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特開2024-90352活性エネルギー線硬化型インキ、積層体、包装材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090352
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型インキ、積層体、包装材料
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20240627BHJP
【FI】
C09D11/101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206213
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福島 明葉
(72)【発明者】
【氏名】末永 隼也
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AB08
4J039AD21
4J039BC20
4J039BE01
4J039BE22
4J039CA05
4J039DA02
4J039EA04
4J039EA44
4J039GA34
(57)【要約】
【課題】低マイグレーション性といった塗膜適性と、ミスチング性といった印刷適性と、製品保管における保存安定性とを満足する活性エネルギー線硬化型インキ及びその積層体の提供。
【解決手段】平均一次粒子径5~300nmの有機顔料と、ロジン変性樹脂と、(メタ)アクリレート化合物とを含む活性エネルギー線硬化型インキであって、有機顔料とロジン変性樹脂との含有比率(質量比)が、有機顔料/ロジン変性樹脂=0.5~3である活性エネルギー線硬化型インキ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機顔料と、ロジン変性樹脂と、(メタ)アクリレート化合物とを含む活性エネルギー線硬化型インキであって、
前記有機顔料の平均一次粒子径が、5~300nmであり、
前記有機顔料と前記ロジン変性樹脂との含有比率(質量比)が、有機顔料/ロジン変性樹脂=0.5~3であることを特徴とする、活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項2】
前記有機顔料の平均一次粒子径が、20~200nmであることを特徴とする、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項3】
前記ロジン変性樹脂が、ロジン酸類(A)と、ポリオール(B)との反応物であることを特徴とする、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項4】
前記ロジン酸類(A)が、共役ロジン酸類(A1)と、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(C)とのディールスアルダー付加反応物を含むことを特徴とする、請求項3記載の活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項5】
前記ロジン変性樹脂におけるロジン酸類(A)の配合量が、ロジン変性樹脂原料全配合量を基準として20~60質量%であることを特徴とする、請求項3記載の活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項6】
前記ロジン変性樹脂の重量平均分子量が、2,500~50,000であることを特徴とする、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項7】
さらに、分散剤を含有することを特徴とする、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インキ。
【請求項8】
基材上に、請求項1~7いずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インキを活性エネルギー線で硬化した層を有することを特徴とする、積層体。
【請求項9】
請求項8に記載の積層体を含むことを特徴とする、包装材料。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機顔料とロジン変性樹脂と(メタ)アクリレート化合物を用いた活性エネルギー線硬化型インキ、積層体、及び包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、瞬間乾燥による工程時間の短縮、揮発性成分を含有しないこと(Non-VOC)による環境負荷低減、及び架橋反応による強固な塗膜物性といった観点から、印刷産業では活性エネルギー線硬化技術の利用が拡大している。
【0003】
印刷産業における活性エネルギー線硬化の利用としては、紫外線(UV)硬化と電子線(EB)硬化を利用したインキ及びニスが実用化されている。なかでも、設備投資及びランニングコストの観点から、紫外線硬化型が主流となっている。
【0004】
しかしながら、UV硬化反応に必要となる光重合開始剤は、多くの場合、比較的低分子量であり、硬化後の塗膜中に残存しやすい。そのため、UV硬化型の組成物を食品包装の用途で使用した場合、有害な光重合開始剤が内包食品へ移行すること(マイグレーション)が問題視されている。
【0005】
例えば特許文献1には、高エネルギーの電子線を利用した光重合開始剤レスの電子線硬化型組成物が提示されている。また、特許文献2には酸素濃度5%以下の雰囲気で紫外線により硬化することで製造する印刷物について提示されている。しかし、該技術は、電子線照射装置の導入や、窒素ガスの封入が可能な窒素置換ボックスの導入がそれぞれ前提となるため、既存紫外線硬化型から直ちに置き換えられるものではない。
【0006】
特許文献3、4には、光硬化性インキ組成中に含まれる光重合開始剤の種類について、該構造や数平均分子量範囲を限定した光硬化性組成物が提示されている。しかし、該技術ではマイグレーション評価を、インキ塗布後の印刷物にメタルハライドランプを搭載したUV照射装置を使用している。光重合開始剤種の限定により紫外線吸収帯が制限されることで、たとえば省エネルギーや低環境負荷の面で増加すると見込まれるLED紫外線照射装置により硬化した印刷物においては、メタルハライドランプ搭載UV照射装置を用いた場合と同様の低マイグレーション性が得られない可能性がある。
【0007】
特許文献5には、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートであるエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーと、ポリエチレンテレフタレート樹脂と、ポリエステル樹脂とを含有する平版オフセット印刷用活性エネルギー型硬化型インキが提示されている。しかし、該技術では低マイグレーション性を光重合開始剤のマイグレーションの合計量にのみ限定されている。マイグレーションの制限については非特許文献1のような文献に記載されており、例えば該技術記載のOmnirad819(CAS162881-26-7)、Ominirad369(CAS119313-12-1)、Ominirad907(CAS71868-10-5)のマイグレーション下限は各物質に3300ppb、150ppb、10ppbと設定されており、合計量にて500ppb未満を満たすだけでは不十分である。
【0008】
このように、低マイグレーション性をもつ活性エネルギー線硬化型インキについて、種々の検討が行われているが、利便性と、要求される印刷適性と低マイグレーション性とを十分に満たすものではなく、さらなる改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2022/180887号
【特許文献2】特開2020-93430号公報
【特許文献3】特表2020-519561号公報
【特許文献4】特開2015-155499号公報
【特許文献5】特開2021-195502号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Swiss Ordinance Annex 10 of the Federal Department of Home Affairs from December 1, 2020 on materials and articles intended to come into contact with foodstuffs, or the EU plastics directive
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、上述の状況を鑑みて、低マイグレーション性といった塗膜適性と、ミスチング性といった印刷適性と、製品保管における保存安定性とを満足する活性エネルギー線硬化型インキ及びその積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の平均一次粒子径を有する有機顔料とロジン変性樹脂と(メタ)アクリレート化合物とを使用することにより、優れた塗膜適性と印刷適性と保存安定性とを満足し得る活性エネルギー線硬化型インキが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、有機顔料と、ロジン変性樹脂と、(メタ)アクリレート化合物とを含む活性エネルギー線硬化型インキであって、
前記有機顔料の平均一次粒子径が、5~300nmであり、
