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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090361
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】船外機
(51)【国際特許分類】
   B63H 20/00 20060101AFI20240627BHJP
   B63H 20/28 20060101ALI20240627BHJP
   B63B 5/10 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B63H20/00 610
B63H20/28 100
B63B5/10
B63H20/00 410
B63H20/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206222
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 吉彦
(57)【要約】
【課題】ウォーターポンプの設計の自由度の高い船外機を提供する。
【解決手段】船外機100は、電動モータ120と、電動モータ120によって回転駆動されるドライブシャフト130と、プロペラ141と、プロペラ141とともに回転するプロペラシャフト140と、ドライブシャフト130の回転をプロペラシャフト140に伝達するギヤ機構180と、冷却水が流通する冷却水流路200と、冷却水を冷却水流路200に流すウォーターポンプ210と、を備え、ウォーターポンプ210が、インペラ211と、インペラ211とともに回転するポンプシャフト212と、を備え、ポンプシャフト212が、プロペラシャフト140と同軸に配され、プロペラシャフト140に対して共に回転するように接続されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体に取り付けられる船外機であって、
駆動装置と、
前記駆動装置によって回転駆動されるドライブシャフトと、
プロペラと、
前記プロペラとともに回転するプロペラシャフトと、
前記ドライブシャフトの回転を前記プロペラシャフトに伝達する伝達機構と、
冷却水が流通する冷却水流路と、
前記冷却水を前記冷却水流路に流すウォーターポンプと、を備え、
前記ウォーターポンプが、
インペラと、
前記インペラとともに回転するポンプシャフトと、を備え
前記ポンプシャフトが、前記プロペラシャフトと同軸に配され、前記プロペラシャフトに対して共に回転するように接続されている、
船外機。
【請求項2】
前記ドライブシャフトが、正回転方向と、前記正回転方向とは反対方向である逆回転方向との双方に回転可能であり、
前記ウォーターポンプが非容積式のポンプである、
請求項1に記載の船外機。
【請求項3】
前記駆動装置が、電源から供給される電力で駆動される電動モータである、
請求項2に記載の船外機。
【請求項4】
前記ウォーターポンプが遠心式ポンプである、請求項2または請求項3に記載の船外機。
【請求項5】
前記ポンプシャフトが、前記プロペラシャフトに対して脱着可能に接続されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項6】
前記プロペラシャフトと前記ポンプシャフトとを接続するジョイント部材をさらに備え、
前記プロペラシャフトが第1の結合部を備えており、
前記ポンプシャフトが第2の結合部を備えており、
前記ジョイント部材が、前記第1の結合部に結合される第1の結合受部と、前記第2の結合部に結合される第2の結合受部と、を備える、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項7】
前記第1の結合部と前記第2の結合部とが略等しい形状を有しており、前記第1の結合受部と第2の結合受部とが略等しい形状を有している、
請求項6に記載の船外機。
【請求項8】
前記第1の結合部および前記第1の結合受部のうち一方が、前記プロペラシャフトの回転軸線に沿って延びる第1のスプライン軸であり、他方が前記第1のスプライン軸を受け入れる第1のスプライン穴であり、
前記第2の結合部および前記第2の結合受部のうち一方が、前記ポンプシャフトの回転軸線に沿って延びる第2のスプライン軸であり、他方が前記第2のスプライン軸を受け入れる第2のスプライン穴である、
請求項6または請求項7に記載の船外機。
【請求項9】
前記プロペラシャフトが前記第1のスプライン軸を備えており、
前記ポンプシャフトが前記第2のスプライン軸を備えており、
前記ジョイント部材が前記第1のスプライン穴と前記第2のスプライン穴とを備えている、
請求項8に記載の船外機。
【請求項10】
前記ジョイント部材が、両端間の全長にわたって延びるスプライン穴を有しており、
前記スプライン穴のうち、一端に隣接する部位が前記第1のスプライン穴となっており、他端に隣接する部位が前記第2のスプライン穴となっている、
請求項9に記載の船外機。
【請求項11】
前記プロペラシャフトおよび前記ポンプシャフトのうち一方が第3の結合部を備えており、他方が、前記第3の結合部と結合される第3の結合受部を備えている、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項12】
前記第3の結合部と前記第3の結合受部のうち一方が、前記プロペラシャフトの回転軸線に沿って延びる第3のスプライン軸であり、他方が前記第3のスプライン軸を受け入れる第3のスプライン穴である、請求項11に記載の船外機。
【請求項13】
前記ポンプシャフトが前記第3のスプライン軸を備えており、前記プロペラシャフトが前記第3のスプライン穴を備えている、
請求項12に記載の船外機。
【請求項14】
船体に取り付けられる船外機であって、
駆動装置と、
