(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090376
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】竪型乾留炉の原料装入方法及び原料装入装置
(51)【国際特許分類】
C10B 47/20 20060101AFI20240627BHJP
C10B 53/08 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C10B47/20
C10B53/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206244
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】塩飽 達宏
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 成人
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012KA06
(57)【要約】
【課題】成型物原料から発生した細粒の奥行き方向への偏析を防ぎ、原料を均一に加熱することが可能となるフェロコークス製造用竪型乾留炉の原料装入方法及び原料装入装置を提供する。
【解決手段】竪型乾留炉の原料装入方法であって、原料を装入口から乾留炉内へ投入する際に、装入口出口付近でガスを噴射して、原料中の細粒を分散させることを特徴とする竪型乾留炉の原料装入方法であり、原料が成型物原料であり、細粒の粒子径が15mm以下であり、噴射するガスが空気又は窒素ガスで、ガスの炉内への噴射速度が7m/s~25m/s、ガスの炉内への噴射角度θが装入口の傾斜面に対して90°~135°であることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
竪型乾留炉における原料の装入方法であって、前記原料を装入口から前記竪型乾留炉内へ投入する際に、前記装入口で前記原料にガスを噴射して、前記原料中の細粒を分散させることを特徴とする竪型乾留炉の原料装入方法。
【請求項2】
前記原料が成型物原料であって、前記細粒の粒子径が15mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の竪型乾留炉の原料装入方法。
【請求項3】
前記成型物原料における前記細粒の重量比が8wt%~20wt%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の竪型乾留炉の原料装入方法。
【請求項4】
前記ガスがエア(空気)又は窒素ガスであり、前記ガスの炉内への噴射速度が7m/s~25m/sであることを特徴とする請求項1又は2に記載の竪型乾留炉の原料装入方法。
【請求項5】
前記ガスがエア(空気)又は窒素ガスであり、前記ガスの炉内への噴射速度が7m/s~25m/sであることを特徴とする請求項3に記載の竪型乾留炉の原料装入方法。
【請求項6】
前記ガスの炉内への噴射角度θが前記装入口の傾斜面に対して90°~135°であることを特徴とする請求項1又は2に記載の竪型乾留炉の原料装入方法。
【請求項7】
前記ガスの炉内への噴射角度θが前記装入口の傾斜面に対して90°~135°であることを特徴とする請求項3に記載の竪型乾留炉の原料装入方法。
【請求項8】
前記ガスの炉内への噴射角度θが前記装入口の傾斜面に対して90°~135°であることを特徴とする請求項4に記載の竪型乾留炉の原料装入方法。
【請求項9】
前記ガスの炉内への噴射角度θが前記装入口の傾斜面に対して90°~135°であることを特徴とする請求項5に記載の竪型乾留炉の原料装入方法。
【請求項10】
竪型乾留炉において、原料を投入する装入口を有する原料装入装置であって、前記原料中の細粒を分散させるためのガス噴射装置を前記装入口に備えることを特徴とする竪型乾留炉の原料装入装置。
【請求項11】
前記原料が成型物原料であって、前記細粒の粒子径が15mm以下であることを特徴とする請求項10に記載の竪型乾留炉の原料装入装置。
【請求項12】
前記成型物原料における前記細粒の重量比が8wt%~20wt%であることを特徴とする請求項10又は11に記載の竪型乾留炉の原料装入装置。
【請求項13】
前記ガスがエア(空気)又は窒素ガスであり、前記ガスの炉内への噴射速度が7m/s~25m/sであることを特徴とする請求項10又は11に記載の竪型乾留炉の原料装入装置。
