(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090355
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】飛灰循環システム及びそれを備えた廃棄物処理施設
(51)【国際特許分類】
B01D 53/83 20060101AFI20240627BHJP
B01D 53/40 20060101ALI20240627BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B01D53/83
B01D53/40 ZAB
B01D53/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206216
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下反 元貴
(72)【発明者】
【氏名】上原 伸基
(72)【発明者】
【氏名】坪井 成浩
【テーマコード(参考)】
4D002
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AA09
4D002AA19
4D002AB01
4D002AC04
4D002BA03
4D002BA14
4D002CA11
4D002DA02
4D002DA05
4D002DA11
4D002DA12
4D002DA16
4D002DA70
4D002HA01
(57)【要約】
【課題】 燃焼排ガス中の酸性ガスと二酸化炭素をより効率良く除去できる飛灰循環システムを提供する。
【解決手段】 集塵機と、集塵機のガス入口に接続された排ガス導入路と、集塵機のガス出口に接続された排ガス排出路と、排ガス導入路に設けられ排ガス中の酸性ガスを除去する薬剤を供給する薬剤供給ノズルと、集塵機で集塵した飛灰から未反応の薬剤を含む飛灰を排ガス導入路に戻す循環通路と、循環通路中の未反応の薬剤を含む飛灰を排ガス導入路に循環させる気体を供給するブロワと、循環通路中の未反応の薬剤に向けて蒸気を供給する蒸気供給ノズルと、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集塵機と、
前記集塵機のガス入口に接続された排ガス導入路と、
前記集塵機のガス出口に接続された排ガス排出路と、
前記排ガス導入路に設けられ排ガス中の酸性ガスを除去する薬剤を供給する薬剤供給ノズルと、
前記集塵機で集塵した飛灰から未反応の前記薬剤を含む飛灰を前記排ガス導入路に戻す循環通路と、
前記循環通路中の前記未反応の前記薬剤を含む飛灰を前記排ガス導入路に循環させる気体を供給するブロワと、
前記循環通路中の前記未反応の前記薬剤に向けて蒸気を供給する蒸気供給ノズルと、
を備えている、飛灰循環システム。
【請求項2】
前記蒸気供給ノズルは、前記循環通路における前記未反応の前記薬剤の流れ方向に沿って複数個が設けられている、請求項1に記載の飛灰循環システム。
【請求項3】
前記複数個の前記蒸気供給ノズルから供給する蒸気の量を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記循環通路における最も上流側の前記蒸気供給ノズルから前記未反応の前記薬剤の所定量に対応した必要量の蒸気を供給し、他の下流側の前記蒸気供給ノズルから前記未反応の前記薬剤の残量に対応した不足量の蒸気を供給するように制御する、請求項2に記載の飛灰循環システム。
【請求項4】
前記集塵機で集塵した飛灰から前記未反応の前記薬剤を含む飛灰を分離する分級装置をさらに有している、請求項1又は2に記載の飛灰循環システム。
【請求項5】
前記排ガス排出路から前記排ガスの一部を前記ブロワで前記循環通路に供給する排ガス循環路をさらに有している、請求項1又は2に記載の飛灰循環システム。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の飛灰循環システムを備えた廃棄物処理施設であって、
廃棄物を焼却する焼却炉と、
前記焼却炉から排出される前記排ガスの廃熱を蒸気として回収するボイラ装置と、
前記ボイラ装置の蒸気で駆動する蒸気タービンと、
を備え、
前記ボイラ装置の下流に前記飛灰循環システムを備え、