前記有機顔料と前記ロジン変性樹脂との含有比率(質量比)が、有機顔料/ロジン変性樹脂=0.5~3であることを特徴とする、活性エネルギー線硬化型インキに関する。
【0014】
また、本発明は、前記有機顔料の平均一次粒子径が、20~200nmであることを特徴とする、上記活性エネルギー線硬化型インキに関する。
【0015】
また、本発明は、前記ロジン変性樹脂が、ロジン酸類(A)と、ポリオール(B)との反応物であることを特徴とする、上記活性エネルギー線硬化型インキに関する。
【0016】
また、本発明は、前記ロジン酸類(A)が、共役ロジン酸類(A1)と、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(C)とのディールスアルダー付加反応物を含むことを特徴とする、上記活性エネルギー線硬化型インキに関する。
【0017】
また、本発明は、前記ロジン変性樹脂におけるロジン酸類(A)の配合量が、ロジン変性樹脂原料全配合量を基準として20~60質量%であることを特徴とする、上記活性エネルギー線硬化型インキに関する。
【0018】
また、本発明は、前記ロジン変性樹脂の重量平均分子量が、2,500~50,000であることを特徴とする、上記活性エネルギー線硬化型インキに関する。
【0019】
また、本発明は、さらに、分散剤を含有することを特徴とする、上記活性エネルギー線硬化型インキに関する。
【0020】
また、本発明は、基材上に、上記活性エネルギー線硬化型インキを活性エネルギー線で硬化した層を有することを特徴とする、積層体に関する。
【0021】
また、本発明は、上記積層体を含むことを特徴とする、包装材料に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、低マイグレーション性といった塗膜適性と、ミスチング性といった印刷適性と、製品保管における保存安定性とを満足する活性エネルギー線硬化型インキ及びその積層体を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明はいかに記載の実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0024】
なお、本発明中に記載される『共役二重結合』とは、複数の二重結合が単結合を挟んで交互に連なっている結合を指す。ただし、芳香族化合物に含まれるπ電子共役系は、共役二重結合からは除かれる。
【0025】
<活性エネルギー線硬化型インキ>
本発明の活性エネルギー線硬化型インキは、少なくとも有機顔料とロジン変性樹脂と(メタ)アクリレート化合物とを含む。
【0026】
<有機顔料>
本発明における有機顔料は、平均一次粒子径が5~300nmである有機顔料である。中でも、平均一次粒子径が20~200nmである有機顔料を使用することが、低マイグレーション性を提供するために好ましい。また、平均一次粒子径が20~200nmである有機顔料を使用することで、透明性が向上する。
【0027】
なお、本発明における有機顔料の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測した値である。
これらは、[実施例]の項に記載の方法にて測定することができる。
【0028】
使用可能な有機顔料の具体例としては以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
例えば、カラーインデックス(C.I.)ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214,234等;
C.I.ピグメントオレンジ 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等;
C.I.ピグメントレッド 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,32,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,49:3,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,147,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,212,213,216,220,224,226,242,246,254,255,264,269,270,272,279,280,281,282,283,284,285,286,287,291、特表2011-523433号公報に記載のジケトピロロピロール顔料;
C.I.ピグメントグリーン 7,10,36,37,58,59,62,63、特開2008-19383号公報、特開2007-320986号公報、特開2004-70342号公報等に記載の亜鉛フタロシアニン顔料、特許第4893859号公報等に記載のアルミニウムフタロシアニン顔料;
C.I.ピグメントバイオレット 1,2,19,23,27,29,32,37,42;
C.I.ピグメントブルー 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,80、特開2004-333817号公報、特許第4893859号公報等に記載のアルミニウムフタロシアニン顔料;
が挙げられる。
【0029】
また、黄色顔料として、特許第7105024号公報や特許第7017006号公報に記載のイソインドリン顔料も使用できる。
【0030】
また、紅色顔料として、特許第6928750号公報に記載のナフトール系アゾ顔料の複合顔料も使用できる。
【0031】
また、緑色顔料として、WO2015/118720号に記載のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料も使用できる。
【0032】
また、有機顔料は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0033】
また、有機顔料には、任意の方法で表面処理を行ってもよい。表面処理方法として下記が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(1)有機顔料と、色素誘導体や樹脂等の添加剤と、水溶性有機溶剤と、無機塩とを機械的に混錬し、水溶性有機溶剤と無機塩を除去する、ソルベントソルトミリング法。
(2)有機顔料と、色素誘導体や樹脂等の添加剤と、水溶性有機溶剤と、塩基性化合物とを機械的に混錬する方法。
(3)有機顔料と、水と、水に溶解させた樹脂とを混合し、pH変動させ樹脂を析出させる方法。
(4)有機顔料と、樹脂と、樹脂を溶解可能な良溶媒とを混合し、樹脂が溶解しない又は溶解しにくい貧溶媒を添加し樹脂を析出させる方法。
(5)有機顔料と、樹脂と、樹脂を溶解可能な良溶媒と、水とを混合し、良溶媒を減圧蒸留などにより留去し樹脂を析出させる方法。
などが挙げられる。
【0034】
本発明における有機顔料の配合量は、活性エネルギー線硬化型インキの全配合量を基準として、4~40質量%であることが好ましく、6~30質量%であることがより好ましく、8~25質量%であることがさらに好ましい。配合量が上記範囲であると、有機顔料の分散性が良好になる傾向があり低マイグレーション性が向上する。
【0035】
<ロジン変性樹脂>
本発明におけるロジン変性樹脂とは、樹脂骨格中に、ロジン由来の骨格を含有する樹脂のことである。ロジン由来の骨格を含有することで、高速印刷時でのUV照射による硬化収縮を抑えることができ、乾燥被膜の平滑性を維持することができるため、透明性が向上する。
【0036】
本発明におけるロジン変性樹脂としては、ロジン酸類(A)と、ポリオール(B)との反応物であることが好ましい。ロジン由来の骨格を有する樹脂の中でも、ロジン酸類(A)と、ポリオール(B)との反応物を用いるのがより好ましい。ロジン酸類(A)には、環式ジテルペン骨格と、一塩基酸と、共役二重結合とを有する化合物が多く含まれることで、骨格の剛直さと、ポリオールとの反応性とを両立でき、インキ物性が良好になる。
【0037】
<ロジン酸類(A)>
本発明におけるロジン変性樹脂を得るために用いるロジン酸類(A)とは、環式ジテルペン骨格を有する一塩基酸を指す。ロジン酸、不均化ロジン酸、水添ロジン酸、又は前記化合物のアルカリ金属塩等を表し、共役ロジン酸類(A1)と共役二重結合を有さないロジン酸類とが含まれる。
具体的には、共役ロジン酸類(A1)として、共役二重結合を有するアビエチン酸、及びその共役化合物である、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマル酸が挙げられ、共役二重結合を有さないロジン酸類として、共役二重結合を有さないピマル酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸、及びデヒドロアビエチン酸等が挙げられる。またこれらのロジン酸類(A)を含有する天然樹脂として、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等が挙げられる。
【0038】
また、本発明におけるロジン酸類(A)としては、ロジン酸類(A)に含まれる共役ロジン酸類(A1)と、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(C)とのディールスアルダー付加反応物を用いることが好ましい。
共役ロジン酸類(A1)と、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(C)とのディールスアルダー付加反応物を用いる場合、該付加反応物は多価カルボン酸となるため、ポリオール(B)とのエステル化反応により高分子化が可能となる。
