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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090330
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】菓子用起泡剤
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20240627BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20240627BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240627BHJP
   A23L 29/20 20160101ALI20240627BHJP
   A23L 29/238 20160101ALI20240627BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20240627BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20240627BHJP
   A23L 29/281 20160101ALI20240627BHJP
   A23L 29/231 20160101ALI20240627BHJP
   A23L 29/262 20160101ALI20240627BHJP
   A23L 29/30 20160101ALI20240627BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20240627BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20240627BHJP
   A21D 2/18 20060101ALI20240627BHJP
   A21D 2/16 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A23D7/00 506
A23L29/10
A23L5/00 L
A23L29/20
A23L29/238
A23L29/269
A23L29/256
A23L29/281
A23L29/231
A23L29/262
A23L29/30
A21D13/80
A21D13/00
A21D2/18
A21D2/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206161
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 雄士
【テーマコード(参考)】
4B026
4B032
4B035
4B041
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG04
4B026DH02
4B026DK01
4B026DK04
4B026DK05
4B026DL03
4B026DL10
4B026DP01
4B026DP03
4B026DP04
4B026DX01
4B032DB06
4B032DG02
4B032DK09
4B032DK10
4B032DK12
4B032DK18
4B032DK47
4B032DL02
4B032DP12
4B032DP20
4B032DP40
4B035LC03
4B035LE03
4B035LG07
4B035LG08
4B035LG09
4B035LG12
4B035LG13
4B035LG18
4B035LG27
4B035LG35
4B035LK04
4B035LK05
4B035LP21
4B041LC03
4B041LC10
4B041LD01
4B041LH16
4B041LK08
4B041LK12
4B041LP01
(57)【要約】
【課題】低温でも短時間で菓子生地を起泡し、且つ焼成後の菓子生地の生地目がきめ細かい菓子が得られる菓子用起泡剤を提供すること。
【解決手段】菓子用起泡剤全体中、油脂含量が5重量%以下且つ水分含量が30~60重量%の菓子用起泡剤であって、菓子用起泡剤全体中、モノグリセリンモノ飽和脂肪酸エステルからなる乳化剤A:8~20重量%、グリセリン有機酸飽和脂肪酸エステル、HLBが8以上であるショ糖飽和脂肪酸エステル、レシチン、ソルビタン飽和脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の乳化剤であり、グリセリン有機酸飽和脂肪酸エステル及びHLBが8以上であるショ糖飽和脂肪酸エステルを含み、グリセリン有機酸飽和脂肪酸エステル及びHLBが8以上であるショ糖飽和脂肪酸エステルを乳化剤B全体中50~100重量%含む乳化剤B:4~20重量%、HLBが8以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル、HLBが13以上であるショ糖脂肪酸エステル、酵素分解レシチンからなる群から選択される少なくとも1種の乳化剤C:0.5~10重量%、キサンタンガム、グアーガム、カラギーナン、寒天、ゼラチン、タマリンドガム、ローストビーンガム、アルギン酸類、ペクチン、セルロース及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の増粘剤:0.01~5重量%、及びエタノール:1~10重量%を含有する、菓子用起泡剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