前記駆動装置によって回転駆動されるドライブシャフトと、
プロペラと、
前記プロペラとともに回転するプロペラシャフトと、
前記ドライブシャフトの回転を前記プロペラシャフトに伝達する伝達機構と、
冷却水が流通する冷却水流路と、
前記冷却水を前記冷却水流路に流すウォーターポンプと、を備え、
前記ウォーターポンプが、
インペラと、
前記インペラとともに回転するポンプシャフトと、を備え
前記ポンプシャフトが、前記プロペラシャフトの回転が伝達されることにより回転する、
船外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、船外機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、船外機は、エンジンを冷却するための冷却水を汲み上げるためのウォーターポンプを備えている。ウォーターポンプは、ドライブシャフトに取り付けられたインペラなどから構成される。エンジンが駆動されると、ドライブシャフトの回転に伴ってインペラが回転し、冷却水がエンジンへ圧送される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-145137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成のウォーターポンプでは、インペラがドライブシャフトに取り付けられ、ドライブシャフトの回転によって駆動されるので、ウォーターポンプの設置位置に制約が生じ、設計の自由度が低い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本明細書によって開示される船外機は、船体に取り付けられる船外機であって、駆動装置と、前記駆動装置によって回転駆動されるドライブシャフトと、プロペラと、前記プロペラとともに回転するプロペラシャフトと、前記ドライブシャフトの回転を前記プロペラシャフトに伝達する伝達機構と、冷却水が流通する冷却水流路と、前記冷却水を前記冷却水流路に流すウォーターポンプと、を備え、前記ウォーターポンプが、インペラと、前記インペラとともに回転するポンプシャフトと、を備え、前記ポンプシャフトが、前記プロペラシャフトと同軸に配され、前記プロペラシャフトに対して共に回転するように接続されている。
【0006】
上記の構成によれば、ウォーターポンプを、プロペラシャフトの回転が伝達されることによって駆動されるものとすることにより、ドライブシャフト周りと比較してスペースに余裕のあるプロペラシャフトの近傍にウォーターポンプを設置することができるので、設計の自由度が高まる。
【0007】
(2)上記(1)の船外機において、前記ドライブシャフトが、正回転方向と、前記正回転方向とは反対方向である逆回転方向との双方に回転可能であり、前記ウォーターポンプが非容積式のポンプであっても構わない。
【0008】
ドライブシャフトが正回転方向と逆回転方向との双方に回転可能な場合、ドッグクラッチなどのクラッチ機構が不要となり、プロペラシャフト周りのスペースにさらに余裕がある。このスペースを利用してウォーターポンプを配することができ、船外機の大型化を回避しつつ、冷却水の輸送のために必要な構成の配置を最適化することができる。また、非容積式のポンプは、回転方向に制約がないため、正転方向と逆転方向との双方に回転可能なドライブシャフトに接続されるポンプとして好適である。
【0009】
(3)上記(2)の船外機において、前記駆動装置が、電源から供給される電力で駆動される電動モータであっても構わない。
【0010】
(4)上記(2)または(3)の船外機において、前記ウォーターポンプが遠心式ポンプであっても構わない。
【0011】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つの船外機において、前記ポンプシャフトが、前記プロペラシャフトに対して脱着可能に接続されていても構わない。
【0012】
このような構成によれば、メンテナンスの際に、ポンプシャフトをプロペラシャフトから取り外すことが可能であり、メンテナンス作業が容易となる。
【0013】
(6)上記(1)から(5)のいずれか1つの船外機において、前記プロペラシャフトと前記ポンプシャフトとを接続するジョイント部材をさらに備え、前記プロペラシャフトが第1の結合部を備えており、前記ポンプシャフトが第2の結合部を備えており、前記ジョイント部材が、前記第1の結合部に結合される第1の結合受部と、前記第2の結合部に結合される第2の結合受部と、を備えていても構わない。
【0014】
このような構成によれば、プロペラシャフトに振動や曲げ荷重が加えられた場合に、その振動や荷重を主としてジョイント部材によって受けることとなるため、ポンプシャフトへの負荷を軽減することができる。
【0015】
(7)上記(6)の船外機において、前記第1の結合部と前記第2の結合部とが略等しい形状を有しており、前記第1の結合受部と第2の結合受部とが略等しい形状を有していても構わない。
【0016】
このような構成によれば、プロペラシャフトおよびポンプシャフトをジョイント部材に組み付ける際に、ジョイント部材の向きを考慮せずに組み付けることができるため、組み付け作業を容易に行うことができる。
【0017】
(8)上記(6)または(7)の船外機において、前記第1の結合部および前記第1の結合受部のうち一方が、前記プロペラシャフトの回転軸線に沿って延びる第1のスプライン軸であり、他方が前記第1のスプライン軸を受け入れる第1のスプライン穴であり、前記第2の結合部および前記第2の結合受部のうち一方が、前記ポンプシャフトの回転軸線に沿って延びる第2のスプライン軸であり、他方が前記第2のスプライン軸を受け入れる第2のスプライン穴であっても構わない。
【0018】
このような構成によって、ポンプシャフトをプロペラシャフトに対して共に回転するように、かつ脱着可能に接続する構成が容易に実現される。
【0019】