前記蒸気タービンの抽気蒸気を前記飛灰循環システムの前記蒸気供給ノズルから供給する蒸気として利用するように構成されている、廃棄物処理施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、廃棄物焼却施設などにおいて飛灰を循環させるシステムと、それを備えた廃棄物処理施設に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ごみ焼却炉、ガス化溶融炉などから排出される排ガス中には塩化水素、硫黄酸化物等の酸性ガスが含まれるため、この酸性ガスを除去して大気中に放出する技術がある。排ガスから酸性ガスを除去する方法として、排ガス中に消石灰などの薬剤を供給する方法が知られている。以下、薬剤として「消石灰」を例に説明する。
【0003】
一方、ごみ焼却炉、ガス化溶融炉などから排出される排ガス中の酸性ガス濃度は、廃棄物の性状の変化に伴って常に変動しており、時には急激に増加することがあるため、実際には安全を見越して過剰量の消石灰を供給する場合が多い。このため、未反応の消石灰を含む飛灰を集塵機の上流側に循環させて有効活用する技術がある。なお、飛灰は潮解性を有するため、所定温度まで加熱して集塵機の上流側に循環させている。
【0004】
例えば、この種の文献として、排ガスに含まれる酸性ガスの除去用薬剤としてナトリウム系薬剤を用いることが記載されたものがある(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1では、集塵機で薬剤と反応した塩を含む飛灰(排ガス中の煤塵+ナトリウム系薬剤と酸性ガスの反応生成物+未反応ナトリウム系薬剤)の一部を、集塵器から排出される排ガスの一部で集塵器入口側の排ガス煙道に戻している。
【0005】
また、他の廃棄物焼却炉から排出される燃焼排ガスに含まれる酸性ガスを除去する方法として、消石灰を粉末の状態で供給し、消石灰と反応して形成された塩を含む煤塵を集塵機で捕集するものがある(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2では、集塵機から排出される集塵ダストを流動層装置へ供給して粉砕し、未反応の消石灰や消石灰の未反応部分が露出された状態で含まれるダスト粉砕物を、集塵機の下流側排ガスで燃焼排ガス中に循環させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-37764号公報
【特許文献2】特開2018-40499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1及び2には、未反応の薬剤を含む飛灰を集塵機の上流側に循環させて、未反応の薬剤を酸性ガスの除去に利用することしか記載されていない。このため、薬剤を有効利用できるが、より効率良く反応させて排ガスから酸性ガスを除去できるシステムが望まれている。また、排ガスから二酸化炭素を除去することも望まれている。
【0008】
そこで、本出願は、排ガス中の酸性ガスと二酸化炭素をより効率良く除去できる飛灰循環システム及びそれを備えた廃棄物処理施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願の一態様に係る飛灰循環システムは、集塵機と、前記集塵機のガス入口に接続された排ガス導入路と、前記集塵機のガス出口に接続された排ガス排出路と、前記排ガス導入路に設けられ酸性ガスを除去する薬剤を供給する薬剤供給ノズルと、前記集塵機で集塵した飛灰から未反応の前記薬剤を含む飛灰を前記排ガス導入路に戻す循環通路と、前記循環通路中の前記未反応の前記薬剤を含む飛灰を前記排ガス導入路に循環させる気体を供給するブロワと、前記循環通路中の前記未反応の前記薬剤に向けて蒸気を供給する蒸気供給ノズルと、を備えている、
【発明の効果】
【0010】
本出願によれば、排ガス中の酸性ガスと二酸化炭素をより効率良く除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本出願の一実施形態に係る飛灰循環システムを示す構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す飛灰循環システムを備えた廃棄物処理施設の一例を示す構成図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す廃棄物焼却施設における飛灰循環システムの各部における温度例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本出願の一実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、廃棄物焼却施設であるごみ焼却施設50の飛灰循環システム1を例に説明する。また、排ガス中の酸性ガスと二酸化炭素を除去する薬剤として、消石灰30を例に説明する。この明細書及び特許請求の範囲の書類中において、上流側、下流側の概念は、