菓子用起泡剤全体中、油脂含量が5重量%以下且つ水分含量が30~60重量%の菓子用起泡剤であって、
菓子用起泡剤全体中、
モノグリセリンモノ飽和脂肪酸エステルからなる乳化剤A:8~20重量%、
グリセリン有機酸飽和脂肪酸エステル、HLBが8以上であるショ糖飽和脂肪酸エステル、レシチン、ソルビタン飽和脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の乳化剤であり、グリセリン有機酸飽和脂肪酸エステル及びHLBが8以上であるショ糖飽和脂肪酸エステルを含み、グリセリン有機酸飽和脂肪酸エステル及びHLBが8以上であるショ糖飽和脂肪酸エステルを乳化剤B全体中50~100重量%含む乳化剤B:4~20重量%、
HLBが8以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル、HLBが13以上であるショ糖脂肪酸エステル、酵素分解レシチンからなる群から選択される少なくとも1種の乳化剤C:0.5~10重量%、
キサンタンガム、グアーガム、カラギーナン、寒天、ゼラチン、タマリンドガム、ローストビーンガム、アルギン酸類、ペクチン、セルロース及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の増粘剤:0.01~5重量%、及び
エタノール:1~10重量%を含有する、菓子用起泡剤。
【請求項2】
菓子用起泡剤全体中、
ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、還元水飴からなる群より選ばれる少なくとも1種の糖アルコール:7~28重量%、及び
グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコール:1~10重量%を含有する、請求項1に記載の菓子用起泡剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の菓子用起泡剤を含む菓子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続相が水相で形成された起泡性組成物であり、スポンジ生地やバウムクーヘン等の菓子生地を起泡させるために用いる生地改良剤の1種である菓子用起泡剤に関する。
【背景技術】
【0002】
菓子用起泡剤は、連続相が水相で形成された起泡性組成物であり、乳化剤、糖類、その他副原料を配合して製造され、スポンジ生地やバウムクーヘン等のケーキ生地を起泡させるために用いる生地改良剤の1種である。前記起泡性組成物は、乳化剤と水相成分がラメラ液晶構造を持つことで容易に生地となじみ、ミキシングすることで界面活性剤である乳化剤が空気と生地の間に配向し、起泡させる機能を持つ。昨今では、人件費削減等で生産効率化の要求が増しており、従来品の菓子用起泡剤では起泡に要する時間が長く、要求品質に満たないことが多くなっている。更に生産手順の簡略化も進んだことにより、液卵を温調せず冷蔵庫から取り出した直後に使用されることがあり、従来の菓子用起泡剤は、低温では硬いため生地になじみにくく起泡性が劣るという課題があった。また、これら生産性の課題に加えて、焼成したケーキ生地の生地目がキメ細かく、卵の風味が豊かなケーキが広く求められている。
【0003】
そこで、低温生地でも速やかに生地に馴染むことを目的とした菓子用起泡剤として、糖アルコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル等を含み、特定の粒径分布にした食用起泡剤(特許文献1)が開示されているが、当該プロピレングリコール脂肪酸エステルはケーキ生地の風味に悪影響があり、一部のユーザーでは使用不可となっている。また、硬さが低減され分散性が良く起泡性に優れるケーキ用乳化起泡剤として、特定量のグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル等を含むケーキ用乳化起泡剤(特許文献2)が開示されているが、当該特許文献記載の起泡剤でも低温下での起泡力は十分ではなく、実施例には増粘剤が使用されておらず生地粘度が低く生地安定性が低くキメが荒く大量生産には向かないケーキ生地になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-82463号公報
