.0質量%(肥料分析法4.6.1)
・酸化カリウム(KO):0.01~2.0質量%(肥料分析法4.3.1)
【0050】
また、浄水発生土としては、以下の範囲内の特性を持つものが好ましい。
・強熱減量:5~30%・dry(肥料等試験法3.2)
・塩基交換容量(CEC):5~30meq/100g・dry(土壌環境分析法V.6.A)
・密度:1~4g/cm(JIS A1202(2009)に準拠)
・含水比:20~150%(JIS A1202(2009)に準拠)
・飽和透水係数:0.5×10-2~5.0×10-3cm/s(土壌環境分析法II.10 定水位法)
・有効水分保持量:20~600L/m(土壌環境分析法II.9 加圧板法及び遠心法)
・最大粒径(団粒土):1~15mm
・平均粒径(団粒土):0.1~10mm
【0051】
本発明では、浄水発生土の耐水性、防塵性を向上させる効果発現を正確に確認し、土壌改良材の原料に適した発生土を選別して土壌改良材の製品化を行う。これにより、浄水発生土を原料とした土壌改良材やこれを使用した混合土の高い耐水性を維持する。このため、このような土壌改良材を用いて失敗のない良質な工事をコンスタントに実行することができ、市場の信頼性を高め、浄水発生土を有効利用したいという需要を恒久的に伸ばすことができる。
【0052】
本発明では、ロットの異なる複数の浄水発生土の液性限界値を測定する測定工程を備えている。ここで、「ロットの異なる浄水発生土」とは、異なる浄水場由来の浄水発生土であるか、同じ浄水場であっても異なる時期に製造された浄水発生土であることを意味する。
【0053】
一般に土は、固体→半固体→塑性状→液状の順に状態変化し、同じ体積の土では右に行くほど水分が多く固体が少なくなる。土は、固体ではかちかちの状態、半固体ではぼろぼろと崩れる状態、塑性状ではねばねばした状態、液状ではどろどろした状態となっている。本発明において「液性限界」とは、土(この場合は浄水発生土)が塑性状から液状に変化するときの境界の含水比を意味する。含水比は物質に含まれる水分の割合を示したものであり、水の重量をWw、固体の重量をWsとしたときに、含水比wは以下の式で表すことができる。
含水比w(%)=Ww/Ws×100
【0054】
「液性限界値」は、JIS A 1205:2020に準拠した液性限界試験によって測定することが可能である。具体的には、黄銅皿、落下装置及び硬質ゴム台から構成される液性限界測定器とその他の器具を使用し、試料(この場合は浄水発生土)に対して以下の手順(JIS A 1205:2020より引用)で測定を行う。
a)黄銅皿と硬質ゴム台との間にゲージを差し込み、黄銅皿の落下高さが(10±0.1)mmになるように落下装置を調整する。
b)へらを用いて試料を黄銅皿に最大厚さが約10mmになるように入れ、形を整える。溝切りを黄銅皿の底に直角に保ちながらカムの当たりの中心線を通る黄銅皿の直径に沿って溝を切り、試料を二つに分ける。
c)黄銅皿を落下装置に取り付け、落下装置によって1秒間に2回の割合で黄銅皿を持ち上げて落とすことを繰り返し、溝の底部の二つに分けた試料が長さ約15mm合流するまで続ける。
d)溝が合流したときの落下回数を記録し、JIS A 1203に規定されている方法に従い、合流した付近の試料の含水比を求める。
e)試料に蒸留水を加えるか、又は水分を蒸発させた後、試料をよく練り合わせてb)~d)の操作を4回以上繰り返す。その際、落下回数10~25回の試料を2個、25~35回の試料を2個が得られるようにする。
f)液性限界試験は、対象とする試料についてe)の作業を最低1回行う。
【0055】
本発明では、上記の浄水発生土の液性限界値が170%以上を持つ浄水発生土に限定して選別する選別工程を有する。さらに、浄水発生土の液性限界値としては、180%以上が好ましく、200%以上がより好ましい。浄水発生土の液性限界値の上限としては、特に制限はないが、おおむね350%以下であり、例えば300%以下、あるいは280%以下、あるいは250%以下である。
【0056】
