(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090344
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】チャンネル状覆いテープ材、及び、瓦棒屋根の防水改修方法
(51)【国際特許分類】
E04D 3/00 20060101AFI20240627BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240627BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240627BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20240627BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240627BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20240627BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
E04D3/00 Q
B32B27/36
B32B7/022
B32B7/027
B32B27/00 M
B32B27/00 L
B32B7/06
E04G23/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206190
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】515352788
【氏名又は名称】有限会社ヨシカネ
(71)【出願人】
【識別番号】598171508
【氏名又は名称】株式会社秀カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 兼司
(72)【発明者】
【氏名】野口 秀夫
【テーマコード(参考)】
2E108
2E176
4F100
【Fターム(参考)】
2E108AA02
2E108BB04
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2E108CC03
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2E176AA23
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4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】 (修正有)
【課題】瓦棒屋根のハゼ締め部からの漏水に対し、優れた形態で簡便に処理できる防水改修方法、該防水改修工法に用いる機能的にも外見的にも優れた覆いテープ材を提供すること。
【解決手段】瓦棒Kと溝板Pとを覆うためのテープ基材10を有するものであって、該テープ基材が最上層と最下層に引張弾性率が3000MPa以上5500MPa以下であり、線膨張率が縦方向、横方向ともに2.0×10
-5[K
-1]以下の二軸延伸ポリエステルフィルムと、中間層に引張弾性率が5MPa以上2000MPa以下の軟質塩化ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、天然ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、又は、ポリウレタンゴムを含有する芯材とを有するものであるチャンネル状覆いテープ材、それを用いて瓦棒と溝板とを覆う瓦棒屋根の防水改修方法。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
瓦棒屋根に直線状に存在する瓦棒と溝板とをオーバーラップさせて覆うための、テープ基材を有するチャンネル状覆いテープ材であって、
該テープ基材が
最上層に、引張弾性率(ヤング率)が、3000MPa以上5500MPa以下であり、線膨張率が、縦方向、横方向ともに、2.0×10-5[K-1]以下の二軸延伸ポリエステルフィルムと、
中間層に、引張弾性率(ヤング率)が、5MPa以上2000MPa以下の、軟質塩化ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエステル樹脂(PET)、天然ゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPT)、ブチルゴム(IIR)、又は、ポリウレタンゴム(U)を含有する芯材と、
最下層に、引張弾性率(ヤング率)が、3000MPa以上5500MPa以下であり、線膨張率が、縦方向、横方向ともに、2.0×10-5[K-1]以下の二軸延伸ポリエステルフィルムと、
を有するものであることを特徴とするチャンネル状覆いテープ材。
【請求項2】
前記最上層の二軸延伸ポリエステルフィルムと前記中間層の芯材が、及び、前記中間層の芯材と前記最下層の二軸延伸ポリエステルフィルムが、ドライラミネート又は押出しラミネートによって積層されてなるものである請求項1に記載のチャンネル状覆いテープ材。
【請求項3】
前記最上層の二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みが5μm以上100μm以下であり、前記中間層の芯材の厚みが0.05mm以上1.2mm以下であり、前記最下層の二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みが5μm以上100μm以下である請求項1に記載のチャンネル状覆いテープ材。
【請求項4】
前記チャンネル状覆いテープ材の最上面には、該チャンネル状覆いテープ材の上から塗布する塗膜防水材との密着性が良好になる表面処理が施してある請求項1に記載のチャンネル状覆いテープ材。
【請求項5】
前記チャンネル状覆いテープ材は、少なくとも、天井部、前記瓦棒のハゼ締め部の略直上に位置するハゼ締め部直上部、前記瓦棒屋根の溝板の表面に接触させるヘラ状部、該ハゼ締め部直上部と該ヘラ状部との間に存在する傾斜部、及び、該傾斜部と該ヘラ状部の間の屈曲可能部を有し、
該チャンネル状覆いテープ材は、該ハゼ締め部直上部に山折り加工が施され、該屈曲部に谷折り加工が施されているものである請求項1に記載のチャンネル状覆いテープ材。
【請求項6】
前記溝板と前記傾斜部がなす角度である傾斜角度が90°以下となるように、前記山折り加工と前記谷折り加工が施されている請求項5に記載のチャンネル状覆いテープ材。
【請求項7】
前記ハゼ締め部直上部の下面、及び、前記ヘラ状部の下面に粘着層が存在する請求項5に記載のチャンネル状覆いテープ材。
【請求項8】
前記天井部と前記ハゼ締め部直上部の下面、及び、前記ヘラ状部の下面に粘着層が存在する請求項5に記載のチャンネル状覆いテープ材。
【請求項9】
更に、前記粘着層の表面に離型フィルム又は離型紙を有する請求項7に記載のチャンネル状覆いテープ材。
【請求項10】
前記粘着層の材質が、ブチル系粘着剤、改質アスファルト系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、アクリル樹脂系粘着剤、シリコーンゴム系粘着剤、ウレタン樹脂系粘着剤、又は、ブチルゴム系粘着剤である請求項7に記載のチャンネル状覆いテープ材。
【請求項11】
鋏又はカッターで切れる程度以下の切断強度を有するものである請求項1に記載のチャンネル状覆いテープ材。
【請求項12】
前記中間層の芯材には、顔料以外の無機充填材が含有されていないか、又は、無機充填材が該芯材に対して70質量%以下で含有されている請求項1に記載のチャンネル状覆いテープ材。
【請求項13】
前記無機充填材が、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、ケイ灰石、カーボンブラック、グラファイト、カオリンクレー、焼成カオリン、マイカ、又は、シリカである請求項12に記載のチャンネル状覆いテープ材。
【請求項14】
請求項9に記載のチャンネル状覆いテープ材をロール状に巻いてなることを特徴とするチャンネル状覆いテープ材ロール。
【請求項15】
請求項1ないし請求項13の何れかの請求項に記載のチャンネル状覆いテープ材を用いて、瓦棒屋根に直線状に存在する瓦棒と溝板とをオーバーラップさせて覆うことを特徴とする瓦棒屋根の防水改修方法。
【請求項16】
請求項6に記載のチャンネル状覆いテープ材を用いて、溝板と前記傾斜部がなす角度である傾斜角度が90°以下となるように瓦棒を覆う請求項15に記載の瓦棒屋根の防水改修方法。
【請求項17】
請求項1ないし請求項13の何れかの請求項に記載のチャンネル状覆いテープ材を用いて、瓦棒屋根に直線状に存在する瓦棒と溝板とをオーバーラップさせて覆った後、その上から防水塗料を塗布することを特徴とする瓦棒屋根の塗膜防水改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は瓦棒屋根に存在する瓦棒を含めて上から覆うチャンネル状覆いテープ材に関し、詳しくは、該瓦棒と瓦棒屋根の溝板とをオーバーラップさせて覆うためのチャンネル状覆いテープ材、及び、該チャンネル状覆いテープ材を用いた瓦棒屋根の防水改修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
瓦棒屋根にあっては、通常、屋根下地に、その両端部が数cm立ち上がっている「最端部のハゼ締め部が耳状に加工された『溝板(ふき板)と称するガルバリウム鋼鈑やカラーステンレス板等の金属製板』」を敷設してある。
そして、通常、同じくガルバリウム鋼鈑やカラーステンレス板等の金属製板からなる「ハゼ締め部が耳状に加工された通し吊子」を、該溝板(ふき板)の耳状部に重ね合わせ、同じく金属製板からなる「ハゼ締め部が耳状に加工されたキャップ」の耳状部を、更に重ね合わせ、次いで、重ね合わさった耳状端部を折り曲げること(ハゼ締め)により、つかみ合わせて接合している(
図1、
図2参照)。
【0003】
そして、このような瓦棒屋根においては、通常、ガルバリウム鋼鈑やカラーステンレス板等の金属製板を使用することから、ハゼ締めによる接合部分(ハゼ締め部)は、漏水防止のために、高位置の立ち上げ部に存在していた(
図1、
図2参照)。
【0004】