【特許文献2】特開2017-176139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、低温でも短時間で菓子生地を起泡し、且つ焼成後の菓子生地の生地目がきめ細かい菓子が得られる菓子用起泡剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、油脂含量と水分含量が特定範囲にあり、乳化剤A、B、C、増粘剤、及び、エタノールをそれぞれ特定量含む菓子用起泡剤は、低温でも短時間で菓子生地を起泡し、該菓子用起泡剤を用いた焼成後の菓子生地は、生地目がきめ細かいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の第一は、菓子用起泡剤全体中、油脂含量が5重量%以下且つ水分含量が30~60重量%の菓子用起泡剤であって、菓子用起泡剤全体中、モノグリセリンモノ飽和脂肪酸エステルからなる乳化剤A:8~20重量%、グリセリン有機酸飽和脂肪酸エステル、HLBが8以上であるショ糖飽和脂肪酸エステル、レシチン、ソルビタン飽和脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の乳化剤であり、グリセリン有機酸飽和脂肪酸エステル及びHLBが8以上であるショ糖飽和脂肪酸エステルを含み、グリセリン有機酸飽和脂肪酸エステル及びHLBが8以上であるショ糖飽和脂肪酸エステルを乳化剤B全体中50~100重量%含む乳化剤B:4~20重量%、HLBが8以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル、HLBが13以上であるショ糖脂肪酸エステル、酵素分解レシチンからなる群から選択される少なくとも1種の乳化剤C:0.5~10重量%、キサンタンガム、グアーガム、カラギーナン、寒天、ゼラチン、タマリンドガム、ローストビーンガム、アルギン酸類、ペクチン、セルロース及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の増粘剤:0.01~5重量%、及びエタノール:1~10重量%を含有する、菓子用起泡剤に関する。好ましい実施態様は、菓子用起泡剤全体中、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、還元水飴からなる群より選ばれる少なくとも1種の糖アルコール:7~28重量%、及びグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコール:1~10重量%を含有する、前記菓子用起泡剤に関する。本発明の第二は、前記菓子用起泡剤を含む菓子に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従えば、低温でも短時間で菓子生地を起泡し、且つ焼成後の菓子生地の生地目がきめ細かい菓子が得られる菓子用起泡剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明につき、更に詳細に説明する。本発明の菓子用起泡剤は、油脂含量と水分含量が特定範囲にあり、乳化剤A,B,C、増粘剤、及び、エタノールをそれぞれ特定量含むことが特徴である。
【0010】
前記油脂は、起泡力を阻害する場合や、焼成後の菓子生地の生地目のきめ細かさが劣る場合があるため、その含有量は少なければ少ない程良く、菓子用起泡剤全体中、5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましく、1重量%以下が更に好ましく、実質的に含有しないことが最も好ましい。ここで油脂を実質的に含有しないとは、前記菓子用起泡剤に油脂原料を意図的に配合しないことを意味し、意図せず不純物として含有される場合を含む。
【0011】
また前記油脂としては食用であれば特に限定は無いが、常温で液状の油脂が好ましく、菜種油、大豆油、コーン油、こめ油、綿実油等が好ましい。
【0012】
本開示において、低温とは冷蔵庫内の温度に相当し、例えば3~15℃であり、常温とは、例えば15~30℃である。
【0013】
前記水分含量は、菓子用起泡剤全体中、30~60重量%が好ましく、40~60重量%がより好ましく、40~55重量%が更に好ましい。30重量%より少ないと焼成後の生地目がきめ細かくなる効果が低い場合があり、60重量%より多いと液晶構造を維持する原料の配合比率が下がってしまい、製品として成り立たなくなる場合がある。
【0014】
前記乳化剤Aは、起泡性を付与する乳化剤であり、具体的にはモノグリセリンモノ飽和脂肪酸エステルが好ましい。前記飽和脂肪酸エステルとしては、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、ベヘン酸エステルが好ましく、ステアリン酸エステルがより好ましい。
【0015】
前記乳化剤Aの含有量は、菓子用起泡剤全体中、8~20重量%が好ましく、8~18重量%がより好ましく、12~18重量%が更に好ましい。8重量%より少ないと起泡性の付与が十分でない場合があり、20重量%より多いと液晶構造を保ちきれず起泡性が落ちる場合がある。
【0016】
前記乳化剤Bは、液晶構造を安定化させる乳化剤であり、グリセリン有機酸飽和脂肪酸エステル、HLBが8以上であるショ糖飽和脂肪酸エステル、レシチン、ソルビタン飽和脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、グリセリン有機酸飽和脂肪酸エステル及びHLBが8以上であるショ糖飽和脂肪酸エステルを含み、グリセリン有機酸飽和脂肪酸エステル及びHLBが8以上であるショ糖飽和脂肪酸エステルを乳化剤B全体中50~100重量%含むことがより好ましい。
【0017】