また、塑性限界値が90%以上の浄水発生土を選別する工程(第2選別工程)を更に備えることが好ましい。ここで、「塑性限界値」とは、浄水発生土が半固体から塑性状に状態変化するときの境界の含水比である。塑性指数が大きい浄水発生土ほど、保水性、保肥性に富み、埃になりにくい性質がある。塑性限界値が90%を超える浄水発生土を選別することで、これを原料として一般土壌に混合して得られる混合土の塑性指数が大きくなる。これにより、保水性・保肥性に富み、埃になりにくい混合土とすることができる。塑性限界値は、100%以上であることがより好ましく、110%以上であることが特に好ましい。塑性限界値の上限としては、特に制限はないが、おおむね300%以下であり、例えば250%以下、あるいは200%以下である。
【0057】
「塑性限界値」は、JIS A 1205:2020に準拠した塑性限界試験によって測定することが可能である。具体的には、試料(この場合は浄水発生土)に対して以下の手順(JIS A 1205:2020より引用)で測定を行う。
a)練り合わせた試料の塊を、手のひらとすりガラス板との間で転がしながら試料をひも状にし、ひもの太さを直径3mmの丸棒に合わせる。この土のひもが直径3 mmになったとき、再び塊にしてこの操作を繰り返す。
b)a)の操作において、試料のひもが直径3mmになった段階で、試料が切れ切れになったとき、JIS A 1203に規定されている方法に従い、その切れ切れになった部分の試料を集めて速やかに含水比を求める。
c)塑性限界試験は、対象とする試料について最低3回行う。
【0058】
さらに、塑性指数が70%以上の浄水発生土を選別することが好ましい。塑性指数は下記式で計算することができる。
塑性指数(%)=液性限界値-塑性限界値 (1)
塑性指数としては、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0059】
液性限界値により選別する工程(第1選別工程)と塑性限界値により選別する工程(第2選別工程)は、いずれを先に行ってもよく、例えば第1選別工程のあとに第2選別工程を行ってもよく、逆であってもよい。
【0060】
さらに、選別工程では、上記の液性限界値による選別の前段階として、浄水発生土の含水比が20~200%の範囲のものを選別することが好ましい。含水比がこの範囲内の浄水発生土は、後述する土壌改良材として使用したときに、混合土が団粒構造を形成するためのバインダーとしての機能を果たしやすくなるためである。ここで、含水比とは、サンプル(この場合は混合土)の乾燥重量をDW、湿潤重量をWWとしたときに、以下の式で表すことができる。
含水比(%)=(WW(g)-DW(g))/DW(g)×100
【0061】
本発明の土壌改良用浄水発生土の選別装置は、上記の土壌改良用浄水発生土の選別方法を実現するための装置である。すなわち、本発明の選別装置は、ロットの異なる複数の前記浄水発生土の液性限界値を測定する測定手段と、液性限界値が170%以上の浄水発生土を選別する選別手段と、を備える。測定手段としては、上記の液性限界試験を行う装置を挙げることができる。また、選別手段としては、上記の選別工程を機械的に実現する手段を挙げることができ、例えば測定手段で液性限界値が170%以上の浄水発生土のみを自動的に選別する機械などを例示することができる。
【0062】
2.土壌改良材の製造方法・製造装置
次に、本発明の土壌改良材の製造方法について説明する。本発明の土壌改良材の製造方法は、複数の粒子が団粒化した平均粒径が10mm以下の団粒土からなり、かつ含水比が20~150%の範囲内となるように粒度及び含水比を調整する調整工程を備える。
【0063】
土壌改良材に含まれる浄水発生土は、複数の土壌粒子が団粒化した状態の土(団粒土)を含んでいる。団粒土を構成する土壌粒子の平均粒子径は、浄水発生土の種類などにもよるが、おおむね0.1~100μmの範囲内である。団粒土の平均粒径は、10mm以下であり、5mm以下が好ましい。団粒土の平均粒径の下限は特に制限はないが、おおむね0.1mm以上である。団粒土の粒径は、湿式解砕機、造粒機、篩選別機などで調整することができる。
【0064】
浄水発生土は、上記のように凝集剤で処理された汚泥由来であるため、凝集剤によって土壌粒子が適度に団粒化した多孔質な構造となっている。このため、浄水発生土は、これを土壌とした場合に、保水性、保肥性に優れている。さらに、本発明では、浄水発生土の団粒構造を損なうことなく、団粒土の粒径を10mm以下となるように調整して水や肥料の保持性能の低い大きな塊や、単粒化した塊を除去しているため、さらに保水性、保肥性に優れたものとなっている。