さらに、水添ロジンや不均化ロジンと同様に、該付加反応物は共役二重結合の残存量が少なくなるため、硬化阻害を引き起こしにくく、硬い塗膜を得ることが容易となる。
【0039】
本発明におけるロジン変性樹脂を得るために用いるロジン酸類(A)の配合量は、樹脂原料の全配合量を基準として10~70質量%であることが好ましく、20~60質量%であることがより好ましく、25~50質量%であることがさらに好ましい。ロジン酸類(A)の配合量が10質量%以上であると、ロジン変性樹脂と有機顔料の構造に含まれ得る環式構造との相溶性向上により保存安定性が良好になり、配合量が70質量%以下であると、活性エネルギー線硬化型コーティングニスの耐摩擦性が良好となる。
【0040】
<ポリオール>
本発明におけるポリオールは、ロジン酸類(A)が有するカルボン酸との反応によってエステル結合を形成する。本発明におけるロジン変性樹脂を得るために、以下に記載のポリオールを、単独又は2種類以上用いることもできる。ポリオールの具体的な例としては以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
(直鎖状アルキレン2価ポリオール)
1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール等。
【0042】
(分岐状アルキレン2価ポリオール)
2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオ-ル、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ジメチロールオクタン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等。
【0043】
(環状2価ポリオール)
1,2-シクロヘプタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールS、水添カテコール、水添レゾルシン、水添ハイドロキノン等の環状アルキレン2価ポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン等の芳香族2価ポリオール。
【0044】
(その他の2価のポリオール)
ポリエチレングリコール(n=2~20)、ポリプロピレングリコール(n=2~20)、ポリテトラメチレングリコール(n=2~20)等の2価のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等。
【0045】
(3価のポリオール)
グリセリン、トリメチロ-ルプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、3-メチルペンタン-1,3,5-トリオール、ヒドロキシメチルヘキサンジオール、トリメチロールオクタン等。
【0046】
(4価以上のポリオール)
ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロ-ルプロパン、ジペンタエリスリト-ル、ソルビトール、イノシトール、トリペンタエリスリトール等の直鎖状、分岐状、及び環状の4価以上のポリオール。
【0047】
<α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(C)>
本発明におけるロジン変性樹脂を得るために用いるα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(C)としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等及びこれらの酸無水物が例示される。共役ロジン酸類(A1)との反応性を鑑みると、好ましくはマレイン酸又はその酸無水物である。
【0048】
<(A)、(C)以外のカルボン酸(以下『有機酸類』ともいう)>
本発明におけるロジン変性樹脂を得るために、ロジン酸類(A)、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(C)に加えて、その他の有機酸類を、単独又は2種類以上用いる事もできる。
【0049】
その他の有機酸類の具体的な例としては以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
(有機一塩基酸)
安息香酸、メチル安息香酸、ターシャリーブチル安息香酸、ナフトエ酸、オルトベンゾイル安息香酸等の芳香族一塩基酸、共役リノール酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸、カレンジン酸等の共役二重結合を有するが環式ジテルペン骨格を有さない化合物等が挙げられる。
【0051】
(脂環式多塩基酸又はその酸無水物)
1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、4-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、及びこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0052】
(その他の有機多塩基酸又はその酸無水物)
シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸などのアルケニルコハク酸、o-フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、及びこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0053】
本発明におけるロジン変性樹脂は、重量平均分子量が2,500~50,000であることが好ましく、3,000~40,000であることがより好ましく、4,000~35,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が2,500~50,000であることで、耐摩擦性と保存安定性が良好となる。
【0054】
本発明におけるロジン変性樹脂は、酸価が5~100mgKOH/gが好ましく、10~90mgKOH/gがより好ましく、20~80mgKOH/gがさらに好ましい。ロジン変性樹脂の酸価が上記範囲内である場合、当該樹脂を使用した活性エネルギー線硬化型インキは、優れた保存安定性を有する。
【0055】
また、ロジン変性樹脂の融点は50℃以上であることが好ましく、60~100℃の範囲がより好ましい。なお融点は、BUCHI社製のMeltingPointM-565を用い、昇温速度0.5℃/分の条件下で測定できる。
【0056】
また、本発明におけるロジン変性樹脂の配合量は、活性エネルギー線硬化型インキの全配合量を基準として4~40質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましく、6~25質量%であることがさらに好ましい。ロジン変性樹脂の配合量が上記範囲であると、インキ弾性が向上し、印刷適性が良好となる。
【0057】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキにおいて、有機顔料とロジン変性樹脂との含有比率(質量比)は、有機顔料/ロジン変性樹脂=0.5~3であることが好ましく、0.5~2.5であることがより好ましく、0.5~2であることがさらに好ましい。有機顔料/ロジン変性樹脂=0.5以上であると、印刷試験におけるミスチング性が良好になり、3.0以下であると、保存安定性や低マイグレーション性が良好となる。
【0058】
<活性エネルギー線硬化型インキ用ワニス>
本発明のロジン変性樹脂を使用して、活性エネルギー線硬化型インキ用ワニスを構成することができる。
【0059】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキ用ワニスは、少なくとも本発明のロジン変性樹脂と、(メタ)アクリレート化合物とを含み、ワニスの全質量を基準として、本発明のロジン変性樹脂を30~75質量%と、(メタ)アクリレート化合物を25~70質量%とを含有することが望ましい。
【0060】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキ用ワニスにおける、本発明のロジン変性樹脂と活性エネルギー線硬化型化合物との配合比は、質量比で30:70~75:25の範囲が好ましく、35:65~70:30の範囲がさらに好ましい。
【0061】
<(メタ)アクリレート化合物>
本発明における(メタ)アクリレート化合物とは、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味する。なお、(メタ)アクリレートとは、メタクリレートおよび/またはアクリレートを意味する。(メタ)アクリロイルは、メタクリロイルおよび/またはアクリロイルを意味する。
本発明の活性エネルギー線硬化型インキを構成するために使用可能な(メタ)アクリレート化合物の具体例としては以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
例えば、メチル(メタ)クリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアクリレート、テトラエチレングリコールモノフェニルエーテルアクリレート、アクリロイルモルホリン等の単官能(メタ)アクリレート化合物、
エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=2~20)、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート(n=2~20)、アルキレン(炭素数4~12)グリコールジアクリレート、アルキレン(炭素数4~12)グリコールエチレンオキサイド付加物(2~20モル)ジアクリレート、アルキレン(炭素数4~12)グリコールプロピレンオキサイド付加物(2~20モル)ジアクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、水添ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(2~20モル)ジアクリレート、水添ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(2~20モル)ジアクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物、
グリセリントリアクリレート、グリセリンエチレンオキサイド付加物(3~30モル)トリアクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド付加物(3~30モル)トリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物(3~30モル)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加物(3~30モル)トリアクリレート等の3官能(メタ)アクリレート化合物、
ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート、ジグリセリンテトラアクリレート、ジグリセリンエチレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート、ジグリセリンプロピレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート等の4官能(メタ)アクリレート化合物、
及びジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(6~60モル)ペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物(6~60モル)ペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(6~60モル)ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物(6~60モル)ヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。(メタ)アクリレート化合物は1種を単独で使用しても、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0062】
(メタ)アクリレート化合物は、要求される硬化皮膜特性に応じて、適宜選択することが可能である。必要に応じて、上記化合物に加えて、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、及びエポキシアクリレート等のオリゴマーを併用することも可能である。
【0063】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキ用ワニスは、上記成分に加えて、さらに光重合禁止剤を含んでもよい。このような実施形態では、光重合禁止剤を常法により添加し、使用することができる。上記ワニスに光重合禁止剤を添加する場合、硬化性を阻害しない観点から、その配合量は、活性エネルギー線硬化型インキ用ワニスの全質を基準として、3質量%以下にすることが好ましく、0.01~1質量%の範囲で使用することがさらに好ましい。
【0064】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキを構成するために使用可能な重合禁止剤の具体例としては以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
使用可能な光重合禁止剤の具体例として、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシムが挙げられる。また、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体や2,2,6,6-テトラメチルピペリジン誘導体、1-アルキル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン誘導体、1-ヒドロ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン誘導体等のヒンダートアミン系光安定剤(HALS)等も挙げられる。
特に限定するものではないが、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、t-ブチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン、HALSからなる群から選択される1種以上の化合物を使用することが好ましい。
【0065】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキ用ワニスは、例えば、マイナス20℃から160℃の間の温度条件下で、上記成分を混合することで製造することができる。
【0066】
<活性エネルギー線硬化型インキ>
本発明の活性エネルギー線硬化型インキは、少なくとも平均一次粒子径が5~300nmの有機顔料と、ロジン変性樹脂と、(メタ)アクリレート化合物とを含む。
【0067】
(メタ)アクリレート化合物としては、前述のワニスの構成成分として例示した化合物が挙げられる。
【0068】
本発明における(メタ)アクリレート化合物の配合量は、活性エネルギー線硬化型インキの全配合量を基準として、40~75質量%であることが好ましく、50~70質量%であることがより好ましい。配合量が上記範囲であると、印刷皮膜が堅牢になり、低マイグレーション性が向上する。
【0069】
本発明における低マイグレーション性の効果を得るために(メタ)アクリレート化合物の種類は特に限定されないが、活性エネルギー線硬化型インキに含まれる(メタ)アクリレート化合物のうち、2官能基数以上の(メタ)アクリレート化合物を50質量%以上含有することが好ましく、
2官能基数以上の(メタ)アクリレート化合物を50質量%以上、かつ3官能基数以上の(メタ)アクリレート化合物を8質量%以上含有することがより好ましく、
2官能基数以上の(メタ)アクリレート化合物を50質量%以上、かつ3官能基数以上の(メタ)アクリレート化合物を15質量%以上含有することがさらに好ましい。
活性エネルギー線硬化型インキに3官能基数以上の(メタ)アクリレート化合物が含まれる場合、活性エネルギー線硬化時に網状ポリマーを形成することで高い皮膜強度を得ることができる。
【0070】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキは、活性エネルギー線の照射によって硬化する。紫外線でインキを硬化させる場合は、インキに光重合開始剤を添加することが好ましい。一般に、光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤と、光カチオン重合開始剤と、光アニオン重合開始剤との3種類に大別できる。光ラジカル重合開始剤は、さらに、光により分子内で結合が開裂して活性種を生成するタイプと、分子内で水素引き抜き反応を起こして生成するタイプとの2種類に大別できる。
【0071】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキを構成するために使用可能な光重合開始剤の具体例としては以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
光カチオン重合開始剤として、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセナート、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、テトラフルオロほう酸ジメチルフェナシルスルホニウム、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホン酸、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、トリ-p-トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリ-p-トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボラート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ-1-ブタンスルホン酸、ノナフルオロ-1-ブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸、(クメン)シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスファート、(チオジ-4,1-フェニレン)ビス(ジフェニルスルホニウム)ビス(ヘキサフルオロホスファート)、ヘキサフルオロリン酸トリフェニルスルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸トリフェニルスルホニウム、10-カンファースルホン酸トリフェニルスルホニウム、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロリン酸、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルスルホニウムヘキサフルオロリン酸塩、(4-イソブチルフェニル)(p-トリル)ヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボラート、4-ニトロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボラート、[4-[(2-ヒドロキシテトラデシル)オキシ]フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモナート、2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(フラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ビス[4-(tert-ブチル)フェニル]ヨードニウム