(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090379
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】試験装置、及び試験方法
(51)【国際特許分類】
B01J 8/00 20060101AFI20240627BHJP
B01J 8/06 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B01J8/00 Z
B01J8/06
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206253
(22)【出願日】2022-12-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】502040041
【氏名又は名称】日揮株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 直哉
【テーマコード(参考)】
4G070
【Fターム(参考)】
4G070AA05
4G070AB04
4G070BB02
4G070CA06
4G070CA09
4G070CA24
4G070CA25
4G070CB17
4G070CC01
4G070DA30
(57)【要約】
【課題】流動状態が同じ条件下で、触媒層における滞留時間を変化させながら反応速度試験を自動的に実施する技術を提供する。
【解決手段】触媒存在下で進行する化学反応の反応速度試験を行う試験装置において、試料供給部31、411は触媒に供給される試料を予め設定された流量にて供給し、複数の反応容器2a~2fは各々、触媒が充填された触媒層を備える。供給側切り替えバルブ61、62は供給先の反応容器2eに対し、試料が供給される供給流路を接続し、流出側切り替えバルブ63は触媒層から試料が流出する流出元の反応容器2eに対し、試料を分析用に採取するためのサンプル流路701を接続する。制御部11は、触媒層における滞留時間が異なる少なくとも3つの条件下で反応速度試験が行われるように、供給側切り替えバルブ61、62及び流出側切り替えバルブ63により供給先及び流出元の反応容器2a~2fの切り替え制御を行う。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒存在下で進行する化学反応の反応速度試験を行う試験装置であって、
前記触媒に供給される試料を予め設定された流量にて供給する試料供給部と、
各々、前記触媒が充填された触媒層を備えた複数の反応容器と、
前記反応容器の温度調節を行う温度調節機構と、
前記複数の反応容器から選択された供給先の反応容器に対し、前記試料供給部から試料が供給される供給流路を接続する供給側切り替えバルブと、
前記触媒層から前記試料が流出する流出元の反応容器に対し、前記触媒層を通過した試料を分析用に採取するためのサンプル流路を接続する流出側切り替えバルブと、
前記触媒層における滞留時間が異なる少なくとも3つの条件下で反応速度試験が行われるように、前記供給側切り替えバルブ及び前記流出側切り替えバルブにより、前記供給先及び前記流出元の反応容器の切り替え制御を行う制御部と、を備えたことを特徴とする試験装置。
【請求項2】
前記触媒層の容量が互いに異なる反応容器を少なくとも3つ備え、前記制御部は、前記供給先の反応容器と、前記流出元の反応容器とが一致するように前記切り替え制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記温度調節機構は、前記反応容器を温度調節庫の内部に収容した状態で温度調節を行うように構成され、
各々、前記触媒層の容量が互いに異なる複数の前記反応容器を収容した上流側の温度調節庫及び下流側の温度調節庫と、
前記上流側の温度調節庫に収容され、前記触媒層から前記試料が流出する上流側の反応容器と、前記下流側の温度調節庫に収容された前記複数の反応容器から選択され、前記上流側の反応容器から流出した前記試料が供給される下流側の反応容器とを接続する中間切り替えバルブと、を備え、
前記制御部は、前記反応容器の切り替え制御に加え、前記中間切り替えバルブによる前記上流側の反応容器と前記下流側の反応容器との接続制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
【請求項4】
前記温度調節機構は、前記触媒層の容量が互いに異なる複数の前記反応容器を温度調節庫の内部に収容した状態で温度調節を行うように構成され、
前記複数の反応容器について、前記触媒層から前記試料が流出する一の反応容器と、前記一の反応容器以外の反応容器から選択された他の反応容器とを接続する接続先切り替えバルブと、
前記一の反応容器からの前記試料の流出先を、前記サンプル流路と、前記接続先切り替えバルブを介した前記他の反応容器との間で選択する選択バルブと、を備え、
前記制御部は、前記選択バルブにより前記試料の流出先を選択する制御を実施し、前記選択により前記サンプル流路への接続が選択された場合には、前記一の反応容器が前記流出元の反応容器となるように、前記流出側切り替えバルブによる切り替え制御を行い、前記選択により前記他の反応容器への接続が選択された場合には、前記他の反応容器が前記流出元の反応容器となるように、前記流出側切り替えバルブによる切り替え制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記供給流路から前記供給先の反応容器への前記試料の供給を開始してから予め設定された整定時間が経過し、前記サンプル流路を介して前記流出元の反応容器から流出した前記試料が採取された後、次の前記供給先及び前記流出元の反応容器への前記切り替え制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記供給流路から前記供給先の反応容器への前記試料の供給を開始してから、予め設定されたルールに基づいて決定されるサンプリング周期毎に、前記サンプル流路を介して前記流出元の反応容器から流出した前記試料が採取され、前記試料に含まれる着目成分の濃度分析が行われた結果に基づいて、前記着目成分の濃度変化指標が予め設定されたしきい値以下となった後、次の前記供給先及び前記流出元の反応容器への前記切り替え制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記試料供給部からの前記試料の供給が停止されてから、次の前記供給先及び前記流出元の反応容器への前記切り替え制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
【請求項8】
触媒存在下で進行する化学反応の反応速度試験を行う試験方法であって、
予め設定された流量にて、前記触媒に供給される試料を供給する工程と、
各々、前記触媒が充填された触媒層を備えた複数の反応容器の温度調節を行う工程と、
前記複数の反応容器から選択された供給先の反応容器に対し、前記試料が供給される供給流路を接続する工程と、
前記触媒層から前記試料が流出する流出元の反応容器に対し、前記触媒層を通過した試料を分析用に採取するためのサンプル流路を接続する工程と、を含み、
前記供給流路を接続する工程及びサンプル流路を接続する工程は、前記触媒層における滞留時間が異なる少なくとも3つの条件下で反応速度試験が行われるように、前記供給先及び前記流出元の反応容器を切り替えて実施されることを特徴とする試験方法。
【請求項9】
前記触媒層の容量が互いに異なる少なくとも3つの反応容器に対し、前記供給先の反応容器と、前記流出元の反応容器とが一致するように、前記供給流路を接続する工程及びサンプル流路を接続する工程を切り替えて実施することを特徴とする請求項8に記載の試験方法。
【請求項10】
前記反応容器の温度調節を行う工程は、温度調節庫の内部に前記反応容器を収容した状態で実施され、
各々、前記触媒層の容量が互いに異なる複数の前記反応容器を収容した上流側の温度調節庫及び下流側の温度調節庫を用い、前記上流側の温度調節庫に収容され、前記触媒層から前記試料が流出する上流側の反応容器と、前記下流側の温度調節庫に収容された前記複数の反応容器から選択され、前記上流側の反応容器から流出した前記試料が供給される下流側の反応容器とを接続する工程を含み、