図2において飛灰循環システム1の左に示す焼却炉52の方向が上流側であり、右に示す煙突14の方向が下流側である。なお、薬剤は、消石灰だけではなくアルカリ系の薬剤を用いた場合も同様である。アルカリ系の薬剤としては、例えば、消石灰(Ca(OH)2)、重曹(NaHCO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、生石灰(CaO)、苛性ソーダ(NaOH)などを用いることができる。
【0013】
<飛灰循環システムの構成>
図1は、一実施形態に係る飛灰循環システム1を示す構成図である。この実施形態の飛灰循環システム1は、排ガスG1中から飛灰を分離する集塵機10と、この集塵機10のガス入口に接続された排ガス導入路11と、集塵機10のガス出口に接続された排ガス排出路12とを含んでいる。集塵機10は、例えば、飛灰を含んだ排ガスG1をフィルタ外面から内面へ流し、飛灰をフィルタ外面で捕集するような構造のものを利用できる。集塵機10で飛灰15が除去された排ガスG2は、排ガス排出路12に設けられたブロワ13を介して煙突14から大気放出される。
【0014】
排ガス導入路11には、内部を流れる排ガスG1に向けて薬剤である消石灰30を供給する薬剤供給ノズル31が設けられている。薬剤供給ノズル31は、例えば、所定量の粉体状の消石灰30を排ガス導入路11の内部に向けて供給する。消石灰30の供給量は、制御装置42によって制御される。
【0015】
薬剤供給ノズル31から排ガス中に消石灰[Ca(OH)2]30が供給されることで、排ガス中の酸性ガスと反応し、二酸化炭素の固化[CO2(g)+Ca(OH)2(s)⇒CaCO3(s)+H2O(g)]、酸性ガスの除去[2HCl(g)+Ca(OH)2(s)⇒CaCl2(s)+2H2O(g)]が行われる。
【0016】
また、集塵機10で集塵した飛灰15は、集塵灰貯槽16に貯められた後、分級装置17によって未反応の消石灰32を含む飛灰が分離される。これにより、薬剤供給ノズル31から排ガス導入路11に供給された消石灰30の内、未反応の消石灰32を含む飛灰が集塵機10で集塵された飛灰15の全体から効率良く分離される。未反応の消石灰32を含む飛灰が分離された残りの飛灰15は、分級装置17から外部に搬出される。分級装置17は、例えば、飛灰15を所定の大きさで分離するものが利用できる。分級装置17で分離された未反応の消石灰32を含む飛灰は、循環通路18を介して排ガス導入路11に投入される。これにより、消石灰30は、未反応の消石灰32を再利用することで使用量の低減が可能となる。
【0017】
一方、排ガス排出路12には、一部の排ガスを排ガス導入路11に循環させる排ガス循環路19が設けられている。排ガス循環路19には、ブロワ20が設けられており、このブロワ20によって排ガス排出路12の一部の排ガスG2が排ガス循環路19から循環通路18に循環させられる。この排ガスG2により、分級装置17で分離された未反応の消石灰32を含む飛灰が循環通路18から排ガス導入路11に循環させられる。排ガス排出路12における排ガスG2は、後述するように比較的高温である。このため、分級装置17から循環通路18を介して排ガス導入路11に循環させられる未反応の消石灰32を含む飛灰を、適切な温度の排ガスG2で排ガス導入路11へ効率良く循環させることができる。これにより、潮解性を有する飛灰を集塵機10に再循環させたときに、集塵機10のフィルタに目詰まりなどが生じるのを防ぐことができる。しかも、未反応の消石灰32を含む飛灰を排ガス導入路11に戻す気体を加熱する必要がないので、消費電力を削減できる。
【0018】
そして、上記循環通路18には、排ガス導入路11に戻す未反応の消石灰32に蒸気40を供給する蒸気供給ノズル41が設けられている。蒸気供給ノズル41は、循環通路18内に向けて蒸気40を噴射するノズルが利用できる。これにより、排ガス導入路11に循環させる未反応の消石灰32は、循環通路18内で蒸気40によって表面が適度に加湿されるため、排ガス導入路11に戻された後、効率良く反応させることができる。即ち、固体である未反応の消石灰32の表面に蒸気40を噴射して表面に水分を多く付着させることで反応のための準備をし、排ガス導入路11に戻されて気体の排ガスG1と接触したときに高効率で反応させての反応促進を図るようにしている。
