(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090370
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】レーダ装置及びレーダ映像表示方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/12 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
G01S7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206238
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】横山 達也
(72)【発明者】
【氏名】池田 晟
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB01
5J070AC01
5J070AD01
5J070AF05
5J070AJ14
5J070AK39
5J070BG03
5J070BG06
5J070BG12
(57)【要約】
【課題】トレイル映像には表示されづらい種類の物標について、その移動経路を直感的に把握できる映像を表示可能なレーダ装置及びレーダ映像表示方法を提供する。
【解決手段】電波の送受信により捕捉した物標のレーダエコーを1スキャンごとにスキャン静止画として記憶する記憶部14と、複数のスキャン静止画が連続的に再生されるスキャン動画を表示する表示制御部16と、を備える、ことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波の送受信により、物標のレーダエコーを捕捉し、前記レーダエコーの映像を表示するレーダ装置であって、
前記レーダエコーを1スキャンごとにスキャン静止画として記憶する記憶手段と、
複数の前記スキャン静止画が連続的に再生されるスキャン動画を表示する表示制御手段と、を備える、
ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記表示制御手段が、前記レーダエコーの映像と、前記スキャン動画と、を表示手段に重畳表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
船舶に搭載される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
電波の送受信により、物標のレーダエコーを捕捉し、前記レーダエコーの映像を表示するレーダ映像表示方法であって、
前記レーダエコーを1スキャンごとにスキャン静止画として記憶し、
複数の前記スキャン静止画が連続的に再生されるスキャン動画を表示する、
ことを特徴とするレーダ映像表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダエコーに基づいて物標を検出し、表示するレーダ装置及びレーダ映像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶に搭載されて、レーダアンテナから放射された電波のエコー信号に基づいて自船の周囲に存在する物標の像をモニターなどに表示するレーダ装置が知られている。このようなレーダ装置には、レーダエコーの映像と、トレイル映像とを表示する機能を備えたものがある。レーダエコーの映像とは、スイープ毎に物標をリアルタイムで表示する映像のことをいい、トレイル映像とは、レーダエコーの映像に表示された物標をスキャン毎に処理して物標の航跡(移動軌跡)を表示する映像のことをいう。ここで、1スイープとは、レーダアンテナからレーダ信号を送信し、送受信部でレーダエコーを受信するまでの1回の送受信動作をいい、1スキャンとは、アンテナが1回転する間に行われた複数のスイープをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トレイル映像は、レーダエコーによりはっきりと捉えられた物標の映像に基づいて生成されるため、鳥等の高速に動く小物標や、ボンデンやブイ等の一定周期の浮き沈みがある物標は、トレイル映像には表示されにくいという問題がある。これらの物標はレーダエコーの映像には表示されるものの、レーダエコーの映像が静止画像であるため、そこから物標の移動軌跡を把握することは困難である。
【0005】
そこで本発明は、トレイル映像には表示されづらい種類の物標について、その移動軌跡を直感的に把握できる映像を表示可能なレーダ装置及びレーダ映像表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、電波の送受信により、物標のレーダエコーを捕捉し、前記レーダエコーの映像を表示するレーダ装置であって、前記レーダエコーを1スキャンごとにスキャン静止画として記憶する記憶手段と、複数の前記スキャン静止画が連続的に再生されるスキャン動画を表示する表示制御手段と、を備える、ことを特徴とするレーダ装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレーダ装置において、前記表示制御手段が、前記レーダエコーの映像と、前記スキャン動画と、を表示手段に重畳表示する、ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のレーダ装置において、船舶に搭載される、ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、電波の送受信により、物標のレーダエコーを捕捉し、前記レーダエコーの映像を表示するレーダ映像表示方法であって、前記レーダエコーを1スキャンごとにスキャン静止画として記憶し、複数の前記スキャン静止画が連続的に再生されるスキャン動画を表示する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1及び4に記載の発明によれば、レーダエコーを1スキャン毎にスキャン静止画として記憶手段に記憶し、それらのスキャン静止画を高速に切り替えて動画として再生するので、静止画像であるレーダエコーの映像では把握しづらかった物標の移動軌跡を直感的に把握することが可能となる。