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  • 特開-微生物防除組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090350
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】微生物防除組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 31/02 20060101AFI20240627BHJP
   A01N 31/14 20060101ALI20240627BHJP
   A01N 31/04 20060101ALI20240627BHJP
   A01N 31/08 20060101ALI20240627BHJP
   A01N 25/06 20060101ALI20240627BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20240627BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A01N31/02
A01N31/14
A01N31/04
A01N31/08
A01N25/06
A01P1/00
A01P3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206211
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 滉平
(72)【発明者】
【氏名】仲田 恋
(72)【発明者】
【氏名】山名 一綱
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011AA03
4H011BA06
4H011BB03
4H011DA21
4H011DE15
4H011DF04
(57)【要約】
【課題】ピエゾ式噴霧装置による噴霧の際に液だまりが発生しにくく、良好な微生物防除効果が得られる微生物防除組成物を提供する。
【解決手段】ピエゾ式噴霧装置で噴霧する微生物防除組成物であって、(A)成分:フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、及びイソプロピルメチルフェノールから選ばれる1種以上の有機系薬剤と、(B)成分:アリール基を有しないアルコールから選ばれる1種以上のアルコールとを含有し、前記(B)成分の含有量が、前記微生物防除組成物の総質量に対して10~90質量%であり、前記(A)成分と前記(B)成分の質量比(A)/(B)が0.001~0.150である、微生物防除組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピエゾ式噴霧装置で噴霧する微生物防除組成物であって、
(A)成分:フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、及びイソプロピルメチルフェノールから選ばれる1種以上の有機系薬剤と、
(B)成分:アリール基を有しないアルコールから選ばれる1種以上のアルコールとを含有し、
前記(B)成分の含有量が、前記微生物防除組成物の総質量に対して10~90質量%であり、
前記(A)成分と前記(B)成分の質量比(A)/(B)が0.001~0.150である、微生物防除組成物。
【請求項2】
前記(A)成分の含有量が、前記微生物防除組成物の総質量に対して0.05~5質量%である、請求項1に記載の微生物防除組成物。
【請求項3】
前記(B)成分がエタノール、2-プロパノール、及びエチレングリコールから選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の微生物防除組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物防除組成物。更に詳しくは、ピエゾ式噴霧装置で噴霧する微生物防除組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空間に噴霧することにより、空間を形成する壁や天井等の面の微生物を除去し、繁殖を予防する薬剤(以下、空間処理剤ともいう)が提案されている。空間処理剤としては微生物の繁殖を予防する効果の高い有機系薬剤を含む、くん煙タイプの空間処理剤が提案されている。くん煙タイプの空間処理剤が、居住空間の様々な場所で使用されることを考慮すると、煙の量を抑えて、又は煙を出さないようにして空間処理剤を噴霧する方法が求められている。
【0003】