前記供給流路を接続する工程及びサンプル流路を接続する工程での前記供給先及び前記流出元の反応容器の切り替えに加え、前記上流側の反応容器と前記下流側の反応容器とを接続する工程を実施することを特徴とする請求項8に記載の試験方法。
【請求項11】
前記反応容器の温度調節を行う工程は、温度調節庫の内部に、前記触媒層の容量が互いに異なる複数の前記反応容器を収容した状態で実施され、
前記複数の反応容器について、前記触媒層から前記試料が流出する一の反応容器と、前記一の反応容器以外の反応容器から選択された他の反応容器とを接続する工程と、
前記一の反応容器からの前記試料の流出先を、前記サンプル流路と、前記他の反応容器との間で選択する工程と、を含み、
前記選択する工程にて、前記サンプル流路への接続が選択された場合には、前記一の反応容器が前記流出元の反応容器となるように、前記サンプル流路を接続する工程を実施し、前記他の反応容器への接続が選択された場合には、前記他の反応容器が前記流出元の反応容器となるように、前記サンプル流路を接続する工程を実施することを特徴とする請求項8に記載の試験方法。
【請求項12】
前記供給流路を接続する工程及びサンプル流路を接続する工程の実施により、前記供給先の反応容器への前記試料の供給を開始してから予め設定された整定時間が経過し、前記サンプル流路を介して前記流出元の反応容器から流出した前記試料が採取された後、次の前記供給先及び前記流出元の反応容器についての前記供給流路を接続する工程及びサンプル流路を接続する工程を実施することを特徴とする請求項8に記載の試験方法。
【請求項13】
前記供給流路を接続する工程及びサンプル流路を接続する工程の実施により、前記供給流路から前記供給先の反応容器への前記試料の供給を開始してから、予め設定されたルールに基づいて決定されるサンプリング周期毎に、前記サンプル流路を介して前記流出元の反応容器から流出した前記試料が採取され、前記試料に含まれる着目成分の濃度分析が行われた結果に基づいて、前記着目成分の濃度変化指標が予め設定されたしきい値以下となった後、次の前記供給先及び前記流出元の反応容器についての前記供給流路を接続する工程及びサンプル流路を接続する工程を実施することを特徴とする請求項8に記載の試験方法。
【請求項14】
前の前記供給先の反応容器についての前記試料の供給が停止されてから、次の前記供給先及び前記流出元の反応容器についての前記供給流路を接続する工程及びサンプル流路を接続する工程を実施することを特徴とする請求項8に記載の試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒存在下で進行する化学反応の反応速度を決定するための試験を実施する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
固体の触媒を充填した触媒層に原料を供給し、所望の目的成分を得る反応装置の設計を行うにあたっては、当該触媒を用いた反応(触媒反応)の反応速度を決定することが必要となる。しかしながら触媒層内における流動状態の変化を避けつつ、正確な反応速度を決定するためには、触媒層の容量が異なる複数の反応容器の取り換えを行いながら、繰り返し反応速度試験を実施しなければならない。このような反応容器の取り換えが必要となる触媒反応の反応速度の測定は、試験の実施者にとって負担の大きな作業となっていた。
【0003】
ここで特許文献1には、組み合わせライブラリ(combinatorial library)方式により、反応物を触媒の存在下で反応させるスクリーニングを実施するにあたり、触媒を収容した容器に対し単位時間に同量の試験流体を供給する技術が記載されている。また、特許文献2には、フローリアクタを流れる反応流体の流れ方向に沿って、反応開始直後の反応流体の温度分布を取得して反応流体の反応状態を特定する反応解析装置が記載されている。
しかしながら特許文献1、2のいずれにも、触媒層の容量が異なる複数の反応容器を用いて反応速度の測定を行う技術は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開2002/0141900号明細書
【特許文献2】特開2021-159910
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、流動状態が同じ条件下で、触媒層における滞留時間を変化させながら反応速度試験を自動的に実施する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、触媒存在下で進行する化学反応の反応速度試験を行う試験装置であって、
前記触媒に供給される試料を予め設定された流量にて供給する試料供給部と、
各々、前記触媒が充填された触媒層を備えた複数の反応容器と、
前記反応容器の温度調節を行う温度調節機構と、
前記複数の反応容器から選択された供給先の反応容器に対し、前記試料供給部から試料が供給される供給流路を接続する供給側切り替えバルブと、
前記触媒層から前記試料が流出する流出元の反応容器に対し、前記触媒層を通過した試料を分析用に採取するためのサンプル流路を接続する流出側切り替えバルブと、
前記触媒層における滞留時間が異なる少なくとも3つの条件下で反応速度試験が行われるように、前記供給側切り替えバルブ及び前記流出側切り替えバルブにより、前記供給先及び前記流出元の反応容器の切り替え制御を行う制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
前記試験装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記触媒層の容量が互いに異なる反応容器を少なくとも3つ備え、前記制御部は、前記供給先の反応容器と、前記流出元の反応容器とが一致するように前記切り替え制御を行うこと。
(b)前記温度調節機構は、前記反応容器を温度調節庫の内部に収容した状態で温度調節を行うように構成され、各々、前記触媒層の容量が互いに異なる複数の前記反応容器を収容した上流側の温度調節庫及び下流側の温度調節庫と、前記上流側の温度調節庫に収容され、前記触媒層から前記試料が流出する上流側の反応容器と、前記下流側の温度調節庫に収容された前記複数の反応容器から選択され、前記上流側の反応容器から流出した前記試料が供給される下流側の反応容器とを接続する中間切り替えバルブと、を備え、前記制御部は、前記反応容器の切り替え制御に加え、前記中間切り替えバルブによる前記上流側の反応容器と前記下流側の反応容器との接続制御を行うこと。
(c)前記温度調節機構は、前記触媒層の容量が互いに異なる複数の前記反応容器を温度調節庫の内部に収容した状態で温度調節を行うように構成され、前記複数の反応容器について、前記触媒層から前記試料が流出する一の反応容器と、前記一の反応容器以外の反応容器から選択された他の反応容器とを接続する接続先切り替えバルブと、前記一の反応容器からの前記試料の流出先を、前記サンプル流路と、前記接続先切り替えバルブを介した前記他の反応容器との間で選択する選択バルブと、を備え、前記制御部は、前記選択バルブにより前記試料の流出先を選択する制御を実施し、前記選択により前記サンプル流路への接続が選択された場合には、前記一の反応容器が前記流出元の反応容器となるように、前記流出側切り替えバルブによる切り替え制御を行い、前記選択により前記他の反応容器への接続が選択された場合には、前記他の反応容器が前記流出元の反応容器となるように、前記流出側切り替えバルブによる切り替え制御を行うこと。
(d)前記制御部は、前記供給流路から前記供給先の反応容器への前記試料の供給を開始してから予め設定された整定時間が経過し、前記サンプル流路を介して前記流出元の反応容器から流出した前記試料が採取された後、次の前記供給先及び前記流出元の反応容器への前記切り替え制御を行うこと。
(e)前記制御部は、前記供給流路から前記供給先の反応容器への前記試料の供給を開始してから、予め設定されたルールに基づいて決定されるサンプリング周期毎に、前記サンプル流路を介して前記流出元の反応容器から流出した前記試料が採取され、前記試料に含まれる着目成分の濃度分析が行われた結果に基づいて、前記着目成分の濃度変化指標が予め設定されたしきい値以下となった後、次の前記供給先及び前記流出元の反応容器への前記切り替え制御を行うこと。
