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特開2024-90353Al-Mg-Si系のアルミニウム合金の鋳造熱間加工品及びその製造方法
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  • 特開-Al-Mg-Si系のアルミニウム合金の鋳造熱間加工品及びその製造方法 図1
  • 特開-Al-Mg-Si系のアルミニウム合金の鋳造熱間加工品及びその製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090353
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】Al-Mg-Si系のアルミニウム合金の鋳造熱間加工品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/06 20060101AFI20240627BHJP
   C22C 21/02 20060101ALI20240627BHJP
   C22F 1/043 20060101ALI20240627BHJP
   C22F 1/047 20060101ALI20240627BHJP
   C22F 1/05 20060101ALI20240627BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20240627BHJP
【FI】
C22C21/06
C22C21/02
C22F1/043
C22F1/047
C22F1/05
C22F1/00 602
C22F1/00 611
C22F1/00 612
C22F1/00 624
C22F1/00 630A
C22F1/00 630B
C22F1/00 640A
C22F1/00 640E
C22F1/00 641A
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 684C
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 692A
C22F1/00 694A
C22F1/00 694B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206214
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】逢坂 崇
(72)【発明者】
【氏名】谷野 仁
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 吾朗
(72)【発明者】
【氏名】倉本 繁
(57)【要約】
【課題】高湿度中にて一定荷重で引張負荷をかけた際のき裂進展を抑制することができるAl-Mg-Si系のアルミニウム合金の鋳造熱間加工品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】Al-Mg-Si系のアルミニウム合金の鋳造熱間加工品であって、前記アルミニウム合金は、Si及びCuを含み、前記Cuの質量%に対する前記Siの質量%の比率であるSi/Cu比が、3.3未満である、鋳造熱間加工品。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al-Mg-Si系のアルミニウム合金の鋳造熱間加工品であって、前記アルミニウム合金は、Si及びCuを含み、前記Cuの質量%に対する前記Siの質量%の比率であるSi/Cu比が、3.3未満である、鋳造熱間加工品。
【請求項2】
請求項1に記載のAl-Mg-Si系のアルミニウム合金の鋳造熱間加工品の製造方法であって、前記Al-Mg-Si系のアルミニウム合金を鋳造し、鋳塊を得ること、前記鋳塊を熱間加工し、前記鋳造熱間加工品を得ること、を有し、前記熱間加工における、前記鋳造熱間加工品の圧下率が10%以上である、鋳造熱間加工品の製造方法。
【請求項3】
前記熱間加工が熱間鍛造である、請求項2に記載の鋳造熱間加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、Al-Mg-Si系のアルミニウム合金の鋳造熱間加工品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、応力腐食割れ(SCC:Stress Corrosion Cracking)に対して耐性を持つAl-Zn-Mg(7000系)の鋳造材の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-348631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のアルミニウム合金では、高湿度中にて一定荷重で引張負荷をかけた際のき裂進展を抑制することができない場合がある。