近年、ピエゾ式噴霧装置により空間処理剤を噴霧する方法が提案されている(特許文献1)。ピエゾ式噴霧装置はピエゾ(圧電)素子を使用した超音波振動により薬液を霧化させる装置であり、手動のスプレー式に比べて楽に使用でき、しかも空間処理剤をより微粒化して噴霧できる。また、ピエゾ式噴霧装置は、くん煙タイプの空間処理剤に比べ煙の量が少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-42295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、有機系薬剤を含む空間処理剤は、ピエゾ式噴霧装置による噴霧の際に微細な液滴とならず、ピエゾ素子やその周辺に液だまりが発生することで安定して薬液を噴霧できないことがある。
本発明は、上記事情に鑑みて、ピエゾ式噴霧装置による噴霧の際に液だまりが発生しにくく、良好な微生物防除効果が得られる微生物防除組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]ピエゾ式噴霧装置で噴霧する微生物防除組成物であって、
(A)成分:フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、及びイソプロピルメチルフェノールから選ばれる1種以上の有機系薬剤と、
(B)成分:アリール基を有しないアルコールから選ばれる1種以上のアルコールとを含有し、
前記(B)成分の含有量が、前記微生物防除組成物の総質量に対して10~90質量%であり、
前記(A)成分と前記(B)成分の質量比(A)/(B)が0.001~0.150である、微生物防除組成物。
[2]前記(A)成分の含有量が、前記微生物防除組成物の総質量に対して0.05~5質量%である、[1]に記載の微生物防除組成物。
[3]前記(B)成分がエタノール、2-プロパノール、及びエチレングリコールから選ばれる1種以上である、[1]又は[2]に記載の微生物防除組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の微生物防除組成物は、ピエゾ式噴霧装置による噴霧の際に液だまりが発生しにくく、良好な微生物防除効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例における消臭評価方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において「微生物防除」とは、微生物の増殖を防いだり、微生物の付着を防いだり、殺菌したりするなどして、微生物の働きを抑えることである。微生物防除により得られる効果は、消臭、除菌、殺菌、抗菌、防カビ、抗カビ等であり、本明細書においてはこれらの効果を総称して「微生物防除効果」ともいう。
また、本明細書において「対象面」とは、微生物防除組成物を適用する処理対象物の表面、例えば浴室、洗面所、キッチン、トイレ、玄関、リビング、押入れ、クローゼット、靴箱等の密閉空間の内面、エアコン内部、窓サッシ、カーテン、靴、衣服、ソファー等の物品表面などのことである。
【0010】
本発明の微生物防除組成物は、以下に示す(A)成分と、(B)成分とを含有する組成物である。微生物防除組成物は、(A)成分及び(B)成分以外の成分(任意成分)を含有してもよい。
【0011】
<(A)成分>
(A)成分は、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、及びイソプロピルメチルフェノールから選ばれる有機系薬剤である。(A)成分は1種又は2種以上で用いられる。
(A)成分は消臭等の微生物防除効果を有する。中でも、水酸基に加えアルコキシ基を含み(B)成分との相互作用が強いことから、フェノキシエタノールが好ましい。
【0012】
(A)成分の含有量は、微生物防除組成物の総質量に対して0.05~5質量%が好ましく、0.1~3質量%がより好ましく、0.3~1質量%がさらに好ましい。(A)成分の含有量が上記下限値以上であれば、消臭等の微生物防除効果がより高まる。(A)成分の含有量が上記上限値以下であれば、ピエゾ式噴霧装置による噴霧に支障を生じさせる液だまりが発生しにくくなり、消臭等の微生物防除効果をより確保しやすい。
【0013】
<(B)成分>
(B)成分は、アリール基を有しないアルコールである。(B)成分は1種又は2種以上で用いられる。
(B)成分の沸点は、60~300℃が好ましく、60~200℃がより好ましく、70~100℃がさらに好ましい。(B)成分の沸点が上記下限値以上であれば、微生物防除組成物全体の揮発性が高くなりすぎず、対象面に充分な時間留まって、消臭等の微生物防除効果がより高まる。(B)成分の沸点が上記上限値以下であれば、微生物防除組成物全体の揮発性が充分に高まり、液だまりがより発生しにくくなる。
