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特開2024-90323連続式廃プラスチックリサイクルシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090323
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】連続式廃プラスチックリサイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/64 20060101AFI20240627BHJP
   C10G 1/10 20060101ALI20240627BHJP
   C08J 11/14 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C10J3/64
C10G1/10
C08J11/14 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206146
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】504216077
【氏名又は名称】高橋 賢三
(74)【代理人】
【識別番号】100167645
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 一弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 賢三
【テーマコード(参考)】
4F401
4H129
【Fターム(参考)】
4F401BA02
4F401BA06
4F401BB08
4F401CA73
4H129AA01
4H129BA04
4H129BB03
4H129BC06
4H129BC12
4H129BC23
4H129BC24
4H129BC25
4H129BC28
4H129BC35
4H129BC36
4H129NA20
4H129NA21
4H129NA43
(57)【要約】
【課題】 経済性の高い有機物処理材のリサイクルシステムを提供する。
【解決手段】 有機物処理材投入装置と、有機物処理材を100℃以上380℃以下の設定温度にて温度制御して溶融する有機物処理材溶融装置と、有機物処理材溶融装置で溶融された有機物処理材溶融物を水蒸気等の気化ガス及びダスト等の不溶固形物と分離する有機物処理材溶融物分離装置と、有機物処理材溶融物分離装置にて分離され移送された有機物処理材溶融物をガス化する熱分解装置と、熱分解装置から排出された熱分解ガスをミストセパレータにてミストを除いた後に凝縮する凝縮装置とを備える有機物処理材の連続式リサイクル処理システムである。有機物処理材溶融装置は、回転駆動により入口側から投入された有機物処理材を出口側へ移送する渦巻フィンを配設した回転式溶融槽と、回転式溶融槽を取り囲んで配設され回転式溶融槽を加熱する加熱炉で構成されている。火気使用禁止区域に設置する場合には、電熱式有機物処理材溶融装置とすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物処理材投入装置と、有機物処理材を100℃以上380℃以下の設定温度にて温度制御して溶融する有機物処理材溶融装置と、有機物処理材溶融装置で溶融された有機物処理材溶融物を水蒸気等の気化ガス及びダスト等の不溶固形物と分離する有機物処理材溶融物分離装置と、有機物処理材溶融物分離装置にて分離され移送された有機物処理材溶融物をガス化する熱分解装置と、熱分解装置から排出された熱分解ガスをミストセパレータにてミストを除いた後に凝縮する凝縮装置と、を備える有機物処理材の連続式リサイクル処理システムであって、前記有機物処理材溶融装置は、回転駆動により入口側から投入された有機物処理材を出口側へ移送する渦巻フィンを配設した回転式溶融槽と、回転式溶融槽を取り囲んで配設され回転式溶融槽を加熱する加熱炉で構成されていることを特徴とする有機物処理材の連続式リサイクル処理システム。
【請求項2】