しかし、上記のような瓦棒屋根の接合では、ガルバリウム鋼鈑やカラーステンレス板等の金属製板の熱変形によって、接合部分(ハゼ締め部)がゆるみ、また、長期の経年によって該接合部(ハゼ締め部)に発錆が生じ、防水性が保持されなくなり、
図3のように漏水を引き起こすことがあった。
【0005】
そこで、特許文献1~3では、かかる漏水を防ぐために、既存の瓦棒に防水用キャップ体を被せることが提案されている。
【0006】
特許文献1では、防水性を有したキャップ体を、キャップ体の弾性挟持力で瓦棒を挟持することが提案されている。
また、特許文献2、3では、特許文献1の両脚部が挟持力で瓦棒にどれだけよく密着しているかにその防水性がかかっており、瓦棒部が多少でもうねっていたりすると密着度が低く防水性が悪くなるという問題を解消するものとして提案されたもので、瓦棒を「端部にヘラ状部を有する型部材のキャップ体」で覆い、その底板部は、ヘラ状部と重ね合わせるようにシート部材を敷設し、ヘラ状部とシート部材を接着材にて接合させている。
【0007】
ここで、上記キャップ体の素材は、ある程度の形状を保てるように硬質で耐候性に優れ腐食され難いもので、かつ、形状を加工できるものであることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート、ポリビニルクロライド、塩素化ポリエチレン、クロロスルフォン化ポリエチレン、SBS、SEBS、SIS等の樹脂;又は、それらの樹脂とEPT、EPDM、IIR、CR等のゴムのブレンド系物;又は;樹脂やゴム単味、若しくは、これらのブレンド系物と鋼鈑とを貼り合わせた複合体が挙げられている。
また、シート部材としては、ゴムや樹脂等が用いられゴムとしてはEPDM、IIR、CR、NR等およびそれらのブレンド物にカーボン等を配合した加硫物等が挙げられ、樹脂としてはポリビニルクロライド、ポリエチレン等が挙げられている。
【0008】
しかし、加硫された、EPDM、IIR、CR、NR等のシート部材に対し強固に接着させる接着剤が存在しないため、上記キャップ体と溝板部のシート部材との接合は、ゴム系の接着剤、CR系・IIR系の液状接着剤、テープ状接着剤等と称する粘着剤となっている。粘着力による接合は、接着と比較して弱く、キャップ体と溝板部のシート部材との接合部(ジョイント部)は、長期の耐久性が懸念される。
【0009】
特許文献4は、瓦棒にメッシュクロス付の覆いを被せ、ウレタン塗膜防水材で被覆するものであり、
図4(a)に示すように、機械化スプレー方式の速硬化ウレタン塗膜防水材を施工する際に、ハゼ締め部の影となりウレタン塗膜防水層の連続性が図り難いと言う問題点を解決したものである。すなわち、
図4(b)(c)に示すように、瓦棒のハゼ締め部の下地処理方法を簡素化し、また、ウレタン塗膜防水層の連続性を図っている。
【0010】
特許文献4では、炭酸カルシウムが60~80重量%含まれ、残り約40~20重量%が高密度ポリエチレン又はポリプロピレン樹脂であるシート状成形品で、表層にポリウレタン樹脂を塗布し、且つ、メッシュクロスをヘラ状部の端より張り出させ、天井部左右に山折り加工、立下り部と溝板(ふき板)と接するヘラ状部との間に谷折り加工を施した覆い材を、下地処理材として瓦棒部に被せ、ウレタン塗膜防水材で被覆することを提案している。
【0011】
発明を実施するための形態のなかで、覆い材を瓦棒部から溝板(ふき板)にかけて被せる際の固定方法は、溝板(ふき板)に接するヘラ状部のみへの粘着剤及び離型紙の加工となっていて、離型紙を剥して溝板(ふき板)に貼るとされている。
従って、瓦棒から溝板(ふき板)にかけて被せた覆い材は、ヘラ状部が溝板(ふき板)に対しては、粘着剤にて固定されるが、天井部から立下り部は、下地の瓦棒に対し絶縁された状態で被覆される(浮いた状態で固定される)。
【0012】
また、溝板(ふき板)に貼るためのヘラ状部のみ粘着加工された覆い材を瓦棒から溝板(ふき板)に施工する際、瓦棒部分に覆い材の天井部を仮置きして広げてから立下り部とふき板部を谷折りし、ヘラ状部の離型紙を剥して溝板(ふき板)部に貼り付ける。
しかし、その際、天井部やハゼ締め部の直上部に粘着加工がされてないことから、瓦棒部分に広げた際にずれが発生することや、施工中の強風等によって、広げた覆い材が飛ばされてしまうことがあった。
【0013】
また、特許文献4では、覆い材の材質に関しては提案されているが、厚みや態様(構造)については提案されていない。実施例に、30~400μmの広い厚みがあることは記載されているが、この広い範囲の厚みによって剛性が大幅に異なってしまう。
【0014】
従って、下地の瓦棒に対し絶縁された状態で、剛性のない薄い覆い材に、ウレタン防水材を施した場合、覆い材が絶縁された状態で施された天井部から立下り部は、ラミネートされたメッシュクロスとウレタン塗膜防水層の強度となってしまう。そのため、ウレタン防水層の熱膨張や収縮によって、変形したり、強風によって暴れてしまったりすることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開昭60-030752号公報
【特許文献2】実開平05-012522号公報
【特許文献3】特開平10-205076号公報
【特許文献4】特許2019-108734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、瓦棒屋根の瓦棒部分のハゼ締め部からの漏水に対し、優れた形態で簡便に処理できる防水改修方法、及び、該防水改修工法に用いる機能的にも外見的にも優れた材料(構成)を、好適に低コストで提供することにある。また、作業効率を向上させ低コスト化を達成した瓦棒屋根の改修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、「最上層と最下層に、引張弾性率(ヤング率)と線膨張率が特定された二軸延伸ポリエステルフィルムを用い、中間層に、特定の引張弾性率(ヤング率)を有する特定の樹脂又はゴムを有する芯材を用いたテープ基材」を有するチャンネル状覆いテープ材を用いることによって、瓦棒屋根の瓦棒の、天井部、ハゼ締め部の上部(ハゼ部)、ハゼ締め部の上部から立下り部(傾斜部)にかけて、及び、溝板(ふき板)に至るまで一体でオーバーラップさせてカバーでき、(塗膜)防水(防食)工事の施工性を向上させ、防水機能を高くでき、外見的にも性能的にも優れたものができることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明は、瓦棒屋根に直線状に存在する瓦棒と溝板(ふき板)とをオーバーラップさせて覆うための、テープ基材を有するチャンネル状覆いテープ材であって、
該テープ基材が
最上層に、引張弾性率(ヤング率)が、3000MPa以上5500MPa以下であり、線膨張率が、縦方向、横方向ともに、2.0×10-5[K-1]以下の二軸延伸ポリエステルフィルムと、
中間層に、引張弾性率(ヤング率)が、5MPa以上2000MPa以下の、軟質塩化ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエステル樹脂(PET)、天然ゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPT)、ブチルゴム(IIR)、又は、ポリウレタンゴム(U)を含有する芯材と、
最下層に、引張弾性率(ヤング率)が、3000MPa以上5500MPa以下であり、線膨張率が、縦方向、横方向ともに、2.0×10-5[K-1]以下の二軸延伸ポリエステルフィルムと、
を有するものであることを特徴とするチャンネル状覆いテープ材を提供するものである。
【0019】
また、本発明は、前記最上層の二軸延伸ポリエステルフィルムと前記中間層の芯材が、及び、前記中間層の芯材と前記最下層の二軸延伸ポリエステルフィルムが、ドライラミネート又は押出しラミネートによって積層されてなるものである前記のチャンネル状覆いテープ材を提供するものである。
【0020】
また、本発明は、前記チャンネル状覆いテープ材は、少なくとも、天井部、前記瓦棒のハゼ締め部の略直上に位置するハゼ締め部直上部、前記瓦棒屋根の溝板(ふき板)の表面に接触させるヘラ状部、該ハゼ締め部直上部と該ヘラ状部との間に存在する傾斜部、及び、該傾斜部と該ヘラ状部の間の屈曲可能部を有し、
前記チャンネル状覆いテープ材は、該ハゼ締め部直上部に山折り加工が施され、該屈曲部に谷折り加工が施されているものである前記のチャンネル状覆いテープ材を提供するものである。
【0021】
また、本発明は、前記溝板(ふき板)と前記傾斜部がなす角度である傾斜角度が90°以下となるように、前記山折り加工と前記谷折り加工が施されている前記のチャンネル状覆いテープ材を提供するものである。
【0022】
また、本発明は、前記天井部と前記ハゼ締め部直上部の下面、及び、前記ヘラ状部の下面に粘着層が存在する前記のチャンネル状覆いテープ材を提供するものである。
【0023】
また、本発明は、前記中間層の芯材には、顔料以外の無機充填材が含有されていないか、又は、無機充填材が該芯材に対して70質量%以下で含有されている前記のチャンネル状覆いテープ材を提供するものである。
【0024】
また、本発明は、前記のチャンネル状覆いテープ材をロール状に巻いてなることを特徴とするチャンネル状覆いテープ材ロールを提供するものである。
【0025】
また、本発明は、前記のチャンネル状覆いテープ材を用いて、瓦棒屋根に直線状に存在する瓦棒と溝板(ふき板)とをオーバーラップさせて覆うことを特徴とする瓦棒屋根の防水補修方法を提供するものである。
【0026】
また、本発明は、前記のチャンネル状覆いテープ材を用いて、瓦棒屋根に直線状に存在する瓦棒と溝板とをオーバーラップさせて覆った後、その上から防水塗料又は防食塗料を塗布することを特徴とする瓦棒屋根の塗膜防水改修方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、前記問題点と課題を解決し、ハゼ締め部等の瓦棒近傍からの浸水を好適に容易に防止すると共に、瓦棒屋根の防水性と防錆性を向上させるチャンネル状覆いテープ材を提供でき、更に、その後の工程である塗膜防水材(防水塗料又は防食塗料)の塗工を容易にすることもできる。
【0028】
瓦棒屋根は、一般に、耐火野地板や高圧木毛セメント板等の上に、下葺材としてアスファルトルーフィング等の防水シートを仮止めし、その上に、ガルバリウム鋼鈑やカラーステンレス板等の金属製板の溝板(ふき板)と通し吊子を並べ、キャップを被せて締結する(ハゼ締めする)。