【0014】
(B)成分としては、エタノール、メタノール、2-プロパノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。(A)成分の溶解性や揮発性、安全性等の観点からは、エタノール、2-プロパノール、及びエチレングリコールから選ばれる1種以上であることが好ましく、エタノールであることがより好ましい。
【0015】
(B)成分の含有量は、微生物防除組成物の総質量に対して10~90質量%であり、20~80質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましい。
(B)成分の含有量が上記下限値以上であれば、微生物防除組成物全体の揮発性が充分に高まり、液だまりが発生しにくくなる。(B)成分の含有量が上記上限値以下であれば、微生物防除組成物全体の揮発性が高くなりすぎず、対象面に充分な時間留まって、消臭等の微生物防除効果を発揮できる。
【0016】
<質量比(A)/(B)>
微生物防除組成物における(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)は0.001~0.150であり、0.001~0.033が好ましく、0.005~0.025がより好ましい。
【0017】
質量比(A)/(B)が上記下限値以上であれば、微生物防除組成物全体の揮発性が高くなりすぎず、対象面に充分な時間留まって、消臭等の微生物防除効果を発揮できる。
(A)/(B)が上記上限値以下であれば、ピエゾ式噴霧装置による噴霧に支障を生じさせる液だまりが(A)成分と(B)成分の水酸基による相互作用によって発生しにくくなり、消臭等の微生物防除効果を確保できる。
【0018】
<任意成分>
本発明の微生物防除組成物は(A)成分と(B)成分以外の成分を必要に応じ含有することが出来る。例えば、電解質、除菌剤、抗菌剤、抗黴剤、抗ウイルス剤、消臭剤、防臭剤、香料などを含有することができる。
【0019】
電解質としては、有機電解質でもよいし、無機電解質でもよいが、少量の配合で微生物防除組成物が電気伝導性を示すことができることから、無機電解質が好ましい。
無機電解質としては水溶性の塩であれば用いることができ、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が好ましい。
【0020】
アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の具体例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウムが挙げられる。
【0021】
除菌剤、抗菌剤、抗黴剤、抗ウイルス剤としては、次亜塩素酸水、亜塩素酸水や銀、亜鉛、銅等の遷移金属を含有する無機系薬剤、抗菌性香料、精油などが挙げられる。また、これらを組み合わせて使用することが出来る。
消臭剤、防臭剤としては、レモングラス、ペパーミント、ユーカリ、ハッカなどの精油が挙げられる。
【0022】
香料成分は特に限定されず、公知の香料成分を使用できる。公知の香料成分は、例えば「Perfume and Flavor Chemicals」,Vol.I and II,Steffen Arctander, Allured Pub.Co.(1994)、「合成香料 化学と商品知識」,印藤元一著,化学工業日報社(1996)、「Perfme and Flavor Materials of NaturalOrigin」,Steffen Arctander, Allured Pub.Co.(1994)、「香りの百科」,日本香料協会編,朝倉書店(1989)、「Perfumery MaterialPerformance V.3.3」,Boelens Aroma Chemical Information Service(1996)、「Flower Oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Lajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)、特開2002-173698号公報の表3に記載されている香料成分が挙げられる。
任意成分は、それぞれ1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0023】
<水>
水は、(A)成分、(B)成分及び必要に応じて任意成分を溶解すると共に、安定した揮発性を発揮するために必要である。水は超純水、イオン交換水、蒸留水、水道水などが挙げられ、液だまり防止の観点から超純水、イオン交換水、蒸留水が好ましい。水の含有量は微生物防除組成物の総質量に対して10~90質量%であり、20~80質量%が好ましく、40~70質量%がより好ましい。