テトラ(ノナフルオロ-tert-ブトキシ)アルミン酸塩、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、トリフェニルスルホニウムブロミド、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルメチルスルホニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。
【0073】
光アニオン重合開始剤として、例えば、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン、シクロヘキシルカルバミン酸1,2-ビス(4-メトキシフェニル)-2-オキソエチル、ニフェジピン、アセトフェノンO-ベンゾイルオキシム、2-(ピペリジン-1-カルボニル)ベンズアルデヒド、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ-5-エン、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸-1,5,7-トリアザビシクロ[4,4,0]デカ-5-エン、シクロヘキシルカルバミン酸2-ニトロベンジル等が挙げられる。
【0074】
光により分子内で結合が開裂して活性種を生成するタイプとして、例えば、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパン}、4-(2-アクリロイル-オキシエトキシ)フェニル-2-ヒドロキシ-2-プロピルケトン等のアセトフェノン系、ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトンとベンゾフェノンとの混合物、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系、ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル、及び3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0075】
分子内で水素引き抜き反応を起こして生成するタイプとして、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系、ミヒラーケトン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、及びカンファーキノン等が挙げられる。
【0076】
光重合開始剤は、1種を単独で使用しても、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用しても良いが、2種類以上を組み合わせて使用することで、より強靭な硬化皮膜が形成され、低マイグレーション性が良好となる。
【0077】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキに紫外線を照射して、インキを硬化させる場合、インキに光重合開始剤を添加するだけでよいが、硬化性をより向上させるために、光増感剤を併用することもできる。光増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2-ジメチルアミノ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、及び4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル等のアミン類が挙げられる。
【0078】
本発明における低マイグレーション性の効果を得るために光重合開始剤の種類は特に限定されず、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤のいずれにも効果を得ることができる。
【0079】
本発明における光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤が好ましい。光ラジカル重合開始剤を用いると、硬化速度が向上し、短時間で強固な硬化皮膜ができる。
【0080】
活性エネルギー線として紫外線を使用する場合、光重合開始剤の配合量は、活性エネルギー線硬化型インキの全質量を基準として、0.01~15質量%であることが好ましく、0.05~10質量%であることがより好ましい。上記配合量を0.01質量%以上とした場合、硬化反応が十分に進行する。また、上記配合量を15質量%以下とした場合、熱重合反応の発生を抑制し活性エネルギー線硬化型インキの安定性を好適な状態にすることが容易である。活性エネルギー線として、紫外線以外の電離放射線を使用する場合には、光重合開始剤を配合しなくてもよい。
【0081】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキは、上記成分に加えて、さらに分散剤を含んでもよい。このような実施形態では、分散剤を常法により添加し、使用することができる。上記活性エネルギー線硬化型インキに分散剤を添加する場合、ロジン変性樹脂の顔料吸着を阻害しない観点から、その配合量は、活性エネルギー線硬化型インキの全質を基準として、20質量%以下にすることが好ましく、10質量%以下にすることがより好ましい。
【0082】
本発明における分散剤は、アミン価が150mgKOH/g以下であることが好ましく、100mgKOH/g以下であることがより好ましい。アミン価が150mgKOH/g以下であることで、低マイグレーション性が良好となる。
【0083】
アミン価は、電位差滴定法により測定される。アミン価は、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンの総量を表し、試料1gを中和するのに必要な塩酸と当量の水酸化カリウムの質量である。アミン価は、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法によって当量点を求め、水酸化カリウムの当量に換算することにより求められ、単位はmgKOH/gで示される。
【0084】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキを構成するために使用可能な分散剤の具体例としては以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、()内の数値はアミン価であり、単位はmgKOH/gである。
使用可能な分散剤の具体例として、
BYK-Chemie社製DISPERBYK(85)、DISPERBYK-101N(24)、DISPERBYK-102(0)、DISPERBYK-103(0)、DISPERBYK-106(74)、DISPERBYK-108(71)、DISPERBYK-109(140)、DISPERBYK―110(0)、DISPERBYK-111(0)、DISPERBYK-130(190)、DISPERBYK-162(12.5)、DISPERBYK-163(10)、DISPERBYK-167(12.5)、DISPERBYK-168(10.5)、DISPERBYK-168 TF(10)、DISPERBYK-180(94)、DISPERBYK-181(33)、DISPERBYK-182(13)、DISPERBYK-184(15)、DISPERBYK-187(35)、DISPERBYK-190(0)、DISPERBYK-192(0)、DISPERBYK-193(0)、DISPERBYK-2013(18)、DISPERBYK-2014(19)、DISPERBYK-2019(22)、DISPERBYK-2023(7)、DISPERBYK-2030(13)、DISPERBYK-2118(16.5)、DISPERBYK-2163(10)、DISPERBYK-2164(14)、DISPERBYK-2200(0)、DISPERBYK-2205(27);