また、トレイル映像には表示されなかった種類の物標についても追跡することが可能となる。さらに、その物標が何であるかを推測することが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、表示制御手段がレーダエコーの映像とスキャン動画を重畳表示するので、物標のリアルタイムの映像(レーダエコーの映像)と物標の過去の移動軌跡を示す映像(スキャン動画)とを同時に確認でき、物標の過去から現在までの変化を直感的に把握することが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、船舶に搭載されるレーダ装置にスキャン動画が表示されるようにしているので、従来のトレイル映像には表示されづらかった鳥の群れやボンデンやブイなどの物標の移動経路を把握し、推測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の実施の形態に係るレーダ装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図1のレーダ装置により実行される処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】(a)はレーダエコーの映像とスキャン動画とを表示部の画面に重畳表示した状態を示す模式図であり、(b)はレーダエコーの映像を表示部のメイン画面に表示し、スキャン動画をセカンド画面に表示した状態を示す模式図である。
【
図4】表示部の画面に表示したスキャン動画と、スキャン動画を構成する任意の3枚のスキャン静止画(フレーム1~フレーム3)の部分図を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0015】
図1は、この発明の実施の形態に係るレーダ装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。また、
図2は、実施の形態に係るレーダ装置1により実行される処理手順を示すフローチャートである。このレーダ装置1は、レーダエコー映像とスキャン動画の少なくとも一方を表示手段に表示するための処理として、ステップS1~ステップS4の処理を実行する。以下にレーダ装置1の各部の機能と処理について説明する。
【0016】
レーダ装置1は、例えば船舶に搭載されてレーダ信号を送信するとともに前記レーダ信号の反射信号であるレーダエコーを受信して前記レーダエコーに基づいて自船の周囲に存在する物標を検出する機序であり、主として、レーダアンテナ11と、送受信ユニット12と、AD変換部・信号処理部13と、記憶部(記憶手段)14と、表示部(表示手段)15と、表示制御部(表示制御手段)16とを有する。
【0017】
レーダアンテナ11は、パルス状の電波としてレーダ信号を無線送信する(言い換えると、放射する)とともに、送信/放射した前記電波の反射波であるレーダエコー(具体的には、前記レーダ信号の反射信号)を捕捉する機能を備える送受信器である。レーダアンテナ11は、電波を送信/放射するとともにレーダエコーを捕捉する動作を、所定の水平回転周期で水平方向に回転してアンテナ正面の向きを変えながら繰り返し行うことにより、自船の周囲を360°にわたってスキャンする。
【0018】
送受信ユニット12は、レーダ信号を生成するとともに生成した前記レーダ信号をレーダアンテナ11を介して送信し、また、送信した前記レーダ信号の反射信号であるレーダエコーをレーダアンテナ11を介して受信する機能を備える通信回路である。送受信ユニット12は、所定の時間間隔(具体的には、レーダアンテナ11の水平回転周期よりも短い時間間隔)でレーダ信号を送信するとともにレーダエコーを受信して出力する。
【0019】
以上のように、レーダアンテナ11と送受信ユニット12において電波の送信及びレーダエコーの捕捉処理(ステップS1)が行われた後、A/D変換部・信号処理部13において、前記所定の時間間隔で送受信ユニット12から供給されるアナログ信号であるレーダエコーがデジタル信号に変換され、レーダエコーに含まれる海面反射等の不要なエコーの除去等の信号処理が行われる。
【0020】
なお、A/D変換部・信号処理部13から出力されるエコー信号に対して、必要に応じて、所定の信号処理が施されるようにしてもよい。具体的には例えば、感度調整処理や、レーダエコーに含まれる海面反射、陸地反射、雨雪の反射などによる不要なエコー(即ち、クラッタ)の除去処理などが施されるようにしてもよい。
【0021】
記憶部14は、画像の生成に纏わる処理を実行する際に用いられるプログラムやデータなどを記憶する機能を備える記憶素子/記憶回路であり、例えば揮発性メモリやハードディスクによって構成される。特に本発明においては、1スキャン分のレーダエコーからなるスキャン静止画を記憶する(ステップS2)。具体的には、1スキャンが終了する毎に新たなスキャン静止画が生成されて記憶部14に記憶されるとともに、最も古いスキャン静止画が記憶部14から消去されるようにしてもよい。
【0022】
表示部15は、画像を表示する機能を有し、例えば液晶ディスプレイによって構成される。船舶用のレーダ装置の場合、PPI(Plan Position Indicator の略)形式で表示されることが一般的である。
【0023】
