(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090348
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】接合方法、接着剤及び接合構造
(51)【国際特許分類】
E01C 11/02 20060101AFI20240627BHJP
E01F 1/00 20060101ALI20240627BHJP
E01D 19/06 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
E01C11/02 A
E01F1/00
E01D19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206208
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000116769
【氏名又は名称】旭コンクリート工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】岸 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】福田 俊
(72)【発明者】
【氏名】山下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】山口 愼
(72)【発明者】
【氏名】上浦 健司
(72)【発明者】
【氏名】栗原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】河野 聡
(72)【発明者】
【氏名】原 洪太
【テーマコード(参考)】
2D051
2D059
2D101
【Fターム(参考)】
2D051AC04
2D051AF01
2D051AG11
2D051FA01
2D059AA13
2D059GG02
2D059GG37
2D059GG45
2D101CA17
2D101DA05
(57)【要約】
【課題】駅の乗降場や橋梁の道路等の基盤を構成する一方及び他方の表層構造物同士を好適に接合し得る接合方法及び接着剤を提供する。
【解決手段】駅の乗降場や橋梁の道路等の基盤1を構成する一方及び他方の表層構造物3同士を接合するにあたって、一方の表層構造物3の端部(端面3a)と他方の表層構造物3の端部(端面3a)との間に形成された離間空間Sに、硅砂を含有させた接着剤5を充填し、当該接着剤5を介して一方の表層構造物3の端部と他方の表層構造物3の端部とを接合するようにした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の表層構造物と、他方の表層構造物とを接合する接合方法であって、
前記一方の表層構造物の端部と前記他方の表層構造物の端部との間に形成された離間空間に、硅砂を含有させた接着剤を充填し、当該接着剤を介して前記一方の表層構造物の端部と前記他方の表層構造物の端部とを接合するようにした表層構造物同士の接合方法。
【請求項2】
前記接着剤の上面が、前記一方及び他方の表層構造物の上面と略連続する面を構成し得るように、前記離間空間に充填される請求項1記載の表層構造物同士の接合方法。
【請求項3】
前記基盤が、水平方向に離間して配された一方及び他方の下部構造物とこれら一方及び他方の下部構造物の上にそれぞれ敷設された前記一方及び他方の表層構造物とを備えてなるものであり、
前記接着剤を、前記一方及び他方の下部構造物に対しても接着させている請求項1記載の表層構造物同士の接合方法。
【請求項4】
前記硅砂が、4号硅砂である請求項1記載の表層構造物同士の接合方法。
【請求項5】
前記接着剤が、原料接着剤と硅砂とを重量比1対1で混合して作られたものである請求項1記載の表層構造物同士の接合方法。
【請求項6】
前記一方及び他方の下部構造物間にバックアップ材を配設した後に、当該バックアップ材の上に位置する前記離間空間に、前記接着剤を充填するようにした請求項3記載の表層構造物同士の接合方法。
【請求項7】
一方の表層構造物と、他方の表層構造物と、これら一方及び他方の表層構造物の間に配された伸縮継手とを接合する接合方法であって、
前記一方及び他方の表層構造物と前記伸縮継手との間に形成された離間空間に、硅砂を含有させた接着剤を充填することにより、当該接着剤を介して前記一方及び他方の表層構造物における端部と前記伸縮継手の端部とを接合するようにした表層構造物同士の接合方法。