【0019】
また、この実施形態では、蒸気供給ノズル41が、循環通路18の排ガスG2が流れる方向に沿って複数個設けられている。このようにすれば、未反応の消石灰32を含む飛灰は、排ガス導入路11に戻す循環通路18において適切な量の蒸気40が供給されるとともに、複数の蒸気供給ノズル41から供給される蒸気40によって循環通路18内で攪拌される。よって、循環通路18内を流れる未反応の消石灰32の表面を均一に加湿することができる。これによっても、排ガス導入路11に戻された未反応の消石灰32の反応促進を図るようにしている。なお、この実施形態では、複数の蒸気供給ノズル41として3個の蒸気供給ノズル41が備えられている。蒸気供給ノズル41の数は、2個でも4個以上であってもよく、3個に限定されない。
【0020】
蒸気供給ノズル41は、分級装置17から循環通路18に戻される未反応の消石灰32の量に応じた供給量の蒸気を供給する。循環通路18に供給される蒸気40の供給量は、蒸気40の供給路に設けられたバルブで調節される。例えば、排ガス導入路11から集塵機10に導入される排ガスG1中の酸性ガス濃度が変動する場合、酸性ガス濃度に応じた量の消石灰30を供給することがある。このような場合、排ガスG1中の酸性ガス濃度が低くなると未反応の消石灰32が多くなる。このため、蒸気40の量は、排ガス導入路11を流れる排ガスG1中の酸性ガス濃度に応じて未反応の消石灰32の量を概算し、未反応の消石灰32の量に応じた量を供給するように調節できる。
【0021】
また、蒸気40は、複数箇所に設けた蒸気供給ノズル41から供給する場合に、各蒸気供給ノズル41から供給する蒸気量を異ならせることができる。この場合、蒸気40は、循環通路18における上流側(ブロワ20の方向)の蒸気供給ノズル41から未反応の消石灰32の所定量に対応した必要量の蒸気を供給し、下流側(排ガス導入路11の方向)の蒸気供給ノズル41から未反応の消石灰32の残量に対応した不足量の蒸気を供給するようにできる。このようにすれば、循環通路18で戻す未反応の消石灰32を混ぜて蒸気の付着を促進できる。このような複数の蒸気供給ノズル41から供給する蒸気量の制御は、制御装置42によって配管途中のバルブの開度を調節することで制御できる。
【0022】
制御装置42は、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ及びI/Oインターフェース等を有する。制御装置42は、不揮発性メモリに保存されたプログラムに基づいてプロセッサが揮発性メモリを用いて演算処理することで蒸気量の制御が実現される。制御装置42による蒸気量の制御は、最も上流側の蒸気供給ノズル41から未反応の消石灰32の全体量に対して反応を促進させるために必要な量の蒸気40を供給する。そして、他の下流側の蒸気供給ノズル41から未反応の薬剤の量の変化に応じて変化する不足量の蒸気40を供給するように制御できる。このような蒸気量の制御により、未反応の消石灰32の量が増えた場合等、下流側の蒸気供給ノズル41から供給する蒸気量を増すことにより、全体の蒸気量を適切な量に調節することができる。
【0023】
従って、この飛灰循環システム1によれば、未反応の消石灰32の表面に水分を多く付着させて排ガス導入路11に戻すことで反応促進を図ることができる。よって、飛灰循環システム1で排ガス中の酸性ガスの除去促進と二酸化炭素の固化による除去促進が可能になるとともに、飛灰循環システム1における薬剤使用量の低減ができる。
【0024】
<飛灰循環システムを備えた廃棄物処理施設>
図2は、
図1に示す飛灰循環システム1を備えた廃棄物処理施設であるごみ焼却施設50の一例を示す構成図である。この実施形態のごみ焼却施設50は、ごみを焼却する焼却炉52と、焼却炉52から排出される排ガスG1の排熱を蒸気として回収するボイラ装置54と、ボイラ装置54内で発生した蒸気で駆動する蒸気タービン55と、を含む。焼却炉52は、ごみ投入口51から投入されたごみを焼却するための火炉室53を有する。この実施形態の焼却炉52は、火炉室53の下方にストーカを有する例である。焼却炉52の構成は一例であり、図示する例に限定されない。また、この例ではボイラ装置54が2段で備えられているが、ボイラ装置54の構成もこの例に限定されない。蒸気タービン55は、発電機56を駆動して発電する設備となっている。