(9)上記(8)の船外機において、前記プロペラシャフトが前記第1のスプライン軸を備えており、前記ポンプシャフトが前記第2のスプライン軸を備えており、前記ジョイント部材が前記第1のスプライン穴と前記第2のスプライン穴とを備えていても構わない。
【0020】
スプライン軸と比較して加工が困難なスプライン穴を、プロペラシャフトおよびポンプシャフトとは別部材で、プロペラシャフトおよびポンプシャフトよりも小型化、短尺化が可能なジョイント部材に配することにより、製造を容易化できる。
【0021】
(10)上記(9)の船外機において、前記ジョイント部材が、両端間の全長にわたって延びるスプライン穴を有しており、前記スプライン穴のうち、一端に隣接する部位が前記第1のスプライン穴となっており、他端に隣接する部位が前記第2のスプライン穴となっていても構わない。
【0022】
このような構成によれば、ジョイント部材を単純な形状とすることができ、製造工程を簡素化できる。
【0023】
(11)上記(1)から(5)のいずれか1つの船外機において、前記プロペラシャフトおよび前記ポンプシャフトのうち一方が第3の結合部を備えており、他方が、前記第3の結合部と結合される第3の結合受部を備えていても構わない。
【0024】
このような構成によれば、ポンプシャフトがプロペラシャフトに対して直接接続されているため、部品点数の増加を避け、製造工程の複雑化を避けることができる。
【0025】
(12)上記(11)の船外機において、前記第3の結合部と前記第3の結合受部のうち一方が、前記プロペラシャフトの回転軸線に沿って延びる第3のスプライン軸であり、他方が前記第3のスプライン軸を受け入れる第3のスプライン穴であっても構わない。
【0026】
このような構成によって、ポンプシャフトをプロペラシャフトに対して共に回転するように、かつ脱着可能に接続する構成が容易に実現される。
【0027】
(13)上記(12)の船外機において、前記ポンプシャフトが前記第3のスプライン軸を備えており、前記プロペラシャフトが前記第3のスプライン穴を備えていても構わない。
【0028】
一般に、プロペラシャフトはポンプシャフトよりも大きな荷重がかかるため、ポンプシャフトよりも太くなっている。このため、ポンプシャフトに第3のスプライン穴を形成するよりも、プロペラシャフトに第3のスプライン穴を形成する方が容易であり、製造工程の複雑化が避けられる。
【0029】
(14)本明細書によって開示される他の船外機は、船体に取り付けられる船外機であって、駆動装置と、前記駆動装置によって回転駆動されるドライブシャフトと、プロペラと、前記プロペラとともに回転するプロペラシャフトと、前記ドライブシャフトの回転を前記プロペラシャフトに伝達する伝達機構と、冷却水が流通する冷却水流路と、前記冷却水を前記冷却水流路に流すウォーターポンプと、を備え、前記ウォーターポンプが、インペラと、前記インペラとともに回転するポンプシャフトと、を備え、前記ポンプシャフトが、前記プロペラシャフトの回転が伝達されることにより回転する。
【0030】
上記の構成によれば、ウォーターポンプを、プロペラシャフトの回転が伝達されることによって駆動されるものとすることにより、ドライブシャフト周りと比較してスペースに余裕のあるプロペラシャフトの近傍にウォーターポンプを設置することができるので、設計の自由度が高まる。
【発明の効果】
【0031】
本明細書によって開示される技術によれば、ウォーターポンプの設計の自由度の高い船外機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施形態1の船舶の構成を概略的に示す斜視図
図2】実施形態1の船外機の構成を概略的に示す側面図
図3】実施形態1の船外機を図1のIII-III線で示す位置で切断した断面を部分的に拡大して示す部分拡大断面図
図4図3中、枠Fで示す部分を拡大して示す拡大断面図
図5】実施形態2の船外機において図4と同一範囲を拡大して示す部分拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書によって開示される技術の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0034】
<実施形態1>
(船舶1の構成)
実施形態1を、図1から図4を参照しつつ説明する。実施形態1の船舶1は、図1に示すように、船体10と、船外機100とを備える。図1および後述する他の図面には、船舶1の位置を基準とした各方向を表す矢印を示している。より具体的には、各図には、前方(FRONT)、後方(REAR)、左方(LEFT)、右方(RIGHT)、上方(UPPER)および下方(LOWER)のそれぞれを表す矢印を示している。前後方向、左右方向および上下方向(鉛直方向)は、それぞれ互いに直交する方向である。
【0035】
(船体10の構成)
船体10は、船舶1において乗員が搭乗する部分である。船体10は、図1に示すように、居住空間11を有する船体本体部12と、居住空間11に設置された操縦席16と、操縦席16付近に設置された操縦装置17とを有する。操縦装置17は、操船のための装置であり、例えば、ステアリングホイール、シフト・スロットルレバー、ジョイスティック、モニタ、入力装置を有する。また、船体10は、居住空間11の後端を区画する仕切壁13と、船体10の後端に位置するトランサム14とを有する。前後方向において、トランサム14と仕切壁13との間には空間15が存在している。
【0036】
(船外機100の構成)
船外機100は、船舶1を推進させる推力を発生する装置である。本実施形態の船外機100は、電動モータ120(駆動装置の一例)によって駆動される電動式の船外機である。以下では、特に断りがない限り、基準姿勢の船外機100について説明する。基準姿勢は、船舶1が走航するときの船外機100の姿勢(図1に示す姿勢)であり、後述するドライブシャフト130の回転軸線Adが上下方向に延伸し、かつ、プロペラシャフト140の回転軸線Aprが前後方向に延伸する姿勢である。前後方向、左右方向および上下方向のそれぞれは、基準姿勢の船外機100に基づいて定められる。