【請求項8】
前記基盤が、水平方向に離間して配された一方及び他方の下部構造物とこれら一方及び他方の下部構造物の上にそれぞれ敷設された前記一方及び他方の表層構造物とを備えてなるものであり、
前記伸縮継手が、伸縮可能に構成された継手本体と、この継手本体の両端部に突設され前記一方及び他方の下部構造物に対して連結される連結部とを備えたものであり、
前記離間空間が、前記一方及び他方の表層構造物における端部と前記継手本体の端面との間に形成されている請求項7記載の表層構造物同士の接合方法。
【請求項9】
請求項1又は7の表層構造物同士の接合方法に用いられる接着剤であって、原料接着剤と硅砂とを重量比1対1で混合して作られたものである接着剤。
【請求項10】
一方の表層構造物と、他方の表層構造物とを接合する表層構造物同士の接合構造であって、
前記一方の表層構造物の端部と前記他方の表層構造物の端部との間に形成された離間空間に、硅砂を含有させた接着剤が充填され、当該接着剤を介して前記一方の表層構造物の端部と前記他方の表層構造物の端部とが接合されている接合構造。
【請求項11】
一方の表層構造物と、他方の表層構造物と、これら一方及び他方の表層構造物の間に配された伸縮継手とを接合する接合構造であって、
前記一方及び他方の表層構造物と前記伸縮継手との間に形成された離間空間に、硅砂を含有させた接着剤が充填され、当該接着剤を介して前記一方及び他方の表層構造物における端部と前記伸縮継手の端部とが接合されている接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅の乗降場や橋梁の道路等の基盤を構成する構造物同士の接合方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
駅の乗降場や橋梁の道路等の基盤は、アスファルト・コンクリート・鋼材等の温度収縮、繰り返し作用する交通荷重による振動、あるいは地震動等により、悪影響が及びにくいように、一般的に、十メートル程度の間隔を空けて縁切り部分(離間空間)が形成されたものとなっている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
従来における縁切り部分(離間空間)の処理は、離間した下部構造物における双方の端部にゴム製の伸縮継手を跨るように設けた上で、一方及び他方の表層構造物と伸縮継手との間に形成された凹み空間にモルタルを充填することにより行われていた。
【0004】
ところが、従来の構成のものでは、次に列挙するような不具合が生じやすいものとなっていた。
(1)充填されたモルタルが損傷し易い(ひび割れや破壊等)。
(2)伸縮継手の上面が雨天時において滑りやすい。
(3)伸縮継手を鋼材やアンカーボルトによって下部構造物に固定し、その後モルタルを充填するという作業が必要となるため、工数の削減に限界があり、工期が長期化し易い。
(4)縁切り部分(離間空間)が平面視において直線状のものでない場合(例えば、平面視において曲線状又は階段状のもの等。)には、専用の型枠を使って特別な形態の伸縮継手を製造する必要があるため、速やかな準備ができないだけでなく伸縮継手が高価なものとならざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、少なくとも、駅の乗降場や橋梁の道路等の基盤を構成する一方及び他方の表層構造物同士を好適に接合し得る接合方法及び接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0008】
請求項1に記載の表層構造物同士の接合方法は、一方の表層構造物と、他方の表層構造物とを接合する接合方法であって、前記一方の表層構造物の端部と前記他方の表層構造物の端部との間に形成された離間空間に、硅砂を含有させた接着剤を充填し、当該接着剤を介して前記一方の表層構造物の端部と前記他方の表層構造物の端部とを接合するようにしたものである。
【0009】
請求項2に記載の表層構造物同士の接合方法は、請求項1に係る構成において、前記接着剤の上面が、前記一方及び他方の表層構造物の上面と略連続する面を構成し得るように、前記離間空間に充填されるものである。
【0010】