【0025】
上記飛灰循環システム1は、ボイラ装置54の下流に備えられており、この飛灰循環システム1によってボイラ装置54から下流に流れる排ガスG1中の酸性ガスと二酸化炭素を除去している。飛灰循環システム1の集塵機10から排出される排ガスG2は、排ガス排出路12に備えられたブロワ13を介して煙突14から排出されている。
【0026】
そして、ごみ焼却施設50は、飛灰循環システム1の循環通路18で未反応の消石灰32を含む飛灰に供給する蒸気40として、蒸気タービン55の抽気蒸気を利用している。蒸気タービン55は、一般的に蒸気タービン55の途中から蒸気を一部抽出して作業用などに利用しているため、この抽気蒸気を飛灰循環システム1において未反応の消石灰32に供給する蒸気40として利用している。
【0027】
従って、このごみ焼却施設50によれば、飛灰循環システム1において未反応の消石灰32の反応促進を図る蒸気40として施設内の抽気蒸気を有効活用することができる。よって、このごみ焼却施設50によれば、施設内の構成要素によって、飛灰循環システム1で排ガス中の酸性ガスの除去促進と二酸化炭素の固化による除去促進が可能になるとともに、飛灰循環システム1における薬剤使用量の低減ができる。
【0028】
<飛灰循環システムにおける各部の温度例>
図3は、
図2に示すごみ焼却施設50における飛灰循環システム1の各部における温度例を示す構成図である。
図3に示す温度例は一例である。上記ごみ焼却施設50の場合、集塵機10の上流側の排ガス導入路11に流れてくる排ガスG1は、約160℃~170℃となる。そして、排ガス排出路12の一部の排ガスG2で循環通路18を戻される未反応の消石灰32を含む飛灰は、排ガス排出路12の排ガスG2が約160℃~170℃程度となるため、約160℃~170℃で循環通路18内を流れる。一方、蒸気タービン55から循環通路18に供給される抽気蒸気40は、約170℃~200℃となるため、循環通路18を流れる排ガスG2とほぼ同程度の温度の蒸気40を未反応の消石灰32に供給することができる。このように、循環通路18を流れる未反応の消石灰32に対して、適切な温度の蒸気40を供給することができる。
【0029】
よって、ごみ焼却施設50(廃棄物処理施設)によれば、飛灰循環システム1において、未反応の消石灰32を含む飛灰を適切な温度の排ガスG2で排ガス導入路11に循環させることにより、新たな熱源を必要とすることなく、潮解性を有する飛灰を集塵機10に循環させたときに集塵機10のフィルタに目詰まりなどが生じるのを適切に防ぐことができる。しかも、未反応の消石灰32に供給する蒸気40は、新たな熱源を必要とすることなく得ることができる。
【0030】
<その他の実施形態>
上記した実施形態では、分級装置17で未反応の消石灰32を含む飛灰を効率良く分離しているが、分級装置17はなくてもよい。また、上記した実施形態では、循環通路18に排ガス循環路19を介して排ガスG2の一部を循環させているが、循環通路18に所定温度の空気をブロワ20で導入して未反応の消石灰32を含む飛灰を排ガス導入路11に循環させてもよい。
【0031】
なお、上記した実施形態では、廃棄物焼却施設の一例としてごみ焼却施設50を例に説明したが、廃棄物焼却施設はごみ焼却施設50に限定されない。
【0032】
また、上記した実施形態は一例を示しており、循環通路18に供給する蒸気40は、他の施設などから供給するようにしてもよい。また、上記した
図3における各部の温度例は一例であり、各部の温度は上記した例と異なっても未反応の薬剤を適切に反応させるようにできる。その他の構成も本出願の要旨を損なわない範囲で種々の変更は可能であり、本出願は上記した実施形態に限定されるものではない。
【0033】
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
[項目1]
集塵機と、前記集塵機のガス入口に接続された排ガス導入路と、前記集塵機のガス出口に接続された排ガス排出路と、前記排ガス導入路に設けられ排ガス中の酸性ガスを除去する薬剤を供給する薬剤供給ノズルと、前記集塵機で集塵した飛灰から未反応の前記薬剤を含む飛灰を前記排ガス導入路に戻す循環通路と、前記循環通路中の前記未反応の前記薬剤を含む飛灰を前記排ガス導入路に循環させる気体を供給するブロワと、前記循環通路中の前記未反応の前記薬剤に向けて蒸気を供給する蒸気供給ノズルと、を備えている、飛灰循環システム。