【0024】
<微生物防除組成物の電気伝導率>
微生物防除組成物の25℃における電気伝導率は0.3~15mS/mが好ましく、0.5~15mS/mがより好ましく、1.2~15mS/mがさらに好ましく、1.2~10mS/mが特に好ましい。微生物防除組成物の電気伝導率が上記範囲内であれば、ピエゾ式噴霧装置を用いて微生物防除組成物を長時間(例えば1時間)噴霧しても、安定して微生物防除組成物を噴霧でき、噴霧性能に優れる。
微生物防除組成物の電気伝導率は、電解質の種類や添加量により調整できる。電気伝導率は、JIS K 0130 2008に規定する「電気伝導率測定方法通則」に準拠した方法により測定される値である。
【0025】
<微生物防除組成物の製造方法>
微生物防除組成物は、(A)成分、(B)成分を水と混合することにより得られる。また、必要に応じて任意成分を、(A)成分、(B)成分と共に、水と混合することにより得られる。
【0026】
<微生物防除組成物の使用方法>
微生物防除組成物は、ピエゾ式噴霧装置に充填して使用する。ピエゾ式噴霧装置としては特に制限されず、従来公知のピエゾ式噴霧装置を用いることができる。
ピエゾ式噴霧装置としては、例えば、噴霧する微生物防除組成物を保持するための容器と、メッシュ状の噴出孔を有する振動子と、第1の端部は前記容器内で微生物防除組成物と接触し、第2の端部は前記振動子の噴出孔と接触する吸液芯とを有し、前記吸液芯により前記容器から前記噴出孔まで吸い上げられた微生物防除組成物を、前記振動子を振動させることによって、前記噴出孔から噴出させるものが挙げられる。
【0027】
微生物防除組成物を吸い上げる吸液芯は、前記容器から、例えば垂直方向に直線状に伸びたものでも、途中で方向転換したものでもよい。吸液芯を伸ばす方向を適宜選択することにより、上方、横方向、斜め下方向、斜め上方向等の適宜の方向に向けて噴霧することができる。
振動子としては、汎用的にUSBにて電源を供給される加湿器等の製品に用いられている振動数のものを使用するのが、入手が容易である点で好ましい。
【0028】
具体的なピエゾ式噴霧装置としては、例えば特開2021―186807に記載の噴霧器を好ましく使用できる。特開平6-320083号公報、特開平7-24374号公報、特開平7-256170号公報等に記載のピエゾ式噴霧装置などを用いてもよい。
また、例えばOURRY社製の「ドーナツ型ミニ加湿器」、Jisu Technology社製の加湿器(商品名「SWEETDONUT」)、オムロンヘルスケア株式会社製の「メッシュ式ネブライザNE-U22」なの市販品を使用してもよい。
【0029】
<作用効果>
以上説明した本発明の微生物防除組成物は、(A)成分と共に(B)成分を含有するので液だまりが発生しにくい。これは、(A)成分と(B)成分とが共に水酸基を有するため、両者の相互作用により、揮発性が高い(B)成分と共に、(A)成分も対象面から揮発できるためと考えられる。
また、(A)成分と(B)成分とを、特定の比率で含み(B)成分を過剰に含まないため、対象面に充分な時間留まることができるので、消臭等の微生物防除効果を発揮することができる。
【0030】
本発明の微生物防除組成物は、例えば、細菌、カビ等の微生物を抑制することが要求される居住空間の処理に用いられる。
本発明の微生物防除組成物の処理対象物としては、例えば浴室、洗面所、キッチン、トイレ、玄関、リビング、押入れ、クローゼット、靴箱、エアコン内部、窓サッシ、カーテン、靴、衣服、ソファーなどが挙げられる。
【実施例0031】
<微生物防除組成物>
各例の微生物防除組成物は、以下の成分を表1~5に示す配合で攪拌混合し、30分間、超音波振動を与えることによって有機系薬剤を完全に溶解させて調製した。なお、表1~5の微生物防除組成物の配合における空欄は、その成分を含まないことを意味する。
【0032】
[有機系薬剤]
フェノキシエタノール:日本乳化剤株式会社製、フェノキシエタノール。
ベンジルアルコール:純正化学株式会社製、ベンジルアルコール。
IPMP:東京化成工業株式会社製、4―イソプロピルー3―メチルフェノール。
IPBC:東京化成工業株式会社製、3-ヨード-2-プロピニル N-ブチルカルバマート。
塩化ベンザルコニウム:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、塩化ベンザルコニウム。
【0033】
[溶剤]
エタノール:日本アルコール販売株式会社製、特定アルコール95度合成、沸点78.4℃。
2-プロパノール:関東化学株式会社製、2-プロパノール(特級)、沸点82.5℃。
エチレングリコール:関東化学株式会社製、エチレングリコール、沸点197.6℃。