有機物処理材投入装置と、有機物処理材を100℃以上380℃以下の設定温度にて温度制御して溶融する有機物処理材溶融装置と、有機物処理材溶融装置で溶融された有機物処理材溶融物を水蒸気等の気化ガス及びダスト等の不溶固形物と分離する有機物処理材溶融物分離装置と、有機物処理材溶融物分離装置にて分離され移送された有機物処理材溶融物をガス化する熱分解装置と、熱分解装置から排出された熱分解ガスをミストセパレータにてミストを除いた後に凝縮する凝縮装置と、を備える有機物処理材の連続式リサイクル処理システムであって、前記有機物処理材溶融装置は、中央部を加熱炉内に配設し、両端部に支持ローラに支えられた本体ローラを配設した円筒状の回転式溶融槽であり、加熱炉の炉壁位置に相当する部分に鏡板を取り付け、かつ伸縮自在のロータリ-ジョイントを介して有機物処理材投入装置及び有機物処理材溶融物分離装置と接続されていることを特徴とする有機物処理材の連続式リサイクル処理システム。
【請求項3】
前記有機物処理材溶融装置の回転式溶融槽の内側に配設した渦巻フィンと、出口側ノズル内に配設された渦巻フィンとを鏡板に配設したアングル状の固形物移送路で接続し、固形物を固液分離装置へ移送可能としたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載する有機物処理材の連続式リサイクル処理システム。
【請求項4】
前記有機物処理材溶融装置から移送される有機物処理材溶融物をガス化する熱分解装置は、底部に設けたバーナにより側壁に配設されたコイル状伝熱管内を流動する有機物処理材溶融物を熱分解するように形成された貫流型熱分解装置であって、前記コイル状伝熱管の入口から水素ガスを注入して有機物処理材溶融装置から移送される溶融物を改質ガス化する熱分解装置であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載する有機物処理材の連続式リサイクル処理システム。
【請求項5】
有機物処理材投入装置と、有機物処理材を100℃以上380℃以下の設定温度にて温度制御して溶融する電熱式有機物処理材溶融装置と、電熱式有機物処理材溶融装置で溶融された有機物処理材溶融物を水蒸気等の気化ガス及びダスト等の不溶固形物と分離する有機物処理材溶融物分離装置と、有機物処理材溶融物分離装置にて分離され移送された有機物処理材溶融物をガス化する電熱式ボイラ形式の電熱式熱分解装置と、電熱式熱分解装置から排出された熱分解ガスをミストセパレータにてミストを除いた後に凝縮する凝縮装置と、を備える有機物処理材の連続式リサイクル処理システムであって、前記電熱式有機物処理材溶融装置は、円筒形本体に駆動機構により同心的に軸支された電熱式扇型回転翼を内設し、有機処理材を溶融しながら移送可能とする電熱式有機物処理材溶融装置であることを特徴とする有機物処理材の連続式リサイクル処理システム。
【請求項6】
前記有機物処理材溶融装置から移送される有機物処理材溶融物をガス化する熱分解装置は、底部に設けたバーナにより側壁に配設されたコイル状伝熱管内を流動する有機物処理材溶融物を熱分解するように形成された貫流型熱分解装置であって、前記コイル状伝熱管の入口から水素ガスを注入して有機物処理材溶融装置から移送される溶融物を改質ガス化する熱分解装置であることを特徴とする請求項5に記載する有機物処理材の連続式リサイクル処理システムである。
【請求項7】
前記有機物処理材投入装置は、水分連続投入手段または炉内圧制御手段からなる外気侵入防止策を設けたことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項5のいずれかに記載する有機物処理材の連続式リサイクル処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、廃プラスチックのリサイクルシステムに関する。特に、溶融を基軸とする連続式廃プラスチックリサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチック等の可燃性有機物処理材をそのまま焼却処理や埋め立て処理をすると、省資源、環境汚染の観点から好ましくないため、可燃性有機物処理材を熱分解処理して油化することにより再利用する熱分解装置が開発されている。
特許文献1には、プラスチック廃棄物を粉砕、分離、分別後、脱塩素化処理を行うプラスチック廃棄物の処理方法が開示されている。
特許文献2には、連続式熱分解炉の入口に開閉が容易な遮断弁を設け、それに直結した与圧室を配し、熱分解炉の液面が低下した場合、自動的に有機物処理材ブロックを与圧室内に取り込み、与圧室内の空気を窒素ガスにより排除して熱分解炉と同じにしてから遮断弁を開き、熱分解炉に投入する連続キルン型有機物処理材熱分解装置が開示されている。