【請求項14】
前記ガスがエア(空気)又は窒素ガスであり、前記ガスの炉内への噴射速度が7m/s~25m/sであることを特徴とする請求項12に記載の竪型乾留炉の原料装入装置。
【請求項15】
前記ガスの炉内への噴射角度θが前記装入口の傾斜面に対して90°~135°であることを特徴とする請求項10又は11に記載の竪型乾留炉の原料装入装置。
【請求項16】
前記ガスの炉内への噴射角度θが前記装入口の傾斜面に対して90°~135°であることを特徴とする請求項12に記載の竪型乾留炉の原料装入装置。
【請求項17】
前記ガスの炉内への噴射角度θが前記装入口の傾斜面に対して90°~135°であることを特徴とする請求項13に記載の竪型乾留炉の原料装入装置。
【請求項18】
前記ガスの炉内への噴射角度θが前記装入口の傾斜面に対して90°~135°であることを特徴とする請求項14に記載の竪型乾留炉の原料装入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪型乾留炉の原料装入方法及び原料装入装置に関し、特に、フェロコークス製造用竪型乾留炉へ成型物原料を装入する際に、搬送過程で発生した細粒の偏析を防ぎ、原料を均一に加熱することが可能となる竪型乾留炉の原料装入方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高炉における製鉄プロセスの効率を高めるために、高炉へ装入されるコークスの一部をフェロコークスに置き換えることが提案されている。フェロコークスとは、炭素含有物質(石炭等)に鉄含有物質(鉄鉱石等)を一定量混合したものを乾留して製造された成型コークスのことであり、一般的に竪型の乾留炉を用いて乾留処理する方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、上部に乾留ゾーン、下部に冷却ゾーンを有する竪型乾留炉を用いたフェロコークスの製造方法が開示されている。このフェロコークスの製造方法は、まず、装入工程において、炭素含有物質と鉄含有物質からなる成型物を竪型乾留炉に装入する。次に、乾留工程において、乾留ゾーンにおいて加熱ガスを吹き込み、成型物を乾留し、フェロコークスを製造する。続いて、冷却工程において、冷却ゾーンに冷却ガスを吹き込み、フェロコークスを冷却する。さらに、竪型乾留炉の炉頂部の排出口から炉内ガスを排出する炉内ガス排出工程と、冷却ゾーン下部からフェロコークスを排出するフェロコークス排出工程がある。その際、乾留工程では、竪型乾留炉の高さ方向中間部分に設けた羽口から低温ガスを吹き込み、高さ方向下部に設けた羽口から高温ガスを吹き込んでいる。
【0004】
このように、竪型乾留炉を用いてフェロコークスを製造する場合、フェロコークスの生産量を増加させるためには、竪型乾留炉の容積を大きくして、1バッチ当たりの生産量を増大する必要がある。しかしながら、冷却ガスや高温ガスは、竪型乾留炉の奥行き方向(ガス吹込み側から対向する側面への方向)に噴射されるため、炉内の中央部までガスを浸透させるには、炉体の奥行き方向は一定以上大きくすることができない。したがって、竪型乾留炉の形状(水平断面形状)としては、奥行き方向に比べて炉幅方向(奥行き方向と直交する方向)に長い構造となっている。
【0005】
また、成型物を炉内に装入する際に、装入バランスに偏りがあった場合、炉内のガス流れが不均一となり、成型物の乾留に悪影響を与える。そこで、竪型乾留炉において、成型物を均一に乾留させる技術として、特許文献2に原料分散装入技術、特許文献3に均一ガス吹込み技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-57970号公報
【特許文献2】特開2017-155214号公報
【特許文献3】特開2018-172650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2で提案された装置によれば、原料を幅方向へ均一に装入することが可能となり、フェロコークスを高品質、高生産性に製造可能となるとしている。しかしながら、特許文献2の技術では、原料を奥行き方向へ均一に装入する効果は無く、特に細粒が装入口側へ偏析することにより、ガス吹込み均一化の効果が薄くなるという問題があった。
【0008】