【0029】
該締結接合部分(ハゼ締め部)は、漏水防止のために必然的に高位置の立ち上げ部となっているが、一般的な瓦棒屋根の接合方法では、金属製板の熱変形によって該締結接合部分(ハゼ締め部)が緩み、また、長期の経年によって、該締結接合部分(ハゼ締め部)に錆が生じて防水性が保持されなくなり、
図3に示したように漏水を引き起こすことがあった。
【0030】
塗膜防水工法は、JIS A 6021 日本工業規格 建築用塗膜防水材に規定されているように、液状の樹脂や合成ゴム等を、刷毛やヘラ、ローラー等で下地に塗布するか、又は、吹付機によりスプレー施工して成膜・硬化させ、シームレスな防水層を形成する「防水材料を用いた工法」である。その主な特徴としては以下等があるため、多く採用されている工法である。
・シームレスな塗膜を形成するので、継ぎ目がなく、防水の信頼性が高い。
・複雑な形状の部位にも対応できる。
・防水層は、連続した美しい仕上がりになる。
【0031】
上記のような工法で、すなわち、塗膜防水材・防水塗料を用いて、瓦棒屋根の防水(防食)を行う際に、瓦棒のハゼ締め部に、
図4(b)のように、シーリング材や立ち上がり用の防水材を充填するか、又は、
図4(c)のように、「塗膜防水材が接着する表面基材」製のテープを貼って、ハゼ締め部の下面を処理する必要がある。
上記作業(充填、処理等)は、溝板(ふき板)底部から30mm程度立ち上がった「ハゼ締め部の下面」に施工するため、作業者が寝そべって作業する必要があり、作業効率が著しく悪い上に、技術的にも難易度が高く、作業者の体にも負担がかかっていた。
【0032】
セルフレベリング性を有しない機械化スプレー方式の速硬化ウレタン塗膜防水材は、下地形状をそのままトレースするため、均一に吹付ができれば平場面も立が上り面も同じ膜厚を確保できる。
しかしながら、上記した「シーリング材や立ち上がり用の防水材の充填」(
図4(b))や、「塗膜防水材が接着する表面基材製のテープの貼り付け」(
図4(c))では、立上った姿勢で行わざるを得ない「速硬化ウレタン塗膜防水材のスプレー方式による吹付作業」は、斜め上からの吹付となるため、
図4(a)に示したように、ハゼ締め部が影になり(邪魔をして)、溝板(ふき板)の立ち上がり部に、直接、速硬化ウレタン塗膜防水材のスプレーミストを吹付塗布することが困難であった。
そのため、溝板(ふき板)の立ち上がり部の塗膜の厚みを確実に確保することができ難かった。
【0033】
本発明のチャンネル状覆いテープ材を用いれば、
図8に示したように、チャンネル状覆いテープ材の、天井部、ハゼ締め部直上部、傾斜部、屈曲可能部、及び、ヘラ状部が、一体となって瓦棒とその近傍をハット型形状に覆うことができ、そのために、該ハゼ締め部の下方や該傾斜部が影にならずに、立った姿勢で、防水材(防水塗料)を均一に塗布することが可能となる。
【0034】
瓦棒屋根を作製する際の瓦棒葺には、大別して、心木あり瓦棒葺と、心木なし瓦棒葺がある。そのうち、心木あり瓦棒葺は、瓦棒部分に木材の心木を入れて、それを包み込むような金属板を含むものであり、一方、心木なし瓦棒葺は、長尺の金属板で瓦棒をふく目的で考えられた工法であり、心木を必要としないものである。
後者の「心木なし瓦棒葺」には、部分吊子タイプと通し吊子タイプがあり、耳丸式、三晃式、林式等の種類があり、
図1に示したような構成部材によって、
図2のように、キャップと吊子と溝板(ふき板)の端部を、ハゼにて締結して設置される。
上記した、耳丸式、三晃式、林式は、何れも、溝板(ふき板)の立ち上がりは30mm、吊子の立ち下がりは30mm、底部の幅は35~36mmを中心に最大47mmまであり、キャップの横幅は吊子の幅に合うようになっている。
【0035】
本発明のチャンネル状覆いテープ材は、上記した「瓦棒の態様」や「瓦棒のサイズ」に対し、極めて好適に適応できる。上記した「心木あり瓦棒葺」にも「心木なし瓦棒葺」にも好適に適応できる(使用される)。
【0036】
図8に、本発明のチャンネル状覆いテープ材の使用態様を示す。
該チャンネル状覆いテープ材が、その下面に粘着層を有し、該粘着層の表面に離型フィルム又は離型紙を有する場合には(
図7参照)、瓦棒のハゼ締め部を含んで、本発明のチャンネル状覆いテープ材を、そこから該離型フィルム又は離型紙を剥がして、該粘着層によって貼り付ける。
そのことによって、チャンネル状覆いテープ材の、天井部、ハゼ締め部直上部、傾斜部、屈曲可能部、及び、ヘラ状部が、何れも瓦棒の左右とも一体となって、瓦棒とその近傍をオーバーラップしてハット型形状に覆うことができ、力学的に遊びがなく、張りを持って固定される(天井部とヘラ状部との間が絶縁されない)。
【0037】
天井部やハゼ締め部の直上部に粘着加工がされていると、現場で粘着材を付与する手間を省けると共に、粘着層があると該チャンネル状覆いテープ材のずれが発生せず、施工中に強風等によって、広げたチャンネル状覆いテープ材が飛ばされてしまうことがない。また、経時でのずれや剥がれを防止できる。
【0038】
該チャンネル状覆いテープ材が、所定の場所に山折り加工又は谷折り加工がなされている場合には(
図6参照)、
図8に示すように、チャンネル状覆いテープ材をハット形状にし易く、上記した形態で好適に、瓦棒部分やハゼ締め部をカバーできる。
【0039】
瓦棒部分にチャンネル状覆いテープを貼り付ける作業は、しゃがんで(腰を低く落として歩き難い姿勢で)行なう必要はあるが、寝そべって行う必要はなく、技術的にも難易度が低く、確実に同じ形状のカバーを施すことができる。
【0040】
例えばハット形状にして固定したチャンネル状覆いテープ材は、テープ基材の剛性が適度に高く、線膨張率も適度に低いため、下地に接することなくテープ基材のみとなる「ハゼ締め部とヘラ状部の中間部(傾斜部)」においても、変形せずに形状を保持することができる。
【0041】
ハゼ締め部とヘラ状部の中間部(傾斜部)の角度を、溝板(ふき板)に対して90°以下になるように固定できるので、90°以下に固定すれば、後の工程における「速硬化ウレタン塗膜防水材のスプレー方式による吹付作業」においても、影がないため均一な塗膜をシームレスに塗布することができる。
【0042】
瓦棒屋根を塗膜防水加工する際等に、本発明によれば、瓦棒部分の処理方法が、(例えばロールから広げて)覆い材を貼り付けるだけで完了するので、極めて作業性が良い。
また、溝板(ふき板)から瓦棒までを、一体でオーバーラップして覆えることによって、貼り付け後は、ハット型形状・台形状の形状保持力があり、物理的・機械的に丈夫である。
そして、その後の塗膜防水(防食)の施工性も良くなり、最終的に、塗膜の膜厚も均一に塗工し易くなる。
【0043】
更に、本発明のチャンネル状覆いテープ材のテープ基材は、引張強度や剛性等の物理的性質や線膨張率等の温度変化特性が、瓦棒(屋根)にマッチングした好適範囲に規定されているので、強風や積雪による変形(所謂「あばれ」等)や、最終施工後の塗膜防水(防食)層の熱膨張や熱収縮による変形が少なくなる。
【0044】
本発明によれば、温度変化があっても、物理的・機械的・機能的・外見的に問題のないチャンネル状覆いテープ材を低コストで提供できる。
具体的には、温度変化によって生じるウレタン防水層の熱膨張若しくは熱収縮や、台風等の強風や、積雪等によっても形状を保持し、防水機能、密着機能等の低下や、チャンネル状覆いテープ材自体の温度変形による種々の弊害等を抑制できる。
本発明のチャンネル状覆いテープ材を用いれば、瓦棒屋根が長期にわたり物理的・機械的に丈夫になる。
【0045】
また、本発明のチャンネル状覆いテープ材によれば、瓦棒屋根の表面平滑性と形状保持性を有し、外見的にも機能的にも優れた低コストの瓦棒部分の処理方法・改修方法を提供でき、また、その施工方法(塗膜防水工法等)のための覆いテープ材を提供できる。
【0046】
更に、瓦棒屋根の改修工事において、漏水箇所である瓦棒部分をハット形(台形状に)にカバーできるので、そうすることで、セルフレベリング性を有しない機械化スプレー方式の速硬化ウレタン塗膜防水材を吹付塗布する際にも影(塗料の行き渡らない部分)がなくなり、屋根全体に均一な膜厚でシームレスに塗布することができる。
【0047】
また、瓦棒屋根の瓦棒部分を規則性のあるハット形状にできるので、物理的性能以外にも、美的・外見的にも優れたチャンネル状覆いテープ材を提供できる。
なお、かかる変形、外観等は、使用したチャンネル状覆いテープ材のテープ基材の剛軟度、引張弾性率(ヤング率)、線膨張率(実施例(評価例)において後述する)等に依存する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】一般的な瓦棒屋根の瓦棒と溝板(ふき板)を構成する部材を示す分解斜視図である。
【
図2】一般的な瓦棒屋根において、溝板(ふき板)、吊子、及び、キャップをハゼ締めした後の断面斜視図である。
【
図3】瓦棒のハゼ締め部がゆるんで漏水する現象を示す概略断面図である。
【
図4】瓦棒のハゼ締め部からの漏水を防止するための従来方法を示す概略断面図である。 (a)ハゼ締め部に機械化スプレー方式の速硬化ウレタン塗膜防水材を吹付する従来方法の概略断面図である。 (b)ハゼ締め部をシーリング材で(下地)処理する従来方法の概略断面図である。 (c)ハゼ締め部をテープで(下地)処理する従来方法の概略断面図である。
【
図5】本発明のチャンネル状覆いテープ材の各部分の名称(定義)を示す断面図である。
【
図6】本発明のチャンネル状覆いテープ材のテープ基材の曲げ加工(山折り加工、谷折り加工)の位置を示す概略断面図である。
【
図7】本発明のチャンネル状覆いテープ材の、テープ基材、粘着層、及び、離型フィルムの概略位置の一例を示した概略断面図である。
【
図8】瓦棒屋根の瓦棒に本発明のチャンネル状覆いテープ材を施工した後の概念断面図である。
【
図9】本発明のチャンネル状覆いテープ材が有するテープ基材の断面図である。 (a)ラミネート接着剤なし(ラミネート接着剤の記載なし) (b)ラミネート接着剤あり(ラミネート接着剤の記載あり)
【
図10】本発明のチャンネル状覆いテープ材の断面図である。 (a)離型フィルム又は離型紙なし (b)離型フィルム又は離型紙あり
【
図11】実施例で剛軟度の測定に使用した試験機の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0050】