実施の形態に係る表示部15は、レーダエコーの映像をリアルタイムで表示することもできるし(ステップS3b)、記憶部14に記憶されている複数のスキャン静止画を連続的に再生してスキャン動画として表示することもできる(ステップS3a)。また、表示部15は、1つの画面のみから構成されていてもよいし、2つ以上の画面から構成されていてもよい。表示部15が1つの画面のみから構成されている場合には、レーダエコーの映像又はスキャン動画のどちらか一方を適宜切り替えて表示してもよいし、
図3(a)に示すように、レーダエコーの映像とスキャン動画の両方を重畳表示してもよい。これにより、物標のリアルタイムの映像(レーダエコーの映像)と物標の過去の移動軌跡を示す映像(スキャン動画)とを同時に確認でき、物標の過去から現在までの変化を直感的に把握することが可能となる。ここで、「重畳表示」とは、例えば、画面の前面に一方の映像を表示し、その背面に別の映像を表示することによって、複数の映像を同時に1つの画面上に表示することをいう。また、表示部15が2つ以上の画面から構成されている場合には、例えば
図3(b)に示すように、レーダエコーの映像をメイン画面に表示し、スキャン動画をセカンド画面に表示し、てもよい。
【0024】
表示部15にどの映像をどのようなタイミングで表示するか制御する機能を有するのが、表示制御部16である。実施の形態に係る表示制御部16は、レーダ装置1の操作部(図示せず)の操作に応じて、例えば、表示部15が1つの画面のみから構成されている場合には、画面に表示する映像を切替えたり、画面に複数の映像を重畳表示したりするよう制御することができる。また、表示部15が複数の画面から構成されている場合には、各画面にどの映像を表示するか制御することができる(ステップ4)。映像を表示するタイミングや切り替えるタイミングは、ユーザーが適宜決定できるようにすればよい。
【0025】
図4は、表示部の画面に表示したスキャン動画(実際には動く映像であると想定する。)と、スキャン動画を構成する任意の3枚のスキャン静止画(フレーム1~フレーム3)の部分図を示す模式図であり、過去のスキャン静止画を動画として再生することによる効果を説明するための図である。
図4に示されるスキャン動画において、静止画像である3枚のスキャン静止画は、フレーム1、フレーム2、フレーム3の順番に再生されるものとする。本願発明に用いるスキャン動画は、記憶部14に記憶された複数のスキャン静止画を高速で切り替えて再生することによって作成される。ここで、1スキャンにかかる時間は、約1.25秒~2.5秒であり、この1スキャン時間内にスキャン静止画が表示される。また、高速とは、例えば、1秒あたり約30フレームの速さ(1枚のフレームを約1/30秒で再生する速度)である。例えば、フレーム1がn枚目のスキャン静止画、フレーム2が(n+1)枚目のスキャン静止画であるとするならば、フレーム1の約1/30秒後にフレーム2が再生されることになる。したがって、1スキャン時間が2秒の場合には、60フレームのスキャン静止画がスキャン動画として表示される。
【0026】
フレーム1~フレーム3中の破線の円で囲った部分に表示されている黒い点は、小物標を示すものとする。これらの黒い点がスキャン毎に位置を変えていることは、フレーム1~フレーム3のスキャン静止画からも認識できるが、その動き方(変化の態様)までを把握することは困難である。しかし、これらのスキャン静止画をフレーム1、フレーム2、フレーム3の順番に動画として高速で連続再生すれば、黒い点の変化を追うことによって小物標の動きを直感的に把握することが可能となり、ひいては、小物標が何であるか推測することが可能となる。
図4の例では、黒い点の変化の態様から、これらの小物標が鳥の群れであると推測できる。スキャン動画によって直感的に把握できるようになる物標の例としては、他に、ボンデンやブイなどの浮き沈みする物標が挙げられる。
【0027】
本発明のレーダ装置1は、以上述べた通り、レーダエコーの映像とスキャン動画を様々な形式で表示部15に表示することによって、トレイル映像には表示されなかった種類の物標の移動経路を直感的に把握し、ひいてはその物標を特定することを可能にするものである。
【0028】
以上で説明したように、本実施の形態に係るレーダ装置1によれば、レーダエコーを1スキャン毎にスキャン静止画として記憶部14に記憶し、それらのスキャン静止画を高速に切り替えて動画として再生するので、静止画像であるレーダエコーの映像では把握しづらかった物標の移動軌跡を直感的に把握することが可能となる。また、トレイル映像には表示されなかった種類の物標についても追跡することが可能となる。さらに、その物標が何であるかを推測することが可能となる。
【0029】
また、本実施の形態に係るレーダ装置1によれば、表示制御部16がレーダエコーの映像とスキャン動画を重畳表示するので、物標のリアルタイムの映像(レーダエコーの映像)と物標の過去の移動軌跡を示す映像(スキャン動画)とを同時に確認でき、物標の過去から現在までの変化を直感的に把握することが可能となる。
【0030】
さらに、本実施の形態に係るレーダ装置1によれば、船舶に搭載されるレーダ装置1にスキャン動画が表示されるようにしているので、従来のトレイル映像には表示されづらかった鳥の群れやボンデンやブイなどの物標の移動経路を把握し、推測することが可能となる。
【0031】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、船舶用のレーダ装置を例に説明したが、レーダ波が走査されるその他のレーダ装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 レーダ装置
11 レーダアンテナ
12 送受信ユニット
13 A/D変換部・信号処理部
14 記憶部(記憶手段)
15 表示部(表示手段)
16 表示制御部(表示制御手段)