(f)前記制御部は、前記試料供給部からの前記試料の供給が停止されてから、次の前記供給先及び前記流出元の反応容器への前記切り替え制御を行うこと。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、触媒層を備えた複数の反応容器を用い、触媒層における滞留時間が異なる少なくとも3つの条件下で反応速度試験が行われるように、供給側切り替えバルブ、及び流出側切り替えバルブの切り替え制御を行う。この結果、手作業による反応容器の取り換えを行うことなく、触媒存在下で進行する化学反応の反応速度を測定するための反応速度試験を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】触媒層に原料を供給して生成物を得る反応を示す模式図である。
【
図2】反応系の違いに応じて反応速度曲線が変化する様子を示す模式図である。
【
図5】第1の実施の形態に係る試験装置の構成図である。
【
図6】第1の実施の形態に係る試験装置の動作フローの一例である。
【
図7】カラムの切り替えの判断を行う動作に係るフロー図である。
【
図8】第2の実施形態に係る試験装置の構成図である。
【
図9】第3の実施形態に係る試験装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
初めに固体の触媒を充填した触媒層を備える反応装置の設計を行うにあたって反応速度の決定が必要な理由、及び従来の試験装置の問題点について説明しておく。
【0011】
図1に示すように、触媒層を用いた反応系においては、触媒層に原料の流体を流通させ、原料と触媒とを接触させることにより触媒反応を進行させ、反応により生成した生成物の中から目的成分を得る。一般に、反応温度及び流体中の原料の濃度を一定とした条件下では、触媒層における滞留時間が長い程、より多くの原料が反応によって消費され、原料の消費量に対応する量の生成物が得られる。
【0012】
このとき、触媒層における原料の滞留時間、即ち反応時間(例えば、「秒」)と、触媒層出口における原料濃度(触媒層への入口濃度に対する出口濃度のパーセント表示値)との関係(反応速度曲線)は、
図2のように示すことができる。反応速度の大きな反応系では、一点鎖線で示すように短い滞留時間で急激に原料濃度が低下する。一方、反応速度の小さな反応系では、実線で示すように、反応速度の大きな反応系と比較して、滞留時間の増加に伴う原料濃度の低下は緩やかになる。
【0013】
このような反応速度の違いは、原料から目的成分を得るための反応装置の設計に影響を及ぼす。例えば、短い反応時間(滞留時間)で所定量の原料を生成物に転化可能な反応系(反応速度:大)では、触媒層の容量を小さくすること、即ち反応塔の容積を小さくすることができる。一方、所定量の原料を生成物に転化するにあたり、より長い反応時間(滞留時間)が必要となる反応系(反応速度:小)では、反応塔の容積、即ち触媒層の容量をより大きくしなければならない。
【0014】
このように、触媒反応の反応速度は、反応装置の設計を行ううえで予め把握しておくべき重要な触媒特性の一つである。そこで、ある反応系の反応速度を決定するにあたっては、原料が触媒層を通過する滞留時間を変化させながら触媒層出口の原料濃度を測定する反応速度試験を実施する。そして、
図3に示すように、滞留時間に対する触媒層出口の原料濃度の対応関係を複数点、プロットした結果に対し、曲線をフィッティングして反応速度曲線を求める。
【0015】
ここで、触媒層における原料の滞留時間を変化させる手法としては、所定量の触媒を充填した触媒層に対し、原料の供給流量を順次、変化させることも考えられる。しかしながら、このような手法では、供給流量の変化に応じて、触媒層内を流れる原料の流動状態が大きく相違してしまう場合がある。この結果、滞留時間以外の条件を揃えた状態で反応速度試験を実施することが困難となり、正確な反応速度曲線を得られないおそれがある。
【0016】
そこで従来は、
図4に例示する構成の試験装置100を用いて反応速度試験を実施し、反応速度曲線を求めていた。
図4に示す試験装置100は、例えば原料流体に含まれる原料を水素化する水素化反応の反応速度曲線を得るための反応実験を行う装置として構成されている。
【0017】
試験装置100の構成について簡単に説明すると、原料供給部31には原料を含む原料流体(例えば液体)が貯留されている。この原料流体は、流量計33による流量測定結果に基づき、ポンプ32によって予め設定された流量にて、原料供給ライン301を介して供給される。原料供給ライン301には圧力計34や温度計35が設けられ、原料流体の供給圧力や供給温度を測定することができる。原料供給部31、ポンプ32、流量計33は、試料である原料流体を予め設定された流量にて供給する試料供給部を構成し、原料供給ライン301は試料供給路を構成している。
【0018】
一方、水素ガス供給部411には、水添反応用の水素ガスが貯留されている。流量計413による流量測定結果に基づき、流量調節バルブ412によって流量調節を行いながら、予め設定された流量にて水素ガスが供給される。また窒素ガス供給部421には、水素ガスの濃度調節用の窒素ガスが貯留されている。流量計423による流量測定結果に基づき、流量調節バルブ422によって流量調節を行いながら、予め設定された流量にて窒素ガスが供給される。
【0019】
これら水素ガス及び窒素ガスは合流した後、混合ガス(以下、「反応ガス」ともいう)として反応ガス供給ライン401を介して供給される。反応ガス供給ライン401の下流端部は、原料流体の供給を行う原料供給ライン301に合流している。水素ガス供給部411、流量調節バルブ412、流量計413、及び窒素ガス供給部421、流量調節バルブ422、流量計423は、試料である水素ガスや窒素ガスを予め設定された流量にて供給する試料供給部を構成し、反応ガス供給ライン401は試料供給路を構成している。
【0020】
原料の水添反応に用いる触媒は、反応容器である複数の触媒カラム2a~2fに各々充填されている。これらの触媒カラム2a~2fは、例えば直径が5mmのステンレス製の円筒容器により構成されている、触媒カラム2a~2fを構成する円筒容器は、例えば50~300mmの範囲で互いに長さ寸法が相違するように構成され、各々の長さ寸法に応じて異なる容量の触媒が充填されている。本例では、長さ寸法のより大きな触媒カラム2a~2fに対して、より多くの容量の触媒を充填した触媒層を設けている。なお、上述の構成材料や寸法、使用する触媒カラム2a~2fの数は例示であり、適宜、変更してよい。
【0021】
本例の試験装置100においては、触媒層の容量が異なる複数の触媒カラム2a~2fを予め用意しておき、これらの中から選択した一つ(
図4に示す例では触媒カラム2a)をオーブン5内に配置している。オーブン5は、内部の温度を予め設定された温度(例えば100℃)に加熱する。
【0022】
また、オーブン5は、例えば40~150℃の範囲で設定温度を変更することが可能である。設定温度の異なる条件下で各々、反応速度試験を実施することにより、反応速度の温度依存性を評価することもできる。この観点でオーブン5は、その内部に収容された触媒カラム2a~2f、即ち触媒層の温度を調節する温度調節機構(温度調節庫)の役割を果たす。
【0023】
オーブン5内に収容された触媒カラム2aの入口側には、原料供給ライン301の下流端部が接続される。この下流端部は、既述の反応ガス供給ライン401との合流位置よりも下流側に位置している。一方、触媒カラム2aの出口側には、触媒カラム2a内の触媒層を通過した試料を分析用に採取するためのサンプリングライン(サンプル流路)701が接続されている。
【0024】
サンプリングライン701の下流端は、試験装置100の外部に設けられた分析器7に接続されている。サンプリングライン701から流出する試料が液体である場合は、試料の組成分析・定量分析を行う分析器7として液体クロマトグラフィー(LC:Liquid Chromatography)を用いる場合を例示できる。ここで、液体である試料を供給するにあたり、分析器7内には、例えばシリンジを利用した試料採取機構が設けられている場合がある。この場合において、試料に気泡や溶存ガスが含まれていると、試料採取機構による試料採取時にトラブルが発生するおそれがある。そこで、必要に応じ、サンプリングライン701の下流端と分析器7との間に、気液分離器やデガッサーを設置してもよい。