[チャンネル状覆いテープ材]
本発明は、瓦棒屋根に直線状に存在する瓦棒Kと溝板Pとをオーバーラップさせて覆うための「テープ基材10を有するチャンネル状覆いテープ材1」であって、該テープ基材10は、最上層11に特定の引張弾性率(ヤング率)と線膨張率を有する二軸延伸ポリエステルフィルム、中間層12に特定の引張弾性率(ヤング率)を有する特定の樹脂又はゴムを有する芯材、及び、最下層13に特定の引張弾性率(ヤング率)と線膨張率を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを有するチャンネル状覆いテープ材1である。
【0051】
<チャンネル状覆いテープ材が有するテープ基材>
本発明のチャンネル状覆いテープ材1のテープ基材10は、
最上層11に、引張弾性率(ヤング率)が、3000MPa以上5500MPa以下であり、線膨張率が、縦方向、横方向ともに、2.0×10-5[K-1]以下の二軸延伸ポリエステルフィルムと、
中間層12に、引張弾性率(ヤング率)が、5MPa以上2000MPa以下の、軟質塩化ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエステル樹脂(PET)、天然ゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPT)、ブチルゴム(IIR)、又は、ポリウレタンゴム(U)を有する芯材と、
最下層13に、引張弾性率(ヤング率)が、3000MPa以上5500MPa以下であり、線膨張率が、縦方向、横方向ともに、2.0×10-5[K-1]以下の二軸延伸ポリエステルフィルムと、を有する。
【0052】
上記覆いテープ材は、例えば、
図9(a)に示したように、上記最上層11のフィルムと上記中間層12の芯材が、及び、上記中間層12の芯材と上記最下層13のフィルムが、ドライラミネート又は押出しラミネートによって積層されてなるものであることが好ましい。
限定はされないが、
図9(b)に示したように、最上層11と中間層12とのラミネートや、中間層12と最下層13とのラミネートには、それぞれ、ラミネート接着剤11aやラミネート接着剤13aを用いることが好ましい。
【0053】
厚みに関しては、前記最上層11の二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みが5μm以上100μm以下であり、前記中間層12の芯材の厚みが0.05mm以上1.2mm以下であり、前記最下層13の二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みが5μm以上100μm以下であることが、前記した本発明の効果を好適に得るために好ましい。
【0054】
本発明のチャンネル状覆いテープ材1の横幅は、瓦棒K部分を覆うように被せることができ、ヘラ状部1eで充分に溝板(ふき板)Pに密着できれば特に限定はないが、瓦棒Kの吊子Tの底部の幅が、35mm~36mmのタイプでは、160mm~240mmが好ましく、180mm~220mmがより好ましく、190mm~210mmが特に好ましい。
また、吊子Tの底部の幅が、47mmのタイプでは、170mm~250mmが好ましく、190mm~230mmがより好ましく、200mm~220mmが特に好ましい。
【0055】
横幅が上記下限以上であれば、瓦棒K部分を覆うように被せて、チャンネル状覆いテープ材1を良好にヘラ状部1eで溝板(ふき板)Pの両脇に密着でき、一方、横幅が上記上限以下であれば、チャンネル状覆いテープ材1が大きくなり過ぎて無駄になることがなく、コスト的に有利である。
【0056】
本発明のチャンネル状覆いテープ材1を、覆うように瓦棒K部分に被せた後のハゼ締め部とヘラ状部1eの中間部(傾斜部1c)の溝板(ふき板)Pに対する傾斜角度D(
図5、8参照)は、90°以下が好ましく、30°以上90°未満がより好ましく、40°以上80°以下が更に好ましく、45°以上70°以下が特に好ましい。
【0057】
傾斜角度Dが上記上限以下であれば、瓦棒K部分を覆うように被せて、速硬化ウレタン塗膜防水材のスプレー方式による吹付作業であっても、影ができないため均一な防水塗膜をシームレスに塗布することができる。また、ハット型形状(台形状)となり、機械的に丈夫である。
一方、傾斜角度Dが上記下限以上であれば、チャンネル状覆いテープ材1の幅が大きくなり過ぎて無駄になることがなく、コスト的に有利である。
【0058】
<<チャンネル状覆いテープ材のテープ基材の最上層>>
本発明の覆いテープ材のテープ基材10の最上層11は、引張弾性率(ヤング率)が、3000MPa以上5500MPa以下であり、線膨張率が、縦方向、横方向ともに、2.0×10
-5[K
-1]以下の二軸延伸ポリエステルフィルムであることが必須である(
図1参照)。
【0059】
<<<最上層の引張弾性率(ヤング率)>>>
最上層11の引張弾性率(ヤング率)は、3000MPa以上5500MPa以下であることが必須であるが、下限については、3300MPa以上であることが好ましく、3600MPa以上であることがより好ましく、3800MPa以上であることが特に好ましい。
【0060】
最上層11の引張弾性率(ヤング率)が小さ過ぎると、前記したような障害が生じる場合があり、特に、剛性が小さくなって、設置直後であっても撓んだり、上面に塗布された塗膜防水層の温度変化による膨張収縮によって、更に撓んだりする場合等がある。
該「撓み」は、使用したテープ基材10の剛軟度(実施例(評価例)において後述する)に依存する。
【0061】
一方、最上層11の引張弾性率(ヤング率)が大き過ぎると、前記したような障害が生じる場合があり、特に、薄い鋼鈑を使用した場合のように鋼鈑の温度変化による膨張収縮を粘着層20の粘着力で拘束することができず、長手方向の端部で座屈したり、収縮して空隙が発生したりという障害が起こる場合がある。また、該値を満たす樹脂が存在しない若しくは極めて高価となる場合等がある。ただ、大きい引張弾性率(ヤング率)のものが存在するならば、薄膜で、かつ、中間層12である芯材の熱膨張収縮を極力抑えられる程大きいものが好ましい。
【0062】
<<<最上層の線膨張率>>>
最上層11の線膨張率は、縦方向・横方向ともに、2.0×10-5[K-1]以下であることが必須であるが、1.8×10-5以下であることが好ましく、1.7×10-5[K-1]以下であることがより好ましく、1.6×10-5[K-1]以下であることが特に好ましい。
線膨張率は、そのようなものが存在するならば、最上層11と「中間層である芯材12」と最下層13とがラミネートされた状態で、瓦棒屋根に用いられているガルバリウム鋼鈑と同じ1.17×10-5[K-1]程度であることが特に好ましい。すなわち、1.0×10-5[K-1]以上、1.5×10-5[K-1]以下が最も好ましい。
【0063】
最上層11の線膨張率が大き過ぎると、前記したような障害が生じる場合があり、温度変化によって変形する場合がある。
一方、小さ過ぎると、該値を満たす樹脂が存在しない若しくは極めて高価となる場合がある。
【0064】
<<<二軸延伸ポリエステルフィルム>>>
引張弾性率(ヤング率)が、3000MPa以上5500MPa以下であり、熱線膨張率が、縦方向・横方向ともに、2.0×10-5[K-1]以下である樹脂フィルムとしては、二軸延伸ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等があるが、それらのうち、入手の容易さ、価格、薄膜特性、強度等の点から、二軸延伸ポリエステルフィルムが最も優れているので、本発明では、最上層11と最下層13は、二軸延伸ポリエステルフィルムであることが必須である。
【0065】
<<<最上層の厚み>>>
最上層11の厚みは、5μm以上100μm以下が好ましく、7μm以上80μm以下がより好ましく、10μm以上60μm以下が更に好ましく、12μm以上50μm以下が特に好ましい。
【0066】
最上層11の厚みが小さ過ぎると、上記した引張弾性率(ヤング率)が小さいときと同様の問題が生じる場合があり、最上層11の二軸延伸ポリエステルフィルムの引張弾性率(ヤング率)が大きいことによる前記効果を発揮できない場合がある。
例えば、チャンネル状覆いテープ材1が瓦棒Kと接していない、「ハゼ締め部とハゼ締め部の中間部」である天井部1aや、「ハゼ締め部直上部1bとヘラ状部1eの中間部」である傾斜部1cが撓んだり、塗膜防水層の温度変化による膨張によって、更に撓んだりする場合等がある。
一方、最上層11の厚みが大き過ぎると、施工面である瓦棒屋根に用いられているガルバリウム鋼鈑等の接合部の厚みによる段差に追随し難くなったり、現場で切断し難くなったり、コスト高になったりする場合がある。
【0067】
<<<最上層の上面の処理>>>
本発明のチャンネル状覆いテープ材1の最上面には、該チャンネル状覆いテープ材1の上から塗布する塗膜防水材との密着性が良好になる表面処理が施してあることが好ましい。
詳しくは、前記テープ基材10の上面、すなわち前記テープ基材10の最上層11の上面には、「前記チャンネル状覆いテープ材1で瓦棒屋根に直線状に存在するハゼ締め部から溝板(ふき板)までを覆った後に該チャンネル状覆いテープ材1の上から塗布する塗膜防水材」との密着性が良好になる表面処理が施してあることが好ましい。
【0068】
具体的には、本発明の覆いテープ材のテープ基材10の最上層11である二軸延伸ポリエステルフィルムには、上面(塗膜防水層が施工される面)に、易接着処理として、例えば、コロナ処理機でコロナ処理(表面改質)を行うか、フィルム製造時にコロナ処理機でコロナ処理(表面改質)を行ったものを用いることが好ましい。また、易接着処理として、コロナ処理機でコロナ処理した後に、ポリウレタン樹脂等の樹脂をビヒクルとして含有する溶剤型のインキを、グラビアロール等で塗布して乾燥することが好ましい。
【0069】
<<テープ基材の中間層>>
本発明のチャンネル状覆いテープ材1のテープ基材10の中間層12は、引張弾性率(ヤング率)が、5MPa以上2000MPa以下の、軟質塩化ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエステル樹脂(PET)、天然ゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPT)、ブチルゴム(IIR)、又は、ポリウレタンゴム(U)を有する芯材であることが必須である(