グリセリン有機酸飽和脂肪酸エステルとしては、クエン酸モノグリセライドが好ましい。前記クエン酸モノグリセライドとしてはクエン酸モノ飽和脂肪酸グリセライドが好ましく、クエン酸モノステアリン酸グリセライドがより好ましい。
【0018】
乳化剤Bとしての前記ショ糖飽和脂肪酸エステルは、HLBが8以上であるショ糖飽和脂肪酸エステルが好ましく、HLBが8より低いと液晶構造を安定化させる効果が低く、起泡性が落ちる場合があり、HLBは高いほど良いがHLBが20を超える乳化剤は入手が困難である。前記飽和脂肪酸エステルとしては、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステルが好ましく、ステアリン酸エステルがより好ましい。
【0019】
前記レシチンとしては食用であれば特に限定されないが、大豆レシチン、ヒマワリレシチン、卵黄レシチンが好ましく、価格の観点から大豆レシチンがより好ましい。
【0020】
前記ソルビタン飽和脂肪酸エステルを構成する飽和脂肪酸エステルとしては、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、ベヘン酸エステルが好ましい。それらの内、コストの観点では、ステアリン酸エステルがより好ましく、耐熱性が必要な生地においては、ベヘン酸エステルがより好ましい。
【0021】
前記乳化剤Bの含有量は、菓子用起泡剤全体中、4~20重量%が好ましく、10~20重量%がより好ましく、10~15重量%が更に好ましい。4重量%より少ないと液晶構造を安定化させる効果が十分でなく、長期間保管した後は、低温下、短時間で菓子生地を起泡することができなくなる場合があり、20重量%より多いと焼成した生地の風味が悪くなる場合がある。
【0022】
前記乳化剤Cは、低温でも短時間での起泡性を付与する乳化剤であり、HLBが8以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル、HLBが13以上であるショ糖脂肪酸エステル、酵素分解レシチンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0023】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、HLBが8以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましいが、HLBが8より低いと低温でも短時間での起泡性を付与する効果が低い場合があり、HLBは高いほど良いがHLBが20を超える乳化剤は実質的にない。
【0024】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸エステルとしては、飽和脂肪酸エステルでも不飽和脂肪酸エステルでも良く、飽和脂肪酸としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が好ましく、不飽和脂肪酸としてはオレイン酸が好ましい。
【0025】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルにけるポリグリセリンの重合度としては、高いほど良く、4以上が好ましく、6以上がより好ましい。重合度が4より低いと低温でも短時間での起泡性を付与する効果が低い場合があり、重合度が10を超える乳化剤は実質的にない。
【0026】
乳化剤Cとしての前記ショ糖脂肪酸エステルは、HLBは高いほど良く、HLBが13以上であるショ糖飽和脂肪酸エステルが好ましいが、HLBが13より低いと低温でも短時間での起泡性を付与する効果が低い場合があり、HLBが20を超える乳化剤は入手が困難である。
【0027】
前記ショ糖飽和脂肪酸エステルを構成する飽和脂肪酸エステルとしては、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステルが好ましく、ステアリン酸エステルがより好ましい。
【0028】
なお、前記HLBが13以上であるショ糖飽和脂肪酸エステルは、前記乳化剤Bにも該当するが、使用の際に、乳化剤Bと乳化剤Cの両方の含有量を満たすように使用すればよい。その場合は、前記HLBが13以上であるショ糖飽和脂肪酸エステルとして1つの原料を配合しても、乳化剤B及び乳化剤Cの何れも配合されたとみなすことができる。
【0029】
前記酵素分解レシチンとは、植物レシチン又は卵黄レシチンから得られたホスファチジン酸及びリゾレシチンを主成分とするものであり、植物レシチンとしては大豆レシチンやヒマワリレシチンが挙げられる。
【0030】
前記乳化剤Cの含有量は、菓子用起泡剤全体中0.5~10重量%が好ましく、0.5~5重量%がより好ましく、1~5重量%が更に好ましい。0.5重量%より少ないと低温でも短時間での起泡性を付与する効果が低い場合があり、10重量%より多いと焼成した生地がくちゃつき食感が好ましくない場合がある。
【0031】
前記増粘剤は、焼成後の菓子生地の生地目をきめ細かくすることが特徴であり、キサンタンガム、グアーガム、カラギーナン、寒天、ゼラチン、タマリンドガム、ローストビーンガム、アルギン酸類、ペクチン、セルロース及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、キサンタンガム、グアーガム、タマリンドガム、ローストビーンガムがより好ましく、生地に粘性を付与する効果が高いことからキサンタンガムが更に好ましい。