分析器7にて生成物の分析が行われた後の試料は、排出ライン702を介して排出される。
【0025】
なお、サンプリングライン701に接続する分析器7は、LCに限定されるものではなく、試料が気体である場合にはガスクロマトグラフィー(GC:Gas Chromatography)を用いてもよい。さらに、分析の内容に応じて質量分析器(MS:Mass spectrometry)が併設されたLC‐MSやGC-MS、その他の分析器を用いてもよい。また、試料が液体である場合には、分析器7の入口側にフラクションコレクターを設け、当該フラクションコレクターにサンプリングライン701を接続してもよい。
【0026】
上述の構成を備えた試験装置100においては、複数、準備しておいた触媒カラム2a~2fから、今回の反応速度試験に使用する触媒カラム2aを選択し、オーブン5内に配置すると共に、原料供給ライン301やサンプリングライン701の取り付けを行う。しかる後、オーブン5内を昇温し、設定温度にて安定したら、原料流体や反応ガスなどの試料の供給を開始する。
【0027】
反応の整定には、例えば1時間程度を要するため、試料の供給を開始してから整定時間の経過後、分析器7にて試料のサンプリング、分析を実施する。反応速度の温度依存性の評価も行う場合には、試料の供給を停止し、オーブン5の設定温度を変更する。そして、オーブン5内の温度が新たな設定温度にて安定したら、既述の「試料の供給→整定待ち→試料のサンプリング、分析」の操作を繰り返す。なお、オーブン5の設定温度変更時における試料の供給停止は、必ずしも実施しなくてもよい。例えば原料、水素ガスの供給を停止して、窒素ガスのみ供給を継続してもよいし、十分な量の原料や水素ガスがある場合には、原料や水素ガスの供給を継続してもよい。
【0028】
こうして、温度依存性の評価に必要な全ての設定温度について、上述の操作を完了したら、試料(原料流体、反応ガス)の供給や、オーブン5の加熱を停止する。しかる後、オーブン5内が、作業を実施可能な温度まで低下したら、触媒カラム2aを取り外し、次の触媒カラム2bを取り付けた後、上述の要領にて反応速度試験を繰り返す。
【0029】
ここで、
図2に示すように、曲線である反応速度曲線を得るためには、ス少なくとも互いに異なる3点の滞留時間(反応時間)にて反応速度試験を行う必要がある。そして、より精度の高い反応速度曲線を得るためには、互いに異なる4点以上の滞留時間にて、反応速度試験を行うことが必要となる場合もある。
【0030】
従って、
図4に示す従来構成の試験装置100においては、3点以上の滞留時間に対応する触媒カラム2a~2fについて、上述の反応速度試験、取り換え作業を実施する必要がある。しかしながら、待ち時間も多く、繰り返し発生する触媒カラム2a~2fの取り換え作業は、試験の実施者にとって大きな負担となっていた。
【0031】
そこで、本実施の形態の試験装置1は、上述の触媒カラム2a~2fの取り換え作業を廃し、反応速度曲線を得るための反応速度試験を自動的に実施することが可能な構成となっている。以下、
図5~
図7を参照しながら、本実施の形態に係る試験装置1の構成、及び作用について説明する。
なお、
図5、
図8、
図9に示す各試験装置1、1a、1bにおいては、
図1を用いて説明した試験装置100と共通の構成要素には、
図1にて用いたものと共通の符号を付してある。
【0032】
図5に示す試験装置1は、触媒層の容量が互いに異なる少なくとも3つ(図中の例では6つ)の触媒カラム2a~2fが、共通のオーブン5内に予め取り付けられている。このように本実施の形態の試験装置1は、触媒カラム2a~2fの取り換え作業が発生しない構成となっている。
【0033】
一方、オーブン5内に複数の触媒カラム2a~2fが収容されている場合には、原料供給ライン301、反応ガス供給ライン401からの試料の供給先や、サンプリングライン701への試料の流出元の触媒カラム2a~2fを選択しなければならない。
この観点で本実施の形態の試験装置1には、供給側切り替えバルブ61、62及び流出側切り替えバルブ63が設けられている。供給側切り替えバルブ61、62は、複数の触媒カラム2a~2fから選択された供給先に対し、試料である原料流体の原料供給ライン301、及び反応ガスの反応ガス供給ライン401を各々、接続する役割を果たす。また流出側切り替えバルブ63は、触媒層から試料が流出する流出元の触媒カラム2a~2fに対し、サンプル流路を接続する役割を果たす。
【0034】
これらの供給側切り替えバルブ61、62、流出側切り替えバルブ63は、制御部11により切り替え制御が実施される。制御部11は、これら供給側切り替えバルブ61、62及び流出側切り替えバルブ63を用いて、試料の供給先及び流出元の触媒カラム2a~2fの切り替えを実行する。例えば制御部11は、コンピュータや制御回路などにより構成される。特に本実施の形態の試験装置1において、制御部11は、試料の供給先及び流出元の触媒カラム2a~2fが一致するように供給側切り替えバルブ61、62及び流出側切り替えバルブ63の切り替え制御を行う。
【0035】
例えば
図5には、触媒カラム2eに対して原料供給ライン301、反応ガス供給ライン401、サンプリングライン701が接続されるように、供給側切り替えバルブ61、62及び流出側切り替えバルブ63の切り替えが行われた状態を示してある。そしてこの切り替えを順次、実施することにより、滞留時間が異なる少なくとも3つ(
図5に示す例では最大で6つ)の条件下で反応速度試験を行うことができる。
【0036】
次に
図5に加えて
図6も参照しながら、上述の構成を備える試験装置1の動作について説明する。試験装置1を用いた反応速度試験を実施するにあたっては(スタート)、オーブン5に収容されている触媒カラム2a~2fから、試験対象となる触媒カラム2eを選択し、供給側切り替えバルブ61、62及び流出側切り替えバルブ63の切り替えを行う(ステップS101)。次いで、切り替えた触媒カラム2eに対し、試料である原料流体及び反応ガスの供給を実施する(ステップS102)。
【0037】
その後、予め設定された整定時間の経過まで試料の供給を継続する(ステップS103)。この期間中はサンプリングライン701を介して排出ライン702より試料を排出してもよい。整定時間の経過後、サンプリングライン701を介して試料のサンプリング、分析を実施する(ステップS104)。しかる後、触媒カラム2eへの原料流体及び反応ガスの供給を停止する(ステップS105)。
【0038】
なお、ここで、
図4の従来の試験装置100を用いて説明した反応速度の温度依存性の評価も行う場合には、オーブン5の設定温度を変更した後、ステップS102~S104の動作を繰り返す。但し、この場合、ステップS102は設定温度変更後の触媒カラム2eに対し、原料流体及び反応ガスを供給する動作を実施することになる。
【0039】
ステップS105の試料の供給停止動作の後、次に反応速度試験を実施すべき触媒カラム2a~2d、2fが設定されているか否か確認する(ステップS106)。例えば、触媒カラム2eの反応速度試験を終えたタイミングで、既に触媒カラム2a~2dについては反応速度試験が完了し、残る触媒カラム2fについて反応速度試験を実施するとする(ステップS106:YES)。この場合は、ステップS101にて触媒カラム2fの切り替えを実施し、ステップS102~S106の動作を繰り返す。
【0040】
しかる後、次に切り替えて反応速度試験を実施すべき触媒カラム2a~2fがない場合には(ステップS106:NO)、反応速度試験を終了する。そして、例えば分析器7から試験結果を取得した外部のコンピュータにて、曲線のフィッティングを行い、反応速度曲線を自動作成して動作を終える(エンド)。
【0041】
本実施の形態に係る試験装置1によれば、以下の効果がある。触媒層を備えた複数の触媒カラム2a~2fを用い、触媒層における滞留時間が異なる少なくとも3つの条件下で反応速度試験が行われるように、供給側切り替えバルブ61、62及び流出側切り替えバルブ63の切り替え制御を行う。この結果、手作業による触媒カラム2a~2fの取り換え作業を行うことなく、触媒存在下で進行する化学反応の反応速度を決定するための反応速度試験を実施することができる。