【0065】
本発明の土壌改良材に含まれる浄水発生土は、含水比が20~150%であり、30~120%の範囲内であることが好ましい。浄水発生土の含水比が20~150%の範囲内であると、混合土の団粒化を形成するためのバインダー機能に優れるため、耐水性及び効果発現に優れた土壌改良材になる。含水比が低すぎると、バインダー機能が弱くなり、混合土の団粒構造の形成、耐水性効果の発現が不十分となる。また、含水比が高すぎると混合土を舗装などで施工したあとに水分が蒸発したときにクラックが生じやすい。土壌改良材の含水比は、乾燥機や加湿器などで適宜調整することができる。
【0066】
本発明の土壌改良材の製造装置は、上記の土壌改良材の製造方法を実現するための装置である。具体的には、上記の浄水発生土の選別装置で選別された浄水発生土に対して、複数の粒子が団粒化した平均粒径が10mm以下の団粒土からなり、かつ含水比が20~150%の範囲内となるように粒度及び含水比を調整する調整手段を備える。平均粒径の調整は、湿式解砕機、造粒機、篩選別機などで行うことができ、含水比の調整は乾燥機や加湿器などで行うことができる。
【0067】
3.混合土の製造方法・製造装置
本発明の混合土の製造方法は、上記で製造された土壌改良材を、一般土壌に対して容積比で10~50体積%となるように混合する混合工程を含む。この容積比は20体積%以上であることが好ましい。容積比が低いと土壌改良材による耐水性向上の効果が生じにくく、容積比が高すぎると混合土にクラックが生じやすくなる。一般土壌としては、砂質ローム、粘性土、石粉、赤玉土、真砂土、鹿沼土、黒ボク土などを挙げることができ、これらの土は、単独で使用しても、2種類以上を混合して使用してもよい。本発明では、一般土壌の液性限界値が低い(すなわち、耐水性が低い)ものであっても、上記で選別された浄水発生土と混合することで、得られる混合土の液性限界値を上昇させることができる。一般土壌の液性限界値としては、特に制限はないが、20~40%程度のものを好適に使用することができる。混合土の液性限界値も上述したJIS A 1205:2020に準拠した液性限界試験で測定することができる。
【0068】
また、団粒化させた混合土を常気圧下(自然放置状態)において24時間以上水浸させても、土塊(団粒)が膨潤し、混合土が有する間隙を上回る吸水を行わないため、土塊(団粒)が崩壊しない。一般的な土壌に入り込んだ水は、粒子の距離を広げながら膨張させて団粒を崩壊させるが、本発明で製造された混合土は、このような団粒の崩壊が生じにくい。混合土の間隙に飽和吸水された水分量、すなわち含水比は、混合土の液性限界値を下回るため、団粒が崩壊し、土粒子間の撹乱(ぬかるみ)を起こしにくい土壌になる。一般土壌の液性限界値が20~40%のものを使用した場合、混合土の液性限界値は30~50%程度となる。
【0069】
ここで、混合土の液性限界値と間隙率とが、下記式(2)の関係にあることが好ましい。
液性限界値 > 間隙率 (2)
「間隙率」とは、一定体積の混合土において隙間が占める割合を意味する。そして、混合土の液性限界値が間隙率を上回ることは、混合土中に保有するスペースの中だけに水分を保持できること、すなわち耐水性が高いことを意味する。
【0070】
さらに、混合土の塑性指数と一般土壌の塑性指数とが、下記式(3)の関係にあることが好ましい。
混合土の塑性指数 > 一般土壌の塑性指数 (3)
ここで、「塑性指数」とは、「液性限界値」から「塑性限界値」までの幅(差)で表される。ここで、「塑性限界値」とは、上述したように、混合土が半固体から塑性状に状態変化するときの境界の含水比であるため、塑性指数が大きい混合土ほど、保水性、保肥性に富み、埃になりにくい。式(3)のように、混合土に含まれる一般土壌の塑性指数よりも混合土の塑性指数が大きいということは、土壌改良材の添加によって塑性指数が上昇したこと、すなわち保水性、保肥性、防塵効果が向上したことを示している。
【0071】