【0032】
前記増粘剤の含有量は、菓子用起泡剤全体中0.01~5重量%が好ましく、0.01~0.5重量%がより好ましく、0.1~0.5重量%が更に好ましい。0.01重量%より少ないと焼成後の生地目がきめ細かくなる効果が低い場合があり、5重量%より多いと焼成した生地がくちゃつき食感が好ましくない場合がある。
【0033】
前記エタノールは、起泡性を向上させる事が特徴であり、その含有量は、菓子用起泡剤全体中、1~10重量%が好ましく、1~5重量%がより好ましく、2~5重量%が更に好ましい。1重量%より少ないと起泡性が向上する効果が低い場合や焼成後の菓子生地の生地目のきめ細かさが劣る場合があり、10重量%より多いと焼成した生地にエタノール由来の風味が残り、風味が好ましくない場合がある。
【0034】
前記菓子用起泡剤には、液晶の安定性を向上させる観点から、糖アルコールを含むことが好ましい。該糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、還元水飴からなる群より選ばれる少なくとも1種の糖アルコール類が挙げられる。これらの中でも、液晶構造の安定化及び焼成した生地の風味の観点からソルビトールがより好ましい。
【0035】
前記糖アルコールの含有量は、菓子用起泡剤全体中、7~28重量%が好ましく、7~21重量%がより好ましく、10.5~21重量%が更に好ましい。7重量%より少ないと焼成後の生地目がきめ細かくなる効果が低い場合があり、28重量%より多いと焼成した生地において糖アルコール由来の風味が強くなりすぎる場合がある。
【0036】
前記菓子用起泡剤には、焼成後の菓子生地をしっとりさせる観点から、多価アルコールを含むことが好ましく、該多価アルコールとしては、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコールが挙げられる。これらの中でも、焼成後の菓子生地をしっとりさせる効果が高いグリセリンが好ましい。
【0037】
前記多価アルコールの含有量は、菓子用起泡剤全体中、1~10重量%が好ましく、3~10重量%がより好ましく、3~5重量%が更に好ましい。1重量%より少ないと生地がしっとりする効果が低い場合があり、10重量%より多いと焼成した生地において多価アルコール由来の風味が強くなりすぎる場合がある。
【0038】
前記菓子用起泡剤には、その他の任意成分として、例えば、β-カロテン等の着色料、抽出トコフェロール、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル等の油溶性の酸化防止剤、食品用乳化剤、ミルクフレーバー、バニラ香料、オレンジオイル等の着香料、pH調製剤として炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩等を添加してもよい。
【0039】
前記菓子用起泡剤によれば、長期間液晶構造を安定化させる乳化剤と水相成分によるラメラ液晶構造を有するため、長期間保管した後でも、低温下、短時間で菓子生地を起泡することができ、且つ焼成後の菓子生地の生地目がきめ細かい菓子を得ることができる。
【0040】
本発明の菓子用起泡剤の製造方法を以下に例示する。まず所定量の原料を液体原料から順番にビーカーに投入する。品温が60~80℃になるまで加熱しながら攪拌し、それから5℃/分以下の冷却速度で、必要に応じて攪拌しながら、1~50℃まで冷却することで、本発明の菓子用起泡剤を得ることができる。
【0041】
前記菓子用起泡剤を、菓子生地に配合することにより、焼成後の菓子生地の生地目がきめ細かい菓子が得られる。このような菓子としては、スポンジ生地を用いたケーキ及びバウムクーヘン等が挙げられる。
【実施例0042】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0043】
実施例及び比較例で使用した原料は以下の通りである。
1)菜種油:株式会社カネカ製「精製菜種油」
2)モノグリセリンモノステアリン酸エステル:理研ビタミン株式会社製「エマルジーMS」
3)クエン酸モノグリセライド:理研ビタミン株式会社製「ポエムK-30」
4)ソルビタンステアリン酸エステル:理研ビタミン株式会社製「ポエムS-65V」(HLB=3.0)
5)レシチン:ARCHER DANIELS MIDLAND製「Yelchin TS」
6)ショ糖ステアリン酸エステル:三菱ケミカルフーズ株式会社製「リョートーシュガーエステル S-1170」(HLB=11)
7)ポリグリセリンオレイン酸エステル:坂本薬品工業株式会社製「SYグリスターMO-7S」(HLB=12.9)
8)キサンタンガム:CP KELCO APS製「K-OB」
9)エタノール:信和アルコール産業株式会社製「シュンコールB」
10)ソルビトール:株式会社ウエノフードテクノ製「ソルビトール「ウエノ」」
11)グリセリン:坂本薬品工業株式会社製「グリセリン」
12)モノグリセリンモノベヘン酸エステル:理研ビタミン株式会社製「ポエムB-100」(HLB=5.4)
13)ショ糖ステアリン酸エステル:三菱ケミカルフーズ株式会社製「リョートーシュガーエステル S-970」(HLB=9)