【0042】
ここで、
図6を用いて説明したステップS103について、予め設定された整定時間の経過を待つ手法に替えて、実際の整定時間の経過を確認してもよい。
図7は、この場合にステップS103に換えて実施される動作の例を示している。
【0043】
図6のステップS102の試料の供給を開始した後、制御部11は、サンプリングの実施回数のカウントを開始(n=1)する(ステップS201)。そして、予めプログラムされているサンプリングルールに基づいて決定されるサンプリング間隔の経過後、触媒層を通過した試料の1回目のサンプリングを行い、分析器7にて分析を実施する(ステップS202)。
【0044】
ここで、サンプリングルールについては、制御部11に対し、種々のルールを自由に設定する場合を想定することができる。但し、実際の整定時間の経過を効率的に把握するためには「
図6のステップS103の整定時間(例えば1時間)>サンプリング周期」となるようにサンプリング周期を設定することが好ましい。
【0045】
具体例としては、ステップS201のサンプリングの実施回数のカウント開始後のサンプリング周期を30分に設定しておき、その後のサンプリング周期については10分毎とするルールを設定してもよい。
【0046】
また、1回目のサンプリング周期を0分に設定しておき、サンプリング実施回数のカウント開始後、直ちにサンプリングを実施し、その後のサンプリング周期については5分毎とするルールを設定してもよい。
【0047】
この他、1回目のサンプリング周期を0分に設定しておく。そして、その後のサンプリング周期については、分析器7による分析結果から得られる着目成分の濃度変化と、サンプリング周期とを対応付けたテーブルを作成しておき、このテーブルに基づいてサンプリング周期を変化させてもよい。テーブルには、整定されたか否かを判断する着目成分の濃度変化が大きい程、サンプリング周期を長く設定し、着目成分の濃度変化が小さくなって整定に近づくほどサンプリング周期を短く設定する場合を例示できる。
【0048】
こうして1回目のサンプリング、分析を実施したら、サンプリングの実施回数をインクリメントし(ステップS203)、インクリメント後の値が2を超えているか否かを確認する(ステップS204)。2を超えていない場合には(ステップS204:NO)、2回目のサンプリング、分析を実施するよう、ステップS202~S203の動作を繰り返す。
【0049】
インクリメント後の値が2を超えている場合は(ステップS204:NO)、少なくとも2回のサンプリング、分析が実施されているため、前回の分析結果と、今回の分析結果との比較ができる。そこで、反応系が整定されているか否かを判断するための着目成分についての前回、及び今回の濃度分析結果から、着目成分の濃度変化指標が予め設定されたしきい値以下となっているか否かの判定を行う(ステップS205)。
【0050】
例えば、試料に含まれる生成物中の目的成分の濃度が安定したことをもって実際の整定時間が経過したと判断する場合には、着目成分としては当該目的成分が選択される。また、生成物中の副生物の濃度が十分に低下した状態が安定したことをもって整定時間の経過と判断する場合には、着目成分には上記副生物が選択される。
【0051】
また、濃度変化指標については、前回‐今回の着目成分の濃度差の絶対値であってもよいし、前回分析時の濃度を基準とした、今回濃度の割合であってもよい。また、前回分析時の濃度を基準とし、この濃度に対する前回‐今回の着目成分の濃度差の絶対値の割合を示す変化率であってもよい。
【0052】
着目成分の濃度変化指標が予め設定されたしきい値以下となっていない場合には(ステップS205:NO)、ステップS202~S204の動作を繰り返す。一方、前記濃度変化指標がしきい値以下となっている場合には(ステップS205:YES)、実際の整定時間が経過したと判断し、最後のサンプリングの分析結果を反応速度試験の分析結果として採用する(ステップS206)。しかる後、
図6のステップS105に戻り、原料流体及び反応ガスの供給を停止し、触媒カラム2a~2fの切り替えの要否判断を行う(ステップS106)。
図7を用いて説明した動作によれば、実際の整定時間の経過をアクティブに把握し、無駄な待ち時間を低減することができる。
【0053】
次いで、第2の実施形態に係る試験装置1aの構成例について、
図8を参照しながら説明する。第2の実施形態に係る試験装置1aは、複数、例えば2つのオーブン5(上流側オーブン5a、下流側オーブン5b)を直列に繋いだ構成となっている。上流側オーブン5aには、触媒層の容量が互いに異なる複数の触媒カラム2a~2fが収容され、下流側オーブン5bにも、同様に複数の触媒カラム2g~2lが収容されている。
【0054】
そして、上流側オーブン5aと下流側オーブン5bとを繋ぐ流路には、中間切り替えバルブ65が設けられている。中間切り替えバルブ65は、上流側オーブン5aに収容され、触媒層から試料が流出する上流側の触媒カラム2a~2fと、下流側オーブン5bに収容された下流側の触媒カラム2g~2lとを接続する役割を果たす。そして、制御部11は、
図5を用いて説明した、供給側切り替えバルブ61、62、及び流出側切り替えバルブ63による触媒カラム2a~2fの切り替え制御に加え、中間切り替えバルブ65による上流側の触媒カラム2a~2fと下流側の触媒カラム2g~2lとの接続制御を行う。
【0055】
なお、中間切り替えバルブ65の上流側に設けられている選択バルブ64は、上流側オーブン5aを単独で使う場合と、上流側オーブン5aと下流側オーブン5bとを直列に繋いで使う場合とを切り替える役割を果たす。上流側オーブン5aを単独で使用する場合は、
図5を用いた例と同様の構成となり、触媒カラム2a~2fのいずれかを単独で使用して反応速度試験が実施され、触媒層から流出した試料は、サンプリングライン701aを介して分析器7へ送られる。
【0056】
一方、上流側オーブン5aと下流側オーブン5bとを直列に繋いで使う場合には、触媒層の総容量は、上流側オーブン5aに収容され、触媒カラム2a~2fのいずれかの触媒層の容量と、下流側オーブン5bに収容され、触媒カラム2g~2lのいずれかの触媒層の容量との合計値となる。この結果、
図8に示す例では、6つの触媒カラム2a~2fと6つの触媒カラム2g~2lとを組み合わせて36通りの異なる滞留時間を設定して反応速度試験を実施することができる。触媒カラム2g~2lの出口側は、流出側切り替えバルブ66によってサンプリングライン701bに接続され、触媒層から流出した試料はこのサンプリングライン701bを介して分析器7へ送られる。
【0057】
以上の使用法を纏めると、
図8に示す試験装置1a全体では、上流側オーブン5aを単独で使用する場合と合わせて42通りの異なる滞留時間を設定することも可能となる。なお、選択バルブ64及びサンプリングライン701aを設けることは必須の要件ではなく、常時、上流側オーブン5aと下流側オーブン5bとを直列に繋いだ状態で使用してもよい。ここのとき、上流側オーブン5a、下流側オーブン5bには、各々、少なくとも2つの触媒カラム2a、2b及び触媒カラム2g、2hが設けられていれば、4通りの異なる滞留時間を設定して反応速度試験を実施することができる。これは、滞留時間が異なる少なくとも3つの条件を満足し、反応速度曲線を特定することができる。
【0058】
さらに、直列に繋がれるオーブン5の数は2つに限らず、3つ以上であってもよい。この場合は、中間切り替えバルブ65を介して互いに接続された2つのオーブン5に着目して、上流側オーブン5aと下流側オーブン5bとが特定される。また、各々の中間切り替えバルブ65の上流側に選択バルブ64及びサンプリングライン701aを設ければ、最低3つのオーブン5に、各々1つの触媒カラム2aを設けることにより、滞留時間が異なる少なくとも3つの条件を設定して反応速度試験を実施することができる。このとき、これら3つの触媒カラム2aは、触媒層の容量を相違させることは必須ではなく、触媒層の容量が互いに同じであってもよい。
【0059】
次に第3の実施形態に係る試験装置1bの構成例について、
図9を参照しながら説明する。第3の実施形態に係る試験装置1bは、共通のオーブン5内に触媒層の容量が互いに異なる複数の触媒カラム2a~2fが設けられ、これらから選択した2つを直列に接続することが可能となっている。