従来技術においては、アルミニウム合金について、SCC試験は検討されているが、アルミニウム合金について、HG-SCC(Humid Gas Stress Corrosion Cracking)試験は、検討されていない。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、高湿度中にて一定荷重で引張負荷をかけた際のき裂進展を抑制することができるAl-Mg-Si系のアルミニウム合金の鋳造熱間加工品及びその製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の鋳造熱間加工品は、Al-Mg-Si系のアルミニウム合金の鋳造熱間加工品であって、前記アルミニウム合金は、Si及びCuを含み、前記Cuの質量%に対する前記Siの質量%の比率であるSi/Cu比が、3.3未満である。
【0007】
本開示においては、Al-Mg-Si系のアルミニウム合金の鋳造熱間加工品の製造方法であって、前記Al-Mg-Si系のアルミニウム合金を鋳造し、鋳塊を得ること、前記鋳塊を熱間加工し、前記鋳造熱間加工品を得ること、を有し、前記熱間加工における、前記鋳造熱間加工品の圧下率が10%以上であってもよい。
【0008】
本開示においては、前記熱間加工が熱間鍛造であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、高湿度中にて一定荷重で引張負荷をかけた際のき裂進展を抑制することができるAl-Mg-Si系のアルミニウム合金の鋳造熱間加工品及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】Si/Cu比と、初期き裂長さとの関係を示すグラフである。
図2】圧下率と、初期き裂長さとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.鋳造熱間加工品
本開示の鋳造熱間加工品は、Al-Mg-Si系のアルミニウム合金の鋳造熱間加工品であって、前記アルミニウム合金は、Si及びCuを含み、前記Cuの質量%に対する前記Siの質量%の比率であるSi/Cu比が、3.3未満である。
【0012】
次世代の燃料電池車(FCEV)用の高圧水素タンクの口金、及び、バルブ部品の小型化のため、高強度のアルミニウム合金の開発がされている。近年、高圧水素環境でも使用可能な材料に関する制定予定の国際法規規定において、A6061材以外のアルミニウム合金を使用する場合、規定する4項目の水素脆化調査試験を合格する必要がある。アルミニウム合金について、大気中引張り試験、水素中引張り試験である低歪速度引張遅れ破壊試験(SSRT:Slow Strain Rate Technique)、水素中疲労試験の3項目の試験では既に合格を確認しているが、残るHG-SCC試験では合格が確認できていない。既存調査では、6061成分の範囲外のアルミニウム合金であってもSi及びCuの成分を所定の範囲内に調整すれば、試験の合格条件を満たすと報告されているが、当該所定の範囲内で作製したアルミニウム合金でも不合格となる場合があることを知見した。
【0013】
HG-SCC試験は、高湿中で一定負荷がかかった際に起きる、アルミニウム合金特有の応力腐食割れ(SCC)が発生するかの調査試験となっている。一方、不合格となったアルミニウム合金には、三日月状の破面が確認されている。三日月状の破面は靭性が低い材料において形成されやすい破面形状である。なお、靭性が高い材料であれば破面は平行に伸びる。そのため、HG-SCC試験では応力腐食割れ現象だけでなく、アルミニウム合金の靭性の影響を大きく受けると考えられる。また、既存調査ではアルミニウム合金にSiが多量に添加されていても、Cuを0.3%以上添加すれば試験の合格条件を満たすとの報告もあるが、実際のSi/Cu比の不合格となる範囲を調査した知見はなく、確認されたき裂が全てアルミニウム合金の靭性不足に起因しているかは不明であり、応力腐食割れ現象によって生じた割れである可能性もある。
【0014】
本開示ではHG-SCC試験の結果がアルミニウム合金の靭性の影響を大きく受けていると予想し、アルミニウム合金の靭性に影響を与える熱間加工の圧下率とSi及びCuの成分を振った水準品を作製し、高湿度中にて一定荷重で引張負荷をかけた際のき裂進展を抑制することができる条件を見出した。
本開示では、高湿度中で試験片(TP)に一定の引張荷重を90日間かけ、進展するき裂長さが所定の長さ以下であるアルミニウム合金の製法を見出した。
アルミニウム合金の靭性を向上させるためには製造工法中において熱間加工を施すことが有効であり、本開示では、熱間加工によってアルミニウム合金の靭性の向上を試みた。
【0015】
本開示の鋳造熱間加工品は、Al-Mg-Si系のアルミニウム合金の鋳造熱間加工品である。
Al-Mg-Si系のアルミニウム合金は、Si及びCuを含み、前記Cuの質量%に対する前記Siの質量%の比率であるSi/Cu比が、3.3未満である。Si/Cu比は、1.6以上であってもよい。