また、混合土は、土埃が出にくいものが好ましい。土埃は、細かい粒子、比重が小さく軽い粒子、粒子間の結合力が弱い粒子の塊などで構成される。本発明の土壌改良材を用いることで、混合土の埃の量を減らすことができる。具体的には、混合土は、後述する実施例の埃試験の方法において、風速8m/sで埃試験を行ったときの混合土の残留率が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
【0072】
また、本発明の混合土の製造装置は、上記の混合土の製造方法を実現するための装置である。具体的には、混合土の製造装置は、上記の土壌改良材の製造装置で製造された土壌改良材を、一般土壌に対して容積比で10~50体積%となるように混合する混合手段を備える。このような混合手段としては、ミキサー・混錬機などを挙げることができる。
【0073】
4.混合土の施工方法
このようにして得られた混合土は、例えばグラウンドや広場などにおけるクレイ舗装用や植栽用の土などとして使用することができる。混合土は各種の用途に用いることができるが、舗装や植栽などに好適に使用することができる。本発明の混合土の施工方法において混合土を舗装に使用する場合、例えば地面などの舗装面に舗装する舗装工程を備える。舗装面としては、グラウンド、広場のほか、公園、庭園、道路の路側帯などを挙げることができる。また、本発明の混合土の施工方法において混合土を植栽に使用する場合、例えば混合土に植物を植える植栽工程を備える。植栽工程で植栽できる植物としては、特に制限はないが、芝、野菜、観葉植物、樹木などを挙げることができる。
【0074】
以上、本発明では、浄水発生土の耐水性土壌改良材原料としての適性を事前に確認し、耐水性の優れた土壌改良材の原料として適切な浄水発生土を選別して土壌改良材の原料として使用している。これにより、得られる土壌改良材は耐水性に優れたものとなり、このような優れた土壌改良材を安定的に供給することで、失敗のない工事を施すことが可能となる。さらに、土壌改良材として適切な浄水発生土を、将来にわたって安定的に供給ができるため、浄水発生土を土壌改良材の持続可能な材料として、有効利用するという用途を定着させることができる。
【実施例0075】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらは本発明の目的を限定するものではなく、また、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0076】
1.浄水発生土の調整
浄水発生土(室内試験用)として、穴生浄水場(北九州市水道局)において機械脱水を施した浄水発生土を原料として、粒度5mmアンダー、含水比150%までに調整を施して製造した「ソイレックス素地製品」を用意した(実施例1、実施例2)。また、各地の浄水場(京築地区水道企業団、湯の川内浄水場)の天日乾燥床において、含水比200%まで天日乾燥を施した浄水発生土を原料として、粒度5mmアンダーまで調整を施して製造した浄水場原料(実施例3~実施例9、比較例1、比較例2)を用意した。粒度・含水調整は、室内試験用の篩、乾燥機を用い、手作業で行った。さらに、土砂として、校庭等に一般的に使用される「真砂土」(株式会社一典工業社製)を用意した。
【0077】
2.サンプルの試験
図1は、上記の浄水発生土と、これを用いた混合土の測定試験の概要を示す図である。図1に示す容器を使用し、これらのサンプルに対して、最大給水量(率)測定試験方法を行った。混合土サンプルは、原料20%、真砂土80%の比率で混合したものを、サンプル容器にて成形しやすい含水量まで加水して使用した。容器は、上方が幅広となる形状であり、上面側の長さ=a(cm)、上面側の幅=b(cm)、下面側の長さc(cm)、下面側の幅=d(cm)、高さ(厚さ)=h(cm)で表記した時に、サンプルピースの体積は以下の式で表される。
●サンプルピースの体積=[(a×b)+(c×d)]/2×h ・・・式A(単位:cm
湿潤重量は、サンプル成型に必要な加水を施して作成したサンプルの重量である。また、乾燥重量は、サンプルの含水比を求めるために、110℃±5℃に温度調整した恒温器に成型したサンプルを入れて、24時間乾燥させたときの重量である。サンプルピースの乾燥重量(DW)と湿潤重量(WW)は、それぞれ電子天秤ばかりで測定した。