【0037】
船外機100は、図1に示すように、船体10の後部(船尾)に配されたトランサム14に取り付けられている。船外機100は、船外機本体110と、懸架装置150とを有する。
【0038】
(船外機本体110の構成)
船外機本体110は、図2および図3に示すように、カウル114と、ケーシング116と、電動モータ120と、ドライブシャフト130と、プロペラ141と、プロペラシャフト140と、冷却水流路200と、ウォーターポンプ210と、ギヤ機構180(伝達機構の一例)と、ジョイント部材190と、を備える。
【0039】
(カウル114およびケーシング116)
カウル114は、図2に示すように、船外機本体110の上部に配置された収容体である。ケーシング116は、図2に示すように、アッパケース116aと、ロアーケース116bと、を含む。アッパケース116aは、カウル114の下方に位置する収容体である。ロアーケース116bは、アッパケース116aの下方に位置する収容体である。
【0040】
ロアーケース116bには、図3に示すように、内部にオイルが貯留され、ギヤ機構180を収容するギヤ室118が配されている。
【0041】
(電動モータ120)
電動モータ120は、バッテリ(電源)から供給された電力により駆動される。電動モータ120は、永久磁石を含むロータと、バッテリの電力が供給されるコイルを含むステータと、ロータおよびステータを収容するモータハウジングと、を含む。電動モータ120は、カウル114の内部に配されている。バッテリは、カウル114の内部に配置されていてもよく、船体10の内部に配置されていても構わない。
【0042】
(ドライブシャフト130)
ドライブシャフト130は、図2に示すように、電動モータ120から下方に延びる棒状の部材であって、ケーシング116の内部に収容されている。ドライブシャフト130は、その回転軸線Adが上下方向に延伸する姿勢で配置されている。
【0043】
ドライブシャフト130は、電動モータ120からの回転駆動力により、回転軸線Ad周りに回転する。電動モータ120は正転方向と逆転方向との双方に回転可能であるため、ドライブシャフト130も、電動モータ120の回転駆動方向に従い、その回転軸線Ad周りに、船舶1を前進させるための正転方向と、正転方向とは反対方向であって、船舶1を後進させるための逆転方向と、の双方に回転可能となっている。
【0044】
(プロペラ141およびプロペラシャフト140)
プロペラ141は、複数枚の羽を有する回転体である。プロペラ141は、回転することによって推力を発生する。
【0045】
プロペラシャフト140は、棒状の部材であり、図2図3および図4に示すように、ロアーケース116bの内部に、前後方向に延びている。プロペラシャフト140は、ベアリング142を介して回転可能にロアーケース116bに支持されている。プロペラシャフト140の後端部は、ロアーケース116bから後方に突出しており、この後端部にプロペラ141が取り付けられている。回転軸線Aprまわりのプロペラシャフト140の回転に伴い、プロペラ141も回転する。
【0046】
プロペラシャフト140の前端部は、図4に示すように、第1のスプライン軸140A(第1の結合部の一例)となっている。第1のスプライン軸140Aは、回転軸線Aprに沿って延びる丸棒状の軸であって、外周面に複数のスプライン歯を備える一般的な構成を有している。
【0047】
(冷却水流路200、およびウォーターポンプ210)
船外機本体110の内部には、冷却水流路200が配されている。冷却水流路200は、船外機100の外部から取り入れられた冷却水(海水、湖水、河川水等)が流通する流路である。冷却水流路200は、ロアーケース116bの外面に開口し、冷却水を内部に取り込むための取水口201と、同じくロアーケース116bの外面に開口し、冷却水を外部に排出するための排水口202と、を有しており、取水口201から、電動モータ120の周囲を通って排水口202まで延びている。取水口201は、船舶1が走航中であるとき、すなわち船外機100が基準姿勢にあるときに、喫水線よりも下方となる位置に配されている。取水口201は、ロアーケース116bの前端に開口している。
【0048】
図4に示すように、冷却水流路200の一部は、ポンプ室203となっている。ポンプ室203は、ロアーケース116bの内部において、ギヤ室118の前方に配されており、仕切部材220によってギヤ室118から区画されている。仕切部材220は、ポンプ室203およびギヤ室118に連通するシャフト孔221を有している。
【0049】
ウォーターポンプ210は、図4に示すように、インペラ211と、インペラ211とともに回転するポンプシャフト212と、を備える非容積式のポンプである。本実施形態では、ウォーターポンプ210として、遠心式ポンプを例示する。
【0050】
インペラ211は、複数枚の羽根を有する回転体であって、ポンプ室203の内部に配されている。ポンプシャフト212は、棒状の部材であって、前後方向に延びている。ポンプシャフト212は、シャフト孔221に挿通され、ベアリング213を介して回転可能に仕切部材220に支持されている。ポンプシャフト212の回転軸線Apnは、プロペラシャフト140の回転軸線Aprと一致している。ポンプシャフト212の前端部は、ポンプ室203の内部に配され、ここにインペラ211が取り付けられている。つまり、ウォーターポンプ210(具体的には、ポンプシャフト212およびインペラ211)は、プロペラシャフト140の回転軸線Apr上に配されている。ポンプシャフト212の回転軸線Apnまわりの回転に伴って、インペラ211も回転する。
【0051】