14)ショ糖ステアリン酸エステル:第一工業製薬株式会社製「DKエステルF-140」(HLB=13)
15)ショ糖ステアリン酸エステル:三菱ケミカルフーズ株式会社製「リョートーシュガーエステルS-1670」(HLB=16)
16)ショ糖ステアリン酸エステル:三菱ケミカルフーズ株式会社製「リョートーシュガーエステルS-370」(HLB=3)
17)ショ糖ステアリン酸エステル:三菱ケミカルフーズ株式会社製「リョートーシュガーエステルS-570」(HLB=5)
18)ショ糖ステアリン酸エステル:三菱ケミカルフーズ株式会社製「リョートーシュガーエステルS-770」(HLB=7)
19)ポリグリセリンステアリン酸エステル:阪本薬品株式会社製「SYグリスター MS-3S」(HLB=8.4)
20)ポリグリセリンオレイン酸エステル:阪本薬品株式会社製「SYグリスター MO-3S」(HLB=8.8)
21)ポリグリセリンステアリン酸エステル:阪本薬品株式会社製「SYグリスター TS-7S」(HLB=10)
22)ポリグリセリンオレイン酸エステル:阪本薬品株式会社製「SYグリスター MO-5S」(HLB=11.6)
23)ポリグリセリンラウリン酸エステル:阪本薬品株式会社製「SYグリスター ML-750」(HLB=14.7)
24)ポリグリセリンオレイン酸エステル:阪本薬品株式会社製「SYグリスター PO-5S」(HLB=4.7)
25)ポリグリセリンステアリン酸エステル:阪本薬品株式会社製「SYグリスター TS-5S」(HLB=7.4)
26)酵素分解レシチン:株式会社光洋商会製「ソレックK-EML」(HLB=11)
【0044】
<評価>
(起泡性評価)
薄力粉100重量部に対して、20℃に温調した上白糖1.2重量部、菜種油0.1重量部と、5℃に温調した液全卵1.6重量部、菓子用起泡剤0.06重量部をミキサーボウルに投入し、ミキサー(ホバートジャパン株式会社製「型番:N-50」)にワイヤーホイッパーを取り付け、低速で30秒間混合した後、中速で混合し、比重が0.40g/cmに達するまで又は15分間ホイップした。混合中は、ミキサーボウル内が15℃以下になるように温調した。中速で混合を開始してから比重が0.40g/cmに達するまでの時間を測定した。その際の評価基準は以下の通りであった。
5点:6分以内
4点:8分以内
3点:10分以内
2点:12分以内
1点:0.40g/cmに達しない
【0045】
<スポンジケーキの官能評価>
実施例及び比較例で得られたスポンジケーキを20℃に温調された部屋で24時間保管した後、熟練した10人のパネラーが生地目のきめ細やかさを目視評価し、その評価点の平均値を評価値とした。その際の評価基準は以下の通りであった。
【0046】
(生地目のきめ細やかさ)
5点:実施例4と比べ、気泡が細かく全体的に均一である
4点:実施例4と比べ、気泡が全体的に均一である
3点:実施例4のように、気泡がやや全体的に均一である
2点:実施例4と比べ、気泡がやや不均一である
1点:実施例4と比べ、気泡が不均一である
-:起泡性評価で0.40g/cmに達しなかったため未評価
【0047】
(実施例1)菓子用起泡剤及びそれを用いたケーキの作製
表1に示す配合に従って、菓子用起泡剤を製造した。即ち、まず攪拌しながら所定量のエタノール、ソルビトール(糖アルコール)、グリセリン(多価アルコール)、水をステンレスビーカーに全て入れて混合した。次に、攪拌しながら所定量のモノグリセリンモノステアリン酸エステル(乳化剤A)、クエン酸モノグリセライド(乳化剤B)、ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=11、乳化剤B)、ポリグリセリンオレイン酸エステル(HLB=12.9、乳化剤C)、レシチン(乳化剤B)、ソルビタンステアリン酸エステル(乳化剤B)、キサンタンガム(増粘剤)をステンレスビーカーに徐々に入れ、80℃まで加温し、混合及び溶解して水中油型に乳化した。その後、ホモミクサーMarkII(プライミクス株式会社)を用いて3000rpmで攪拌しながら50℃まで1℃/分で冷却して菓子用起泡剤を得、得られた菓子用起泡剤を室温で保管した。保管開始から3日後(D+3)及び14日後(D+14)の菓子用起泡剤について起泡性の評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0048】
薄力粉100重量部に対して、20℃に温調した上白糖1.2重量部、菜種油0.1重量部と、5℃に温調した液全卵1.6重量部、保管開始から14日後の菓子用起泡剤0.06重量部をミキサーボウルに投入し、低速で30秒間混合した後、中速で混合し、比重が0.40g/cmに達するまでホイップした。そこに薄力粉250重量部、ベーキングパウダー2.5重量部を混合し低速で30秒間混合した後かき落とし、中速で1分間ホイップすることでスポンジケーキ生地を得た。得られた生地を6号缶に380g流し込み、上火180℃、下火150℃の固定窯で45分間焼成し、20℃に温調された部屋に24時間静置してスポンジケーキを得た。得られたスポンジケーキについて、生地目のきめ細やかさを評価し、表1に記載した。
【0049】
(実施例2~4、比較例1)菓子用起泡剤及びそれを用いたケーキの作製