【0060】
この観点で、試験装置1bには、
図5を用いて説明した試験装置1の構成に追加して、選択バルブ64と接続先切り替えバルブ67とを設けた構成となっている。接続先切り替えバルブ67は、触媒層から試料が流出する一の触媒カラム2a~2f(
図9の例では触媒カラム2e)と、一の触媒カラム2e以外から選択された他の触媒カラム2b~2f、2a(
図9の例では触媒カラム2a)とを接続する役割を果たす。また、選択バルブ64は、上述の一の触媒カラム2a~2fからの試料の流出先を、サンプリングライン701aと、接続先切り替えバルブ67を介して接続される他の触媒カラム2b~2f、2aとの間で選択する役割を果たす。
【0061】
また試験装置1bは、選択バルブ64よりも上流側に設けられた1段目の流出側切り替えバルブ63と、互いに接続された一の触媒カラム2a~2f及び他の触媒カラム2b~2f、2aの最下流側に設けられた2段目の流出側切り替えバルブ66とを備える。2段目の流出側切り替えバルブ66は、前記他の触媒カラム2b~2f、2aをサンプリングライン701bに接続する役割を果たす。
【0062】
上述の構成を備える試験装置1bにおいて、制御部11は、選択バルブ64により試料の流出先を選択する制御を実施する。この選択によりサンプリングライン701aへの接続が選択された場合には、一の触媒カラム2a~2fが流出元となるように、流出側切り替えバルブ63を介してサンプリングライン701aへの切り替え制御を行う。また、選択バルブ64により他の~2f、2aへの接続が選択された場合には、他の~2f、2aが流出元となるように、流出側切り替えバルブ66を介してサンプリングライン701bへの切り替え制御を行う。
【0063】
図9に示す試験装置1bにおいて、オーブン5内には最低2つの触媒カラム2a、2bが設けられていれば、各触媒カラム2a、2bを単独で用いる場合と、触媒カラム2a、2bを直列に接続する場合とで、滞留時間が異なる少なくとも3つの条件を設定して反応速度試験を実施することができる。
【0064】
また、試験装置1bにおいても、触媒カラム2a~2fを3段以上、直列に接続可能な構成としてもよい。この場合には、選択バルブ64、接続先切り替えバルブ67、流出側切り替えバルブ66及びサンプリングライン701bのセットを複数段、設ければよい。触媒カラム2a~2fを3段以上、直列に接続することが可能な構成では、触媒カラム2a~2fの触媒層の容量は、互いに同じであっても、滞留時間が異なる少なくとも3つの条件を設定して反応速度試験を実施することができる。
【0065】
以上、
図8、
図9を用いて説明した第2、第3の実施形態に係る試験装置1a、1bに対しても、
図6、
図7を用いて説明した動作フローを適用することができる。
【0066】
また、第1~第3の実施形態に係る試験装置1、1a、1bにおいて、触媒層の容量を変化させる手法は、触媒カラム2a~2fの長さ寸法を相違させる場合に限定されない。例えば触媒カラム2a~2fの直径を相違させることにより、触媒層の容量を変化させてもよい。
【0067】
また、触媒を用いて実施する反応の種類も水添反応用の例に限定されず、酸化反応や還元反応、熱分解反応など、他の反応であってもよい。そして、反応の内容に応じ、試験供給部を1系統のみ設けてもよいし、3系統以上設けてもよい。また必要に応じて試料供給部に予熱器を設置し、予熱された試料を触媒カラム2a~2fに供給してもよい。
【0068】
複数の触媒カラム2a~2fを収容して、温度調節を行う温度調節庫の構成例は、オーブン5に限られるものではなく、アルミブロックヒーター、恒温ボックスや試験用冷蔵庫などであってもよい。また、温度調節機構は、複数の触媒カラム2a~2fを収容するタイプの温度調節庫に限らず、個別の触媒カラム2a~2fをジャケット式ヒーターやテープヒーターなどで覆う構成のものも含んでいる。
【符号の説明】
【0069】
1、1a、1b、100
試験装置
11 制御部
2a~2f 触媒カラム
301 原料供給ライン
31 原料供給部
32 ポンプ
33 流量計
34 圧力計
35 温度計
401 反応ガス供給ライン
411 水素ガス供給部
412 流量調節バルブ
413 流量計
421 窒素ガス供給部
422 流量調節バルブ
423 流量計
5 オーブン
5a 上流側オーブン
5b 下流側オーブン
61 供給側切り替えバルブ
62 供給側切り替えバルブ
63 流出側切り替えバルブ
64 選択バルブ
65 中間切り替えバルブ
66 流出側切り替えバルブ
67 接続先切り替えバルブ
701、701a、701b
サンプリングライン
702 排出ライン
7 分析器
【手続補正書】
【提出日】2024-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒存在下で進行する化学反応の反応速度試験を行う試験装置であって、
前記触媒に供給される試料を予め設定された流量にて供給する試料供給部と、
各々、前記触媒が充填された触媒層を備えた複数の反応容器と、
前記反応容器の温度調節を行う温度調節機構と、
前記複数の反応容器から選択された供給先の反応容器に対し、前記試料供給部から試料が供給される供給流路を接続する供給側切り替えバルブと、
前記触媒層から前記試料が流出する流出元の反応容器に対し、前記触媒層を通過した試料を分析用に採取するためのサンプル流路を接続する流出側切り替えバルブと、
前記触媒層における滞留時間が異なる少なくとも3つの条件下で反応速度試験が行われるように、前記供給側切り替えバルブ及び前記流出側切り替えバルブにより、前記供給先及び前記流出元の反応容器の切り替え制御を行う制御部と、を備えることと、
前記触媒層の容量が互いに異なる反応容器を少なくとも3つ備え、前記制御部は、前記供給先の反応容器と、前記流出元の反応容器とが一致するように前記切り替え制御を行うことを特徴とする試験装置。
【請求項2】
触媒存在下で進行する化学反応の反応速度試験を行う試験装置であって、
前記触媒に供給される試料を予め設定された流量にて供給する試料供給部と、
各々、前記触媒が充填された触媒層を備えた複数の反応容器と、
前記反応容器の温度調節を行う温度調節機構と、
前記複数の反応容器から選択された供給先の反応容器に対し、前記試料供給部から試料が供給される供給流路を接続する供給側切り替えバルブと、
前記触媒層から前記試料が流出する流出元の反応容器に対し、前記触媒層を通過した試料を分析用に採取するためのサンプル流路を接続する流出側切り替えバルブと、
前記触媒層における滞留時間が異なる少なくとも3つの条件下で反応速度試験が行われるように、前記供給側切り替えバルブ及び前記流出側切り替えバルブにより、前記供給先及び前記流出元の反応容器の切り替え制御を行う制御部と、を備えることと、
前記温度調節機構は、前記反応容器を温度調節庫の内部に収容した状態で温度調節を行うように構成され、
各々、前記触媒層の容量が互いに異なる複数の前記反応容器を収容した上流側の温度調節庫及び下流側の温度調節庫と、
前記上流側の温度調節庫に収容され、前記触媒層から前記試料が流出する上流側の反応容器と、前記下流側の温度調節庫に収容された前記複数の反応容器から選択され、前記上流側の反応容器から流出した前記試料が供給される下流側の反応容器とを接続する中間切り替えバルブと、を備え、
前記制御部は、前記反応容器の切り替え制御に加え、前記中間切り替えバルブによる前記上流側の反応容器と前記下流側の反応容器との接続制御を行うことを特徴とする試験装置。
【請求項3】
触媒存在下で進行する化学反応の反応速度試験を行う試験装置であって、
前記触媒に供給される試料を予め設定された流量にて供給する試料供給部と、
各々、前記触媒が充填された触媒層を備えた複数の反応容器と、
前記反応容器の温度調節を行う温度調節機構と、
前記複数の反応容器から選択された供給先の反応容器に対し、前記試料供給部から試料が供給される供給流路を接続する供給側切り替えバルブと、
前記触媒層から前記試料が流出する流出元の反応容器に対し、前記触媒層を通過した試料を分析用に採取するためのサンプル流路を接続する流出側切り替えバルブと、