請求項3に記載の表層構造物同士の接合方法は、請求項1に係る構成において、前記基盤が、水平方向に離間して配された一方及び他方の下部構造物とこれら一方及び他方の下部構造物の上にそれぞれ敷設された前記一方及び他方の表層構造物とを備えてなるものであり、前記接着剤を、前記一方及び他方の下部構造物に対しても接着させているものである。
【0011】
請求項4に記載の表層構造物同士の接合方法は、請求項1に係る構成において、前記硅砂が、4号硅砂であるものである。
【0012】
請求項5に記載の表層構造物同士の接合方法は、請求項1に係る構成において、前記接着剤が、原料接着剤と硅砂とを重量比1対1で混合して作られたものである。
【0013】
請求項6に記載の表層構造物同士の接合方法は、請求項3に係る構成において、前記一方及び他方の下部構造物間にバックアップ材を配設した後に、当該バックアップ材の上に位置する前記離間空間に、前記接着剤を充填するようにしたものである。
【0014】
請求項7に記載の表層構造物同士の接合方法は、一方の表層構造物と、他方の表層構造物と、これら一方及び他方の表層構造物の間に配された伸縮継手とを接合する接合方法であって、前記一方及び他方の表層構造物と前記伸縮継手との間に形成された離間空間に、硅砂を含有させた接着剤を充填することにより、当該接着剤を介して前記一方及び他方の表層構造物における端部と前記伸縮継手の端部とを接合するようにしたものである。
【0015】
請求項8に記載の表層構造物同士の接合方法は、請求項7に係る構成において、前記基盤が、水平方向に離間して配された一方及び他方の下部構造物とこれら一方及び他方の下部構造物の上にそれぞれ敷設された前記一方及び他方の表層構造物とを備えてなるものであり、前記伸縮継手が、伸縮可能に構成された継手本体と、この継手本体の両端部に突設され前記一方及び他方の下部構造物に対して連結される連結部とを備えたものであり、前記離間空間が、前記一方及び他方の表層構造物における端部と前記継手本体の端面との間に形成されているものである。
【0016】
請求項9に記載の接着剤は、請求項1又は7の表層構造物同士の接合方法に用いられる接着剤であって、原料接着剤と硅砂とを重量比1対1で混合して作られたものである。
【0017】
請求項10に記載の接合構造は、一方の表層構造物と、他方の表層構造物とを接合する接合構造であって、前記一方の表層構造物の端部と前記他方の表層構造物の端部との間に形成された離間空間に、硅砂を含有させた接着剤が充填され、当該接着剤を介して前記一方の表層構造物の端部と前記他方の表層構造物の端部とが接合されているものである。
【0018】
請求項11に記載の接合構造は、一方の表層構造物と、他方の表層構造物と、これら一方及び他方の表層構造物の間に配された伸縮継手とを接合する接合構造であって、前記一方及び他方の表層構造物と前記伸縮継手との間に形成された離間空間に、硅砂を含有させた接着剤が充填され、当該接着剤を介して前記一方及び他方の表層構造物における端部と前記伸縮継手の端部とが接合されているものである。
【0019】
なお、「原料接着剤」とは、硅砂と混合することにより本願発明に係る「接着剤」を形成するものを示す概念である。換言すれば、「原料接着剤」は、本願の接合方法又は接合構造に用いられる「接着剤」を製造するにあたって硅砂と混合する直前の工程のものである。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも、駅の乗降場や橋梁の道路等の基盤を構成する一方及び他方の表層構造物同士を好適に接合し得る方法及び接着剤を提供することができるものとなる。
【0021】
より具体的には、接着剤に硅砂を含有させることで、従来のゴムと同等の硬度を確保し、ハイヒールや傘の先端が刺さらないように対応できるにもかかわらず、従来のものと比較して高い変形性能を有する。
【0022】
さらに、接着剤に含まれる硅砂の摩擦効果により、雨天時の滑りを防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第一の実施形態の使用態様を示す概略図。
【
図2】同実施形態に係る基盤同士の接合部位を示す平面図。
【
図4】同実施形態に係る基盤同士が互いに離間した状態を示す概略図。
【
図5】本発明の第二の実施形態に係る基盤同士の接合部位を示す正断面図。
【
図6】同実施形態に係る基盤同士が互いに離間した状態を示す概略図。
【
図7】本発明の第三の実施形態に係る基盤同士の接合部位を示す正断面図。
【