表1に示す配合に従って、菜種油、ソルビトール、水の各量を変えた以外は実施例1と同様の操作で、菓子用起泡剤及びスポンジケーキを製造した。得られた菓子用起泡剤を室温で保管し、起泡性(D+3、D+14)を評価した。得られたスポンジケーキについて、生地目のきめ細やかさの評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0050】
【表1】
【0051】
表1の結果から明らかなように、油脂含量が5重量%以下であり少ない方が、起泡性及び生地目のきめ細やかさが良好であり(実施例1~4)、油脂含量が5重量%を超えて多くなると起泡性及び生地目のきめ細やかさが低下することがわかった(比較例1)。
【0052】
(実施例5~9、比較例2~3)菓子用起泡剤及びそれを用いたケーキの作製
表2に示す配合に従って、起泡性を付与するモノグリセリンモノステアリン酸エステル(乳化剤A)の添加量を変えた以外は実施例1と同様の操作で菓子用起泡剤及びスポンジケーキを得た。得られた菓子用起泡剤を室温で保管し、起泡性(D+3、D+14)を評価した。得られたスポンジケーキについて、生地目のきめ細やかさの評価を行い、その結果を表2に記載した。
【0053】
【表2】
【0054】
表2の結果から明らかなように、起泡性を付与するモノグリセリンモノステアリン酸エステル(乳化剤A)の含量が適正範囲内の場合は良好な起泡性及び生地目のきめ細やかさを示し(実施例5~9)、含量が適正範囲を外れると起泡性が低下した(比較例2~3)。
【0055】
(実施例10~13)菓子用起泡剤及びそれを用いたケーキの作製
表3に示す配合に従って、起泡性を付与する乳化剤Aをモノグリセリンモノステアリン酸エステル又はモノグリセリンモノベヘン酸エステルに変えた以外は実施例1と同様の操作で菓子用起泡剤及びスポンジケーキを得た。得られた菓子用起泡剤を室温で保管し、起泡性(D+3、D+14)を評価した。得られたスポンジケーキについて、生地目のきめ細やかさの評価を行い、その結果を表3に記載した。
【0056】
【表3】
【0057】
表3の結果から明らかなように、起泡性を付与する乳化剤Aの飽和脂肪酸エステルは脂肪酸種による差異はなく何れも良好な起泡性及び生地目のきめ細やかさを示した(実施例10~13)。
【0058】
(実施例14~17、比較例4)菓子用起泡剤及びそれを用いたケーキの作製
表4に示す配合に従って、液晶構造を安定化させる特定の乳化剤Bの添加量を変えた以外は実施例1と同様の操作で菓子用起泡剤及びスポンジケーキを得た。得られた菓子用起泡剤を室温で保管し、起泡性(D+3、D+14)を評価した。得られたスポンジケーキについて、生地目のきめ細やかさの評価を行い、その結果を表4に記載した。
【0059】
【表4】
【0060】
表4の結果から明らかなように、液晶構造を安定化させる特定の乳化剤Bの含量が適正範囲内の場合は良好な起泡性及び生地目のきめ細やかさを示し(実施例14~17)、含量が下限値を下回る場合には液晶構造が不安定となるためD+14の起泡性が悪化した(比較例4)。
【0061】
(実施例18~20、比較例5~7)菓子用起泡剤及びそれを用いたケーキの作製
表5に示す配合に従って、液晶構造を安定化させる特定の乳化剤Bのショ糖ステアリン酸エステル(HLB=11)を他のショ糖ステアリン酸エステル(HLB=3~16)に変えた以外は実施例1と同様の操作で菓子用起泡剤及びスポンジケーキを得た。得られた菓子用起泡剤を室温で保管し、起泡性(D+3、D+14)を評価した。得られたスポンジケーキについて、生地目のきめ細やかさの評価を行い、その結果を表5に記載した。
【0062】
【表5】
【0063】
表5の結果から明らかなように、液晶構造を安定化させる特定の乳化剤Bのショ糖ステアリン酸エステルを用いた場合は良好な起泡性及び生地目のきめ細やかさを示し(実施例18~20)、HLBが8以上であるショ糖飽和脂肪酸エステルを含まず、HLB値が下限値を下回る場合には著しく起泡性が悪化した(比較例5~7)。
【0064】
(実施例21~25、比較例8~9)菓子用起泡剤及びそれを用いたケーキの作製
表6に示す配合に従って、低温でも短時間での起泡性を付与する乳化剤Cのポリグリセリンオレイン酸エステル(HLB=12.9)を各種ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB=4.7~14.7)に変えた以外は実施例1と同様の操作で菓子用起泡剤及びスポンジケーキを得た。得られた菓子用起泡剤を室温で保管し、起泡性(D+3、D+14)を評価した。得られたスポンジケーキについて、生地目のきめ細やかさの評価を行い、その結果を表6に記載した。
【0065】
【表6】
【0066】
表6の結果から明らかなように、低温でも短時間での起泡性を付与する乳化剤Cのポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた場合は低温で良好な起泡性及び生地目のきめ細やかさを示し(実施例21~25)、乳化剤Cを配合せず、HLB値が下限値を下回るポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた場合には低温での起泡性が悪化した(比較例8~9)。
【0067】