図9参照)。
【0070】
<<<中間層の引張弾性率(ヤング率)>>>
中間層12の引張弾性率(ヤング率)は、5MPa以上2000MPa以下であることが必須であるが、10MPa以上1700MPa以下であることが好ましく、30MPa以上1500MPa以下であることがより好ましく、50MPa以上1300MPa以下であることが特に好ましい。
【0071】
中間層12の引張弾性率(ヤング率)が小さ過ぎると、前記したような障害が生じる場合があり、特に、中間層12自体の剛性がなくなり、下地に接することなくテープ基材10のみとなる「ハゼ締め部とハゼ締め部の中間部(天井部1a)、及び、ハゼ締め部直上部1bとヘラ状部1eの中間部(傾斜部1c)への積雪等の荷重によって、凹み易くなる場合がある。
【0072】
一方、中間層12の引張弾性率(ヤング率)が大き過ぎると、前記したような障害が生じる場合があり、特に、中間層の芯材12は、最上層11及び最下層13の二軸延伸ポリエステルフィルムと比較して線膨張率が大きく、かつ、厚みが大きいことが好ましいため、中間層12の線膨張を最上層11及び最下層13で拘束できず、高温時には膨張し、長手方向のチャンネル状覆いテープ材1がぶつかって座屈し、低温時には収縮してしまう場合等がある。
また、施工時の鋏又はカッターによるカッティング作業において簡単に切断することが困難になる場合等がある。
【0073】
<<<中間層の樹脂又はゴム>>>
中間層12は、上記樹脂又はゴムを含有する芯材であることが必須である。
これらの樹脂又はゴムであれば、上記引張弾性率(ヤング率)の範囲を満たすと共に、強度、線膨張率、価格等が好適である。
【0074】
例えば、軟質塩化ビニル等には可塑剤が含有されているが、本発明における中間層12の物性は、該可塑剤が含有されている状態での樹脂又はゴムとしての物性である。すなわち、軟質塩化ビニル以外にも、最初から「例えば可塑剤等の配合物」が含有されて1種の「樹脂又はゴム」になっているものは、配合物が含有された形で「樹脂又はゴム」とみなす。
また、ポリエチレン樹脂に関しては、高密度(HDPE)、中密度(MDPE)、低密度(LDPE)は問わない(何れでもよい)。更に、ポリプロピレン樹脂の延伸の有無は問わない(何れでもよい)。
また、ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂の具体的組成は、上記引張弾性率(ヤング率)の範囲を満たして、中間層12として使用可能であれば何れでもよい。
【0075】
<<<中間層の厚み>>>
中間層12の厚みは、0.05mm以上1.2mm以下が好ましく、0.08mm以上1.0mm以下がより好ましく、0.12mm以上0.8mm以下が更に好ましく、0.15mm以上0.6mm以下が特に好ましい。
【0076】
中間層12の厚みが小さ過ぎると、前記したのと同様の問題が生じる場合があり、特に撓み易くなり、下地に接することなくテープ基材10のみとなる、ハゼ締め部とハゼ締め部の中間部や、ハゼ締め部直上部1bとヘラ状部1eの中間部(傾斜部1c)が凹み易くなる場合がある。
【0077】
一方、中間層12の厚みが大き過ぎると、剛性が大きくなる場合;重くなり過ぎて扱い難くなる場合;製品として紙管等に巻き取られているものは、延反した場合に巻き癖が残る場合;紙管等に巻かれた外側の二軸延伸ポリエステルフィルムの変形量が弾性域を超えて元に戻らなくなったり、皺が発生したりする場合;等がある。
【0078】
中間層12は、2枚以上を積層して上記厚みにしてもよい。その場合、上記した中間層12の樹脂又はゴムの中から異なる種類の樹脂又はゴムを積層してもよいが、同一種類の樹脂又はゴムを積層することが好ましい。
【0079】
<<<中間層に含有される無機充填剤>>>
中間層の芯材12には、顔料以外の無機充填剤が含有されていないか、又は、無機充填剤が該芯材全体に対して70質量%以下で含有されていることが好ましい。
中間層12の樹脂・ゴムの種類によっては、無機充填材が含有されていなくてもよい場合、すなわち、含有させなくても前記物性値の範囲を満たし、性能が出る場合もあるが、中間層12の樹脂・ゴムの種類によっては、無機充填材が含有されている方がよい場合がある。
【0080】
無機充填材を含有させると、機械的強度、荷重撓み温度、寸法安定性(線膨脹率が小さくなる)、硬度等を向上させることができ、また、増量材としてコストダウンにも寄与できる。
【0081】
無機充填剤が含有されているとき(含有が好ましい樹脂等の場合)の含有率は、芯材全体に対して70質量%以下が好ましいが、5質量%以上60質量%以下がより好ましく、10質量%以上50質量%以下が更に好ましく、20質量%以上40質量%以下が特に好ましい。
【0082】
無機充填剤を含有させる場合、言い換えれば無機充填剤の含有を必要とする場合、該無機充填剤の含有量が少な過ぎると、硬度等の機械的強度が落ちる、荷重撓み温度が下がる、線膨脹率が大きくなって寸法安定性が悪くなる、樹脂等の含有比率が上がり高価になる、等の場合がある。
一方、該無機充填剤の含有量が多過ぎると、線膨張率が下がり、引張弾性率(ヤング率)が上がるものの、柔軟性がなくなり、脆化し易くなる場合があり、紙管に巻いたり広げたりした際に中間層12に亀裂を生じる場合等がある。
【0083】
上記無機充填材は、特に限定はされないが、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、ケイ灰石、カーボンブラック、グラファイト、カオリンクレー、焼成カオリン、マイカ、シリカ等が、上記性能を与え易いため等の点から好ましい。
【0084】
また、中間層の芯材12として、合成紙を用いることもできるが、合成紙には、前記樹脂の中に炭酸カルシウム等の無機充填剤が、上記範囲の量含有されており、それによって好適な中間層の芯材12を与えることが可能である。
【0085】
<<テープ基材の最下層>>
本発明のチャンネル状覆いテープ材1のテープ基材10の最下層13としては、前記した最上層11と同様のものが用いられる。
すなわち、最下層13は、引張弾性率(ヤング率)が、3000MPa以上5500MPa以下であり、線膨張率が、縦方向、横方向ともに、2.0×10
-5[K
-1]以下の二軸延伸ポリエステルフィルムであることが必須である(
図9参照)。
【0086】
前記した最上層11の引張弾性率(ヤング率)、線膨張率、厚み等の、必須範囲、好適な値の範囲が最下層13にも適用される。
最下層13に最上層11と全く同じフィルムを用いる必要はないが、ただ、最下層13としては最上層11と同じフィルムを用いることが特に好ましい。
【0087】
<<最上層、中間層及び最下層の積層>>
本発明のチャンネル状覆いテープ材1は、最上層のフィルム11と中間層の芯材12が、及び、前記中間層の芯材12と前記最下層のフィルム13が、ドライラミネート又は押出しラミネートによって積層されてなるものであることが好ましい(
図9(a)(b)参照)。
「最上層の二軸延伸ポリエステルフィルム11と中間層の芯材12」及び「中間層の芯材12と最下層の二軸延伸ポリエステルフィルム13」は、限定はされないが、ドライラミネート若しくは押出しラミネートによって積層されることが好ましい。
【0088】
中間層12と最下層13との接着にはラミネート接着剤13aを用いることも好ましく、最上層11と中間層12との接着にはラミネート接着剤11aを用いることも好ましい(
図9(b)参照)。
【0089】
特に好ましい態様としては、限定はされないが、中間層12の片面に、最下層の二軸延伸ポリエステルフィルム13をラミネートにより積層させ、次いで、該中間層12の該ラミネートがされていない面に、最上層11の「(好ましくは前記したポリウレタン樹脂インキ等で易接着処理をした)二軸延伸ポリエステルフィルム(の未処理面)」を、ドライラミネート又は押出しラミネートによって積層させる態様が挙げられる。
【0090】
ラミネート方法は、その後に施される粘着層20の粘着剤の種類によって選定することも好ましい。
例えば、該粘着剤がブチル系で粘着層20を形成させる場合、粘着剤の塗工温度は50~120℃が好ましく、両面テープの付与で粘着層20を形成させる場合は、常温での貼合わせとなることから、ラミネート方法は、ドライラミネート、押出しラミネートのどちらでも問題ない。
【0091】
上記した積層によって、それぞれ前記した厚みを有する、最上層11、中間層12、最下層13がラミネートされ、適度な剛性を有した、テープ基材10となり、チャンネル状覆いテープ材1となる。
こうして得られたテープ基材10は、最上層のフィルム11、ラミネート接着剤11a、中間層の芯材12、ラミネート接着剤13a、最下層のフィルム13の計5層構造となる(
図9(b)参照)。
【0092】
上記製造方法や態様によって、引張弾性率(ヤング率)の低い中間層の芯材12を、薄膜で引張弾性率(ヤング率)の高いフィルムによって、上下から全面に接着し積層したテープ基材10が得られる。
【0093】
<<テープ基材の他の層>>
なお、本発明のチャンネル状覆いテープ材1におけるテープ基材10は、少なくとも、最上層11、中間層12、及び、最下層13を有していればよく、本発明の効果を損なわない範囲において、それらの層の間やそれらの層の上若しくは下に、他の層を1層又は2層以上有していてもよい。
該「他の層」としては、上記したラミネート接着剤の層の他に、例えば、渦電流膜厚計での塗膜防水層(ウレタン防水層等)の膜厚測定のためのアルミ箔等が挙げられる。
【0094】
<<テープ基材の総厚>>
テープ基材10の総厚は、前記した、最上層11、中間層12、最下層13の厚み、更には、ラミネートに用いたラミネート接着剤の厚みの合計で決まり、好ましい総厚も計算できるが、上記したドライ/ウェットラミネート接着剤等の厚みも考慮すると(合計すると)、80μm~1500μmが好ましく、120μm~1400μmがより好ましく、160μm~1300μmが更に好ましく、200μm~1200μmが特に好ましい。
【0095】
撓みに対する抵抗性(荷重)は、厚さの3乗に比例することから、総厚が上記範囲で、引張弾性率の高い最上層11と最下層13が、中間層12を上下から挟んだ(積層した)テープ基材10を有するチャンネル状覆いテープ材1は、撓み難く(変形し難く)、平滑な表面状態のまま、施工面に貼り付けることができる。