ポンプシャフト212の後端部は、ギヤ室118の内部に配される第2のスプライン軸212A(第2の結合部の一例)となっている。第2のスプライン軸212Aは、回転軸線Apnに沿って延びる丸棒状の軸であって、外周面に複数のスプライン歯を備える一般的な構成を有している。第2のスプライン軸212Aは、第1のスプライン軸140Aと略等しい形状を有している。つまり、第2のスプライン軸212Aと第1のスプライン軸140Aとは、外径、長さおよびスプライン歯の配置、形状が略等しい。
【0052】
冷却水流路200のうち、取水口201からウォーターポンプ210に至る部位、つまり、取水口201とポンプ室203との間に配された部位(入水路204)は、図4に示すように、ウォーターポンプ210よりも前方に配され、ポンプシャフト212の回転軸線Apn上に延びている。
【0053】
シャフト孔221の内部には、図4に示すように、ポンプシャフト212の外周面に装着されて、シャフト孔221の内周面とポンプシャフト212との隙間を埋める複数のシール部材230が配されている。各シール部材230は円環状であって、ゴム弾性を有するゴムなどの材料により構成されており、ポンプシャフト212を全周にわたって包囲している。複数のシール部材230は、ポンプシャフト212の回転軸線Apnに沿って並んで配されている。これらのシール部材230によって、ポンプ室203内に流入した冷却水がシャフト孔221の内周面とポンプシャフト212との隙間を通ってギヤ室118に侵入することが防がれている。
【0054】
(ギヤ機構180)
ギヤ機構180は、ドライブシャフト130の回転をプロペラシャフト140に伝達するための機構である。
【0055】
ギヤ機構180は、図4に示すように、第1のギヤ181と、第2のギヤ182と、を備えている。第1のギヤ181は、ドライブシャフト130に対して同軸に取り付けられ、ドライブシャフト130とともに回転するギヤである。第2のギヤ182は、プロペラシャフト140に対して同軸に取り付けられ、プロペラシャフト140とともに回転するギヤである。第2のギヤ182は、第1のギヤ181と噛み合っている。第1のギヤ181と第2のギヤ182とは、例えばベベルギヤである。
【0056】
ギヤ機構180は、ギヤ室118の内部に配されている。2つのギヤ181、182は、ギヤ室118の内部に配されたオイルによって潤滑されている。
【0057】
上記したように、電動モータ120によって回転駆動されるドライブシャフト130は、正転方向と逆転方向との双方に回転可能であるため、ドッグクラッチなどの、プロペラシャフト140の回転方向を切り替えるためのクラッチ機構が不要である。このため、ロアーケース116bの内部において、プロペラシャフト140の周囲のスペースには比較的余裕があり、このスペースを利用してウォーターポンプ210とギヤ機構180とを配することができる。これにより、船外機100の大型化を回避しつつ、冷却水の輸送のために必要な構成の配置を最適化することができる。また、このスペースを利用して、シール部材230を複数配置するために必要なポンプシャフト212の長さを確保することができるので、冷却水がギヤ室118に侵入することが確実に防がれる。
【0058】
(ジョイント部材190)
ジョイント部材190は、第1のスプライン軸140Aおよび第2のスプライン軸212Aと噛み合い、プロペラシャフト140とポンプシャフト212とを接続する部材である。
【0059】
ジョイント部材190は、両端に開口を有する円筒状であって、一端から他端まで延びるスプライン穴191を有している。スプライン穴191は、内周面に複数のスプライン溝が配された一般的な構成を有している。スプライン穴191のうち、ジョイント部材190の一端(図4の右端)に隣接する部位が、第1のスプライン軸140Aを受け入れる第1のスプライン穴191A(第1の結合受部)となっており、ジョイント部材190の他端(図4の左端)に隣接する部位が、第2のスプライン軸212Aを受け入れる第2のスプライン穴191B(第2の結合受部)となっている。第1のスプライン穴191Aと第2のスプライン穴191Bとは、一つのスプライン穴191の一端部と他端部であり、互いに略等しい形状を有している。つまり、第1のスプライン穴191Aと第2のスプライン穴191Bとは、内径およびスプライン溝の配置が略等しい。
【0060】
第1のスプライン穴191Aに第1のスプライン軸140Aが嵌め入れられ、第1のスプライン軸140Aが有する各スプライン歯が、第1のスプライン穴191Aが有する各スプライン溝に嵌まり込む。第2のスプライン穴191Bに第2のスプライン軸212Aが嵌め入れられ、第2のスプライン軸212Aが有する各スプライン歯が、第2のスプライン穴191Bが有する各スプライン溝に嵌まり込む。これにより、プロペラシャフト140とジョイント部材190とポンプシャフト212とが共に回転する。つまり、ポンプシャフト212が、ジョイント部材190を介して、プロペラシャフト140に対して、共に回転するように接続されている。ポンプシャフト212は、プロペラシャフト140に対して同軸に配されている。
【0061】
一つのスプライン穴191の一端部と他端部とを第1のスプライン穴191Aおよび第2のスプライン穴191Bとすることにより、ジョイント部材190を単純な形状とすることができ、製造工程を簡素化できる。さらに、スプライン軸140A、212Aと比較して加工が困難なスプライン穴191を、プロペラシャフト140およびポンプシャフト212とは別部材で、プロペラシャフト140およびポンプシャフト212よりも小型化、短尺化が可能なジョイント部材190に配することにより、製造を容易化できる。
【0062】
また、第1のスプライン軸140Aと第2のスプライン軸212Aとが互いに略等しい形状を有しており、第1のスプライン穴191Aと第2のスプライン穴191Bとが互いに略等しい形状を有しているので、ポンプシャフト212とプロペラシャフト140とをジョイント部材190によって接続する作業の際に、ジョイント部材190の向きを考慮せずに組み付けることができ、組み付け作業を容易に行うことができる。