【0034】
この構成により、薬剤供給ノズルから排ガス導入路に供給された薬剤であって、集塵機で集塵した飛灰から未反応の薬剤を含む飛灰を循環通路から排ガス導入路に戻すことができる。排ガス導入路に戻す未反応の薬剤は、循環通路で蒸気が供給されて加湿されるため、排ガス導入路の酸性ガス及び二酸化炭素と適切に反応させることができる。
【0035】
[項目2]
前記蒸気供給ノズルは、前記循環通路における前記未反応の前記薬剤の流れ方向に沿って複数個が設けられている、項目1に記載の飛灰循環システム。
【0036】
このように構成すれば、未反応の薬剤を排ガス導入路に戻す循環通路において、未反応の薬剤に対して適切な量の蒸気を複数の蒸気供給ノズルから供給するとともに、未反応の薬剤を循環通路内で攪拌して均一に加湿することができる。
【0037】
[項目3]
前記複数個の前記蒸気供給ノズルから供給する蒸気の量を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記循環通路における最も上流側の前記蒸気供給ノズルから前記未反応の前記薬剤の所定量に対応した必要量の蒸気を供給し、他の下流側の前記蒸気供給ノズルから前記未反応の前記薬剤の残量に対応した不足量の蒸気を供給するように制御する、項目2に記載の飛灰循環システム。
【0038】
このように構成すれば、複数の蒸気供給ノズルのうち、最も上流側の蒸気供給ノズルから未反応の薬剤の所定量を反応促進させるために必要な量の蒸気を供給し、他の下流側の蒸気供給ノズルから未反応の薬剤の量に応じて変化する不足量の蒸気を供給することができる。このようにすれば、未反応の薬剤の量が変化した場合に下流側の蒸気供給ノズルから供給する蒸気量で適切な蒸気量に調節することができる。
【0039】
[項目4]
前記集塵機で集塵した飛灰から前記未反応の前記薬剤を含む飛灰を分離する分級装置をさらに有している、項目1乃至3のいずれか1項に記載の飛灰循環システム。
【0040】
このように構成すれば、分級装置によって、集塵機で集塵した飛灰から未反応の薬剤を含む飛灰をより適切に分離することができる。
【0041】
[項目5]
前記排ガス排出路から前記排ガスの一部を前記ブロワで前記循環通路に供給する排ガス循環路をさらに有している、項目1乃至4のいずれか1項に記載の飛灰循環システム。
【0042】
このように構成すれば、未反応の薬剤を含む飛灰を排ガス排出路の一部の排ガスで循環通路から排ガス導入路に戻すことができる。未反応の薬剤を排ガス排出路の一部の排ガスで戻すため、未反応の薬剤を適切な温度で戻すための熱源を必要とすることなく排ガス導入路に戻すことができる。
【0043】
[項目6]
項目1乃至5のいずれかの項目に記載の飛灰循環システムを備えた廃棄物焼却施設であって、廃棄物を焼却する焼却炉と、前記焼却炉から排出される前記排ガスの廃熱を蒸気として回収するボイラ装置と、前記ボイラ装置の蒸気で駆動する蒸気タービンと、を備え、前記ボイラ装置の下流に前記飛灰循環システムを備え、前記蒸気タービンの抽気蒸気を前記飛灰循環システムの前記蒸気供給ノズルから供給する蒸気として利用するように構成されている、廃棄物処理施設。
【0044】
この構成により、廃棄物を焼却炉で焼却した排熱をボイラ装置で回収して蒸気を発生させ、ボイラ装置の蒸気で蒸気タービンを駆動することで発電することができ、廃棄物を焼却した熱を効率良く回収することができる。また、蒸気タービンの抽気蒸気を飛灰循環システムの循環通路に蒸気供給ノズルで供給する蒸気として利用できるため、排ガス導入路に戻す未反応の薬剤に供給する蒸気を廃棄物焼却施設内から得ることができる。よって、廃棄物焼却施設において発生する有害ガスを無害化する薬剤の未反応分を循環させる飛灰循環システムにおいて、未反応の薬剤の反応促進を図る蒸気に廃棄物焼却施設内の蒸気を利用して施設全体の効率化を図ることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 飛灰循環システム
10 集塵機
11 排ガス導入路
12 排ガス排出路
17 分級装置
18 循環通路
19 排ガス循環路
30 消石灰(薬剤)
31 薬剤供給ノズル
32 未反応の消石灰
40 蒸気
41 蒸気供給ノズル
42 制御装置
50 焼却施設
52 焼却炉
54 ボイラ装置
55 蒸気タービン
G1、G2 排ガス