図8】同実施形態に係る基盤同士が互いに離間した状態を示す概略図。
【
図9】同実施形態に係る両基盤の高さ位置がずれた状態を示す概略図。
【
図10】本発明の第四の実施形態に係る基盤同士の接合部位を示す平面図。
【
図12】同実施形態に係る基盤同士が互いに離間した状態を示す概略図。
【
図13】本発明の他の実施形態に係る基盤同士の接合の態様を示す平面図。
【
図14】本発明の他の実施形態に係る基盤同士の接合の態様を示す平面図。
【
図15】本発明の他の実施形態に係る基盤同士の接合の手順を示す説明図。
【
図16】同実施形態に係る基盤同士の接合の手順を示す説明図。
【
図17】同実施形態に係る基盤同士の接合の手順を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第一の実施形態を、
図1~
図4を参照して説明する。
【0025】
この実施形態は、本発明を、
図1に示すような駅の乗降場を構成する基盤1同士の接合部位に適用したものである。
【0026】
本実施形態に係る駅の乗降場を構成する基盤1は、
図2及び
図3に示すように、下部構造物2の上に表層構造物3を敷設してなるものである。この基盤1も、従来のものと同様に、アスファルト・コンクリート・鋼材等の温度収縮、繰り返し作用する交通荷重による振動、あるいは地震動等により、悪影響が及びにくいように、一般的に、十メートル程度の間隔を空けて離間空間Sが形成されている。すなわち、この基盤1の長手方向両端部には接合面を備えており、互いに隣接する基盤1の接合面間に離間空間Sを設定している。その上で、この離間空間Sに、接着剤5を利用して形成した接合部4を配して基盤1同士を接合するようにしている。
【0027】
ここで、本実施形態では、
図2及び
図3に示すように、互いに隣接する表層構造物3の端面3a間の距離は、下部構造体2間の端面2a間の距離よりも大きく設定している。その上で、本実施形態では、表層構造物3の端面3a間の空間に硅砂を含有させた接着剤5を充填し、これらを接合するようにしている。この接着剤5には、4号硅砂を含有させている。その際、充填された接着剤5の一部は下部構造物2の端部2bの上面に接し、この下部構造物2の端部2bをも接着するようにしている。また、接着剤5を充填する際に、接着剤5の上面5aが、両表層構造物3の上面3cと略連続する面を構成し得るようにしている。
【0028】
さらに詳述すると、離間空間Sには、樹脂と硅砂とを重量比1対1で混合して作られた接着剤5が充填される。より具体的には、この接着剤5は、主剤である変成シリコンエポキシ樹脂を2重量部、硬化剤であるポリアミンを1重量部、4号硅砂を3重量部配合することにより作られたものである。さらに詳述すると、本実施形態の接着剤5は、変成シリコンエポキシ樹脂を2重量部、ポリアミンを1重量部配合して作られる接着剤(以下、原料接着剤と称する)と、4号硅砂とを、重量比1対1で混合することにより作られる。この接着剤5の物性は、以下の通りである。引張強度は、JIS A 1439に準じた方法での測定値が1.0~2.0N/mm2である。硬度は、JIS K 6253に準じた方法での測定値が80以上である。伸び量は、JIS A 1439に準じた方法での測定値が5~20%である。耐候性は、メタルハライドランプ式促進耐候性試験機を用いたウェザーメーター試験での測定値(接着力、変形能力)が、30年(換算年数)以上である。
【0029】
本実施形態では、以下のような方法で基盤1を接合して駅の乗降場を形成するようにしている。まず、基盤1同士の間に離間空間Sを設定しつつ複数の基盤1を配置する。
【0030】
次いで、離間空間Sの上部、すなわちバックアップ材6の上方及び下部構造物2の上面が露出した部位の上方、さらに換言すれば表層構造物3の端面3a間の部位に、接着剤5の上面5aが当該接着剤5の両側に位置する表層構造物3の上面3cと略連続するように接着剤5を充填する。
【0031】
このようにして形成された駅の乗降場において、
図4に示すように基盤1同士が離間すると、両表層構造物3の端面3aにそれぞれ接着する接着剤5が引っ張られて変形するが、接着剤5が破断しない限り表層構造物3下方の水密性は保たれる。
【0032】
また、両基盤1が高さ方向にずれた場合も、同様に両表層構造物3の端面3aにそれぞれ接着する接着剤5が引っ張られて変形するが、接着剤5が破断しない限り表層構造物3下方の水密は保たれる。
【0033】