例えば、16μmと比較して5倍厚い80μm、10倍厚い160μmでは、撓みに対する抵抗性が、80μmでは16μmの125倍、160μmでは16μmの1000倍撓み難くなる。
【0096】
<山折り加工、谷折り加工>
本発明のチャンネル状覆いテープ材1は、少なくとも、天井部1a、前記瓦棒Kのハゼ締め部の略直上に位置するハゼ締め部直上部1b、前記瓦棒屋根の溝板Pの表面に接触させるヘラ状部1e、該ハゼ締め部直上部1bと該ヘラ状部1eとの間に存在する傾斜部1c、及び、該傾斜部1cと該ヘラ状部1eの間の屈曲可能部1dを有し、該ハゼ締め部直上部1bに山折り加工が施され、該屈曲部に谷折り加工が施されているものであることが好ましい(
図6参照)。
【0097】
本発明のチャンネル状覆いテープ材1における、天井部1a、ハゼ締め部直上部1b、ヘラ状部1e、傾斜部1c等の定義については、
図5に示した通りであり、また、前記した部分(箇所)である。
チャンネル状覆いテープ材1の、「ハゼ締め部の略上部を覆う箇所」から「瓦棒屋根のふき板を覆う箇所(ヘラ状部1e)」にかけて立ち下がっている部分を、チャンネル状覆いテープ材1の「傾斜部1c」と定義する。
【0098】
本発明のチャンネル状覆いテープ材1は、瓦棒Kのハゼ締め部の上に位置する「ハゼ締め部の略直上」に山折り加工を1本以上、傾斜部1cとヘラ状部1eが接する直線上に谷折り加工を1本以上施されたものであることが更に好ましい。なお、「1本以上」とは、1個所に1本以上ということであり、左右2箇所あるので、各1本、計2本以上と言うことである。
また、円弧形状のハゼ締め部をトレースして覆うために、一か所のハゼ締め部の略直上部分に対しても複数本施されることが好ましい(
図5、1b)。それによって、ハゼ締め部との粘着面積も広くなると共に、ピン角の場合に懸念される出隅部分の塗膜防水材の膜厚確保不足の解消が図れる。
【0099】
該山折り加工、該谷折り加工は、切罫(はんぎれ・ハーフカット)、折罫(押罫・スジ押し)、ミシン罫(ミシン目・破線)、又は、リード罫と言った加工法によって直線的に加工されていることが好ましい。
【0100】
本発明のチャンネル状覆いテープ材1は、前記溝板Pと前記傾斜部1cがなす角度である傾斜角度Dが90°以下となるように、上記山折り加工と谷折り加工が施されているものであることが更に好ましい(
図6参照)。
前記した通り、該傾斜角度Dは、30°以上90°未満がより好ましく、40°以上80°以下が更に好ましく、45°以上70°以下が特に好ましいので、上記山折り加工と谷折り加工は、瓦棒Kと溝板Pとをオーバーラップさせて覆ったときに、該傾斜角度Dが上記(より、特に)好ましい範囲になるような箇所に、それぞれ施されていることが望ましい(
図6参照)。
【0101】
<チャンネル状覆いテープ材が有する粘着層>
本発明のチャンネル状覆いテープ材1は、テープ基材10の下に粘着層20が存在することが好ましい。該テープ基材10の最下層13の下に粘着層20が存在することが好ましいと言うことであり、該テープ基材10の下に、途中に他の層の介在があって、その下に粘着層20を有するものであっても好ましい。
【0102】
本発明のチャンネル状覆いテープ材1における粘着層20の位置としては、例えば、以下の(1)(2)(3)が挙げられる。
(1)ハゼ締め部直上部1bの下面、及び、ヘラ状部1eの下面に存在する態様(図示せず)
(2)天井部1a、ハゼ締め部直上部1bの下面、及び、ヘラ状部1eの下面に存在する態様(
図7、
図8に示す)
(3)傾斜部1cをも含めテープ基材10の下面全体に存在する態様(図示せず)
なお、上記(1)(2)(3)の表現は、瓦棒Kの左側と右側の両方を含むものである。
上記(1)(2)では、チャンネル状覆いテープ材1の下面に、粘着層20がストライプ状に設けられていることになる。
【0103】
該粘着層20の特に好ましい態様(位置)は、前記した効果を得るために、上記(2)である。
(2)であれば、(1)に比べて、作業者は、多少ずれても常に、漏水や錆発生や緩みの起り易い「ハゼ締め部」の上を、粘着層20の付いたチャンネル状覆いテープ材1で、容易に覆うことができる。
また、傾斜部1c(の中央付近)は、粘着層20が不要な(意味をなさない)ので、(2)であれば、(3)よりコスト的に有利である。
【0104】
上記粘着層20の厚みは、0.1mm以上1.5mm以下であることが好ましく、0.2mm以上1.2mm以下であることがより好ましく、0.3mm以上1.0mm以下であることが特に好ましい。
【0105】
<粘着層の粘着剤の種類と粘着層の形成方法>
本発明におけるテープ基材10の粘着層20は、好ましくは、最下層の二軸延伸ポリエステルフィルム13の下に、該粘着層20の熱融着、該粘着層20の材料の熱融解塗布、該粘着層20の材料の溶液塗布、又は、該粘着層20を有する両面粘着テープの付与、等により設けられる。
かかる粘着層20の付与方法としては、公知の方法が用いられる。
【0106】
上記粘着層20の材質は、ブチル系粘着剤、改質アスファルト系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、アクリル樹脂系粘着剤、シリコーンゴム系粘着剤、ウレタン樹脂系粘着剤、又は、ブチルゴム系粘着剤であることが好ましい。また、両面粘着テープに一般に用いられている粘着剤が好ましい。
【0107】
<粘着層の付与に両面テープを用いるとき等の粘着剤>
本発明のチャンネル状覆いテープ材1においては、上記粘着層20を付与するのに、両面テープをラミネートすることによってもよく、特に限定はないが、そのときの粘着剤としては、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、アクリル樹脂系粘着剤、シリコーンゴム系粘着剤、ウレタン樹脂系粘着剤、ブチルゴム系粘着剤、改質アスファルト系粘着剤等であることが好ましい。
該両面テープの構成は、粘着剤の層の中間に、基材として、フィルム、ネット、不織布、織布、発泡体等を有していてもよく、該基材を有していなくてもよい。また、粘着剤自体が発泡していてもよく、非発泡品でもよい。
【0108】
<チャンネル状覆いテープ材が有する離型フィルム又は離型紙>
本発明のチャンネル状覆いテープ材1は、更に、前記粘着層20の表面に離型フィルム又は離型紙30を有するものであることが好ましい。
該「離型フィルム又は離型紙30」としては、公知のものが用いられ得る。粘着層20の付与に両面テープを用いる場合は、該両面テープに既に存在する「離型フィルム又は離型紙30」が流用できる場合もある。
【0109】
<チャンネル状覆いテープ材の切断強度>
本発明のチャンネル状覆いテープ材1は、鋏又はカッターで切れる程度以下の切断強度を有するものであることが好ましい。
本発明のチャンネル状覆いテープ材1が、前記した、テープ基材10のラミネート接着剤や「他の層」;粘着層20;離型フィルム又は離型紙30;等の層を有する場合でも、それら全体(全層)が鋏又はカッターで切れる程度の切断強度を有するものであることが好ましい。
本発明のチャンネル状覆いテープ材1には、鋏又はカッターで切り難い硬い素材(材料)が存在しないので、施工現場での作業性が良い。
【0110】
<チャンネル状覆いテープ材の製造>
本発明のチャンネル状覆いテープ材1の好ましい製造方法を以下に具体的に記載するが、本発明のチャンネル状覆いテープ材1は、かかる(具体的な)製造方法に限定されるものではない。
【0111】
1.0m程度の広幅の二軸延伸ポリエステルフィルム、及び、1.0m程度の広幅の中間層の芯材12を用いることが特に好ましい。限定はされないが、中間層12の片面に、最下層13の広幅の二軸延伸ポリエステルフィルムをラミネートにより積層させ、次いで、該中間層12の該ラミネートがされていない面に、最上層11の「(好ましくは前記したポリウレタン樹脂インキ等で易接着処理をした)幅広の二軸延伸ポリエステルフィルム(の未処理面)」を、ドライラミネート又は押出しラミネートによって積層させることが特に好ましい。
【0112】
これによって、それぞれ前記した厚みを有する、最上層11、中間層12、最下層13がラミネートされた適度な剛性を有する1.0m程度の広幅のテープ基材10となる。
【0113】
こうして得られた切断前の広幅のテープ基材10は、最上層のフィルム11、ラミネート接着剤11a、中間層の芯材12、ラミネート接着剤13a、最下層のフィルム13の計5層構造となる。
それによって、引張弾性率(ヤング率)の低い中間層の芯材12を、薄膜で引張弾性率(ヤング率)の高いフィルムによって、上下から全面に接着し積層した1.0m程度の広幅の「スリット(切断)加工前のテープ基材10」が得られる。
【0114】
上記広幅のテープ基材10を、160mm~240mmの製品寸法にスリット(切断)し、好ましくは、前記した「山折り加工、谷折り加工」を施した後、最下層13に前記した粘着剤を塗工して粘着層20を設けた後、離型フィルム又は離型紙30を貼合わせ、又は、両面テープを貼合わせる。
また、上記広幅のテープ基材10に、前記した山折り加工・谷折り加工を施した後、最下層13に前記した粘着剤を塗工して粘着層20を設けた後、離型フィルム又は離型紙30を貼合わせ、若しくは、両面テープを貼合わせる。次いで、例えば、160mm~240mmの製品寸法に、スリット(切断)する。こうすることで、数本の製品を製造効率良く製造することができるため、安価に製品を提供することができる。
【0115】
<チャンネル状覆いテープ材の製品形態>
本発明のチャンネル状覆いテープ材1は、離型紙又は離形フィルム30と共に、紙管等の管に巻きつけて製品とすることが好ましい。
本発明は、前記のチャンネル状覆いテープ材1をロール状に巻いてなることを特徴とするチャンネル状覆いテープ材ロールでもある。
【0116】
紙管等の管に巻き取られた際に、管の内側に接するテープ基材10の最上層の二軸延伸ポリエステルフィルム11と、最下層の二軸延伸ポリエステルフィルム13とは、曲率の相違で、外側となる最下層の二軸延伸ポリエステルフィルム13が伸ばされた状態となるため、広げた際にカール状の癖が発生することが懸念される。
【0117】
実用上、弾性変形として考えられるのは、ひずみが1%位までであるので、外側となる最下層の二軸延伸ポリエステルフィルム13の伸びが、この範囲になるような直径を有する管を選定することが好ましい。