【0003】
しかしながら、廃プラスチックには、プラスチック以外に土砂、金属類、紙類などが混入しているため、連続式熱分解法による再生油の生産ではすべてを熱分解温度まで加熱するため熱損失が大きく、また、PVC由来の塩素系ガス除去装置、油水分離装置が必要であり、さらに安全運転のために熱分解炉への空気の侵入を防止する対策を講じた廃プラスチックの投入装置が必要であり、経済性を損なうというという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-323002号公報
【特許文献2】特開2019-127578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、廃プラスチック等の有機処理材の投入装置に格別な空気浸入防止機構を備える必要がなく、油水分離装置も必要がなく、溶融液を熱分解炉入口にて熱分解ガスと熱交換し、熱効率を上げることによる経済性を高めた廃プラスチック等の有機処理材の連続式リサイクルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の課題は、以下の態様(1)乃至(7)により解決できる。具体的には、
【0007】
(態様1) 有機物処理材投入装置と、有機物処理材を100℃以上380℃以下の設定温度にて温度制御して溶融する有機物処理材溶融装置と、有機物処理材溶融装置で溶融された有機物処理材溶融物を水蒸気等の気化ガス及びダスト等の不溶固形物と分離する有機物処理材溶融物分離装置と、有機物処理材溶融物分離装置にて分離され移送された有機物処理材溶融物をガス化する熱分解装置と、熱分解装置から排出された熱分解ガスをミストセパレータにてミストを除いた後に凝縮する凝縮装置と、を備える有機物処理材の連続式リサイクル処理システムであって、前記有機物処理材溶融装置は、回転駆動により入口側から投入された有機物処理材を出口側へ移送する渦巻フィンを配設した回転式溶融槽と、回転式溶融槽を取り囲んで配設され回転式溶融槽を加熱する加熱炉で構成されていることを特徴とする有機物処理材の連続式リサイクル処理システムである。
【0008】
(態様2) 有機物処理材投入装置と、有機物処理材を100℃以上380℃以下の設定温度にて温度制御して溶融する有機物処理材溶融装置と、有機物処理材溶融装置で溶融された有機物処理材溶融物を水蒸気等の気化ガス及びダスト等の不溶固形物と分離する有機物処理材溶融物分離装置と、有機物処理材溶融物分離装置にて分離され移送された有機物処理材溶融物をガス化する熱分解装置と、熱分解装置から排出された熱分解ガスをミストセパレータにてミストを除いた後に凝縮する凝縮装置と、を備える有機物処理材の連続式リサイクル処理システムであって、前記有機物処理材溶融装置は、中央部を加熱炉内に配設し、両端部に支持ローラに支えられた本体ローラを配設した円筒状の回転式溶融槽であり、加熱炉の炉壁位置に相当する部分に鏡板を取り付け、かつ伸縮自在のロータリ-ジョイントを介して有機物処理材投入装置及び有機物処理材溶融物分離装置と接続されていることを特徴とする有機物処理材の連続式リサイクル処理システムである。
鏡板と本体ローラの間は支持材となるので、回転式溶融槽と本体ローラとの温度差による炉熱応力に対応できる構造とした。また、入口側鏡板にはできるだけ大口径のノズルを取り付け、伸縮自在のロータリージョイントを介して有機処理材の投入装置と接続する構造とした。そして、ロータリージョイント及び大口径ノズル内には渦巻フィンを取付け有機物処理材投入装置から投入された有機処理材を回転式溶融槽内に移送し、出口側鏡板に取付けられた内径700mm以上の出口ノズルと伸縮自在のロータリ-ジョイントを介して有機物処理材溶融物分離装置へ渦巻フィンにより溶融液と共に固形物が移送される構造とした。
【0009】
(態様3) 前記有機物処理材溶融装置の回転式溶融槽の内側に配設した渦巻フィンと、出口側ノズル内に配設された渦巻フィンとを鏡板に配設したアングル状の固形物移送路で接続し、固形物を固液分離装置へ移送可能としたことを特徴とする態様1または態様2のいずれかに記載する有機物処理材の連続式リサイクル処理システムである。
【0010】