また、特許文献3で提案された装置によれば、ガス吹込み口を追加することで、原料を均一に加熱し、炉内における温度差を低減することで、フェロコークスの品質のばらつきを抑制することができるとしている。しかしながら、特許文献3の技術では、竪型乾留炉自体や、周辺設備が複雑化し、建設や維持管理に必要なコストが増加するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の実情に鑑み開発されたものであり、成型物原料から発生した細粒の奥行き方向への偏析を防ぎ、原料を均一に加熱することが可能となるフェロコークス製造用竪型乾留炉の原料装入方法及び原料装入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、竪型乾留炉内に装入される成型物原料の搬送過程で発生する細粒が、乾留炉内で奥行き方向手前の装入口側に偏析することで、装入堆積物の粒度にバラツキが生じ、乾留ゾーンでのガス吹込みが不均一になることを見出した。さらに、装入口の炉内出口付近で、ガスを噴射してその細粒を炉内に均一に分散させることで、装入堆積物の粒度も均一になることを知見した。
【0011】
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものであり、本発明の要旨は、次のとおりである。
〔1〕竪型乾留炉における原料の装入方法であって、前記原料を装入口から前記竪型乾留炉内へ投入する際に、前記装入口で前記原料にガスを噴射して、前記原料中の細粒を分散させることを特徴とする竪型乾留炉の原料装入方法。
〔2〕前記〔1〕において、前記原料が成型物原料であって、前記細粒の粒子径が15mm以下であることを特徴とする竪型乾留炉の原料装入方法。
〔3〕前記〔1〕又は〔2〕において、前記成型物原料における前記細粒の重量比が8wt%~20wt%であることを特徴とする竪型乾留炉の原料装入方法。
〔4〕前記〔1〕ないし〔3〕のいずれか一つにおいて、前記ガスがエア(空気)又は窒素ガスであり、前記ガスの炉内への噴射速度が7m/s~25m/sであることを特徴とする竪型乾留炉の原料装入方法。
〔5〕前記〔1〕ないし〔4〕のいずれか一つにおいて、前記ガスの炉内への噴射角度θが前記装入口の傾斜面に対して90°~135°であることを特徴とする竪型乾留炉の原料装入方法。
〔6〕竪型乾留炉において、原料を投入する装入口を有する原料装入装置であって、前記原料中の細粒を分散させるためのガス噴射装置を前記装入口に備えることを特徴とする竪型乾留炉の原料装入装置。
〔7〕前記〔6〕において、前記原料が成型物原料であって、前記細粒の粒子径が15mm以下であることを特徴とする竪型乾留炉の原料装入装置。
〔8〕前記〔6〕又は〔7〕において、前記成型物原料における前記細粒の重量比が8wt%~20wt%であることを特徴とする竪型乾留炉の原料装入装置。
〔9〕前記〔6〕ないし〔8〕のいずれか一つにおいて、前記ガスがエア(空気)又は窒素ガスであり、前記ガスの炉内への噴射速度が7m/s~25m/sであることを特徴とする竪型乾留炉の原料装入装置。
〔10〕前記〔6〕ないし〔9〕のいずれか一つにおいて、前記ガスの炉内への噴射角度θが前記装入口の傾斜面に対して90°~135°であることを特徴とする竪型乾留炉の原料装入装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、竪型乾留炉を用いてフェロコークスを製造する際に、竪型乾留炉の奥行き方向に原料を粒度の偏析がなく均一に装入することができる。その結果、炉内でのガス吹込みを均一化させ、乾留温度のバラツキを低減することによって、均一な品質のフェロコークスを高品質かつ低コストで製造することが可能となり、生産性も向上するという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る竪型乾留炉の炉上部の一例を示す模式断面図である。
【
図2】本発明に係る噴射ガスの炉内への噴射角度を示す模式断面図である。
【
図3】従来の竪型乾留炉の炉上部の一例を示す模式断面図である。
【
図4】装入物の炉内奥行方向の粗粒・細粒分布比率との関係図であり、細粒重量比率が8%の場合の例である。
【
図5】装入物の炉内奥行方向の粗粒・細粒分布比率との関係図であり、細粒重量比率が20%の場合の例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る竪型乾留炉の原料装入方法及び原料装入装置の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、表わされた各部材の寸法やそれらの比は、実際のものとは異なる場合もある。