【0063】
また、第1のスプライン軸140Aを第1のスプライン穴191Aに対して挿抜し、第2のスプライン軸212Aを第2のスプライン穴191Bに対して挿抜することによって、ポンプシャフト212がプロペラシャフト140に対して脱着可能に組み付けられる。これにより、メンテナンスの際に、ポンプシャフト212をプロペラシャフト140から取り外すことが可能であり、メンテナンス作業が容易となる。
【0064】
(懸架装置150)
懸架装置150は、船外機本体110を船体10に懸架する装置である。懸架装置150は、図2に示すように、左右一対のクランプブラケット152と、チルト軸160と、接続ブラケット156とを含む。
【0065】
左右一対のクランプブラケット152は、船体10の後方に、互いに左右方向に離隔した状態で配置されており、例えばボルトによって船体10のトランサム14に固定されている。各クランプブラケット152は、左右方向に延伸する貫通孔が形成された筒状の支持部152aを有する。
【0066】
チルト軸160は、棒状の部材である。チルト軸160は、クランプブラケット152の支持部152aの貫通孔内に回転可能に支持されている。チルト軸160の中心線であるチルト軸線Atは、船外機100のチルト動作における水平方向(左右方向)の軸線を構成する。
【0067】
接続ブラケット156は、一対のクランプブラケット152に挟まれるように配置されており、チルト軸線Atまわりに回転可能に、チルト軸160を介してクランプブラケット152の支持部152aに支持されている。接続ブラケット156は、船外機本体110に固定されている。接続ブラケット156は、例えば油圧シリンダ等のアクチュエータを含むチルト装置(不図示)により、クランプブラケット152に対してチルト軸線Atまわりに回転駆動される。
【0068】
接続ブラケット156がクランプブラケット152に対してチルト軸線Atまわりに回転すると、接続ブラケット156に固定された船外機本体110もチルト軸線Atまわりに回転する。これにより、船体10に対して船外機本体110を上下方向に回転させるチルト動作が実現される。船外機100のチルト動作により、プロペラ141が水中に位置するチルトダウン状態(船外機100が基準姿勢にある状態:図1に示す状態)から、プロペラ141が喫水線より上側に位置するチルトアップ状態までの範囲で、船外機本体110のチルト軸線Atまわりの角度を変更することができる。なお、船外機本体110のチルト軸線Atまわりの角度を調整して船舶1の走行時の姿勢を調整するトリム動作も実行することができる。
【0069】
(船外機100の動作)
船舶1を走航させる際には、船外機100がチルトダウン状態とされ、ロアーケース116bとプロペラ141とが喫水線よりも下方に配される。ロアーケース116bの内部に配されている取水口201、入水路204、ポンプ室203、およびウォーターポンプ210も喫水線よりも下方に配され、ポンプ室203の内部に、取水口201から入水路204を通って外部から冷却水が流入する。
【0070】
電動モータ120が駆動されると、ドライブシャフト130は、電動モータ120からの回転駆動力により、回転軸線Ad周りに回転する。
【0071】
ドライブシャフト130の回転は、ギヤ機構180を介してプロペラシャフト140に伝達される。ギヤ機構180がドライブシャフト130の正転回転をプロペラシャフト140に伝達すると、プロペラシャフト140と共に回転するプロペラ141が前進方向の推力を発生する。第1のギヤ機構180がドライブシャフト130の逆転回転をプロペラシャフト140に伝達すると、プロペラシャフト140と共に回転するプロペラ141が後進方向の推力を発生する。
【0072】
また、ドライブシャフト130の回転に伴ってジョイント部材190が回転し、ポンプシャフト212も回転する。つまり、ドライブシャフト130の回転が、ギヤ機構180によってプロペラシャフト140に伝達され、プロペラシャフト140からジョイント部材190を介してポンプシャフト212に伝達される。そして、ポンプシャフト212と共にインペラ211が回転する。取水口201から取り込まれた冷却水は、インペラ211の回転に伴って発生する遠心力によって冷却水流路200内を圧送されて、電動モータ120の周囲に供給され、電動モータ120を冷却する。冷却水は、電動モータ120の他に、船外機本体110の内部に配されているバッテリ、インバータ、減速機などを冷却してもよい。冷却に利用された後の冷却水は、排水口202から外部に排出される。
【0073】
なお、プロペラシャフト140が正転方向、逆転方向の双方に回転するのに伴い、ポンプシャフト212も回転軸線Apnの周りに、プロペラシャフト140の正転方向に伴う回転方向と、プロペラシャフト140の逆転方向に伴う回転方向と、の双方に回転することとなるが、ウォーターポンプ210は回転方向に制約のない非容積式のポンプであるため、プロペラシャフト140がどちらの方向に回転しても正常に動作する。
【0074】
このように、ポンプシャフト212が、プロペラシャフト140に対して共に回転するように接続されている。ドライブシャフト130の回転がギヤ機構180を介してプロペラシャフト140に伝達され、さらにジョイント部材190を介してポンプシャフト212に伝達され、ウォーターポンプ210が駆動される。このような構成によれば、ウォーターポンプ210を、プロペラシャフト140の回転が伝達されて駆動されるものとすることにより、ドライブシャフト130周りと比較してスペースに余裕のあるプロペラシャフト140の近傍にウォーターポンプ210を設置することができるので、設計の自由度が高まる。
【0075】