前記触媒層における滞留時間が異なる少なくとも3つの条件下で反応速度試験が行われるように、前記供給側切り替えバルブ及び前記流出側切り替えバルブにより、前記供給先及び前記流出元の反応容器の切り替え制御を行う制御部と、を備えることと、
前記温度調節機構は、前記触媒層の容量が互いに異なる複数の前記反応容器を温度調節庫の内部に収容した状態で温度調節を行うように構成され、
前記複数の反応容器について、前記触媒層から前記試料が流出する一の反応容器と、前記一の反応容器以外の反応容器から選択された他の反応容器とを接続する接続先切り替えバルブと、
前記一の反応容器からの前記試料の流出先を、前記サンプル流路と、前記接続先切り替えバルブを介した前記他の反応容器との間で選択する選択バルブと、を備え、
前記制御部は、前記選択バルブにより前記試料の流出先を選択する制御を実施し、前記選択により前記サンプル流路への接続が選択された場合には、前記一の反応容器が前記流出元の反応容器となるように、前記流出側切り替えバルブによる切り替え制御を行い、前記選択により前記他の反応容器への接続が選択された場合には、前記他の反応容器が前記流出元の反応容器となるように、前記流出側切り替えバルブによる切り替え制御を行うことを特徴とする試験装置。
【請求項4】
触媒存在下で進行する化学反応の反応速度試験を行う試験装置であって、
前記触媒に供給される試料を予め設定された流量にて供給する試料供給部と、
各々、前記触媒が充填された触媒層を備えた複数の反応容器と、
前記反応容器の温度調節を行う温度調節機構と、
前記複数の反応容器から選択された供給先の反応容器に対し、前記試料供給部から試料が供給される供給流路を接続する供給側切り替えバルブと、
前記触媒層から前記試料が流出する流出元の反応容器に対し、前記触媒層を通過した試料を分析用に採取するためのサンプル流路を接続する流出側切り替えバルブと、
前記触媒層における滞留時間が異なる少なくとも3つの条件下で反応速度試験が行われるように、前記供給側切り替えバルブ及び前記流出側切り替えバルブにより、前記供給先及び前記流出元の反応容器の切り替え制御を行う制御部と、を備えることと、
前記制御部は、前記供給流路から前記供給先の反応容器への前記試料の供給を開始してから、予め設定されたルールに基づいて決定されるサンプリング周期毎に、前記サンプル流路を介して前記流出元の反応容器から流出した前記試料が採取され、前記試料に含まれる着目成分の濃度分析が行われた結果に基づいて、前記着目成分の濃度変化指標が予め設定されたしきい値以下となった後、次の前記供給先及び前記流出元の反応容器への前記切り替え制御を行うことを特徴とする試験装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記供給流路から前記供給先の反応容器への前記試料の供給を開始してから予め設定された整定時間が経過し、前記サンプル流路を介して前記流出元の反応容器から流出した前記試料が採取された後、次の前記供給先及び前記流出元の反応容器への前記切り替え制御を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の試験装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記試料供給部からの前記試料の供給が停止されてから、次の前記供給先及び前記流出元の反応容器への前記切り替え制御を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の試験装置。
【請求項7】
触媒存在下で進行する化学反応の反応速度試験を行う試験方法であって、
予め設定された流量にて、前記触媒に供給される試料を供給する工程と、
各々、前記触媒が充填された触媒層を備えた複数の反応容器の温度調節を行う工程と、
前記複数の反応容器から選択された供給先の反応容器に対し、前記試料が供給される供給流路を接続する工程と、
前記触媒層から前記試料が流出する流出元の反応容器に対し、前記触媒層を通過した試料を分析用に採取するためのサンプル流路を接続する工程と、を含み、
前記供給流路を接続する工程及びサンプル流路を接続する工程は、前記触媒層における滞留時間が異なる少なくとも3つの条件下で反応速度試験が行われるように、前記供給先及び前記流出元の反応容器を切り替えて実施されることと、
前記触媒層の容量が互いに異なる少なくとも3つの反応容器に対し、前記供給先の反応容器と、前記流出元の反応容器とが一致するように、前記供給流路を接続する工程及びサンプル流路を接続する工程を切り替えて実施することを特徴とする試験方法。
【請求項8】
触媒存在下で進行する化学反応の反応速度試験を行う試験方法であって、
予め設定された流量にて、前記触媒に供給される試料を供給する工程と、
各々、前記触媒が充填された触媒層を備えた複数の反応容器の温度調節を行う工程と、
前記複数の反応容器から選択された供給先の反応容器に対し、前記試料が供給される供給流路を接続する工程と、
前記触媒層から前記試料が流出する流出元の反応容器に対し、前記触媒層を通過した試料を分析用に採取するためのサンプル流路を接続する工程と、を含み、
前記供給流路を接続する工程及びサンプル流路を接続する工程は、前記触媒層における滞留時間が異なる少なくとも3つの条件下で反応速度試験が行われるように、前記供給先及び前記流出元の反応容器を切り替えて実施されることと、
前記反応容器の温度調節を行う工程は、温度調節庫の内部に前記反応容器を収容した状態で実施され、
各々、前記触媒層の容量が互いに異なる複数の前記反応容器を収容した上流側の温度調節庫及び下流側の温度調節庫を用い、前記上流側の温度調節庫に収容され、前記触媒層から前記試料が流出する上流側の反応容器と、前記下流側の温度調節庫に収容された前記複数の反応容器から選択され、前記上流側の反応容器から流出した前記試料が供給される下流側の反応容器とを接続する工程を含み、
前記供給流路を接続する工程及びサンプル流路を接続する工程での前記供給先及び前記流出元の反応容器の切り替えに加え、前記上流側の反応容器と前記下流側の反応容器とを接続する工程を実施することを特徴とする試験方法。
【請求項9】
触媒存在下で進行する化学反応の反応速度試験を行う試験方法であって、
予め設定された流量にて、前記触媒に供給される試料を供給する工程と、
各々、前記触媒が充填された触媒層を備えた複数の反応容器の温度調節を行う工程と、
前記複数の反応容器から選択された供給先の反応容器に対し、前記試料が供給される供給流路を接続する工程と、
前記触媒層から前記試料が流出する流出元の反応容器に対し、前記触媒層を通過した試料を分析用に採取するためのサンプル流路を接続する工程と、を含み、
前記供給流路を接続する工程及びサンプル流路を接続する工程は、前記触媒層における滞留時間が異なる少なくとも3つの条件下で反応速度試験が行われるように、前記供給先及び前記流出元の反応容器を切り替えて実施されることと、
前記反応容器の温度調節を行う工程は、温度調節庫の内部に、前記触媒層の容量が互いに異なる複数の前記反応容器を収容した状態で実施され、
前記複数の反応容器について、前記触媒層から前記試料が流出する一の反応容器と、前記一の反応容器以外の反応容器から選択された他の反応容器とを接続する工程と、
前記一の反応容器からの前記試料の流出先を、前記サンプル流路と、前記他の反応容器との間で選択する工程と、を含み、
前記選択する工程にて、前記サンプル流路への接続が選択された場合には、前記一の反応容器が前記流出元の反応容器となるように、前記サンプル流路を接続する工程を実施し、前記他の反応容器への接続が選択された場合には、前記他の反応容器が前記流出元の反応容器となるように、前記サンプル流路を接続する工程を実施することを特徴とする試験方法。
【請求項10】
触媒存在下で進行する化学反応の反応速度試験を行う試験方法であって、
予め設定された流量にて、前記触媒に供給される試料を供給する工程と、
各々、前記触媒が充填された触媒層を備えた複数の反応容器の温度調節を行う工程と、
前記複数の反応容器から選択された供給先の反応容器に対し、前記試料が供給される供給流路を接続する工程と、
前記触媒層から前記試料が流出する流出元の反応容器に対し、前記触媒層を通過した試料を分析用に採取するためのサンプル流路を接続する工程と、を含み、