そして、基盤1同士が接近した場合は、両表層構造物3の端面3aにそれぞれ接着する接着剤5が圧縮されて変形するが、接着剤5が破断しない限り表層構造物3下方の水密は保たれる。
【0034】
ここで、本実施形態の接着剤5の性質は以下に述べるようなものである。
【0035】
以下、原料接着剤と4号硅砂とを重量比1対1で混合することにより作られた接着剤5、並びに比較対象である原料接着剤と3号硅砂とを重量比1対1で混合することにより作られた接着剤、及び他の比較対象である原料接着剤と5号硅砂とを重量比1対1で混合することにより作られた接着剤について述べる。
【0036】
圧縮強度は、JIS K 7181に準じた方法で、厚み18mmの板状に成形したものの表面における20mm×20mmの領域に作用を加えることにより測定している。その結果を表1に示す。
【0037】
【0038】
すなわち、4号硅砂を配合した本実施形態の接着剤5が、最も圧縮に対する耐性が高い。
【0039】
伸び率は、JIS K 6251に準じた方法で、厚み2mmの3号ダンベル形状に成形したものを引っ張り、破断したときの伸び率として測定している。その結果を表2に示す。
【0040】
【0041】
すなわち、4号硅砂を配合した本実施形態の接着剤5が、最も破断しにくい。
【0042】
さらに、以下に述べる方法により集中荷重による変化を測定している。この測定は、直径60mm、厚み5mmの円板状に成形した試料に、先端部の断面が1.0mm×5.8mmのマイナスドライバーを侵入させ、マイナスドライバーが厚み方向に1mm、3mm、4mm及び4.5mm侵入した時点の力の大きさを測定した。その結果を表3に示す。
【0043】
【0044】
すなわち、4号硅砂を配合した本実施形態の接着剤5が、最も集中荷重を受けた際に破断しにくい。
【0045】
そして、混合時及び充填時の作業性について述べると、3号硅砂を配合した接着剤は、硅砂の粒子が大きく分散しづらく、また、底部に空洞が生じることがあった。5号硅砂を配合した接着剤は、硅砂の粒子が細かく、混合する際の抵抗が大きく作業性に難があった。これらに対して、4号硅砂を配合した本実施形態の接着剤5は、粒子の分散性がよく、作業性も良好であった。
一方、原料接着剤と4号硅砂とを重量比1対1で混合するのが望ましいことを以下に示す。
以下、以下、原料接着剤と4号硅砂とを重量比1対1で混合することにより作られた接着剤5(以下実施例)、原料接着剤と4号硅砂とを重量比1対1.5で混合することにより作られた比較例1の接着剤、及び原料接着剤と4号硅砂とを重量比1.5対1で混合することにより作られた比較例2の接着剤について述べる。
実施例、比較例1及び比較例2の接着剤が硬化したものについて、A硬度計及びD硬度計を用い、JIS K 6253に準じた方法で、25℃の常温条件下、及び40℃環境下に30分置いた後の硬度を測定した。
結果を以下に示す。なお、表4は25℃の常温条件下で測定した硬度である。表5は40℃環境下に30分置いた後測定した硬度である。
【表4】
【表5】
上述した結果より、比較例2のものについて、実施例のものと比較して硬度の低下が見受けられた。
また、上述した硬度の測定以外に、柔らかさの指触検査として、ドライバの先を実施例、比較例1及び比較例2の接着剤が硬化したものに押し当てて感触の確認を行った。
その結果、比較例2のものについて、過度の柔らかさがあると認められた。一方、実施例のものは適度な柔らかさがあると認められた。比較例1のものは、実施例のものと比較して柔らかさが低いと認められた。
以上より、比較例2のものを実施例の接着剤に代えて用いた場合、ハイヒール等尖った踵が沈み込む恐れがある。
一方、硬化物の外観について述べると、硅砂の量が多い比較例1のものは、粗さが目立ち、砂落ちも懸念される。また、目地の損傷が早まることにより目地のひび割れや砂によるつまづき等も懸念される。実施例のものは、外観が良好であり、比較例1のものについて述べた懸念は必要ない。
従って、硬度を十分確保でき、しかも外観の粗さや目地のひび割れの懸念がないという点で、原料接着剤と4号硅砂とを重量比1対1で混合することが望ましいといえる。
【0046】
上述したように、原料接着剤と4号硅砂とを重量比1対1で混合することにより作られたものであれば、引っ張り及び圧縮に対しての耐性が大きく、小さな領域に集中して荷重が加えられた場合でも破断しにくい。
【0047】