また、ジョイント部材190を介してプロペラシャフト140とポンプシャフト212とが接続されている。このような構成によれば、プロペラシャフト140に振動や曲げ荷重が加えられた場合に、その振動や荷重を主としてジョイント部材190によって受けることとなるため、ポンプシャフト212への負荷を軽減することができる。
【0076】
なお、ドライブシャフト130が正転方向、逆転方向の双方に回転するのに伴い、ポンプシャフト212も回転軸線Apnの周りに、ドライブシャフト130の正転方向に伴う回転方向と、ドライブシャフト130の逆転方向に伴う回転方向と、の双方に回転することとなるが、ウォーターポンプ210は回転方向に制約のない非容積式のポンプであるため、ドライブシャフト130がどちらの方向に回転しても正常に動作する。
【0077】
(作用効果)
以上のように本実施形態の船外機100は、船体10に取り付けられる船外機100であって、電動モータ120と、電動モータ120によって回転駆動されるドライブシャフト130と、プロペラ141と、プロペラ141とともに回転するプロペラシャフト140と、ドライブシャフト130の回転をプロペラシャフト140に伝達するギヤ機構180と、冷却水が流通する冷却水流路200と、冷却水を冷却水流路200に流すウォーターポンプ210と、を備え、ウォーターポンプ210が、インペラ211と、インペラ211とともに回転するポンプシャフト212と、を備え、ポンプシャフト212が、プロペラシャフト140と同軸に配され、プロペラシャフト140に対して共に回転するように接続されている。
【0078】
上記の構成によれば、ウォーターポンプ210を、プロペラシャフト140の回転が伝達されることによって駆動されるものとすることにより、ドライブシャフト130周りと比較してスペースに余裕のあるプロペラシャフト140の近傍にウォーターポンプ210を設置することができるので、設計の自由度が高まる。
【0079】
また、ドライブシャフト130が、正回転方向と、前記正回転方向とは反対方向である逆回転方向との双方に回転可能であり、ウォーターポンプ210が非容積式のポンプである。
【0080】
このような構成によれば、ドライブシャフト130が正回転方向と逆回転方向との双方に回転可能な場合、ドッグクラッチなどのプロペラシャフト140の回転方向を切り替えるクラッチ機構が不要となり、プロペラシャフト140周りのスペースにさらに余裕がある。このスペースを利用してウォーターポンプ210を配することができ、船外機100の大型化を回避しつつ、冷却水の輸送のために必要な構成の配置を最適化することができる。また、非容積式のウォーターポンプ210は、回転方向に制約がないため、正転方向と逆転方向との双方に回転可能なドライブシャフト130から回転が伝達されるポンプとして好適である。
【0081】
また、ポンプシャフト212が、プロペラシャフト140に対して脱着可能に接続されている。このような構成によれば、メンテナンスの際に、ポンプシャフト212をプロペラシャフト140から取り外すことが可能であり、メンテナンス作業が容易となる。
【0082】
また、船外機100が、プロペラシャフト140とポンプシャフト212とを接続するジョイント部材190をさらに備え、プロペラシャフト140が第1のスプライン軸140Aを備えており、ポンプシャフト212が第2のスプライン軸212Aを備えており、ジョイント部材190が、第1のスプライン軸140Aに結合される第1のスプライン穴191Aと、第2のスプライン軸212Aに結合される第2のスプライン穴191Bと、を備えている。
【0083】
このような構成によれば、プロペラシャフト140に振動や曲げ荷重が加えられた場合に、その振動や荷重を主としてジョイント部材190によって受けることとなるため、ポンプシャフト212への負荷を軽減することができる。
【0084】
また、第1のスプライン軸140Aと第2のスプライン軸212Aとが略等しい形状を有しており、第1のスプライン穴191Aと第2のスプライン穴191Bとが略等しい形状を有していても構わない。
【0085】
このような構成によれば、ポンプシャフト212をプロペラシャフト140に対して共に回転するように、かつ脱着可能に接続する構成が容易に実現される。また、プロペラシャフト140およびポンプシャフト212をジョイント部材190に組み付ける際に、ジョイント部材190の向きを考慮せずに組み付けることができるため、組み付け作業を容易に行うことができる。さらに、スプライン軸140A、212Aと比較して加工が困難なスプライン穴191を、プロペラシャフト140およびポンプシャフト212とは別部材で、プロペラシャフト140およびポンプシャフト212よりも小型化、短尺化が可能なジョイント部材190に配することにより、製造を容易化できる。
【0086】
また、ジョイント部材190が、両端間の全長にわたって延びるスプライン穴191を有しており、スプライン穴191のうち、一端に隣接する部位が第1のスプライン穴191Aとなっており、他端に隣接する部位が第2のスプライン穴191Bとなっている。このような構成によれば、ジョイント部材190を単純な形状とすることができ、製造工程を簡素化できる。
【0087】
<実施形態2>
実施形態2を、図5を参照しつつ説明する。本実施形態の船外機は、ポンプシャフト320がプロペラシャフト330に直接接続されている点で、実施形態1と異なる。本実施形態において、実施形態1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0088】
プロペラシャフト330は、実施形態1と同様に、棒状の部材であり、ベアリング142を介して回転可能にロアーケース116bに支持されている。プロペラシャフト330の後端部は、ロアーケース116bから後方に突出しており、この後端部にプロペラ141が取り付けられている。回転軸線Aprまわりのプロペラシャフト330の回転に伴い、プロペラ141も回転する。