前記供給流路を接続する工程及びサンプル流路を接続する工程は、前記触媒層における滞留時間が異なる少なくとも3つの条件下で反応速度試験が行われるように、前記供給先及び前記流出元の反応容器を切り替えて実施されることと、
前記供給流路を接続する工程及びサンプル流路を接続する工程の実施により、前記供給流路から前記供給先の反応容器への前記試料の供給を開始してから、予め設定されたルールに基づいて決定されるサンプリング周期毎に、前記サンプル流路を介して前記流出元の反応容器から流出した前記試料が採取され、前記試料に含まれる着目成分の濃度分析が行われた結果に基づいて、前記着目成分の濃度変化指標が予め設定されたしきい値以下となった後、次の前記供給先及び前記流出元の反応容器についての前記供給流路を接続する工程及びサンプル流路を接続する工程を実施することを特徴とする試験方法。
【請求項11】
前記供給流路を接続する工程及びサンプル流路を接続する工程の実施により、前記供給先の反応容器への前記試料の供給を開始してから予め設定された整定時間が経過し、前記サンプル流路を介して前記流出元の反応容器から流出した前記試料が採取された後、次の前記供給先及び前記流出元の反応容器についての前記供給流路を接続する工程及びサンプル流路を接続する工程を実施することを特徴とする請求項7ないし9のいずれか一つに記載の試験方法。
【請求項12】
前の前記供給先の反応容器についての前記試料の供給が停止されてから、次の前記供給先及び前記流出元の反応容器についての前記供給流路を接続する工程及びサンプル流路を接続する工程を実施することを特徴とする請求項7ないし10のいずれか一つに記載の試験方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
第一の発明は、触媒存在下で進行する化学反応の反応速度試験を行う試験装置であって、
前記触媒に供給される試料を予め設定された流量にて供給する試料供給部と、
各々、前記触媒が充填された触媒層を備えた複数の反応容器と、
前記反応容器の温度調節を行う温度調節機構と、
前記複数の反応容器から選択された供給先の反応容器に対し、前記試料供給部から試料が供給される供給流路を接続する供給側切り替えバルブと、
前記触媒層から前記試料が流出する流出元の反応容器に対し、前記触媒層を通過した試料を分析用に採取するためのサンプル流路を接続する流出側切り替えバルブと、
前記触媒層における滞留時間が異なる少なくとも3つの条件下で反応速度試験が行われるように、前記供給側切り替えバルブ及び前記流出側切り替えバルブにより、前記供給先及び前記流出元の反応容器の切り替え制御を行う制御部と、を備えることと、
前記触媒層の容量が互いに異なる反応容器を少なくとも3つ備え、前記制御部は、前記供給先の反応容器と、前記流出元の反応容器とが一致するように前記切り替え制御を行うことを特徴とする。
第二の発明は、触媒存在下で進行する化学反応の反応速度試験を行う試験装置であって、
前記触媒に供給される試料を予め設定された流量にて供給する試料供給部と、
各々、前記触媒が充填された触媒層を備えた複数の反応容器と、
前記反応容器の温度調節を行う温度調節機構と、
前記複数の反応容器から選択された供給先の反応容器に対し、前記試料供給部から試料が供給される供給流路を接続する供給側切り替えバルブと、
前記触媒層から前記試料が流出する流出元の反応容器に対し、前記触媒層を通過した試料を分析用に採取するためのサンプル流路を接続する流出側切り替えバルブと、
前記触媒層における滞留時間が異なる少なくとも3つの条件下で反応速度試験が行われるように、前記供給側切り替えバルブ及び前記流出側切り替えバルブにより、前記供給先及び前記流出元の反応容器の切り替え制御を行う制御部と、を備えることと、
前記温度調節機構は、前記反応容器を温度調節庫の内部に収容した状態で温度調節を行うように構成され、
各々、前記触媒層の容量が互いに異なる複数の前記反応容器を収容した上流側の温度調節庫及び下流側の温度調節庫と、
前記上流側の温度調節庫に収容され、前記触媒層から前記試料が流出する上流側の反応容器と、前記下流側の温度調節庫に収容された前記複数の反応容器から選択され、前記上流側の反応容器から流出した前記試料が供給される下流側の反応容器とを接続する中間切り替えバルブと、を備え、
前記制御部は、前記反応容器の切り替え制御に加え、前記中間切り替えバルブによる前記上流側の反応容器と前記下流側の反応容器との接続制御を行うことを特徴とする。
第三の発明は、触媒存在下で進行する化学反応の反応速度試験を行う試験装置であって、
前記触媒に供給される試料を予め設定された流量にて供給する試料供給部と、
各々、前記触媒が充填された触媒層を備えた複数の反応容器と、
前記反応容器の温度調節を行う温度調節機構と、
前記複数の反応容器から選択された供給先の反応容器に対し、前記試料供給部から試料が供給される供給流路を接続する供給側切り替えバルブと、
前記触媒層から前記試料が流出する流出元の反応容器に対し、前記触媒層を通過した試料を分析用に採取するためのサンプル流路を接続する流出側切り替えバルブと、
前記触媒層における滞留時間が異なる少なくとも3つの条件下で反応速度試験が行われるように、前記供給側切り替えバルブ及び前記流出側切り替えバルブにより、前記供給先及び前記流出元の反応容器の切り替え制御を行う制御部と、を備えることと、
前記温度調節機構は、前記触媒層の容量が互いに異なる複数の前記反応容器を温度調節庫の内部に収容した状態で温度調節を行うように構成され、
前記複数の反応容器について、前記触媒層から前記試料が流出する一の反応容器と、前記一の反応容器以外の反応容器から選択された他の反応容器とを接続する接続先切り替えバルブと、
前記一の反応容器からの前記試料の流出先を、前記サンプル流路と、前記接続先切り替えバルブを介した前記他の反応容器との間で選択する選択バルブと、を備え、
前記制御部は、前記選択バルブにより前記試料の流出先を選択する制御を実施し、前記選択により前記サンプル流路への接続が選択された場合には、前記一の反応容器が前記流出元の反応容器となるように、前記流出側切り替えバルブによる切り替え制御を行い、前記選択により前記他の反応容器への接続が選択された場合には、前記他の反応容器が前記流出元の反応容器となるように、前記流出側切り替えバルブによる切り替え制御を行うことを特徴とする。
第四の発明は、触媒存在下で進行する化学反応の反応速度試験を行う試験装置であって、
前記触媒に供給される試料を予め設定された流量にて供給する試料供給部と、
各々、前記触媒が充填された触媒層を備えた複数の反応容器と、
前記反応容器の温度調節を行う温度調節機構と、
前記複数の反応容器から選択された供給先の反応容器に対し、前記試料供給部から試料が供給される供給流路を接続する供給側切り替えバルブと、
前記触媒層から前記試料が流出する流出元の反応容器に対し、前記触媒層を通過した試料を分析用に採取するためのサンプル流路を接続する流出側切り替えバルブと、
前記触媒層における滞留時間が異なる少なくとも3つの条件下で反応速度試験が行われるように、前記供給側切り替えバルブ及び前記流出側切り替えバルブにより、前記供給先及び前記流出元の反応容器の切り替え制御を行う制御部と、を備えることと、
前記制御部は、前記供給流路から前記供給先の反応容器への前記試料の供給を開始してから、予め設定されたルールに基づいて決定されるサンプリング周期毎に、前記サンプル流路を介して前記流出元の反応容器から流出した前記試料が採取され、前記試料に含まれる着目成分の濃度分析が行われた結果に基づいて、前記着目成分の濃度変化指標が予め設定されたしきい値以下となった後、次の前記供給先及び前記流出元の反応容器への前記切り替え制御を行うことを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
前記試験装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記制御部は、前記供給流路から前記供給先の反応容器への前記試料の供給を開始してから予め設定された整定時間が経過し、前記サンプル流路を介して前記流出元の反応容器から流出した前記試料が採取された後、次の前記供給先及び前記流出元の反応容器への前記切り替え制御を行うこと。
(b)前記制御部は、前記試料供給部からの前記試料の供給が停止されてから、次の前記供給先及び前記流出元の反応容器への前記切り替え制御を行うこと。