1、2ジメトキシエタン:東京化成工業株式会社製、1、2ジメトキシエタン、沸点82℃。
【0034】
<ピエゾ式噴霧装置>
各例の微生物防除組成物の評価には、ピエゾ式噴霧装置としてOURRY社製ドーナツ型ミニ加湿器を使用した。その主な仕様と使用条件は以下のとおりである。
超音波噴霧器:ABS製、長さ(全長):135cm。
吸液芯:ポリエステル製、直径7mm、長さ(全長):130mm。
超音波振動子:外径10mmのリング状。
超音波発振器:駆動電源5V。
噴霧量:35g/時間。
【0035】
<液だまり評価>
各例の微生物防除組成物を、上記ピエゾ式噴霧装置に充填した。ピエゾ式噴霧装置をドラフト内の水平面に設置し、印加電圧5Vにて24時間稼働させた後、リング状の超音波振動子内側のメッシュ状の噴出部表面を液体が覆う割合を5段階で目視評価した。結果を表1~5に示す。
【0036】
[評価基準]
5:噴出部表面を液体が全く覆っていない、又は液体が噴出部表面を覆う割合が25%未満。
4:液体が噴出部表面を覆う割合が25%以上50%未満。
3:液体が噴出部表面を覆う割合が50%以上75%未満。
2:液体が噴出部表面を覆う割合が75%以上100%未満。
1:液体が噴出部表面全体を完全に覆っている。
【0037】
<消臭評価>
一般家庭のリビングに10年間設置されていたエアコン(ダイキン工業製、型式:F22FTSS-W)を解体した。
上記エアコンのクロスフローファンの黒色の汚染および悪臭が同程度に認められた部分を裁断し、1×5cmのカビ試験片を多数枚調製した。
【0038】
図1に示すように、1m×0.3mのアクリル板4枚と0.3m×0.3mのアクリル板2枚を接合して、高さ1m×縦0.3m×横0.3mのアクリル製ボックス10を作製した。なお、1m×0.3mのアクリル板の内1枚(アクリル版11)は、図示奥側で隣接する1m×0.3mのアクリル板12と高さ方向となる1辺11aのみを接合し、他の3辺は接合せず、扉のように開閉できる状態とした。
【0039】
採取したカビ試験片20をシャーレ21内の底面に貼付した。このシャーレ21を蓋をせずに、アクリル製ボックス10のアクリル版11を開いて、天井を形成する0.3m×0.3mのアクリル板13に逆さの状態で貼付した。
また、各例の微生物防除組成物30が充填されたピエゾ式噴霧装置31を、アクリル製ボックス10の底面を形成する0.3m×0.3mのアクリル板14の上面中央に配置した。
【0040】
開閉可能としたアクリル版11と図示手前側で隣接するアクリル板15との隙間により空気が換気できる状態でアクリル版11を閉じ、ピエゾ式噴霧装置を印加電圧5Vにて24時間稼働させ、シャーレ21を貼付した天井(アクリル板13)に向けて微生物防除組成物30を噴霧した。
24時間稼働後にアクリル製ボックス10からシャーレ21を取り出した。
取り出したシャーレ21内のカビ試験片20のにおいを担当者5人で嗅ぎ、以下の5段階で評価した。5人の評価結果の平均を表1~5に示す。
【0041】
(評価基準)
5点:無臭。
4点:認知できる弱い臭いがある。
3点:楽に感知できる臭いがある。
2点:強い臭いがある。
1点:強烈な臭いがある。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
表1~4に示すように、何れの実施例においても、液だまりが抑制されていると共に、充分な消臭効果が認められた。
これに対して、表5に示すように、(A)成分以外の有機系薬剤を使用した比較例1、2、(B)成分以外の溶剤を用いた比較例8は、液体が噴出部表面全体を完全に覆うほどの液だまりが生じた。
また、(B)成分が少ない比較例3、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)が、本発明で規定する上限値を超える比較例6も大幅に液だまりが生じた。
【0048】
また、液だまりが生じた上記比較例1~3、6、8は消臭効果も低かった。これは、液だまりにより、微生物防除組成物の噴霧が阻害されたためであると考えられる。
一方、有効成分である(A)成分を含まない比較例5は、液だまりは抑制されていたが、消臭効果が低かった。
【0049】
また、(B)成分が多い比較例4、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)が、本発明で規定する下限値に満たない比較例7は、液だまりは抑制されていたが、消臭効果が低かった。これは、微生物防除組成物の揮発性が高くなりすぎ、カビ試験片20に充分留まれなかったためと考えられる。
【符号の説明】
【0050】
10 アクリル製ボックス
20 カビ試験片
21 シャーレ
30 微生物防除組成物
31 ピエゾ式噴霧装置
図1