より具体的には、接着剤5を硅砂を含有するものとすることで、従来のゴムと同等の硬度を確保し、ハイヒールや傘の先端が刺さらないように対応できる。その上、接着剤5は、従来のものと比較して高い変形性能を有する。
【0048】
さらに、接着剤5に含まれる硅砂の摩擦効果により、雨天時の滑りを防止することもできる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る基盤1の表層構造物3同士の接合方法は、離間空間Sに、硅砂を含有させた接着剤5を充填し、当該接着剤5を介して一方の表層構造物3の端部(端面3a)と他方の表層構造物3の端部(端面3a)とを接合するものであるので、以下のような効果を得ることができる。すなわち、前述したように、従来の離間空間にモルタルを充填する工法では充填したモルタルが損傷しやすいという問題が存在するが、本実施形態によれば、モルタルと比較して損傷しにくい接着剤5を介して表層構造物3同士を接合するので、離間空間Sに充填した接着剤5の損傷の問題が生じにくい。また、離間空間Sに充填した接着剤5には硅砂を含有させているので、前述したように、硅砂の摩擦効果により雨天時の滑りを防止することができる。さらに、本実施形態では離間空間Sにおける表層構造物3間に接着剤のみを充填しているので、離間空間Sの形状を問わず基盤1同士の接合を行うことができるとともに、構造をシンプルなものにできる。すなわち、本実施形態の構成により、駅の乗降場の基盤1を構成する一方及び他方の表層構造物3同士を好適に接合し得る方法及び接着剤5を提供することができる。
【0050】
また、接着剤5の上面5aが、表層構造物3の上面3cと略連続する面を構成し得るように離間空間Sに充填されるので、施工後の見た目を整えることができる。
【0051】
さらに、基盤1が、水平方向に離間して配された下部構造物2とこれら下部構造物2の上にそれぞれ敷設された表層構造物3とを備えてなり、接着剤5を、下部構造物2に対しても接着させているので、基盤同士を安定して接合することができる。
【0052】
以下、本発明の第二の実施形態を、
図5~
図6を参照して説明する。
【0053】
この実施形態も、本発明を、駅の乗降場を構成する基盤同士の接合部位に適用したものである。
【0054】
本実施形態に係る駅の乗降場を構成する基盤1は、下部構造物2の上に表層構造物3を敷設してなるものである。この基盤1も、従来のものと同様に、アスファルト・コンクリート・鋼材等の温度収縮、繰り返し作用する交通荷重による振動、あるいは地震動等により、悪影響が及びにくいように、一般的に、十メートル程度の間隔を空けて離間空間Sが形成されている。すなわち、
図5に示すように、この基盤1の長手方向両端部には接合面を備えており、互いに隣接する基盤1の接合面間に離間空間Sを設定している。その上で、この離間空間Sに、接着剤5及びバックアップ材6を利用して形成した接合部4を配して基盤1同士を接合するようにしている。
【0055】
ここで、本実施形態では、
図5に示すように、互いに隣接する表層構造物3の端面3a間の距離は、下部構造体2間の端面2a間の距離よりも大きく設定している。その上で、本実施形態では、下部構造物2間にバックアップ材6を配設し、当該バックアップ材6の上に位置する離間空間S、すなわち表層構造物3の端面3a間の空間に硅砂を含有させた接着剤5を充填し、これらを接合するようにしている。ここで、バックアップ材6は、硬化前の接着剤5が落下するのを防止するための部材であり、例えばポリエチレン等の発泡材により形成されている。また、本実施形態では、接着剤5に4号硅砂を含有させている。その際、充填された接着剤5の一部は下部構造物2の端部2bの上面に接し、この下部構造物2の端部2bをも接着するようにしている。また、接着剤5を充填する際に、接着剤5の上面5aが、両表層構造物3の上面3cと略連続する面を構成し得るようにしている。
【0056】
さらに詳述すると、離間空間Sには、樹脂と硅砂とを重量比1対1で混合して作られた接着剤5が充填される。本実施形態の接着剤5は、前述した第一の実施形態における接着剤5と同様のものなので、詳細な説明は省略する。
【0057】
本実施形態では、以下のような方法で基盤1を接合して駅の乗降場を形成するようにしている。まず、基盤1同士の間に離間空間Sを設定しつつ複数の基盤1を配置する。
【0058】
次いで、離間空間Sの下部、すなわち下部構造物2の端面2a間の部位にバックアップ材6を配設する。