そのような管を使用すれば、本発明のチャンネル状覆いテープ材1は、ロール状に巻いておいても、作業現場で広げた(解いた)際にカール状の癖が発生し難いので、チャンネル状覆いテープ材ロールの形態で供給することができる。
【0118】
[本発明のチャンネル状覆いテープ材を使用する防水改修方法]
本発明は、前記の本発明のチャンネル状覆いテープ材1を用いて、瓦棒屋根に直線状に存在する瓦棒Kと溝板Pとをオーバーラップさせて覆うことを特徴とする瓦棒屋根の防水改修方法でもある(
図8参照)。
更に、瓦棒屋根の左右に存在するハゼ締め部からふき板までを、ハット状に又は台形状に、一体でオーバーラップして覆い、その上から塗膜防水材を塗布することを特徴とする瓦棒屋根の防水改修方法でもある(
図8参照)。
【0119】
本発明のチャンネル状覆いテープ材1は、改修の際に特にその効果を発揮する。
かかる瓦棒屋根の防水改修方法を用いれば、前記したような優れた効果を発揮する。
【0120】
また、本発明は、前記の本発明のチャンネル状覆いテープ材1を用いて、「溝板Pと前記傾斜部1cがなす角度である傾斜角度D」が90°以下となるように瓦棒Kを覆う上記の瓦棒屋根の防水改修方法でもある(
図8参照)。
該傾斜角度Dは、前記した通り、30°以上90°未満がより好ましく、40°以上80°以下が更に好ましく、45°以上70°以下が特に好ましい。
このような傾斜角度Dになるように、本発明のチャンネル状覆いテープ材1を用いて瓦棒Kを覆うことによって、前記したような優れた効果を奏する。
【0121】
[本発明のチャンネル状覆いテープ材を使用する瓦棒屋根の塗膜防水改修方法]
また、本発明は、前記の本発明のチャンネル状覆いテープ材1を用いて、瓦棒屋根に直線状に存在する瓦棒Kと溝板Pとをオーバーラップさせて覆った後、その上から防水塗料を塗布することを特徴とする瓦棒屋根の塗膜防水改修方法でもある。
【0122】
代表的な塗膜防水材としてのウレタン塗膜防水材には、JIS A 6021 屋根用塗膜防水材のウレタンゴム系の中に高伸長形(引張強さ:2.3N/mm2以上、引裂強さ:14N/mm以上、破断時の伸び率:450%以上)と、高強度形(引張強さ:10N/mm2以上、引裂強さ:30N/mm以上、破断時の伸び率:200%以上)がある。
【0123】
一般的な高伸長形のウレタン塗膜防水材は、主剤(イソシアネートプレポリマー)と硬化剤(ポリオールとポリアミンに顔料や無機フィラー、可塑剤等を混錬したコンパウンド)からなる2成分形と、イソシアネートプレポリマーと脱水した顔料や無機フィラー、可塑剤及び潜在性硬化剤(空気中の湿気(水分)と反応することで炭酸ガス発生するソシアネートプレポリマーより早く空気中の湿気(水分)と反応し複数のアミノ基と水酸基を生成し、イソシアネートプレポリマーと反応する硬化剤)等を混錬したコンパウンドからなる1成分形がある。
【0124】
高伸長形のウレタン塗膜防水材は、2成分形の場合は主剤と硬化剤の2成分を混合してコテや専用器具等を用いて塗り拡げることで、2つの成分が化学的に反応して徐々に硬化し、約1日かけて継ぎ目のないシームレスな防水層になる。また、1成分形は、コテや専用器具等を用いて塗り拡げることで、湿気と化学的に反応して徐々に硬化し、約1日かけて継ぎ目のないシームレスな防水層になる。
【0125】
高伸長形のウレタン塗膜防水材には、2成分形及び1成分形ともに、陸屋根の平場面に塗布することでセルフレベリング性によって平滑に仕上がる平場用製品と、立上がり面に塗布しても垂れずに塗膜を形成する揺変性(チクソ性)を有した立上がり用製品があり、塗布する下地の勾配を考慮して適宜使い分けることで、陸屋根全体を継ぎ目のないシームレスなウレタン防水層が形成される。また、ウレタン防水層の総厚は、3.0mmが標準的な厚みとされ、厚みを確保するために2層以上の工程で行われる。
【0126】
また、一般的な高強度形のウレタン塗膜防水材は、専用の機械で一定の温度まで加温して低粘度化させた主剤と硬化剤を各々のホースにて圧送し、吹付用ガン先端で混合してスプレー塗布する超速硬化ウレタン防水材で、塗布後10秒程度で硬化し、30分程度で所期の物性を発現する。
【0127】
高強度形の超速硬化ウレタン塗膜防水材は、スプレー塗布されたミストがレベリングすることなく塗着した部分で硬化するため、平場面と立上がり面など勾配の区別なくウレタン塗膜の膜厚確保が可能となることから、連続して必要なウレタン防水層の総厚まで連続工程で確保することができるため、瓦棒屋根の塗膜防水改修方法において最も施工性が良く、且つ耐久性も高い。
【0128】
本発明の瓦棒屋根の塗膜防水改修方法を用いれば、前記したような優れた効果を発揮する。
本発明の「瓦棒屋根の塗膜防水改修方法」によれば、スプレーする際に、瓦棒Kに起因する影ができ難く、均一な防水塗膜をシームレスに塗布することができる点から、塗膜防水材をスプレー方式で吹き付ける塗膜防水法に更に好適であり、更に、速硬化ウレタン塗膜防水材のスプレー方式による吹付作業に、特にマッチングしている(特に好適である)。
【実施例0129】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0130】
以下、本発明のチャンネル状覆いテープ材1が有するテープ基材10の製造方法・構成と、テープ基材10の態様について具体的に記載する。
また、以下の実施例と比較例において使用した「最上層11・最下層13」と「中間層の芯材12」の、態様(物質名(商品名)、厚み等)、及び、物性値を、まとめて表1に示す。
【0131】
実施例で最上層と最下層に使用した「二軸延伸ポリエステルフィルム(表1では「二軸延伸PET」と記載)」は、何れも、東洋紡株式会社製の「製品名:TOYOBO ESTER5107」である。比較例で使用したものも同様である。
【0132】
全ての実施例と比較例で用いた「二軸延伸PET」の線膨張率は、何れも、縦方向、横方向ともに、1.5×10-5[K-1]である。
【0133】
実施例1
最上層と最下層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTER5107、東洋紡株式会社製)25μm厚と、中間層として、A4サイズの「ポリエチレン樹脂中に無機充填材として炭酸カルシウムが、ポリエチレン樹脂:炭酸カルシウム=40:60(質量比)で分散混合されたもの」(製品名:ストーンペーパーSTO、台湾龍盟科技股有限公司製)0.25mm厚(250μm厚)とを、ドライラミネート接着剤にてドライラミネートした。
【0134】
実施例2
最上層と最下層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTER5107、東洋紡株式会社製)38μm厚と、中間層として、A4サイズの「ポリエチレン樹脂中に無機充填材として炭酸カルシウムが、ポリエチレン樹脂:炭酸カルシウム=40:60(質量比)で分散混合されたもの」(製品名:ストーンペーパーSTO、台湾龍盟科技股有限公司製)0.25mm厚(250μm厚)とを、ドライラミネート接着剤にてドライラミネートした。
【0135】
実施例3
最上層と最下層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTER5107、東洋紡株式会社製)12μm厚と、中間層として、A4サイズの「塩化ビニル樹脂に、可塑剤と、無機充填材として炭酸カルシウムが、塩化ビニル樹脂:可塑剤:炭酸カルシウム=100:55:30(質量比)で分散混合された芯材(品番:11250002、株式会社タツノ化学製)0.25mm厚(250μm厚)」とを、ドライラミネート接着剤にてドライラミネートした。
【0136】
実施例4
最上層と最下層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTER5107、東洋紡株式会社製)25μm厚と、中間層として、A4サイズの「塩化ビニル樹脂に、可塑剤と、無機充填材として炭酸カルシウムが、塩化ビニル樹脂:可塑剤:炭酸カルシウム=100:55:30(質量比)で分散混合された芯材」(品番:11250002、株式会社タツノ化学製)0.25mm厚(250μm厚)を、ドライラミネート接着剤にてドライラミネートした。
【0137】
実施例5
最上層と最下層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTER5107、東洋紡株式会社製)50μm厚と、中間層として、A4サイズの「塩化ビニル樹脂に可塑剤と無機充填材として炭酸カルシウムが、塩化ビニル樹脂:可塑剤:炭酸カルシウム=100:55:30(質量比)で分散混合された芯材」(品番:11250002、株式会社タツノ化学製)0.25mm厚(250μm厚)を、ドライラミネート接着剤にてドライラミネートした。
【0138】
実施例6
最上層と最下層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTER5107、東洋紡株式会社製)16μm厚と、中間層として、A4サイズの「二軸延伸ポリプロピレン樹脂に無機充填材として炭酸カルシウムが、二軸延伸ポリプロピレン樹脂:炭酸カルシウム=41:24(質量比)で分散されたものであって、更に、ミクロボイド又は亀裂が35容積%で分散して存在している芯材(製品名:Nコート、中本パックス株式会社製)(厚み80μm)を、ドライラミネート接着剤にて2枚積層した芯材」0.16mm厚(160μm厚)とを、ドライラミネート接着剤にてドライラミネートした。
【0139】
実施例7
最上層と最下層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTER5107、東洋紡株式会社製)50μm厚と、中間層として、A4サイズの「二軸延伸ポリプロピレン樹脂に無機充填材として炭酸カルシウムが、二軸延伸ポリプロピレン樹脂:炭酸カルシウム=41:24(質量比)で分散されたものであって、更に、ミクロボイド又は亀裂が35容積%で分散して存在している芯材(製品名:エヌコート、中本パックス株式会社製)(厚み80μm)を、ドライラミネート接着剤にて2枚積層した芯材」0.16mm厚(160μm厚)とを、ドライラミネート接着剤にてラミネートした。
【0140】
実施例8