Lubrizol社製SOLSPERSE9000(17)、SOLSPERSE20000(32)、SOLSPERSE22000(0)、SOLSPERSE24000(42)、SOLSPERSE28000(45)、SOLSPERSE32000(35)、SOLSPERSE33000(43)、SOLSPERSE35000(32)、SOLSPERSE36000(0)、SOLSPERSE39000(0)、SOLSPERSE41000(0)、SOLSPERSE45000(0)、SOLSPERSE56000(39)、SOLSPERSE64000(22)、SOLSPERSE65000(0)、SOLSPERSE71000(77)、SOLSPERSE74000(80)、SOLSPERSE78000(12)、SOLSPERSE79000(0)、SOLSPERSE85000(0)、SOLSPERSE86000(51)、SOLSPERSE87000(54)、SOLSPERSE88000(33)、SOLSPERSEJ180(33)、SOLSPERSEJ200(33)、SOLSPERSEM387(86)、SOLSPERSEX300(31);
BASF社製Efka PA4401(50)、Efka PU4063(10)、Efka PX4300(56)、Efka PX 4310(19)、Efka PX 4320(28)、Efka PX 4330(28)、Efka PX 4340(4)、Efka PX 4350(12)、Efka PX 4701(40)、Efka PX 4703(56)、Efka PX 4733(25)、Efka PX 4753(12)、Efka PX 4780(20)、Efka PX 4787(20);
味の素ファインテクノ株式会社製PB821(10)、PB822(17)、PB824(17)、PB881(17)、PN411(0)、PA111(0);
Evonik Tego Chemie社製TEGO Dispers652(0)、TEGO Dispers655(0)、TEGO Dispers685(50);
が挙げられる。
【0085】
上記分散剤は、1種を単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
活性エネルギー線硬化型インキは、体質顔料、色素誘導体、光重合禁止剤、耐摩擦剤、ブロッキング防止剤、スベリ剤等の各種添加剤を、目的に応じて、さらに含んでもよい。各種添加剤は、常法によりインキに添加することができる。インキに対して各種添加剤を添加する場合、他のインキ材料の効果を阻害しない範囲で配合量を調整することが好ましい。各種添加剤の配合量は、活性エネルギー線硬化型インキ全質量を基準として、15質量%以下であることが好ましい。
なお、光重合禁止剤を使用する場合、活性エネルギー線硬化型インキ用ワニスに使用可能な光重合禁止剤として例示した化合物を用いることができる。
【0087】
活性エネルギー線の照射は、窒素ガス等の不活性ガス置換雰囲気下で実施することが好ましいが、大気中で照射しても差し支えない。活性エネルギー線を照射する前に、赤外線ヒーター等によって活性エネルギー線硬化型インキの塗布層を加温するか、又は活性エネルギー線を照射した後に、活性エネルギー線硬化型インキの硬化層を赤外線ヒーター等で加温することは、硬化を速く終了させるために有効である。
【0088】
本明細書において、活性エネルギー線とは、代表的に、紫外線、電子線、X線、α線、β線、γ線のような電離放射線、マイクロ波、高周波等を意味する。しかし、活性エネルギー線は、上記に限定されるものではなく、ラジカル性活性種を発生させ得るならば、いかなるエネルギー種でもよく、可視光線、赤外線、及びレーザー光線でもよい。
紫外線を発生するものとしては、例えば、LED、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、ヘリウム・カドミウムレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、及びアルゴンレーザーなどが挙げられる。
【0089】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキは、通常の印刷用インキと同様に公知の印刷方法、例えばオフセット印刷などの平版印刷、フレキソ印刷などの凸版印刷、グラビア印刷などの凹版印刷、スクリーン印刷などの孔版印刷、トナー印刷、インクジェット印刷などのオンデマンド印刷などにて印刷することができる。特に、3官能基数以上の(メタ)アクリレート化合物の含有量の観点から、オフセット印刷などの平版印刷が好ましい。
【0090】
本発明の積層体は、基材上に本発明の活性エネルギー線硬化型インキの硬化物の層を有すれば特に限定されるものではなく、フォーム用印刷物、各種書籍用印刷物、カルトン紙等の各種包装用印刷物、各種プラスチック印刷物、シール/ラベル用印刷物、美術印刷物、金属印刷物(美術印刷物、飲料缶印刷物、缶詰等の食品印刷物)などの印刷物に適用される。本発明の積層体は、更にオーバーコート層などを有しても良い。
【0091】
本発明の積層体に用いられる基材としては、上質紙等の非塗工紙、微塗工紙、アート紙、コート紙、軽量コート紙、キャストコート紙等の塗工紙、白板紙、ボールコート等の板紙、合成紙、アルミ蒸着紙、及びポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等のプラスチックシート、アルミ、ステンレス、ブリキ、ジュラルミンなどの金属が挙げられる。基材表面は、平滑でも良いし、凹凸を有しても良い。基材の形状は、平面でも良いし、曲面でも良い。
【0092】
本発明における包装材料は、上記積層体を含んでいれば特に限定されず、そのまま用いても、更に別の層を積層させて用いても良い。
【実施例0093】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、本明細書に記載の「部」は質量部を表し、「%」は質量%を示す。
【0094】
以下の製造例及び合成例で実施した各種測定の詳細は以下のとおりである。
(有機顔料の平均一次粒子径)
有機顔料の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で測定した。具体的には、個々の顔料の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、平均をその顔料一次粒子の粒径とした。次に、100個以上の顔料粒子について、それぞれ求めた粒径の立方体と近似して体積を求め、体積平均粒子径を平均一次粒子径とした。
【0095】
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、東ソー(株)製のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(HLC―8320)で測定した。
検量線は標準ポリスチレンサンプルにより作成した。また、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、カラムとしてTSKgelSuperHM-M(東ソー(株)製)を3本用いた。測定は、流速0.6mL/分、注入量10μL、及びカラム温度40℃の条件下で行った。
【0096】
(酸価)
酸価は、中和滴定法によって測定した。具体的には、先ず、ロジン変性樹脂1gをキシレン:エタノール=2:1の質量比で混合した溶媒20mLに溶解させた。次いで、先に調製したロジン変性樹脂の溶液に、指示薬として3質量%のフェノールフタレイン溶液を3mL加えた後に、0.1mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液で中和滴定を行った。酸価の単位は、mgKOH/gである。
【0097】
(ロジン酸類(A)の成分分析)
原料として使用するロジン酸類(A)をガスクロマトグラフィー質量分析計で分析し、全ロジン酸ピーク面積100%に対する、各ピーク面積比(%)を求めた。より具体的には、ロジン酸類(A)中に含まれ、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(C)とディールスアルダー付加反応を起こす共役系ロジン酸類(A1)と、共役系ロジン酸以外との含有比を、それぞれ該当するピーク面積の比から求めた。
【0098】
(ディールスアルダー付加反応の進行の確認と、生成した上記付加反応物の定量)
ディールスアルダー付加反応の反応液をガスクロマトグラフィー質量分析計で分析し、原料として使用した、ロジン酸類(A)、及びα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(C)の検出ピークの減少によって反応の進行を確認した。検出ピークの減少に変化が見られない時点で反応を終了した。
【0099】
1.顔料の調製
以下の方法に従い、実施例及び比較例で使用する顔料を調製した。
【0100】
(製造例1)
特許第7017006号公報記載の実施例1-1と同様の反応操作を行い、黄色顔料1を得た。平均一次粒子径は22nmであった。
【0101】
(製造例2)
黄色顔料1を200部、塩化ナトリウム1400部、及びジエチレングリコール300部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)中に仕込み、80℃で6時間混練した。次に、混練した混合物を約70℃の温水に投入し、1時間撹拌してスラリー状として、濾過及び水洗をして食塩及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥させ、粉砕することにより黄色顔料2を得た。平均一次粒子径は5nmであった。
【0102】
(製造例3)
黄色顔料1を100部、塩化ナトリウム1500部、及びジエチレングリコール180部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)中に仕込み、60℃で12時間混練した。次に、混練した混合物を約70℃の温水に投入し、1時間撹拌してスラリー状として、濾過及び水洗をして食塩及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥させ、粉砕することにより黄色顔料3を得た。平均一次粒子径は2nmであった。