【0015】
[竪型乾留炉]
本発明の対象となる竪型乾留炉は、上部に成型物原料を装入する装入ゾーンを有し、中央部に低温加熱部分と高温加熱部分とからなる乾留ゾーンを有し、その下部に冷却ゾーンを有し、最下部に生成した成型コークスの排出ゾーンを有している。
【0016】
ここで、成型物原料とは、成形コークス(フェロコークス)の原料となる炭素含有物質(石炭等)と鉄含有物質(鉄鉱石等)とを所定の割合で混合し、結合剤を加えて塊状に成型したものである。なお、成型物の結合剤(バインダー)は、SOP(軟ピッチ)、ASP(アスファルトピッチ)、澱粉、石炭直接液化残渣等を例示することができる。この結合剤の添加割合は、重量比率で炭素含有物質(石炭等)に対し、1wt%~15wt%が好ましい。結合剤(バインダー)の添加割合が1wt%より少ないと石炭表面へのバインダーの浸透が不十分となるため十分な強度が得られにくくなり、15wt%より多いと製造コストアップが顕著となり好ましくない。より好ましくは、3wt%~10wt%である。
【0017】
図3は、従来の竪型乾留炉の炉上部1の装入ゾーン断面を模式的に図示したものである。成型物製造工程を経て製造された成型物5を、貯槽タンク(図示せず)に蓄え、装入シュート2を経由して、装入口3から炉上部1内へ投入する。この装入口3の出口手前には、ゲート4が設けられている。ゲート4を閉鎖することで、成型物5を適当量(1バッチ分)貯留することができる。ゲート4を開放することで、装入シュート2の傾斜を経由して成型物5を炉内に投入することができる。ここで、原料装入装置9とは、上記の装入シュート2から装入口3までの全体的な構成をいう。
【0018】
炉内には装入口3付近まで原料が貯留されており、装入した原料は、奥行き方向中間地点付近で貯留原料(装入物8)上に落下するように設計されている。また、炉上部1の頂上付近には、炉内のガスを排出するガス抜出し口6が設けられており、排出ガス7を調整して炉内の圧力を制御している。この竪型乾留炉内に原料を装入、貯留した後、下部の乾留ゾーンにて、複数の羽口でガス(低温ガス、高温ガス及び冷却ガス)を循環させることで、乾留における加熱及びその後の冷却を効率的に行っている。
【0019】
なお、
図3に示す竪型乾留炉を原料装入側から奥行き方向への断面図に対し、その断面と直交する断面の図は示していないが、その奥行き方向と直交する方向の幅(炉幅)は、奥行きの長さを長くできないことから、炉幅を長く設計した構造となっている。炉上部1の形状としては、例えば、奥行きが1.0m~2.0m、炉幅が4m~8mである。したがって、装入シュート2は、炉幅方向に等間隔に(例えば、0.8m~1.2m間隔で)複数列設置されており、それぞれの装入口3には、それぞれゲート4が設けられている。なお、装入シュート2の形状は、特に限定されないが、断面長方形の四角柱、又は断面円形の円柱形状などが例示される。
【0020】
[成型物の粒度構成]
次に、成型物の粒度構成と装入物の粒度偏析について説明する。
成型物は、成型物製造工程後に竪型乾留炉へ搬送される過程において、成型物が一部破砕、解砕されて細かい粒子が生成する。製造直後の成型物のサイズ(粒径)は、平均で20mm~30mmであるが、炉内装入手前では、細かい粒子が多く存在することになる。ここで、本発明において、粒径15mm以下の粒子を「細粒」とし、粒径15mm超の粒子を「粗粒」と規定すると、その細粒の重量比率(成型物原料全体の重量に対する細粒の重量の比率)は、8wt%~20wt%である。この数値範囲は、実測値の最低値と最高値に基づいている。
【0021】
そして、装入する方向が炉の中間部分になるように原料を投入しても、細粒は、中間部分にまで届かずに、中間部分より手前に落下する傾向があり、それにより、装入物の粒度偏析が生じ、乾留ゾーンなどでのガス吹込みに悪影響が出ることがわかった。
【0022】
[ガス噴射]
そこで、本発明者らは、投入する原料の細粒のバラツキをなくすための検討を行い、投入される原料にガスを噴射して、細粒の不均一落下を防止する方法を見出した。
すなわち、本発明は、
図1に示すように、炉上部1の装入口3の炉内出口付近にガス噴射装置10を備えることを特徴とするものである。