(態様4) 前記有機物処理材溶融装置から移送される有機物処理材溶融物をガス化する熱分解装置は、底部に設けたバーナにより側壁に配設されたコイル状伝熱管内を流動する有機物処理材溶融物を熱分解するように形成された貫流型熱分解装置であって、前記コイル状伝熱管の入口から水素ガスを注入して有機物処理材溶融装置から移送される溶融物を改質ガス化する熱分解装置であることを特徴とする態様1または態様2のいずれかに記載する有機物処理材の連続式リサイクル処理システムである。
【0011】
(態様5) 有機物処理材投入装置と、有機物処理材を100℃以上380℃以下の設定温度にて温度制御して溶融する電熱式有機物処理材溶融装置と、電熱式有機物処理材溶融装置で溶融された有機物処理材溶融物を水蒸気等の気化ガス及びダスト等の不溶固形物と分離する有機物処理材溶融物分離装置と、有機物処理材溶融物分離装置にて分離され移送された有機物処理材溶融物をガス化する電熱式ボイラ形式の電熱式熱分解装置と、電熱式熱分解装置から排出された熱分解ガスをミストセパレータにてミストを除いた後に凝縮する凝縮装置と、を備える有機物処理材の連続式リサイクル処理システムであって、前記電熱式有機物処理材溶融装置は、円筒形本体に駆動機構により同心的に軸支された電熱式扇型回転翼を内設し、有機処理材を溶融しながら移送可能とする電熱式有機物処理材溶融装置であることを特徴とする有機物処理材の連続式リサイクル処理システムである。
火気使用禁止区域に設置する有機物処理材の連続式リサイクル処理システムである。
【0012】
(態様6) 前記有機物処理材溶融装置から移送される有機物処理材溶融物をガス化する熱分解装置は、底部に設けたバーナにより側壁に配設されたコイル状伝熱管内を流動する有機物処理材溶融物を熱分解しするように形成された貫流型熱分解装置であって、前記コイル状伝熱管の入口から水素ガスを注入して有機物処理材溶融装置から移送される溶融物を改質ガス化する熱分解装置であることを特徴とする態様5に記載する有機物処理材の連続式リサイクル処理システムである。
【0013】
(態様7) 前記有機物処理材投入装置は、水分連続投入手段または炉内圧制御手段からなる外気侵入防止策を設けたことを特徴とする態様1、態様2または態様5のいずれかに記載する有機物処理材の連続式リサイクル処理システムである。
【発明の効果】
【0014】
本願発明によれば、安全で経済性に優れる以下の多様な廃プラスチックのリサイクル方法を選択できる。
1.溶融液を新たなプラスチックの原料に用いる。
2.溶融液を適度に加熱してバーナに供給し燃料に用いる。
3.溶融液を熱分解してガス化後冷却して再生油を得る。
4.溶融液を熱分解の際水素ガスを混入して改質ガスを得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本願発明の有機物処理材リサイクルシステムの構成図である。
図2】本願発明の有機物処理材溶融装置及び有機物処理材溶融物分離装置の第1の実施態様の横断面構造図である。
図3】本願発明の有機物処理材溶融装置及び有機物処理材溶融物分離装置の第1の実施態様の縦断面構造図である。
図4】本願発明の有機物処理材溶融装置の第1の実施態様の構造図である。
図5】本願発明の有機物処理材溶融装置の第2の実施態様の構造図である。
図6】本願発明の熱分解装置の第1の実施態様の構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願発明を実施するための形態を図1図4に基づいて説明する。ただし、図1図4は実施形態の一例であり、これに限定されるものではない。
【0017】
(1)有機物処理材リサイクルシステムの構成
図1は、本願発明の有機物処理材リサイクルシステムの構成図である。
本願発明の有機物処理材リサイクルシステム100は、有機物処理材受入ホッパー11を備える有機物処理材投入装置10と、有機物処理材を100℃以上380℃以下の設定温度にて温度制御して溶融する回転式溶融槽21と加熱炉22で構成される有機物処理材溶融装置20と、有機物処理材溶融装置20で溶融された有機物処理材溶融物から揮発分、溶融液及び固形分に分離する下方にメッシュコンベア31及び有機物処理材溶融物貯蔵槽32備える有機物処理材溶融物分離装置30と、有機物処理材溶融物分離装置30にて分離され移送された有機物処理材溶融物をガス化する熱分解装置40と、熱分解装置40から排出された熱分解ガスをミストセパレータ50にてミストを除いた後に凝縮する凝縮装置(60a,60b)を備える。凝縮された熱分解ガスは、再生油貯蔵槽80に貯蔵される。有機物処理材投入装置10と、有機物処理材溶融装置20と、有機物処理材溶融物分離装置30は、回転継手(12a,12b)で接続されている。