【0103】
(製造例4)
特許第7105024号公報記載の実施例1-4と同様の反応操作を行い、黄色顔料4を得た。平均一次粒子径は74nmであった。
【0104】
(製造例5)
特開2020-172566号公報の比較例1と同様の反応操作を乾燥・粉砕まで行い、黄色顔料5を得た。平均一次粒子径は157nmであった。
【0105】
(製造例6)
特開2020-172566号公報の比較例1と同様の反応操作を濾過・精製まで行い、顔料組成物を含む水懸濁物を得た。得られた水懸濁物を、水4000部及びイソブチルアルコール2000部に投入し、均一に撹拌した後徐々に加熱し、95℃で4時間加熱撹拌を行った。水蒸気蒸留でイソブチルアルコールを除去した後、60℃まで冷却、濾過、水洗を行い、90℃で15時間乾燥させ、粉砕することにより黄色顔料6を得た。平均一次粒子径は244nmであった。
【0106】
(製造例7)
特開2020-172566号公報の比較例1と同様の反応操作を濾過・精製まで行い、顔料組成物を含む水懸濁物を得た。得られた水懸濁物を、水4000部及びイソブチルアルコール2000部に投入し、均一に撹拌した後徐々に加熱し、135℃で6時間加圧加熱撹拌を行った。水蒸気蒸留でイソブチルアルコールを除去した後、60℃まで冷却後、濾過、水洗を行い、90℃で15時間乾燥させ、粉砕することにより黄色顔料7を得た。平均一次粒子径は334nmであった。
【0107】
(製造例8)
特許第6928750号公報記載の実施例18と同様の反応操作を行い、紅色顔料1を得た。平均一次粒子径は97nmであった。
【0108】
2.ロジン変性樹脂、ワニス、及び活性エネルギー線硬化型インキ組成物の調製
以下に示す実施例及び比較例の処方に従い、ロジン変性樹脂、ワニス、及び活性エネルギー線硬化型インキ組成物をそれぞれ調製した。なお、以下に示す処方で使用したガムロジンは、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(C)とディールスアルダー付加反応を起こす共役系ロジン酸(A1)の含有量が80質量%であり、共役系ロジン酸以外の含有量が20質量%であった。また、不均化ロジン及び水添ロジンは、共役系ロジン酸以外の含有量が100質量%であった。
【0109】
(合成例1)
撹拌機、水分離器付き還流冷却器、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、ガムロジン42.0部と無水マレイン酸11.0部とを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、180℃で1時間にわたって加熱することにより、反応混合物を得た。次いで、先に説明したように、反応混合物のガスクロマトグラフ質量分析によって、ディールスアルダー付加反応が完了したことを確認した。
次に、上記反応混合物に、安息香酸20.0部と、ネオペンチルグリコール27.0部と、触媒として、p-トルエンスルホン酸一水和物0.1部とを添加し、230℃で10時間にわたって脱水縮合反応を行い、樹脂1を得た。樹脂1の酸価は58であり、GPC測定ポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)は2,100であった。
【0110】
(合成例2)
撹拌機、水分離器付き還流冷却器、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、不均化ロジン11.0部と、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物44.0部と、1,4-シクロヘキサンジメタノール45.0部と、触媒として、p-トルエンスルホン酸一水和物0.1部とを添加し、220℃で12時間にわたって脱水縮合反応を行い、樹脂2を得た。樹脂2の酸価は52であり、Mw3,400であった。
【0111】
(合成例3)
撹拌機、水分離器付き還流冷却器、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、ガムロジン58.0部と無水マレイン酸15.0部とを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、180℃で1時間にわたって加熱することにより、反応混合物を得た。次に、上記反応混合物に、水添ロジン9.0部と、トリメチロールプロパン18.0部と、触媒として、p-トルエンスルホン酸一水和物0.1部とを添加し、240℃で8時間にわたって脱水縮合反応を行い、樹脂3を得た。樹脂3の酸価は80であり、Mw4,900であった。
【0112】
(合成例4)
合成例1と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価72、Mw18,000の樹脂4を得た。
【0113】
(合成例5)
合成例2と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価36、Mw33,000の樹脂5を得た。
【0114】
(合成例6)
合成例1と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価23、Mw39,000の樹脂6を得た。
【0115】
(合成例7)
合成例1と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価37、Mw54,000の樹脂7を得た。
【0116】
(比較例用樹脂A)
株式会社大阪ソーダ製のジアリルフタレート樹脂「DAP A」を使用した。
【0117】
【表1】

【0118】
ここで、合成例で用いたロジン酸類(A)の詳細は以下の通りである。
ガムロジン:信宣中林松香有限公司製中国ガムロジン
不均化ロジン:荒川化学工業株式会社製R-CH
水添ロジン:荒川化学工業株式会社製ハイペールCH-B
【0119】
3.活性エネルギー線硬化型インキ用ワニスの調製
(ワニス1の調製)
撹拌機、水分離器付き還流冷却器、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、表2に示す処方に従い、先に調製した樹脂1、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ハイドロキノンを入れて混合し、これらを100℃で加熱溶融することによって、ワニス1を得た。なお、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートとしては、アルケマ社製「SR454NS」を使用した。
【0120】
(ワニス2~7、ワニスAの調製)
先に記載したワニス1の処方を、それぞれ表2の処方に変更したことを除き、全てワニス1の調製と同様にして調製した。
【0121】
(ワニスB)
ワニスBは、長興材料工業株式会社製「ETERCURE6353」を用いた。これは、ポリエステルアクリレートオリゴマー50質量部と、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート50質量部とから構成されるワニスである。
【0122】
【表2】

【0123】
4.活性エネルギー線硬化型インキの調製
【0124】
実施例1~31、比較例A~F
40℃の3本ロールミルにて、表3に示す材料を処方に従い練肉することで、実施例1~31、比較例A~Fの活性エネルギー線硬化型インキを得た。
なお、ワニスとしては、前記調製方法で得られた活性エネルギー線硬化型インキ用ワニスを用いた。
【0125】
【表3】

【0126】
【表3】

【0127】
【表3】

【0128】
【表3】

【0129】
【表3】

【0130】
ここで、表3中で用いた材料の詳細は以下の通りである。
(顔料)
橙色顔料1:C.I.ピグメントオレンジ34(PERMANENT ORANGE RL70(クラリアント社製)、平均一次粒子径150nm)
紅色顔料2:C.I.ピグメントレッド48:1(Symuler Red NRY(DIC社製)、平均一次粒子径148nm)、
緑色顔料1:C.I.ピグメントグリーン7(VYNAMON GREEN 600734(ホイバッハ社製)、平均一次粒子径83nm)
紫色顔料1:C.I.ピグメントバイオレット23(Hostaperm Violet RL SP01(クラリアント社製)、平均一次粒子径47nm)
藍色顔料1:C.I.ピグメントブルー15:3(Heliogen Blue D7086(BASF C&E社製)、平均一次粒子径71nm)を用いた。
((メタ)アクリレート化合物)
エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート:アルケマ社製SR454NS
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:MIWON社製Miramer M600
(開始剤)
開始剤a:2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン:IGM Resins B.V.社製Omnirad 379EG
開始剤b:フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド:IGM Resins B.V.社製Omnirad 819
開始剤c:ジフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド:IGM Resins B.V.社製Omnirad TPO H