【0023】
ここで、原料を装入時に奥行き方向へ噴射するガス11の噴射速度は、7m/s~25m/sとすることが好ましい。この範囲に調整することで、後述する成型物の装入傾向は変わらないまま、成型物と混ざって装入される細粒の装入傾向を奥行き方向へ均一に分散させることができる。より好ましくは、15m/s~20m/sである。
【0024】
また、噴射するガス11としては、エア(空気)又は窒素ガスを用いることが好ましい。
このガス噴射により、装入口側への細粒の偏析を防ぎ、竪型乾留炉内からのガス吹込みを均一化することで、乾留温度のばらつきを低減し、均一な品質のフェロコークスを高品質かつ低コストで製造することが可能となる。
具体的なガス噴射装置10としては、ブロワーやコンプレッサーなどが挙げられる。
さらに、ガス噴射装置10の具体的な設置位置は、装入口3であり、特に、炉内の出口付近が好ましい。より好ましくは、装入口3の炉内出口の下側、炉内壁との境界付近である。
【0025】
また、
図2に示すように、ガスの噴射する方向の噴射角度θは、装入口3の傾斜面12に対して垂直より炉内方向、すなわち90°以上が好ましい。噴射角度θが90°未満では、原料装入方向に対して逆流することになるからである。また、噴射角度θが装入口3の傾斜面12に対して垂直より炉内方向へ45°、すなわち135°を超えると、細粒の分散効果が乏しくなる。したがって、ガスの炉内への噴射角度θは、装入口の傾斜面に対して90°~135°であることが好ましい。より好ましくは、95°~120°である。
【0026】
なお、装入口3の傾斜面12は、竪型乾留炉の垂直な側壁13に対して角度δを有しており、この角度δは、炉内への原料の装入角度であって、30°~70°とするのが好ましい。より好ましくは、40°~60°である。
【実施例0027】
以下、実施例を挙げて本発明の実施形態をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
本発明の効果を確認するために、竪型乾留炉の操業を模した装入試験を実施した。装入試験では、
図1に示した炉上部1の装入口3に、ガス噴射装置10を設置した形状を模した装入モデルを使用し、装入物が降下する炉上部1の寸法を、幅0.3m×奥行き1.5m、装入口3から装入物8までの高さ1.0mとして試験を実施した。
【0029】
装入口3の炉内出口付近の位置に、風速を変更可能なエアブロー(ガス噴射装置10)を設置し、成型物の粗粒(粒径:15mm超)と細粒(粒径:15mm以下)を混合し装入する。ここで、ガスとしてエア(空気)を用い、そのエア噴射の速度を、0m/s(すなわち、エア噴射なし)、7m/s、15m/s、20m/s、25m/sと変化させた。また、粗粒と細粒の混合条件は、実測値の細粒重量比率(全成型物の重量に対する細粒の重量の比率)である最低値8wt%と最高値20wt%で試験を実施した(試験No.1~10)。なお、ガスの噴射角度θは、装入口3の傾斜面12(炉の側壁13に対する角度δは、60°)に対して105°斜め上方とした。
【0030】
以上の装入試験の比較条件を表1に示す。
【0031】
【0032】
装入試験後に、落下位置として奥行き方向に手前側から反対側まで等間隔に10ヶ所の位置(下記の
図4及び
図5に記載の飛散箇所)からサンプリングを行った。それぞれ10ヶ所の落下位置での粗粒存在率(全体の粗粒重量に対する落下位置ごとの粗粒重量の比率)と細粒存在率(全体の細粒重量に対する落下位置ごとの細粒重量の比率)を比較した。
【0033】
その結果を
図4と
図5に示す。
図4は、細粒重量比率が実測最低値の8wt%の場合であり、
図5は、細粒重量比率が実測最高値の20wt%の場合である。
【0034】
これらの結果から、本発明例では、粒径15mm以下の細粒の重量比率が、最低値8wt%及び最高値20wt%に関わらず、エア噴射速度が7m/s~25m/sの条件で、細粒の落下位置を奥行き方向の中心位置(炉の中間部分)に移行させることが可能となった。特に、エア噴射速度が、7m/sで細粒の落下位置が中心位置より手前にあり、25m/sで粗粒へのエア噴射の影響が出始めることから、エア噴射速度は、7m/s~25m/sが適した条件であることがわかった。この範囲のエア噴射とすることで、細粒が装入物全体に均一に混合することができ、高品質の成型コークスが得られることがわかった。
【0035】
以上により、本発明の有効性が確認された。