【0059】
その上で、離間空間Sの上部、すなわちバックアップ材6の上方及び下部構造物2の上面が露出した部位の上方、さらに換言すれば表層構造物3の端面3a間の部位に、接着剤5の上面5aが当該接着剤5の両側に位置する表層構造物3の上面3cと略連続するように接着剤5を充填する。
【0060】
このようにして形成された駅の乗降場において、
図6に示すように基盤1同士が離間すると、両表層構造物3の端面3aにそれぞれ接着する接着剤5が引っ張られて変形するが、接着剤5が破断しない限り表層構造物3下方の水密性は保たれる。
【0061】
また、両基盤1が高さ方向にずれた場合も、同様に両表層構造物3の端面3aにそれぞれ接着する接着剤5が引っ張られて変形するが、接着剤5が破断しない限り表層構造物3下方の水密は保たれる。
【0062】
そして、基盤1同士が接近した場合は、両表層構造物3の端面3aにそれぞれ接着する接着剤5が圧縮されて変形するが、接着剤5が破断しない限り表層構造物3下方の水密性は保たれる。
【0063】
本実施形態に係る基盤1の表層構造物3同士の接合方法も、離間空間Sに、硅砂を含有させた接着剤5を充填し、当該接着剤5を介して一方の表層構造物3の端部(端面3a)と他方の表層構造物3の端部(端面3a)とを接合するものであるので、前述した第一の実施形態にかかる効果と同様の効果を得ることができる。
【0064】
さらに、本実施形態では、下部構造物2間にバックアップ材6を配設した後に、当該バックアップ材6の上に位置する離間空間Sに接着剤5を充填するようにしているので、硬化前の接着剤5が落下するのを防止し、施工を安定して行うことができる。
【0065】
次いで、本発明の第三の実施形態を、
図7~
図9を参照して説明する。
【0066】
この実施形態も、本発明を、駅の乗降場を構成する基盤同士の接合部位に適用したものである。
【0067】
本実施形態は、前述した第二の実施形態と以下の点で異なる。
【0068】
すなわち、第二の実施形態では、バックアップ材がポリエチレン等の発泡材により形成されているが、本実施形態では、
図7に示すように、バックアップ材6が鉄板等の板材により形成されている。また、下部構造物2には、バックアップ部材6を嵌入させるための切欠2xを設けている。
【0069】
このようにして形成された駅の乗降場において、
図8に示すように基盤1同士が離間すると、両表層構造物3の端面3aにそれぞれ接着する接着剤5が引っ張られて変形するが、接着剤5が破断しない限り表層構造物3下方の水密は保たれる。
【0070】
また、
図9に示すように両基盤1が高さ方向にずれた場合も、同様に両表層構造物3の端面3aにそれぞれ接着する接着剤5が引っ張られて変形するが、接着剤5が破断しない限り表層構造物3下方の水密性は保たれる。
【0071】
そして、基盤1同士が接近した場合は、両表層構造物3の端面3aにそれぞれ接着する接着剤5が圧縮されて変形するが、接着剤5が破断しない限り表層構造物3下方の水密性は保たれる。
【0072】
本実施形態に係る基盤1の表層構造物3同士の接合方法も、離間空間Sに、硅砂を含有させた接着剤5を充填し、当該接着剤5を介して一方の表層構造物3の端部(端面3a)と他方の表層構造物3の端部(端面3a)とを接合するものであり、また、下部構造物2間にバックアップ材6を配設した後に、当該バックアップ材6の上に位置する離間空間Sに接着剤5を充填するようにしているので、前述した第二の実施形態にかかる効果と同様の効果を得ることができる。
【0073】
次いで、本発明の第四の実施形態を、
図10~
図12を参照して説明する。
【0074】
この実施形態も、本発明を、駅の乗降場を構成する基盤同士の接合部位に適用したものである。
【0075】
本実施形態に係る駅の乗降場を構成する基盤1は、
図10及び
図11に示すように、下部構造物2の上に表層構造物3を敷設してなるものである。この基盤1も、従来のものと同様に、アスファルト・コンクリート・鋼材等の温度収縮、繰り返し作用する交通荷重による振動、あるいは地震動等により、悪影響が及びにくいように、一般的に、十メートル程度の間隔を空けて離間空間Sが形成されている。すなわち、この基盤1の長手方向両端部には接合面を備えており、互いに隣接する基盤1の接合面間に離間空間Sを設定している。その上で、この離間空間Sに、伸縮継手7及び接着剤5を利用して形成した接合部4を配して基盤1同士を接合するようにしている。