最上層と最下層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTER5107、東洋紡株式会社製)16μm厚と、中間層として、A4サイズの「二軸延伸ポリプロピレン樹脂に無機充填材として炭酸カルシウムが、二軸延伸ポリプロピレン樹脂:炭酸カルシウム=41:24(質量比)で分散されたものであって、更に、ミクロボイド又は亀裂が35容積%で分散して存在している芯材(製品名:エヌコート、中本パックス株式会社製)(厚み80μm)を、ドライラミネート接着剤にて3枚積層した芯材」0.24mm厚(240μm厚)とを、ドライラミネート接着剤にてラミネートした。
【0141】
実施例9
最上層と最下層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTER5107、東洋紡株式会社製)50μm厚と、中間層として、A4サイズの「二軸延伸ポリプロピレン樹脂に無機充填材として炭酸カルシウムが、二軸延伸ポリプロピレン樹脂:炭酸カルシウム=41:24(質量比)で分散されたものであって、更に、ミクロボイド又は亀裂が35容積%で分散して存在している芯材(製品名:エヌコート、中本パックス株式会社製)(厚み80μm)を、ドライラミネート接着剤にて3枚積層した芯材」0.24mm厚(240μm厚)とを、ドライラミネート接着剤にてラミネートした。
【0142】
比較例1
A4サイズの「ポリエチレン樹脂中に無機充填材として炭酸カルシウムが、ポリエチレン樹脂:炭酸カルシウム=40:60(質量比)で分散混合されたもの」(製品名:ストーンペーパーSTO、台湾龍盟科技股有限公司製)0.25mm厚(250μm)を用意し、それだけで、「テープ基材」とした。
【0143】
比較例2
A4サイズの「塩化ビニル樹脂に可塑剤と無機充填材として炭酸カルシウムが、塩化ビニル樹脂:可塑剤:炭酸カルシウム=100:55:30(質量比)で分散混合された芯材」(品番:11250002、株式会社タツノ化学製)0.25mm厚(250μm)を用意し、それだけで、「テープ基材」とした。
【0144】
比較例3
最上層と最下層として、高密度ポリエチレンフィルム(HDPE)10μm厚と、A4サイズの「塩化ビニル樹脂に可塑剤と無機充填材として炭酸カルシウムが、塩化ビニル樹脂:可塑剤:炭酸カルシウム=100:55:30(質量比)で分散混合された芯材」(品番:11250002、株式会社タツノ化学製)0.25mm厚をドライラミネート接着剤にてラミネートした。
【0145】
比較例4
最上層と最下層として、低密度ポリエチレンフィルム(LDPE)20μm厚と、A4サイズの「塩化ビニル樹脂に可塑剤と無機充填材として炭酸カルシウムが、塩化ビニル樹脂:可塑剤:炭酸カルシウム=100:55:30(質量比)で分散混合された芯材」(品番:11250002、株式会社タツノ化学製)0.25mm厚をドライラミネート接着剤にてラミネートした。
【0146】
比較例5
最上層と最下層として、低密度ポリエチレンフィルム(LDPE)40μm厚と、A4サイズの「塩化ビニル樹脂に可塑剤と無機充填材として炭酸カルシウムが、塩化ビニル樹脂:可塑剤:炭酸カルシウム=100:55:30(質量比)で分散混合された芯材1c」(品番:11250002、株式会社タツノ化学製)0.25mm厚をドライラミネート接着剤にてラミネートした。
【0147】
比較例6
A4サイズの二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTERE5107、東洋紡株式会社製)25μm厚を用意し、それだけで、「テープ基材」とした。
【0148】
比較例7
A4サイズの二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTERE5107、東洋紡株式会社製)50μm厚を用意し、それだけで、「テープ基材」とした。
【0149】
比較例8
A4サイズの二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTERE5107、東洋紡株式会社製)100μm厚を用意し、それだけで、「テープ基材」とした。
【0150】
比較例9
A4サイズの二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTERE5107、東洋紡株式会社製)188μm厚を用意し、それだけで、「テープ基材」とした。
【0151】
比較例10
A4サイズの「二軸延伸ポリプロピレン樹脂に無機充填材として炭酸カルシウムが、二軸延伸ポリプロピレン樹脂:炭酸カルシウム=41:24(質量比)で分散されたものであって、更に、ミクロボイド又は亀裂が35容積%で分散して存在している芯材(製品名:エヌコート、中本パックス株式会社製)(厚み80μm)を、ドライラミネート接着剤にて2枚積層した芯材」0.16mm厚(160μm厚)を用意し、それだけで、「テープ基材」とした。
【0152】
比較例11
A4サイズの「二軸延伸ポリプロピレン樹脂に無機充填材として炭酸カルシウムが、二軸延伸ポリプロピレン樹脂:炭酸カルシウム=41:24(質量比)で分散されたものであって、更に、ミクロボイド又は亀裂が35容積%で分散して存在している芯材(製品名:エヌコート、中本パックス株式会社製)(厚み80μm)を、ドライラミネート接着剤にて3枚積層した芯材」0.24mm厚(240μm厚)を用意し、それだけで、「テープ基材」とした。
【0153】
製造例1
実施例1~9、比較例1~11で得られたテープ基材10の下面に、スーパーブチルテープ(両面)No.5938(マクセル株式会社製)(チャンネル状覆いテープ材1における下面の粘着層の厚みが0.5mmとなるものである)を、
図5、
図7、
図8で示した箇所に貼合わせ、その後、離型フィルムを付与して、チャンネル状覆いテープ材1を調製した。
すなわち、チャンネル状覆いテープ材1の天井部1aの下面、ハゼ締め部直上部1bの下面、及び、ヘラ状部1eの下面に、粘着層を上記部材と方法で付与した(
図5、7、8参照)。
【0154】
評価例1
<表面平滑性の測定方法と評価結果>
瓦棒屋根の直線状に存在する瓦棒のハゼ締め部から、溝板(ふき板)Pにかけて、
図8に示したように、「実施例1~9及び比較例1~11で得られたテープ基材10に、製造例1で粘着剤を付与したチャンネル状覆いテープ材1」で覆い、(1)防水(防食)塗膜を付与する前の該チャンネル状覆いテープ材1の表面の平滑性、並びに、(2)防水塗料を塗布して防水(防食)塗膜を付与した後の該防水塗膜の表面の平滑性を以下のように評価した。
なお、平滑性を評価した個所は、(a)下地(溝板(ふき板)P)に接していないハゼ締め部とハゼ締め部の中間部(すなわち、天井部1a)、及び、(b)ハゼ締め部とヘラ状部1eの中間部(すなわち、傾斜部1c)である。
【0155】
後者(2)の(防水(防食)塗膜の表面の)平滑性は、瓦棒屋根の直線状に存在するハゼ締め部から溝板(ふき板)Pにかけての防水(防食)塗膜の外観(見栄え)に強く影響する。
また、前者の(チャンネル状覆いテープ材の表面の)平滑性(1)が良好なものは、後者の(防水(防食)塗膜の表面の)平滑性(2)も良好となることは別途確認してある。
【0156】
具体的には、上記(a)と(b)の個所が、撓まずに(へこまずに)、平滑性を担保できるか否かを、下記する剛軟度の測定、及び、下記する目視で検証した。
【0157】
「前者(1)の撓まない(凹まない)性質等の平滑性」も、「後者の防水塗膜の表面の平滑性」も、使用したチャンネル状覆いテープ材1が有するテープ基材10の剛軟度を測定すれば分かる(検証できる、又は、類推できる)ことは、別途確かめている。
【0158】
評価例1(A)
<剛軟度の測定方法>
チャンネル状覆いテープ材1が、撓まず、平滑性を担保できることを評価する方法として、該チャンネル状覆いテープ材1に使用するテープ基材10について、日本工業規格JIS L1096:2010、B法(スライド法)を用いて評価した。スライド法による剛軟度は、試験片の単位幅について単位曲度に対する曲げモーメントで表されるため、剛軟度Br(mN・cm)を測定した。
【0159】
実施例及び比較例で調製した「チャンネル状覆いテープ材1のテープ基材10」について、単位面積当たりの質量(g/cm
2)を測り、約20mm×150mmの試験片を5枚ずつ採取した。
図11に示す試験機を用い、移動台をゆっくり下げて行き、試験片の自由端が移動台から離れるときのδ(cm)の値をスケールによって読み、次の式によって剛軟度:Br(mN・cm)を求めた。
【0160】
【0161】
Br:剛軟度(mN・cm)
W:試験片の単位面積当たり重力(mN/cm2)
L:試験片の長さ(cm)
δ:スケールの読み(cm)
【0162】
評価例1(B)
<目視による平滑性の評価方法>
「実施例1~9及び比較例1~11で得られたテープ基材10に製造例1で粘着剤と離型フィルムを付与したチャンネル状覆いテープ材1」から離型フィルムを剥離して、瓦棒から溝板(ふき板)Pにかけて、一体でオーバーラップさせて覆った。
【0163】
防水(防食)塗膜を付与する前の該チャンネル状覆いテープ材1の表面の平滑性(1)、すなわち、テープ基材10の表面の平滑性を目視で観察し、以下の判定基準で評価した。
前記(a)と(b)の個所が撓まずに(へこまずに)平滑性を担保できるか否かを、覆った直後と経時させて目視で観察し、以下の判定基準で評価した。
【0164】
<<目視による平滑性の判定基準>>
○:平滑である
△:若干変形する(若干撓む)
×:撓む
【0165】
<テープ基材の構成と評価結果のまとめ>
得られた剛軟度と平滑性を、テープ基材10の構成・物性と共に、表1に記載する。
【0166】
【0167】
上記表1から分かる通り、実施例1~9のテープ基材10では、剛軟度Brが高く、平滑性も優れていたが、比較例1~11のテープ基材では、剛軟度Brが低く、平滑性も劣っていた。
製造例1で粘着層を付与して得られた「実施例1~9のテープ基材10を有するチャンネル状覆いテープ材1」は、上記したそれぞれのテープ基材10と同様の優れた結果が得られ、前記した本発明の効果を全て奏した。
一方、製造例1で粘着層を付与して得られた「比較例1~11のテープ基材を有するチャンネル状覆いテープ材1」は、上記したそれぞれのテープ基材と同様の劣った結果しか得られず、前記した本発明の効果を奏さなかった。
本発明のチャンネル状覆いテープ材や瓦棒屋根の防水改修方法は、瓦棒のハゼ締め部からの漏水に対し、機能的にも外見的にも優れた方法で、低コストで簡便に対処でき、作業能率の向上も図れるため、瓦棒屋根の新規塗膜防水工事や、瓦棒屋根の塗膜防水改修工事等に広く利用されるものである。