【0089】
プロペラシャフト330の前端部には、前端に開口する第3のスプライン穴330A(第3の結合受部の一例)が配されている。第3のスプライン穴330Aの内周面には、回転軸線Aprに沿って延びる複数のスプライン溝が配されている。
【0090】
ウォーターポンプ310は、実施形態1と同様に、インペラ211と、インペラ211とともに回転するポンプシャフト320と、を備える非容積式のポンプである。ポンプシャフト320は、棒状の部材であって、プロペラシャフト330の回転軸線Apr上に延びている。つまり、ポンプシャフト320はプロペラシャフト330と同軸に配されている。ポンプシャフト320の後端部は、第3のスプライン軸320A(第3の結合部の一例)となっている。第3のスプライン軸320Aは、回転軸線Apnに沿って延びる丸棒状の軸であって、外周面に複数のスプライン歯を有している。
【0091】
第3のスプライン穴330Aに第3のスプライン軸320Aが嵌め入れられており、第3のスプライン軸320Aが有する各スプライン歯が、第3のスプライン穴330が有する各スプライン溝に嵌まり込む。これにより、ポンプシャフト320が、プロペラシャフト330に対して共に回転するように、かつ、脱着可能に接続されている。ポンプシャフト320は、プロペラシャフト140に対して同軸に配されている。
【0092】
ドライブシャフト130の回転がギヤ機構180を介してプロペラシャフト330に伝達されてプロペラシャフト330が回転し、その回転がさらにポンプシャフト320に伝達され、ポンプシャフト320が回転する。これにより、ウォーターポンプ310が駆動される。
【0093】
このように、本実施形態では、ポンプシャフト320が第3のスプライン軸320Aを備えており、プロペラシャフト330が、第3のスプライン軸320Aと結合される第3のスプライン穴330Aを備えている。
【0094】
このような構成によれば、ポンプシャフト320がプロペラシャフト330に対して直接接続されているため、部品点数の増加を避け、製造工程の複雑化を避けることができる。また、ポンプシャフト320をプロペラシャフト330に対して共に回転するように、かつ脱着可能に接続する構成が容易に実現される。
【0095】
さらに、プロペラシャフト330はポンプシャフト320よりも大きな荷重がかかるため、ポンプシャフト320よりも太くなっている。このため、第3のスプライン穴330Aをポンプシャフト320に形成するよりも、プロペラシャフト330に形成する方が容易であり、製造工程の複雑化が避けられる。
【0096】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、電動モータ120によって駆動される電動式の船外機100を例示したが、船外機の駆動装置は電動モータでなくてもよく、例えば内燃機関であっても構わない。
(2)上記実施形態では、ドライブシャフト130が、電動モータ120の回転駆動方向に従い、正転方向と逆転方向との双方に回転可能となっている例を示したが、例えば、船外機が、駆動装置としての内燃機関と、ドライブシャフトの回転方向を切り替えるためのシフト機構と、を備えていても構わない。
(3)実施形態1では、プロペラシャフト140が第1のスプライン軸140Aを備え、ジョイント部材190が第1のスプライン穴191Aを備えていたが、プロペラシャフトが第1のスプライン穴を備え、ジョイント部材が第1のスプライン軸を備えていても構わない。また、実施形態1では、ポンプシャフト212が第2のスプライン軸212Aを備え、ジョイント部材190が第2のスプライン穴191Bを備えていたが、ポンプシャフトが第2のスプライン穴を備え、ジョイント部材が第2のスプライン軸を備えていても構わない。
(4)実施形態1では、第1のスプライン軸140Aと第2のスプライン軸212Aとが略同一の形状を有していたが、第1のスプライン軸と第2のスプライン軸とが異なる外径や長さを有していても構わない。その場合、第1のスプライン穴と第2のスプライン穴も、それぞれ、第1のスプライン軸と第2のスプライン軸とに対応する形状であればよい。
(5)実施形態1では、第1のスプライン軸140Aが第1のスプライン穴191Aに嵌め入れられることにより、プロペラシャフト140とジョイント部材190とが接続されていたが、プロペラシャフトとジョイント部材との接続形態は、スプライン軸とスプライン穴によるものには限られず、例えばボルトとナットとにより接続されていても構わない。ポンプシャフトとジョイント部材との接続形態についても同様である。また実施形態2のプロペラシャフトとポンプシャフトとの接続形態についても同様である。
(6)上記実施形態では、ポンプシャフト212、320がプロペラシャフト140、330に対して脱着可能に接続されていたが、ポンプシャフトはプロペラシャフトに脱着不能に接続されていてもよく、例えばジョイント部材とプロペラシャフト、またはジョイント部材とポンプシャフトが溶接により接続されていても構わない。
(7)上記実施形態では、ポンプシャフト212に複数のシール部材230が装着されていたが、シール部材の数は任意であり、例えば1つであっても構わない。
【符号の説明】
【0097】
10:船体 100:船外機 120:電動モータ(駆動装置) 130:ドライブシャフト 140、330:プロペラシャフト 140A:第1のスプライン軸(第1の結合部) 141:プロペラ 180:ギヤ機構(伝達機構) 190:ジョイント部材 191:スプライン穴 191A:第1のスプライン穴(第1の結合受部) 191B:第2のスプライン穴(第2の結合受部) 200:冷却水流路 210:ウォーターポンプ 211:インペラ 212、320:ポンプシャフト 212A:第2のスプライン軸(第2の結合部) 320A:第3のスプライン軸(第3の結合部) 330A:第3のスプライン穴(第3の結合受部)
図1
図2
図3
図4
図5