開始剤d:2-ヒドロキシ-1-(4-イソプロペニルフェニル)-2-メチルプロパン-1-オンのオリゴマー:IGM Resins B.V.社製Esacure One
開始剤e:2,2’-ジヒドロキシ-2,2’-ジメチル-1,1’-[メチレンビス(1,4-フェニレン)]ビス(プロパン-1-オン):IGM Resins B.V.社製Omnirad 127
(分散剤)
Solsperse78000:Lubrizol社製(アミン価 12mgKOH/g)
EFKA PX-4703:BASF社製(アミン価 56mgKOH/g)
Solsperse71000:Lubrizol社製(アミン価 77mgKOH/g)
DISPERBYK-180:BYK-Chemie社製(アミン価 94mgKOH/g)
DISPERBYK-109:BYK-Chemie社製(アミン価 140mgKOH/g)
DISPERBYK-130:BYK-Chemie社製(アミン価 190mgKOH/g)
(禁止剤)
ハイドロキノン:東京化成工業社製
【0131】
5.活性エネルギー線硬化型インキの評価
実施例及び比較例で調製したそれぞれの活性エネルギー線硬化型インキについて、下記の方法に従い、塗膜適性と印刷適性と保存安定性とを評価した。
【0132】
(粗大粒子残留性)
実施例1~31、比較例A~Fの配合にてハイスピードミキサーで10分撹拌後、BUHLER製SDY300油圧式3本ロールミルを用い、40℃、10barで1回分散後、15barで1回分散し、さらに20barで1回分散する条件下で分散を行ない、その際の粒子径をLittle Joe Industries製ADM2グラインドメーターにて測定し、発生した線の本数が3本となる粒子径で判断した。その結果、いずれの組成物も粒子経7.5μm未満であり、実用上問題ないレベルであった。
【0133】
(保存安定性)
実施例1~31、比較例A~Fの活性エネルギー線硬化型インキについて、英弘精機株式会社製の粘度計HAAKE RS600を使用して、コーン&プレートセンサーにより、フローカーブモードによる測定方法に従って、室温(25℃)で初期粘度を測定した。同様にして、25℃で1週間経時後の粘度を測定した。得られた測定値に基づき、1週間経時後の粘度を、初期粘度で除することで粘度増加率を算出した。粘度増加率が小さいほど保存安定性に優れている。以下の基準に従い4段階で保存安定性を評価し、3以上で実用上問題ないレベルであると評価する。
4:粘度増加率が、110%未満
3:粘度増加率が、110%以上135%未満
2:粘度増加率が、135%以上165%未満
1:粘度増加率が、165%以上
【0134】
(印刷適性)
実施例1~31、比較例A~Fの活性エネルギー線硬化型インキについて、インキごとに2万枚の印刷試験を行った。印刷試験は、リスロン26(小森コーポレーション社製の枚葉印刷機)を用いて、コート紙(王子製紙社製OKトップコート+、連量90kg)に対して、8,000枚/時の速度で印刷する条件下で実施した。印刷紙面のベタ濃度は、C.I.ピグメントイエローを含む場合にはY1.30~1.40、C.I.ピグメントレッドを含む場合にはM1.40~1.50、C.I.ピグメントブルーを含む場合にはC1.50~1.60に調節した。C.I.ピグメントオレンジを含む場合にはM1.40~1.50、C.I.ピグメントグリーンを含む場合にはC1.40~1.50、C.I.ピグメントバイオレットを含む場合にはM1.40~1.50に調節した。
また、印刷試験では、湿し水として、アストロマーク3クリア(日研化学株式会社製)1.5%と、イソプロピルアルコール3%とを含む水道水を使用した。湿し水供給装置のメモリは印刷物に汚れが生じない最小値に設定した。
上記印刷試験時に印刷機の安全カバーの内側に白紙を張り付け、8,000枚の印刷を行った。その後に白紙を取り出し、インキの飛散の程度を目視で確認し、以下の基準に従い5段階で耐ミスチング性を評価した。耐ミスチング性が高いほど、印刷紙や印刷機を汚染しづらく、印刷適性が良好であることを示す。3以上で実用上問題ないレベルであるが、4以上がより好ましい。
5:白紙にインキミストがほとんど確認できない。
4:白紙の一部分に微量のインキミストが飛散している。
3:白紙全面に薄くインキミストが飛散している。
2:白紙全面にやや厚くインキミストが飛散している。
1:白紙全面にベッタリとインキミストが飛散している。
【0135】
(透明性評価)
実施例1~31、比較例A~Fの活性エネルギー線硬化型インキについて、黒帯のある展色紙に対して展色し、黒帯上の透過具合を評価した。透明性が高いものを5、透明性が低いものを1として5段階で評価した。3以上で実用上問題ないレベルであるが、4以上がより好ましい。
【0136】
(低マイグレーション性評価)
低マイグレーション性の評価に関しては、基本的な評価手順は欧州印刷インキ評議会であるEuPIA(European Printing Ink Association)のガイドライン(EuPIA Guideline on Printing Inks applied to the non-food contact surface of food packaging materials and articles,November 2011(Replaces the September 2009 version)及びEuPIA Guidance on Migration Test Methods for the evaluation of substances in printing inks and varnishes for food contact materialsに準拠した。
実施例1~31、比較例A~Fの活性エネルギー線硬化型インキを、RIテスター(株式会社明製作所製の簡易展色装置)を用いて、ミルクカートン紙に対して展色した。次いで、120W/cmの空冷メタルハライドランプ(株式会社東芝製)を用いて、印刷面に対して40m/minで2回紫外線を照射し、印刷物を得た。また、空冷メタルハライドランプの代わりにUV-LEDランプ(中心発光波長385nm±5nm UV-LEDの出力100%)を用いて、印刷面に対して40m/minの速度で2回LED直下を通過させ、印刷物を得た。
印刷物を100cmに切り出したものを印刷面と非印刷面が接触するように重ね合わせ、2.0kg/cmの過重負荷で、25℃環境条件下にて10日間保持した。このとき、印刷面と接していた非印刷面を評価面とし、評価面50cmに対して50mlの95%エタノールが接触するように、マイグレーションセルにセットした。
その後、撹拌を加えながら、60℃にて10日間かけて残留開始剤の抽出をした。マイグレーションセルは、器具により完全に密閉されており、上記工程において内容物の損失や、内容物(抽出物)へのその他成分の混入は完全に抑制できる。
Waters製LC-MS(液体クロマトグラフ質量分析計)及びAgilent Technologies製GC-MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)を用いて上記抽出物の分析を行い、マイグレーション濃度を定量し、各開始剤におけるマイグレーション濃度の基準値で除した時の値を4段階で評価した。ここで、マイグレーション濃度の基準値とは、前述の非特許文献1に記載される値とする。なお、各質量分析の定量に際しては、使用する全開始剤について検量線を予め作成し、これを用いることで算出した。2以上で実用上問題ないレベルであるが、3以上がより好ましい。
4:70%未満
3:70%以上85%未満
2:85%以上100%未満
1:100%以上
【0137】
表3に示すように、実施例1~31の活性エネルギー線硬化インキは、粗大粒子残留性、保存安定性、透明性、印刷適性、低マイグレーション性の全ての評価において、使用可能なレベルであり、優れた塗膜適性、良好な印刷適性、十分な保存安定性を満足することがわかる。
一方、比較例A~Fの活性エネルギー線硬化型インキでは、塗膜適性と、印刷適性と、保存安定性の全てを満足することは困難であった。
活性エネルギー線硬化型インキに、特定の平均一次粒子径を有する有機顔料と、ロジン変性樹脂とを使用することで、有機顔料の微細性を保持したままインキ中に分散され、活性エネルギー線による硬化時に(メタ)アクリレート化合物の架橋形成が、顔料凝集物により阻害されず、より密度の高い架橋構造を持つ塗膜が構築されることで、塗膜からの開始剤のマイグレーションが抑制されたと推測できる。加えてこのとき、透明性も向上しており、透明性が高いとき、より良好な低マイグレーション性が見られる傾向がある。
比較例A~Bの活性エネルギー線硬化型インキではロジン変性樹脂を含まないために、有機顔料の微細状態を維持できず、(メタ)アクリレート化合物の架橋構造が阻害され、低マイグレーション性を実現できないと考えられる。
比較例C~Dの活性エネルギー線硬化型インキでは有機顔料/ロジン変性樹脂の値が適切な範囲を満たさない。比較例Cでは、有機顔料/ロジン変性樹脂の値が低いことで、印刷時のインキ盛り量が多くなることから、印刷適性(ミスチング性)が低くなったと考えられる。比較例Dでは、有機顔料に対するロジン変性樹脂の比率が低く、ロジン変性樹脂が有機顔料の微細状態を維持できず、(メタ)アクリレート化合物の架橋構造が阻害され、低マイグレーション性を実現できないと考えられる。
比較例E~Fの活性エネルギー線硬化型インキでは有機顔料が特定の範囲を満たしてない。平均一次粒子径が5nm未満の場合、経時で凝集して安定化する傾向が大きくなるため、保存安定性が低下する。また、平均一次粒子径が300nm超過の場合、少しの凝集でも高次粒子径が大きくなるため、低マイグレーション性が低下する。