以下、有機物処理材投入装置10、有機物処理材溶融装置20、有機物処理材溶融物分離装置30、熱分解装置40、凝縮装置(50a,50b)について説明する。
【0018】
(2)有機物処理材投入装置
本願発明の有機物処理材投入装置10は、予め計量され細分された所定量の有機物処理材を有機物処理材受入ホッパー11に受け入れ、ホッパー下部のプッシャーにより有機物処理材を100℃以上380℃以下の設定温度にて温度制御して溶融する回転式溶融槽21に供給する機能を有する。また、ホッパー上部に配設された水噴霧ノズル(図示せず)より回転式溶融槽21の内部圧力維持に必要な水を噴霧できる。
【0019】
(3)有機物処理材溶融装置
図2は、本願発明の有機物処理材溶融装置20及び有機物処理材溶融物分離装置30の横断面構造図であり、図3は、縦断面構造図であり、それぞれ、(a)A-A断面図、(b)B-B断面図、(c)C-C断面図、(d)D-D断面図である。
図4は、本願発明の有機物処理材溶融装置20の第1の実施態様200の構造図であり、それぞれ、(a)B-B断面図、(b)A-A断面図、(c)C-C断面図である。
本願発明の有機物処理材溶融装置20の第1の実施態様200は、回転式溶融槽21と回転式溶融槽21を内包する加熱炉22で構成される。回転式溶融槽21は、入口側は回転継手12aを介して有機物処理材投入装置21に接続され、排出側は回転継手12bを介して有機物処理材溶融物分離装置30に接続される。
【0020】
回転式溶融槽21は、円筒形本体の両端に支持ローラ(24a,24b)を備え、加熱炉22に覆われる両端に鏡板(27a,27b)を配設する。支持ローラ(24a,24b)は加熱炉22の影響を受けないため熱膨張差による熱応力は緩和される。鏡板27aに取り付けた入口側ノズルは内部に渦巻フィン25aを備え、伸縮自在の回転継手12aを介して有機物処理材投入装置10と結ばれ有機物処理材を回転式溶融槽21へ移送する。回転式溶融槽21は入口側ノズルに取付けたチェーン用歯車15を配設して駆動モータ14で回転される。出口側の鏡板27bに取付けた出口ノズルも内部に渦巻フィン25cを備え、回転式溶融槽21の渦巻フィン25bから移送されたダストなどの固形物を鏡板27bに取り付けたアングル状の移送路26を経て受取り、伸縮自在の回転継手12bを介して有機物処理材溶融物分離装置30へ移送する。なお、回転継手(12a,12b)は、回転式溶融槽21の軸方向の熱膨張を吸収する機能を有する。
【0021】
加熱炉22は、回転式溶融槽21内の温度を温度センサ等(図示せず)にて設定温度に保つようバーナ23の燃焼量を制御する。設定温度は、100℃以上380℃以下の範囲で有機物処理材の品質(構成)により適切に設定する。すなわち、有機物処理材の成分が、ポリスチレンが主体であれば100℃に温度設定し、ポリ塩化ビニルが多く含まれている場合であれば250℃程度に温度設定する。液化しないポリ塩化ビニルは、有機物処理材溶融物分離装置にて主体の溶融液から土砂等と共に分離できる。ポリ塩化ビニルの含有量が少なく、ポリエチレンテレフタレートが多い場合は、380℃に温度設定することが好ましい。ポリ塩化ビニルが少ないとポリ塩化ビニルがガス化しても蒸気中のポリ塩化ビニル由来の可燃性ガスの濃度が低く安全性が保たれるからである。
なお、ポリ塩化ビニルが混入している場合には多少可燃性ガスが発生するので、空気の浸入を防止するため、有機物処理材溶融装置内圧力制御手段(図示せず)により投入装置で有機物処理材に水を噴霧すると共に、有機物処理材溶融装置内圧力を大気圧相当に制御する。
【0022】
図5は、本願発明の有機物処理材溶融装置20の第2の実施態様300の横断面構造図である。第2の実施態様300は、有機物処理材を100℃以上380℃以下の設定温度にて温度制御して溶融する電熱式有機物処理材溶融装置300である。電熱式有機物処理材溶融装置300は、溶融槽301に駆動モータ305により同心的に軸支された電熱式扇型回転翼303を内設し、有機処理材を溶融しながら移送可能とする電熱式有機物処理材溶融装置である。火気使用禁止区域に設置する有機物処理材の連続式リサイクル処理システムとして好適である。