(実施例26~28)菓子用起泡剤及びそれを用いたケーキの作製
表7に示す配合に従って、低温でも短時間での起泡性を付与する乳化剤Cのポリグリセリンオレイン酸エステル(HLB=12.9)をショ糖ステアリン酸エステル(HLB=13、16)又は酵素分解レシチン(HLB=11)に変えた以外は実施例1と同様の操作で菓子用起泡剤及びスポンジケーキを得た。得られた菓子用起泡剤を室温で保管し、起泡性(D+3、D+14)を評価した。得られたスポンジケーキについて、生地目のきめ細やかさの評価を行い、その結果を表7に記載した。
【0068】
【表7】
【0069】
表7の結果から明らかなように、低温でも短時間での起泡性を付与する乳化剤Cとして、高HLBのショ糖ステアリン酸エステル(実施例26、27)及び酵素分解レシチン(実施例28)を用いた場合は低温で良好な起泡性及び生地目のきめ細やかさを示した。
【0070】
(実施例29~32、比較例10)菓子用起泡剤及びそれを用いたケーキの作製
表8に示す配合に従って、低温でも短時間での起泡性を付与する乳化剤Cのポリグリセリンオレイン酸エステル(HLB=12.9)の添加量を変えた以外は実施例1と同様の操作で菓子用起泡剤及びスポンジケーキを得た。得られた菓子用起泡剤を室温で保管し、起泡性(D+3、D+14)を評価した。得られたスポンジケーキについて、生地目のきめ細やかさの評価を行い、その結果を表8に記載した。
【0071】
【表8】
【0072】
表8の結果から明らかなように、低温でも短時間での起泡性を付与する乳化剤Cの含量が適正範囲内の場合は良好な起泡性及び生地目のきめ細やかさを示し(実施例29~32)、含量が下限値を下回る場合には低温での起泡性が低下した(比較例10)。
【0073】
(実施例33~37、比較例11)菓子用起泡剤及びそれを用いたケーキの作製
表9に示す配合に従って、焼成後の生地目がきめ細かくなる増粘剤のキサンタンガムの添加量を変えた以外は実施例1と同様の操作で菓子用起泡剤及びスポンジケーキを得た。得られた菓子用起泡剤を室温で保管し、起泡性(D+3、D+14)を評価した。得られたスポンジケーキについて、生地目のきめ細やかさの評価を行い、その結果を表9に記載した。
【0074】
【表9】
【0075】
表9の結果から明らかなように、焼成後の生地目がきめ細かくなる増粘剤の含量が適正範囲内の場合には生地目が細かく良好であり(実施例33~37)、増粘剤が無添加であり、その含量が下限値を下回る場合には生地目は大きく不良であった(比較例11)。
【0076】
(実施例38~40、比較例12)菓子用起泡剤及びそれを用いたケーキの作製
表10に示す配合に従って、起泡性が向上するエタノールの含量を変えた以外は実施例1と同様の操作で菓子用起泡剤及びスポンジケーキを得た。得られた菓子用起泡剤を室温で保管し、起泡性(D+3、D+14)を評価した。得られたスポンジケーキについて、生地目のきめ細やかさの評価を行い、その結果を表10に記載した。
【0077】
【表10】
【0078】
表10の結果から明らかなように、エタノールの含量が適正範囲内の場合には良好な起泡性及び生地目のきめ細やかさを示し(実施例38~40)、含有しない場合には起泡性及び生地目のきめ細やかさが低下した(比較例12)。
【0079】
(実施例41~44)菓子用起泡剤及びそれを用いたケーキの作製
表11に示す配合に従って、液晶の安定性が向上する糖アルコールのソルビトールの添加量を変えた以外は実施例1と同様の操作で菓子用起泡剤及びスポンジケーキを得た。得られた菓子用起泡剤を室温で保管し、起泡性(D+3、D+14)を評価した。得られたスポンジケーキについて、生地目のきめ細やかさの評価を行い、その結果を表11に記載した。
【0080】
【表11】
【0081】
表11の結果から明らかなように、ソルビトールの添加により良好な起泡性及び生地目のきめ細やかさを示した(実施例41~44)。
【0082】
(実施例45~48)菓子用起泡剤及びそれを用いたケーキの作製
表12に示す配合に従って、焼成後の生地をしっとりさせる多価アルコールのグリセリンの添加量を変えた以外は実施例1と同様の操作で菓子用起泡剤及びスポンジケーキを得た。得られた菓子用起泡剤を室温で保管し、起泡性(D+3、D+14)を評価した。得られたスポンジケーキについて、生地目のきめ細やかさの評価を行い、その結果を表12に記載した。
【0083】
【表12】
【0084】
表12の結果から明らかなように、グリセリンの配合により何れも良好な起泡性及び生地目のきめ細やかさを示し、焼成後の菓子生地のしっとりさも良好であった(実施例45~48)。
【0085】
(実施例49~51)菓子用起泡剤及びそれを用いたケーキの作製
表13に示す配合に従って、水の添加量を変えた以外は実施例1と同様の操作で菓子用起泡剤及びスポンジケーキを得た。得られた菓子用起泡剤を室温で保管し、起泡性(D+3、D+14)を評価した。得られたスポンジケーキについて、生地目のきめ細やかさの評価を行い、その結果を表13に記載した。
【0086】
【表13】
【0087】
表13の結果から明らかなように、水分含量が少ない場合(実施例49、50)、及び水分含量が多い場合(実施例51)は、何れも実施例1との比較において評価結果が劣るものの、何れも良好な起泡性及び生地目のきめ細やかさを示した。