本開示で用いるAl-Mg-Si系のアルミニウム合金は、6000系のアルミニウム合金である。
本開示で用いるAl-Mg-Si系のアルミニウム合金の化学成分(質量%)は、Mgが0.80-3.00質量%、Siが0.40-1.26質量%、Cuが0.15-0.52質量%、Feが0.70質量%以下、Crが0.04-0.35質量%、Mnが0.15質量%以下、Znが0.25質量%以下、Tiが0.15質量%以下、残部がアルミニウム及び不可避不純物からなるものであってもよい。
【0016】
Mg:0.80-3.00質量%
Mgは機械的性質の向上に有効である。Mgが不足の場合には機械的性質が不足する。Mgが過剰の場合には鋳造性、鍛造性、耐応力腐食割れ性、伸びが低下する。Mgは1.20質量%以下であってもよい。
【0017】
Si:0.40-1.26質量%
Siは0.79質量%以上であってもよい。Siの含有量が多くなりすぎると機械的性質を劣化させる。
【0018】
Cu:0.15-0.52質量%
Cuは機械的性質の向上、耐応力腐食割れ性の改善に有効である。Cuが不足の場合には機械的性質が不足し、耐応力腐食割れ性の改善が不足する。Cuが過剰の場合には耐食性、伸びが低下する。Cuは0.30質量%以上であってもよい。
【0019】
Fe:0.70質量%以下
Feはアルミニウムの精錬及び鋳造の過程で混入し易い不純物であり、含有量が多くなると機械的性質を劣化させる。Feは0.35質量%以下であってもよく、0.25質量%以下であってもよい。
【0020】
Cr:0.04-0.35質量%、Mn:0.15質量%以下、Zn:0.25質量%以下、Ti:0.15質量%以下
Cr、Mn、Zn、及び、Tiは本開示のアルミニウム合金において任意成分である。
Cr、及び、Mnは、熱処理等の加熱時における再結晶化の防止に有効であり、更に耐応力腐食割れ性、機械的性質の向上に有効である。Cr、及び、Mnが過剰の場合にはその効果が頭打ちになり、さらに不溶性化合物が増加して機械的性質が劣化することがある。
Znは機械的性質の向上に有効である。Znが不足の場合には機械的性質が不足する。Znが過剰の場合には、鋳造割れ等が発生し易くなり、鋳造性、鍛造性、耐応力腐食割れ性、伸びが低下する。
Tiは凝固組織の結晶粒の微細化に有効である。Tiが不足の場合には結晶粒が粗大となって、鋳造時の割れ、鍛造時の肌荒れが生じる。Tiが過剰の場合は、その効果が頭打ちになり、さらに不溶性化合物が増加して機械的性質が劣化する。
【0021】
本開示においては、湿潤ガス応力腐食割れ(HG-SCC)試験により測定される鋳造熱間加工品のき裂長さ(HG-SCCき裂長さ)が1.57mm未満であってもよく、1.27mm以下であってもよく、0.92mm以下であってもよく、0.50mm以下であってもよく、0.16mm以下であってもよい。
【0022】
2.鋳造熱間加工品の製造方法
本開示においては、Al-Mg-Si系のアルミニウム合金の鋳造熱間加工品の製造方法であって、前記Al-Mg-Si系のアルミニウム合金を鋳造し、鋳塊を得ること、前記鋳塊を熱間加工し、前記鋳造熱間加工品を得ること、を有し、前記熱間加工における、前記鋳造熱間加工品の圧下率が10%以上であってもよい。
【0023】
本開示の製造方法は、鋳造工程、熱間加工工程の順に実施する。
本開示の製造方法は、鋳造工程、均質化処理工程、熱間加工工程、T6熱処理工程の順に実施してもよい。
【0024】
鋳造工程は、Al-Mg-Si系のアルミニウム合金を鋳造し、鋳塊を得る工程である。
Al-Mg-Si系のアルミニウム合金は、Si及びCuを含み、前記Cuの質量%に対する前記Siの質量%の比率であるSi/Cu比が、3.3未満であり、Si/Cu比は、1.6以上であってもよい。
鋳塊は、連続鋳造棒(連鋳棒)であってもよい。
鋳造においては、アルミニウム合金を溶解温度750℃で溶製し、その溶湯を鋳型温度150℃の金型鋳型に鋳造し、凝固させ、鋳造材を得てもよい。
アルミニウム合金の溶解温度は、アルミニウム合金が溶解する温度であれば特に限定されない。
【0025】
均質化処理工程は、鋳塊を均質化処理する工程である。
均質化処理は、鋳塊を例えば、5~10時間、430~470℃の熱間状態に加熱してもよい。
【0026】
熱間加工工程は、前記鋳塊を熱間加工し、前記鋳造熱間加工品を得る工程である。
熱間加工は、熱間での鋳塊の押出、圧延加工であってもよく、熱間鍛造であってもよく、これらの両方を行ってもよい。熱間鍛造の場合は、得られた鋳造材から、所定の圧下率の鍛練を加えるため、所定の幅、所定の厚みの矩形断面で所定の長さの試験片を切出し、切出材を得てもよい。当該切出材について、所定の形状の鍛造用金型にて強圧して熱間鍛造し、鋳造熱間鍛造品を得てもよい。切出材の鍛造温度は例えば300~470℃としてもよく、鍛造用金型の型温は例えば200℃としてもよい。熱間鍛造する場合の熱間鍛造温度は、再結晶温度以上であってもよく、300~480℃であってもよい。