●サンプルピース乾燥重量=DW ・・・式B(単位:g)
●サンプルピース湿潤重量=WW ・・・式C(単位:g)
【0078】
【表1】
【0079】
3.各種パラメータの計算
含水比などの各パラメータは以下の式で計算した。
●含水比(%)=(WW(g)-DW(g))/DW(g)×100
●土粒子体積(cm)=Vs=DW(g)/2.7
●乾燥密度=DW(g)/土塊体積(cm
●空隙比=e=土塊体積(cm)/土粒子体積(cm)-1
●飽和度=S=(含水比×乾燥密度)/空隙比(e)
●間隙率(%)=(WW(g)-DW(g))/土塊体積(cm)×100
【0080】
4.液性限界試験の結果
サンプルピースに対して液性限界値の測定を行った。各種の浄水発生土、真砂土、これらの混合物である混合土について液性限界値を測定した。液性限界値は、液性限界測定器(三洋試験機工業製液性限界測定装置)を使用し、JIS A 1205:2020に準拠した液性限界試験方法で測定した。
適正判定は、「液性限界値>間隙率」となった場合に「○」とした。
上記の各種パラメータと液性限界試験の結果を下記表に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
5.塑性限界試験の結果
サンプルピースに対して塑性限界値の測定を行った。各種の浄水発生土とそれを使用した混合土について塑性限界値を測定した。塑性限界値は、塑性限界試験器具(すりガラス)を使用し、JIS A 1205:2020に準拠した塑性限界試験方法で測定した。
塑性指数は以下の式で計算した。
●塑性指数(%)=液性限界(%)-塑性限界(%)
適正判定は、「混合土の塑性指数>真砂土の塑性指数」となった場合に「○」とした。
これらの結果を下記表に示す。
【0083】
【表3】
【0084】
6.埃試験の結果
混合土に対して埃試験を行った。埃試験は、風洞試験機(藤化学製風洞試験器)、風速計(アズワン株式会社製風速・風量計)、電子天秤(株式会社A&D製電子天秤ばかり)を使用し、風速計を用いて風洞試験機の風量を調整しした。風速は、0m/s(無風)、4m/s(和風…樹木の葉を動かす程度)、8m/s(疾風…樹木の小枝を動かす程度※微細粒土の埃が発塵することから、埃が最も遠方まで移動する状況)、12m/s(強風…樹木の大枝を動かす程度※砂粒も舞い上がる状況)、16m/s(烈風…樹木の幹を動かす程度※小石も舞い上がる状況)の5種類で行った。埃試験は、風洞試験機の吹き出し口から混合土のサンプル200gを一定時間(1分)で落下させた。次に、所定の面積(0.4m)の範囲内に落下した土を風で飛散しなかった残留重量として電子天秤で計測した。落下前の混合土の全量を初期重量とした。残留率は以下の式で計算した。
●残留率=残留重量÷初期重量×100
適正判定は、「混合土の残留率>真砂土の残留率」となった場合に「○」とした。
総合判定は、液性限界試験、塑性限界試験、埃試験の適正判断の結果がすべて「○」の場合に「○」とした。
【0085】
【表4】
【0086】
3.考察
液性限界値が170%以上である実施例1~9は、いずれも混合土の液性限界値が真砂土単独のものより上昇していることを確認した。また、混合土の液性限界値が含水比、間隙率より上回っていることも確認した。サンプルピース水浸試験(24時間水浸)にも合格し、適正判定が「○」となり、土壌改良材として優れていた。一方、液性限界値が150未満である比較例1~3は、いずれも混合土の液性限界値が間隙率を下回った。また、サンプルピース水浸試験(24時間水浸)で崩壊し、理論を証明する結果となった。したがって、土壌改良材として適した原料(浄水発生土)ではないと判定した。
【0087】
また、液性限界値が170%以上である実施例1~9は、塑性限界値がいずれも90%以上であり、より詳細には110%以上であった。これらは、混合土の塑性指数が11%以上と、真砂土単体が持つ塑性指数を向上させてなっており、保水性、保肥性に富み、また埃試験の結果にも示されるように埃になりにくい性質であった。一方、比較例1~3は、塑性限界値がいずれも90%を下回っており、混合土の塑性指数が10%以下であった。特に比較例1は、混合土の塑性指数が真砂土の塑性指数を下回っており、保水性、保肥性が低く埃が発生しやすかった。
図1