【0076】
伸縮継手7は、継手本体71と、継手本体71の下端部から外側方に突設された薄板板状をなし上下方向に貫通したボルト挿通孔を有する連結部72とを備えている。連結部72は、ボルト挿通孔に挿通されたボルト8を用いて一方及び他方の下部構造物2に対して連結されている。継手本体71の側端面71a・表層構造物3の端部(端面3a)・連結部72の上面72aが離間空間Sに臨んでいる。
【0077】
ここで、本実施形態でも、互いに隣接する表層構造物3の端面3a間の距離は、下部構造体2間の端面2a間の距離よりも大きく設定している。その上で、本実施形態では、
図10及び
図11に示すように、離間空間S、すなわち表層構造物3の端面3a間の空間に伸縮継手7を配している。そして、伸縮継手7と表層構造物3の端面3aとの間の空間に硅砂を含有させた接着剤5を充填し、これらを接合するようにしている。本実施形態の接着剤5は、前述した第一の実施形態における接着剤5と同様のものなので、詳細な説明は省略する。
【0078】
このようにして形成された駅の乗降場において、
図12に示すように基盤1同士が離間すると、両表層構造物3の端面3a及び伸縮継手7にそれぞれ接着する接着剤5が引っ張られて変形するが、接着剤5が破断しない限り表層構造物3下方の水密性は保たれる。
【0079】
また、両基盤1が高さ方向にずれた場合も、同様に両表層構造物3の端面3aにそれぞれ接着する接着剤5が引っ張られて変形するが、接着剤5が破断しない限り表層構造物3下方の水密性は保たれる。
【0080】
そして、基盤1同士が接近した場合は、両表層構造物3の端面3aにそれぞれ接着する接着剤5が圧縮されて変形するが、接着剤5が破断しない限り表層構造物3下方の水密は保たれる。
【0081】
以上説明したように、本実施形態に係る基盤1の表層構造物3同士の接合方法は、離間空間Sに、伸縮継手7及び硅砂を含有させた接着剤5を充填し、これら伸縮継手7及び接着剤5を介して一方の表層構造物3の端部(端面3a)と他方の表層構造物3の端部(端面3a)とを接合するものであるので、以下のような効果を得ることができる。すなわち、前述したように、従来の離間空間にモルタルを充填する工法では充填したモルタルが損傷しやすいという問題が存在するが、本実施形態によれば、モルタルと比較して損傷しにくい接着剤5を介して表層構造物3同士を接合するので、離間空間Sに充填した接着剤5の損傷の問題が生じにくく、このような構成によっても、駅の乗降場の基盤1を構成する一方及び他方の表層構造物3同士を好適に接合し得る方法及び接着剤5を提供することができる。
【0082】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0083】
例えば、本発明は駅の乗降場を構成する基盤同士の接合部位に限らず、例えば橋梁の道路等を構成する基盤同士の接合部位等、基盤を接合して構築物を形成する際における表層構造物同士の接合部位全般に使用可能である。
【0084】
また、本発明を適用する離間空間の形状は自由である。例えば、
図13に示すような平面視クランク状の離間空間Sや、
図14に示すような平面視曲線状の離間空間Sに本発明の接着剤を充填することが考えられる。
【0085】
さらに、新規に構築物を形成する際のみならず、補修を行う際の補修箇所に本発明を適用してよい。すなわち、
図15に示すように基盤1同士の接合部位に配したモルタル9が劣化(破損)した際に、
図16に示すようにモルタル及び伸縮継手を撤去し、
図17に示すように発生した離間空間Sに硅砂を配合した接着剤5を充填することにより補修を行うようにしてもよい。
【0086】
なお、
図13~
図17において、第一ないし第四の実施形態におけるものに対応する部位には同一の符号を付して説明を省略する。
【0087】
加えて、前述した第一ないし第四の実施形態では、接着剤の上面が表層構造物の上面と略連続する面を構成し得るように接着剤を離間空間に充填しているが、接着剤の上面の形状ないし高さ位置は任意に設定してかまわない。
【0088】
そして、接着剤を作る際の樹脂と硅砂との混合割合は、任意に設定してよい。
【0089】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0090】
1…基盤
2…下部構造物
3…表層構造物
5…接着剤
7…伸縮継手
S…離間空間