熱間加工における、鋳造熱間加工品の圧下率(圧延率とも言う)が10%以上であってもよく、35%以上であってもよく、60%以下であってもよい。
圧下率(%)とは、金属素材を塑性加工する際に金属素材の厚みの減少量と、もともとの金属素材の厚みとの比率のことを意味する。
具体的には、厚みAの鋳塊に熱間加工を施し、熱間加工後の鋳造熱間加工品の厚みをBとした場合、圧下率は、以下のように算出する。
圧下率(%)={(A-B)/A}*100
【0027】
T6熱処理工程は、前記鋳造熱間加工品をT6熱処理する工程である。
T6熱処理は、鋳造熱間加工品を溶体化処理、焼入れ、人工時効処理の順に行うものである。T6熱処理によって鋳造熱間加工品の強度を高めることができる。
溶体化処理とは、鋳造熱間加工品中の添加元素を均一に溶け込ませる処理である。溶体化処理においては、鋳造熱間加工品を大気雰囲気で、440℃以上かつ部分的に溶けない温度で3~6時間程度加熱保持してもよい。溶体化処理において温度が低すぎると固溶状態が作れず、温度が高すぎると部分的に溶けてしまう。
焼入れにおいては、溶体化処理後、鋳造熱間加工品を25~80℃の水で急冷してもよい。
人工時効処理は鋳造熱間加工品を所定の温度に加熱することによって二次相を析出させる処理のことを言う。人工時効処理においては、焼入れ後、鋳造熱間加工品を140~240℃で0.3~48時間加熱保持してもよい。
【実施例0028】
(実施例1)
[初期き裂長さ評価]
アルミニウム合金の成分範囲はA6061合金と異なる成分系で実施した。
表1に示すSi/Cu比を有するAl-Mg-Si系のアルミニウム合金を準備した。アルミニウム合金を鋳造割れが発生しない条件で鋳造し、470℃で7時間均質化処理し、300~470℃で熱間鍛造し、T6熱処理として、555℃で3時間の溶体化処理、水への焼入れ、及び、180℃で6時間の人工時効処理を行い、鋳造熱間加工品のT6材を得た。熱間鍛造の際の圧下率は、表1に示す。
鋳造熱間加工品を所定の大きさに切り出して試験片を作製した。作製した試験片において簡易的なHG-SCC試験として、湿度制御をせず、大気環境の状態で1日実施した。試験後、試験片を取り出し、き裂破面を観察し、初期き裂長さ(1日で進展するき裂長さ)を評価した。当該評価結果を表2に示す。
[HG-SCC試験]
作製した試験片についてHG-SCC試験を実施し、き裂長さを評価した。当該評価結果をHG-SCCき裂長さとして表2に示す。
HG-SCC(湿潤ガス応力腐食割れ)試験法の規格は、一般社団法人日本高圧力技術協会が規格作成した基準である、HPIS E 103:2018”圧縮水素容器用アルミニウム合金の湿潤ガス応力腐食割れについての標準試験法”である。
[その他の試験]
また作製した試験片の大気環境での引張強さ、耐力、負荷応力、及び、破壊靱性値を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0029】
(実施例2~6、比較例2~4)
表1に示すSi/Cu比を有するAl-Mg-Si系のアルミニウム合金を準備し、鋳造熱間加工品の圧下率が表1に示す値となるように熱間鍛造を行ったこと以外は実施例1と同様の条件で鋳造熱間加工品を得た。得られた鋳造熱間加工品について実施例1と同様の方法で試験片を作製し、初期き裂長さ、HG-SCCき裂長さ、引張強さ、耐力、負荷応力、及び、破壊靱性値を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0030】
(比較例1)
表1に示すSi/Cu比を有するAl-Mg-Si系のアルミニウム合金を準備し、熱間鍛造を行わなかったこと以外は実施例1と同様の条件で鋳造品を得た。得られた鋳造品について実施例1と同様の方法で試験片を作製し、初期き裂長さ、HG-SCCき裂長さ、引張強さ、耐力、負荷応力、及び、破壊靱性値を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
[評価結果]
図1は、Si/Cu比と、初期き裂長さとの関係を示すグラフである。
図2は、圧下率と、初期き裂長さとの関係を示すグラフである。
図1~2、表1~2に示すように、圧下率0%の比較例1ではSi/Cu比の影響に依らず、初期き裂長さが大きく、HG-SCCき裂長さも0.16mmを超えていることがわかる。圧下率が10%の比較例2ではSi/Cu比が4.0と高いため初期き裂長さが大きいことがわかる。圧下率が60%の比較例3ではSi/Cu比が4.0と高いため初期き裂長さが大きいことがわかる。
また、実施例2、3、5では、初期き裂長さ及びHG-SCCき裂長さが0mmであり、HG-SCC試験の合格基準を満たすことがわかる。
したがって、アルミニウム合金において、高湿度中にて一定荷重で引張負荷をかけた際のき裂進展を抑制するためには、少なくともSi/Cu比が3.3未満、熱間加工の圧下率が10%以上の条件で鋳造熱間加工品を成形する必要があることがわかる。
図1
図2