【0023】
(4)有機物処理材溶融物分離装置
本願発明の有機物処理材溶融物分離装置は、セパレータ30とメッシュコンベヤ31で構成される。有機物処理材溶融装置20からの水蒸気、溶融物、ダスト類を分離する。
セパレータ30の役割は、有機物処理材溶融装置20で発生した気体を、ミストを伴わずに溶融物から分離することにある。メッシュコンベア31の役割は溶融物とダスト類を分離することにある。メッシュコンベア31は、メッシュをコンベアーベルトに用い、メッシュコンベアーベルト面にフィンを立てダスト類を溶融液から掻き揚げてダスト排出口33から排出する。溶融液はメッシュを通過して溶融物排出口34から溶融液ドラム32へ供給される。
【0024】
(5)熱分解装置
図6は、本願発明の熱分解装置の横断面構造図である。本願発明の熱分解装置40は、溶融液を加熱しポリマーを分解してモノマーガスを得る役割と、熱分解装置入口において溶融液に水素ガスを注入し、所定の改質温度まで加熱して、メタンガスを生成する役割を担う。溶融液ドラム32に蓄積された溶融液は、ストレナ35でダスト類を除かれ、ポンプにより第一凝縮装置60aを通過される際に予熱され、熱分解装置40へ移送される。底部に設けたバーナ44及びコイル状伝熱管42で形成された貫流型熱分解装置であり、頭部に予熱部を設けることができる。熱分解装置出口の熱分解ガスには、熱分解に至らない液の一部がミストとして含まれるため、最重合化による凝縮装置でのトラブルや再生油の流動生の劣化など防止するためミストセパレータ50によりミストを分離し、ミストは溶融液ドラム34へ戻される。
【0025】
(6)凝縮装置
本願発明の凝縮装置は、第一凝縮装置60aと第二凝縮装置60bで構成される。第一凝縮装置60aは、ミストセパレータからから排出された熱分解ガスを溶融液との熱交換により液化し再生油として再生油貯蔵槽80へ移送され貯蔵される。第一凝縮装置60aにて凝縮されないガスは、第二凝縮装置60bへ送られ、冷水塔70からの供給される冷却水との熱交換により液化し再生油として再生油貯蔵槽80へ移送される。第二凝縮装置60bにて凝縮されない熱分解ガスは、有機物処理材溶融装置20及び熱分解装置40へ送られ燃料として利用される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本願発明により、有機物処理材を熱分解して分解ガスを油化する有機物処理材熱分解システムを提供できる。都市ゴミの一部として収集されているプラスチツクゴミは、焼却炉、ボイラ、タービン発電機のシステムに利用されている。本願発明の有機物処理材の連続式リサイクル処理システムで生み出した再生油、溶融液をヂーゼル発電機に置き換えると熱効率は向上し、カーボン排出量も削減できる。また、溶融液を新たなプラスチックの原料に利用すれば、輸入原油の削減、カーボン排出量の削減に寄与できる。メタンガスを生産すれば都市ガスとして利用できる。
【符号の説明】
【0027】
100 有機物処理材リサイクルシステム、 200 有機物処理材溶融装置と溶融物分離装置
10 有機物処理材投入装置、 11 有機物処理材受入ホッパー、 12 回転継手、
20 有機物処理材溶融装置、 21 回転式溶融槽、 22 加熱炉、 23 バーナ、 24 支持ローラ、 25 渦巻フィン、 26 アングル状移送路、 27 鏡板、 28 炉壁
30 溶融物分離装置、 31 メッシュコンベア、 32 溶融物貯蔵槽、 33 ダスト排出口、 34 溶融物排出口、 35 ストレナ
40 熱分解装置、41 保温壁、 42 コイル状伝熱管、 43 耐火炉底、 44 バーナ
50 ミストセパレータ、60 凝縮装置、70 冷却塔、80 再生油貯留槽
300 電熱式有機物処理材溶融装置と溶融物分離装置、 301 溶融槽、 302 回転軸、 303 電熱式扇型回転翼、304 有機物処理材投入装置、 305 駆動モータ、 306 伝熱線、 307 溶融物分離装置、308 メッシュコンベア、 309 ダスト排出口、 310 溶融物排出口、 311 溶融物貯蔵槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6